止めど流れる熱花の


「サイファーが任務で怪我をしたのよ」


 スコールがキスティスからそう聞いたのは、エスタでの自身の任務から戻って来て翌日のこと。
自分宛の報告書を書いている時に、そう言えば、と思い出したようにキスティスが言ったのだ。

 一瞬、その言葉にどくんと心臓の音が跳ねたスコールだったが、顔を上げて見たキスティスの表情がいつもと変わりないのを見て、跳ねた音を隠す。
判り易く動揺して馬鹿みたいだ、と思いながら、此方もいつもと同じ顔をして、キスティスに訊ねておく。


「どの程度だ?」
「深くはないわ、命に関わりがあるようなものでもないし。でも、両手の火傷でね。生活に支障はないけど、ガンブレードが碌に握れないって言ってたから、しばらく任務から外した方が良いわね」


 サイファーはガルバディアのテロリスト鎮圧の任に出ていた。
ガルバディアと色々と関係のあった彼を、こう言った任務に回すのは少々頭の痛くなる事ではあったが、暴動を起こしているテロリストがサイファーの知っているグループであった事、レジスタンスのような組織ではなく、レジスタンスを装って一般人を巻き込んだ“テロ”を目的としている類であるとあって、話が通じる連中ではないと踏んだサイファーの進言もあり、彼を派遣するに至ったのだ。

 サイファーが睨んだ通り、念の為の勧告もグループは一切聞かず、ガルバディア軍、派遣されたSeeD、そして一般人も見境なく攻撃を始めた為、サイファー達も実力行使に打って出た。
甲斐あって暴動は鎮圧されるに至るのだが、その最中に、恐らく軍製品を横流しか型落ちで手に入れたのであろう生体兵器が暴走した上、大量の火薬を積んだ状態で自爆を起こした。
接近していたSeeD勢の内、サイファーが真っ先にそれに気付き、防壁魔法を展開したお陰で、SeeD勢の被害はほぼゼロに済んだが、防壁越しに熱波にほぼ直接触れる形になったサイファーの両手は焦げた。
厚手の手袋を嵌めていたので、軽傷ではあるのだが、皮膚細胞の摩耗がやや激しく、何かに触れると痛みが出る。
片手でガンブレードを支える力を持つサイファーだが、掌がこれでは宜しくない。
無理を圧すことも出来なくはないが、必要がなければ、両手の包帯が取れるまでは任務には出たくない、とのことだ。


「……まあ、妥当だな」


 サイファーの要請は最もなことだ、とスコールも思う。
ガンブレードの特徴である、装填した火薬を炸裂させて振動による斬撃ダメージを増加させると言うのも、両手を怪我した状態では碌に支えられまい。
あれをサイファーが片手で受け止められるのは、やはりある程度の万全な状態が整っていればの話なのだ。
サイファー自身がそれが出来ないと判断しているのなら、療養に専念させるのが一番だろう。


「サイファーに当てる予定だった任務を、幾つか調整するわ。カドワキ先生の話では、一週間は様子見ですって。その後は、もう一度診察して、問題なければ復帰の予定」
「判った。人員は任せて良いか」
「ええ、そのつもりよ」


 話の速い補佐官に、助かる、とスコールは言った。
キスティスは小さく笑って、スコールに背を向けた。
自身のデスクに行って書類を捲り始めるキスティスに、スコールも改めて報告書へと向き直った。




 キスティスの口振りからして、本当に大した事はないのだろうと思う。
とは言え、一応、様子くらいは見に行った方が良いのだろうと思った。
何せ、スコールとサイファーは、恋人同士の関係であるので。

 考えてみれば、スコールがサイファーの顔を見るのは、約一週間ぶりのことだ。
一週間前にサイファーが件の任務に出発し、その三日後にスコールが任務でエスタへ向かい、予定通りであればその翌日にサイファーがガーデンに帰還している。
それから更に三日が経って、スコールは任務を終え、約半日の道程を過ごしてガーデンに戻って来た。
そんな事はよくある話なのだが、その都度、なんとなく、逢いに行った方が良いんだろうな、とスコールは思うようになった。

 サイファーの部屋の前でノックをすると、直ぐに「開いてるぜ」と返事が来た。
不用心な、と思ったスコールだったが、サイファーの部屋に無断侵入が出来るような命知らずは先ずいない。
深くは気にせず、スコールはドアを開けた。


「お帰り、マイハニー」
「……重症のようだな」


 ふざけた台詞で迎えた部屋の主は、ベッドヘッドに寄り掛かって雑誌を開いている。
それを冷めた目で見詰めるスコールに、サイファーは詰まらなそうに眉根を寄せた。


「ノリが悪いな。一週間ぶりの恋人との面会だぜ、もうちょっと明るく答えろよ」
「やってやろうか」
「いや、良い。お前のことだから素っ頓狂なことしそうだから、返って萎える」


 自分で煽って置いて、乗ってやろうかとスコールが言ってやれば、これだ。
勝手な奴だと思うスコールだが、それもいつもの事だ。
何事も変わりはないようで、スコールは少し安心した。

 部屋に入ったスコールは、ドアを閉じてロックをかけた。
それからまたサイファーを見ると、確かにその両手に包帯が巻かれている。


「手、どうなんだ」


 スコールが端的に訪ねると、サイファーは本を持っていた手をちらりと見て、


「不便は特にねえ。飯も介護が必要な程、邪魔にはなってないしな」


 包帯はサイファーの掌から手首に重点的に巻かれているが、五指は自由だ。
締め付けがあるので幾らか動かし難くはあるが、スプーンやフォークを持つのに問題はないし、ペンも持てるので報告書も───少し時間はかかるが───上げる事ができる。
本当に、日常生活については、大きな問題はないのだろう。


「ただバトルは無理だな。ガンブレードを使わないで、魔法だけ使えって言うなら出来なくはないが、そんな都合の良い場面なんかねえし」
「だろうな。傷の経過状態は?」
「概ね良好だとよ。カドワキの言う通り、大人しくしてやってたからな。お陰で風紀委員の活動も今週はお休みだ」
「どうりでガーデンが静かな訳だ」


 ベッド端に座りながらスコールが皮肉で返せば、サイファーの足が背中を蹴って来た。
癖の悪い足を手で叩いてやれば、大人しく引っ込む。


「次の診察予定は?」
「明々後日だな。まだまだ、退屈な日が続くって訳だ。鈍りそうだぜ」
「一週間もじっとしてるなんて、あんたらしくもないな。訓練施設にも行ってないのか」
「そんな事してカドワキに知られてみろ」
「それは怖い」
「だろ」


 このガーデンで教員をこなし、嘗てのガーデン派閥争いでも生徒には勿論、マスター派にも一歩も引かなかった猛者、それが保険教諭のカドワキだ。
なんでも、彼女はあのシド学園長と旧知の仲であると言うから、その胆力と懐の深さは半端ではない。
一部の生徒たちの間では、ガーデン最強の人物は彼女ではないか、とこっそり噂されている位だ。
実際、問題児と名高い二人組であったサイファーとスコールに対し、屹然と叱り飛ばせる位だから、その噂も強ち間違いではあるまい。

 とは言え、サイファーが退屈を持て余している事は事実だ。
その象徴のように、いつもは綺麗に片付いている筈のベッド周りが、読み耽ったのであろう本で散らかっている。
いつも読んでいる『魔女の騎士』の原本は勿論、図書室から借りて来たのだろう小説や、いよいよ読むものがなくなったのだろう、教科書まで読んだ跡があった。


(……暇に思う位に元気な訳だ)


 それなら十分、良い事だ。
そう思うことにして、スコールは腰を上げる。


「じゃあな」
「って、おいコラ。それだけか?」


 部屋を出て行こうとするスコールに、サイファーは分かり易く顔を顰めた。
スコールは振り返り、ベッドの上から此方を睨むサイファーを見て、


「一応、状態を確認しようと思っただけだから。用は済んだ」
「お前なぁ……仮にも恋人だろうが。一週間ぶりに会った恋人に、面だけ拝んでおしまいはないだろ」
「…他に何をすれば良いんだ?」


 首を傾げるスコールに、サイファーは深々と溜息を吐く。
呆れたと見るからに判るその仕種に、スコールの眉間に皺が寄る。

 サイファーはたっぷりと息を吐き切った後、気を取り直すように酸素を吸って、顔を上げた。


「実際、生活してて不便な事は殆どないけどな。一つ、困ってる事があるんだよ」
「……なんだ」


 勿体ぶった言い方だな、と思いながら、スコールも付き合ってやる気分で、詳細を訪ねてみる。
するとサイファーはにんまりと笑って、人差し指で自分の下肢を指差した。


「ココだ、ココ」
「……────!」


 サイファーが指したモノを、スコールは一拍遅れて理解した。
目にした其処が、ズボンを押し上げてテントを張っている事に気付いて、スコールの頬に朱が上る。


「な……」
「両手がこれだからな。抜きたくても無理なんだよ」


 そう言ってサイファーが両の掌をスコールに見せる。
ともに包帯に覆われたそれで其処を握るのは、流石に憚られるだろう。
しかし、先の任務明けの残る昂ぶりも含め、遅れてようやく帰って来た恋人の顔を見れば、欲望は直ぐに膨らんだ。

 溜まっているのだと示すサイファーに、スコールは彼が何を要求しているのかを理解した。
スコールがサイファーの熱を取れと言うのだ。
それは判ったが、いつも殆どサイファーにされるがままに翻弄されていたスコールにとって、それは中々に高いハードルであった。


「……ビニール手袋でも使えよ。持って来てやろうか」
「あんまり動かすとまだ痛いんだよ。だから安静にしてろって事だ」
「そこも安静にさせてろよ」
「安静にさせて欲しいんだよ」


 鎮まれと念じて都合よく鎮まってくれるものではない事は、スコールもよく知っている。
が、でも、だからって───と赤い顔をして視線を彷徨わせるスコールに、サイファーは愉しそうに笑って見せる。


「どうせお前も溜まってんだろ」
「……」


 サイファーの指摘を、スコールは否定しなかった。
サイファーがガルバディアの任務に出てから一週間、確かにお預け状態だったのはスコールも同じ事だ。
任務はエスタ近郊の魔物退治で、大きなトラブルもなく終わったのでそれは良いのだが、まだ幼生に近い段階の魔物であったので、然程歯応えはなかった。
お陰で戦闘の熱も発散し切ったとは言えず、恋人と離れていたことで性的刺激からも遠退いていた若い体は、その手の刺激に飢えている。

 ドアへ向かおうとしていたスコールの向きが反転して、ベッドに戻る。
ベッド横で立ち尽くすスコールを見て、サイファーは膝に置いていた雑誌を傍のチェストに放った。
スコールはトレードマークのファー付きのジャケットを開けさせながらベッドに上がる。
きしり、とスプリングが小さな音を立てた。

 スコールの心音がとくとくと逸って行く。
肩を脱いだジャケットを後ろ手で下まで落として、ベッドの端へと脱ぎ捨てる。


「下も脱いどけ」


 サイファーのその言葉に促されるよう、スコールの手はベルトのバックルを外した。
ベルトを重ねて強固にも見せる守りが解かれて行き、下着ごとズボンを下ろせば、頭を持ち上げているシンボルが顔を出す。
それを見たサイファーがにやりと笑うから、スコールは赤い顔でじろりと睨んだ。


「あんたも脱げよ」
「お前が脱がせてくれても良いんだぜ」
「……全部俺にやらせる気か?」
「普段は俺がお前にしてやってるんだ。偶には良いだろ」


 ベッドヘッドに寄り掛かったまま、動く様子のないサイファーに、スコールは面倒な、と言わんばかりに顔を顰める。
しかしそれで動くサイファーでもない。
スコールは不承不承と言う表情を浮かべて、サイファーの体に身を寄せた。

 スコールがサイファーの下肢に手を遣ると、布地越しに既に固い感触が伝わる。
それに知らず喉を鳴らしながら、スコールはベルトのバックルを外して、ジッパーを下ろす。
隙間から手を入れて、下着の穴から指を侵入させると、生の熱に触れた。
一週間ぶりのそれの熱を、以前交わった時のものと思い出しながら指先で撫でていると、


「スコール」


 呼ぶ声にスコールが顔を上げると、露骨に雄の匂いを振り撒く翠が此方を見ていた。
吸い込まれるようにスコールが体を起こして顔を近付けると、どちらともなく唇が重ねられる。
サイファーの舌がスコールの唇をなぞり、開けるように促した。
引き結ぶ力を緩め、薄く隙間を許すと、直ぐに舌が侵入して来る。


「んっ……、んん……」


 ひくん、と震えるスコールの首に、サイファーの腕が絡められる。
抱き寄せるように力が込められて、スコールはサイファーの胸に体重を寄せ預ける格好になった。
サイファーが口付けの角度を変えて、舌を奥まで入れていく。
スコールの舌が絡め取られ、唾液を塗すようにねっとりと撫でられて、スコールは舌の根がぞくぞくと痺れるのを感じていた。


「ん、は……んむ…ぅ……っ」


 咥内をサイファーに愛でられながら、スコールも手を動かした。
今度は下着の中に直接手を入れ、中で窮屈そうに膨らんでいたものを外へと持ち出す。
手を上下に動かして竿を扱くと、ぴく、ぴく、と握ったものが震えるのが伝わった。

 ちゅる、とスコールの耳の奥で水音が鳴る。
サイファーの唾液がスコールの口の中をたっぷりと濡らし、二人の舌が触れ合う度に、いやらしい音を立てた。
スコールの首に回されたサイファーの腕に力が入り、指先がスコールの耳の後ろを擽る。
ひくっ、とスコールが肩を震わせると、至近距離にある翠色の双玉が満足そうに笑った。


「んっ、ん……ふ……、んっ……」


 サイファーの口付けに応じながら、スコールはくらくらと緩む意識の中で、手を動かす。
むくむくと膨らんで行く雄の塊に、スコールは自分の体がじんわりと熱に侵食されていくのを自覚していた。

 段々と息苦しくなって視線が彷徨い始めたスコールに、サイファーはようやく唇を開放する。
ちゅぱ、と音を立てて離れた唇を、一筋の糸が繋いでいた。
サイファーはそれを舌で絡め取って、唾液塗れの自分の舌をスコールに見せてやる。
スコールは緩んだ口元に、サイファーの唾液でてらてらと濡れた赤い舌を覗かせながら、ぼんやりとサイファーの口元を見詰めていた。


「サイ、ファー……」
「良い顔してんじゃねえか。やっぱお前も溜まってたな」
「ん、ぅ……」


 サイファーの言葉に、最早スコールは否定の音も出ない。
彼の言う通り、この一週間、務めるように無視して来た熱が、一気に体の中で花開いて行く。

 ふう、ふう、と息を切らしながら、スコールはサイファーのズボンを脱がした。
下着も下ろして、サイファーの下肢を裸にすると、そこに蹲って顔を寄せる。
すっかり天井を向いている雄に唇を持って行き、そろそろと伸ばした舌を先端に当てた。
ぴくっ、と頭が震えたのを見て、スコールの目元が嬉しそうに細められる。


「ん……ちゅ……っ」


 スコールの桜色の唇が、そうっとサイファーの熱へと押し当てられる。
ちゅ、ちゅう、とキスを繰り返すように、スコールは先端に
唇を当てては離れてを繰り返した。
その内に鈴口からじわりと苦いものが滲んで来て、サイファーの昂ぶりが上ってきている事を知る。


「は……、んむぅ……っ」
「……っ」


 スコールは口を大きく開けて、サイファーを食んだ。
小さな口を直ぐに一杯にする質量に、スコールの鼻息が荒くなる。
同時に、スコールのくぐもった咥内の吐息を感じて、サイファーも微かに息を詰まらせる。


「ふ…っは……んむ、ん……っ、んっ……!」


 スコールはサイファーの股間に縋るように身を寄せて、頭を前後に動かし始めた。
サイファーとのキスで十分に唾液を塗した舌が、竿をぬるぬると撫でながら何度も滑る。
血管が浮く程に昂っていたサイファーにとって、それは中々の甘い拷問だった。


「あんまり持たねえかもな……っく、」
「んちゅ、んっ……!はふ、あむぅ……っ」
「スコール、ケツこっち向けな。解してやるよ」
「ん、ん……」


 辛うじてサイファーの声を聞いて、スコールはもぞもぞと体勢を変える。
自身は雄を咥えたまま、ベッドヘッドに寄り掛かるサイファーの体を跨ぐように馬乗りになった。


「もうちょっと腰上げろ。手が使えねえからな」
「ん、ぅ……ふ……っ」


 指の代わりに何を使うか、スコールも薄らと理解した。
サイファーの要求に応じて、スコールは腰を高く持ち上げ、サイファーの顔の位置に届くように調整する。

 包帯を巻いたサイファーの手が、まろい尻を撫でた。
皮膚ではない布の感触にスコールの尻がふるりと震える。
使うなって言われてるんじゃないのか、と思うスコールを他所に、サイファーはゆったりと尻のラインをなぞって行った。


「ん、ふっ……んっ、んむ……っ、んっ……!」
「ヒクついてんじゃねえか。やらしい奴」
「うぅ、ん……っ」


 尻を揉みながら言うサイファーに、スコールの顔が熱くなる。
あんただって、と咥内のものに柔く歯を立ててやれば、象徴が分かり易くビクッと震えた。
野郎、とサイファーが悔し気な声を零すのが聞こえて、スコールの留飲が少し下がる。

 奉仕を続けるスコールの尻に、サイファーは顔を近付けた。
一週間、ご無沙汰になっている筈なのに、ヒクヒクと伸縮を繰り返して雄をさそう秘部に、ふぅっと息を吹きかけてやる。


「んんぅっ」


 ビクッビクッ、とスコールの躰が分かり易く跳ねた。
はふぅ、と熱を孕んだ呼吸が零れ、小振りな尻が左右に揺れる。
サイファーはそれを宥めるように尻たぶを揉みながら、慎ましさを忘れた窄まりに舌を入れた。


「ふむぅ……っ!」


 覚えのある異物感に、スコールの躰が震える。
秘部がきゅうっと閉じてサイファーの舌を締め付けるが、中に入れる事を拒んではいない。
それを良し良しと、よくよく躾の行き届いた反応に気を良くしながら、、サイファーは舌を奥へと挿入して行った。


「んっ、んっ……!は、ふ……んむぁ……っ」
「んぐ……んっ、ふぅ……っ」
「んぁあ……っ、は、はあ……サ、イ…あぁ……っ!」


 厚みと弾力のあるものに淫部を撫で回されて、スコールは悩ましい声を上げる。
白い肌は赤く火照って汗を滲ませ、スコールの象徴もピクピクと震えながら頭を反らしていた。
刺激を欲しがる其処も弄って欲しくてスコールは腰を捩るが、今日のサイファーは両手が使えない。
お陰で震える先端が無性に寂しくなって、スコールはそれを忘れさせてくれるもっと大きな熱が欲しくて堪らなかった。

 早く、早く、と続きを急かす気持ちで、スコールの舌が雄を舐める。
昂ぶりを増してじわじわと溢れ出す先走りを啜ると、秘奥に入ったサイファーの舌がぐっと壁を押し上げた。
ビクン、と弾む腰を見付けて、サイファーは同じ場所を舌の腹で何度も撫でる。


「んふ、ふぅ……っ!あ、ふぅん……っ」


 ビク、ビクンッ、とスコールの躰が震え、色の薄い象徴からトロトロと蜜が溢れ出す。
止める事の出来ない蜜が、サイファーの腹を汚していくが、二人は気に留めずに行為に没頭した。


「んむ、サイファ、もう……っは、んちゅぅ……っ」
「ん、ん……っぷ、はぁ……」
「はぁうっ……!あ、っあぁ……!」


 中に入っていた舌が、ぬぽっ、と抜けて行くのを感じて、スコールは背中を反らして切ない声を上げた。
解放された淫部はくぱくぱと口を開閉させ、一層淫靡な匂いを放ってサイファーを誘う。


「っは……ふぅ……良いぜ、スコール。こっち向け」
「ん、っふ……はふ……っ」


 息を切らせながら、スコールはのろのろと体を起こして、サイファーと向き合う。
蒼の瞳がとろんと夢現に蕩けているのを見ながら、サイファーは言った。


「俺の手が使えねえから、支えてやれねえ。自分で入れて、動けるな?」


 サイファーの言葉に、スコールは少しの間を置いてから、こくん、と首を縦に振った。
素直なスコールにサイファーは小さく笑みを浮かべ、包帯を巻いた手でスコールの髪をくしゃりと撫でる。

 スコールは膝を立てて、そそり立ったサイファーの雄を自身の秘穴に宛がった。
サイファーの舌で解された穴は柔らかくヒクつき、固くなった雄の感触を覚るだけで、中がじゅわりと湿って行く。


「は…ふぅ……んん……っ!」


 スコールは呼吸を整えた後、きゅ、と唇を噛んで、ゆっくりと腰を落とし始めた。
固いものが淫部の口をゆっくりと開いて行く。
感触が、熱が、入って来るものを具に伝えて来て、スコールの背中をぞくぞくと官能の奔流が駆け上るのが分かった。


「は、はぁ……んぁ……っ!」
「っふ……!」


 咥えるものの大きさに、スコールは努めて呼吸を止めない様に意識した。
口を開いて熱の籠った吐息を吐き、はあ、はあ、と呼吸しながら更に腰の位置を下げて行く。
一番太い所が入り口を潜った瞬間、ぞくんっと走った電気にスコールの躰が仰け反り、秘孔がきゅうっとサイファーを締め付ける。
サイファーが小さく息を詰める音が聞こえて、スコールの唇が笑みに緩んだ。

 半ばまでサイファーを咥え込んで、スコールは一旦止まった。
狭い中を一杯に広げている物のお陰で、少し苦しい。
スコールはサイファーの肩に捕まって、背中を丸め、はふ、はふ、と喘ぐ息を漏らしていた。
珠のような汗を浮かばせ、赤い顔を蕩けさせているスコールを、サイファーはじっと見詰めている。
形の良い、厚みのあるサイファーの唇を見て、スコールはのろのろと顔を近付けた。


「ん……」
「ん、」


 スコールの方から重ねた唇を、サイファーは受け止める。


「ん、ちゅ……んっ、んっ……」


 小鳥が啄むように、触れては離れて、また触れるキス。
ちゅ、ちゅ、と音を立てる唇の音が、サイファーの耳を心地良く楽しませる。

 スコールの強張りは少しずつ緩み、雄を迎え入れた秘部も、ヒクヒクと柔らかな蠢きを生み出していた。
一方でサイファーはと言うと、じっとりと滲む蜜液と肉褥に包み込まれて、熱の暴走を堪えるのが大変だ。
そうとは知らず、スコールはまた腰を落として行き、


「は……あぅ……っ」


 たっぷりと時間をかけて、サイファーを最後まで受け入れた。
根本まで咥え込んだ雄が、スコールの奥壁を圧迫するように押し上げている。
その感触で、スコールは胎の中に重くて熱いものが渦巻くのを感じていた。


「サイ、ファー……んっ、あ……っ」
「ああ、良いぜ」


 動いて良い、その許可を貰って、スコールは腰を振り始める。
艶めかしく濡れた媚肉が、サイファーを隙間なく包み込みながら擦り、時折きゅうぅっと締め付けた。
ぎしぎしと鳴るベッドの音を気にもせず、スコールは一心不乱に熱を貪っている。


「あ、っは……、はっ、はぁ……っあぁ……!」
「もうちょい前来な、スコール」
「う、ん……っ、」
「それで腰落とせ」
「ん、……うぅんっ!」


 サイファーに言われた通り、スコールはほんの少し、体を前に移動させた。
中に入ったものが当たる角度が変わったのが分かった所で、サイファーに促され、腰を落とす。
ずぷん、と入った瞬間、後ろ側の壁を擦り上げられて、スコールは高い声を上げた。


「あっ…あうっ……」
「良いだろ?」


 ビクッ、ビクッ、と体を震わせるスコールに、サイファーが囁く。
スコールの弱点のことなら、本人以上に判っているのだ。
どう誘導すれば、スコールが悦ぶかも、サイファーは全て理解している。

 サイファーが導いてくれ場所に、スコールも何度も自身を擦り付けた。
固く逞しい雄が壁をなぞり上げる度に、ぞくぞくと強烈な官能が体を走り抜けていく。
立てた膝ががくがくと震えていたが、崩れ落ちたらもう戻れない気がして、スコールは精一杯の気力で体勢を保っていた。
そうして腹に力を入れれば、秘奥が締め付けを増しながらドクンドクンと脈を打って、サイファーに熱の放出を促そうとする。


「はぁ、あっ、サイファー……っ!んっ、んっ、あぁっ……!」
「スコール……っ」
「ふ、はぅ……んっ、ああ……っ!もう、あっ、来る…ぅ……っ!」
「良いぜ。我慢すんな」
「サイ、ファー、サイファー……!はぁ、はぁ、あっ、はぁあ……っ!」


 直ぐ其処に来ている一番大きな熱の波を、スコールは堪える事が出来ない。
上り詰めようと体は勝手に大きく動き、より深くまでサイファーを咥え込もうとししまう。
快感に従順で貪欲な恋人の乱れ様に、サイファーの雄もまた昂って行き、


「あっ、イくっ、イくぅっ……!んっ、あぁぁあ……っ!!」
「く、う……ううぅっ!」


 ビクンッ、ビクンッ、とスコールの躰が一際多く波打った直後、スコールはサイファーの腹に蜜を放ちながら絶頂した。
同時に推すを咥えた淫部が一層強く締め付けを増し、サイファーが唇を噛むのを構わず、うねり動いて竿を刺激する。
サイファーは腰全体が痺れるように震えるのを感じながら、スコールの中に濃い粘液を注ぎ込んだ。


「ああぁぁっ!熱、いぃ……んんんっ!」


 サイファーの頭を抱えるように抱き着いて、スコールは熱を受け止める快感に酔う。
サイファーもその背中を抱き締め、腕の檻にしっかりと捉えながら、溜まりに溜まった劣情をぶつけてやった。

 一週間ぶりとなった熱の解放は直ぐには終わらず、スコールの秘部からは許容量をオーバーした白濁液が泡になって溢れ出した。
股間を伝い流れる粘ついた感触に、スコールがはくはくと唇を戦慄かせる。


「あ…あ……っ、サイファー…の……んっ、出て、るぅ……っ」


 サイファーの耳元で囁かれる、快感に染まったスコールの声。
それを聞くのも一週間ぶりで、サイファーは吐き出したばかりの熱が再び集まって来るのを自覚した。
それは直ぐに体の有様となって現れ、まだスコールの中に入ったままの雄が、早速固さを取り戻していく。

 スコールもまた、胎内で形を取り戻していくサイファーの感触を覚り、ふるりと腰を震わせる。


「サイファ……んっ、あぁ……また……はぁ……っ」
「ああ、全然足りねえ。お前もそうだろ?」
「はあ…ん、ああ……っ、」


 悩ましい声を上げて、スコールは再び腰を揺らし始める。
ずぷん、とサイファーが奥に捻じ込まれる度、スコールの秘孔から白濁液が溢れ出して、ベッドシーツを汚していく。


「あ、んっ、サイファー、サイファー……っ!はあ、あっ、あっ、あぁ……っ!」


 繰り返し男の名前を呼びながら、スコールは夢中になって腰を振る。
奥へと雄を誘い込む度、濡れそぼった媚肉が嬉しそうに震え、きゅうきゅうとサイファーを締め付けて悦んだ。

 快感を貪るスコールの手を引いて、サイファーは倒れ込んできた体を受け止めた。
背中に腕を回して抱き締め、腹筋と背筋の力を使って、腰を上へと打ち上げる。
ずちゅんっ、と奥深くを穿たれたスコールが、甲高い声を上げた。


「はぁあんっ!」


 自分の自重と律動だけでは、どうしても届かなかった場所。
けれど其処を刺激される事に慣れた体は、ずっとそれを求めて已まなかった。
ようやく与えられた快感の刺激に、熱に溺れた体は容易く落ちて、繰り返し突き上げる雄の力に屈服する。


「はっ、あぁっ、あぁっ!サイファー、んぁっ…!ああっ、深いぃ……っ!」
「ふっ、ふっ、くっ…、はぁっ…!」
「あっ、あっ、んぁ、あぁあっ!も、もっと、あっ、うぅんっ!」


 揺さぶられながら、スコールはもっと大きな熱を強請った。
淫らで貪欲な恋人のおねだりに、サイファーも口角を上げて、腹筋に力を入れる。
持ち主の力みを受けてか、スコールの中でサイファーの雄もぐぐっと硬度を増し、肉の天井を抉るように擦り上げた。


「あふ、あっ、んぁあ……っ!はぁ、はっ、あっ、んんっ」


 スコールもサイファーにしがみつくように、両脇の下から腕を通して、肩を抱く。
二人でぴったりと体を密着させて、スコールはサイファーの律動に合わせて腰を振った。
ずぷんっ、ずぷんっ、と何度も奥を突き上げられ、スコールは呼吸も出来ない程の強烈な快感を得る。


「ああ、あっ!あっ!サイ、ファー……俺っ、また…っ、またイくぅうっ…!」


 スコールの訴えに、背中を抱くサイファーの腕に力が籠る。
逃がすまいとでも言うような力強さに、スコールは幸福感を感じていた。




 互いを貪り合う情交を終えて、気付いた時には窓の外がとっぷりと夜になっていた。
時計を見てから、自分達がどれほど長くまぐわっていたのかを知って、一層の疲れがスコールを襲う。
それはサイファーも同じだったようで、二人同時に時計を見て、ぱったりとベッドに沈んだ。


「……疲れた……」
「あー……」
「なんか、いつもより、疲れた……」
「そりゃそうだろうな」


 普段はサイファーに任せきりのスコールが、今日は自分から積極的に動いた。
終わった後の疲労感が激しいのは、きっとその所為もあるだろう。
腰に膝にと、動きと体重を支える為に酷使した場所が悲鳴を上げているし、いつもよりも太く感じたサイファーを咥え込んだ秘孔は、其処にあったものがなくなっても未だその感触を残している。

 汗も熱も一緒くたになって、スコールは風呂に入りたかったが、もう動く気に慣れない。
サイファーの横で力なく四肢を投げ出していると、その体をサイファーが寝転がったままで抱き寄せた。


「風呂はもう後で良いだろ」
「……ん」


 サイファーの言葉にスコールが小さく頷くと、包帯を巻いた手がくしゃくしゃと濃茶色の髪を撫でる。
くすぐったさにスコールが目を細めていると、髪を梳いた手がするりと滑って、スコールの頬に触れた。
スコールはなんとなくその手を捕まえて、指を絡めて緩く握った。


「どうした?」
「……別に」


 握る手の理由を尋ねるサイファーに、スコールはそれだけを返した。
サイファーは「そうかよ」とだけ言って、絡められた指を握り返す。
それだけで十分と、妙な満足感を抱いて、スコールはとろとろと目を閉じた。




積極的に頑張るスコールが見たいなと思って。ついでに割と甘めなサイスコが見たくなった。
次にする時はサイファーが頑張ってくれるんだと思います。