その匂いに閉じ込めて


 夜更けを過ぎて、朝ぼらけになる頃に、ようやく二人は眠った。
若い躰が逞しいとは言え、流石に何度も続けてまぐわえば疲れるもので、泥に沈むように眠りは深かった。

 一カ月に一回、逢えるか逢えないかと言うものだから、いつもこんな具合で夜を過ごしている。
お陰で朝は大抵、二人揃ってベッドの住人になっていて、活動を始めるのは大方昼を迎える頃だった。
今日も例に漏れず、太陽が昇り始めた内など二人はすっかり夢の中にいて、空腹感でフリオニールが目を覚ました時には、後少しで正午と言う時間。
腕の中でまだ目を閉じている少女の為にも、そろそろ何か食事を用意しないといけない。


(何かあったかな……)


 昨晩の残り物で済ませても良いだろうか。
寝起きのぼんやりとした頭で考えながら起き上がろうとすると、ぎゅう、と腰に絡み付く腕があった。
当然、それは傍らにいる少女のもので、動いちゃやだ、と言わんばかりのその力に、フリオニールはくすりと苦笑する。


「スコール。もう昼だ、何か作るからそろそろ……」
「……んぅ……」


 フリオニールの言葉に、スコールはいやいやと首を振って、フリオニールの横腹に顔を埋めている。
人前では一見して素っ気ない態度を取る事も儘あるスコールだが、彼女は存外と甘えん坊な気質だ。
特に寝起きはそれが顕著で、片時も離れたくないと、全身で示すようにこうやって抱き着いて離れない。
それはとても可愛らしくて、愛されている事も実感できて嬉しいのだけれど、


「ほら、スコールもそろそろ起きて、着替えないと。帰る準備をしないといけないだろ」


 スコールが此処にいられるのは、一泊が限界だ。
長期休暇の時期でもない今、土日が明ければ当たり前に学校がある。
大学生のフリオニールと違って、全日制の進学校に通い、優等生で知られているスコールは、しっかりと出席しなければいけない。
特急列車を使っても片道3時間とかかるのだから、明日の朝出れば良い、なんて事は出来ない。

 しかしスコールは、聞き分け悪くフリオニールに抱き着いたまま離れなかった。
しょうがないなあ、とフリオニールが濃茶色の髪をくしゃりと撫でると、そろりとブルーグレイが上目遣いをして、


「……そんなに急いで準備しなくて良い……」
「そう言う訳にいかないだろ」
「良いんだ。……帰りのチケット、指定で夜の取ってる」


 時間も席も指定された切符を用意したから、その時間にさえ間に合えば良い。
そう言うスコールの言い分は分かったが、かと言っていつまでもベッドの住人でいる訳にもいくまい。
ともかく起きて着替えないと、その為にどうやってこの甘えん坊な恋人を説得しようかと考えるフリオニールだったが、


「……!」


 すり、と太腿を摩るスコールの手を感じて、フリオニールはぞくりとした。
その手が更に滑って、裸身のままのフリオニールの中心部に近付き、指先でその先端をつんつんとつついて来る。


「っこら、スコール」
「……」


 焦った表情で叱るフリオニールを、スコールはちらと見遣って、その蒼が悪戯に弧を作る。

 スコールはフリオニールのペニスを握ると、しゅこしゅことそれを上下に扱き始めた。
昨晩たっぷりと彼女の膣内を味わい、何度も精を吐き出したフリオニールだが、代謝の良い若い男の体は、一眠りでエネルギーを取り戻していた。
況してや触れているのが恋人の手となれば尚更、ぞくぞくとした官能と共に、早々に鼻息が荒くなるのも無理はなく。


「ん、ふ……っ、スコール、駄目だって……!」
「……こっちは、そうは言ってない」


 眉根を寄せて刺激に耐えようとするフリオニールに、スコールはうっそりと笑みを浮かべる。
下肢を辛うじて隠していたシーツを剥いでしまえば、手淫で半勃起までしているペニスが露わになった。
正直なその反応に、スコールの目が嬉しそうにとろりと溶ける。

 スコールはペニスを扱きながら起き上がり、フリオニールの耳元に唇を寄せる。


「フリオ、もう一回……」
「んっ……昨日、一杯しただろ」
「昨日は昨日だろ」
「……これ以上したら、お前に、はっ……!無理をさせる、から……っ!」
「平気だ。俺は、もっと……フリオニールと、エッチ、したい」


 吐息を交えた囁きに鼓膜を擽られて、フリオニールの背筋にぞくぞくとした感覚が奔る。
意図的に興奮を煽ろうとする耳元の声に、正直な反応を示してしまうのが、雄のどうしようもない所だ。
スコールの手の中で、ペニスがむくむくと膨らんで行き、まだ冷め切らない昨夜の熱が燻り始める。


「帰ったらまた、どうせ当分逢えないんだから……今、あんたを一杯、感じたい」
「……っ!」


 スコールの言う事は、フリオニールの胸の内にもある事だ。
進学先の選択で、地元を離れる事を選び、恋人とも離れ離れになることは理解していた。
スコールもそれがフリオニールの選択ならと受け止めてくれたが、淋しいと言う気持ちは彼女の瞳にありありと映し出されていたのを覚えている。

 だからフリオニールは、自分が高校を卒業する前に、スコールを抱いた。
それきりにしよう等とは思っていないし、今もこうして、定期的に逢える時間を設けている。
けれど、高校生の時には当たり前に感じていた、“一緒に過ごす”という時間の希少さが、折々に身に染みた。
それは声を聴くだけしか出来ない時よりも、こうして直に逢って共に過ごす一時を重ねる程、離れなくてはならない現実が迫って来るのが苦しく感じられた。

 その苦しさを、離れてしまえば次まで逢えない寂しさを慰める為に、お互いの存在を感じようとする。
体を重ねると、文字通りに繋がる事が出来て、気持ちも心も一つになれるようだったから、自然とそれに行き付いたように思う。
セックスの快感も勿論麻薬のように沁みついて、それが忘れられない事も確かだけれど、其処に伴う想い人の心を、何より感じたくて堪らなかった。


「……フリオニール……」


 耳元で名を呼ぶ恋人の声は、露骨に熱を誘っていた。
ごくりとフリオニールの喉が鳴って、ペニスを遊んでいたスコールの指先が、愛おしむようにその竿をするりと撫でた。

 熱を孕んだフリオニールの瞳を見て、スコールがゆっくりと唇を重ねる。
スコールの濡れた舌が、開けて、とねだるようにフリオニールの唇の間をノックする。
根負けに隙間を許してやると、直ぐに舌が入って来て、フリオニールのそれを絡め取った。


「ん、ん、ふ……あふ……っ」
「ふ……ん……っ」


 ちゅく、ちゅく、と唾液を交換するキス。
もっと頂戴、と言わんばかりにスコールの腕がフリオニールの首に回って、口付けが深くなった。
堪らずフリオニールもスコールの背中を抱き締めて、ベッドへと身を沈めてキスを続ける。


「んちゅ、っは、んふぅ……っ♡」
「ふ、ふぅ……っ、んんっ、んっ……!」
「あむ、あ、ふぅん……っ!」


 どちらともなく深く深く繋がれるようにと繰り返しキスをする。
昨晩の情事の痕跡を残したままのベッドの上で、そんな交わりをしていれば、自ずと昂ぶりも増して来る。

 が────しかし、


「っふあ……は…っは……スコール……ちょっと、待ってくれ」
「んぁ……?」


 フリオニールが精一杯の理性を動員して唇を離すと、スコールは糸を引いた唇を半開きにして、ほうと赤らめた頬で恋人を見た。
折角の再燃した熱を中途にされた気分で、スコールが泣きそうな顔で見詰めていると、フリオニールは言い難そうな表情を浮かべながら、


「あの……ゴムが、もう、ないから」
「……」
「だからちょっとだけ、待っててくれ。コンビニで買ってくるから……」


 縋るように見つめる蒼灰色に、フリオニールは宥める声で言った。

 スコールの背中を抱いていた腕が解け、覆い被さろうとしていた重みも消える。
離れてしまった体温に、スコールはベッドを降りようとするフリオニールの腰に抱き着いた。


「……生で良い……」
「駄目だよ。それは、その、ちゃんと……全部、出来るようになってからだ」


 叱るフリオニールに、スコールはぷうと頬を剥れさせた。
まるきり子供の様相であるが、どちらが正しいのかは明白だ。
そしてその境界線は守らなくては、今後、こうしてフリオニールと逢う事も出来なくなってしまう可能性もある事は、スコールも判っていた。

 駄々をこねる子供のように抱き着いていた腕が離れて、フリオニールは眉尻を下げて笑みを浮かべ、スコールの頬にキスをする。
スコールは愛しい手にあやされつつも、拗ねた表情でシーツに包まった。
そんなスコールがいつまでも待ちぼうけにならないようにと、フリオニールは適当に服を引っ張り出し、手早く着替えて財布を掴む。


「直ぐに戻るから」
「………」
「行ってきます」


 敢えて返事をしなくても、フリオニールは怒らなかった。
近所に出掛ける時だけに使うと言うサンダルを足に引っ掛け、急ぎ足で出て行く。
かちゃん、と玄関に鍵をかける音が聞こえた。

 一人きりになった部屋の中で、スコールはすっかり臍を曲げていた。
昨晩の交わりの熱の名残があるとは言え、フリオニールを誘うのは、理性の強いスコールにとってはそれなりにハードルの高い行為だ。
それに応じてくれたからこそ、フリオニールは必要なものを急いで調達しに行ってくれた訳だが、全くタイミングの悪い事で、スコールはどうにも途中で放り出されたような気持ちになってしまう。

 フリオニールだって、疲れていない訳ではない。
それでも自分に応じてくれようとしている。
それなのについつい我儘を言ってしまう自分に、自己嫌悪する事もあった。


(でも……待ってたら、ちゃんと帰って来る。帰ってきたら、して、くれる……)


 落ち込む気持ちも混じらせながら拗ねているつもりでも、それを考えると、体は期待で熱を膨らませる。

 フリオニールが越えてくれない、最後の一線。
最初から彼は、それを頑なに守り続けており、それは間違いなくスコールと一緒に迎える未来を守る為だった。
それはスコールも判っているのだが、いっそのこと超えて欲しい、と思う事も少なくない。
生まれたままの姿になって、皮膚も溶け合いそうな程に熱を共有しても、薄皮一枚の隔たりだけが消えない。
仕方のない事であり、自分の為だと理解してはいても、どうしてももどかしく感じてしまう事があった。

 中で直に彼を感じたら、どんな風になるのだろう。
スコールはまだ、その感触を、その熱を知らない。
隔たれた今でも、中で彼が膨らみ、鼓動を打っているのを感じると、無性に胎の奥が────子宮のある場所が熱を持つ。
フリオニールの熱が、直接其処に注ぎ込まれたらと思うと、それだけでスコールは濡れてしまう。

 下着も履かないで過ごしているから、じゅわりと蜜が溢れ出す感触がある。
股座を濡らす分泌物に、スコールは包まったシーツの中で太腿を擦り合わせた。
ねとりとしたものが腿にまとわりついて、一層スコールの気分をいやらしいものにする。


(奥に、まだ……フリオニールがいる、気がする……)


 交わりを終えたのは、ほんの数時間前のことだ。
彼の体温を感じていたのは、たったの五分前。
解けた腕が恋しくて、スコールはしきりに体を捩りながら、シーツの中の残り香を確かめていた。

 ふと、ベッドの端に放られた、フリオニールの服を見付ける。
夜着に使っていたタンクトップにそろりと手を伸ばして、掴んでしまったそれを引き寄せた。
鼻を寄せてすんと嗅ぐと、フリオニールの汗の匂いが染みついていて、くらりと頭の芯が揺れる。


(あ……)


 昨晩、何度も鼻先で嗅いだ匂い。
日焼けした肌が汗ばんで火照り、額に球粒になって浮いているのを見た。
普段は目を合わせれば照れ臭そうに逃げるのに、セックスをする時は、真っ直ぐに射抜いてくれる瞳が愛しい。
その目に見詰められる度に、スコールの鼓動は早鐘を打ち、秘奥は彼を早く受け入れたいと疼き出す。


(うぁ……んん……っ)


 彼との濃厚なキスで昂っていた体が、いよいよ燃え上がる。
膣奥がフリオニールを求めてヒクヒクと伸縮を繰り返し、スコールはその感覚に耐えねばと懸命に身を捩っていた。

 主のいないベッドの上で、少女は淫らに腰をくねらせている。
幾らそうやって抗ってみても、本当の意味でそれを慰めてくれるものは、まだ帰って来ない。
咥えるものを欲しがって已まない陰唇は、昨夜の名残を蘇らせて、スコールの意識ごと苛んで行く。


(フリ、オ……フリオ、ニール……)


 皺だらけのタンクトップに顔を埋めながら、スコールは小さく蹲った。
片手がシーツの中に潜り込み、下へ下へと降りて行く。
シーツ一枚で空気から隠していた陰唇に触れると、其処はもうぐっしょりと濡れていた。


「は……、は……ぁ……」


 蒼灰色の瞳は熱に溺れて茫洋と泳ぎ、汗の匂いのするタンクトップを見つめている。
すん、ともう一度鼻で空気を吸い込むと、鼻孔に少し酸っぱさのある匂いが入って来た。
それだけで、秘部に触れた指先に、蜜液が付着する感覚が伝わる。

 その指で、陰唇の口をすりすりと摩れば、


「ん……あ……っ」


 蕩けた声が喉奥から零れて、腰の回りがじんじんと痺れるような甘さに襲われる。
そうっと指先を口に宛がい、押し込んでみれば、媚肉はすんなりと自身の指を受け入れた。


「はう……ぅ……♡」


 白い指が、赤く蕩けた肉壺の中に、にゅぷにゅぷと入って行く。
ほんの数時間前まで、もっと逞しいものを咥え込んでいたから、少女の指など抵抗もない。
代わりに全く埋まらない物足りなさがあって、スコールは我慢できずにつぽつぽと指を前後に動かして入出を繰り返した。


「はっ、はっ、はぁ……っ、あぁ……っ!」


 昼日中のアパートの一室に零れる、甘い喘ぎ声。
小さな窓にはカーテンが引かれたままだが、大した遮光性もないから、部屋の中は十分に明るい。
外では車が行き交う音だったり、誰かの他愛もない話し声だったりがあったけれど、スコールは聞いていなかった。
彼女の意識は、熱を持て余す自分のことだけに集中しており、早く恋人に帰って来て欲しいと願いながら、淫らな悪戯を自分自身に施している。


「あふ……ん、んんぅ……っ」


 入り口を指先で攻めているだけで、彼女の体が満足する訳もない。
微かに残る理性が、駄目だと言っている気がしたけれど、構わず指を膣穴へと挿入させる。


「ふくぅ……んん……っ!」


 根元まで入った指を、クン、と曲げて壁を圧す。
ビクッ、と腰が跳ねて、分泌液がとろりと指に絡み付いて来た。
ローションなどいらない程に濡れそぼった其処で、指を左右に前後にと動かせば、くちゅくちゅ、くちゅくちゅと淫水音が鳴る。


「ふっ、あふっ、んっ……!あ、ふ……っ、うんっ♡」


 指先が肉壁を引っ掻くように擦る度に、細く引き締まった腰がくねくねと踊る。
シーツの中が彼女自身から溢れ出す汗と熱で、じっとりと湿気を帯び、蒸し暑さが募っていた。
段々とまとわりつく布地が鬱陶しくなって来て、スコールは寝返りを打って其処から抜け出す。

 元より乱れたシーツの上で、スコールは夢中になって自慰をしていた。
後から後から溢れ出して来る蜜を、肉壺の中で指を使って掻き回す。


「はっ、はう、あぁ……っ!あ、あ……フリ、オぉ……っ!」


 まだ帰って来る気配のない恋人の名前を呼ぶと、内肉がきゅうっと締め付けて来た。
指が肉壁に挟まれて、窮屈な中で壁をぐっと押してやる。
びりびりと痺れるような官能が彼女の体を駆け抜けたが、


「は、はう……うぅ、んんん……!」


 ふるふると首を横に振る彼女に募るのは、物足りなさと切なさばかり。
それが更に彼女を大胆にさせ、二本目の指を挿入すると、手首から動かして淫道をじゅぷじゅぷと攻め立てた。


「あっ、あっ、あっ!あ、はあ、あぁっ……!」


 タンクトップを引っ掛けたままの手を、胸元へと持って行く。
小さな胸を白い手が掴み、むに、むに、と摘まむように揉んだ。
足りない刺激を追って、昨晩彼に吸われしゃぶられた乳首を摘まむ。


「はう……っ!」


 ちくんとした痛みに似た快感があって、スコールは喉を反らす。
きゅんと締め付けた肉を感じたので、繰り返し乳首を摘まんで引っ張った。


「あふっ、あっ、んぁ……乳首…、あっ♡い、い……っ、おまんこ、もぉ……っ♡」


 乳首を転がすように捏ねながら、膣奥をくちゅくちゅと掻き回す。
足を大きく開き、自分が酷くはしたない格好をしている事は、一応の自覚があったけれど、それが今更理性を呼び戻すことはなかった。
それよりも寧ろ、恋人の家でこんなことをしている事に、興奮さえしてしまう。


「はあ、フリオ、早く……早く、帰って、来てぇ……っ!おまんこずっと、切ないよぉ……っ♡」


 二本の指で膣内を掻き回し、昨晩彼が何度も突き上げてくれた所を探ろうとするけれど、やはりどうしたって一番欲しい所には届かない。
乳首を摘まんで苛めるのも気持ちが良いけれど、昨夜、彼に吸われた時はこの比ではなかった。

 やはり、フリオニールでなくては駄目なのだ。
彼に触れられて、彼の手に溶かされて、あの逞しくて熱い禊に貫かれないと、この体は寂しさが募るばかり。
一ヵ月もそれに餓え続けて、昨晩はようやくそれを得られたが、まだ足りない。


「フリオ…っ、フリオニールぅっ……!ああっ、あっ、んぁああ……!」


 涙さえも浮かべながら、スコールは繰り返し恋人の名前を呼んだ。
その声に返事が来るのはいつになるのか、一分一秒も待ち遠しく思いながら、スコールは淫らな慰めに耽って行った。



 朝から甘えん坊を発揮するスコールの事を、可愛いと思う位には、フリオニールも彼女に首ったけであった。
もっとしたいと誘われれば、肉欲の心地良さを覚えたばかりの若い男の体も、当たり前のように反応を示す。
一ヵ月の間、禁欲と言う程に頑なな事をしていた訳ではないけれど、体温を感じながら囁かれるスコールの声は、夢や想像で過ごした日々を簡単に打ち壊す程の破壊力だった。

 とは言え、セーフティは忘れてはいけない。
彼女の事は何より大事に想っているし、手放したくないと言う、独占欲も混じる程の想いはあれども、何かあれば大変な思いをするのは他でもないスコールだ。
もっときちんと、社会的な責任も含めて彼女を護ることが出来るようになるまでは、とフリオニールは心に決めていた。
時折「……ナマがいい」と言う彼女に、一瞬でも不埒な思考が過ぎる事は、決して面に出してはいけない。

 その傍ら、求めてくれる彼女には、何処までも応えたいと思う。
昨晩、朝ぼらけを迎えるまでまぐわいあって、随分と彼女を疲れさせたと思うけれど、それでもしたいと言ってくれるのなら、フリオニールも吝かではない。
寧ろ嬉しく思う気持ちも当然のようにあって、だから彼女の悪戯の手も振り払えなかった。
フリオニールとて、一ヵ月もの間、彼女と逢える日を待ち続けていたのだ。
その想いがようやく実るも、今日の夜にはもう別れなくてはいけないものだから、それまでに逢えなかったこれまでの分と、また明日から逢えない日々を耐える為に、彼女と言う存在を隅の隅まで感じたい。

 煽ってくれたお陰で膨らんでしまった前を自覚しながら、どうか目立っていませんようにと願いつつ、コンドームを買いに出た。
急ぎ足でコンビニに向かって、コンドームと、それを買う為の羞恥心を誤魔化すように、弁当も適当に購入する。
無気力なコンビニ店員がバーコードを読み取る間、そわそわとした気分が絶えなかった。

 正直に言うと、こうやって歩いているのも少し辛い。
この後の事を考えると、どう宥めても興奮が擡げてしまう自分がいた。
準備の為にと宥めた恋人は、拗ねた様子でシーツに包まっていたけれど、帰った時にけろりとしていたらどうしよう。
食事も買って来たから、食べれば自分の気も紛れるだろうか。
ああ、でも、やっぱり───と膨らむ一方の欲望は、もう一度彼女の熱の褥を感じたがってしまう。

 急いで行って戻ったのに、時間は十分は経っていた。
妙に長く感じる階段を登り切って、ようやく自分の家に辿り着く。
ズボンのポケットから探り出した鍵を鍵穴に入れ、かちゃりと開けて中に入ろうとした時、


「っは……、あっ、あぁ……っ!」


 ドアの隙間から零れて来た甘い声に、どきりと心臓が跳ねた。
そのまま硬直してしまったフリオニールを他所に、その声は部屋の奥から、尚も聞こえて来る。


「あ、んぁ……っ、は……っ、あぁん……っ」


 蕩けたその声は、聴き間違えようもなく、愛する恋人のものだ。
昨晩、耳元で絶えず聞き続けた高い音は、情事の時だけに彼女が発する、甘い毒。
その味をよくよく知っている男は、ごくりと唾を飲みながら、ゆっくりとドアを開けて行った。

 フリオニールの部屋は、昼間になるとカーテンを閉めていても十分に明るい。
窓が南向きにあるので、日中は絶えず日が差すにも関わらず、カーテンは安物で済ませているから当然だろう。
それでも明々とした屋外に比べれば、何処か薄暗さを感じさせる部屋の中、その奥に置いたベッドの上で、少女があられもない姿を晒している。


「あふっ……あ、んぁ……っ、フリオぉ……っ♡」


 部屋の主の帰りを待ちながら、スコールはオナニーに耽っていた。
包まっていた筈のシーツはすっかり剥いで、白い波の上でしどけなく身を捩りながら、開いた足の間に差し入れた手を仕切りに動かしている。
指を咥え込んだ蜜壺が、じゅぷじゅぷと淫らな蜜音を鳴らし、立てた膝が悶えるようにぶるぶると戦慄いていた。
胸元にはフリオニールが脱ぎ捨てたタンクトップを置いて、それごと胸を揉んでいる。
薄手の布地に、ぷっくりとしたポッチが浮いているのが見えて、フリオニールはまた唾を飲んでいた。

 フリオニールは、じっとスコールを見つめながら、後ろ手でドアの鍵を閉めた。
がちゃん、と言うその音が思いの外大きく響いて、はっとスコールが此方を見る。


「フ、リオ……」


 帰って来ていた事など、全く気付いていなかった様子で、スコールは恋人の名前を呼んだ。
夢中で自身を慰めていた手指の動きも止まって、目を見開いたまま、彼女の顔が赤くなって行く。


「あ……あの……俺……」


 開いていた足を閉じ、フリオニールのタンクトップを抱き込むように胸を腕で隠すスコール。
あれだけ淫らに自慰に耽っていたのに、途端に初心な仕草を見せるスコールに、フリオニールは靴を脱ぎ捨てた。
大股でベッドに近付いて来たフリオニールを、スコールが熱と期待と不安の混じった顔で見詰めている。


「スコール……っ!」
「……!」


 手に持っていたビニール袋を放るように床に落として、フリオニールはスコールを抱き締めた。
突然の力強い抱擁に、スコールは目を白黒とさせていたが、フリオニールにそれは見えていない。
背中をしっかりと抱き寄せる腕の力強さに、スコールは安堵と同時に、濡れそぼった蜜壺が期待に甘い痺れを生むのを自覚した。

 フリオニールの手が、スコールの頬に添えられる。
促す力にスコールが顔を上げると、唇が深い角度で重ねられ、舌を捉われ啜られる。


「んん……っ!ん、んふっ……ふぅ……っ!」


 ぢゅる、ぢゅぷ、と咥内から聞こえる唾液の交わる音に、スコールの肩がビクッ、ビクッ、と震えた。
深く深く口付けながら、フリオニールはスコールの躰を押し倒し、ベッドに埋もれたその上に体を重ねた。
直ぐにスコールの方からも腕が伸びて来て、白い腕がフリオニールの首に絡み付く。

 絡め合う舌でお互いを高めながら、フリオニールの手は自身のベルトを外していた。
カチャカチャと急くようにバックルを外す音を聞きながら、スコールの体もまた期待で鼓動を速めて行く。
ズボンの前を寛げ、服を脱ぐのも面倒と取り出したペニスは、昨夜と同じ硬度をすっかり取り戻していた。


「っは…は……っ、スコール……!」
「フリオ……は、やくぅ……っ♡」


 充血しているようにも見えるフリオニールの目を見つめながら、スコールは足を開いた。
差し出した蜜壺に、フリオニールの指が触れて、双丘の膨らみをすりと摩ったが、


「あ……っ、フリ、オ……それは、もう、…良いから……っ」
「……しかし……っ」


 前戯など要らないと、今すぐの挿入を促すスコールに、フリオニールは躊躇いに唇を噛む。
すると、スコールは自らの指で膣口をくぱりと広げて、


「もう……おまんこ、一杯…いじった、から……それに、さっき、した……ばかりだし……」
「……っ」


 フリオニールがここにいない一時、スコールは夢中になってオナニーをした。
昨夜の熱の名残も消えない体を、自らの指で一所懸命に掻き回していたから、其処は十分に蕩けて柔らかい。
見れば赤く色付いた肉壺が、とろとろと奥から蜜を溢れさせ、洪水のように濡れて、てらてらと光っていた。
雄を煽り誘って已まない匂いが其処から溶け出して、フリオニールは頭の芯がくらくらと揺れるのを感じた。

 フリオニールは買ったばかりのコンドームを装着すると、逞しく太く、反り返ったペニスを、ぱくぱくと唇を開閉させている其処に宛がう。
どくどくと鼓動が響くのを聞きながら、フリオニールは自分の呼吸がどうしようもなく上がるのを抑えられなかった。
スコールはそんなフリオニールを見つめ、


「大丈夫だから……、早く、フリオの……おちんぽ……来てぇ……っ♡」


 淫らに甘える恋人の誘いに、フリオニールの理性の糸がぷつんと切れた。
大きな手がしかりとスコールの細腰を掴み、ずんっ、と一気に一物が少女の体を貫き上げる。


「ああぁぁんっ♡」


 昼日中にあってはならない、甘い悲鳴が響き渡った。
安普請のアパートの一角で、反響するそれが消えない内に、フリオニールは力強い腰遣いで動き出す。


「あっ、あうっ、あうんっ♡はっ、はっ、あぁあ……!フリッ、フリオぉおっ♡」
「はあ、はっ、スコール……!スコールの、まんこが……うっ、吸い付いて、うねって……!こんなに熱く……っ!」


 数時間振りにフリオニールを迎え入れたスコールの膣は、昨晩の熱を残し、すっかりこなれて柔らかくなっていた。
それでいてフリオニールに絡み付く媚肉は、きゅうきゅうと強い締め付けを示し、太いペニスに擦られる度に肉ビラを小刻みに震わせる。
そのどれもがフリオニールにとっては堪らない感触で、己の欲望が更に大きく名実ともに膨張していくのが判った。

 フリオニールが腰を打ち付ける度に、スコールの躰は海老ぞりに撓って見せた。
仰け反った躰に、慎ましく膨らんだ胸元が強調され、ツンと尖った乳首が存在を主張する。
フリオニールは其処に唇を寄せて、ぢゅるっ、と乳首を強く吸った。


「ひぅんんっ♡」


 ビクンッ、とスコールの躰が大仰に跳ね、媚肉がペニスを締め付ける。
その締め付けの瞬間が心地良くて、フリオニールはぢゅっ、ぢゅうっ、と何度も乳首を吸い上げた。


「あっ、あぁっ、あうっ♡ち、乳首だめぇ……っ!んぁ、ああっ♡あぁんっ♡」
「っは、は……んぁ……れ、ろ……っは……!」
「ああぁ……!フリオの、舌が……んぁ、あっ、あっ、おっぱい、舐めてるのぉ……あ、ひぅっ、おまんこ、そこぉっ♡」
「はふ、ふっ、んっ、んぢゅぅ……っ!」
「んぁ、おっぱい、しながら、ああっ!お、おまんこしたらっ、はっ、ああっ、来ちゃうっ、イくのぉっ……!直ぐ来るぅううっ♡」


 自分自身で摘まみ性感を育てていた乳首を、愛しい男に強く吸われて、スコールは嬉しそうに啼いていた。
与えられる快感の強さに、シーツを目一杯に握りながら頭を振って身悶える。
いやいやの仕草に見えても、離れようとすれば嫌がって頭を抱くように抱え込むのだから、フリオニールは何度でも乳首を啜ってやった。


「はっ、はっ、あぁっ、あぁあ……!」
「んっ、ぢゅうっ、ふっ、ふぅっ……!ふぅっ、んんっ!」


 フリオニールが乳を吸ってやる度に、膣が呻くように戦慄いて、咥え込んだ雄を苦しめる。
全身で包み込むように竿を舐りながら、締め付けて来る肉褥は、極上の味を与えてくれる。
それをまだ大人になり切れない若者が知れば、二度と離れる事は出来ないだろう。

 スコールの恥骨に、フリオニールの腰がぴったりと密着する。
奥深くまで捻じ込まれたペニスを、スコールの躰はなんなく受け入れ、剰え蕩けそうな程の奉仕欲で雄に絡み付いていた。


「う、うあ、ああ……っ!スコール、スコール……っ!」
「んぁ、フリオニールぅ……っ!すご、フリオのおちんぽぉ……っ!おまんこ熔けちゃ、あうっ、あっ、ひぃんっ♡」
「っは、はぁ、うあ、止まらない……っ!スコール、ずっと……ずっと、このままで……っ!スコールの中に、いたい位に……っ!」
「はっ、ああっ、フリオぉ……っ!おれ、おれも……っんぁ♡フリオ、中にいてぇ……っ!フリオだけ、ああっ、感じてっ、たい、からぁあっ♡」


 目の前の人を無心に求める恋人の告白に、どちらもが昂ぶりを感じていた。
スコールの胎内で、どくどくとフリオニールが脈を打ち、限界が近いことを伝えている。
しかし少しでも長くこの心地良さの中にいたくて、歯を食いしばっているフリオニールに、スコールは息を絶えさせながら手を伸ばし、


「はっ、フリオ……っ!出して、出して……っ!フリオの、せーし、おれの、おまんこにぃ……っ!出してぇえ……っ!」
「ふっ、ふっ……うぅうっ!」
「んぁぅっ♡は、はげひくなっ、あ、あ♡あうっ、ふか、ふかいぃっ♡おちんぽっ、おれのなかでっ、ドクドクゆってぇっ♡ああぁあっ♡」


 スコールの願いの言葉を、本当の意味で聞き入れることは出来ない。
それはお互いに分かっている事だったが、それでもスコールは願わずにいられなかったし、フリオニールも求める彼女の声にこの上ない喜びを覚えてしまう。

 スコールの最奥にある場所を目指すように、フリオニールの律動が一層大きなストロークへと変わる。
ずぷっ、ずちゅっ、ずぷぅっ、と入り口から最奥まで、隙間なく膣を擦り上げるカリ高のペニスに、スコールの体はあっという間に限界を迎え、


「イくっ、イクぅっ♡フリオのちんぽでっ♡おまんこイくぅううっ♡」
「っく、ふっ、うあああ……っ!くぅううっ!」


 ビクッ、ビクンッ、ビクンッ、と大きく四肢を痙攣させながら、スコールはぷしゃあああっと飛沫を噴いて絶頂した。
同時に彼女の肉壺も強い締め付けと共に戦慄きを見せ、咥え込んだペニスを扱き上げるように同じ高みへと連れて行く。
フリオニールの痛い程に張り詰めたペニスから、どくどくと濃い精液が吐き出された。

 夜に何度となく迎えた極まった瞬間と、何ら劣らぬ快感だった。
その一番の大波が去ると、フリオニールは呼吸をする程度の余裕が戻って来たが、スコールはまだ高みから戻って来れずにいる。
ビクッ、ビクッ……と強張ったままの体を震わせる彼女を、フリオニールはしっかりと抱き締めながら、今だきゅうきゅうと締め付けている肉壺から自分自身を抜き取った。


「あぁ……っ♡」


 ぬぽん、と音を立てて抜けたペニス。
フリオニールがちらとそれを見れば、感覚でも十分自覚があった通り、まったく膨らみが収まっていない。
全身の血が全て其処に集まっていると思う程、脈が止まらないそれから、役目を終えたゴムを捨てて、次の封を切る。


「あ……あふっ……あう……♡」


 フリオニールが二個目のコンドームの準備をしている間に、スコールがのろのろと起き上がる。
熱に溺れて虚ろな瞳は、フリオニールの股間で勃起しているペニスに釘付けになっていた。


「フリオ……」
「ん……まだだよ、スコール」


 甘えるように腰にまとわりついて来たスコールに、フリオニールは宥めるように言った。
しかしスコールは、我慢の効かない様子で、フリオニールのペニスに手を伸ばす。

 まだ幾らも納まる気配のない逞しい肉棒に、スコールの小さな頭が寄せられる。
すん、と鼻が鳴って、色の薄い唇が竿の横腹にキスをした。
ぴちゃ、ぴちゃ、と音を立てて舌が這い、フリオニールはスコールが口淫したがっているのを感じ取って、頭を撫でた。
それを恋人の許しと取って、スコールは嬉しそうにフリオニールの膝下に身を寄せる。


「ん……あむ、ぅ……♡」


 濡れそぼった亀頭を剥き出しにしたペニスを、スコールがゆっくりと咥内へと招き入れる。
膣とはまた違いながらも、むわりとした湿気を帯びた彼女の咥内もまた心地良いものだった。

 ペニスを口に含んだまま、スコールの頭が前後へと動いて、ちゅぽちゅぽと唇が竿を擦る。
形の良い薄い唇の間を、自分のペニスが何度も出入りするのを見つめて、フリオニールの鼻の穴が興奮に膨らんだ。


「っは……スコール……んっ、はぁ……」
「ん、んむ……っ♡んちゅっ、んれ……はむ、れお……っ♡」


 奥深くまでペニスを招き入れて、スコールは亀頭部に舌の根を宛がった。
飴でも味わうように、たっぷりと丁寧に動き回る舌。
味などまとわりついた精液と、汗の据えた匂いくらいしかしないのに、スコールは夢中になってフリオニールに奉仕している。
この性器が、この固くて太くて熱いものが、自分の餓えを唯一満たしてくれるのだと思うと、愛しくて堪らない。

 亀頭部への愛撫を止めないように意識しながら、スコールは根本を両手で包み込んだ。
根元の裏側、ぶら下がる陰嚢との境を、指の腹ですりすりと擦ると、


「うっ、う……!スコー、ル……っ、そこは……っ」
「ふ、んっ……♡んっ、んちゅ♡ちゅるぅ……っ♡」
「っは、す、吸われたら……っく、出てしまうから、うぅ……っ!」


 敏感な神経が集まっている所から刺激されている事に加え、窄めた唇で鈴口を吸われ、フリオニールは苦しげに眉根を寄せる。
手の中でとくとくと脈打ち、血管を浮かせているペニスを、スコールはうっとりとした表情で見詰めていた。

 スコールの舌は、フリオニールのペニスを丹念に舐めしゃぶった。
表面にまとわりついている精液を、今だ子宮で受け止められない詫びのように、カリ首の裏側の凹みまで忘れず舐め取る。
その都度、ぴく、ぴく、と震えるペニスの反応に、悪戯心も沸いて来て、


「んぁ……♡」


 スコールの舌が、鈴口をくりくりと穿って、フリオニールは息を飲んだ。
ぞくぞくとした感覚が、自身の先端から腰へと一気に広がって、精巣から送り出された劣情が出口を求めて暴れ出す。


「ふっ、ふぅっ、スコールっ……!ちょっと、待……っ!」
「ん、んれ……はふっ、ふぅっ、ふぅ……っ♡」


 切羽詰まって昇って来る射精感を、フリオニールは歯を噛んで堪えている。
スコールはその様子を上目に見て、自身の悪戯に反応してくれる恋人の様子に、嬉しそうに目を細めた。

 耐えれば耐える程、フリオニールのペニスは堅くなって行く。
これをこのまま入れてしまったらどうなるのだろう、とスコールは想像して、まだ絶頂の余韻を引いている膣をひくつかせた。
奥から溢れ出した蜜が、とろりと糸になって落ちて、ベッドに濃いシミを作って行く。
そんな熱の高まりを自覚したら、ひくつくばかりの蜜壺が寂しさを訴えて、


「っは、フリオ……っ」
「ん、ん……っ」
「おまんこ……おれの……っ♡ここ、触ってぇ……♡」


 スコールはフリオニールの膝下に縋り付いたまま、半身に仰向けになって、足を広げた格好になって言った。
彼女自身の手が、耐え切れない切なさを誤魔化すように、膣口を撫で回している。
その指が、時折ぷっくりと膨らんだ艶芽を擦ると、少女の腰がぶるりと震えた。

 愛しい少女の舌が、またねだるように竿を舐めしゃぶるのを感じながら、フリオニールは恋人のおねだりに応えて手を伸ばした。
大きな手が包み込むように少女の股間に宛がわれ、掌で開いた陰唇をずりずりと擦られる。


「んぁ、んふ……っ♡ふぅう……っ♡」


 スコールもゆらゆらと腰を振って、股間をフリオニールの手に擦り付けて快感を得る。
じゅわじゅわと染み出す蜜が、フリオニールの手を汚した。

 フリオニールの指が、陰唇の縁をつうっと滑る。
刺激に敏感になった躰が、ビクッと跳ねた。
期待を示すように一層の愛汁が溢れ出した蜜壺に、つぷりと長い指が挿入される。


「んんぅっ♡」


 ペニスを食んだまま、少女の甘い声が上がった。
そのままフリオニールが指だけを動かし、膣内をぐちゅぐちゅと掻き回してやれば、スコールはビクッビクッと腰を弾ませながらくぐもった喘ぎ声を上げる。


「んっ、んぐっ、んぅんっ♡んちゅっ、んっ、んぷぅっ♡」
「っは、はぁ、スコールの舌が……うっ、ああ、ねっとりしてる……っは…!」
「は、はふ、んれろ……っ♡んっ、んっ、んふっ♡」


 膣内でフリオニールの指が小刻みに震えるように動いて、肉壁を擦られる快感に悶えながら、スコールは一所懸命にペニスを啜った。

 陰部を弄る男の手と、口の中でとくとくと脈打つペニスの存在に夢中になりながら、スコールの瞳がちらと見上げる。
其処には熱の籠った眼差しで見下ろすフリオニールの貌があって、薄く開いた唇から、はあ、はあ、と吐息が零れているのを見る事が出来た。
精悍な顔立ちをしているのに、紅の瞳からはぎらぎらとして、そんな目で見られていると思うだけで、スコールの躰はまた高みへと誘われていく。


「ん、んん……っ♡うむぅ、んん♡んぢゅぅ……っ!」


 細腰をくねらせる少女の痴態に、フリオニールの手指に力が籠る。
ぐっと曲げた指が、スコールの膣の天井を引っ掻いて、ぐちゅりと言う音が鳴った。
ビクンッと腰が跳ねて、陰唇が締め付けを増しながら舐るようにフリオニールの指に吸い付く。
溢れ出して止まらない淫蜜で、スコールの股間も、フリオニールの手指も、ぐずぐずに濡れそぼっていた。


「はっ、スコール……、はぁ……は……っ」
「ん、んむっ、んむぅっ♡ふっ、ふぅうっ、うっんんっ♡」


 ぐちゅぐちゅと激しさを増す指の動きに、スコールの体が仰け反って行く。

 フリオニールは自分の股座に縋り付いているスコールの頭を撫でて、そっと離れるようにと促した。
スコールは嫌がって腰に抱き着くと、フリオニールは仕方がないと彼女の耳元を擽って、少しだけ体勢を替える。
そして腕を伸ばしてスコールの腰を捕まえると、彼女の下肢を持ち上げて、まんぐり返しのポーズにさせた。


「っぷぁ……、フリオ……?」


 ペニスへの奉仕に夢中になっていたスコールが、ようやくフリオニールの顔を見る。
高く掲げられた自分の下肢が視界に入って、やっと自分の状態に気付いたが、その時にはもう、フリオニールの唇が彼女のクリトリスに吸い付いていた。


「んひゃぅううっ♡」


 ぢゅるるるっ、と音を立てて敏感な雌芽を啜られて、スコールは甲高い悲鳴を上げる。
フリオニールはビクビクと弾むスコールの太腿を抱えるように捕まえ、その手で彼女の陰唇をくぱぁと割り開いた。
目の前でヒクヒクと戦慄く肉壺に、ずぷりと指を挿入させ、蜜で溢れる其処をぐちょぐちょと激しく掻き回す。


「はっ、はひっ、あっ、あっ♡フリ、フリオっ、んぁああっ♡お、おまんこ、ああっ、きもひ、ああぁっ♡クリはっ、クリはだめぇええっ♡」


 ぷっくりと腫れたように膨らんだクリトリスを吸われ、スコールは昨夜の比ではない声を上げて悦んでいた。
だめ、いや、と口ばかりで訴えながら、フリオニールの攻めに彼女の体はこれ以上ない程に喜び、指を咥え込んだ膣奥からぷしゃぷしゃと飛沫が噴き出している。


「あっ、んぁっ、あぁっ、あぁんんっ♡」
「は、んぢゅっ、んっ、んん!ぢゅ、ぷう、ふぅぅっ……!」
「んや、クリはっ、クリはだめなのぉっ♡お、おれっ、すぐ、すぐキちゃうからぁあっ♡あっ、あぁっ、んんんっ♡」


 フリオニールが自身の股間に吸い付いているのを見上げながら、スコールは襲い来る官能の波に不自由な体を揺らして逃げを打つ。
そんな彼女の目の前に、勃起したペニスがずいと突き出されると、鼻先から入って来た匂いに意識が持って行かれる。

 んぁ、とスコールの口が精一杯に大きく開いて、フリオニールのペニスに舌が触れる。
竿の裏側をべろりと舐めた舌の感触で、ペニスがびくんと跳ねたのを見て、スコールの胸が俄かに喜びに満ちた。


「んぁ、あふっ、はきゅぅぅっ♡ひっ、はひ、んれろ、ちゅ、んふぅうっ♡」
「っは、んぢゅっ、んぅう……っ!ぢゅるっ、ふっ、くぅ……!」


 体を揺らす度に逃げて行くペニスを、スコールの手が捕まえた。
自分の顔の前までそれを持って来て、アイスキャンディーを舐めるように、甘い色の舌が竿の裏側を丹念に舐める。

 フリオニールはまた自分の股間が痛い程に膨らんでいくのを感じながら、スコールのクリトリスを強く吸った。
彼女の其処は、逢う度に敏感さを増していて、それが恋人を思いながらのオナニーの所為だとは、フリオニールの知らぬ事である。
それでも自分の手で、口で、彼女が乱れ喘いで溺れる様は、どうしようもなくフリオニールの雄の支配欲と言うものを刺激してくれた。

 フリオニールの唾液と、スコール自身が何度も噴いた蜜潮で、彼女の肌はしっとりと吸い付くように濡れている。
白い肌が桜のように火照る中、散々に苛められた淫芽は真っ赤になっていた。
其処にフリオニールの健康的で白い歯が、かりっと甘く引っ掻けば、


「ああひっ♡やっ、かんじゃやぁっ♡ああっ、ああぁあっ♡」


 フリオニールがスコールに痛みを与えることはない。
初めて契った時、どちらも初めての事だったから、スコールは相当我慢をした。
それをフリオニールには今も後悔しているようで、どんなに激しいセックスをしても、彼がスコールの躰に傷をつけることはない。

 その信頼の上で、敏感な蕾に与えられる微かな痛みは、スコールにとってスパイスになる。
敏感に育ち切った性感帯の集合地へ与えられた快感で、スコールの躰は足の爪先までピンと伸び、


「いっ、イくっ♡クリっ、おまんこっ♡ああっ、吸わないで、んぁっ、ああぁーーーーっっ♡♡」


 其処にフリオニールの顔があると判っていても、スコールは潮を吹くのを我慢できなかった。
ぷしゃああっ、と噴き出した蜜を直に顔に浴びて、フリオニールは目を閉じながらも、それが終わるまでスコールを放さなかった。
そしてスコール自身も、自分自身が吐き出した透明な淫汁を浴びて行く。

 フリオニールの目の前で、指を咥え込んだ膣がもぐもぐと動いている。
指に触れる肉ビラが断続的に痙攣しながら締め付けを行っているのを、フリオニールは数センチの距離で見詰めていた。

 絶頂の余韻で、スコールは言葉も失って蕩けた表情を浮かべている。
ピクッ、ピクッ、と震えるクリトリスを舌先で舐めると「やぁあ……♡」とスコールが泣き言を零した。

 スコールの下半身がベッドへと直される。
くたりとしどけなく静んだスコールの躰を、フリオニールは丁寧に抱き支えながら俯せにさせる。
腰を持ち上げて尻だけを高く掲げた格好にさせる間、スコールからは絶えず甘い声が漏れていた。
刺激から解放された筈の陰唇は、とろとろに柔らかくなった肉ビラを見せつけながら、ヒクヒクと震えている。
それが続きを強請っているように見えて堪らなくて、フリオニールはコンドームの準備を終えるなり、直ぐに亀頭を宛がった。


「あっ、フリオ……っ」


 名を呼ぶ声は、咎めていたのか、求めていたのか。
フリオニールは深く考える暇もなく、衝動のままにスコールの中へと侵入する。


「あああぁっ♡」


 正気に戻る暇など与える気もない。
喘ぐ声がまだ響くうちから、フリオニールはスコールの秘奥を目指して、ずんずんと腰を振った。


「あひっ、はっ、ひぅっ、あぁんっ!ま、まって、おまんこ、あぁっ♡まだ、まだ痺れてるのぉっ♡」
「はっ、ああ、っくぅ!スコールの奥が、はっ、こんなに震えて、絡み付いて来るのは……っ、イってる時、だよな……っ!」
「んぁっ、あっ、あうんんっ♡そ、そう、だからぁっ♡イ、イってるの、感じるっ♡感じ過ぎるのぉっ♡はうっ、あうっ、今、今奥ぅっ、届いちゃだめぇっ!あぁあっ♡」


 バックからの挿入は、正面から向かい合っている時よりも、深い場所へとフリオニールを届かせる。
ただでさえ絶頂の直後で性感が開き切っている所へ、子宮を攻め立てられれば、スコールが堕ちるのも当然だった。

 フリオニールはスコールの腰をしっかりと掴み、逃げ場を奪って、激しく腰を打ち付ける。
まろい尻が、フリオニールの固い腰骨に叩かれる度に、パンッ!パンッ!パンッ!と言う音が響いた。


「あうっ、あうっ、ひぁんっ!ああっ、はぁっ、んぁあっ♡」
「はっ、はぁっ、スコール……!もっと、奥まで……っ!」
「んぁっ、やぁっ、はいっちゃう♡し、子宮のとこっ、フリオのちんぽぉっ、当たってるよぉおっ♡」


 深くまでペニスを咥え込んだ膣は、狭い道をフリオニールの形で一杯に拡げられ、彼が身動きするだけで内壁が擦れて感じてしまう。
そんな状態で、入り口から奥までを何度も何度もこそげ上げられるものだから、スコールはもう殆ど下半身に力が入らなかった。
がくがくと震える膝は、腰を掴むフリオニールの手で支えられているに過ぎない。

 ずんずんと力強い攻めを見せる雄肉に、スコールは成す術もなく蕩け喘ぐしか出来なかった。
言葉も忘れてあられもなく啼くばかりの唇から、濡れた舌が覗いて、唾液が糸を引いてシーツを濡らす。


「あ、あひっ、んぁっ、あぁっ!フリオ、フリオぉっ♡すご、すごいぃっ♡おまんこ、フリオで、いっぱい、ひぅうんっ♡」
「ああ、スコールのまんこが、はっ、ぴったり、くっついてきて、うう……っ!何処もかしこも、気持ち良くて……っ、堪らない……っ!」
「やぁ、あっ、あぁあ……っ!きも、きもひぃ、おかひくなるぅっ♡フリオで、ぜんぶ、いっぱいになるのぉっ♡あふっ、また来ちゃ、イくっ、イくぅっ♡も、イくのっ、止まんないぃいっ♡」


 ペニスを咥え込んだ肉壺が、ビクビク、ビクビクと小刻みに痙攣し、フリオニールを今日一番に締め付けた。
もう何度目になるか判らないまぐわいに、スコールの胎内はこなれて柔らかくもなっていると言うのに、元の狭さも加えて、その締め付けの心地良さは全く衰えない。
それが益々、フリオニールの血を滾らせていく事を、彼女が知る事はないのだろう。


「イくっ、んぁっ、あぁあああんっ♡あひっ、あっ、あぁっ、はぁあんっ♡」


 一際高い声を上げて、少女の肢体は官能の大波を迎えた。
ベッドに縋る細い肢体がビクンビクンとくねりながら跳ねて、球粒の汗が背筋を流れ落ちる。
その背に重石が覆い被さり、ずぷぷぷっ、と禊が深く侵入して来たものだから、


「ひあぅうううっ♡」
「はっ、はっ、ふぅっ、ふぅっ!」
「あふっ、あんっ、あうっ、あきゅぅっ♡らめ、ふりおっ、おなかぁっ♡おなかひびくっ♡ジンジンするのっ、しびれてっ、またイく、んっ、きゃふぅうんっ♡」


 フリオニールに後ろから閉じ込めるように抱き締められて、スコールは最早身を捩る事も出来なくなっていた。
愛しい男の激しい欲望の衝動を、その一身で受け止めるスコールの耳元で、フリオニールの荒い息遣いが繰り返されている。


「ふぅっ、はっ、はぁっ、スコー、ル、うぅっ!まんこが、また、震えて……っく、吸い付く、うぅっ!」
「んぁ、イク、イクっ♡イきっぱなひっ、とまんなひぃっ♡フリオ、ふりおにーるぅっ♡ああっ、あぁっ、あーーーーーっっ♡♡」


 がくがくと全身を大きく震わせながら、スコールは何度目になるか判らない果てを見る。
強張る体でベッドシーツに縋るしかないスコールを、フリオニールは強く抱きしめながら、自分自身も上り詰めた。

 ゴムの中にどくどくと絶えない欲望を吐き出して、はあ、はあ、と二人の湿った呼吸が繰り返される。
スコールは耳元を擽る恋人の吐息に、疲れ切った筈の体の奥で、またとぷりと熱が溢れ出すのを感じ取っていた。
それを恋人と繋がり合う事に喜びを知ったばかりの少女が隠せる訳もなく、奥に届いたままのフリオニールを、求めるように締め付けてしまう。


「……っスコール……」
「……あ……っ♡」


 耳元で名前を呼ばれて、きゅう、と子宮の中が疼くのをスコールは理解した。
首をほんの少し傾けて後ろを見れば、すぐ其処にフリオニールの顔がある。
愛おしむように、労わるように、けれど隠せない昂ぶりを持って見つめる紅玉に、スコールは唇を差し出してキスをねだった。

 重ねた唇が触れ合うだけのもので終わる筈もなく、甘い声が再び始まるまでに、時間はかからなかった。




 何処のホームで何のアナウンスが鳴っているのだか、スコールにはよく判らないが、自分が乗る列車は今いる場所から出るものであっているらしい。
フリオニールに手を引かれながら案内されたホームの待合所で、スコールは隣に座った彼に寄り掛かって、チケットに印字された定刻を待っていた。

 ────結局、夕方近くになるまで二人の交わりは続いた。
途中で水分補給はしたものの、食事はフリオニールの家を出る前に、彼がコンビニで買って来たものを食べただけ。
スコールはそれ程食にこだわりも興味もないので構わなかったが、フリオニールに付き合わせたのは悪かったなと思ってはいる。
一応、それについて遅蒔きに謝ったりもしたのだが、フリオニールは「良いよ、そんなこと」と言ってスコールを甘やかすばかりであった。

 それだけ何度も交わったのに、あと少しで離れなくてはならない現実が嫌いだ。
寄り掛かる事を許してくれる隣の温もりが心地良くて、一緒に行けたら良いのにと思う。
それが出来ない事は十分判っているから、決して口にはするまい。
きっとフリオニールを困らせるだけだ。

 次に逢えるのはいつだろう。
少なくとも一ヵ月先だと言う事だけは確定していて、漏れそうになる溜息を堪えていると、


「向こうに着いたら、メールしてくれ」
「……ん」


 心配だからと言う理由で、いつもフリオニールは、家に帰ったら連絡が欲しいと言う。
特に今日は、乗る列車が遅い時間のものである事もあって、自宅への着くのも日付が変わる頃になるから、より心配が募るらしい。
小さな子供じゃないんだぞと思うが、メール一つでフリオニールが安心してくれるならそれで良いと思った。

 頭を乗せた肩に、すり、と頬を寄せる。
家を出る前に風呂に入ったから、昨晩からずっと嗅いでいた汗の匂いは感じない。
それでもフリオニールの匂いと言うものが感じられて、スコールはじんわりと去来する熱と寂しさに唇を噛んだ。


「……来月……」
「うん。バイトのシフトが出たら送るよ。あと、今度は俺がそっちに行くから」
「……それは、良い。俺がこっちに来たい」
「お金かかるだろ。スコールにばかり無理はさせられない」
「………」


 自分がこちらに来る方が、二人きりになれるのだと言う事を、フリオニールは知っているだろうか。
フリオニールのアパートなら、誰にも邪魔をされないから、スコールにとってはその方が良い。
とは言え、確かに遠い距離を移動するから、費用がかかるのも事実だし、フリオニールも強く気にしている。
なんとか二人きりで過ごせる方法を探そう、とスコールは切り替える事にした。

 ホームのアナウンスが鳴って、来た、とフリオニールが言った。
足元に置いていたスコールの鞄と、急ぎに買った土産の紙袋を持って立ち上がるフリオニール。
スコールは疲労感と、気持ちの面と、両方の意味で腰が重かったが、駄々を捏ねても仕方がない。

 予約席の車両が停まる場所に行って間もなく、列車の接近を知らせるベルが鳴る。
それが別れの合図になるから、スコールはどうしても顔を俯けてしまう。
フリオニールは、そんなスコールを見て、眉尻を下げて微笑んだ。


「スコール。気を付けて帰れよ」
「……ん」
「体は、大丈夫か?大分、その、無理をさせたから……」
「……問題ない。俺があんたを感じたかったから、良いんだ」


 次に会う時まで、フリオニールがくれた熱を忘れたくなくて、沢山体に刻んで貰った。
抱き締められた時の力強さも、体の奥で感じる熱の感触も、まだその身に真新しい感覚が残っている。
今はそれを頼りにして、次の逢瀬を待つのが、スコールに出来る精一杯の我慢の仕方だ。

 フリオニールの手がスコールの前髪を持ち上げて、額に柔らかいものが触れる。
ぱちりとスコールが目を丸くして顔を上げれば、照れた顔を赤らめて苦笑している顔があった。
そう言う事をするから離れたくなくなるんだと、スコールはぎゅっと唇を噤んで背伸びをした。
唇に押し付けたその一瞬、赤い瞳が真ん丸に見開かれた。

 ぽかんとしたように立ち尽くすフリオニールの手から、荷物を奪うように取って、列車の中に乗り込む。
指定の席を探して座ると、ホームの見える窓際の席だった。
赤らむ顔を、眠気を誤魔化す仕草でごしごしと擦っていると、コンコン、と傍の窓が叩かれる。
顔を上げて窓の外を見れば、少し赤らんだ顔をしたフリオニールが、ひらひらと手を振って其処に立っていた。


「……!!」


 自分がらしくもない事をした自覚をしているスコールにとって、今はフリオニールの顔を見る事は何よりも恥ずかしかった。
それは恐らくフリオニールも同じなのだろう、少しだけ視線が彷徨い勝ちなのが判る。
けれど、今を逃せば、次はもう一ヶ月後になるのだから、最後の最後に顔を見せに来てくれたのだ。

 そろ、とスコールは列車の窓に手を当てた。
其処にフリオニールの手が重ねられて、彼の唇が動く。
またな、と笑った彼の声を聴いた後、発車を報せるアナウンスが流れて、フリオニールは車両から離れて行く。
この瞬間が嫌いだ、とスコールは滲む涙を堪えて、もう直ぐ見えなくなってしまう恋人の姿をその眼に焼き付ける。

 列車が動き出して一分としない内に、その形はホームから影も見えなくなった。
残されたフリオニールは、拭えない寂しさを胸の奥に抱きながら、少女が触れた唇に手を遣り、名残の感触に何度目か顔を赤らめるのだった。





徹頭徹尾らぶいちゃエロを書きたくなりまして。
遠距離恋愛していて、やっと会えるとその日限りの時間を全部すけべに注ぎ込んでるフリスコが見たいなと思いまして。

このスコールはフリオニールが好きで好きで仕方がないくて、フリオニールとセックスするのが大好き。
二人一緒にただ隣で過ごしている時間も嫌いな訳ではないけど、何よりフリオニールを一番感じられるから、そうなる訳ですね。
よくフリオニールの事を考えながら一人えっちもしてるし、会う時には色んな事意識して、意識過ぎて色々アレな事になっている。
そんなスコールがずっと無自覚にフェロモン出してるし、手を繋ごうとしたり、何かと触って来るので、フリオニールは大変だ。でも大好きなんだと思います。