朝見る夢の雫色


 一週間ぶりの共に過ごす夜は、熱く濃厚なものだった。
お互いに丁度任務が明けたのがその日だった事も相俟って、若い熱は我慢の限界まで来ていて、それを全て発散しないと眠れないと言う程に昂った。
お互いに、魔物退治の任務など慣れたものではあるが、そうは言っても、文字通り命を張った仕事である。
どんなに雑魚呼ばわりされる魔物が相手でも、気を抜けば心の臓を撃ち抜かれるのだ。
常に背後に死神がまとわりついている事は、傭兵稼業などと言うものに身を窶している人間として、忘れてはならない戒めである。

 故にこそ、その緊張から解放された時には、ついつい羽目を外してしまうものだった。
男の体は生存本能と種の存続の反応が繋がっている。
任務の最中にそれが限界まで膨張するのも珍しくはなく、周囲に気付かれないようにこっそり処理をする事も少なくない。
が、スコールの場合、野営時にそれをしようとすると、それは気が散って仕方がなく、抜く所ではないので、ホテルやガーデンに帰還するまで堪え続けている事もあった。
サイファーは其処は割り切りが出来るものだが、一応、観察保護の対象となっている為、全くの一人きりになれるタイミングは限られている。
止むを得ないので耐えるしかない、と言う事も儘ある事だった。

 そんな生活がそれぞれ一週間近く続いていた訳だから、帰った時にばったり顔を合わせた時には、互いになんとなく気付いていた。
疲れ切っているのは確かだったが、だからと言ってこのままでは眠れない。
即物的な事を言えば、やはり一人で淡々と済ませるより、相手がいた方が盛り上がる。
だから帰還した夜、サイファーはスコールを部屋へと誘導したし、スコールもそれに乗った。
そして部屋に入るなり唇を塞ぎ合い、着の身着のままベッドに雪崩れ込んだのであった。

 帰ったらゆっくり風呂に入ろう、そして何か甘いものでも食べて、朝まで惰眠を貪ろう。
そんな事を考えていたなんてすっかり忘れて、シャワーも浴びずに交わった。
汗に混じって、血と火薬の匂いが臭って、生命の生々しさがリアルに形作られていく。
ああ生きている、俺もこいつも────と熱に茹った頭でそんな事も考えた。
ベッドは随分と長いこと、二人分の体重を受け止めて、その重さへ抗議の音を立てていた。

 激しい夜はいつまでも続くかのように思われたが、疲れた体で急激な運動は、さしもの若さでも辛いものがあったらしい。
時計の存在も忘れて夢中になっていた二人だったが、何度目か極めた後、ふうっと意識を飛ばした。
完全に気絶だった。
夜半にサイファーがふと目覚めた時には、自分はまだスコールの中にいて、彼はそのまま深い眠りの中にいた。
サイファーは重い体を騙し騙しに起こし、ぐしゃぐしゃになったシーツをどうにか変えて、恋人を腕に抱え直して改めて眠ったのであった。

 それが昨晩のことである。
時間にすると、実にほんの数時間前の話だ。

 締め切ったカーテンの向こうから、薄らと陽光が透けて、部屋の中を仄かに照らす頃に、サイファーはもう一度目を覚ました。
腕に抱いていた恋人は、まだまだ眠りの中にいて、猫のように体を丸めてすやすやと健やかな寝息を立てている。
その旋毛にキスをして、裸のままのスコールの体を毛布に包んでやり、自身はベッドを抜け出した。

 決まった時間に目が覚める癖がある訳ではないが、サイファーの朝はそれなりに早いものだ。
特にスコールと共寝をした時がそうで、朝に弱いスコールの為、朝食を作ってやる所から始まる。
こうして準備してやらないと、スコールは当たり前のように朝食を抜いて出て来るのだからいけない。
体が資本の傭兵稼業は、食べることも訓練の一つであると、理屈は判っている癖に、朝はどうしても物臭が勝つのがスコールだ。
任務中には気を張って、役職柄、誰よりも早く起きて作戦会議諸々の準備確認をしなくてはならないのだが、プライベートの彼は存外と面倒臭がりなのである。
朝は専ら低血圧でもある為、食事をする為に早めに起きる、等と言う行為は、彼にとって相当のハードルを有する事なのだ。

 サイファーとて任務明けで疲れていない訳ではないし、出来ることなら寝ていたい、とも思う。
しかし、繰り返すが、体が資本の傭兵稼業だ。
朝食と言うのは、一日の活動のパフォーマンスを上げる為にも必要不可欠であり、豊富な栄養と蛋白質を摂取する事で、肉体の仕上がりにも違いが出て来る。
早起きも存外と苦ではなかったし、最近は寝起きのコーヒー一杯を飲むのも、ちょっとした贅沢のように感じられるようになった。
任務中にはそんなことが出来る余裕もある訳がないから、この細やかな時間を堪能できるのは、自身が無事に帰って来た証のようにも思えた。

 眠気覚ましに淹れたコーヒーを合間に飲みながら、ブランチメニューを作っていく。
一週間の任務に出ていた所為で、冷蔵庫の中はスカスカになっているが、冷凍室にパンが二枚あったので、トースターにセットした。
目玉焼きを作るか、スクランブルエッグにするか考えて、労の少ない目玉焼きを選ぶ。
スープはインスタントで十分だ。
普段なら、此処にジャムソースを添えたヨーグルトを並べてやる所だが、生憎と物がない。
別にないならないで構わないが、何かないかと漁っていると、野菜室の奥に林檎が一つ転がっていた。
カットしてみると鮮度には問題がなさそうだったので、櫛切りにしてデザートとする。

 サイファーはSeeDではないが、共同部屋は色々とトラブルの種になるのが予想できた為、保護観察処分としてガーデンに戻された折に、スコールの隣室に配置された。
此処も個室となっており、お陰でサイファーは自室ではそれなりに悠々とした時間を許されている。
スコールと褥を共にする事が出来るのも、この配置のお陰であった。

 バラムガーデンの寮部屋と言うのは何処も基本的には簡素なもので、必要なものとして初めに備え付けられているのは、ベッドと机くらいのものだ。
後は個人が好きに私物を持ち込んで、各々が過ごしやすい環境作りをしている。
共同部屋にいる頃は、プライベート空間はごくごく狭くて、これもまた備え付けのベッドと机で完全に空間を占領されていたのだが、個室はもう少し余裕がある。
そこにサイファーは、食卓用の小さなテーブルと、椅子を二脚揃えていた。

 出来上がった朝食をテーブルに置き、二人分のコーヒーも揃える。
一つはミルクと砂糖を入れ、自分の定位置の側にはブラックの方を置いた。


(さて───と)


 これで朝食の準備は出来た。
平時よりもゆっくりとやったから、キッチンに立ってから30分と少し経っている。
それだけ活動していれば、それなりに目が覚めたサイファーだったが、ベッドの住人はまだ丸くなっている。
昨夜のことを思えば、まだ寝かせていても悪くはないだろうが、それでは折角の朝食が冷めてしまう。


(起こすか)


 任務や仕事と言う理由がある時以外に、スコールが自分から起きて来る事は殆どない。
一人でいる時はどうしているのか知らないが、少なくともサイファーは、この部屋でスコールが自力で起き上がるのを殆ど見た事がなかった。

 全く世話が焼けると思いつつ、ベッドへと歩み寄る。


「おい、スコール」


 まずは声をかけてやる。
すると、意外にもむずがる反応があって、どうやら眠りは浅いらしいと判った。
それなら今日は簡単だ───とは行かないのが、この寝汚い恋人のパターンである。


「スコール、起きろ」
「……んん……」


 ごろん、とスコールは寝返りを打った。
被った毛布で綺麗に体を包み込み、まるで芋虫のような格好になって、拒否の体勢。


「おいコラ」
「……うぅ〜……」
「飯だ、さっさと起きろ」


 毛布の端を捲ってやると、スコールは眉間に皺を寄せて目を閉じている。
まだ起きたくない、と唸って抗議するスコールだが、サイファーはその肩を遠慮なく揺さぶった。


「折角作ってやったってのに、冷めるだろうが」
「……あんたが食って良い……」


 だからいらない、と言うスコールに、サイファーは彼の丸い耳を摘まんだ。
誰の為に準備してやってると思ってんだ、とは言わないが、心中としてはそれである。
自分の腹が満たされれば良いのなら、わざわざ二人分を用意することもないのだから。

 スコールはうーうーと唸りながら頭を振って、耳を摘まむ指を追い払った。
捲られた毛布をもう一度頭から被り、団子のように丸まって行くスコールに、毎度のことながら面倒な奴だと嘆息が漏れる。
その吐息が聞こえたか、スコールは毛布の中から言った。


「別に良いだろ、食べなくたって……今日は休みなんだから……」
「俺が作ってやったんだから食えって言ってんだよ」
「……勝手に作った癖に……」
「おら、起きろ。俺の朝飯が食えねえってのか?」
「横暴だ……」


 毛布を引っ張って再度ひっぺがそうとしてやると、スコールは内側から毛布を掴んで抵抗してきた。
しっかりとした抵抗の意志に、最早スコールも概ね起きているだろうとは判るが、かと言って放って置いたら布団から出て来る訳もない。
とにかく寝汚さに定評のある彼を起こすには、この温かな包みを取り払ってやらねばならないのだ。

 もういっその事、このままテーブルに運ぼうか。
昨夜からじんわりと続く倦怠感もあって、面倒臭さにサイファーがそんな事を考えていると、


「………」


 いつの間にか毛布の端からスコールの顔が覗いて、此方を見ていた。
起きる気は相変わらずなさそうだが、物言いたげに見詰める蒼灰色に、何か用かと目線を合わせてやる。


「なんだよ」
「……別に……」


 ふい、と逃げるようにスコールの視線が逸らされる。
そうか、とサイファーが言うのは簡単だったが、言葉よりも遥かにお喋りな蒼が求めているものを、朧気ながら読み取るのは難しい事ではない。
少なくとも、サイファーにとっては。

 ちら、ともう一度、ブルーグレイがサイファーを見る。
その頬が心なしか赤いのを見付けて、サイファーは目を窄める。
サイファーのその様子を見てか、スコールの視線はすす……と逃げるように逸らされて行った。

 サイファーはベッドの端に片手をついて、乗り出す格好でスコールの顔を覗き込む。


「なんだ?」
「……べつに」


 先と同じ遣り取りだったが、伴う音の色が揃って違っていた。
サイファーの口端は笑みに緩み、スコールの視線は逃げたまま。
しばらくサイファーがそのまま見下ろしていると、蒼の瞳はゆっくりと此方に戻って来て、碧眼とぶつかると、またすいっと逸らされた。

 スコールの白い頬は判り易く赤らんでいて、それを隠すように、彼は毛布を引っ張り上げている。
だが、目尻に浮かぶ物言いたげな空気は隠されず、逃げたり戻ったりと繰り返して、何度もサイファーが其処にいることを確かめていた。
それの意味する所を、サイファーは良く知っている。


「えらく甘えたじゃねえか」
「……」


 揶揄い半分にそんな事を言ってやると、予想していた反論めいたものはなかった。
代わりに蒼の瞳が、だったら判るだろう、と言いたげにサイファーを見上げる。

 目尻にキスをしてやれば、スコールは心地良さに気を緩ませる猫のように目を細めた。
触れた感触が離れると、また蒼の瞳はサイファーを見詰め、


「………」


 言わない癖に、お喋りな瞳は、サイファーに次をせがんでいる。
本当に、今日は随分と甘えたな気分なようだ。

 もう一度同じ場所にキスをして、その瞼の上を少し舐めてやる。
小動物の毛繕いをしてやっている気分だった。
スコールはと言うと、心地良さが離れ難いのだろう、毛布を掴んでいた手がそれから離れ、サイファーの頬に重ねられる。

 何度かあやすように口付けを繰り返していると、その内にスコールの腕がサイファーの首に回されていた。
ん、と唇を噤んで差し出すスコールに応えて、サイファーから己のそれを重ねてやる。
するとスコールの舌がノックをするようにサイファーの唇をつつき、招き入れてやれば、直ぐに中へと入って来た。
絡め取って吸ってやると、首に掴まるスコールの腕に微かに力が籠る。


「ん……んぅ……ふ……」


 昨夜、何度も味わった唇は、今は少し乾いていた。
しかし徐々に深くなる口付けに当てられたか、次第に唾液が分泌されて行き、絡み合う舌の間でぴちゃぴちゃと言う音が聞こえ始める。

 明らかに熱を煽ろうとするスコールの様子に、サイファーは舌を吸いながら唇を離した。


「っんぁ……」


 痺れた感触を残して放り出されたスコールが、熱の燈った瞳でサイファーを見上げる。
そのままサイファーが丸めていた背を起こそうとすると、思った通り、絡んだ腕がそれを引き留めた。


「朝飯が冷めるだろうが」
「温めれば良いだろ。電子レンジあるんだから」


 とかく食事に碌な執着がないものだから、スコールの朝食に対する意識なんて、どんなに上げてみてもこんなものだ。
折角用意してやったってのに、と憎々しげに言いながら、サイファーはやれやれとベッドに上った。
ぎしりと鳴るスプリングの音に、直ぐ其処にある恋人の顔が、満足そうに緩む。

 サイファーはスコールの体を包む毛布を捲り取ると、ベッドの端に蹴った。
外気から肌を守るものをなくしたスコールが、朝の気温の低さも相俟って、寒さを感じてふるりと震える。
熱を求めた手が伸ばされたのは、遠くに行った毛布ではなく、目の前にいる男の体だった。


「うー……」
「人で暖を取るんじゃねえよ」


 密着して来るスコールに、動き難いなとぼやきながら、サイファーは好きにさせた。
完全に甘ったれモードになっているスコールには、何を言った所でどうせ無駄なのだ。
それなら、偶にしか起きない猫の気紛れを享受し、此方も楽しんだ方が得と言うものだった。

 ベッドに横たえたスコールの上に体を重ね、密着する。
裸身のスコールの中心部が、緩く頭を持ち上げて、サイファーの腹に当たっていた。
昨日、何度となく果てを迎えたというのに、若い体は旺盛だ。
それはサイファーも同じ事で、分かり易く甘え強請って来たスコールの様子に、条件反射で期待が膨らむ。

 スコールの片腕が、サイファーの首から解かれて、腰骨のラインを辿った。
シャツ一枚の上から、締まっているがしっかりと厚みのある肉と、太い骨の感触の浮いた肌を滑って、ジーンズの中心に触れる。
掌がすりすりと其処にあるものを撫でて行くと、いよいよ血が集まって来るのが判った。


「……サイファー」


 耳元で名前を呼ぶ声に、サイファーの熱も煽られていく。
サイファーはスコールの前髪を撫で上げて、自分と相対する傷にキスをした。
其処から眉間、瞼、目尻、頬と、端麗な顔のパーツの一つ一つを愛でるように唇を落としていく。
程なく、再び二人の唇が重なった。

 薄く唇を拓いていたスコールの其処に、サイファーは遠慮なく侵入した。
先程、啜って遊んでやった舌を絡め取れば、すぐに応えて来る。
互いの唾液を交換し合い、混ぜ合うように音を立てて吸い合えば、スコールの頬は朱色を増して行き、キスの隙間に漏れる吐息には熱が籠る。


「んぁ……ふ……、ん……っ」


 零れる小さな声が、サイファーには酷く聞き心地が良い。
下肢を摩る掌が、もっと、と煽るように、其処に在るものの形に合わせて指が滑った。

 サイファーも片手をスコールの肌腕に置いて、ゆったりと滑らせて行く。
上に向かうその手は、焦らすように皮膚の上をゆるゆると何度も彷徨い、スコールがもどかしそうに肩を揺らした。
そんな反応に気を良くしながら、待ち遠しそうに膨らんでいた、胸の突起をツンと突く。


「んっ……!」


 期待していたのだろう場所へのようやくの刺激に、スコールは判り易く反応を示した。
震える舌の根を、絡み付かせた舌でねっとりと嬲りながら、摘まんだ乳首をコリコリと転がしてやる。


「んっ、んんっ……!ふ、うん……っ」


 ビクッビクッ、と体を戦慄かせながら、スコールはその刺激を受け入れている。
咥内は分泌された唾液で濡れそぼり、耳の奥で絶えず卑猥な水音が鳴って、スコールの全身が火照って行く。

 ゆっくりと唇が離れると、スコールは天井を仰いではあっと熱の吐息を漏らした。
そんなスコールを見詰めながら、サイファーは彼の胸の蕾を摘まむ。


「あっ……!」
「お前もサービスしろよ。誘ったのはお前なんだから」
「う、んん……っは……あっ……」


 昨夜の官能の名残がまだ残っているのだろう、敏感な反応を見せる胸を苛めながら言うサイファーに、スコールは喘ぎながらジーンズに重ねていた手を動かす。
フロントジッパーが下ろされ、中に侵入してみれば、窮屈そうに其処に納まっているものがあった。
もぞもぞと手探りで下着の奥への進入口を探し、なんとか見付けた其処へ手を入れる。

 スコールの手が自分の雄を捕まえたのを感じて、サイファーも密かに唾を飲み込む。
どくんと脈打って固くなった感触に、スコールの指が嬉しそうにそれを包み込んだ。
下着の中に納まったそれを愛撫するには、空間の自由が全く足りていなかったが、スコールは構わず指を使ってサイファーの雄を扱き始める。


「んっ…は……ふ、はぁっ……!」
「ふ……っ」
「あふ……んん……、っあぁ、は……っ」


 スコールは人差し指と中指で竿を挟み、掌を鈴口に擦り付けている。
不器用に動かす指の腹が、時折、裏側の神経の集合地を擦るものだから、サイファーの腰にぞくぞくとした痺れが走った。
そのお返しにと、敏感とよく知っている乳首の先端をカリカリと引っ掻いてやると、スコールは甘ったるい声を上げて背中を仰け反らせる。


「あぁあ……っ!はっ、はぁ……んんっ」
「っとにやらしい乳首してんな」
「あっ、あう……んっ、あぁっ……!」
「朝っぱらからこんなに感じてやがる」
「うぅん……っ、あぁ……っ!」


 きゅう、と両の乳首を摘まんでやれば、スコールは悦ぶように声を上げた。
二人の腹の間ですっかり立ち上がったスコールの雄が、ぴくぴくと切なげに震えている。


「はっ、あぁ……っ!サイファー、んっ……!胸、もっと……あぁ……っ!」


 ねだるスコールの姿は酷く淫靡で、昨夜から続く夢を見せているかのようだ。
一週間の禁欲も同然の生活を経て、何か箍が外れているのかも知れない。
そうでなくては、一応理性が強い性格をしている彼が、こんなにもいやらしいおねだりをする事もあるまい。


「普段からそう言う風にお願いしてくりゃ、もっと可愛げがあるのにな」
「あっ、ふぁあ……っ!あっ、あっ、んん……っ!」


 果実のようにぷっくりと膨らんだ乳首を、押し潰すように指の腹でぐりぐりと圧す。
離せばすぐに頭が持ち上がり、ふるふると切なげに震えるそこを指先でピンッと弾いてやれば、スコールは甘い声を上げて体を強張らせた。
より官能を得る為の反応を示す躰に、望んだ刺激を与えてやれば、スコールは頭を振って悶えながら喜びを示す。

 胸への高まる感度に急かされてか、サイファーの雄を扱く手も大胆さが増していく。
奮闘の末にシンボルを外へと誘い出す事に成功したスコールは、掌全体でサイファーのそれを包み込んで手淫を始めた。
下着の中で汗を掻いていた雄は、昨夜の熱を思い出すには十分な体積に膨らんでおり、スコールはそれを咥える時の事を想像して、今から眦がとろりと蕩けてしまう。


「は…っ、サイファー、……あっ、サイファー……っ!」


 繰り返し名前を呼ぶスコール。
言葉も忘れて、恋人の名前だけを繰り返す時の彼は、期待と切迫感で身を焦がしている時のものだ。
早く、と言いたげにスコールの足がサイファーの腰に絡み付いて来るのも、同様だった。

 サイファーは、摘まんでいたスコールの乳首を、くりっ、と捻るように捏ねてやった。
「あぁっ!」と甲高い声が上がった事に満足し、ようやく胸から手を放してやると、乳首は真っ赤に膨らんで勃起していた。


「あう……っは……んぁ……っ」


 甘くツンと尖った痺れを残した胸を震わせ、あえかな声を漏らす唇に、サイファーはあやすようにキスをした。
スコールの熱ぼったい瞳が至近距離で恋人を見詰め、実を委ねるように目を閉じる。


「んん……ふ、ん……っ」


 キスの心地良さに酔い痴れながら、スコールの手はサイファーの雄を煽るように動いている。
括れの裏側に爪先が擦り付けられ、露骨に欲を膨らませようとするスコールに、サイファーも昨夜の熱の名残が燃えがって行く。

 唇が離れ、とろんと熱に溺れたブルーグレイが宙を見つめる。
サイファーはそんなスコールの体をころりと引っ繰り返して、


「尻、上げろ」
「……ん……」


 サイファーの指示に、スコールは素直に従った。
傍にあった枕を寄せ、顎を乗せて支えに抱えながら、膝を立ててまろい尻を後ろに突き出す格好になる。
その中心で、ひくひくと物欲しげに戦慄いている秘口を見て、サイファーはくつりと笑った。


「もう開いてんじゃねえか」
「あっ……!」


 つぷ、と指を挿入させれば、難無く咥え込む其処。
軽く押し付けるように指を中へと進めていくと、ぬるりと艶めかしい内肉が嬉しそうに侵入者を受け入れた。


「あ、あ……っは……あ……っ」
「ま、昨日あれだけヤったしな」
「んんぅ……あんたの……んっ、デカかった、から……あぁ……っ!」


 慎ましさを忘れた体の原因を、サイファーの所為だと押し付けながら、スコールはゆらゆらと尻を揺らす。
奥まで誘うようにヒクつかせながら、背後の雄を煽るような動きをしているスコールに、サイファーは「そう言う事にしといてやるよ」と言って、更に奥へと指を突き入れた。


「んぁあ……っ!」


 スコールは背中を弓形に撓らせて喘いだ。
きゅうっと奥壺が締まってサイファーの指に密着し、脈動しながら絡み付いてくる。
それを拓くべく指を左右に振るように動かしてやると、


「ああっ、あっ……!はっ、はぁ……あぁんっ……!」


 スコールは甘く切ない声を上げて、秘部を弄られる快感に啼く。
奥を指の腹で押しながら撫でてやると、零れる声のトーンが一つ上がって、より強い官能を示しているのが判る。
其処が弱点だと知り尽くしているサイファーは、遠慮なくそのポイントをぐりぐりと苛めてやった。


「あうぅう……!あっ、ひっ、はぁあ……っ!」


 スコールは縮こまるように背中を丸め、突き出した尻をぶるぶると震わせた。
いやいやと頭を振るのは、強い快感に対する反射的な仕草で、決して心から嫌がっている訳ではない。
体の奥の方はもっと正直で、もっともっとと求めるように、秘奥が窄まるように締まってサイファ─を奥へと誘おうとしていた。


「これだけ濡れてるなら、もう良いだろうな」
「あっ、あぁっ……!サ、イファー……んぁっ、ああ……っ!」


 くちゅくちゅと音を立てる中を掻き回しながら言ったサイファーに、スコールは息を切らせながら名前を呼ぶ。
早く、と細腰を揺らして誘う姿に、サイファーはそのいやらしさに舌を巻きながら、埋めていた指を引き抜いた。


「あふぅっ……!」


 中を苛めていたものがぬぽりと抜けて、スコールはその瞬間の刺激にビクッと下肢を震わせる。
腕に抱えた枕に口元を埋め、ふう、ふう、と熱い息を零しながら、次への期待に体温が上がっていく。

 サイファーはジーンズの前ボタンも外し、ボクサーパンツもずらして、自身の息子をようやく自由の身にした。
まとわりついていた布地から解放された中心部は、支えなど要らない程に固く勃起し、先端にはじっとりと汗が滲んでいる。
一週間ぶりのまぐわいとなった昨夜と比べても全く見劣りしないその逞しさに、スコールの期待は益々膨らみ、彼の中心部からとろりと先走りの蜜が零れ落ちていた。

 ひくひくと戦慄く秘孔に、肉棒の先端が宛がわれる。
あ、と零れるスコールの声に釣られるように、秘孔がくぱりと口を開けた。


「入れるぞ」
「ん……早、く……」


 もう待てない、と強請るように、スコールの方からサイファーに尻を押し付ける。
今日のスコールは、理性やストッパーと言うのもを、任務地あたりに置き去りにしてきたらしい。
性に明け透けに素直になっている様子に、偶にはこんなのも悪くはないと、普段は恥ずかしさが勝って先ず見れない恋人の姿に、サイファーは充足感を得ながら腰を前へと進めた。

 太い膨らみがスコールの秘穴を押し広げ、ずぷ、ずぷぷ……と中へ入って行く。


「あぁっ、あぁ……っ!ん、くふぅ……んっ……!」


 昨夜長く交わり、味わい続けていた質量に、今再び中を拡げられていくスコール。
熱くて太いものが奥を目指し、狭い内壁を隙間なく擦りながら侵入する異物の感触を、スコールは悦びに満ちた表情で受け止めていた。

 昨晩、何度となくサイファーを受け入れ、その精を浴びた躰だ。
太い雄はそれ程の苦労もなく根本まで挿入を果たし、サイファーは包み込む熱の感触に煽られる欲望を今一度息を吐いて耐える。
スコールの方はと言えば、いつからなのか待ち侘びていたものをようやく得て、満足そうにうっとりと目尻を潤めている。


「は……ぁ……サイ、ファー……」


 名前を呼びながら、秘奥がきゅうぅ……とサイファーを締め付ける。
ぞくぞくとしたものがサイファーの背中を駆け上り、喉の下を球粒の汗が伝い落ちるのが判った。

 昨夜の行為の痕が残る、スコールの背中。
その腰にはくっきりとサイファーの手形が残っており、昨晩、どれ程強く彼を抱いたかがこれで判るだろう。
それだけの交わりをしても、若い体は性に貪欲であるから、こんな朝からまた同じ事を繰り返している。

 手形に自分の手を重ねて、細身の腰をしっかりと掴む。
この後の事を想像したのだろう、スコールの体がふるりと期待に震えた。
中をゆっくりと擦りながら腰を引いて行くと、中を擦られる快感にスコールが蕩けた声を漏らす。


「あ、あ……あんん……っ」
「っふー……」


 ねっとりと柔らかく絡み付く媚肉の感触は、サイファーにとっていつも耐え難い程に心地の良いものだ。
雄の括れの所まで引き抜いて行けば、隙間の空いた奥が寂しいのか、中が窄まってサイファーを逃がすまいとする。
ならばと今度は最奥に向かって強く腰を突き入れてやれば、


「ああぁあっ!あうんっ!」


 中を勢いよく奥へと突き上げられ、秘奥をずんっと撃たれてスコールは声を大きくした。
隣の部屋がスコールと、その反対側は空き室であるから、遠慮をする必要はない。
サイファーは律動を続け、何度もスコールの中を突き上げた。


「あっ、あっ、んっ!はっ、はぁっ……!あぁっ……!」


 サイファーの力強い攻めに、スコールは抱えた枕を潰さんばかりに力を入れて、奥を突かれる度に声を上げる。
珍しいもので、今日は声を抑えようともしない。
その解放的な有様が、サイファーにも興奮を呼び、より強く、より深く、禊をスコールの秘園へと突き入れていく。


「は、ひぅっ、んんっ……!サイファ、あっ、あぁっ!」
「はっ、く……、また奥が締まる……っ!」
「うっ、うんっ、んぁあ……っ!そこ、あぅ、んぁっ!」


 サイファーは喘ぐスコールの片足を掴んで、大きく持ち上げた。
スコールの体は半身が上を向き、持ち上げられた足はサイファーの肩へ担がれる。
角度の変わった繋がりに喉を逸らして悶えていると、ずんっ、と雄がより深い所へ入る。


「ああぁっ!」


 思わず高い悲鳴を上げるスコールを、サイファーは尚も攻め立てる。
軋むベッドの煩い音と、肌を強くぶつけ合う音が、そう広くはない部屋の中で反響していた。
其処に響くスコールの甘い鳴き声が、サイファーの耳には酷く愉しくて、このいやらしい躰を骨の髄まで貪りたくなる。

 突き上げに合わせて揺れる足の爪先が、快感の強さを示すように、ピンと伸びて強張る。
大きく開かれた太腿は戦慄き、スコールの淡色をした雄はとろとろと泣き虫になっていた。
秘奥はいよいよ狭さを増し、其処を何度も擦り突き上げる肉棒を強く締め付けては小刻みに震えて、スコールの限界が近いことを知らせる。


「ああっ、あっ……!も、もう……んっ、来るっ、あぁっ!」
「ああ……はっ、良いぜ、イけよ……!」
「あっ、あっ、サイファーっ……!はっ、あうっ、うぅうっ!」


 息も出来ない程に加速するサイファーの律動に、スコールは身を捩って悶え訴えた。
サイファーが動く度、何処を擦られても強すぎる官能に襲われる。
枕に沈んだ頭を左右に振って、濃茶の髪をぱさぱさと乱しながら、スコールは迫る限界へと一気に登り詰めた。


「ああっぁあああ……!」


 ビクッビクッ、ビクッ、と全身を痙攣させ、スコールは熱を解き放った。
既に濡れていた鈴口から白濁液が噴き出して、スコールの白い腹に降り注ぐ。

 絶頂と共に、スコールの体の中も、其処に納まっている雄を同じ場所へ連れて行こうと絡み付く。
強く締め付けられているのに、柔らかく艶めかしく蠢く肉の感触に舐めるようにしがみつかれ、サイファーの雄がどくんどくんと大きく血流を送り込む。
ぐ、と歯を噛んだ瞬間、最奥を強く突き上げて、サイファーは蜜壺の奥へと己の精を注ぎ込んだ。


「ぐぅううっ!」
「あっ、ああっ!あつ、ぅんんんっ!」


 昨夜も何度も味わった、サイファーの熱の味を、スコールは体を大きく撓らせながら受け止める。
ベッドシーツを握り締めた指先が白む程に力が籠って、彼の喜びの深さを示していた。

 どくん、どくん、とスコールの中で脈打つ雄。
スコールはその胎動を感じながら、天にも昇るような心地で白い天井を見詰めていた。
絶頂の余韻は長く長く続き、サイファーがようやく息を吐けるようになった時でも、スコールはまだ快感の海に溺れている。


「ふぁ……あ……っ」
「っは……ふぅ……」
「あ、う……擦れ、る……んぅう……」


 ずる、とサイファーが雄を抜こうとしているのを感じ取って、スコールは体を捩る。
その拍子に、きゅっと締まった秘孔がサイファーを引き留め、いやいやをするようにねっとりと絡み付いて来た。


「おいコラ。まだする気か」
「は……はふぅ……んぅ……」


 返事の代わりに、きゅう、と雄を締め付けるスコール。
いやらしい誘いを自らしてくれる我儘な恋人に、本当に珍しい事もあるもんだと思いつつ、


「昼には起きて食えよ」
「……ん……」


 どうせ何を言った所で、満足するまで聞きはしないだろうと判っているから、サイファーはスコールを甘やかす事を選んだ。
こう言う事をするから、気紛れに我儘な恋人を調子付かせるのだろうとは思うが、満足させてやれば此方も十分に補充が出来る訳だから、サイファーも然程この労を厭ってはいない。

 直ぐに始まった律動に、スコールはまた甘い声を上げていく。


「あっ、あ……っは、あっ、サイファ、あぁ……っ!」


 耳に心地良い、名前を呼ぶ声を聴きながら、サイファーもまた熱の燻りに再度燃料を入れていく。
燃え上がるまでに時間はかからず、一週間分の熱をたっぷりと取り戻すまで、二人が離れる事はなかった。




 正午を過ぎて一時間になるかと言う頃に、朝食兼昼食の席に着く。

 シャワーを浴びたお陰で、サイファーは勿論、スコールもようやくしっかりと目を覚ました。
作られ整えられてから、すっかり放置されて冷めていた料理は、朝スコールが言った通り、全て電子レンジで温め直している。
程好く半熟に仕立てた目玉焼きは、電子レンジのお陰で完全に中まで火が通り、固くなった。
林檎は空気に晒していたので少々表面の酸化があったが、食べる分には問題ない。
トーストは二度焼きすると焦げるのでそのままだ。
コーヒーは、サイファーの分はサーバーに残していたものを、スコールのミルク入りは、鍋で温め直して、改めて食卓へ並べられた。


「ったく、折角良い塩梅にしてやってたのによ」


 黄身が固まった目玉焼きを食べながら、サイファーは言った。
スコールは熱が残っている内にバターを塗ったトースターを齧り、


「半熟でもそうでなくても、食ったら一緒だろ」
「じゃあ、もう半熟じゃなくても良いな?」
「………」


 サイファーの言葉に、スコールは眉間に皺を寄せる。
目玉焼きは半熟が良い、といつであったか言ったのは、スコールの方。
それ以来、サイファーは朝食に目玉焼きを用意する時は、スコール好みの半熟にして出してくれるようになったのだ。

 判り易く不満を主張する表情を浮かべるスコールに、サイファーは満足気に笑いながら、「次はちゃんと起きろよ」と釘を差すのだった。




朝からしっかり者なサイファーに、わがまま甘えモードなスコールでした。
相手がサイファーなんだから良いだろうと言う甘えと信頼が大前提。サイファーもそれを甘やかしてやる余裕ぶり。
スパダリサイファーは良いですね。変わりにスコールは怠け者になる。