ラピディウムの花


 ラグナがスコールを寝室まで連れて行くと、スコールをベッドの端へ座らせてやった。
落ち着きなく身動ぎしているスコールの隣へ座ると、スコールが少し安堵した様子で身を寄せて来る。
宥めて寝かしつけられるかとでも思っていたのだろう。
ちゃんと触れて貰えると判ってか、スコールは子猫が甘えるように、ラグナの首筋に鼻先を寄せて甘え始めた。


「ラグナ……」
「うん。今度はお前の番な」


 首に絡んでくる少年の腕を好きにさせながら、ラグナはスコールの下肢へ手を伸ばす。
フロントの緩んだ隙間から手を入れると、下着の中に固い感触があった。
それだけではない、布地にじっとりと濃い湿り気が滲んでいる。


「スコール」
「……」
「自分でちょっと抜いた?」
「………」


 尋ねてみるラグナに、スコールは答えなかった。
返事の代わりに、ぎゅうう、と縋る腕に力が籠る。
言いたくないが、嘘は吐けない、スコールらしい反応だった。


「お前も男の子だもんなぁ」


 寝床に入る前に、ラグナが遠回しにそう言う匂いを吹聴した所為もあるかも知れない。
駄目だと言いながらも、その手の官能に未だ耐性がないスコールだ。
壁一枚向こうで、彼がそう言う熱を懸命に堪えて隠していたと思うと、ラグナはそのいじらしさに愛おしさを感じると同時に、ちょっとした意地悪心も沸いて来る。

 ラグナはスコールの下着の中に手を入れると、勃起している雄を柔く握りこんだ。
期待していたのだろう、スコールの身体がビクッと跳ねて、太腿がわなわなと震えて力が籠る。


「だいぶ大きくなってるな。あんまり出せなかったか」
「……っふ……う……っ」


 包み込んだ雄を上下に扱き始めると、スコールはラグナの首元に唇を押し付けながら、飲み込み切れない呼気を漏らす。
濡れた鈴口を人差し指の爪先でクリクリと苛めてやると、スコールはビクッビクッと肩を縮こまらせた。


「んっ、んんっ……!ラグ、ナ……や……っ!」
「でも気持ち良いだろ?」
「ん、あ……ふぅ……っ!」


 自分で触れるより、ラグナが触れている方が、各段に気持ちが良い筈だ。
他人からの刺激と言うのは勿論のこと、スコールに性の歓びを教えたのはラグナである。
この肢体のことなら、本人以上に、ラグナの方が知り尽くしている。

 ラグナの指先につつかれて、スコールの先端からは早々に蜜が滲み始める。
どうやら随分と熱が詰まっているようだが、自己処理では精々絞ったくらいしか出なかったのだろう。
だからラグナの指が鈴口をいじり続けていると、堰を失ったようにトロトロと溢れ出してしまう。


「ラグ、ナ、ラグナ……っ!それ、や、だ……あぁ……っ!」
「大丈夫。気持ち良いから出るんだよ」
「は、う……う、うぅん……っ!」


 縋るものを求めるように、スコールの身体は益々ラグナに密着する。

 ラグナはスコールのズボンの前を外して、下着ごとずり下ろした。
淡い色の中心部が頭を起こして、涙を零している様を露わにする。


「さっきの俺と一緒」
「ふ……、ふ、ぅ……っ」


 我慢が効かない程に興奮している有様を晒されて、スコールの顔が耳まで赤くなる。
恥ずかしさに憤死しそうなスコールだが、しかし、ラグナと一緒だったんだ、と言われると、俄かに胸の内に喜びが沸いて来た。

 ラグナはそんなスコールの雄をもう一度包み込むと、根本から先端まで、丹念に扱いてやった。


「あ、あ……っ、あ……っ!」
「お前が丁寧にしゃぶってくれたから、ちょっと楽になったよ」
「は……は、あぁ……っ、うぁ……っ」
「だから、今度はお前な」


 根本に爪先を当てて、カリッと一掻きしてやれば、スコールは「あぁっ……!」と高い声を上げた。
そのまま同じ場所を指の腹で撫で押していると、スコールは赤い顔でふうふうと荒い呼気を零している。


「ん、んん……う、あ……っ」


 漏れる声には切ないものが混じり、スコールの鈴口からとろりと蜜液が溢れ出す。
眉間に皺を寄せながらも、唇は薄く開いててかりのある舌が覗き、熱の興奮を持っていることが見て取れる。
ラグナの手の中では、その象徴がむくむくと膨らみを増し、今にも弾けんばかりの大きさまで成長していた。


「ラグ、ナ……あ……あ……っ!」


 ぶるぶると体を震わせ、スコールの手がベッド端でシーツを握り締める。
もう出る、と噤み勝ちな口の中で訴えるスコールに、ラグナは扱く手を速めた。


「あっ、あっ、んん……っ!イ、く……ラグナ、イく……っ!」


 ラグナの手の動きに、促されるようにして、スコールは湧き上がるものが迫って来るのを感じていた。
首を反らして腰を戦慄かせるスコール。
ラグナはそんなスコールの腰に腕を回し、逃げないようにと支えながら、反り返った彼の中心部をきゅうっとひとつ握ってやった。


「あっ、あ!あぁあっ!」


 スコールは甲高い声を上げて、ビクッ、ビクンッ、と体を弾ませた。
ラグナの手の中で生暖かい粘着液が吐き出されて、手のひらをべっとりと濡らす。


「一杯出たな」
「あ……あぁ……っ」


 耳元で囁いたラグナの声に、スコールの肩がふるりと反応を示す。

 ラグナは濡れた手でそっとスコールの股間に触れ、手のひらに付着したものを塗り広げていった。
生々しい感触のものが、敏感になっている局部を撫でる感触に、スコールは悶えるように身動ぎする。
しかし、後ろ側から回されたラグナの腕が腰をしっかと捕まえているものだから、もじもじと腰をくねらせることしか出来なかった。


「ラグ、ナ……あ、んぁ……」
「まだ全然固いな。こっちだけじゃ寂しいもんな、お前」


 ラグナの指がスコールのシンボルの根本をくすぐっている。
勃起したままの其処を人差し指と中指で挟むようにして、すりすりと指を動かせば、竿がぴくぴくと震えて見せた。

 スコールは、ラグナの手のひらで与えられる官能に、うっとりとした表情を浮かべている。
ラグナはそんなスコールに「俺のも触ってみ?」と囁いた。
蒼灰色は熱に蕩けたまま、ラグナの言葉に操られるようにして、握り締めていたシーツから手を離し、隣にいるラグナの太腿に触れる。
そこから手探りでラグナの中心部へ辿り着いたスコールは、傍らの男もまた、自身と同じように熱を高ぶらせていることを知った。


「は……はぁ……は……っ」


 スコールの手がラグナのバスローブの中に潜り、ラグナに直に触れる。
緩く握って手淫を始めるスコールに、ラグナの双眸が薄く細められた。


「欲しい?」
「……」
「言ってごらん」


 顔を赤らめながらも、問には恥ずかしそうに視線をそらしてしまう初心な少年に、ラグナは敢えて促す。
彼の股間はラグナの手指に弄ばれて、ピクピクと反応を示し、鈴口からはまたとろりと蜜を零している。
前でこうなのだから、いつもラグナを受け入れる所はどうなっているのか。
ラグナの想像に違わなければ、その状態でお預けに耐えられるほど、スコールは我慢強くはなかった。

 そしてラグナの思った通り、スコールは濡れた瞳で此方を見詰めながら、


「ラグナが……欲しい……」


 性行為そのものよりも、そうしてねだることの方が、スコールにとっては抵抗がある。
それでも言わせようとすれば、言わずに我慢は出来ないスコールに、可愛いなあ、とラグナは思った。

 きちんと言えたご褒美、と唇を塞ぐ。
スコールは黙ってそれを受け止めて、薄く開いた唇の中にラグナを迎え入れた。
自分からは控えめになってしまう少年の舌を絡め取り、唾液を混ぜながら咥内を愛でる。
そうしている間に、ラグナの手に捕まったスコールの中心部は、悦ぶように愛蜜を溢れさせていた。


「ん、んちゅ、ん……っ、んあ……っ」
「ふ、ん……ん、んん……」


 角度を変えながら、深く、丹念に愛してやる。
スコールは、脱衣所で佇むラグナを見付けた時のことなど、すっかり忘れているようだった。
ラグナが自分だけを見ているので、安心しているのかも知れない。

 ラグナはスコールをベッドへと横にさせて、彼の下肢を隠している衣を脱がせた。
スコールも早く次へと進みたいのか、腰や足を動かして、脱衣の援けに積極的だ。

 下肢をすっかり裸にさせると、スコールは暖を求めるように、ラグナに足を擦り寄せた。
太腿がラグナの腰のあたりをくすぐって、ベッドシーツに白い波が寄せられる。

 何度も重ねた唇をようやく放せば、細い糸が二人の唇を繋いでいた。


「は……ラグ、ナ……」


 離れた感触に、スコールは寂しそうな表情を浮かべるが、傷のある額にキスをしてやれば落ち着いた。

 ラグナの手がスコールの腰骨から下肢へと滑って行く。
傭兵と言う職業をしている所為だろう、スコールの身体には小さな傷がいくつもある。
それでも彼自身の肌は、若さのお陰かきめ細かく、汗ばんでいる所為かしっとりとしていた。

 蜜に濡れた中心部の際も掠めながら、ラグナの手が股の下へと潜って行くと、スコールも差し出すように足を開く。
小ぶりな臀部の谷間を這い、辿り着いた秘部につんと触れて、ラグナはその感触に気付いた。


「スコール。お前───ひょっとして、いじってた?」


 此処、とラグナが秘穴を指先でつつくと、ヒクッ、とスコールの腰が戦慄く。
元より敏感な体ではあるが、それが普段よりも顕著であることを感じながら訊ねてみれば、


「………」


 スコールは判り易く耳まで赤くなって、ベッドシーツを手繰って顔を埋めた。
言いたくない、と言わんばかりの態度は、翻って答えである。

 ラグナはそんなスコールに、また密やかな意地悪心を刺激されていた。

 穴淵の形を確かめるよう、丹念に丁寧にそこを指の腹で辿る。
膨らんだ土手がヒクヒクと反応し、中へと誘っているのが判ったが、ラグナは中々乗らなかった。
その内にスコールの方がもどかしさに耐えられなくなり、小ぶりな尻がもぞもぞと身動ぎする。


「ラグナ……早く……」
「うん」


 急かすスコールにラグナは頷いたが、指はまだ縁をくすぐっているだけだ。


「ラグナぁ……っ」
「判ってる。でも、ちゃんと解さないと辛いだろ」


 ラグナしか知らないスコールだ。
彼の其処は始める時にはいつも狭くて、大事に時間をかけて拓いてやらないといけない。
前に閨を共にしてから随分と時間が経っているから、気持ちに任せて迂闊に急いてはいけないのだ。
負担を被るのはスコールなのだから。

 と、それがいつもの流れなのだが、今日は少しばかり違う。
違うのにいつも通りの手順を踏もうとするラグナに、やはり根を上げるのはスコールの方だった。


「いい、から……そこ、もう……入、る……っ」
「無理したら痛いって」
「……っ」


 優しい口調で宥めるラグナに、スコールはふるふると首を横に振った。


「も……言う……言うから……」
「うん?」


 顔を赤くし、羞恥で目尻に雫を浮かべるスコールの声に、ラグナが「なにを?」と尋ねる。
スコールはきゅっと唇を一度噛んだ後、顔を見ていられないと瞼を固く閉じながら、


「さっきまで……自分で、してたから……」
「してたって、何を?」
「……そこ……今、ラグナが、触ってる所……っ」
「此処?」


 すり、とラグナの指が穴の入り口を摩る。
こくこくとスコールは頷いた。


「そ、そこ……自分で……」
「自分で?」
「い、じって……拡げてた、から、ぁ……っ!だから……入れて、良い……っ」


 自分で触り、弄り、ラグナを迎え入れる準備をしていた。
それを告白するのは、スコールにとって恐ろしく恥ずかしくて、口にしている間に沸騰死してしまいそうなほどの行為だった。
それ程の抵抗感を持っても、言わねばラグナが欲しいものをくれないことを、彼はよく覚えている。

 スコールは引っ張り寄せたシーツに顔を埋めている。
居た堪れなくて仕方がないのだろう。
しかしラグナの前には、恥ずかしい思いをしても全く萎える気配のない幼い性の象徴があり、指先にはきゅうきゅうと咥えるものを欲しがっている穴がある。


「此処を、自分で───」


 すり、とまたラグナの指が秘部を撫でる。
ビクッ、とスコールの太腿が大袈裟に跳ねた。
白い太腿には球粒の汗が伝い落ち、少年の躰が羞恥と興奮で昂りに犯されていることが判る。

 むずがるようにシーツの波で足裏を滑らせているスコール。
ラグナはそんなスコールの期待に応えて、つぷりと指先を秘穴に侵入させた。


「んぁ……っ!」


 ビクン、とスコールの身体が弓形に撓る。
まだ指先程度しか入っていないのに、この反応だ。
彼の躰が長らく中途半端な熱に虐められ、先を求めて感度を上げていたことが原因だろう。

 ラグナは、そんなスコールの入り口を、埋めた指先でこね拡げてやった。


「んぁ、あっ、あっ……!ラグナ、そこ……や……っ!」


 スコールの入り口の感触は柔らかかった。
普段の頑なさを思えば、蕩けたように解けていて、随分と丹念に───と言うよりは、懸命に頑張ったのだろう、ラグナの指をするすると飲み込んでいく。


「あ、あう、ああ……ふぅ、んん……っ」


 他人の指の侵入を受けて、スコールの膝が微かに浮いて、ビクッ、ヒクッ、と反応を示す。
入り口と違って、内肉の方はまだ固さがあるが、ラグナの指の妨げになる程ではなかった。
中ほどまでは自分で指が届いたのだろう、其処から奥へ行こうとすると、きゅぅっと道が狭くなった。


「此処からもうちょっとかな」
「んぁ、あ……っ!ラグナ、の、指……っあ……!まだ、奥まで……っああ……!」
「自分じゃ此処までは難しいよな。でも頑張ったな」


 ぬぷぷ、とラグナの指が根本まで穴の中へと入って行く。
必然それだけ侵入も奥まで進むことが出来て、スコール自身では届かなかった場所へも届いてくれる。
スコールは胎内に入ってきたラグナの指に喜んで、咽ぶように肌を赤らめて喘いでいた。

 ラグナの指がスコールの中でゆっくりと蠢き、絡みつく肉壁を宥めるように撫でていく。
秘奥のある一点を指の腹で押してやると、スコールは目に見えるほどに体を大きく撓らせた。


「あぁっ!」


 一際高い声が上がり、弱点を捉えられたことを示す。
ヒクッヒクッと内肉が戦慄いて、ラグナの指を締め付けていた。
それを丁寧に解くように、ゆっくりと指で摩りあやすと、スコールはあえかな声を漏らしながら、頭を右へ左へと揺らす。


「あ、あ……っ、あぁ……っ!そこ、ん……痺れ、る……んん……っ」
「痛くはないだろ?」


 此処はお前が好きな所だから、と囁けば、スコールの喉がひくんと震えた。
スコールの身体の事は、ラグナが一番よく知っている───それをスコールも判っている。
ラグナがそう言うのならそうなのだと、意識に刷り込まれるように、ラグナの言葉はスコールの身体に根を張った。

 肉ビラをラグナの指が掻き分けるように擦り続けている内に、スコールの内側から愛液が分泌され始めた。
女ではないのに濡れている、そのいやらしさにラグナはひっそりと唾を飲む。
そのまま中を解し続けていれば、程なく、くちゅくちゅと蜜音が混じり始めた。


「あふ、あっ、あぁん……っ!ラグナ、ラグナ……っ!」
「うん。欲しい?」
「…ほ、しい……っ!ラグナ……あんたの、早くぅ……っ!」


 一度何もかもを白状したからだろう、スコールはもう告白することに抵抗しなかった。
中を掻き混ぜるラグナの指に悶えながら、もっと太いものを強請って、ゆらゆらと腰を揺らす。
エッチになったなあ、と独り言ちると、スコールの媚肉がきゅうんと切なげに締め付けた。

 引き留めるように絡みついて来る媚肉をあやしながら、ゆっくりと秘穴から指を抜く。
ラグナの指に広げられて、甘い色に染まった穴は、ヒクンヒクンと伸縮運動を繰り返していた。
其処の疼きが堪らないのだろう、スコールは我が身を庇うように抱いて、ベッドの上で苦しそうに身を捩っている。

 ラグナがバスローブの前を開けば、反り返った雄があった。
しゃぶられた時の唾液がまとわりついて、窓から差し込む月明かりでてらてらと光っている。
ラグナの年齢を思えば一度射精すれば次までどうしても時間がかかるものであったが、今日は全くそんな必要もないほど、芯がしっかりとしていた。


(やっぱり、妙なくらいに体が熱いな。スコールも自分でシてたし、何かあったのかもなあ)


 同衾は断固として拒否したスコールだったが、今目の前にいる彼は、そんなことは忘れたように熱に溺れている。
常の彼の仕事ぶりを思えばまず有り得ないことだ。

 そう考えると、ラグナの今の状態も併せて、何か盛られでもしたか、と言う懸念は浮かぶ。
脱衣所で見付けた諸々も、その為に用意されたとすれば納得も行く。
ハニートラップまで仕組まれていたかは判らないが、一介の要人に用意するつもりなら、それなりの箔がつく所に話はつけてあっただろう。
どちらにしろ、ラグナがそれを当てにすることはないのだが。

 が、そのお陰で今、ラグナの目の前には供物のように横たわっている少年がいる。


「ラグナ……?」


 ようやく、と言う所まで来たのに、ラグナが見つめるばかりで動いてくれないことに不安が募ったのだろう。
スコールは泣き出しそうな顔で、恐る恐るに見つめている。


「ああ、ごめん」
「……」
「なんでもない。可愛いなって、思ってただけだよ」


 覆いかぶさって眦にキスをすると、スコールはむずがるように小さく鳴いて、ラグナの首に腕を回す。
密着したがるのは甘えている時、甘える時は寂しい時や不安な時だ。
ラグナはスコールの背を抱きながら、よしよしと子供にするようにあやしてやった。

 その傍ら、膝でスコールの太腿を押せば、スコールは素直に足を開いた。
待ち遠しさに濡れた淫部に、ラグナが雄の先端を宛がえば、耳元でスコールが熱の吐息を漏らすのが判った。


「挿れるぞ。ゆっくりな」
「……や……早く……」


 待ちきれない、とスコールが駄々を捏ねる。
その様子も可愛いもので、ラグナは「ゆっくり」と念押ししてから、腰を前へと進め始めた。

 固く張りつめた雄の先端が、スコールの柔らかくなった媚壺を押し開いて行く。


「う……っんぁ……あぁ……っ!」


 ようやく熱の塊の感触を知れて、スコールは感極まった声を漏らす。
ずぷ、ずぷぷ……と時間をかけて、肉と肉が馴染むのを待ちながら入って来るラグナに、スコールは胎の奥が煮えるように熱くなるのを感じていた。


「ラグナ……っあぁ、ラグナぁ……っ!入って来る、あぁ……!」
「っは……柔らかい……ん、でもきゅうきゅう来てる……はあ、スコール……っ!」
「あふ、うぅ……奥に、来て……もっと、中まで……!」


 早く早くと急かしたがって強請るスコールだが、ラグナは努めてゆっくりと動いていた。
それがスコールには尚更に焦らされているようで辛く、だからこそしきりに奥への侵入を求めて口にする。


「は、はぁ、あぁぁ……!ん、くぅ……」
「ふ……はあ……半分、かな……」
「あ、う……あぁ……っ!」


 ラグナの呟きに、スコールは眉根を寄せながら甘い声を上げる。
まだ半分、奥の隙間が疼いて仕方がない。
けれど、其処までラグナが入って来てくれていることも嬉しくて、此処から先はこれからと言う期待で、どうしようもなく高揚する。

 ラグナはスコールの両膝を掬い上げて、足を左右に大きく開かせた。
スコールの涙を零す中心部も、ラグナと繋がっている場所も曝け出される格好に、スコールの耳が熱くなる。


「やあ……っ!」
「大丈夫。いつもしてる事だろ」
「う、あ……あぁ……っ!」


 いつものポーズでも、恥ずかしいものは恥ずかしい。
スコールの唇はそう言いたげだったが、ラグナがずぷりと奥へと進むと、言葉は喘ぎ声に取って変わられた。

 そのままラグナが奥へ、奥へ、じっくりと時間をかけて進む度に、スコールは声を上げた。
此処まで来た、もっと来て、と啼きながら求める少年を、ラグナはキスの雨で宥めながら行為を進める。
雄を咥えた秘穴は、それが中へ中へと入って行く感触に喜んで、ラグナの形にぴったりと吸い付いて離れない。


「ラグナ、もっと……一番奥……っ」
「うん、もうすぐ……」
「は、あふ、ああ……っ!あ、うぅん……っ!」


 ラグナが囁いた通り、一番奥の突き当りに、雄の先端が当たる。
ぐっと胎内を押し上げられる感覚に、スコールは息を詰まらせて喉を反らした。

 最奥まで届いたラグナの存在感に、スコールは足の爪先をピンと張り詰めて、全身を戦慄かせている。
沿った喉が、はふ、はふ、と言う乱れた呼吸に合わせて動いていた。


「んぁ……あ……っ、大き、い……っ」


 胎内で感じる雄の大きさに、スコールは頭がちかちかと明滅する。
何度となく感じて覚えている筈のラグナが、普段よりも一回りは膨らんでいるような気がした。
硬度も申し分なく、これで中を強く突き上げられたらと思うと、それだけで達しそうな程、スコールは興奮している。

 きついほどの締め付けと、うねうねと物欲しげに絡みついて来るスコールに、ラグナもまた、滾る熱を宥めるように、はあっと息を吐いた。


「中、トロットロだ……こんなに濡れちまって」
「は……あ……っ、あぁ……っ」
「これなら、そんなに苦しくはないよな」
「ふ……んん……」


 囁き確かめるラグナの声。
吐息と一緒に耳朶に触れるそれで、スコールは首の後ろにぞくぞくとしたものが奔る。
赤い耳をラグナが悪戯に舌で撫でてやると、スコールは「あうぅ……!」と切ない声を上げながら、ラグナの中心部を強く締め付けた。

 ラグナがゆっくりと律動を始める。
ぬるりとした感触で覆われた内壁を、ラグナの張りつめた雄が擦り上げていく。


「ああぁ……!」


 スコールは甘い声を上げながら、悦びに身を撓らせた。
弓形に浮く背中にラグナの腕が回り、細身の少年の躰をしっかりと抱き捕える。

 半分まで抜いた雄を、ラグナは一息に突き入れた。
ずんっ、と奥を強く打ち上げられて、スコールの身体が跳ねる。


「あぁんっ!」


 寝室に声が響き、それが幾らも消えない内に、ラグナは腰を前後に動かした。
分泌液で濡れそぼった内側で、ぐちゅ、ぐちゅ、と卑猥な音が繰り返される。


「はっ、はっ、ラグナ、ラグナ……っ!奥、届く、んぁっ、あぁっ!」
「スコール、足持って。自分で開いて」
「んぁ、あ、あぁ……っ!」


 ラグナに促され、スコールの手が操られるように動き、自身の膝を抱える。
自ら恥部を差し出す格好になって、スコールの頬がまた赤くなるが、ラグナが強く腰を突き出せば、少年は甘露の声を上げて喜んだ。

 ラグナはスコールの身体を強く抱きしめ、何度も腰を打ち付ける。
二人の腹の間で、スコールの勃起した雄が律動のリズムに合わせて頭を揺らし、鈴口から先走りを零す。
スコールの腹は自身の体液ですっかり汚れていたが、それを気にする余裕は既になかった。


「ラグ、ラグナ……!んっ、あぁっ、凄い……あっ、太い、んぁあっ!」
「はっ、はぁっ、なんか……体がすげえ、熱くってさ。お前の中にずっといたいよ」
「ふ、ふぅ、あぁ……っ!俺、も……俺も、熱い……っ!ラグナが、当たってるとこ、あぁっ!疼いて、ん、もっと、もっと……!」


 もっと欲しい、もっと頂戴。
スコールはラグナに唇を捧げようと顔を近付けながら、熱の涙を浮かべた目で言った。
ラグナがそれにキスで応えてやると、スコールは嬉しそうに舌を絡めて来る。


「んんっ、んちゅ……んっ、んっ……!」


 咥内で深く舌を絡ませ合いながら、下部の繋がりを深くする。
ラグナの腰骨と、スコールの股間とが隙間がないほどに密着していた。
張りつめた雄肉が、スコールの最奥をぐぅうっと押し上げて、重くて熱い感覚を齎している。


「ふ、ふぅう……っ!ら、ぐな……も、来る……っ!」


 ラグナが良い所に当ててくれているものだから、スコールはその痺れで下半身の力が抜けそうだった。
その状態でラグナが少しでも身動ぎすれば、先端がぐりっと抉るように肉壁を擦る。
丸めた足の爪先がビクンッビクンッと震えて、スコールの限界が近い事を示していた。

 ラグナは唾液の零れたスコールの口端を舐めて、薄い笑みを梳いて言った。


「良いよ、スコール。気持ち良いとこ突いてやるから」
「ラグ、ナ、あっ!あぁっ!」


 低い声音に囁かれ、スコールの秘奥が切なさと喜びに戦慄いた瞬間、ラグナは其処を強く突いた。
ピンポイントに捉えた弱点を、逃さず的確に繰り返し突き上げると、スコールはあられもない声を上げて乱れ喘いだ。


「ああっ、んぁっ、ひあっ!はっ、うん、あっ、あぁあっ!」
「く、はっ、はぁっ……!スコール、うん、可愛いよ……俺で一杯感じて、イきそうになってる顔。もっと見せてくれ」


 目も開けていられない程に感じ入り、濃茶色の髪を振り乱しながら喘ぐスコール。
ラグナはそんなスコールの顔を両手で包み込み、真っ直ぐに此方を向くように固定した。
スコールは薄く開いた瞼の隙間から見える、熱を滾らせた翡翠に貫かれて、体中の快感腺が拓くのが判った。


「ひぁ、ああっ、あぁあんっ!イく、ラグナ、俺……っ!もう、ああっ、あぁっ!」
「ああ、締まって来た……!うん、良いよ、ほらっ」
「あうっ、あっ、あぁっ!ああぁっ!」


 スコールは若竹のように大きく体を仰け反らせた。
四肢を強張らせた体は、頭から足の爪先まで敏感になり、全ての官能を感じ取ろうとしている。
其処へラグナの雄が、彼自身の最も弱い場所を突き上げれば、


「あぁぁぁあっ!」


 咥え込んだ雄を、先端から根本まで余す所なく締め付けながら、スコールは絶頂した。
びゅくん、と濃い精液がスコールの象徴から噴いて、自身の胸元まで飛び散っていく。

 絶頂と同時にスコールの中も熱く滾り、咥え込んだ雄を今日一番に締め付けた。
艶めかしく蠢動する肉壺が、ラグナの固く張りつめた肉棒に絡みつき、溜め込んだものを搾り取ろうとする。
久しぶりに味わうその感触に、ラグナもまた、歯を噛みながら果てを迎えた。


「スコール……っ、出る……っ!」
「あ、う、あぁあ……っ!ラグ、ナぁ……んぁあっ!」


 どくん、どくん、と脈打った直後、ラグナの一物はスコールの中へと射精した。
熱くて蕩けた劣情が自分の中に注がれる感触に、スコールは歓びの涙を浮かべながら喘ぐ。

 どろりとした感触がスコールの中をいっぱいに満たしていた。
その傍ら、納められたままの雄が未だに固く膨らんだままなのが判る。
体の中で感じる雄の存在に、それに支配されることを覚えた少年は、うっとりとして続きを強請らずにはいられなかった。


「ラグナ、もっと……もっと、して……っ」


 スコールの腕が、何度目かラグナの首に絡みついた。
離したくない、離さないでと訴える蒼灰色に、ラグナは双眸を細めて頷く。


「このままで、良いな?」


 休まなくて良いんだなと言えば、スコールは躊躇わずに頷いた。


「ラグナの、もっと……中に、俺の……俺の中だけ……っ」


 スコールの言葉は譫言めいていて、上手く文章が紡がれていない。
目の前の存在と、体の中で暴れ狂うように鎮まらない熱に翻弄されて、他のことを考える余裕もないのだろう。

 そんなスコールに、ラグナはくすりと意地の悪い笑みを浮かべ、


「大丈夫。お前だけだよ」
「は、あ、あぁ……っ!ラグナ……っ」


 囁きながら、ラグナは律動を再開する。
スコールの揺れていた足がラグナの腰に絡みつき、しっかりと其処にいる男を離すまいと必死さが伝わる。


「他の誰かに触ったりしない。他の誰かにあげたりしない」
「あ、あぁっ、んぁっ!まだ固いの、奥、ゴツゴツして、あぁっ!」
「どんなに体が熱くて我慢できなくたって、触るのも、中に出すのも、お前だけだ」
「あん、あっ、ふっ、あぅんんっ!ラグナ、ほんとに、俺だけ……あっ、あぁっ」
「だからさ、大丈夫だよ。さっきだって、自分でするのにゴム取りに来ただけだったんだから」


 ラグナがそう囁くと、スコールははっとした顔で目を瞠る。
蒼灰色に笑みを梳いたラグナの顔が映りこんで、少年の顔はみるみる赤くなって行った。

 其処から何事か言おうとしたスコールだったが、ずちゅっ、と奥を抉られて、頭の中が白熱に変わる。


「はぁんっ!あぅ、ラグ、そこっ、あっ、あっ、あっ!」
「お前がさ、ちゃんと休まなきゃって、言ってたから。付き合わせちゃ悪いなと思ってさ」
「あっ、んぁっ、あっ、あぁ……!」
「だからって、お前以外を抱いたりはしないよ。ましてや、お前が此処にいるのにさ」
「はっ、はっ、ふぅ……うっ、んぅぅ……ラグ、ナぁ……っ!」


 スコールは恥ずかしそうにいやいやと頭を振るが、ラグナはそんな様子も愛しげに見詰めている。
秘奥が抗議のようにきゅうきゅうと締め付けて来るが、そんなものはラグナを余計に興奮させるだけだ。


「お前もきっと熱かったんだな。だから、自分でいじったりして」
「は、ふ、んん……っあぁ……!」
「でも、後ろじゃなきゃイけないし、届かないしで。俺のとこに来てくれたのかな」
「あっ、あぁっ……!」


 ラグナの呟きに、スコールは小さく頷いていた。


「が、まん……しようと、思った、けど……っ!ずっと、奥が、あっ、あっ、熱くて……全然、収まらなくて……っ!俺、あんたじゃないと、い、イけ、ない……からぁ……っ」
「うん」
「あ、あんた、寝てたら、やっぱり、やめようと思って……っ!でも、ベッド、見たら……っ、い、いなかった、から……っ」
「探して見たら、あそこにいて。そんで───勘違いさせちまったんだな、やっぱり」
「ふ、はふ、ああぁぁ……っ!」


 今夜の自分の行動を振り返って、スコールは益々顔を赤くする。
湧き上がる羞恥の強さを訴えるように、媚肉がラグナをぎゅうぎゅうと締め付けてくるのが、少年の可愛い我儘を示しているようだった。

 ───スコールもまた、眠るまではきちんと休むつもりだったのだろう。
しかし、体の中で湧き上がる熱に耐えられず、一先ずは自分で治めようとしたに違いない。
それが彼の場合、後ろでなくては満足できない刺激であったから、自分で其処に触った。
けれど根本的にラグナの手によって与えられることでしか満足することを教えられていないから、耐えきれずにラグナを頼りに来たのだろう。
その時分にラグナが偶々一歩先に起きていて、脱衣所でアイテムひとつを拝借した所に鉢合わせした……と言う訳だ。

 ラグナが使おうと思ったのは、自己処理の跡片付けが楽になるからと、スキンひとつのみ。
あれと一緒に置かれていた電話番号やら何やらが書かれた名刺は、引き出しに仕舞って以降は触れてもいない。
だが、そんなことを知らないスコールは、自分が先んじて拒否を示したこともあり、代わりの相手をラグナが呼んだと思ったのだ。

 冷静な風に見えて、思い込んだらまっしぐらな一面があるスコールである。
幼い独占欲はわかり易くスコールを突き動かし、取られて堪るもんかと、自らラグナの熱を啜った。
其処できっと彼の理性も焼き切れたのだ。

 其処から先は、ただただ熱に翻弄されていく。
ラグナに触れられ、中を弄られ、一番奥に太くて熱いものを貰う。
性に未成熟な少年が、此処から抗う力がある筈もなく。


「ラグナ、んぁ、あっ、あぁっ……!まだ、まだ欲しい……っ!熱いの、止まらない……っ!」
「ああ、俺も……」
「はぁ、はぁ……もっと、いっぱい、あんたの……俺の、中に……うぅん……っ!出して、欲しい……っ」
「うん、そうだな。今日はちょっと、長くなりそうだし。一杯お前の中にいたいな」


 話をしていると、気がそぞろになってしまう。
お互いを感じることだけに集中したいスコールのおねだりに、ラグナは眦を細めて頷いた。

 ベッドの軋む音が次第に大きくなって行く。
それを隠すように上がるのは、熱に溺れて乱れ切った、少年の甘い声だ。
スコールはラグナの律動に応えるように腰を動かし、一層深い場所へとラグナを誘うのだった。




 ドールでの公務を終えて、エスタに戻ったラグナは、すぐに貯まった仕事に取り掛かることとなった。
同時にドールのカジノで見た諸々を参考に、エスタで同様の施設を導入できるかと言う取り組みについても考える。
公営賭博の是非については、やはりまだまだ検討の必要があるとして見送られる事となったが、どのみち、今のエスタで安易に始められることでもない。
長い目で考えていく以外に方法はないだろう。

 それらが一段落した後、ラグナは公務の小休止に、大統領官邸に設えられた書斎に来ている。
其処はエスタで発行された本でほとんどが埋められており、長い鎖国の影響もあって、中々他国で発行された本が入ることはなかった。
だが開国してからは、今後の国際社会で生き残って行く為にも、他国の知識は必要不可欠として、バラムガーデンの協力を借りながら、諸外国の本も投入されるようになった。

 十七年の間をエスタに籠ることになったから、ラグナも昨今の外国のことには詳しくない。
嘗てはジャーナリストを目指し、ガルバディアの軍部に籍を置いて、休暇を利用したり任務の一環だったりと色々な所に出向いたが、もう古い話だ。
当時に見聞きしたことも、今ではすっかり時代遅れで、スコールを始めとした若者たちと話をしていても、ジェネレーションギャップは少なくなかった。
だから改めて他国の今を知るべきであると、ラグナは積極的に異国の本を手に取る。
其処には、元々異邦を知ることが好きである、彼自身の性質も反映されていることは間違いない。

 束の間の休憩に、腰を落ち着けて本を読める時間と言うのは、決して多くはない。
だから官邸にいる間のラグナの読書は、ほとんどが書棚の前での立ち読みになった。
此処で目星をつけて置いて、気になる本があったら、仕事終わりに借りて帰る、と言うのがパターンだ。

 今日もラグナは書架の前で本を開いていた。
読んでいるのは、『ドールの歩き方』と言う、ガイドブックだ。
中々の厚みで刷られたそれは、ドールで有名な電波塔と言った観光地を始め、地元で親しまれている料理や、港周辺の名所など、様々な情報が掲載されている。
同じタイトルで各国各都市の案内本がシリーズで発行されており、観光旅行の供にしている者は多いと言う。

 ラグナは本をぱらぱらと捲りながら、写真付きの解説を眺めて、目当てのページを探す。


(えーと、確かこの辺がカジノのあれこれ……あったあった)


 開いたのは、ドールの有名カジノを紹介したページだ。

 カジノは先達て実物を見たばかりである。
その知識と経験を踏まえて、観光と言う面で切り取られた案内はどうなっているのかと、ちょっと興味が湧いたのだ。

 本には一般の客向けのカジノの遊び方が書いてある。
その傍ら、カジノが併設されたホテルや、それと提携しているレストランやバーについても紹介されていた。
そして、次のページを捲って見ると、系列店で提供される料理や、それに使われるドール独自のスパイスについて解説があった。


「あ〜、これ晩飯に出て来たな。えーと、ドール近郊の平原で採れるハーブと、海岸に生息するアダマンタイマイの肉を煮たもので……」


 見覚えのある写真で掲載された肉料理は、先日の公務の際に提供されたものだ。
まだ記憶に新しいそれと、寸分違わぬ写真に、結構美味かったなあなどと思っていたラグナだったが、解説文を読むうちにその眉尻が下がり気味になる。


「“アダマンタイマイの甲羅や肉から抽出されるエキスは、滋養強壮の効果が高いとされる。此処に加えられるハーブも、ドールでは古くから疲労回復に良いと親しまれている。”───……と」


 人の気配が少ない書斎で、ラグナの声を聞いている者はいない。
書架の向こうには此処を管理している執政官もいるが、大統領の何気ない独り言は今に始まった話ではないのだ。
多少聞こえた所で、その内容に悪戯に聞き耳を立てることはなかった。

 ラグナはページに綴られた解説をまじまじ見つめて、どうりで、と納得した。
先の公務でドールを訪れ、ホテルでいつまでも熱い夜を過ごした原因は、此処にあったのだ。


(俺もスコールも、全然萎えなかったもんなぁ)


 あの日の夕食は、ラグナはホテル側が名物として提供したものを食べている。
スコールは警護に終始している間はほとんど飲食をしないが、念の為の毒見だと言って、ラグナが食べるものを少しだけ食べた。
ラグナはともかく、スコールは然したる量ではなかった筈だが、何せスコールは若い。
持て余すことは勿論、あの日は久しぶりに顔を合わせての夜だったから、そう言う重なりも影響したのかも知れない。

 お陰であの夜は、窓の向こうが白むまで、熱に溺れ耽ってしまった。
少年の躰を貪るほどにラグナの興奮は昂ぶり、スコールもまた、骨まで喰い尽くされることを望んで、ラグナを離そうとしなかった。

 其処まで交じり合っていれば、反動の疲労も濃く、翌日のラグナは帰る足ですっかり寝落ちてしまった。
スコールは飛空艇に乗っている間はいつもの顔をしていたようだが、エスタに戻って任務から解放されると、「……無理だ」と呟いて、ラグナの執務室のソファで丸くなって寝てしまった。
一時間もすると目を覚まし、報告の為にバラムへと帰って行ったが、あの時のスコールの足取りの重さは、寝不足だけが原因ではないだろう───とラグナは思っている。

 ラグナは本を閉じて、書棚の元の位置へと戻した。
空になった右手はなんとなく頭に向かって、白髪の混じる髪をがしがしと掻く。


「こう言うのって、眉唾とか、なんとなくの思い込みで効いてるみたいな気がするとかって思ってたけど……馬鹿に出来ないもんなのかもな」


 実際の所、あの夜の出来事の原因が、件の料理なのか、明確なエビデンスはない。
しかし滋養強壮の謳い文句は、強ち嘘ではないのかも知れない、と思うラグナであった。





すっぽん料理的なものを食べてどっちも止まらなくなってるのが見たいな……と思いまして。
大統領が泊まるのにえっちな店の紹介カードとか置くだろうかと思いつつ、それもまあ一つのサービスと言えばそうな気もした。使う人間は使うだろうし(信用を置ける筋に預ける気もするけども)。
早とちりで問答無用に始めるスコールも見たかったんです。自分でシたけど未消化な状態だったから、それもあって我慢できなくなったんだと思います。