堕ちる、熔ける、嗤う。 5


 夕飯の時間までには戻る、とスコールは言った。
リノアはそれを信じていた。

 父の仕事がいつ切り上がるか判らなかったので、何時が夕飯の時間になるかは伝えていなかったが、一般的な夕飯の時間とそれ程変わらないつもりだった。
屋敷仕えのコック達も、そのつもりで料理を作っているし、多少のズレはあっても、凡そ午後6時から7時の間になるだろうと思っていた。
 
 スコールがデリングシティで利用しているジャンクショップは、カーウェイ邸からそれ程離れてはいないらしい。
入り組んだ路地にあるので、知る者は少ないが、街の中心部である事は確かだ。
それなら、カーウェイ邸の前を通るバスもあるし、調整に少々時間がかかったとしても、帰って来るのにそれ程時間はかかるまい。

 ────と、リノアは思っていた。


「……おかしいなあ」


 玄関先に立って、暗闇とネオンに包まれて行く街を見詰めながら、リノアは呟いた。

 時計の短針が7時に近付いても、スコールは帰って来なかった。
何か事件に巻き込まれたのだろうか、と思ったが、スコールの強さをリノアはよく知っている。
仮に事件に遭遇したとしても、きっと彼なら無事に切り抜けて来る筈だ。
…となると、益々スコールが返ってこない理由が判らない。

 何処かで一人で食事をしているとか。
思って、リノアは直ぐに否定した。
一緒に食べようと約束をしたのだから、スコールは絶対にそれを破る事はしない筈だ。
約束は父であり、リノア護衛の依頼主でもあるカーウェイの前で交わしたのだから、尚更、約束の反故は出来ないだろう。


「んー……」


 迎えに行こうか、行くまいか。
護衛がいない状態で、無闇に外を歩き回るのは良くないと、リノアも判っている。
父が言っていた物騒な話もあるし、現在のガルバディアの不安定さを思うと、尚更女が夜で一人歩きなどするべきではない。


(……でも……)


 スコールの強さは知っている。
リノアは彼を信じている。
けれど、信じている事と、心配になる事は別物だ。

 あと10分足らずで、時刻は7時を周る。
料理は既に出来上がっていて、カーウェイの仕事は今日は切り上げられているので、後はスコールが帰ってくれば夕食になる筈だった。
だからリノアは、スコールが帰って来るのを玄関先で待ち続けていたのだが、彼は未だに姿を見せない。

 リノアは一歩を踏み出した。

 後でスコールに怒られるかも知れない。
それでも、此処でじっと彼を待ち続ける間、言いようのない不安を抱えている方が耐えられなかった。





「あっ、んあっあひっ…♡は、ぅうんっ♡」


 ぐぷっ、ぐちゅっ、と卑猥な音と共に、悦楽に興じる声が、薄暗く狭い空間で反響する。
咽かえるような据えた匂いが其処に溜まっていて、本来なら呼吸など出来たものではなかった。
しかし、其処で行われている狂気に酔い痴れた者達にとっては、然して気に障るような事でもない。

 鼻息を荒くさせ、興奮し切った男達に囲まれたスコールの姿は、惨たらしいものとなっていた。
黒いジャケットは埃に塗れ、清潔であった白いシャツはビリビリに引き裂かれて服としての役割を放棄し、スタイルに似合っていた細身の黒のボトムも破られ、下着も切り裂かれ、本来隠すべき場所が惜しげもなく外気に晒されている。
日に焼ける事のない白い肌に、乳白色のどろりとした液体が纏わりついていた。
それは濃茶色の髪にも絡まっており、爪先まで滴り、男にしては細い躯を余すところなく汚している。
俯せにされ、高く掲げられた淫部には、排泄器官であるべき筈の場所に、ずっぽりと男の男根が挿入されている。
それが前後に動き、ぬぢっぬぼっ、と艶めかしい音を立てる度、スコールの腰がヒクヒクと震えて、アヌスが男根を締め付けた。

 とても、傭兵たる人間の様ではない。
いや、人間として扱われているかさえも怪しい、陰惨な姿であった。
だと言うのに、秘部を肉棒に貫かれ、蜜液塗れの口に太い雄を咥え込もうとしている彼の貌は、何処かうっとりと熱を孕んでいる。


「んっ、んっ…ぷ、ぅ…ふぁ…♡」


 淫部を突き上げられ、揺さぶられるスコールの躯。
その四肢は、力を失くしたように、踏ん張る事さえも出来なくなっていた。


「大分反応が鈍くなってきたな」
「あれだけイかせりゃあな」
「舌も動かないすね。打ち止めか?」
「ケツ穴はすげー締め付けるんですけどね」


 ぐにゅぅ…と秘奥の壁の上を押し挙げられて、スコールは虚ろな眼を彷徨わせた。
くぐもった音が男根を咥えた唇から漏れる。
きゅうう、と締め付けるアナルの誘いのままに、淫部に埋められたペニスから、精液が注ぎ込まれた。


「…っあ〜……こっちも打ち止めだな」
「十分だろ。結構楽しませて貰ったし」


 ずるり、と精液塗れの雄がスコールの淫部から出て行く。

 咥えるものを失って、ぽっかりと口を開けたアナルから、どぷり、と大量の精液が溢れ出す。
散々注ぎ込まれた精液は、とっくの昔にスコールの躯の許容量を超えており、注がれた隙から零れていた。
どろりとしたものが直腸を下って行く感覚に、スコールはヒクッ、ヒクッ、と躯を戦慄かせた。

 とぷ、とぷ、とアナルから白濁を溢れさせるスコールに、兵士の一人がにやりと笑い、


「あーあ。どんどん溢れてるぜ。折角中出ししてやったのに」


 俯せで尻を高く掲げた格好のまま、ヒクヒクと躯を震わせて動かないスコールの傍らに、兵士が片膝を付く。
臀部を掴んで、ぐに、と指でアナルの口を拡げると、ごぽっ、と塊になった精液が噴き出した。


「はっ♡んあっ…♡」
「勿体ないから、出ないようにしてやろうぜ」


 将校はそう言うと、ポケットから長方形の紙を取り出した。
皺だらけのそれをスコールのアナルに宛がうと、強引に指で押し込んだ。


「あふぅうううっ♡」


 かさかさと小さな音を立てながら、アナルの奥深くへと潜り込んで行く。
それを見た兵士達が、次々とスコールのアナルへ紙切れを押し込んで行く。


「じゃあ俺も」
「───んあっ、はぅううんっ♡」
「俺もやっとくか」
「はひぃっ!ああっあっあーっ♡♡」
「具合も良かったし。奮発してやろうぜ」
「あっんぁっ♡は、ひ…な、にぃ…っ♡」
「お前も財布くらい持ってるだろ、渡してやれよ」


 無遠慮に突き入れられた紙が、スコールのアナルの中で押し合って秘孔内を圧迫する。
もうちょっと入れてやろう、と言って、将校がアナルの中の紙を指で押した。


「んぁ、あ…!は、ぅううん…♡」
「結構入ったなあ。大金持ちじゃん」


 ひくっ、ひくっ、と伸縮するアナルの中で、くしゃりと音を鳴らすそれは、ギル紙幣だった。
押し込めなかった数枚の紙幣が、アナルからくしゃくしゃに折れた先端を飛び出させている。
将校は飛び出しているギル紙幣を摘まんで、ぐしゃぐしゃとアナルの中へ押して行く。


「ひっ、ひっ♡らめっ♡はいら、はいらなっ…♡」
「SeeDってのは傭兵だっけ。傭兵は金さえ貰えば、なんでもするんだよな?」
「あっ、んっ、はぅん…♡」
「じゃあ金詰まれて以来されれば、こういう事もする訳だ」


 将校の問いをスコールは聞いていなかった。
ぐりぐりと紙で埋まったアナルの中を押し潰されて、与えられる快感に夢中になって腰を振る。


「じゃあ、これで依頼成立、と」
「順番が逆なんじゃないすか?金詰んで依頼してって言う」
「成功報酬って事で」
「依頼内容は?」
「日頃のストレスを体を張って発散、みたいな」


 お陰ですっきりしたよ、と笑う声が幾つも重なる。
スコールはぼんやりと霞んだ意識の中で、何処か遠い出来事のように、その声を聞いていた。


「じゃあな、スコール君。また依頼したら、その時は宜しく」


 ぱん、と将校の手がスコールの白い尻を叩く。
ビクン、とスコールの躯が官能に跳ねて、悩ましい声が漏れた。

 ぞろぞろと不揃いな足音が遠退いて、暗闇の中にスコールだけが取り残される。
立てられていた膝が力を失って、ずるずると伸び、埃だらけの地面の上に投げ出された。


「あ…ひ…♡ぁあぁ…あ……♡」


 体の外と、内側と。
暴虐者達の吐き出した欲望に塗れて、スコールは甘い声を零す。

 紙幣を押し込められた淫部の奥で、じくじくと疼きが始まった。
覚えたての快感に陥落せしめられた躯は、ようやくの解放を不満がっているかのように、甘い疼きでスコールを苛む。

 遠くで、自分の良く知る声が、名前を呼んでいるような気がした。
けれどその声を明確に掴む前に、スコールの意識は泥に沈むように、暗闇の中に溶けて途絶えた。





≫[2-1]
徹底的にスコール苛めがしたかった。快楽落ちなスコールが書きたかった。
楽しかったです(最低)。