染め直すなら今すぐに


 探索したい場所があると、駆り出されたのはバッツとルーネスだった。

 場所は混沌の領域とも呼べる北側の大陸、その外れにある小さな島。
高場から確認すると、島の形が三角形に酷似しているので、秩序の戦士達の間で、其処は『三角島』と呼ばれている。
大陸と島を隔てる海は、恐らく遠泳が得意なものなら、一日でもかければ渡れる程の距離なのだが、この闘争の世界で海を生身で渡るのは中々に自殺行為である。
島にルートが繋がるテレポストーンもないようなので、知識のある者で島に渡る為のボートが造られた。
其処までして調べに行く必要があると判断したのは、秩序の戦士達が徒歩で簡単に辿り着けなくとも、混沌の戦士達にとっては転移魔法の類で簡単に行く事が出来るからだ。
そう言う場所で、良からぬ事を画策されているとしたら───その可能性を少しでも潰す為にも、この世界に置いて、知らない場所と言うのは出来るだけなくしておくに限る。

 最初に斥候として赴いたのは、ウォーリア・オブ・ライトとクラウド、セシルの三名だ。
予想に違わず、島には格上のイミテーションが蔓延っており、先ずは襲って来たそれらを駆逐する所から。
その最中に混沌の戦士が奇襲をかけて来なかった点から、余り彼等にとって拠点としては扱われていないようだ、との見解には至ったものの、島の中は山にも囲まれており、中央地までは簡単に辿り着けない。
山岳越えが必要となる為、奥地まですぐに見れた訳でもなかったので、改めて索敵に適したメンバーを伴って調査を続けよう、と言う話でまとまった。

 そして探索チームにバッツとルーネスを加えて、改めて秩序の戦士達は調査を行う事となる。
一度島に上陸している事、盾として的役であるウォーリア、負傷した時の回復手段を出来るだけ増やして置こうと言う判断から、セシルも共に行く事になった。
クラウドを始めとした残りのメンバーは、平時と同じように、秩序の聖域の番を持ち回りで担当しながら、それぞれの生活を続ける。

 ────以上が、約五日前に決まった事だった。

 秩序の聖域の中心に建てられた屋敷には、現在、スコール一人が残っている。
ローテーションで回って来た屋敷の番と、重ねて担う事になる食事当番の役目を果たす為、彼はキッチンに立っていた。
昨日の晩にフリオニールが腕を振るって作ったチキンスープが残っているので、其処に具材を足した後、メインの鶏に下味をつける。
チキンスープが中々しっかりとした味をしているので、肉はさっぱりめで良いか、と考えていると、


「ただいま〜」


 聞き慣れた声に顔を上げたスコールは、手許の食材をどうするか僅かに考えた後、コンロの火を消した。
軽く手を洗って、タオルで水気を拭きながら、隣接しているリビングダイニングを覗くと、


「あ、スコール。ただいま!」


 10人が座れるダイニングテーブルの端で、疲れた表情で寄り掛かっていたバッツが、スコールを見付けるなりぱぁっと破顔して駆け寄って来た。
反射的に半歩下がったスコールに構わず、バッツは思い切りスコールに抱き着いて来る。


「おい、バッツ……!」
「へへ、スコールの匂いだ」


 重みと突然の密着に貌を顰めるスコールに構わず、バッツはスコールの首元に顔を埋めて、すんすんと鼻を鳴らす。
匂いをかがれていると判って、スコールの顔に判り易く血が上った。


「やめろ」
「もうちょっと」
「やめろ」


 口で言っても辞める気配のなかったバッツに、スコールは腕で彼の肩を押す。
べりっと剥がされたバッツは、判り易く拗ねた顔で唇を尖らせたが、スコールは無視してキッチンへと戻った。
その後ろを、子犬のように突いて来る気配を感じながら、スコールは屋敷内がまだ静かである事に首を傾げる。


「帰って来たのはあんただけか?他のメンバーはどうした」


 コンロに再度火を点けながらスコールが尋ねると、バッツは横から鍋を覗き込みながら答えた。


「ああ、それがさぁ。一応調査が終わって、じゃあ帰ろうかってなったんだけど、そのタイミングで見えてた場所にあった歪が赤くなってさ。舟を出した後ならもう諦めても良かったけど、まだだったし。放っておく訳にいかないから、これだけ解放させて帰ろうってなったんだ。で、そしたら其処が“闇の世界”で」


 この世界に出現する歪の中には、様々な世界の断片が繋がっている。
内部は基本的には揺らぎやすい危うい空間である事が多いのだが、その中でも安定し易い場所と、そうでない場所と差があった。
ライフストリームの渦巻く空間などは特に荒れ易く、劇場艇プリマビスタは比較的安定していて大きな崩れなどは発生し辛い。
今回の話に出た闇の世界はと言うと、空間の安定度としては比較的易しいのだが、突然世界が暗転してその形を丸っきり変えてしまう事がある。
更には重苦しいエネルギーが全体に渦巻いている為、其処に立っているだけで精神が削られていくような感覚があった。
其処での戦闘が長引くほど、秩序の戦士達にとっては不利になるのが必定である為、短期戦で決着を付けたい所であった。

 その闇の世界での戦闘中、空間の暗転によってメンバーが散り散りにされたのだ。
バッツは眼前に迫っていたイミテーションを倒した後、脱出口を見付けて歪を出たが、排出された場所が飛び込んだ時とは全く違う場所になっていた。
幸いなのは秩序の聖域がある南側の大陸であった事だが、大陸の端に放り出された為、聖域につくまで半日は歩き通しを余儀なくされた。
その間に他のメンバーと合流できればと思ったが、結局、誰にも会う事なく、バッツは秩序の聖域まで辿り着いたのであった。


「───って言う訳なんだけど、おれより前に誰か帰って来たりした?」
「いいや。探索に行ったメンバーでは、あんたが最初だ」
「そうかぁ。ま、いいや。皆自分でどうにかして帰って来るだろ」


 特別、心配をする必要のないメンバーだと思ってか、バッツはあっけらかんと言った。
強いて憂する点があると言うなら、多少ルーネスが気にかかる所ではあったが、それを言ったら彼も怒るだろうし、彼に自力で打破する実力がある事も判っている。
各々、イミテーションを倒した後は、何処に放り出されるとしても、自力で帰還する方法を見付けるだろう。

 スコールはコンロに再度火をつけて、鍋の中のスープをくるりと掻き混ぜた。
それをバッツが横から覗き込んで来る。


「スープ?美味そう!」
「昨日フリオニールが作った」
「じゃあ絶対美味いな!」


 爛々と輝く褐色の瞳は、今すぐ食べたい、と言わんばかりだ。
遠出から戻ったばかり、それも帰りは大陸端から歩いてきたとなれば、無理もないだろう。


「……食うか?」
「良いのか?」
「この量だ。一杯くらい問題ない」


 そう言いながら、スコールはスープ皿を取り出した。
レードルで掬ったスープを皿に移し、ほら、と差し出してやれば、バッツは嬉しそうにそれを受け取る。


「ありがと、スコール!」


 礼を言って、バッツはいそいそとキッチンを出る。
スコールがダイニングをちらと覗けば、出入口から一番近い席に座り、嬉しそうにスープを掬う背中があった。

 件の三角島にスコールはまだ渡った事がないので、其処に何があるのかは詳しく知らない。
だが、上位各のイミテーションが跋扈していたと言うことは、食料に使えそうな動物や魔物はあまり期待できないだろう。
魚のいる川だとか、食べれる果実でも見つかればラッキーと言った所だ。
それは勿論皆が想定済みであるから、食料も余裕をもって持って行った筈だが、とは言え嵩張る荷物は歓迎されない。
余裕をもって、しかし必要最低限を、と言う状態では、携帯できる食料の量は限られる。
往復にそれぞれ半日、探索に丸三日はかけたとすれば、持ち込んだ食料で毎回腹一杯には食べられまい。

 のべ五日をかけた遠出と、その帰り道の苦労を慮って、少しは労っても良いか。
スコールはそんな事を思って、パンバスケットに置いていたテーブルロールを二個、トースターを使って軽く表面を焼き、ダイニングへと持って行く。


「ん」
「お。良いのか?」


 スープも殆ど空にしていたバッツが、また分かり易く目を輝かせた。
返事をせずにスコールがキッチンに戻ると、あーん、と齧りつく声が聞こえる。
柔らかくて甘味のあるパンに、バッツは舌鼓を打った。

 キッチンに戻ったスコールは、夕飯作りの手を再開させた。
バッツの食べっぷりを見て、スープに少しボリュームを入れた方が良い気がしたので、短冊切りにしたベーコンを追加させる。
それからメインの料理の準備に取り掛かった。

 厚みのある肉を柔らかくするべく、とろ火での煮込みを始めて直ぐ。
バッツが空になった皿を持って、キッチンへ入ってきた。


「ご馳走様。美味かったぁ。洗っとくな」
「ああ」


 シンクで食器を洗うバッツをちらと横目で確認して、スコールの視線はすぐに鍋へと戻る。
とろ火にかけた鍋の中に置いた肉の色を確認すると、スコールはそれに蓋をした。
今の内に他の作業を、と冷蔵庫に向かおうとしたスコールだったが、


「なあなあ、スコール」
「……なんだ」


 人懐こい声に呼ばれて、スコールは仕方なしに返事をした。
こういう呼び方をする時は、無視しても返事をするまで呼び続けられるから、さっさと応じた方が良い、と言う経験からだ。
すると案の定、バッツはスコールの方へと体を寄せて来て、スコールにしてみれば近過ぎる程の距離で、此方の顔を覗き込んで来る。


「あのさ」
「……なんだよ」
「エッチしよ?」


 ちょっと首を傾げて、可愛らしいおねだりをするように、バッツは言った。
それはそれは可愛らしくはない事を。

 思い切り胡乱な目になったスコールに、それも予想済みだったのだろう、バッツは気にした様子もなく宣う。


「五日ぶりにスコールの匂い嗅いだからさあ」
「別に理由を言えなんて言ってないだろ。離れろ、この助平」
「スコールの所為でスケベになっちゃうんだって」


 ぐいぐいと近付いて来るバッツを、スコールは両手を突っ張って拒否する。
だが、バスターソードを片手で振り回す腕力を持つバッツである。
スコールが純粋な力で勝つには難しく、ならば体術でと思わないでもなかったが、如何せん場所が悪い。
此処は決して広くはないキッチンで、コンロには鍋、調理台には包丁なども出してあるし、冷蔵庫に他諸々、食料を納めた箱や棚もある。
此処でバッツを投げ飛ばすには、その代償が予想するだけで面倒が見えていた。

 ───更に言えば。
五日間の探索で、否応なく我慢の日々が続いたのはバッツだけではない。
同行する事なく、此方は此方で日常を送っていたスコールも、熱を持て余す日々だったのだ。
一人で処理もしたが、誰かさんの所為で奥で感じることに慣れた躰には物足りなくて、出した所ですっきりとはいかなかった。
バッツがセックスを促したその声を聴いた瞬間から、スコールの体は条件反射のように熱を帯び、彼を求めるように疼き出している。
しかし、デリケートな思春期であり、理性の強い性格をしているスコールが、安易にそれに身を任せる事など出来る筈もなく、突っ撥ねるようにバッツを拒否し続ける。


「しない。あんた、せめて夜まで待とうとか思わないのか。誰がいつ帰って来るかも判らないのに」


 真っ当な切り返しでスコールが言うと、バッツはうーんと眉尻を下げ、


「それは判ってるつもりなんだけどさ。もう、ほら」
「……!」


 バッツはスコールの手を取り、自分の中心へと触れさせた。
分かり易くテントを張って、堅い感触がありありと伝わり、スコールは顔を真っ赤にして息を飲む。


「なあ、スコール。一回だけ」


 抵抗するスコールの手を捕まえた状態で、バッツが顔を近付ける。
いつの間にかスコールは、食器棚を背にして追い込まれていた。
性急にもじんじんとし始める腹の奥の感覚に苛まれながら、それでもスコールは抵抗するが、


「夜まで、」
「待てない」


 せめて“待て”ぐらい守れと叱ろうとしたスコールを、バッツは唇を塞いで黙らせた。
褐色の瞳が露骨な雄の匂いを振り撒いて、スコールを近過ぎる距離から貫く。
普段は飄々として、幼さすらも感じさせる言動が多いのに、スイッチを切り替えるように猛々しさを滲ませる瞳に、スコールはどうしても逆らえない。

 重ねた唇の中へと、ぬるりと生暖かいものが侵入した。
逃げようとするスコールだったが既に遅く、舌を絡め取られてしゃぶるように舐られる。
五日ぶり、いや交わったその瞬間から数えれば、一週間ぶりになるだろうか。
久しぶりに味わう口吸いに、スコールの舌の根が痺れるような甘さに囚われて、抵抗の動きがどんどん鈍くなって行く。


「ん、ん……んぁ……っん……!」


 やめろ、と言おうとしても、動かそうとした舌の先端を、ちろちろと擽って遊ばれると、何も言えなくなってしまう。
たっぷりとした唾液に濡れた舌を外へと誘い出されると、バッツは其処に窄めた唇を当てて、ちゅうっと吸った。
ビクッ、とスコールの肩が分かり易く跳ね、蹈鞴を踏んだ足元を支えるように、バッツの手がスコールの腰を抱く。


「ん、むぁ……あむぅ……っ!」
「んちゅ…ん、ちゅうっ……!」
「んふぅ……っ!うん、んっ……!」


 バッツは丹念に、スコールの唇を、舌を啜っている。
スコールは眉根を寄せたり、目を瞑ったりとしていたが、次第にその表情は熱を帯びて蕩けて行く。
舌を外へと誘い出され、閉じれなくなった唇の隙間から、はあ、はあ、と甘い呼気が漏れていた。

 バッツはキスを続けながら、片手をスコールの胸元へと持って行く。
いつも着ているファーつきの上着がないので、スコールはシャツ一枚と言うラフで無防備な格好をしていた。
その胸元を探るように撫でれば、程無く頂きの蕾を見付け、バッツは指先でそれをピンッと弾いた。


「うンっ」


 ビクッ、とスコールの肩が竦む。
その反応に、バッツの褐色の双眸が嬉しそうに細められた。

 ピン、ピン、とバッツの指が爪弾くようにスコールの蕾を弾く。


「あっ、んっ、んむっ……!うん、んふぅ……っ!」


 ちゅうちゅうと舌を吸われ、真面に言葉も紡げないスコールは、バッツの悪戯に抗議も出来なかった。
背後の食器棚に縋るように背中を押し付けるが、当然、迫る男から逃れられる訳もない。
身を捩って刺激から体を逃がそうにも、腰に回された腕はしっかりと逞しくて、刺激に弱い躰が振り払える筈もなかった。

 溢れ出す唾液を飲み込む事も出来なくて、スコールの口の周りが涎で濡れる。
バッツはそれを、同じ位に唾液塗れになった舌で、べろおりと舐め取った。


「ふ、あ……あっ、あっ……!ば、っつ……っ!」
「ん?」
「胸…んっ、やめ……はっ、あっ…!」


 ようやっと唇を解放されて、乱れる呼吸でバッツの悪戯を止めようとするスコールだったが、勿論、言葉で幾ら言った所で、バッツが止まることはなかった。
寧ろ、刺激を与えられ、否応なく育ってくる膨らみに、彼の指は益々調子付いて行く。
元々刺激に弱い其処をより敏感にするべく、バッツは親指と人差し指で、堅くなり始めた其処をきゅうっと摘まむ。


「あぁ……っ!」
「可愛い声出てる」
「は、バカ……あっ、んんっ」
「塞いじゃうの勿体無いぞ。もっと聞かせてくれよ」


 久しぶりなんだから、と囁くバッツに、スコールはゆるゆると首を横に振った。
感じ入る自分の声と言うのは、ただでさえ己のものと思えない位に酷い声だと思っているのに、幾ら恋人が強請っているからと言って、口を開く気にはならない。
況してや、仲間達の誰がいつ帰って来るかも判らないのに、あんな声を出す訳には。

 しかし、スコールがそうやって抵抗する程に、バッツは興奮してしまうのだ。
なけなしの理性にしがみ付いて、恥ずかしさに苛まれながら、それでも体は熱に流される準備を辞められない少年の、我慢の壁を壊したくて堪らない。

 バッツはスコールの肩を掴んで、彼の体を反転させた。
視界がぐるりと回って、見えていた恋人の顔が確認できなくなって、あ、とスコールの唇から不安そうな声が漏れる。
自覚がないであろうその声に、バッツは彼の背中にぴったりと密着して、首筋に息を吹きかけた。


「ふっ……!」


 ぞくぞくとしたものがスコールの首筋から背中に駆け抜けて、また思わずと言った吐息が漏れる。
バッツは同じ場所に舌を這わしながら、彼の腰を抱いていた腕を持ち上げ、白いシャツの下へと潜らせた。


「バッツ……!」
「んちゅ、」
「んっ……!あ、痕を作るな……っ!」


 スコールの叱る声を無視して、ちゅうう、と項を強く吸ってやると、くっきりと赤い華が咲いた。
いつもの上着を着れば見えないよ、と囁くと、そう言う問題じゃない───と言う抗議があったが、バッツは構わずにもう一つ華を作る。


「バ、ッツ……っは、あ……っ!」


 項に続けられるちくちくとした刺激に、スコールが頭を振っている間に、バッツの手はスコールの胸元へと辿り着いていた。
ついさっき育てたばかりの蕾を摘まめば、またビクンッと細身の体が戦慄く。


「ふく……っ!う、ぅん……っ!」
「こっちも」
「ん、や……あふっ……!」


 片方ばかりでは寂しいだろうと、逆の蕾も摘まんでやれば、スコールは天井を仰いだ。
食器棚に縋る指先に力が籠り、体を捩って逃げを打つスコールだが、バッツは構わず、両の乳首をコリコリと転がして弄ぶ。


「あ、ふ……うっ、うんっ……!んぅ……っ」
「固くなった」
「は……いう、な…バカ……あっ……!」


 肩越しに睨むスコールの乳首を、バッツの両手がきゅうっと引っ張る。
微かに痺れるような痛みを与えながら、しかし苦痛には届かない刺激に、スコールの熱が益々昂って行く。

 バッツはスコールの左の乳首を苛め続けながら、右手を下へと降ろしていく。
その気配を感じ取り、また身を捩ってみせるスコールだが、その抵抗は時間を追うごとに弱々しくなって行く。
バッツがスコールの中心へと触れてみれば、予想通り、其処はバッツのそれと負けず劣らず主張を見せていた。


「スコールも期待してた?」
「そんな訳ないだろ……っ」


 幾ら恋人が五日ぶりに帰って来たからって、こんな昼間から、こんな場所で───と言うスコールの台詞は最もだ。
実際、バッツがこうして昂らせてやらなければ、少なくとも夜までこうなることはなかっただろう。
そんなスコールに、バッツはくすりと笑みを深め、


「じゃあおれが責任取らなくちゃ」
「あっ……!んっ、触るな、んんっ」


 ズボンの上から、バッツの手がスコールの中心を握り、くにくにと揉むように刺激を与える。
興奮した躰はそれだけでも十分な快感を生み、スコールの息が益々上がって行く。


「や……あっ、うっ……!んん……っ!」
「乳首とこっち、どっちが気持ち良い?」


 スコールの乳首の先端を爪先でカリカリと引っ掻き、下部の膨らみの根本を擽りながら問い囁くバッツ。
スコールは言いたくない、と口を噤んだが、


「こっちかな」
「んっ」
「それとも、こっち?」
「ふぅ……っ!」


 上と下とを交互に刺激を与えられて、その度に躰がビクッ、ビクッ、と跳ねてしまう。
その震えの深度を確認するように、バッツは何度もしつこい位に苛めて来る。
快感としては強いのに、奥深くまでは届いて来ないその刺激に、段々とスコールの体は物足りなさを感じていた。


「や…ふ……あっ、バッツ……っん!」
「ん?」
「はっ、はぁ……っ!あ、ふ……うぅんっ……!」


 バッツが背中に密着しているものだから、その猛りがスコールの腰に当たっている。
いや、押し付けているのだ。
バッツの興奮振りが、スコールにも伝わり伝染していくように、わざと。

 その狙い通り、スコールの体はすっかり昂ぶり、押し付けられているものが奥に欲しくて堪らない。
しかし、こんな所で、と言っていた手前と羞恥心もあって、自ら強請るのはスコールにとってハードルが高いのだ。
けれども欲しい気持ちは抑えられなくて、ゆらゆらと腰を振っている事に、彼自身は気付いていない。

 スコールの雄がすっかり張り詰め、痛い位に苦しくなって、知らず知らずにその窮屈さを耐えるように内股になって行く。
もじもじとしているようにも見えるその仕草に、バッツは可愛いなあと囁いて、彼の腰のベルトに手をかける。
胸への愛撫は相変わらず止めないまま、器用に片手で腰の守りを解いたバッツは、すぐに下着の中へと手を入れた。


「あふっ……!」


 バッツの指が直に其処を撫でただけで、スコールは甘い声を上げた。
そのまま雄の根本を柔く握ってやると、ぶるりと細い腰が戦慄く。


「んん……っ!」
「イきそうだな、スコール」
「う、ん……擦る、なぁ……っ!」


 バッツが手を上下に動かして軽く擦ってやるだけで、スコールは判り易く体を強張らせた。
我慢しているその様子に、追い打ちに乳首を引っ掻いてやれば、ぶんぶんと嫌がって首を横に振る。
それを宥める為に、バッツが目の前にあった耳朶に舌を這わせれば、


「あぁ……!」


 彼の其処が一等刺激に弱い事を、バッツは知っている。
知っていてわざと宥める目的で舐めてやりながら、バッツはスコールのズボンを下着ごとずり下ろした。


「ふ…う……」


 すうすうと外気に晒される肌の感触に、スコールの体がふるふると震える。
こんな所で、と言う恥ずかしさと、いつ誰が帰って来るかと言う不安もあるのに、昂った熱をあらわにした肌がほんのりと桜色に赤らんでいた。
肌が白いから余計に判り易いんだよなあ、と思いながら、バッツはスコールの秘部に指を宛がった。


「……っあ……バ、ッツ……んっ……!」
「解そうな」
「あう……っ!」


 つぷ、と指先が穴口を潜って中へと侵入する。
と、その瞬間の感触が、思っていたよりも柔らかい事に気付いて、バッツはにんまりと目を細めた。


「スコール、これ」
「あ、あう……っ!や、そんなに、急に深く……っ」
「だって柔らかいぞ。自分で弄ってた?」
「そんな……」
「この感じだと、昨日かな?」


 囁くバッツの言葉の一つ一つで、スコールの頬が赤くなる。
耳まで染まるその色に、正直だなあ、と嘯いて、バッツは指を更に奥へと挿入させた。


「やぁ、う……っ!ば、バッツ……あっ、あっ」


 くち、くち、と音を立てながら中を弄られて、スコールの体がヒクッヒクッと跳ねる。
指先に絡み付く柔らかな弾力の感触に、バッツは彼の内側がすっかり準備済みであることを悟る。


「は、はうっ……ん、そこ引っ掻くな……んんっ!」
「うん、此処な」
「や、あっ、あっ……!ふ、あふっ……!」
「きゅんって締め付けて来るぞ、スコール」
「んん……っ!」


 ふるふると首を横に振るスコールだったが、体の方は言葉よりもずっと正直だ。
バッツの指が中を探るように、角度を変えて指を曲げる度、押し上げられる内壁からじんと響く快感が止められない。
官能のスイッチを順番に押していくような指の動きに、スコールの呼気は逸り、媚肉が熟れるように濡れて行く。

 そうなると、もう指では物足りない。
指では届かない奥に、それよりずっと太くて逞しいものが欲しくて、スコールはゆらゆらと腰を揺らめかせて雄を誘う。


「バッツ……、んっ、バッツ……っ!」
「うん」
「は…あっ、うんっ……!あっ、あっ…あぁ……っ!」


 差し出すように下肢を背後の男へと突き出すスコール。
言葉の代わりに、日に日に露骨になって行く淫らな肢体の誘いに、バッツはごくりと唾を飲んだ。

 奥をコリッと抉った瞬間、ビクンッ!とスコールの体が大きく震えた。
浅い場所で上り詰めそうになったのだろう、スコールの雄からとろりと蜜が溢れ出す。


「あう……うぅんん……っ!」


 中途半端な上り詰め方をした所為か、スコールの体が痺れるように言うことを聞かない。
そんな躰でも締め付けるのは止められない内壁の、絡む感触を堪能しながら、バッツはゆっくりと指を引き抜いた。

 ぬぽ、と指がようやく抜けると、拡がったスコールの秘部がひくんひくんと蠢く。
侘しそうな動きで誘うそれを見下ろしながら、バッツは自身の前を緩め、取り出したものを直ぐに秘孔に宛がった。
待ちに待っていたものが当たるのを感じて、スコールの唇から「あ……」と期待の滲む声が漏れる。


「挿れるな、スコール」
「ふ……っ」


 囁いたバッツに、スコールは早く、と言うように縋る瞳を向ける。
いつも凛と冴えた蒼の瞳が、この時ばかりは蕩けたように揺らめいているのが、バッツは堪らなく好きだった。

 食器棚に両手を突いているスコールの腰を掴んで、バッツはゆっくりと侵入を始める。
指とは全く違う太さをもったものが、解したとは言えやはり狭さは否めない入口を広げるのを感じて、スコールの背中が撓る。


「あふ……あ…っ、あぁあ……っ!」


 久しぶりに中で感じる恋人の感触に、スコールは天井を仰いだ。
零れた吐息が狭いキッチンで反響して、バッツの耳を擽って雄を煽る。


「スコールの中、すげぇ暖かい……」
「あっ……ばっつ、んっ……やぁ……っ」
「スコールはどう?」
「は、はぁ……っ、あつ、い……大き……んんっ」


 息も絶え絶えにスコールが応えると、バッツの雄が胎内でむくっと膨らんだ。
露骨なその昂ぶりを示す反応に、スコールの腹の底でじくじくと熱が膨らんで、咥え込んだ雄をきゅうぅっと締め付ける。

 バッツはたっぷりと時間をかけて、自身を恋人の中へと収め切った。
それはスコールにとっては甘い拷問にも似た長い時間に思えて、ようやく「入ったぁ……」とバッツが感も一入に呟いた時には、すっかり蕩けた顔を晒していた。


「ふあ……あう……」
「んん……」
「あっ……!奥、んっ……擦っちゃ……あぁ……っ!」


 根本まで深く挿入されている所為で、バッツの先端がスコールの奥に届いている。
其処をゆっくりと傘の括れで擦られて、スコールの腰にぞくぞくと電流が迸る。

 バッツはスコールの肩口に顔を埋め、広い襟周りから覗いている首筋に吸い付いた。
ちゅうっと吸って三つ目の花を咲かせ、残った痕に舌を這わしながら、ゆるゆると腰を振り始める。
奥をリズム良くノックするように突き上げるバッツに、スコールは成す術もなく喘ぐ。


「あっ、あっ、あっ……!バッツ、そこ、あっ、あっ……!」
「ふ、ふっ……はっ、んちゅ……っ」
「あっ、や、首……んっ、あっ、胸、までぇ……っ!」


 胎の奥を明け渡せとばかりにノックを続けられているだけでもスコールにとっては堪らないのに、首筋を吸われ、更に胸をまた弄られる。
散々に弄られたお陰で、胸元の蕾は、シャツの上からでも判る程に膨らんでいた。
それを直に摘まんでコリコリと引っ掻かれれば、簡単にスコールの許容量を越えてしまう。


「だ、め、あっあっ、ふっ!そんなに、一遍に、んんっ」
「だって、久しぶりだし。全部気持ち良くしてあげたくて」
「あっ、あっ、あっ!じゅ、十分、あっ、だから、もうっ、んっ、あぁっ!」
「自分で、んっ、お尻いじってた位、欲しかったんだろ?こんなに中もトロトロにしちゃって」
「はふ、はっ、あっ、あぁっ……!胸、痺れる、あっ、あっ…!バ、ッツ、うぅっ!」
「奥がきゅう〜って締まってる。こんなに一杯絡み付いちゃって、ほら」
「あふぅっ!」


 ずんっ、とバッツが強く突き上げれば、スコールは全身を強張らせて啼いた。
バッツの言う通り、隙間がないほどに絡み付く媚肉を、固く反り返る程に猛った雄が激しく扱き上げると、


「はっ、バッツ、だめ、あっ!も、来る…っ、来るからぁ……っ!」


 一度浅く昇っていた躰は、次の限界も早い。
奥の窄まりがより狭く、より強く絡み付いて来るのを感じて、バッツもスコールの状態を覚った。
ならばと、自身も上り詰める為、一層激しく恋人の奥を突き上げる。


「あっ、あっ、バッツ、あっ、んぁっ!」
「はっ、すご……っ!すっごい、うねって、気持ち良い……っ!」


 汗を滲ませたバッツの零した呟きに、スコールの胎内がドクドクと脈を打つ。
艶めかしい感触で雄を包み込み、揉むように蠢く熱の中で、バッツがまた固く張り詰めて行くのが伝わった。
其処に蓄えられた熱を注がれる瞬間を想像して、スコールの秘孔が一際噛み付くようにバッツにしゃぶりついた瞬間、


「ふぅっ!」
「うぅんんっ!」


 一息と共に強く奥を穿たれて、スコールの意識が真っ白に跳んだ。
熱と共に持ち上げられた躰が一番の昂ぶりまで届き、スコールはくぐもった声で啼きながら絶頂する。
張り詰めて久しいスコールの中心から、びゅくんっ、と勢い良く白濁液が飛び散った。

 上り詰めた躰が齎す、甘くて蕩けた肉褥の感触で、バッツもまた幸福の絶頂へと至る。
戦慄くスコールの体を閉じ込めるように抱き締めて、彼の中へと一週間ぶりの迸りを注ぎ込んだ。


「あぁぁあ……っ!!」


 堪らない官能の声を上げて、スコールはバッツの劣情を受け止める。

 すっかり汗を滲ませた額を食器棚に押し付けて、スコールは荒い呼吸を繰り返す。
はあ、はあ、はあ、と甘い息と一緒に、火照って赤らんだ全身から、甘くて馨しい匂いが振り撒かれていた。
バッツはふうふうと乱れたままの息でそれを吸い込み、どくん、どくん、と脈打つ雄が一先ずの納得に至るまで、恋人の蜜壺の感触を堪能していた。


「は…ふ……ふぁ……っ」


 食器棚に縋っていたスコールの体から力が抜ける。
そのまま崩れ落ちて行く体を、バッツの腕が支えたが、結局二人で座り込む。
その拍子に、中に入っていたものがぬぽっと抜けて、スコールは「あう……っ」と悩ましい声を漏らした。


「ふ……あ……はぁ……」
「スコール。大丈夫か?」


 力なく寄り掛かって呼吸をするのが精一杯と言うスコールに、バッツが声をかける。
と、しばしの間を置いた後、涙と熱に濡れたままの蒼い瞳が、じろりとバッツを睨んだ。


「あんた……本当、我慢ってものを知らないな……」
「……へへ」
「何笑ってるんだ」


 褒めてるんじゃない、と眉間に皺を寄せるスコールに、バッツはやはりへらりと笑う。
分かり易い誤魔化しの愛想笑いに、スコールは深々と溜息を吐いて、自分の出したもので汚れた床と見る。


「どうしてくれるんだ……」
「ちゃんとおれが掃除するよ」
「当たり前だ。あんたの所為なんだから」


 そう言ってスコールは、食器棚に手をついて、のろのろと体を起こした。
その秘部から、とろりと恋人のものが流れ出るのを感じて、スコールは眉根を寄せる。


「……こんなに出すなんて。後で腹壊したらどうしてくれるんだ」
「それもおれが面倒見るって。薬も作るし」


 責任は取る、と堂々と言い切るバッツに、スコールは溜息を吐く。
言いたい事はそう言うことじゃない───とありありと判る表情であったが、しかしそれを直接言うのは辞めた。
どうせ無駄な遣り取りだと諦めた、とも言う。

 棚に置いていたティッシュを水で濡らし、申し訳程度であるが秘部を清めてから、スコールは格好を整えた。
疲れて重いと判る躰を動かして、火にかけたままだった鍋の蓋を開ける。
くたくたと煮込まれている肉を確認して、ほっと安堵し、蓋を元に戻した。
その間にバッツも自分の服装を整え、スコールに言った通り、情事の名残を綺麗に掃除を済ませてから、キッチンに向かう恋人に密着する。


「おい」
「もう邪魔しないって」
「……」


 信用ならない、と胡乱に睨むブルーグレイに、バッツはにっかりと笑って、


「後は夜のお楽しみにするから」
「一人でやってろ」
「それじゃスコール、淋しいだろ?」


 まだまだ収まる気配のないものをスコールの腰に宛がうバッツ。
それをまたスコールは睨んだが、頬に赤いものが混じっているのを見付けて、バッツは益々上機嫌になるのだった。




乳首をいっぱい弄られているスコールが見たくて。
あと台所とか、プライベートスペースではない場所でしているのが書きたくて。

バッツはスコールが大好きだから、帰ったらスコールを吸いたくて堪らなかったんですね。
そんな我慢しないバッツに感化されたりで、口ではツンツンしてるけど、実際の所デレデレなスコールも良い。