祝福は硝煙と共に
スコール誕生日記念(2023)


「……野営してるんだぞ。一人じゃないし」


 テントの外には人がいる、とスコールは背後の男を肩越しに睨むが、サイファーはにやりと笑う。


「お前がでかい声出さなきゃ良い」
「俺の誕生日なのに、なんで俺が我慢しなきゃいけない」
「一応怪我人のようだし、我慢できるように加減はしてやるよ。お前のやらしい声、ガキどもに聞こえるのは教育に悪いだろうからな」
「だから、そう思うんだったら────」


 帰ってからにしろよ、と言うスコールの言葉は、後ろから伸びて来た手に塞がれる。
いつの間にか手袋を外していたようで、スコールの口元を覆ったのは素手だった。
ガンブレードの引き金を引く為に、皮も肉も厚くなった指先が、スコールの唇の隙間に侵入する。


「ん、ふ……っ」


 噤んで拒否する前に入って来たそれが、スコールの歯列を擽った。
首の後ろにまたキスされて、ちゅう、と吸われる。
ぞくりとしたものが、キスをされた場所から走って背中を伝い、じんとした痺れが腰にまとわりつくのが判った。

 スコールの咥内を指先でゆっくりと愛でながら、サイファーは逆の手をスコールの体へと滑らせた。
後ろから回される腕が、スコールの体を抱き寄せるように抱えながら、その掌が胸を弄る。
服の上から、腹回りに包帯が巻かれているのを感じ取ってか、サイファーの手は其処らを触ろうとはしなかった。
労わってくれてはいる、と感じつつ、悪戯は止めない背後の男に、スコールは少しだけ恨めしげな視線を向けた。


「ふ、むぅ……、んっ……!」


 布越しに蕾を見付けた指が、それを柔く摘まむと、スコールの躰がピクッと反応を示す。
しっとりと汗を滲ませ始めた項に、肉厚の舌が這う感触があった。
ぞくぞくとしたものが背中を駆け抜けるのを感じて、スコールは寝袋の中で身を捩る。

 シャツの裾がたくし上げられて、ひんやりと冷えたテント内の空気が、直に肌に触れる。
エスタはグランディディエリの森を除けば、荒野が延々と続く景色ばかりだから、抜ける冷気を遮ってくれる者も少ない。
乾燥した空気が一層冷たく感じられて、スコールの体がふるりと震えた。
そんなスコールを宥めるように、背中に触れる体温があって、熱を求めて背後の男の密着を許す。

 サイファーはスコールの肌に手を滑らせながら、其処此処に細かな傷があるのを感じ取っていた。
今日の任務と状況を思えば無理もなく、仮に治癒魔法が満足に効く状態であったとしても、こうした小さな傷程度は自然治癒に任せるものだ。
それは理解しつつ、指先は傷の形をなぞるように、しっとりと汗ばんだ肌の上を舐めるように撫でて行く。


「ん、ん……さ、いふぁ……むぅ……っ」


 指を食んだ唇から、くぐもった声で名を呼ぶスコールに、サイファーは宥めるように項にキスをする。
何度も啄むように口付ける其処には、恐らくは枝葉を引っ掛けでもしたのだろう、小さな傷が鬱血のように残っていた。


「は……んん……っ」


 傷があるなど知りもしないスコールは、何度も同じ場所を舐めれ荒れて、いやいやとするように頭を振った。
そんなスコールの口の中に、サイファーはくっと指を押し込んでやる。
スコールは舌で押し返そうという抵抗を示したものの、本気で拒む気配のないそれに、サイファーは構わずにその舌先を擽ってやった。


「はふ……っ」


 ひくんっ、とスコールの肩が縮こまって震える。
皮膚を撫でるサイファーの手が、膨らみ始めた胸の頂を掠めた。
服の上からでも判った其処を、直に強く摘ままれて、スコールの躰が分かり易く強張る。


「んぅ……っ!」


 食んだままのサイファーの指に、微かに歯が当たった。
噛んでしまうにはまだ理性が残っているスコールの様子に、サイファーはくつりと目尻を細めながら、摘まんだ蕾を転がした。


「う、ん…っ、んんっ……ん……っ!」


 スコールは寝袋の端を掴みながら、喉奥からくぐもった音を漏らしている。
サイファーはスコールの躰を抱き寄せるように仰向けにさせると、覆い被さって唇を重ねた。


「ん、ふ……」


 つい今までサイファーの指を咥えていたスコールの咥内は、唾液で濡れていた。
舌を挿入してやれば、直ぐにスコールも応える。
二人の舌が絡み合い、スコールの耳の奥で、ぴちゃぴちゃと濡れた音が鳴った。

 口蓋への心地良い感触に、スコールの頬が赤らんで行くのを、ランタンの灯りが映し出している。
視界の端からチラついてくる眩しい光を嫌って、スコールは目を閉じていた。
視覚情報を遮断している代わりに、触感が鋭敏になって、舌にしゃぶられる咥内は勿論、胸を弄る手の存在感もまざまざと感じてしまう。

 サイファーの手が胸の蕾を摘まみ、軽く引っ張って遊ぶ。
きゅ、きゅう、と与えられる刺激で、スコールの躰はじわじわと火照りを増していた。


「ふ、ん……ぁ……っ、は……っ」


 スコールの唇が解放され、唾液でしっとりと濡れた唇から、ほうと吐息が漏れた。
足りなくなった酸素を吸い込む度、スコールの胸が大きく上下する。
その途中でサイファーの指が悪戯を仕掛ければ、ひくりと弾んだようにスコールの躰が震えた。

 汗ばんだスコールの喉に、サイファーが食らいつく。
柔く歯を立てられて、其処に痕をつけるなと頭を振れば、翠の目がにやりと笑って舌を這わした。
喉仏の形を確かめるようになぞる舌肉に、スコールは喉を反らしてはくはくと唇を開閉させる。


「っは……ん、んぅ……」


 捕食前の味見のように、サイファーは丹念にスコールの喉に愛撫する。
時折、揶揄いに歯を当てて来るものだから、思わずスコールの躰は固まった。
恐怖ではなく、興奮の兆しがスコールを支配して、熱を増す躰がこれから先の期待に膨らんでいく。

 サイファーの舌は少しずつ下へ下へと降りて行き、胸の蕾を口に含む。
ちゅう、と啜るように吸われて、スコールはびくっと背中を撓らせた。
胸を触っていた手も徐々に降りて行き、包帯の巻かれた腹は優しく撫ぜたのみであったが、


「案外小さい傷が多いな。ま、森の中なんて走り回ってりゃ何でも引っ掛けるか」


 撫でる度に感じていたスコールの躰の細やかな傷の感触。
その多くはスコールにも大して覚えのないものであったから、サイファーの言う通り、茂みなり枝なりで引っ掛けたのだろう。
そう言えば、茂った低木の真ん中を突っ切ったな、とぼんやりと思い出す。
多くは服のお陰で直接の傷にはならなかっただろうが、尖った枝先や葉先が衣服の繊維を貫通したのはあるかも知れない。

 その薄らと残った痕跡に、サイファーの舌が這う。


「う……舐め、るな、ぁ……」
「消毒だ、消毒。誕生日に傷をこさえてる、可哀想な恋人に手当してやってるんだ」
「ん、ん……っふ……!」


 どう言うこじつけだ、とスコールはサイファーを睨む。
が、相手はにやりと笑うだけで、見せつけるように肌を舌で弄ぶ。
むかつく顔だ、と思うスコールだったが、艶めかしいものが皮膚を撫でる感触は、彼に官能を与えるのに十分であった。


「は……あ……っ」


 スコールの呼気が熱を持って逸って行く。
そう大きくはない白熱灯に照らされる肌が、桜色に赤らんで行くのを見て、サイファーも自身の欲が昂って行くのを自覚する。

 サイファーの右手が、スコールの下肢に下りた。
寝袋の中に納まっている其処に、ズボンの上から触れて見れば、窮屈にしている気配が伝わる。


「しっかり勃ってるじゃねえか」
「ん、う……仕方、ない…だろ……っ」


 任務の後だぞ、と睨むスコールに、サイファーも同感だと喉で笑う。
危険な魔物も多い森の中を、テロリストと追い追われで走り回りながら戦っていれば、体は昂って行くものだ。
それは戦闘への高揚でもあるし、種を存続する為の雄の本能の所為でもある。
その状況から解放されて、まだ数時間と経っていない今、スコールの躰がまだ落ち着きを取り戻していないのも当然で、尚且つサイファーが煽りを与えているのだから、それが萎む訳もなかった。

 スコールが頑なに出たがらない寝袋を、サイファーは遠慮なく剥いでやった。
これからの事の為には、邪魔にしかならないので、使い続ける必要もない。
それでも恥じらいか、ただの意地か、諦め悪く寝袋の暖を取り戻そうとするスコールに、サイファーはその片足を持ち上げて阻む。


「っ……!」


 急な体の動きで、捻った傷のある脇腹が痛んだ。
顰めた顔で睨むスコールに、サイファーも彼の心中を察して、


「ああ、悪かった。大事にしてやらねえとな」


 そう言って、スコールの薄らと水の滲んだ眦に口付ける。

 サイファーはスコールの足を下ろして、緩んだ包帯に巻かれた脇腹をそうっと撫でてから、ズボンのベルトに手をかけた。
寝る体勢だったスコールであるが、上着は脱いではいても、何か起きた時にすぐ動けるように、下半身は普通着のままだ。
バックルを外し、ジッパーを下ろして前を緩めるのを、殊更ゆっくりと行うサイファーに、スコールは歯を噛んでじっと作業が終わるのを待っている。
ふ、ふ、と押し殺した鼻息が漏れて、ボクサーパンツの中でスコールの中心部が苦しそうにしていた。

 パンツの中にサイファーの手が入って来て、小さな唇から「あ……」と声が漏れる。
やっと、と言う音を含んだその反応を眺めながら、サイファーはスコールの雄を柔く握って、外へと取り出す。


「っは……あ…あぁ……っ」


 汗で蒸れた、窮屈な場所から解放されて、スコールはほうっと安堵するように声を漏らす。
サイファーに包み込まれている所為で、包み込まれた中心部が蕩けたように温かい。
そのまま竿を軽く扱かれると、それだけで達しそうな程、甘い痺れがスコールの躰を駆け抜けた。


「ふ、ふ…っ、うぅん……っ!」
「イイだろ?」
「や……ん、あ……っ!」


 サイファーの煽るような言葉に、スコールは弱々しく頭を振る。
だが、口ではどんなに違うと言った所で、サイファーの手の中に答えがある。
スコールの中心部はしっかりと固さを持って頭を持ち上げ、その鈴口からじわじわと雫を蕩けさせていた。

 サイファーはスコールの雄を刺激しながら、焦雫の滲んだ胸に舌を這わせる。
またスコール自身には覚えのない小さな傷痕を舐めて、その近くにあった乳輪を舌先で擽った。


「あ、ん……っ!」


 甘さを孕んだ声が零れて、サイファーの耳を楽しませる。

 スコールの呼吸のリズム感覚が狭まって行き、雄が膨らんで切なげに震えている。
腰全体がじっとりと重い官能に支配されて、スコールは身動ぎも出来なくなっていた。


「あ、あ……サイ、ファー……っ、あ、ふぅ……っ!」
「イきそうか?」
「ん、んぅう……っ!」


 カリ、と乳首を柔く噛まれて、スコールの躰がビクッと跳ねる。
スコールの雄もぴくぴくと震えて、とろりと蜜が溢れ出し、サイファーの手を濡らしていた。
それを塗りたくるように、指先で掬い取りながら竿を扱いてやれば、ぬちゃぬちゃと言う音と共に、艶めかしい摩擦でスコールの躰が一層高みへと持ち上げられて行き、


「んっ、んん、んぅ……っ!サ、イ……んんんぅ……っ!!」


 サイファーの名を呼ぶ声を、スコールは途中で堪えた。
きゅうっと唇を噛んで声を漏らすまいと力みながら、下半身をビクビクと震わせ、射精する。
びゅくっ、と吐き出された精子が、スコールの腹にぱたぱたと飛び散った。

 ふ、ふぅっ、鼻で息をしているスコール。
与えられた解放感に酔い、くたりと力を失っている体を、サイファーは休むことなく愛でた。
色付き膨らんだ乳首を食みながら、濡れそぼった手でスコールの太腿を撫で、するりと後ろ側へと回り込む。


「は……、あっ、あ……サイ、ファー……待、て……」
「待てねえよ。お前も早く欲しいだろ」


 そう言ってサイファーは、スコールの白濁液に塗れた指を、ヒクついている秘孔部に宛がった。
ふくふくと期待するように蠢動している秘孔を、指先が擽るように突くだけで、スコールは甘い声が漏れてしまう。


「あっ、んっ……んぁ……っ」
「ん、ちゅ……」
「は、あぁ……胸、もう……っあ……!」


 敏感になった乳首への刺激に、スコールは厭を訴えた。
其処を食まれ、舐められ、吸われる度に、体は勝手に熱を上げて反応し、腹の奥が熱くなる。
その所為で、今正に咥えるものを欲しがっている場所が、いやらしく突くもの吸い付こうとしていた。

 つぷ、と指の先端が中に入って来て、スコールは堪らず「あっ……!」と高い声を上げた。
一人用としては広いテントに、籠るように反響したその声の大きさに、スコールの顔が堪らず赤くなる。
と同時に、指が潜り込んだ場所が、きゅうぅぅ……と恥ずかしそうに締め付けを増した。


「狭くなってんぞ、スコール」
「ん、んぅ……や、中に……あっ、入れ、あぁ……っ!」
「入れないと解せねえよ」


 くぷ、くぷぷ……とゆっくりと進入して来る異物の感触に、スコールは眉根寄せながらも、その表情は蕩けたように恍惚としている。
前だけの刺激でイったスコールだが、それで彼の体が満足している筈もない。
サイファーの指を咥え込み、中をくちくちと解し広げられても、まだ足りないと体の奥が貪欲に熱を求めて伸縮を繰り返していた。

 うねりながら密着して来るスコールの媚肉を、サイファーはゆっくりと撫でながら開くように促している。
指先を曲げ、壁を擦るように往復されて、ずりずりと擦られる快感に、スコールは腰を浮かせる程に悶えて見せた。


「や、ぁあ……っ、は、あ……んん……!」
「あんまり動くな。また痛むぞ」
「……な、こと……言われ、たって……っ」


 身を捩って快感の強さに苦しむスコールに、サイファーは叱るように言ったが、そうは言われても体の反応は勝手に起きてしまう。
実際、体を大きく捩れば、包帯の下で脇腹がずきりと痛みを訴えるので、非常に鬱陶しかった。
だからスコールとしても反応を抑えたい気持ちはあるのだが、敏感に育てられた躰は、どう堪えようとしても正直な反応を見せてしまうのだ。


「あ、あ……っ!は、うん……っあ……!」
「二本目」
「あっ……!ん、んぁ、あぁあ……っ!」


 つぷりと挿入される指が増えて、増した圧迫感と、中が広げられる感覚にスコールは甘んじて声を上げる。
はあ、はあ、と零れる吐息で、テントの中がじっとりと湿って来るような気がした。
乱れた寝袋にも汗が染み込んでいるような気がして、後で寝る時に鬱陶しくなるかも知れない、と現実逃避じみた思考が頭を過ぎるが、それも一瞬の事だ。

 サイファーが手首のスナップを利かせながら、スコールの中をコツコツと指先でノックする。
それはスコールの一番欲しい所までは届かないが、その幾らか手前で、刺激が響いて来る場所を的確に捉えていた。


「あ、ふ、あっあ……!サイ、サイファー……っ、そこ……っんぁ……!」


 開いた足を、ビクッビクッと弾ませるスコール。
一度精を出した筈の彼の中心部は、また頭を持ち上げ、切なげに戦慄いていた。

 くちゅくちゅといやらしい音を立てながら、スコールの淫部は蕩けるに柔らかくなっている。
秘奥から分泌された蜜が、その出元へと誘うように、指先に絡み付いていた。
きゅうっと吸い付くように締め付けながら、奥へ奥へと強請る媚肉の感触に、サイファーも知らず乾いた唇を舐める。

 狭い中の天井を持ち上げるように指の腹で撫でながら、サイファーはゆっくりと指を抜いた。
まとわりついた淫蜜が、つぅと糸になってスコールの秘部とサイファーの指を繋いでいる。
それがぷつんと途切れると、つやつやとした艶めかしい色が、ヒクつきながら男を誘った。


「は…っ、あ…っ、あう……」


 とろりと溶けたスコールの瞳が宙を彷徨う。
中を掻き回される快感がなくなっても、彼の躰に巣食った熱は容易には消えない。
寧ろ、今度は物足りなさと切なさが大きくなって来て、スコールは強請るように膝をサイファーの腰へと寄せていた。


「サ、イファー……んぅ……っ!」


 途切れ気味に名前を呼べば、唇が塞がれた。
侵入して来た舌に絡め取られ、ねっとりと唾液を交換する。

 サイファーは片手で自身の下肢を寛げ、しっかりと膨張した雄を取り出した。
スコールの興奮ぶりに始めこそ揶揄ってもやったサイファーだが、彼とて魔物の討伐任務を終え、そのまま救援任務に向かった身だ。
数日間、荒れ地で過ごして溜まった欲が暴れない訳もなく、早く早くと性急にねだる恋人をあやしながら、自分自身も一刻と早く繋がりたくて堪らなかった。

 大きく固く膨らんだ熱棒が、スコールの淫部に擦り付けられる。
あ、と小さな声を漏らして、スコールはもう一度足を開いた。
サイファーはスコールの腰を掴み、傷に響かないようにゆっくりと太腿を押して、晒された入り口に己を宛がう。
慎ましさを忘れて、求めているばかりの穴口に、先端を押し付けてやれば、スコールはすんなりと男を受け入れて行った。


「ああ……っは、んぁ……っ!」


 入って来る、とスコールはうっとりとした表情で、侵入する熱の感触に酔い浸る。
サイファーのまた、艶めかしく絡み付き、締め付けて来る媚肉の味わいに、熱ぼったい息を吐いた。

 時間をかけて挿入された雄が、スコールの最奥へと行き当たって、壁を圧す。
んぅ、と息を詰まらせたスコールに、サイファーはその呼吸が戻ってくるのを待った。
数秒が経ってから、はあっとスコールが息を吐いたのを確認して、サイファーは腰を動かし始める。


「ん、ん……っ、んっ、あっ……!」


 皺の寄った寝袋の端を緩く掴んで、スコールは甘く喘ぎ声を零す。
汗ばんだ肌が、ランタンの光に照らされ、火照った色をサイファーに見せつけていた。

 柔肉がサイファーの形に馴染むように開くと、律動もスムーズになって行き、固いカリ首がスコールの肉壁を何度も擦る。
指で丁寧に刺激され、官能腺が開いた場所を行き来する竿に、スコールは喉を反らす程の感じ入る。
秘奥がヒクヒクと戦慄いている所に、熱い先端がずくんと入って来ると、スコールの喉からは高い音が漏れた。


「んぁあ……っ!」


 響く自分の声の大きさに、スコールは何度眉根を寄せたか判らない。
堪えないとと思うのに、与えられる快感が強くて、一瞬で頭の中が真っ白に飛んでしまう。

 スコールは包帯を巻いた左腕で口元を隠した。
汗の所為で緩んでいるその布端を噛んで、声を殺そうと試みる。


「んっ、ん、んんぅ……っ!ふ、くぅんっ……!」
「っは、は……お前の中、あっちぃ……」
「う、んっ……!サ、イ、んん……!」


 サイファーの頬を伝い、顎からぽつりと落ちた汗雫が、スコールの太腿を濡らした。
つぅと滑って行く冷たい水滴の感触で、太腿がぞくぞくと震えてしまう。
そうして、腹の底がきゅうぅと切ない鳴声を上げたと同時に、太いものが奥園を強く突き上げる。


「んくぅっ!」


 辛うじて悲鳴は抑えたものの、やはり漏れる声はテントの中でよく響く。
厚みのある帆布で、音はどれ程吸収してくれるだろうか。
今のスコールには、テントの近くに人がいない事を祈る他ない。
そして、そんな思考もまた、中を突き上げる逞しい雄の性によって、白熱に塗り潰されて行くのであった。


「ん、んぅっ、ふぅん……!サイ、サイファ、んぁ……!」


 サイファーを包み込む媚肉が、何処も彼処も痙攣するように戦慄く。
律動に合わせて揺さぶられていたスコールの足先が、ぎゅっと縮こまるように丸くなって、迫る衝動を必死に堪えていた。


「も、もう……っ、来る、から、あ……!」


 奥をコツコツとノックするように突かれる度に、二人の間で淡い色の雄からとろりと蜜が溢れ出す。
既に一度、熱を解放した余韻を得ているから、其処は尚更我慢が効かなくなっていた。

 二度目の限界を訴えるスコールの腰を、サイファーはしっかりと掴んで、より深く禊を打ち込んだ。
ずんっ、と奥まで入った瞬間、スコールは「あ……!」と甲高い声を上げ、覆い被さった男に唇を塞がれる。


「んっ、んぅっ!んふぅうう……っ!」


 ビクッビクッ、ビクンッ、とスコールの躰が大きく波打つ。
サイファーの腹に、びゅくっと吐き出した白濁液が叩きつけられて、ぬるりと粘り落ちて行く。
それを感じながら、サイファーは自分の腰を、スコールの鼠径部に隙間なく密着させて、さらにより深くに入らんとばかりにぐぅっと押し付けた。


「ん、んぁ、ふぅんん……っ!」


 奥の奥を固く太いもので押し上げられる感覚に、スコールは涙を浮かべて目の前の男を見つめる。
獣の欲望を隠しもしない碧眼に見詰められ、首筋から背中にぞくぞくとした感覚が這い、胎内にあるものを強く締め付ければ、


「っく……ん……!」
「う、ふぅ、んんんっ!」


 サイファーが息を詰まらせたかと思うと、熱い迸りがスコールの中へと注ぎ込まれた。
溜め込んでいたものが、どぷどぷと一気に流れ込んで来るのを感じて、スコールはくぐもった喉奥で甘い悲鳴を上げていた。

 射精を終えても、サイファーはスコールの中に収まったまま、その質量も変わらない。
それが妙に嬉しくて、スコールは長く深いキスで酸素の足りなくなった頭で、ぼんやりと光悦感を抱いていた。

 ようやくサイファーが唇を放すと、追うようにスコールの舌が覗く。
ちろ、と先端で唇を舐められて、サイファーは微かに戻った筈の理性が、また遠くへと追いやられるのを自覚する。


「まだいるか?」


 首の後ろに回した手で、項の生え際を撫でながら、サイファーは問う。
スコールは、むずむずとくすぐったさに似た感覚を与えられながら、サイファーの首へと腕を回した。


「サイファー……」
「ああ」
「……もっと……」
「ああ」


 もっと欲しい、とねだる恋人に、サイファーはキスを与えて応えてやる。
幾らでも、と囁く声を聴いて、蒼灰色がうっとりと幸福に眦を緩めた。




 深く寝入ったスコールは、サイファーが緩んだ包帯を取り換えている間、全く目を覚まさなかった。
丸一日の労働に加えて、体を酷使したのだから、その眠りの深さは当然のものだろう。

 テントの入り口に小さな隙間を作って、外を見てみる。

 荒野の向こうの空は、薄らと白みがかっている。
時計を見ないと正確な時間は判らないが、未明はもう過ぎたから、直に朝を迎えるだろう。
サイファーがこれから寝たとして、確保できる睡眠時間は、一時間から二時間と言った所か。
今日は帰投に向けた動きだけとは言え、エスタ平原には魔物も多いし、昨日捕まえたテロリスト達が逃げ出さないように監視する必要もある。
体が疲れている事を思うと、仮眠程度は取って置いた方が無難だ。

 見張り番のSeeDは、野営地の周囲を囲むように配置されている。
交代の際の移動のタイミングを除けば、スコールのテントの近くに人が来る事はないだろう。
サイファーがスコールのテントに入っているとなれば尚更、触らぬ神に祟りなしとされるのも、いつもの事だった。

 サイファーはスコールの下へと戻ると、その枕元に置いていたランタンの灯りを消した。
遮光性の高いテントの中は、まだランタンの灯りに目が慣れていたサイファーには、随分と暗い。
構わずに感覚で自分の寝床を定め、寝袋の感触を背にごろりと転がると、すぐ隣で寝息が聞こえた。


(……寝坊しないか微妙だな)


 それは、自分ではなく、スコールのことだ。
幼馴染やリノア以外には知られていない事だが、スコールは元来、寝汚い性分である。
任務中なら意識的にスイッチを入れて、決めた時間に起きる事が出来るのだが、疲労していれば流石にずれ込む事がある。
こんな場所とは言え、存分にサイファーと熱を交換した後だから、恐らくスイッチも中途半端に切り替わっている筈だ。
先に起きたら起こしてやろう、と今日ばかりは殊勝にしてやる事にして、サイファーは欠伸を漏らした。


(帰るまではエスコートしてやるか)


 スコールが大きくはなくとも負傷し、治癒魔法が効かない状態である事は、彼の任務に同道しているSeeD達にも知られているだろう。
戦力として彼が休まねばならない程ではないが、サイファーとその監視役のSeeD達も合流している事だし、使われてやっても可笑しくはあるまい。
どうせ帰還の路は同じなのだから、エネルギーに余裕のある班が、移動の際の面倒を引き受けるのはよくある事だ。

 もぞ、と隣でむずがる気配を感じて、サイファーは目だけで其方を見る。
薄らとした輪郭が見えるようになった中で、スコールが重そうな躰で寝返りを打った。
が、それが脇腹の傷に響いたか、眠るスコールから、小さく唸るような声が漏れる。


「……大人しく寝てろよ、お前は」


 呆れながら腕を伸ばして、くしゃりと髪を撫でてやる。
んん、とスコールはまた子供のように唸ると、薄く目を開けた。
偶々睡眠が浅くなっていた所に、サイファーが触れたから、ふと目が覚めたと言う程度だろう。
ぼんやりとした蒼は、ぱち、ぱち、とゆっくりと瞬きをしながら、じっとサイファーの顔を見詰めていた。


「……さいふぁー……」
「なんだよ」
「………」


 名前を呼びたかっただけか、顔を見たから呼んだだけか。
どちらかサイファーが判断のつかない内に、スコールはまた目を閉じた。
すぅ、すぅ、と健やかな再開させるスコールに、サイファーはやれやれと一つ息を吐いて、汗の所為でしっとりとした髪を撫でる。

 サイファーは傷に障らないように、スコールの体を抱き寄せた。
鼻孔を擽る硝煙と土、汗の匂いに、色気がないなとサイファーは思うが、今更の話と言えばそうなのだが、ふと零れる諦めは否めず。


(ったく、折角色々と計画を立ててたってのに)


 今日と言う日、8月23日────恋人の誕生日だと、ロマンチストを自覚しているサイファーが忘れている訳もなく、どう楽しませてやろうかと計画を練ってはいた。
お互いに任務が入っている事は知っていたが、何事もなければ、昨晩の夜には帰投できていた筈だったのだ。
スコールは若しかしたら遅くなったかも知れないが、それでも今日の昼にはガーデンに戻れていた計算が出来た。

 その予定通りなら、サイファーは直々に夕飯を用意してやり、一日の締めくくりにはプレゼントも渡してやるつもりだった。
日中はセルフィを始めとした幼馴染の面々に、スコールを占領されるであろう事も考えて、そう言う予定を考えていた。
それがごっそりと一日分ズレてしまった事は、残念と思う他ない。

 とは言え、予定外の事でも、こうして一番乗りに祝ってやれた事には満足している。
用意したプレゼントも、時間としては一日遅れになるだろうが、渡してやらねば勿体無い。
少しは可愛い反応をしてくれると良いがと思いつつ、触れる温もりに心地良さを感じながら、サイファーも短い睡眠に身を委ねるのだった。




スコール誕生日おめでとう、をサイファーから。
任務に出てるものだから、サイファーが計画していた真面なお祝いは出来ていないけど。
あとピンチを助けてニヤリしながら「ハッピーバースディ」をサイファーに言わせたかったんです。

誕生日に怪我をする羽目になったスコールを、サイファーは労わってるんだか、面白がってるんだか。両方なんでしょうね。
スコールも口ではやめろと言いつつも、祝いなら仕方なく貰っておこうか位の感覚はあると思います。
ガーデンに帰るのは夜になるけど、幼馴染達にプレゼント渡された後、改めてサイファーからプレゼントも貰います。ちょっと日付を越えた所で。