Sリズム・エクスタシス


 交流授業のその日の午後は、問題なく終わった。
男子校側の引率の教師が緊張を持っているのはスコールもなんとなく感じていたが、その原因となった当人は、もう姿を見せる事はなかった。

 お陰で反ってサイファーが苛立ちを増し、スコールに対し、「あいつはなんだ」「何処の骨だ?」等としつこく詰問し、ティーダにも何処のクラスにいるのかと問い詰めて来たので、スコールは早い内に面倒を片付ける気持ちで、放課後の帰路の途でサイファーにバッツとの関係を明かした。
すると益々サイファーは米神に青筋を浮かべ、「なんで黙ってやがった」と詰め寄って来たのだが、スコールにしてみれば、そう言う顔をすると思ったから、だ。
自由奔放なバッツと、ガキ大将気質に見えて案外と細かい所は規律を守るサイファーでは、色々と反りが合わないのが予想が出来た。
何せ、スコールも初めの頃はバッツに対して良い印象がなかったのだ。
スコールとサイファーは、不思議とそう言った波長が合う仲であったから、サイファーがバッツに対して妙な対抗心を持つのが目に見えていた。

 ───と、サイファーが殊更バッツに対して拘る理由を考えているスコールであったが、リノアやキスティスにしてみると、それもまた違うらしい。
彼女たち曰く、昔から傍で見ていたスコールが、知らない男と付き合っていたと言うのが、サイファーには気に入らないのだろう、と。
過保護なのよね、と溜息を吐いたのはキスティスだ。
過保護ってなんだ、まるで保護者みたいに、とスコールが顔を顰めれば、リノアとキスティスは顔を見合わせて肩を竦めるのみ。
終いにゼルとセルフィが、憤っている様子のサイファーに対し、「焼きもち?」等と言ったから、いよいよサイファーが爆発した。
「俺に黙って何処の馬の骨だか判んねえ奴と付き合ってたってのが気に入らねえんだよ!」と声を荒げたサイファーに、今度はスコールがむっとした。
「なんであんたに俺の交友関係を逐一報告しなきゃいけないんだ」とスコールが言えば、サイファーは「お前が昔からボーッとしてるからだ」と言い、一触即発状態まで発展する。
が、これも二人の間柄ではよくある光景で、幼馴染達がまあまあと二人をそれぞれ宥めるまでがセットである。

 その喧嘩の後、スコールとサイファーの間に、仲直りの遣り取りはない。
これもいつもの事だ。
そんな喧騒の後でも、リノアや幼馴染の面々が集まろうと声をかければ、必然的に二人は顔を合わせる事になる。
あいつが来るなら行きたくない、と言う気持ちは、少なくともスコールは一応芽生えたりするのだが、いざ顔を合わせると、どちらもが存外と普通の顔で会話をする。
燻るものがない訳でもなかったが、当人同士の間でも、ああした遣り取りはよくある事なのだ。
一々持ち出してもう一度喧嘩をするのは面倒で、結局、何事もなかったように普通に会話をする。

 とは言え、やはりバッツの事はサイファーも流せなかったようで、あれから頻繁にサイファーから電話が来て、バッツと言う人物について根掘り葉掘り聞かれた。
仕方がないので、彼が大学生である事と、休みの日には逢っている事、付き合ってからもう半年以上は経っている事は正直に伝えた。
その後、サイファーはバッツが籍を置いている大学まで赴いて、直に彼と対面したらしい。
それをバッツから聞いて、何考えてるんだあいつ、と顔を顰めたスコールであったが、バッツは特に気を悪くはしていないようだった。
「あいつ、スコールのこと大事にしてるんだなぁ」と、少し拗ねたような顔で呟いたのが精々。
意味が解らなくて、一体彼とどんな話をしたのかとスコールが訊ねると、「スコールを泣かしたら三枚下ろしにするって言われただけだよ」とバッツは笑った。
それも物騒な話だが、いやそれより、何故自分が泣かされるなんて話になるのか、そしてどうしてそれをサイファーが心配するのか。
子供の頃に一番泣かせていたのは誰だ、とスコールはまた顔を顰めるのであった。

 そんな事件が起きつつも、後は毎日の日常通りだ。
スコールは学校に通い、バッツも大学生活を通しつつアルバイトに精を出す。
夜にはメールや電話で遣り取りをして、待ち侘びた土曜日がやって来る。

 スコールは幼い頃に母を亡くし、現在まで父ラグナと二人暮らしをしている。
その父親が、仕事の都合で土日は家にいない。
だからスコールは、この休日を恋人と過ごす日に当てているのだ。
いつしか習慣になった泊まり用の荷物を持って、スコールは無人になる家に鍵をかけ、恋人の家へと向かう。

 少し古めかしくも感じられる賃貸アパートは、スコールには少しレトロな印象を感じる。
鉄骨組の階段の音を鳴らしながら二階に上がって、端にある部屋のインターフォンを鳴らせば、ばたばたと慌ただしい音が聞こえた後、玄関のドアが開く。


「いらっしゃい、スコール!」
「……ん」


 いつも喜び一杯の顔で迎えてくれる恋人は、今日も笑ってスコールを迎え出た。
入って入って、と急かすように促すバッツに続いて、バッツは玄関を潜る。
きちんと靴を揃えて脱ぎ、いつものようにリビングに連れられて、スコールは荷物を置いて、定位置になったフロアソファに腰を下ろす。

 バッツが見ていたのだろう、点けっぱなしのテレビにバラエティ番組が流れている。
ティーダが好きな奴だ、と眺めていると、傍のローテーブルにマグカップが置かれた。
ほこほこと温かな湯気を上らせるそれを手に取って覗き込めば、入れたてのココアが甘い香りを漂わせる。
ふ、ふ、と息を吹きかけて冷ましてから、スコールはカップを口元に運んだ。

 はふ、と息を吐いたスコールの隣に、バッツも腰を下ろす。
手にはスコールと色違いのマグカップがあった。


「そのココア、砂糖の代わりに蜂蜜入れてみたんだ。どう?」
「……甘い」
「甘すぎ?」
「少し。でも、濃い感じは嫌いじゃない」
「じゃあ次はちょっと量を減らしてみるか」


 言いながらバッツもマグカップに口を点ける。
ずず、と飲み通してから、確かに甘いや、とバッツは呟いた。

 肩に回されるバッツの腕の温もりを感じながら、スコールはココアを飲む。
塩気のあるものが欲しいかも知れない。
バッツに摘まめるものを頼むか、図々しいか、と迷いながらなんとなく部屋を見渡していたスコールは、漫画を並べたオープンラックの上に放られているものを見付けた。


「バッツ、あれ」
「何?」
「……まだ借りてるのか?」


 スコールが指差したのは、ラックの上に投げられた制服らしきもの。
幼馴染の男子が着ている制服とよく似た形のそれにバッツも気付き、


「ああ、いや、借りてた制服は返したよ。あれは衣装作りのバイトで試しに作った奴」


 バッツのアルバイトは多岐に渡り、メジャーな飲食店業のものから、肉体労働系のものまで豊富だ。
イベントの設営もした事があると言うし、そう言った場で知り合った伝手で、劇団の道具係をする事もある。
あの制服らしきものは、劇団に所属する友人に頼まれて、早着換えも出来るように改造した制服風の衣装を、と求められて作ったものだと言う。


(……あれ、借りる為の出任せじゃなかったのか)


 先日、スコールの通う女子校と、幼馴染達が通う男子校とで、交流授業が行われた。
年に二回のその行事は、両校の生徒達にとって、異性と接するまたとない機会だ。
其処にバッツは、本物の男子校の制服を着て、潜り込んできたのである。

 スコールにとっては肝が冷えた事件であったが、お陰でスコールは、初めてバッツの制服姿と言うものを見た。
もう大学生のバッツが、高校生の制服を着ていると言うのは、スコールに新鮮な印象を与えた。
タイミングがあんな場面でなければ、もう少し見ていたい気がする、と思う位にはスコールの記憶に鮮やかに残っている。

 バッツはマグカップをテーブルに置いて腰を上げた。
試作品と言う制服衣装を手に取って広げると、ジャケットとワイシャツが一枚になっている。
襟元のネクタイも縫い付けられているようで、これ一枚だけで上半身の制服が完成されていた。


「普通の制服なら、それっぽいの揃えたり、知り合いから借りたりって言うのが出来るけど、早着換えするとなると難しいだろ。制服って結構小物が多いし。ネクタイとかもあったりするしさ」
「まあ……そうだな」
「それで、上着とシャツと一つにして。前のボタンは飾りでさ、横にファスナーつけてるんだ」


 言いながらバッツは側面のファスナーを開けた。
口を開かせたまま、服を頭から被り、袖を通しながら頭を出す。
そして側面のファスナーを閉じれば、きちんと体格に反ったシルエットラインを守りつつ、一見普通の制服と変わりない。
所々に縫い代らしきものが見えたり、絡まった糸の塊が見えるのは、試作品だからと製作時間の短縮を優先した名残だろうか。

 ついでに、とバッツは穿いていたジーンズを脱いだ。
いきなり脱ぎ出したものだから思わず固まったスコールを他所に、バッツは上着と一緒に投げていたスラックスを掴む。


「そんで、これで……どうだ?ちゃんと制服っぽく見えるだろ?」


 スラックスに足を通して、マジックテープとスナップボタンでフロントを留め、振り返るバッツ。
全身を見せるように両腕を拡げて披露目るバッツに、スコールはその井出達をしげしげと眺め、


「……制服だ」
「だろ?試しに作った奴だから、色々雑なとこはあるんだけどさ。結構上手く出来てると思うんだ。本物はもうちょっときちんと作ってて、ポケットとかも作ったし、ズボンはベルトもそれっぽいの作ってつけて置いたんだ。お陰で良い仕事してくれたってバイト代も弾んでくれてさ〜。その劇団、おれの友達が入っててさ、それで回って来た仕事だったんだ。友達価格で材料費だけで良いよって引き受けたんだけど、こんなにしっかり作ってくれるなら、今度はちゃんとした仕事として依頼させてくれって言われたよ」


 着たばかりの制服衣装を脱ぎながら言うバッツに、ふぅん、とスコールは零す。


「良い事じゃないか。結果に見合った給料を貰えたって事だろ」
「そうだな。お陰で今月はちょっと余裕あるんだ。だからスコール、来週とか再来週とか、何処か出掛けたりしないか?お金はおれが出すからさ」
「……割り勘なら」
「余裕あるって言ったじゃん。偶にはおれに全部出させてって」
「余裕があるなら、ちゃんと貯蓄に回せ。……何処かに行くのは、別に、構わない」


 インドアなスコールの気質に合わせてか、バッツはあまりスコールを外デートには誘わない。
付き合い始めの頃、こうしてスコールがバッツの家に通うようになる前は、主に外で会っていたから、デートらしいデートはその時の方が多かったかも知れない。
だが、二人の関係が深まるに連れ、スコールが人の多い所が好きではない事もあって、バッツがそれに合わせるようになった。

 だが、バッツ自身はどちらかと言えばアクティブな気質である。
好奇心が旺盛なので、新しくオープンした店だとか、アクティビティ施設には目がない。
動物好きと言うこともあって、デートはよくそう言った場所にも行った。
バッツと一緒に楽しめるなら、スコールもその時間は嫌いではないから、自分の気質はさて置くとして、彼と出掛ける事に否やはない。

 私服に着替え直してから、やった、とスコールに抱き着くバッツ。
相変わらず激しいスキンシップに、胸の奥で逸る鼓動を隠しながら、スコールは赤らむ顔を隠すようにマグカップを口に運んだ。



 夕飯をバッツが作ったので、片付けはスコールが引き受けた。
スコールがキッチンで食器を洗っている間に、バッツが風呂に入る。
片付けが終わると、タイミングよくバッツが風呂から上がったので、入れ替わりにスコールも湯を貰った。

 風呂上がりに二人でゴールデンタイムのバラエティ番組を見て、幾何か。
そわそわとするバッツの気配に気付いて、スコールもなんとなく落ち着きを失くす。
お互い滲む雰囲気を感じて、バッツがスコールをベッドに促そうとして、


「バッツ。ちょっとだけ、その」
「ん?」
「……準備、したい事があるから。先に、ベッド……」


 行っててくれ、と言うスコールの声は消えそうな程に小さかったが、ちゃんとバッツに届いてくれた。
バッツは益々落ち着きを失くした様子だったが、じぃ、とスコールが目で訴えると、頷いて腰を上げた。
ちらちらと振り返りながらベッドに向かうバッツの視線を感じつつ、スコールは部屋の隅に置いていた鞄を探る。

 ベッドではバッツが以前スコールが買って来た防水シーツを拡げている。
その間にスコールは、着ていた夜着を脱いで、鞄から出したものに着換えを済ませた。


「……バッツ」
「ん?」


 シーツがずれないように、マットの下に挟む作業をしていたバッツを呼ぶ。
くるんと振り返ったバッツは、其処に佇むスコールの姿を見て、アーモンドのような瞳を丸くさせた。


「え。スコール、それ。そのカッコ」
「……」


 スコールは制服を着ていた。
平日、毎日身に付けて学校に通うセーラー服だ。
違うと言ったら、季節的にはまだまだ早い、半袖の夏仕様と言うこと。
剥き出しの腕が少し肌寒い気がしたが、暖房の効いた部屋の中なので、それ程辛くはなかった。

 聊か混乱した顔をしつつも、何かきらきらと輝いているようにも見える褐色の瞳に見詰められ、スコールは妙に落ち着かない気分になる。


「え、え。スコール、なんで?なんで制服?」
「……」


 問うバッツに、スコールは首の後ろにかかる髪を手櫛で緩く握りながら、視線を逸らして答える。


「……あんた、この間、……学校に来た時。俺の制服が見たかったって、言ってたから。……こう言うの、好きなのかと思って……」


 口籠りながらスコールが答えると、バッツも覚えがあるのか、珍しく顔が赤くなる。

 しかし、そのまま固まってしまったように動かなくなったバッツに、俄かにスコールの胸に不安が過ぎる。
幾らなんでも、こんな時に、まるで狙ったようにする事ではなかったか、と。
寧ろ、こういうタイミングを選んで着替えた自分の行動が酷く恥ずかしく、独りよがりのような気がして、スコールはバッツ以上に赤くなりながら俯く。


「……違った、なら……悪い……」
「……!」


 心なしか泣き出しそうな声になってしまうスコールに、バッツが慌てたように勢いよく首を横に振った。
居心地悪そうに佇むスコールに、バッツはベッドから降りて駆け寄り、その体をぎゅうっと抱き締める。


「バッツ、」
「好き。好きだけど。制服が好きって言うか、それを着てるスコールが好きって言うか。う〜、なんて言ったら良いんだろ」


 興奮も冷めやらない様子で口早になるバッツの言葉。
いまいち要領の得ないものではあったが、それでも、抱き締める腕の強さが心地良くて、スコールは少しだけ安堵した。


「……こう言うのは、嫌いじゃ、ない?」
「嫌いな訳ない。って言うか、うん、好き。いつものスコールも好きだし、もう、全部好き!愛してる!」
「……そうか」


 耳元で高らかに告げられる言の葉に、スコールの胸がぽかぽかと温もりに包まれていく。
ほう、と安堵して、スコールはバッツの背中に腕を回した。
バッツの肩口に、すり、とダークブラウンの髪が寄せられて、猫が甘えるように鼻先がバッツの首元を擽る。

 甘えるスコールを抱き締めていたバッツだったが、ふと思い立って、「そうだ」と顔を上げる。
きょとんとしたスコールをベッドに座らせた後、バッツはオープンラックの方へと速足で向かった。
昼の遣り取りの後、片付ける場所がないのか、また放置されていた制服衣装を手に取り、バッツは夜着の上から衣装に袖を通して振り返る。


「スコール。おれもこれでどう?」
「……どう?」


 また要領を得ないバッツの言葉に、スコールがことんと首を傾げると、


「おれの制服。スコールは、どう?やっぱ変かな、歳も歳だし」


 一応はそう言った格好をする正規の年齢は過ぎているのだと、思い出したように照れ臭そうに頬を掻くバッツに、スコールはゆるゆると首を横に振る。
スコールにとっては見慣れない格好だから、少し戸惑うような気もするけれど、それでも、


「……似合ってる」
「へへっ」


 スコールの言葉に、バッツは嬉しそうに笑って、ベッドに戻って来る。
ベッド端に座るスコールの隣に腰を下ろして、バッツは恋人の肩を抱き寄せた。

 少し見上げる位置にあるバッツの顔を、スコールは上目遣いに見る。
覗き込むように見詰める蒼の瞳に、ネクタイを締めた制服姿のバッツの顔が映り込んでいた。
襟元をきちんと閉じているバッツと言うのは初めて見る。
第一ボタンまで閉じるように作られたワイシャツの隙間から、喉仏がちらちらと覗くのが、返ってスコールの目を引いた。

 ゆっくりと近付いて来るバッツの顔に、スコールはそっと目を閉じた。
ふっくらと厚みのある唇がスコールのそれに重ねられ、ちゅぷ、ちゅぷ、と下唇を吸われる。
つんつんと舌先で唇の隙間をノックされて、スコールがそろそろと隙間を開ければ、直ぐに侵入される。
唇の縁を撫でる舌の感触に肩を震わせながら、スコールがそうっと舌を差し出せば、その先端がバッツのそれにツンと触れた。


「ん……っ!」
「んむ……はむぅ……っ!」


 勢い付けられたように、バッツからの口付けが深くなる。
バッツの舌が更に奥へと入って来て、スコールを絡め取り、ちゅるぅ、と唾液が啜られた。


「ん、ん……、ん、ふぅ……っ」
「ん、は、ん……っ!」
「んん……、は、ふ、うん……っ」


 バッツからのキスは段々と深みを増して行き、迫るように体重がかけられて、スコールの躰が後ろへと傾いて行く。
バッツはその背と腰に腕を回し、スコールの体を支えながら、ゆっくりとベッドに倒して行った。

 ぽすん、と柔らかいベッドマットにスコールの背中が預けられると、バッツは一度唇を放した。
足りなくなった酸素を求めて、はあ、とスコールが大きく呼吸する。
新鮮な空気をたっぷりと吸い込んだスコールを見て、バッツはもう一度、その唇を塞いだ。


「あ、むぅ……んむ、ん……っ」


 貪るように深くなる口付けに、スコールはついて行くだけで精一杯だった。
絡められるバッツの舌が激しく動いて、スコールの舌を、口蓋を舐める。
スコールの脳裏に、数日前、体育館の裏でキスされた時の事が浮かんだ。
あの日もバッツの口付けは激しく熱烈で、それだけでスコールの躰は熱くて堪らなくなってしまった。

 耳の奥で鳴る、ちゅくちゅくと言う音。
それを聞きながら、スコールはスカートの中で膝を擦り合わせていた。
熱を増す程、胸の奥で心臓が早鐘を打って、これからを期待するように秘奥が濡れて行く。
スコールが閉じていた瞼を薄く開けると、間近にあった熱を滾らせた褐色の瞳に貫かれ、スコールは思わず太腿をきゅっと閉じていた。

 すっかりスコールの咥内を自分の唾液で濡らして、バッツはようやく唇を放す。
はあ、とまた大きく呼吸しながら、スコールはくったりとベッドに沈んだ。
そうしてベッドに横たわる、制服姿のスコールを見て、バッツは言いようのない興奮を覚えていた。


「スコール。これ、脱がさなくても良い?」
「ふ……?」
「汗とかさ、シワとか。心配だったら」
「……別に……洗えば良いから。夏服だし……」


 季節柄、まだしばらく着る予定はないから、と言うスコールに、バッツの鼻の孔が膨らんだ。
判り易いバッツの反応に、そんなに制服が好きなのか、と思うスコールだったが、それが正解から少しズレている事には気付かなかった。


(でも……バッツも、今日は、このままが良いし。……俺もそう言う趣味があるのか…?)


 ブレザー風の衣装に身を包んでいるバッツを見ながら、スコールはそんな事を考える。

 バッツの指がセーラーカラーの襟元に結ばれたリボンの端を摘まんで、ゆっくりと引っ張って解く。
スコールが襟元の緩みを感じている間に、リボンがするすると解けると、バッツは其処に顔を近付けた。
鎖骨にちゅう、と吸い付かれるのを感じて、ピクッとスコールの体が震える。


「んっ……!」
「ん、ちゅ……んちゅぅっ…」
「あぅ……ふ……っ」


 一回、二回と、同じ場所を強めに吸われる。
ちくんとした痛みが続くのを受け止めていると、バッツは最後に宥めるように其処を一舐めして唇を放した。
襟から見え隠れする鎖骨の場所に、くっきりと残った赤い花を見て、バッツが満足そうに目を細める。


「なんか、悪いことしてるみたいだな」
「ん……?」


 また首元に唇を寄せ、柔くキスをしながら呟いたバッツに、何のことかとスコールが首を傾げると、


「スコールが高校生なの、判ってる事だったんだけど、制服だからこう、余計に実感が沸いてさ。イケないこと教えてる大人になった気分って言うか」
「……それで興奮してるんじゃないか、あんたは」
「バレてた」


 スコールの指摘に、バッツは否定もなく笑って、スコールの耳の下にキスをする。
スコールはその感触に熱に浮いたように目を細めながら、


「あんたが、大人、なんて……そんな格好しといて、全然大人になんか、見えない……」
「そう?そんなに違和感ない?」
「……ガキっぽい」
「えー。せめて同い年とか、先輩くらいでさぁ。この間だって、あのサイファーってのに見付かるまで、全然疑われてなかったんだぞ」


 だから子供っぽいのでは、とスコールは思うが、とは言えバッツが自分よりも三歳も年上なのは間違いない。
そう考えると、とスコールは覆い被さる青年を見て、


「じゃあ……バッツ先輩、って呼べば良いか?」
「……!」


 浮かんだ言葉を戯れのような気持ちで口に出すと、バッツの眼が解り易く輝いた。
何がそんなにと思いながらスコールが首を傾げると、バッツはずいと顔を近付けて来て、


「もう一回」
「……バッツ、先輩?」


 ねだるバッツに応じて見れば、またバッツの瞳が輝く。
犬の尻尾でもあれば、ぶんぶんと振っていそうな程に判り易く喜ぶバッツの反応に、スコールも妙に楽しくなって来る。


「先輩」
「うん」
「……変だぞ、あんた。そんなに嬉しいか?」


 くすりと笑いながらスコールが言えば、バッツは大きく頷いた。


「だってスコールがおれをそんな風に呼んでくれることってないだろ」
「当たり前だ」
「今日だけ。今日だけで良いから、それでお願い」


 一生のお願い、とばかりに真剣な顔でねだるバッツ。
それにスコールが頷いてやると、バッツは喜び一杯にスコールを抱き締めた。

 ちゅ、ちゅ、と頬に眦にキスをしてくるバッツに、スコールは目を細めてそれを受け止める。
随分と心地良く感じるようになったキスの雨に身を任せていると、固いものがスコールの太腿に当たった。
一週間ぶりになるその熱への期待に、スコールの体の奥で燻っていた熱が花開いて行く。

 セーラー服の下にバッツの手が入って来て、スコールの肌を滑って行く。
ブラジャーの上に大きな手が添えられて、優しく揉まれると、スコールは心臓の早鳴りに気付かれはしないかと緊張する。
揉みしだく手は少しずつ強弱をつけるようになって、いつの間にか両手ともが服の中に潜り込んでいた。


「んっ……、う、ん……」


 バッツの腕に持ち上げられて、セーラー服の裾がたくし上げられていく。
インナーも一緒に上がって行って、肉の薄い腹が露わになった。
少しひんやりとした空気が腹を撫でて、スコールは自分の体温が上がり続けているのを自覚する。


「…バッ、ツ……、先、輩……」
「……っ」


 上がる呼吸の中で、目の前の男───先輩を名乗る青年を呼べば、ごくりと喉を鳴らす音が聞こえた。

 バッツの片手がスコールの背中に回って、ブラジャーのホックが外される。
緩んだブラジャーの下に手が入って、そのまま上へとずり上げられた。
形の良い乳房が転び出て、ツンと膨らんだ乳首がバッツを誘う。
バッツはその蕾にぱくんを食んで、ころころと舌先で小さな実を転がした。


「んっ、ん……っ!」
「ん、は……はぷ、ちゅぅ……っ」
「あぁ……っ!」


 舌先で唾液を塗りたくった乳首を、バッツは窄めた口で吸った。
敏感な先端を吸う力に、スコールの体がビクビクと跳ねる。
反対側の乳首が親指と人差し指に摘ままれて、またスコールの唇から甘い声が漏れる。
クイ、クイ、と乳首を引っ張って、固くなって行くその先端に、爪先が宛がわれた。
カリカリと乳頭を引っ掻かれると、スコールは痺れるような官能に体を弓形に反らす。


「あっ、あっ、んぁ……っ、は、あ……っ」
「乳首、気持ち良い?」
「あ……う、うぅん……っ♡」


 舌先で乳輪と乳首の境目を舐めながら問うバッツに、スコールはふるふると首を横に振る。
しかしその声は判り易く蕩けていて、スコールが感じている事がよく分かる。
そんなスコールにバッツはにんまりと笑って、


「嘘吐きな後輩には、先輩から指導だぞっ」
「は?えっ、あっ、あんっ♡やっ、摘まむな、あっ!」


 きゅうっ、と左右の乳首を摘まみ引っ張られて、スコールは高い声を上げる。


「んや、あっ…あぁ……っ!乳首ぃ…んっ、伸びる……っん♡」
「こうやって、先っぽコリコリするの好きだろ?スコール」
「あ、あ、っは、あっ……!やぁ、はぁ……っ!」


 引っ張られた所為で感覚神経が敏感になった所で、バッツは爪先を乳頭に当てて擦った。
少し伸びて尖り気味のバッツの爪が、カリカリと先端を引っ掻く度、スコールの胸には甘い電気が奔る。
絶えず背中に走る、ぞくぞくとした官能に、スコールの躰が火照り汗ばんで行く。


「んあ、あっ、あっ……!や、バ、バッツ……うんっ♡」


 爪に苛められる快感に悶えていたスコールを、きゅうっ、とまた引っ張る指。
咎めるようなタイミングのそれに、スコールがバッツの顔を見れば、褐色の眼が言わんとするものが判って、


「バッツ、ん、先、輩……ん……っ」


 息を切らしながら呼び方を直せば、ご褒美のようにキスが与えられた。
無防備に緩んだ口の中に、厚みのある舌が入って来て、スコールの舌を絡め取る。

 “先輩”“後輩”なんて呼び合うだけで、体が熱くなるなんて変だ。
スコールはそう思うのだが、“先輩”と呼ぶとバッツは酷く嬉しそうで、彼に“後輩”と言われて鼓動が逸る自分がいる。
あと数年、自分が生まれるのが早かったら、ひょっとしたらそんな現実があったりもしたのだろうか。
同じ学び舎で過ごして、顔を合わせたらバッツの事を“先輩”と呼んで、あの日のように、人目から隠れた体育館の裏で熱を交えたりしたのだろうか。


(そんな事で、……俺、ああ……濡れて、る……っ)


 ありもしない事を想像して、まるでそれを望んでいるかのように、スコールの蜜が溢れ出す。
スカートの中で太腿を擦り合わせて、増して行く熱を誤魔化そうとするけれど、無駄な努力だった。
あの日、最後までねだる事が出来なかったものを求めて、スコールの恥丘が疼き出す。

 バッツの唇が離れると、スコールの濡れた唇から、はぁっと甘い吐息が漏れた。
ふわふわと夢の中にいるような蒼の瞳が、離れて行くバッツの顔を見詰めている。


「せ…、先輩……んっ……」
「スコール……」


 スコールの声がいよいよ蕩けているのを聞いて、バッツの声も低くなる。
見詰めるブラウンの瞳に、分かり易く昂ぶりが映し出されていた。

 スコールの手が下肢へと降りて、スカートの端を摘まむ。
両手で摘まんだスカートの裾を持ち上げて、スコールはバッツの前に足を開いて見せた。


「っは……先、輩……、こっち、も……」


 触って欲しい、と差し出した其処は、レース付きの可愛らしい下着がある。
バッツは薄く肌色を透かせて見せている其処に手を伸ばし、双丘の形にぴったりと沿うそれに指を滑らせた。
ぴくん、とスコールの白い太腿が震え、スコールの呼吸がまた一つ上がる。


「っは…はぁ……っ、ん……っ♡」


 すり、すり、と下着の上から陰唇を辿る指。
焦らすようなもどかしい触れ方に、スコールは持ち上げているスカートの端を強く握って、バッツの次の行動を待っていた。

 そんなスコールを見詰めながら、バッツの劣情がむくむくと膨らんで行く。
求めて自分でスカートを持ち上げているスコールの姿の、いやらしくて可愛い事と言ったら。
秘園を隠す布地は、数日前に其処を見た時にはシンプルなものだったと思い出すと、あれはきっと普段遣い用のものなのだろう。
だがバッツが見慣れているスコールの下着は、今日のようにもう少しデザイン性が凝っていて、見られる事を意識している節があった。


(おれに見られるって、そう思いながら選んでるのかな)


 平日、バッツと逢うつもりのない時に穿いていたものとは違うもの。
今日のような日は、バッツの事を想いながら、バッツに見られるのなら、と考えながら下着を選んでいるのだろうか。

 可愛い。
バッツはそんなスコールが可愛くて仕方がなかった。
そんな事に気付いただけでも、あの日、きっと怒られると予想もしつつ、彼女の学び舎に潜り込んだ甲斐があったとバッツは思う。


「は……、せ、先輩…ぃ…、早く、ぅ……っ」


 撫でるばかりのバッツの指に、スコールが耐え切れなくなった声で先をねだった。
はっと我に返ってバッツが見れば、スコールのショーツは既にお漏らしをしたように濡れていて、ベッドに敷いた防水パッドに染みが出来ている。
焦らされ続けて辛かったのだろう、スコールが涙を浮かべてバッツを見詰めている。


「ごめんごめん。うん、……ふふ」
「……ん、う…?」
「なんでもない、スコールのこと考えてただけ」


 思わず放ったらかしにしてしまったことを詫びつつ、不安げな瞳を向ける恋人を、バッツはキスであやす。
背一杯の勇気でねだったら焦らされて、ひょっとして何か怒らせたかと不安になったスコールだったが、バッツのキスでほうっと胸を撫で下ろした。


「焦らしちゃったお詫び。良い?」
「……ん……」


 バッツの指がショーツのサイドにかかって、スコールに先への合図を送る。
スコールが小さく首を縦に振ると、バッツはゆっくりとショーツを下ろして行った。
スコールも少し腰を浮かせてその手を援け、裸の自分を晒す事を受け入れる。


「スカート、そのまま持っててな」
「……わかった……」


 いつまでもスカートを捲り、自分で秘部を晒している格好である事はスコールにとって恥ずかしかったが、バッツが言うならと頷く。

 バッツはスコールの太腿を撫でながら、そっと力を入れて足を大きく開かせる。
つやつやと蜜に濡れた膣がバッツの前に差し出され、ひくん、ひくん、と震えていた。
バッツは其処に徐に顔を近付けて、伸ばした舌で双丘をぺろりと舐める。


「うんっ……!」


 ビクッ、とスコールの躰が竦む。
スカートを握るスコールの手に力が籠り、手繰るように胸元に寄せられる。
ふう、ふう、と息を殺すスコールの呼吸を聞きながら、バッツはスコールの股間に顔を押し付けた。


「や…っ、あ……っ」
「んん……、ん、ちゅぅ……っ!」
「ふくっ♡んっ、うぅ……っ」


 窄めた唇で陰唇を吸われて、スコールの体が仰け反る。
ようやく直接の刺激を貰えた事で、スコールの奥から悦びの蜜が溢れ出した。
次から次へと溢れ出してくるそれを、バッツは舌で丁寧に舐め啜って行く。


「ふ、ふぅ……っ!ん、う…、うんっ♡」
「今日もおまんこびしょびしょだな」
「んぁ……っ、喋っちゃ、や……っ♡」
「ふふ」
「うぅ……っ♡」


 笑うバッツの鼻息と、舌の動きや唇の震えが、濡れそぼった肉ビラを擽るのが堪らなく恥ずかしい。
恥ずかしいのに、感じてしまって、スコールの呼吸は逸って行く一方だ。

 バッツはスコールの陰唇を両手で広げると、舌を伸ばして入り口を突いた。
つん、つん、と舌先で触れられる感触に、ビクッとスコールの太腿が跳ねる。
じゅわりと溢れ出した蜜を堪えようと、スコールが足を閉じようとするが、バッツはそれを肩で阻んだ。

 じんじんと響くように広がる緩やかな快感の波に、スコールの躰が捩られる。
もぞもぞと落ち着きなくしているスコールの、つんと膨らんだ小豆に目をつけて、バッツはそれをぱくりと食んでやった。


「ひぅっ♡あっ、やっ、バッツ……!」
「んちゅぅっ♡」
「うぅんっ♡」


 バッツのお陰で敏感に育てられている其処。
予告もなく吸い付かれてスコールが抗議するが、強く吸われると言葉は喘ぎに塗り替えられた。


「んちゅ、ちゅっ、ちゅぅっ♡」
「あっ、あっ♡やっ、クリ、あぁっ♡バ、先輩、あぁっ♡」


 吸われる其処から、頭の天辺まで、一気に駆け抜ける快感に、スコールはいやいやと頭を振る。
そんなスコールに、バッツは吸うのを辞めて、今度は舌を当てて転がし始めた。


「は、はぅっ、ひぅう……っ♡ん、んっ、」
「んは……おまんこも、解そうな。んっ」
「や、両方なんて……あぁっ♡は、ん、やぁ……指ぃ…っ、あっ、入って来るぅ……っ!」


 クリトリスを丁寧に丹念に嘗め回しながら、バッツは膣に指を挿入した。
ぶるぶると震えるスコールの手から力が抜けて、持ち上げていたスカートがふわりと落ち、股間に顔を埋めているバッツの頭を隠した。
が、バッツは構わず、ちゅうちゅうとクリトリスを啜りながら、指を円を描くように動かして、締め付ける陰唇を解そうとする。


「あ、あ、やぁっ♡はっ、だめ、せんぱ……あぁっああ♡」


 ベッドに後頭部を押し付け、背中を撓らせてビクビクと四肢を弾ませるスコール。
バッツは熱と淫らな匂いで充満したスカートの中で、ふんふんと鼻を鳴らしていた。


「やっ、やっ♡んっ、来る……っ!イ、イくのっ、あぁ……!おまんこ、あふっ、クリぃっ♡」
「んちゅ、んちゅうっ♡ぢゅるっ、ちゅぅっ」
「ああぁ、ああっ♡クリだめ、おまんこ、ああっ♡掻き回しちゃ、はっ、やだ、やぁあっ♡」


 容赦なく襲い掛かって来る強烈な快感の波に、スコールは涙を浮かべながらぶんぶんと頭を振った。
身を捩って逃げを打つも、クリトリスを強く吸われると、腰全体から力が抜けてしまう。
限界を訴える躰に倣って、スコールの膣はきゅうきゅうとバッツの指を締め付けた。
其処にバッツは二本目の指を挿入し、指をそれぞれ左右に広げて、くぱあ、と蜜壺を開かせる。
我慢の飛沫を吹いているその奥を、爪先でくりゅっと擦ってやれば、


「あっ♡あっ♡あーーーーーっ♡♡」


 バッツの頭を太腿で強く挟みながら、ビクッ、ビクンッ、と大きく躰を震わせた後、スコールは蜜潮を吹いて絶頂した。
スカートの中で吹き散った飛沫が、バッツの喉元を濡らす。
それをバッツは受け止めながら、スコールの絶頂が終わるまでクリトリスを吸った。

 悲鳴にも似た高い嬌声が、広くはない部屋に反響して鎮まって、幾何か。
いつまでも痙攣を続けているスコールの膣肉から、バッツはゆっくりと指を抜いた。


「あ……ひ…っ♡は……っ♡」


 媚肉を舐める指の感触に感じ入りながら、スコールは茫洋と瞳を彷徨わせていた。
強張ったまま戻らない体をベッドに深く沈め、見慣れた天井をぼうと見詰める。
そんな状態でも、バッツの舌がツンッと淫核を掠めれば、甘い声が漏れた。

 バッツがようやくクリトリスを開放する。
体を起こし、スカートを捲り上げてやれば、煌々とした白球の下に、さくらんぼのように色付いて膨らんだクリトリスが晒された。
過剰な刺激から身を護る為の皮もすっかり捲れて、ぴくぴくと小刻みに震えているその味を思い出して、バッツはその名残のある唇を舐める。

 すっかり制服を乱して、ビクッ、ビクッ、と四肢を痙攣させて、シーツの波に沈む恋人を見ながら、バッツはベッド横のチェストに手を伸ばした。
手探りで引き出しを開けて、コンドームを取り出す。
スコールはそれを意識の隅で見て、やっと、と思った。


(バッツ…バッツの……やっと……)


 はっ、はっ、と息を整えながら、スコールは高鳴る鼓動を抑えられない。
バッツも心なしか逸るような手つきでコンドームを開けると、スラックスの前を緩めて下着ごと下ろした。
顔を出したペニスは血管がくっきりと見える程に滾っていて、それを見たスコールの膣がきゅうんと切ない疼きを増した。


「は……っ、スコール、良いよな……?」


 ペニスにコンドームを被せ、我慢も限界と言う声でバッツが言う。
スコールはそんなバッツの顔を見詰めながら、自らの手で陰唇の口を開かせる。


「バッツ、先輩…の…大きいの……っ♡ここに、ほし……っ♡」


 熱に濡れた瞳に見詰められ、いやらしいおねだりをする後輩に、バッツの背中にぞくぞくと興奮が駆け上る。

 バッツがペニスをスコールの秘部に宛がうと、ドクンドクンと脈打つ感触がスコールに伝わった。
は、は、とスコールの呼吸が上がって、ヒクつく陰唇から、透明な蜜がとぷりと溢れ出す。
はやく、とスコールの濡れた唇がねだった直後、バッツは一気に腰を推し進めた。


「んぁあああっ♡」


 ずぷぷぷっ、と一息に深い場所まで挿入されて、スコールは嬌声を上げる。
スコールにとっては、体育館の裏でバッツに愛された時からようやくの貰えた熱だ。
ずっと待ち侘びて求めていた愛しい人の愛情に、スコールの体は堪らず二度目の絶頂へと上り詰めた。


「あぁあっ♡ああんんんっ♡」
「ふっく、ううっ!スコー、ル……っ!」


 我を忘れて喘ぐスコールの声を聞きながら、バッツはきゅうきゅうと絡み付く肉壺の感触に耐える。
バッツを咥えた陰唇から、プシュッ、プシュッ、と蜜が吹いて、防水シーツに小さな染みが幾つも飛び散る。


「ふあっ、あっ……!は、ぁあ……っ」
「っは、っは……スコール、動くよ……っ」
「あっ、待、んぁっ♡あっ、あぁっ♡」


 波の連続に息を切らせるスコール。
バッツは彼女が落ち着くまで待ちきれずに、短い断りだけを入れて、腰を振り始めた。
じゅぷっ、じゅぷっ、と蜜塗れの肉壺を太いものが激しく出入りして、スコールの濡れた唇から甘い喘ぎ声が引っ切り無しに上がる。


「あっ、あっ、あぁっ♡んぁ、先輩、だめっ、あぁっ!」
「ん、スコールの、おまんこ…っ!やっと、っは、入れた……っ!」
「は、はぁ、先輩、あぁ……ッ!先輩の、んぁ、おちんぽ、あぁあ……っ!」


 スコールの背中を抱き、零すように呟かれたバッツの言葉。
それを聞いた瞬間、彼もずっと自分を求めてくれていたのだと判って、スコールの躰中に歓びが湧き上がる。
媚肉もバッツのそれの形にぴったりと寄り添い、奥へと誘うようにうねって止まらない。
バッツはそのいやらしい動きに誘われるままに、スコールの恥丘奥を何度も突き上げる。


「ふっ、あふっ♡激し、あっ、大きい、よぉっ♡んんっ♡」
「おまんこ、うねって、気持ち良い……っ!吸い付いてきて、全然、離れてくれなくて……っ!」
「せん、先輩の、おちんぽもぉ……っ!太くて、はっ、ドクドクして…っ♡んぁっ、あっ♡やぁっ、深いとこぉっ!届いてっ、あぁっ♡」


 喘ぎ身を捩るスコールの腰を、バッツの両手が捕まえる。
力の籠ったその感触に、ぶるりとスコールの腰が震えて、膣奥がペニスを締め付けた。
艶めかしく戦慄きながら絡み付く沢山の粒の感触に、バッツが息を詰める。


「も、ほんと……っ、エッチな後輩、だよな……っ!」
「はっ、あっ、あぁ……っ!あっ、あっ、バッツ、先輩……っ!あぅんっ♡」
「こんな子、同じ学校に、通ってたら……はっ、おれ、勉強どころじゃ、なくなりそ……っ!」


 興奮に染まった声で、独り言のように告白しながら、バッツはスコールの胸に吸い付いた。
蜜奥をペニスで力強く突かれるだけでも堪らないのに、敏感な乳首を吸われて、スコールの躰が海老ぞりに反る。


「んぁ、先輩、やだぁ……っ!あっ、乳首、んぁっ♡ひぃんっ♡」
「んっ、ちゅっ、んちゅっ…!っは、はぁ、スコール、スコール……っ!」
「はっ、はぅっ、あぁっ♡んや、また、大きく、うぅんっ♡もう、先輩でっ、おまんこ一杯っ、なってるのにぃっ♡」


 ずんずんと激しく突き上げるペニスは、今までにない程に太く成長し、スコールの膣を一杯に満たしていた。
胎の奥から伝わるその存在感に、スコールは自分の躰がまた淫らに塗り替えられていくのを感じる。
いつかはそれを怖いと思う事もあったのに、いつの間にか、それがバッツの色に染まるならと、嬉しく思うようになった。


「はぁ、はっ、先輩……っあ♡んっ、ふぅぅうっ♡」


 躰の奥にある、芯から湧き上がって来る衝動と劣情。
逆らう術など知らないそれに身を委ねるように、スコールはバッツの背中に腕を回す。
ブレザー風の制服の背中をがむしゃらに握り締めて、ネクタイを留めたバッツの首元に顔を埋める。
見慣れない制服姿でも、いつもと同じ恋人の匂いがして、スコールの躰に今日一番の快感の波が襲う。


「はふっ、はうっ♡あぁぁーーーーーっ♡」


 ビクンッ、ビクンッ!と大きく体を波打たせながら、スコールは絶頂した。
深くまでペニスを咥えた膣の奥から、彼女の熱の証とも言える蜜が溢れ出す。
躰がそれの止め方を忘れたのだろう、スコールはバッツが秘奥を突き上げる度に、ぷしゃっ、ぷしゃあっ、と潮を吹いた。


「はうっ、はひぃっ♡先輩っ♡ああっ、だめぇっ♡おまんこっ、ああっ、そんなっ、奥までじゅぽじゅぽしないでぇっ♡」
「はっ、はっ、はぁっ、はぁっ…!スコール、んっ、はぁっ!」
「イく、イくぅっ♡止まんないぃっ♡おまんこ、漏れるのっ♡また止まんないぃいっ♡」
「いい、良いよ、スコール…っ!一杯、一杯イっていいからっ!おれのちんぽで、一杯イかせてやるからさっ」
「あ、あ、あぁっ♡先輩、あぁっ、バッツ、バッツぅっ♡あう、はぁあああんっ♡♡」
「ううううっ!」


 バッツの腰に足を絡めて、しっかりと全身で抱き着きながら、スコールは何度目になるか判らないまま果てを見る。
同時に目一杯に締め付ける膣の中で、バッツも限界を迎え、射精を果たした。

 はあ、はあ、と二人の激しい呼気が繰り返される。
スコールは、掻き抱くように背中に回されたバッツの腕の中で、ビクッ、ビクッ、四肢を震わせていた。
胎内にはまだ逞しい感触を残す雄があって、媚肉が刺激を欲しがって絡み付く。
きゅう、きゅうん、と不規則なリズムを以て締め付けては緩む肉褥の感触に、バッツも腰が痺れるのを感じていた。


「は、は……、っは……」
「あ…ふ……んぅぅ……っ♡」


 スコールを抱き締めたまま、バッツがゆっくりと腰を引いて行く。
ぬるぅう、と滑って行く竿の感触に、スコールが悩ましい声を上げた。
逃げて行く肉竿を引き留めようと、きゅうっと膣が締まる。
その感触にバッツが「うぅ……っ」と苦しげに呻きながら、なんとかペニスを抜き切った。


「はぁ…っは……スコール……」
「…バ、…ツ……、ぁ……ん……っ♡」


 恋人の名前を紡ぐのも儘ならない様子のスコールに、バッツは深いキスをする。
絡み合う舌がくちゅくちゅと音を立てて、スコールを耳の奥から犯していた。
咥えるものをなくした恥部がヒクヒクと疼くのが判って、スコールはもどかしさに身を捩る。


「ん、ぷ……ちゅ……っ♡」
「ちゅぷ…っふ、……はあ、…スコール……」
「…っは…はぅ……バッツ、ぅ……♡」


 キスを辞めれば、紡がれるのは恋人の名前。
その声が、もっと、と求めているのが明らかで、バッツの熱はまた集まった。




 何度交わったか、その間にスコールが何度イったのか、バッツにも判らない位に濃厚な夜だった。
気付いた時には、日付がとうに変わって久しい時間になっており、スコールは起き上がる事も出来ない状態。
疲労もあって瞼も重い様子の彼女を抱いて、バッツはシャワーを浴びる為に風呂場へ向かう。

 熱すぎない温度のシャワーで、バッツはスコールの体を清めてやった。
湯冷めして風邪を引かないように、手早く体を拭いてベッドに戻る。
防水シーツのお陰で守られた寝床に潜り込んで、バッツはスコールを抱き締めた。


「はー……なんか、すっごい興奮したなぁ」
「……」


 しみじみと呟いたバッツの言葉に、スコールの頬が赤くなる。


「…あんた、本当に制服好きなんだな」


 今夜のバッツの興奮振りと、先日の学校での出来事を重ねて思い出しながら、スコールは言った。
バッツはその言葉に、眉をハの字にして笑う。


「うーん、まあ、それもなくはないけど。制服を着てるスコールが好きなんだよ」
「……だから、制服が好きなんだろ?」


 何が違うんだと首を傾げるスコールに、バッツは説明が難しいな、と頭を掻いた。


「おれがよく見てるのは、私服のスコールだからさ。そう言うのとまた違って、可愛いなあって思ったんだよ。あっ、私服のスコールがイヤなんじゃないぞ。いつも可愛いって思ってるのはホントなんだから」


 真っ直ぐに告白してくるバッツに、スコールの耳が熱くなる。
何度も「可愛い」と言われると、スコールはどう言う顔をして良いか判らない。
赤らんだ顔を隠すように、もぞもぞと布団に潜って行くスコールを、バッツはまた可愛いなあと思いながら見ていた。


「それに、スコールに“先輩”って呼んで貰えたのが嬉しくって」
「……それも意味が判らない」
「えー。スコールもちょっと興奮してなかったか?」
「……知らない」


 ぷい、とスコールはバッツに背中を向けて丸くなる。
拗ねた時のスコールのその仕種に、バッツが冗談だよと言いながら抱き着いて来る。
布団の中は二人ともに裸だから、厚みのあるバッツの胸が背中に当たって、思わずスコールはどきりとした。
それを隠して丸くなっていると、


「はーあ、おれもスコールと一緒の学校に行けたらな」
「女装してか?うち、女子校だぞ」
「いや、それは、ちょっと。うん。そうじゃなくて、共学の所でさ。そしたら本当にスコールと先輩後輩になれたなぁって思って」
「……」
「スコールは、おれとそう言うのは、やだ?」


 耳元で囁くように訊ねるバッツ。
スコールは少しの間考えてから、


「……やだ」
「ええ。なんで?」


 判り易く残念そうに、その理由を問うバッツに、スコールは唇を尖らせる。
その脳裏には、交流授業のあの日、スコールが教室に戻ってからクラスメイト達に囲まれた光景が浮かんでいた。

 あの日、学食と言う沢山の人目に着く場所で、バッツはスコールに抱き着いた。
幼馴染たちとの交流の場面はあれど、ああも遠慮なくスコールに接した男子生徒はいない。
それもスコールが振り払わないとなれば尚更で、更にはバッツを連れてスコールが一時逃亡したのも、クラスメイト達にとってはそれはそれは大事件だったのだ。
スコールが帰って来るまで、リノアやセルフィが代わりに質問攻めにされていたのも、無理はあるまい。

 それは良いのだが、スコールにとって良くないのは、謎の男子生徒───バッツについて聞いて来るクラスメイト達の、好奇心満々の眼だ。
何処の誰なのか、どう言う関係なのか、それだけでなく、恋人はいるのか、なんてことまで聞かれた。

 そう、バッツはモテるのだ。
スコールはティーダやその友人からの話でしか聞いた事はないが、バッツはスコールと出逢うまで、女性関係が忙しなかったと言う。
その関係はバッツが女性から告白される事から始まり、長くて数ヵ月で別れが訪れると、それから数日後には別の女性から告白されていたとか。
バッツ自身は、自分がモテると言うことに全く関心はなく、そう言う自覚もないそうだが、かと言って周りがそれを放っておいてくれる訳もない。


(あんたと俺が、同じ学校に通ってたら……きっとあんた、俺のことなんか見ない。他に一杯、告白して来る奴がいるのに、俺のことなんて……)


 それに、とスコールはまた考える。


(ヒヤヒヤしてしょうがない。いつあんたの気持ちが変わるかって、他の誰かを見るかって。そんな怖いの、俺の心臓が持たない)


 今だってスコールは、そう言う気持ちを抱えている。
どうしてバッツが自分の事をこんなに好きだと言うのか、スコールはこうして熱を混じり合う関係になっても、判らないままだった。
それはスコールが自分自身に自信が持てない事に起因しており、話を聞けばバッツは「絶対そんな事有り得ない」と言い切るのだが、過ぎる不安はスコールにとって大きくて、そんな恐怖を口にする事も出来ないのだった。

 なあなあ、と背中にくっついて甘えてくるバッツに、スコールは一つ息を吐いて、くるりと向き直る。
お、と目を丸くしたバッツに構わず、ぽすっと胸板に頬を押し付けて抱き着いた。


「スコール?」
「……」
「眠い?」


 呼ぶ声に返事をせずにいれば、バッツは眠いものだと受け取ったらしい。
ぽんぽん、と大きな手がスコールの髪を撫でる。


(……バッツは、俺の。俺だけの……)


 どんな形であれ、特別な関係の名がつくのなら、それは自分だけが良い。
そんな心の狭い自分に呆れながら、それでもそれが正直な気持ちなのだと、頭を撫でる手の心地良さに目を細めながらスコールは思った。





バッツに手マンでイかされちゃうスコールってエロ可愛いなと思ったのです。
あと、意外とノってイメプレ的な事を自分から誘う(無自覚)なスコールに夢中になるバッツとか見たいなって。
スコールがセーラー服なのは私の趣味です。良いよねセーラー服。