蕾の開くとき


 大人になったら───なんてものが、子供に対する、大人の一種の逃げ口上だと知ったのは、12歳の時。
大好きな人との約束に、そんな言葉が並んでいることを、耳年増な幼馴染が指摘したのが始まりだった。

 大人になったら、ウォルお兄ちゃんとけっこんする。
幼い頃のスコールは、その約束を一心に信じていた。
約束は一人で交わせるものではないから、勿論そこには相手が存在していて、その人も約束をしてくれた。
寧ろ彼の方からそれを言ってくれた程だったから、尚更スコールは嬉しかったのだ。
大好きな人が、自分とけっこんしてくれる、と言う約束を契ってくれた訳だから。

 しかし、当時のスコールは5歳、相手は確か高校生の頃だったと思うから、15、16歳と言う頃だろうか。
まだまだ小さな世界しか知らなかったスコールに比べると、彼はもっと色んな事を判っていて、子供の夢が、どんなに本気のものであろうと、案外と移ろいやすい事も知っていた。
それでも夢見る間はそれが崩れる事のないように、そっと優しく見守ってくれる人だった。

 その人から、スコールは約束を貰ったのだ。
「君が大人になった時、今と同じ気持ちでいてくれたなら、その時は結婚しよう」と。
未来の約束は、子供にとって、とてもとても遠いものではあるけれど、真っ新な心に希望の息吹は確かにその時撒かれたのだ。
彼に見合う人間になれるように、そんな日々の目標にもなって、スコールは沢山の努力を重ねた。
全ては、あの人の隣に立っても、あの人が恥ずかしい思いをしなくて良いように。
泣き虫弱虫を、時間はかかったがなんとか卒業して、勉強も沢山して、苦手だった運動も出来るようになった。
大好きなあの人は、本当に何もかもを完璧にこなしてみせる人だったから、スコールもそうならなくてはと頑張ったのだ。

 スコールにとって、彼と言う存在は、それ程の原動力となる人だった。
それなのに、それなのに。
スコールより十歩も先に大人になった彼は、スコールとの約束を本気で果たすつもりなどないのだと、意地悪な幼馴染はそう言った。
大人が子供に対してしてくれる、未来の約束なんてものは、そんな程度のものなのだと。

 スコール自身、何処かで感じていたその不安を、幼馴染はきっぱりと言語化してくれてしまったのだ。
けれど、スコールは信じていたかった。
彼が嘘を吐く筈がないし、確かに指切りげんまんをしたし、折々にその約束を口にするスコールに、彼は「待っている」と微笑んでくれる。
あれは、単に子供をあやす為のものではない筈だ。
彼は待っていてくれるんだと、スコールは自分自身に言い聞かせて、ずっとずっと、大人になれる日を待っていた。

 そして約束の日から十三年の時が経ち、やっとその日はやって来た────……



 生徒代表として、答辞を述べるスコールを、ウォーリアは何処か感慨深い気持ちで見詰めていた。
幼い頃からずっと見守り続けた唯一無二の少女が、今日、高校卒業を迎える。
就学前から知っている子供が、いつの間にかそんなにも大きくなったのだと、月日の流れを改めて実感せずにはいられない。

 場面に限らず、人前に出る事を怖がっていた幼子は、一言一句を詰まる事なく、すらすらと諳んじて見せる程にしっかりした少女へと成長した。
実の所、昨日まで「ちゃんと出来るか判らない」と不安そうな表情をしていたと知っているのは、教師の中で恐らく自分だけだろう。
誰もが彼女を成績優秀で非の打ち所のない自慢の生徒だと挙げるだろうが、本当はもっと繊細なのだと知る者は少ない。

 在校生による送る歌が終わり、卒業生が列になって退場して行く。
高校と言う箱庭から去る少年少女たちは、晴れ晴れとして、時に涙を流しながら、式会場である体育館を後にした。
追って子供たちの晴れ舞台を見届けた保護者席が退出し、残った在校生たちが撤収作業を始める。
見送った先輩たちの顔を思い出してか、良かったねえ、と囁き合う在校生の声がちらほらと聞こえた。

 ウォーリアは職員室へと戻り、式の前に担任の生徒たちから貰った手作りのプレゼントボックスの蓋を開けた。
其処には沢山の手紙と、体育祭や文化祭、修学旅行で撮ったと思しき写真が入っている。
写真はどれも生徒と一緒にウォーリアが映っており、そう言えばよく「一緒に撮ってよ」とねだられたな、と思い出す。
生徒の良い思い出の一葉になるならばと頷けば、私も僕もと沢山の生徒が集まって来て、集合写真のように並ぶことになったのも、懐かしい話だ。

 そんな思い出を辿っていると、ポケットに入れていた携帯電話がマナーモードの音を鳴らす。
直ぐに取り出して液晶画面を確認すると、メールが一通。
一瞬周囲の目を確認してから、ウォーリアはそれを開いた。


『先に帰ってる』


 用件のみを伝える、素っ気なくも見えるメールも、ウォーリアには唇が綻ぶものだ。
ウォーリアも直ぐにいつものように返事を書き、その横に今日だけの一文を添えて返信する。


『分かった。卒業おめでとう』


 こちらも端的と言えば端的だ。
それがいつもの二人の遣り取りである。
そして、普段はこの後、先方からは特に返事がないのが常なのだが、今日はもう一度携帯電話が鳴り、


『ありがと』


 これもまたシンプルな返信が来た。
最初に不自然な一行が空いているのが、送り主の動揺と言うべきか、困惑と言うべきか、そんな感覚が透けて見えるのが愛しかった。




 ウォーリアが学校を後にしたのは、普段の放課後と言って良い頃になっていた。
様々な確認要項を済ませ、送付するべきものを整え、来期の準備物を確認し……と、担当クラスの生徒たちが卒業した後も、教師と言うのは忙しいものだ。
明日からは在校生の授業も通常通りにあるし、某かの部活顧問をしている教員は、其方にも身を砕く必要があるだろう。
師走をとうに終えても、時間は常に矢のように飛んでいくものであった。

 とは言え、今年度も無事に卒業式は終わった。
一年間、或いは三年間、見守り続けた少年少女達の新たな門出を無事に送り出す事が出来たのは嬉しいことだ。
其処にウォーリアにとって唯一無二の少女もいると思うと、尚更、思い入れは一入となる。

 その少女が待つ家に、ウォーリアは帰って来た。

 マンションの高層階の一部屋、其処でウォーリアは暮らしている。
本来なら一人暮らしである其処に、幼い頃から見守り続けて来た少女が頻繁にやって来るようになったのは、今から三年前のことだ。
高校受験に向けた対策が本格化する頃に、教えて欲しい、と頼ってくれたのが始まり。
それから共に過ごす時間が増え、時には遅い時間まで勉強会をし、教えてくれるお礼にと彼女が作ってくれた料理をご馳走になり────今ではすっかり彼女なしの生活には戻れなくなった。
そして、彼女が高校二年生の頃に、ウォーリアは彼女と心を通い合わせる仲となる。

 元々、年の離れた幼馴染と言う間柄ではあったが、それ以上に教師と生徒と言う間柄が大きく横たわった関係だ。
恋愛関係にあることは誰にも秘密だから、外で手を繋ぐ事は勿論できない。
誰かに知られればどうなってしまうか、それが判らない程彼女も無鉄砲ではなかったし、ウォーリアも彼女を傷付けたくはなかった。
それでも本当に、本当に愛し合っているから、秘密の関係はひっそりと育まれていたのである。

 駐車場に車を停め、エレベーターでマンションを上がる。
いつも通りの行動なのだが、ふとウォーリアは、鞄の中に入っているボックスのことを思い出した。
卒業記念に、一年間世話になった担任へと、生徒たちから贈られたもの。
其処にも、愛しい彼女の綴った手紙が入っていることを思うと、俄かに胸が熱くなる。

 エレベーターを降りて、通路の一番端にある扉へ。
鞄から鍵を探っていると、それを採り出す前に、かちゃん、とドアのロックが外れる音がした。
おや、と其方に目を遣った所で、扉が内側から開かれ、


「……おかえり」


 愛しい少女────スコールの出迎えに、ウォーリアの唇は自然と綻んだ。


「ああ、ただいま。何処かに出掛けるのか?」
「……いや。あんたが帰って来るのが見えたから」
「そうか」


 ありがとう、とウォーリアが言うと、スコールは元々赤らんでいた頬の色を微かに濃くして、そそくさと引っ込んで行く。
とうに制服を脱ぎ、私服にエプロンを身に着けている背中を見詰めながら、ウォーリアは靴を脱いだ。

 室内には、食欲をそそる匂いが広がっていた。
卒業式を終え、そのまま帰って来たから、時間も余って少々手の込んだ料理を用意したらしい。
卒業祝いのようなものだ。
出来ればそれをウォーリアの方から用意してやることが出来れば良かったのだが、生憎とそれは叶わなかった。
それを詫びると、スコールは「暇でやっただけだ」と一見素っ気ない返事をしてくれる。
要するに、気にするな、と言っているのだ。
ならば今日のウォーリアはそれに甘えさせて貰い、卒業祝いの某かは、また改めて用意するとしよう。

 現在、スコールとウォーリアは、同棲に近い生活を送っている。
ウォーリアが住んでいるこのマンションの部屋の隣が、スコールが一人暮らしをしている部屋なのだ。

 スコールは高校入学を期に親元を離れ、一人暮らしを希望した。
しかしスコールの父ラグナは少々過保護で知られていて、彼女の希望は叶えたくも、それまで手元で守り続けていた大事な大事な一人娘の心配も尽きなかった。
そこで、幼馴染であり、スコールもよく懐き、父からの信頼も厚いウォーリアを頼ることになったのだ。
折よく隣部屋が空いている事も手伝って、それじゃあ一人暮らしは其処にしよう、と決まったのだ。
何か困ったことがあれば、すぐにウォルお兄ちゃんを頼りなさい、と言ったラグナに、スコールはそんなに子供じゃないと言ったそうだが、結果として、それは二人の歯車として良かったのだろう。
遠からず二人は密かに心を通わせるようになり、スコールは週の半分はウォーリアの家に来て、台所を受け持つようになった。

 傍目に見ると、十分同棲ではないか、と言われそうだが、ウォーリアは可能な限り、寝る時にはスコールを彼女の部屋へと送り帰している。
絶対、と言えないのは、スコールが勉強疲れで眠ってしまったり、何か不安に襲われた際、縋るものを求めて離れるのを嫌がることもあるからだ。
それでも、どんなにスコールがせがんでも、まだ最後の線は越えていない。
スコールはその事を強く意識しており、時折不器用にねだる事もあるのだが、“彼女が大人になるまでは”、ウォーリアは其処の線を越えるつもりがなかった。

 夕飯を終えて、スコールが片付けも引き受けてくれている間に、ウォーリアは持ち帰った仕事を済ませておく。
来年の授業計画を改めて確認し、組み直し、必要なものを確認する。
次年度のスタートはすぐ其処まで迫っているから、外部に発注するものは明日にでも提出しなくてはいけない。

 必要なリストを作り上げている間に、台所仕事を終えたスコールから声をかけられた。


「ウォル。風呂は、どうするんだ」
「ああ。もう少し後になると思う」
「そうか。……じゃあ、俺が先に入って良いか」
「それは構わないが、外はまだ寒い。あちらに帰ってからの方が良いのではないか」


 湯冷めするだろう、と言うウォーリアに、スコールは答えなかった。
じゃあ帰る、ととも言わないスコールに、ウォーリアが不思議に思って顔を上げると、


「………」


 赤い顔をした少女が、其処に立っていた。
解いて無造作に包んだエプロンを握る両手に力が籠っている。
引き結ばれた唇が、何かを言わんとするように緩んではまだ閉じを繰り返し、綺麗な青の瞳は落ち着きなく彷徨う。
その白い筈の頬が、まるで既に湯当たりしたかのように赤いのを見て、ウォーリアは俄かに心配を覚えた。


「どうした、スコール。熱でもあるのか」


 席を立って、ウォーリアはスコールの下に近付いた。
赤らんだ頬に手を当てると、ぴくっと細い肩が微かに揺れる。

 スコールは、ひたりと頬を包むウォーリアの手を見遣りながら、


「……別に、熱はない」
「しかし、顔が赤い」
「………」


 無理をしているのではないかと、ウォーリアはじっとスコールの顔を見つめる。
触れた頬は確かに熱の温度ではなかったが、ではどうしてこんなにも赤いのか。
衿の隙間から覗く首下まで、火照ったように色付いているものだから、ウォーリアは益々心配になった。

 頬に額に手を当て、何度も体温を確認するウォーリアに、スコールはしばらくそれを甘受していたが、


「……ぼくねんじん」


 ぽつりと零れた呟きに、ウォーリアはきょとんと首を傾げた。
スコールの手がウォーリアのそれへと重ねられ、指先が微かに力を込めて、愛しい人の手を握る。
迷うように泳いでいた瞳が、一度瞼の裏に隠れた後、真っ直ぐにウォーリアを見上げた。


「……ウォル。俺、卒業した」
「ああ。おめでとう」
「……ん。……だから、……だから今日……、」


 意を決したような蒼の瞳。
それは真っ直ぐにウォーリアを見ていた筈だったが、言葉尻が小さくなるにつれ、また彷徨う。
それでも少女は精一杯の勇気を振り絞って、言うべきことを言った。


「……今日、あんたと……エッチ、したい」


 理性が強く、抑制的な性格をしているスコールにとって、その一言、その単語を口にすることに、どれ程の努力が必要だっただろう。
沸騰した湯沸かし器のように、頭の天辺から湯気でも出そうな位に真っ赤になっている。

 ウォーリアの手に重ねられた少女の手が、心なしか震えていた。
言葉をはっきりと口にした後で、恥ずかしさが勝ったのだろう。
目の前にある相手の顔が見れないと、蒼の瞳はすっかりウォーリアから逃げるように逸らされて、床の方を見ている。
それでも重ねた手は離れず、縋るように、願うように、ウォーリアの手を握っていた。

 数秒、ウォーリアは言葉を喪っていた。
それは想像していなかった───けれど何処かでそんな日が来る事は予想していた。
ただ、今だと思っていなかっただけで───スコールの言葉に、頭が中々再起動しない。
それがまた繊細な少女にとっては不安になったのだろう、それを振り切るように、いつもは寡黙な口が一所懸命に動く。


「言っただろう。俺が高校を卒業したら、しても良いって。だからそれまでは駄目だって。だから、良いだろう、もう卒業したんだから。もう子供じゃないんだから」


 重ねられる言葉も、表情も、必死さがあった。
今を逃せば次はない、スコールにとってはそれ位の分厚い壁を乗り越えるようなものだったのだ。

 密かながらも、“恋人”と呼べる間柄になってから、そう時間が経たない内に、スコールは性を意識した誘いを見せるようになった。
幼い頃から、妹のように見てきた少女のその様子は、聊かウォーリアを驚愕させるような事もあり、「まだ早い」と長らく宥め躱してきたのだが、そんな態度が反って少女に不安を募らせた。
我儘な子供を宥め空かす為に、一時の“恋人”になっただけなのではないか、ただの同情ではないか───と。
ウォーリアとスコールの間には、年齢に人生経験の差、教師と生徒と言う、余りにも沢山の柵がある。
そんな中で、確かと思える安心が欲しくて、スコールは心身一杯でウォーリアと言う存在を求めていた。
それをウォーリアがいつまでも躱し続けるものだから、自分への自信のなさも相俟って、泣き出した事もあった。

 スコールを不安にさせ、剰え泣かせてしまう事は、ウォーリアも決して望んだ事ではない。
だが、柵を安易に振り払う訳にもいかなかった。
それはスコールを大切に思うからであったし、まだ前途の見えない彼女の未来を、様々な形で守らなくてはならないと思ったからだ。
だからウォーリアは、スコールの願いに対して、「君が大人になるまでは」と言った。
するとスコールは、「それはいつだ?」と問い、当時のウォーリアは「成人か、或いは大学を出た時にと思っている」と答えた。
しかしその時のスコールは十七歳になったばかりで、国の法律に則れば、成人までもあと三年。
大学卒業なんて話になったら、それはスコールにとって果てしなく長い道程で、そんなにも長い間、不安を抱えて待ち続ける事は出来なかった。

 お互いに譲れない一線に、一晩中は話し合っただろうか。
泣きながら訴えるスコールを、ウォーリアは根気よく宥めながら、彼女の気持ちを聞いた。
そして、可能な限りスコールの不安を拭えるように過ごすことを約束し、スコールが高校を卒業したら、この線を越えても良いと頷いた。
二人を縛る柵の一つである、『教師と生徒』ではなくなった時に────と。

 その約束をしてから、スコールも過度にウォーリアを誘おうとする事はしなくなった。
約束をよすがにしていた事は明らかで、無意識か、時折「……あと一年」「あと半年」と呟く事もあった。
その姿を見る度、ウォーリアも覚悟を定める時間を意識するようになっていた。

 そして、今日、スコールは卒業したのだ。
ほんの半日前に卒業式を終えたばかりで、余りにも急いではいないかとも思えたが、スコールにとって待った時間は一年や二年ではないのだろう。
ずっとウォーリアと言う存在を追い駆け続けて来た一途な少女にとって、待ちに待った“卒業”だったのだ。


「……ウォル」


 呼ぶ声は、願いを込めたものだった。
もうこれ以上は待てない、待ちたくないと、震える掌が彼女の心を具に伝えて来る。
ゆるゆると見上げた瞳が、潤んだように熱を持って、じっとウォーリアを見詰めていた。


「……ああ。そうだな」


 スコールは精一杯に待った。
ウォーリアが絶対に譲ろうとしない一線を前に、求め焦がれながら待ち続けた。
そうして待ち続ける事だけが、少女にとって唯一、ウォーリアへの誠意に応える方法だったのだ。

 それならば、もうこれ以上耐える日々を強いるのは酷だろう。
自分もまた、本心では彼女を求め続けていたことを、ウォーリアも認め受け止める覚悟を決めたのだった。




 スコールが風呂に入っている間に、ウォーリアは明日以降の準備を済ませ、出勤の荷物もまとめた。
が、その間、どうにも意識はふわふわと覚束ず、似たような感覚を何処かで持った覚えがあると記憶を遡ると、スコールとはっきりと思いを通じ合った日のことを思い出した。
つまり、それ位に、ウォーリアにとっても今夜は特別な日になると言う事だ。

 赤い顔をしたスコールと入れ替わりに風呂に入るが、気分は落ち着かなかった。
頭の中では、遠い日に出逢ったばかりの幼い子供の顔が浮かんで、思い返す内にその容姿は少しずつ成長して行く。
まるで走馬灯のように、ウォーリアは思い出を何度となく反芻した。
そしてつい今しがた、ウォーリアの手を握って、大人へ花開こうとする彼女の顔を思い描いては、得も言われぬものを感じていた。

 風呂を上がると、リビングにスコールはいなかった。
つまりは───と寝室へと繋がる扉を見れば、半開きになっている。
ドアノブを捻ってゆっくりと開けると、一人の少女が微かに緊張した面持ちでベッドの端に座っていた。


「スコール」
「……」


 名前を呼ぶと、蒼の瞳がゆっくりと此方を見た。
ウォル、と小さな唇が音なく名前を呼ぶのが聞こえて、ウォーリアの唇が綻ぶ。

 スコールは、白いキャミソールの上に薄手のナイトガウンを羽織り、ボトムはゆったりとしたパンツを履いている。
パンツは丈が短く隠しているのは太腿までで、すらりとした白い足が惜しげもなく晒されていた。

 電気は消した方が良いのだろうか───そんな事を考えつつ、ウォーリアが隣に腰を下ろすと、ベッドが二人分の体重を受け止めてきしりと鳴った。
スコールはしばらく固まったように動かなかったが、そろ、と身を寄せて来ると、ぽすりとウォーリアの肩に頭を乗せた。
首筋をくすぐる濃茶色の髪の感触がくすぐったい。
ウォーリアは彼女の肩をそっと抱き寄せ、幼い頃の事故によって残った、傷の奔る額に柔らかくキスをした。


「……ウォル……」


 恥ずかしそうに頬を染めながらも、スコールは恋人に身を任せている。
ウォーリアはそんなスコールの後頭部に、そうっと手を添えて、少女に此方を向くようにと促した。
そろそろと見上げて来た少女と真っ直ぐに向き合うと、ゆっくりと顔を近付ける。
初心なスコールも理解して、そっと目を閉じた。

 重ね合わせた唇は柔らかく、念入りに歯磨きをしたのか、ほんのりとミントの香りがする。
噤まれた小さな唇を啄むように愛でる内に、その力は徐々に綻び、隙間が出来た。
ゆっくりと唇を押し重ねて、開いた隙間を舌先で優しくノックすると、スコールは少しずつその入り口を開け放して行く。


「……ん……」
「ん…っ、ふ……っ!」


 つ、と舌先をその隙間に差し込むと、ピクッと細い肩が弾む。
キスは何度もして来たけれど、こうして深い口付けを交わしたのは、これが初めてのことだ。
怯えさせてはいないだろうかと、ウォーリが細めた眼でじっと観察していると、スコールの手がウォーリアの頬に触れる。
もっと、と甘える子供のように、スコールの方から舌が差し出され、ウォーリアのそれに触れた。


「ん、……ん、ちゅ……」


 舌先でキャンディを舐めるように、スコールはウォーリアに精一杯に愛撫する。
拙く一所懸命なその様子が、ウォーリアをどうしようもなく興奮させた。

 ウォーリアはスコールの背中に腕を回し、太い腕の檻にしっかりと閉じ込める。
抱き締められる感覚を得て、スコールもウォーリアの首に腕を回した。
首の角度を変えて、口付けをより深く繋ぎ合おうと、互いに舌を絡め合う。
ぴちゃ、ぴちゃ、と耳の奥で鳴る音が、これから始まるものを色濃く連想させていた。

 何度も舌を絡め合い、次第にその動きは大胆になって行く。
スコールが口を開けて舌を差し出してくれたので、ウォーリアは直ぐにそれを捉えた。
スコールの首の後ろにぞくぞくとした感覚が迸り、無意識に膝を擦り合わせる。
密着した胸の奥で、少女の心臓は煩い位に跳ねていて、送り出された血流が全身に周り、じわじわと汗が滲む。
それはウォーリアも同じことだ。
大切にしまい込むように愛し続けていた少女を、檻の中に閉じ込めている内に、それをもう何処にも逃がしたくないと言う、凶暴さを帯びた独占欲が湧き上がる。

 どれほど互いの味を注ぎ合ったか、長く深い口付けがようやく終わった。
息をするのも忘れていたスコールは、ようやくの解放に、はあ、はあ、と喘いで酸素を取り込む。
天井を仰ぐ少女の白い喉が晒されて、ウォーリアは吸い込まれるように、その首筋にキスをした。


「あ……っ!」


 ちゅう、と厚みの薄い皮膚を吸われる感触に、スコールの喉から短い声が上がる。
はあ……っ、と熱の呼気が天井に向かって吐き出された。

 ウォーリアの指がスコールのナイトガウンの肩に触れる。
スコールが片腕を引いてくれたので、ウォーリアはそっとガウンの衿縁を開いた。
細身の肩の上を、肌触りの良い生地がするりと滑り落ちて行く。
袖がするすると少女の腕を滑って行き、腰の後ろに落ちたガウンを、ウォーリアはそっと邪魔にならない場所へと退かせた。


「ウォル……」
「……怖いか?」
「……んん」


 呼ぶ声に微かに震えたような音が混じっているのを聞いて、ウォーリアが尋ねてみると、スコールは小さく首を横に振った。


「……だが、緊張しているのだろう。震えている」
「……気の所為だ」
「スコール」
「怖い訳じゃない。……ちょっと寒いだけだ」


 スコールの言葉は、ウォーリアにしてみれば、見栄のようなものだった。
しかし、じっと見つめる蒼の瞳は、止めないで欲しいと訴えている。
初めての事だから、不安も緊張もあるけれど、それ以上にウォーリアを求めているのだから。

 ウォーリアはスコールの頬を撫でて言った。


「辛い時は、隠さずにちゃんと言いなさい。私は、君に伝えて貰えないと、気付く事が出来ないようだから」
「……うん」


 ウォーリアがスコールに対して過保護気味になるのは、大事に思っているからだ。
傷付けたくないと、真綿で包み続けていたいと思う位に、愛しているから。
だからスコールが嫌がること、苦しむことは絶対にしたくない。
それが時に擦れ違いを生む事も、今日までの積み重ねで理解しているから、大事な時にはお互いにきちんと伝え合うことを約束した。

 もう一度、キスを交わす。
俄かに下がりかけた温度をもう一度燃え上がらせるように、スコールは一所懸命にウォーリアの唇を吸った。
ハチドリが蜜を啄むように、ちゅ、ちゅう、と何度も繰り返されるキスが、ウォーリアには愛しくて心地良い。

 少女からの愛を受け止めながら、ウォーリアは彼女の背中に回した腕を、そっと布地の下へと潜らせる。
直に肌に触れる感覚に気付いて、スコールの背中が僅かに反った。
キャミソールの裏地と、背筋の間に微かに隙間が出来て、ウォーリアの手はそこをゆっくりと辿り上っていく。


「ん……ん、ンん……っ」


 背中を辿る、形の良い掌の感触に、スコールの喉奥から堪え切れない声が漏れる。
ゆっくりと布地が捲り上げられれば、体温よりも低い部屋の温度が、火照り始めた背中を包んだ。
その温度差を嫌って熱を求めて目の前の男に身を寄せると、あやすように下唇が食まれる。

 ウォーリアは一度唇を放し、キャミソールを脱がせた。
裸身になった少女の上肢は、体躯に恵まれたウォーリアの体と比べると、細くて華奢だ。
無駄な肉のない体は、元々肉の類が付き難いのだが、身長の方は中学生の頃にするすると伸びた為、どう見てもシルエットが細い。
腰などウォーリアの両手で包めるのではないかと思う程で、ともすれば壊してしまうのではと思う。
それを口にすれば、スコールは「そんなに弱くない」と言ってくれるのだけれど、イメージはどうしても覆し難いものであった。

 スコールは恥ずかしそうに顔を赤らめ、控えめな胸を隠すように片腕を添えている。
その腕の影から、小さな蕾が覗いていることには気付いていないようだ。
もぞ、と身動ぎしているスコールに、ウォーリアはその体を優しく抱き寄せながら、


「寒くはないか」
「……大丈夫だ」


 気遣う恋人に、スコールは小さく頷いた。
とは言え、寒さは別にしても、触れ合う肌の温もりは思いの外心地良く、スコールは目を細めてウォーリアへと身を寄せる。

 抱き締めた少女の体を、そっとベッドへと横たえる。
スコールはその力に逆らわず、とさりと白いシーツの波へと身を預けた。
いつの頃からか、ウォーリアを真似るようにして伸ばし始め、今では尻尾のように背上にかかる程になった後ろ髪が、散らばるように広がる。
見上げる瞳は熱に揺蕩い始めており、何処かうっとりとした面持ちで、恋人の顔を見詰めていた。


「ウォル……」


 きて、と小さな唇が誘った。
ウォーリアは着ていた服を全て脱ぎ、ベッドの下へと放る。
ぎしりとベッドのスプリングの軋む音が鳴り、男の体が、少女の体を包み込むように覆い被さった。

 ウォーリアの形の良い手が、ひたりとスコールの腹に重ねられる。
その手はゆっくりと昇って行き、まだ青い果実のような、慎ましい膨らみに辿り着く。
元々が肉が付き難い体質もあってか、スコールの胸は、仰向けになると微かな稜線が判ると言う程度。
それでも、掌を重ねてみれば、確かに柔らかな感触があった。


「……ん……」


 恥ずかしそうにスコールが身を捩る。
窄められた両目が、じっとウォーリアの手の動きを追っていた。
ひしひしと伝わる視線を感じながら、ウォーリアはそっと少女の柔肌を揉む。


「……あ……っふ……」


 思わず、と言った様子で漏れた小さな声を、スコールは顔を赤らめて堪えた。
右手の甲を口元に押し付け、ふう、ふう、と吐息を漏らす。
柔い胸の向こうで、とくとくと早鐘の音が鳴っていた。

 ウォーリアの手はゆっくりと、慈しむように、スコールの胸を愛撫している。
少し力を入れると、柔らかな肉がそれを沈ませ、しっとりとした皮膚が吸い付いて来る。
小さな胸の頂では、淡いピンク色の蕾がぷくりと膨らんでいた。

 優しく胸を揉んでいたウォーリアの手指が、そっと蕾へと伸ばされる。
その気配を感じて、スコールは息を詰めて指の動きを見詰めていた。
やがて指先が乳輪を掠め、ツンと主張するそこに触れる。


「あっ……」


 ぴくん、とスコールの体が震える。
はふ、と息を吐いて背中を仰け反らせれば、膨らんだ乳首の形が自己主張するように立ち上がる。
ウォーリアはその先端を、指の腹で優しく摩ってやった。


「あ、あ……っ、ん……っはぁ……っ」


 傷付けないようにと、優しい刺激の与え方に、スコールは甘い吐息を漏らす。
ウォーリアが触れるそこを中心に、嫌悪ではないぞくぞくとしたものが伝播していく。
最初にウォーリアが触れた腹の奥で、きゅうきゅうと切ない感覚が大きくなって行くのが判った。

 左の乳首を丁寧に愛され、感じ入るスコールの様子に、ウォーリアは反対側にも手を伸ばした。
親指と人差し指で、傷めないように優しく摘まむ。
「あっ……!」と可愛らしい声が漏れたのを聞きながら、ウォーリアは摘まんだ其処を解すように、そっと捏ねてやった。


「は……あ、ぁ……っ、ウォ、ル……んん……っ」


 スコールはしきりに腰を捩った。
膝を擦り合わせながら、足の爪先が何度もシーツの波を滑る。

 指先の悪戯を受けて、スコールの乳首はすっかり成長した。
ツンと尖った先端は、空気が触れているだけで感じてしまいそうな程に敏感だ。
そうとは知らず、ウォーリアはあまりにも可愛らしい其処に、ちゅう……と吸い付いていた。


「んぁあ……っ!」


 堪らず、スコールの喉から高い音が漏れた。
後頭部をベッドに押し付け、白い手が縋るものを求めるようにベッドシーツを握り締める。


「あ…っや……ウォルぅ……っ」
「ん……」
「はっ、はぁっ……あ、あぁ……っ!」


 すっかり固くなった乳頭に舌を絡める。
艶めかしく温かいものが、唾液と一緒に絡み付いて来る感触に、スコールの呼気が上がっていく。

 スコールは、殆ど距離もないような場所で、ウォーリアが自分の胸に吸い付いているのを見ていた。
まるで彫刻のように端正で綺麗な顔が、自分の体に触れている事が信じられない。
けれど、待ち望んでいた事だと思うと無性に喜びも湧いて来て、もっと彼を感じたい、彼に感じさせてほしいと思う。
その想いに応えるように、スコールの胸は感度を増していく。


「はっ、あぁ……胸、んん……っ!も、あぁ……っ」
「……っは……嫌だったか」
「は、う……んんぅ……」


 吸っていた乳首を解放して、ウォーリアは少女の様子を伺う。
スコールは、その気遣いは有り難いけど、と小さく首を横に振った。


「やじゃ、ない……けど……、胸……もう、感じ過ぎる、から……」


 ウォーリアの指に可愛がられ、彼の舌で愛され────元々触れられる事に敏感なきらいがあるのに、それ以上に感じるようにされてしまって、スコールは耐えられなかった。
これ以上胸で感じたら、一体どうなってしまうのか。
それを与えてくれるのがウォーリアだと思うと、興味と期待もあるけれど、未知の感覚はまだまだスコールにとって怖さも感じるものであった。

 と、スコールは申し訳なさもありながら、胸への愛撫のストップを願ったのだが、それを受け取るウォーリアの方は、じわりとした興奮を覚えていた。
胸でこんなにも感じているのなら、この先へ進んだら、彼女はどんな姿を見せるのだろう。
何よりも大切にしたい筈の少女に、俄かに物騒な欲望が頭を擡げてしまうのを、ウォーリアは一つ深呼吸して抑え込んだ。


「では……ここに触れても、良いだろうか」


 するりと降りたウォーリアの指先が、まだ守られた下肢に触れる。
太腿の際どい場所に当たる指の感触に、スコールもそれの行き先を想像して、胸の鼓動が弾んだ。


「……ん……」


 確かめるウォーリアの言葉に、スコールは言葉少なに頷いた。
赤らんだ少女の頬にキスをして、ウォーリアは彼女の秘部を隠す最後の砦をそっと取り去った。

 生まれたままの格好になって、スコールの心拍数がまた上がっていく。
幼い頃、実家の風呂に一緒に入った事もあったけれど、もう十年も昔の話だ。
互いを異性としてはっきりと意識するようになってからは、ウォーリアの頑なな線引きもあって、当然そんな機会がある筈もなく、一切の裸で向き合うのはこれが初めて。
下着一枚のあるなしで、こんなにもその現実の感じ方が変わるのかと、不思議なものだった。

 恥ずかしさもあって閉じていたスコールの膝に、ウォーリアの手が触れる。
促すように膝皿に重ねられたその手に誘われるように、スコールはゆっくりと足を開いた。
誰にも見せた事のない場所を、誰よりにも愛しい男に差し出す。
それは嬉しくもあって、拭いきれない不安と入り交じり、スコールの体に明確な熱を齎していた。


「痛みや苦しいことがあったら、すぐに言いなさい」
「……平気だ」
「無理をしてはいけない」
「……わかった」


 聞き分けのない子供に言い聞かせるようなウォーリアの言葉に、スコールはムキな表情を浮かべたが、もう一度重ねて言うと、今度は小さく頷く。
それをしっかりと確認してから、ウォーリアは少女の秘園へと手を滑らせた。

 ぴったりと閉じた其処に指先を宛がうと、ひくん、とスコールの体が戦慄く。
緊張しているのが如実に伝わって、ちらりと彼女の顔を伺うと、蒼の瞳とぶつかった。
かあ、と少女の顔が判り易く赤らんで、恥ずかしそうに逸らされる。


「……スコール。ゆっくり呼吸をして」
「……ん……ふ……、」


 無意識であろう、力んでしまっているスコールに、ウォーリアは優しく囁いた。
スコールは言われたことを実行しようと、噤んだ口の代わりに、意識して鼻で呼吸をする。
そのリズムに合わせ、少女の薄い腹が小さく上下した。

 少しずつ体の力を抜いて行くスコールに、ウォーリアは首筋に顔を寄せ、白い肌にキスをする。
あ、と小さな声が漏れて、スコールは首を反らした。
晒された首筋に唇を当て、ちゅう……と柔く吸いながら、ウォーリアはスコールの筋に指をゆっくりと擦り付け始めた。


「っあ……あっ……!」
「息を続けて……」
「あ、う……は……っ、は、あ……っ」


 ともすればまた緊張に強張るであろうスコールに、ウォーリアは努めて優しく囁く。
耳に心地の良いその声が、愛しい少女を安心させると同時に、耳の奥まで性を拓いて行くとは露知らず。

 ウォーリアの愛撫を受けて、スコールの秘園は少しずつ解れて行く。
指先にしっとりとした感覚が滲んで来るのを感じて、ウォーリアはそっと指先をその中へと押し付けた。
つ、ぷ……と先端が入り口を潜った瞬間、「あっ……!」と明らかにスコールの声が強張る。


「痛いか」
「っは……う……」


 ふるふる、とスコールは首を横に振った。
我慢しているのか、とウォーリアが眉根を寄せると、


「……いた、くは……ないけど……んっ……へんな、かんじ……」
「……では、少し待とう。ゆっくり呼吸を続けなさい」
「う……ん……」


 そこは受け入れる為の場所だとは言え、スコールはまだ誰も知らないのだ。
純潔を守り続けて来たその場所は、容易く他人が侵せるものではない。
焦ってはいけない、と自分に言い聞かせながら、スコールを宥め落ち着くのを待つ。


「ん……ふ、……はふ……ぅ……」


 スコールの意識した呼吸のリズムに合わせて、指を咥えた秘口がひくひくと戦慄いている。
奥への進入を拒むように閉じていた其処は、たっぷりと時間を置いても、やはりまだ強張っていた。
それでもスコールの呼吸がスムーズになってくると、全身の力みは多少なりと緩んで行き、


「……は……、もう…大丈夫……」


 ほう、と息を吐ける位になって、スコールはそう言った。
ウォーリアはまだ幾らか心配ではあったが、見上げる瞳が先を求めているのを汲み取る。

 ウォーリアは努めてゆっくりと、彼女の中へと指を埋めて行った。
身嗜みを整える癖がついていて良かったと思う。
もしも爪を伸ばしっぱなしにしていたら、彼女の柔らかな体を無為に傷付けていたかも知れないのだから。


「うっ……あ……、んぁ……っ」
「もう少し……」
「う、んん……!ふ、う……くぅん……っ」


 ゆっくりと侵入を深めていく指の感触に、スコールの体が何度もひくひくと戦慄く。
逃げを打つ体を抑制するように、スコールはベッドシーツを強く握りしめて、何度も天井を仰いだ。
その努力の甲斐あって、ウォーリアの長い指が、彼女の奥まで侵入する。


「あう……は、うぅ……」


 ピクッ、ビクッ……と体を震わせるスコール。
それと同時に、彼女の媚肉も戦慄いて、きゅ、きゅう、とウォーリアの指を何度も締め付けた。

 赤らんだ少女の額には、粒玉の汗が浮いている。
初めての事ばかりで不安も恐怖もあるだろうに、此処まで頑張ってくれているスコールに、ウォーリアはどうしようもなく愛おしさが増す。
その額にキスを贈れば、スコールは子猫のように目を細めて、ウォーリアの唇に頭を寄せた。


「ん、ふ……ウォル……んっ……」
「動かしても?」
「……うん……」


 スコールは小さく頷いた。
同時に、きゅう、と秘部が切なげにウォーリアを求めて吸い付く。

 ウォーリアは指先を少しずつ、少しずつ動かして行った。
最初は絡み付く内壁を宥めるように、指先で壁を撫でるようにそうっと擦る。
体の中で生まれた刺激に、スコールの体がビクンッと判り易く跳ねた。
心音が急激に早くなるスコールを、ウォーリアは耳の後ろにキスをしてあやす。


「はっ……はぁ……っ」
「少しずつだ」
「う、ん……あっ、……あふっ……!は、あぁ……っ!」


 急いては行けないと、スコールへの囁きは、ウォーリア自身にも向けたものだ。
そうとは知らず、スコールは自分を慮ることに重きを置いてくれる恋人に、一層の信頼と共に身を委ねて行く。

 狭く窮屈であった媚肉は、その奥から次第にじゅわりじゅわりと蜜が染み出し始めていた。
ウォーリアはそれを指先で掬うように動かし、絡み付く内壁に塗り広げていく。
その動きが段々と大胆になって行くにつれ、スコールも甘やかな声を上げ始めていた。


「あ、あ……あぁ……っ、は、あんっ……!」


 くちゅ、くちゅ、と淫水音が鳴って、スコールの膣内が濡れて行く。
内肉は絶えずヒクヒクと戦慄いて、柔らかなツブのような感触が何度もウォーリアの指に絡み付く。
吸い付くようにしゃぶってくるその内壁を、指先で円を描くように掻き回せば、


「はぁう……っ!」


 感じ入った甘い声が上がり、きゅう、とまた指が締め付けられる。


「はっ、はっ……んん……っ」


 スコールはシーツを手繰り寄せ、頼るように強く握りしめながら、肩を縮こまらせている。
次々訪れる未知の感覚で、初心な少女はもう飽和状態になっていた。
けれども、彼女が迎え入れているのは、まだ準備段階のものでしかないのである。

 ウォーリアの指の動きが、徐々に大きくなって行く。
内部は未発達で狭い感触ではあるが、痛いばかりの締め付けはなくなり、振れる肉の感触は包み込むように温かい。
その奥をウォーリアが丁寧に探っていると、ある一点を捉えた瞬間、


「んぁあっ……!」


 ぞくぞくぞくっ、とスコールの背中に熱いものが迸って、思わず声が大きくなった。
更には、其処に触れられた感触が残って、残留した電気のようなものがスコールの体を苛む。

 ビクッ、ビクッ、と顕著な反応を示した其処を、ウォーリアは指先で丁寧に、舐め上げるように何度も摩ってやる。


「あ、あぁっ、あぁ……っ!ウォ、ル……待っ、あっ!そこ、なんかっ……あぁあ……っ!」


 腰から下の力が抜け落ちそうな感覚に、スコールは堪らず頭を振った。
これは何、と戸惑う少女の問いは、声に出す事も出来ず、快感を共に襲い来る切迫感に意識が持っていかれてしまう。
待って、と訴える隙もなく、一際弱いと判明した場所を何度も愛でられ、


「はぁっ、あぁっ……!んんんぅううっ……!!」


 スコールの体が大きく弓形に撓り、背中がベッドシーツから浮く。
そうして彼女の陰唇が一層強く閉じた瞬間、ぷしゃっ、と言う飛沫が勢いよく飛び散った。

 上り詰めたと判る反応を見せつけたポーズのまま、スコールの体はしばらくの間強張っていた。
足先が踵を浮かせ、爪先がベッドシーツを強く噛んでいる。
官能のスイッチを天辺まで上げきって、そこから戻って来れないまま、スコールは溺れたように虚ろな瞳を彷徨わせていた。
その間も、スコールの蜜壺は、其処にいるウォーリアの指を強く締め付けて離そうとしない。

 きゅうきゅうと絡み付く媚肉の感触は、ウォーリアにとってとても心地良く、此処から先にそれを味わう瞬間を想像してしまう。
暴走してはいけないと何度も自分に言い聞かせていたが、それも限界が近かった。
自分の手で乱れ喘ぐ恋人の姿が、ウォーリアから強固な筈の理性を取り払い、一匹の雄の本能を呼び覚ましていく。


「ふ……あ……あ………」


 スコールが辛うじて呼吸の仕方を思い出すと、僅かずつその体は弛緩していった。
ベッドから浮いていた背中も沈み、強張りから解かれた足がシーツの波に投げ出される。

 ひくひくと戦慄く媚肉から、ウォーリアはゆっくりと指を抜いた。
逃げていくそれを追い駆けるように、狭い入口が更に閉じて、肉の感触がウォーリアを艶めかしく包み込む。
その天井に指の腹を押し付け、撫でるように擦って行くと、


「あっ…あっ……は、あぁ……ん……」


 スコールは悶えるように、あえかな呼吸を漏らしながら、官能に身を震わせる。

 にゅぽ……と秘部から指を引き抜くと、入り口と指先を銀糸が繋いでいた。
侵入者から解放された其処は、微かに口を開いたまま、ひくんひくんと絶えず震え、何かを求めるように戦慄いていた。
それを見詰めるウォーリアは、自身の内側に息衝いていた熱が、中心に向かって一気に集まるのを自覚する。

 ウォーリアはベッド横のサイドチェストに手を伸ばした。
小さな引き出しを開けると、携帯の充電器や眼鏡入れしかなかった其処に、最近になって追加されたものがある。
それを取り出し、封を切っていると、茫洋としていた蒼がいつの間にか現実に戻って来て、ウォーリアの様子を赤らんだ顔で見詰めていた。


「……それ……」
「必要だろう。君に負担をかけない為にも」


 そう言ったウォーリアの手には、掌に納まるほどに箱がある。
それから取り出されたのは、コンドームだった。

 恐らくは初めて目にしたのであろう代物に、スコールの眼が釘付けになる。
視線が手元を追うのを感じながら、ウォーリアは自身の象徴にそれを丁寧に装着させた。
そうして目の当たりにしたウォーリアの中心部に、スコールの顔が益々赤らみ、小さな唇が緊張を表すように噤まれた後、


「……あんた、用意してたのか」


 意外だったと言うスコールに、ウォーリアは、


「君を守る為に、遠からず必要になるだろうと思っていた。正直、こんなにも早く使うとは、思っていなかったが」


 だからこそ、スコールが今日と言う日に初めてを捧げたいと告げた時に、ウォーリアは彼女を強くは止めなかった。
彼女の何よりも強い熱意に動かされた事は確かだが、この薄ゴム一枚の壁は、まだ若い彼女を護る為にも必要不可欠なのだ。
そして、この境界線は、大人である自分が守るべきものだと自負している。

 スコールはと言うと、生でも良かったのに───と口にすれば間違いなく叱られるであろう事を一瞬考えていた。
だが、ウォーリアがこれを用意してくれていたと言う事は、彼もまた、スコールと契ることを意識していたと言う事になる。
愛しい人を求めていたのは自分だけではなかったのだと思うと、自分が大事にされていると、ウォーリアと言う存在から愛されているのだと言う事が感じられて、どうしようもなく胸が高鳴った。

 胸の奥で鳴る鼓動を聞きながら、スコールはウォーリアへと手を伸ばした。
白い手が、陶器のように整ったウォーリアの頬に触れる。
どちらともなく唇を重ね、深く交わりながら、またベッドへと身を沈めた。


「君を傷付けたくはない。辛ければ言いなさい。きちんと待つから」
「……ん」


 ウォーリアの言葉に、スコールは小さく頷く。

 形の良い手が、スコールの膝をやんわりと開かせる。
熱の上限へと一度持ち上げられた事、ウォーリアの指で丹念に解されたお陰で、スコールの秘部はしっとりと濡れていた。
これからの期待か、緊張か、ヒクヒクと戦慄く其処に、ウォーリアの雄が宛がわれる。


「は……ふ……ぅ……」


 スコールはウォーリアの首に腕を回し、縋るように抱き着いた。
ウォーリアもその背中に腕を回して、少女を腕の檻の中にすっぽりと閉じ込める。
密着し合う肌の熱と、それぞれの鼓動の音が、シンクロするように溶け合うのが判った。

 ゆっくりとウォーリアの体が前へと進み始める。
指で解された秘園は、艶めかしく彼へと絡み付きながら、そのシンボルを受け入れて行く。
指とは全く違うサイズ感に、スコールはウォーリアの肩に額を押し付け、


「ん、ん……お、っき……んぅ……っ!」


 生まれて初めて感じる、身の内に侵入して来る他者の体温。
その存在感は、青い果実である少女にとって中々に苦しいものであった。
しかし、ウォーリアが努めてゆっくりと、何度もあやすように背中を撫でてくれるから、スコールは怯えることなく、彼を受け入れる為の呼吸が出来る。


「は……ウォ、ル……入って…来る……あぁ……っ」


 ウォーリアの耳元で、少女のあえかな声が幾度も零れた。
ひくひくと常に震える肉壺が、男の象徴に隙間なく絡み付き、きゅうきゅうと何度も締め付ける。
薄ゴム一枚の壁などまるでないかのように、その感触は温かく艶めかしく、ウォーリアを心地良い媚毒で苛んだ。

 やがてウォーリアは、侵入した先で強い抵抗感を感じた。
先端がこつりとそこに当たった瞬間、スコールの体が縮こまり、締め付けが一際強いものになる。


「……スコール……」
「……ふ……っは……大、丈夫……んんっ……!」
「ん……」
「ん、むぅ……っ」


 額に汗を滲ませるスコールに、ウォーリアはそっと口付けた。
甘い味のする唇を吸い、求めるように差し出された舌を此方へと受け入れる。
ウォーリアの咥内に滑り込んできた舌に、己のそれを絡ませてやれば、間近にある少女の面が安心したように微かに綻んだのが見えた。

 ちゅ、ちゅぷ、と唾液の交じり合う音を立てながら、口付けを交わし合う。
キスの心地良さにスコールは次第に夢中になって行き、強張っていた体からは徐々に力が抜けていく。


「ん、は……はむ、んむぅ……んちゅっ……っふ……」
「ん……ちゅ、ふ……っは……」
「は、あ……」


 たっぷりと唾液の交換をして、ウォーリアはそうっと少女を介抱した。
二人の濡れた唇を銀糸が繋ぎ、スコールの緩んだ口の隙間からは、てらてらと光る舌が覗く。

 はあ、はあ、と甘い吐息を零すスコールを、ウォーリアは今一度抱き包む。
膝でスコールの太腿を押すと、彼女もその意図を感じ取って、両足を大きく開いた。
受け入れると心を決めた少女を愛する為、ウォーリアはゆっくりと彼女の一番奥へと身を沈める。


「あ、あ……っ、んぅうう……っ!」


 一際強い抵抗感と共に、強い締め付けがウォーリアを襲う。
その苦しさにウォーリアは眉根を寄せるが、何よりも辛いのは、受け入れる側のスコールだ。
ウォーリアは出来るだけ彼女が苦しくないように、努めてじっくりと、時間をかけて、彼女の中を押し開いた。


「ああぁ……っ!」


 甲高い声を上げて、スコールはウォーリアの全てを受け入れる。
抵抗感の奥へと至った雄に、戦慄き震える媚肉がぴったりと絡み付き、初めてを愛しい人へと捧げた悦びを伝えている。

 その傍ら、初めてを迎えたスコールの額には汗が浮かび、眦には大粒の雫が浮かんでいた。


「あ、う……うぅ……っ」
「ゆっくり呼吸をしなさい。焦らなくて良い」
「ふっ、ふぅ……ん、あ……っ」


 じんじんとした痺れのような感覚が体中を苛んで、スコールは気を抜けば気絶してしまいそうだった。
一挙に襲い掛かって来る負担に喘ぐスコールを、ウォーリアは努めて優しい声で宥める。
その声と、背中を摩る温かい手の温もりに、スコールは辛うじて意識を保っている状態だった。

 喉を逸らし、酸素を求めて口を開閉させるスコール。
ウォーリアはその喉に唇を寄せ、滲む汗を拭うように、ゆっくりと舌を這わせる。
喉を辿っていく温かい感触と、首筋や頬をくすぐる髪の毛に、スコールの喉がひくっひくっと反応を示した。


「あっ……はっ……はぁ……っ」


 徐々に呼吸のリズムが帰って来ると、スコールは自分の中にある存在のことをまざまざと感じていた。
それは彼女の胎内で、どくんどくんと脈を打ち、締め付けると微かに震えてくれる。
其処に彼がいるのだと感じる度に、言い様のない充足感が足元から上って来て、夢を見ているような心地にもなった。
けれど、首元を擽る感触が、これは現実なのだと告げる。


「は……はぁ……ウォル、ぅ……」
「ああ。此処にいる」
「ふ……はぁっ……あぁ……!」


 恋人の名前を呼べば、直ぐ近くから返事があった。
それが無性に嬉しくて、体の芯が熱くなる。
同時に、秘園の奥からは悦びの蜜が溢れ出し、其処に納まっている男に擦り込むように絡み付いた。

 スコールの呼吸が落ち着いたのを確認して、ウォーリアは赤らんだ頬に手を当てる。


「大丈夫か」
「……う、ん……だから……続き……」


 あくまで恋人を想う気持ちから、悪手はすまいと努めるウォーリアを、スコールは先へと誘う。
幼い故に向こう見ずにも思える少女の声は、ぎりぎりの理性で綱渡りをしている雄にとって、逆らい難い甘露の声でもあった。

 ウォーリアはスコールの体をしっかりと抱き締めて、律動を始めた。
最初は少しずつ、ゆっくりと、彼女の具合を確かめながら中を耕していく。


「あっ…あぁ……っ、んぁ、ふ……っ」


 スコールは眉根を寄せながらも、甘い声を零している。
中に入っているものが前後にストロークする度に、内壁が満遍なく舐め上げられてて、ぞくぞくとしたものが痺れるように体を襲う。
それが快感だと言う事まで頭は回らないけれど、嫌な感覚ではなかったから、スコールは安心してウォーリアに身を委ねていた。


「はぁ、はっ、あっ……んっ、あぁ……っ!」
「っは……スコール……」
「ふ、う……ウォル、んっ……!んぁっ、あぁっ……!」


 ぎし、ぎし、とベッドのスプリングの音が大きくなって行く。
ウォーリアの腰の動きは徐々に大胆になって行き、逞しい重みが何度もスコールの下肢を襲った。
ずっ、ずっ、と奥の方を強く擦られ、突き上げられるのが判って、少女の体が打ち上げられるように、強烈な刺激が響いて来る。


「はあっ、あぁっ……!ウォル、熱い……んっ、あふっ……!」
「辛いか?スコール……っ」
「ん、っへいき……あっ、あっ……!だから、あっ、もっと、うぅん……っ!」


 奥を突き上げられる度、蕩けたように声を上げながら、スコールはもっともっとと熱を強請る。
その姿は、愛らしくもいやらしく、ウォーリアの理性の最後の砦を存外と容易く崩壊させていく。

 ウォーリアの腰遣いが徐々に激しさを増して行き、いつしかスコールは揺さぶられるままに声を上げるしか出来なくなっていた。
逞しい男の体で、全身を捕まえるように包み込まれ、過ぎる快感に身を捩る事さえ出来ない。
初めての愛しい人との行為に、それだけで少女の意識は一杯一杯だと言うのに、その官能を一つも逃がせないまま、ダイレクトに受け入れ続けているのだ。
抗う術を知らない細い躰が、再びの劣情の高まりに抗える訳もなく、


「あふっ、あっ、あぁ……っ!あっ、来る……なんか、んんっ!熱い、のぉ……っ!」
「く……奥が、強く……っは、うぅっ……!」


 きゅうう、と何度目かの強い締め付けと共に、小刻みに震える内壁の感触を得て、ウォーリアはスコールが上り詰めようとしている事を悟る。
隙間なく密着して絡み付く肉壁を、太く逞しい雄で強く突き上げれば、スコールは弾けたように高い嬌声を上げてしまう。


「っあぁ!あっ、んぁっ、ウォル、あふぅっ!」
「スコール……はっ、私も、もう出そうだ……!」
「あっ、あぁっ……!ウォル、んっ、ウォルぅ……っ!はっ、んんっ!」


 眉根を寄せ、苦しげに零れたウォーリアの言葉に、スコールは言葉に出来ない程の喜びを得ていた。
服の乱れさえも見せない男が見せる、理性を捨てた雄としての貌。
乱れ感じているのは自分だけではないのだと、自分の中で、自分の体で、ウォーリアが感じていると言う事実が、スコールを今夜最も熱い迸りへと突き上げた。


「あぁああ……っ!!」


 切ない声を上げながら、スコールは絶頂した。
足の爪先までピンと張り詰め、薄い腹を震わせて、背中を大きく弓形に撓らせる。
その背中を逞しい腕がしっかりと抱き締めれば、その窮屈さも少女にとっては悦びとなって、蜜飛沫が飛び散った。

 ウォーリアを包み込む秘園は、咥え込んだそれを離すまいと締め付けながら脈打っている。
とくんとくんとリズムを打ちながら、うねるように絡み付くその感触と熱に、ウォーリアも遂に唇を噛み、


「く……うぅう……っ!」


 引き結んだ唇の中で、呻きに似た声を零しながら、ウォーリアは果てた。
スコールを守る為に装着した薄ゴムの中に、どぷりと精の証が注ぎ込まれる。

 あ、あ、と熱の余韻に揺蕩う少女の声と、男の荒い呼吸音だけが響く。
強張っていたスコールの体は、幾何かの静寂の後に、ふっと弛緩してぱたりとベッドに落ちた。


「……は……はぁ……スコール、……」
「………」


 いつになく乱れた呼気のままで、ウォーリアは少女の名前を呼んだ。
スコールからの返事はなかったが、代わりに耳元からは、すぅ、すぅ、と小さな呼吸音が聞こえる。
顔を見ると、スコールは青い瞳を瞼の裏に隠し、くったりとシーツの波に沈んでいた。

 重ね合わせた肌の向こうで、とくん、とくん、と規則正しい鼓動が続いている。
眠った───いや、気を失っただけのだと理解して、ウォーリアはほうっと安堵の息を吐いた。


「……無理をさせたな」


 呟いて、ウォーリアは汗ばんだスコールの頬をそっと撫でた。
しっとりと吸い付くように濡れた頬には、涙の痕も残っていたが、寝顔は健やかなものだ。

 まだ彼女の中にあったものを、ウォーリアはゆっくりと引き抜いた。
意識がなくとも、擦れる感触があるのだろう、スコールは「…っん……あ……」と小さな声を漏らし、まるで引き留めたがるようにウォーリアを締め付けた。
待って、と甘えるように絡み付いて来る感触は離れ難く、ウォーリアの熱を煽るには十分であったが、意識のない少女に無体は決してしてはいけない。

 蜜壺から抜け出したウォーリアの中心部は、まだ膨らみを喪ってはいない。
しどけなくベッドに横たわる彼女を見ているだけで、雄の本能は勝手に持ち上がってしまう。
だが今夜は、彼女の為にも此処で終えるべきであることを、ウォーリアは理解していた。

 眠る少女の裸身は、まだ火照りを宿していたが、汗や分泌した蜜液で濡れている。


「……清めなくてはな」


 このままで寝かせていては、どんなに布団を温かくしても、冷えてしまうかもしれない。
ウォーリアは、スコールの体を一旦シーツに包んで抱き上げた。
ウォーリアとて体は重かったが、大切に思う少女の事を想えば、この労は甘んじて行うべきものだ。

 風呂へと向かう途中、揺れる振動が僅かに眠りを妨げたようで、スコールが小さくむずがった。
落ち着くまで立ち尽くしていると、薄く瞼が持ち上がり、とろりと夢見る瞳が覗く。


「……んぅ……?」
「まだ夜だ。寝ていなさい」
「……」


 眠っていて良いと促すと、スコールは素直に目を閉じた。
そして濃茶色の髪が、とすんとウォーリアの胸に落ちて来て、再び規則正しい寝息が零れ始める。

 安心し切った表情で、すぅ、すぅ、と眠るスコールの姿に、ウォーリアは小さく笑みを漏らし、


「愛している、スコール」


 全てを捧げ、受け止めてくれた恋人に、ウォーリアは柔らかな声で囁いたのだった。




唐突にいちゃらぶな初めての夜を書きたくなった。

本当はスコールが大人(成人が最低ラインで、本気で考えると大学卒業まで)になるまで待つつもりだったWoLと、そんなの待てない!なスコールでした。
ちゃんと話し合うまで、お互いの戦いがあったんだと思います。恥ずかしいの堪えてエッチな下着で誘うスコールと、鋼の理性で「風邪をひく」とか言いながら上着を着せるWoLとか。
結局WoLの方が大甘に折れた訳ですね。でもなんだかんだでWoLの方もそっち方面を意識していて、いつそうなっても良いように準備はしていたのです。