溶け合う熱のてのひらで


 地面に倒れているのを見付けて、ああ厄介なものを見てしまった、と思ったのが最初だった。
都会の真ん中で、誰だって平穏無事に生きてはいたいものだから、厄介の種なんて見付けない方が良いに決まっている。
見付けてしまったら、そっと見なかったことにして、さっさとその場を退散するのが関の山だ。
人助けが必ずしも良い事に繋がらないなんて、子供だって分かっている、そんな世知辛い世の中なのだから。

 だと言うのに、シドが声をかけることを決めたのは、其処が自分が住んでいるアパートの入り口だったからだ。
安普請のアパートは、嘗ては義理の娘と二人で、彼女が大学に進んだ今では一人で生活している小さな城だった。
仕事を終えて夜半にようやっと其処に帰ってきたら、敷地の出入口の所で俯せに転がっている人間がいた訳だから、厭でも目に入るというもの。
此処で無視して、後々違う誰かがこれを見付け、警察にでも届けたら、この敷地の住人は須く事情聴取をされるに違いない。
その方が頗る面倒だったので、それならば見付けた今のうちに腹を括り、自分が警察に連絡しようかと思ったのだった。

 しかし結果として、シドは警察への連絡は保留にした。
俯せていたその人物が、小さく呻いているのが聞こえたからだ。
ああ、良かった、生きている。
まず真っ先に考えた、一番に物騒な出来事───殺人事件とか───ではなかった事に安堵して、取り敢えず声をかけてみた。
倒れ伏した人物は呻くばかりで全く目を覚ます気配はなかったのだが、その時、空の雲行きは怪しいものになっていた。
あと一時間もすれば泣き出すかも知れない空模様の中、行き倒れを放っておくのは、聊か夢見が悪い。
やれやれと深い溜息を吐いて、シドはその男を自分の部屋へと運び込んだ。

 草臥れたスーツを着た男は、翌朝まで眠りこけていた。
シドが起きた時には、彼ももう目覚めていて、戸惑った表情できょろきょろと辺りを見回していた。
行き倒れていた事と、見付けたので仕方なく拾って来た事を説明すると、随分と縮こまって謝罪された。
そうして俯いた顔に、見るも明らかな隈がくっきりと浮いているのを見て、健康そうな生活はしていないようだと悟る。
後々に詳しく聞けば、健康も何もと言う有様だった訳だが。

 男の住居は、同じアパートの二階にあった。
場所はシドの部屋の丁度真上だ。
男は掠れ気味の声で、シドに詫びを数回繰り返した後、自分の部屋へと帰って行った。
その時のシドに、男の事情に深入りするつもりは全くなかった。
同じアパートに暮らしているのなら、今後はその姿を見る事もあるかも知れない、程度のこと。

 しかし不思議なもので、一度知り合った所為か、以降のシドは折々に男の姿を見ることになる。
シドの生活は少々不規則なリズムで動ているのだが、彼はいつも決まった時間にアパートを出ていた。
それも朝ぼらけにも早い未明の内である事が多く、それから帰って来るタイミングは決まって深夜。
睡眠時間があるのか、とシドが思ったのは無理もなく。
シドがゴミ捨て場に行くタイミングで、丁度アパートから出ようとしている男を見付けたので、適当に声をかけながら聞き出してみれば、「二時間寝たから、今日はよく寝た方だな」等と言う返事が返って来た。
これで男がショートスリーパーで健康体だと言うなら構わないのだろうが、目の下の消えない隈であったり、常に重怠そうに肩を捻っていたり、全身の倦怠感や、鬱々とした表情を隠しもしないのだから、とても真面には思えなかった。

 それでもシドは、当分の間は、それ以上踏み込む事はしなかった。
相手が娘と同じ学生であるなら、お節介の自覚はありつつ、もう少し面倒を見てやっても良かっただろうが、スーツを着た男は良い歳をした大人だ。
近所のよしみがあるにしろ、ズカズカと他人の領域に入ってあれこれ口を出すものでもない。
次にまた行き倒れている事があったら、その時にでも────そう思っている程度だった。

 まさか本当に、二度目の行き倒れを拾う事になろうとは、思ってもいなかったのだが。

 良い歳をした大人が、一回目と全く同じ状態で転がっていたら、流石にシドとて呆れるしかない。
そして、やはりまた空模様は怪しい日で、放っておけば雨の中でも昏々と眠り続けていそうな男に、シドはまた彼を拾って行ったのだった。

 二度目のその出来事が切っ掛けで、シドもいよいよ踏み込んだ。
いつか本気で事件が起きそうだったし、自分の城の真上で、自分が一度でも援けた人間が、過労死とか孤独死していたとか言う話は聞きたくもない。
一体どう言う生活をしているんだと、聊か説教めいた空気を滲ませたのは、半分は意図的だった。
相手は、二度助けられたと言う事実もあってか、終始申し訳なさそうな表情を浮かべて、自分の生活について語ってくれた。

 酷いものであった。
男が勤める会社は、ブラック企業さもありなんと言う有様で、彼は随分と長い間、其処で歯車になっていたらしい。
とにかく業績を上げないと、いつの間にか給料査定にマイナスの棒が使われ、日々の生活にストレートに打撃を喰らう。
上司が怒鳴るのは日常茶飯事で、部下は只管その顔色を窺っていなければいけない。
迂闊に怒りを買えばクビにされた上、ある事ない事が業界内で吹聴される為、次の就職先を見付けるのも難しくなる。
円満に退職しようにも、上の人間がそれを許可しない為、逃げるように会社から姿を消す者は後を絶たなかったと言う。
役所の類に届ければ、当然ながら指導を貰う環境だったのだが、それでも上の人間の考えることは変わらなかった。
寧ろ、僅かに残った社員を更にキツく締め付け、より一層の搾取を行う。
そう、あれは搾取だと、其処に勤めていた男も分かっていた。
分かっていて会社に籍を置き続けたのは、一年毎に入って来る新卒社員や、他の会社に移ろうに移れない仲間達の為だった。
一人、また一人と社員が減って行く訳だから、必然的に仕事の手は足りなくなり、一人一人の仕事内容は増えて行く。
男は仲間の分までそれを浚い、面倒毎を一手に引き受け、皆が楽になれるようにと奔走していたのだ。
その結果として、仲間達は数か月置きで新天地へと旅立って行き、彼だけが取り残された。
懸命に育てた新人も、そのノウハウを活かして他業へと移り、男はいつもそれを「良かった」と見送ったそうな。

 自己犠牲も其処まで行けば大したものだ。
口にすれば皮肉に聞こえるだろうと言わなかったが、シドは心の底からそう思った。
それは感嘆でも称賛でもあったが、呆れも多分に含んでいた。
其処まで他人の為に献身になれるのなら、その百分の一でも良いから、自分に向ければ良いものを。
恐らくは性分であるのだろうと同時に、自分が其処から逃げれば良いと言う選択肢そのものを、すっかり失念していたのだろう。
自分がいなくなれば、この会社は立ち行かなくなると、其処に残された者達のことを放っておけなくて、延々と回し車の中にいたのだ。

 聞いた以上は最早知らぬ顔は出来ないと、シドは強引に男を自分の下に引っ張り込んだ。
話を聞いた翌日、いつものように仕事に行こうとする彼を捕まえ、自分の会社に連れて行った。
そして男の勤める会社に、シドの方から電話をし、「お宅の社員はうちで貰う」とだけ伝えた。
電話の向こうで怒鳴る声が聞こえると、男が分かり易く顔を強張らせていたので、成程これを毎日聞かされれば思考も麻痺するものだと思った。
シドがやった事は引き抜きであるから、先方が怒るのも当然ではあるのだが、それにしたって人格否定から脅しめいた言葉から、よくポンポンと出て来るものである。
その会話はしっかり録音させて貰って、もし何かあれば直ぐに公的機関に提出できるようにして置いた。
そんな出来事から数年が経っているが、今の所、シドの会社は平穏無事に過ごしている。
そもそもが真っ黒な会社であるから、正当な手段でシドを訴えようとした所で、逆に身の埃が出て来るだけだろう。
だから逆に違法な手段で強行して来る事こそ警戒したのだが────ただの内弁慶だったのかも知れない、と思うのも、どうでも良い事だ。

 それからは、当分の間、シドが男の面倒を見ていた。
仕事については覚えが早く、これなら何処の仕事に就いても良い役職まで上れただろうと思ったが、そんな中で真っ黒な所に当たった辺り、彼の不運がよくよく体現されている気がした。
ともかく仕事は全く心配もなく、強いて言うなら聊か口下手であるから、営業職には不向きかと思ったが、根の真面目さが案外と好印象に映る。
腹の探り合いには疎いが、それが反って良い巡り合わせを作るタイプだ。
きちんとした水の下で育てれば、如何様にでもなるだろうと思った。

 彼の問題点は、どちらかと言えばプライベートの方にあった。
何せ歯車と化して久しかったものだから、家は寝て帰るだけのもので、それも三時間もいれば長かった方だとか。
いっそ会社に寝泊まりしていた方が、体の負担もないだろうと言うような数字だ。
尤も、件の会社で寝泊まりなんて、そんな事が許して貰えるような環境にも思えないし、恐らくは夜通し働かされる羽目になったのだろうが。
ともかく、そう言う生活を長年続けていたものだから、自己管理と言うのは碌々出来ていなかった。
その意識を崩壊させられていたのだから無理もない。
寝る時はいつも睡眠は浅く、電話が鳴ればすぐに起きられるように。
食事は栄養補助食品とサプリメント、後はカフェインで脳を無理やり起こして稼働させる。
仕事が一つでも残っていると気になるので、タスクを空にしないと気が済まないが、空になっていると落ち着かなくて、他の仕事を探したがる。
仕事をする暇があったら寝ろ、飯を食え、とシドが何度口酸っぱくしたか分からない。
休日なんてもう何年もなかったらしく、公休の日なのに出社して来たのは呆れた。
その日は、仕方がないので、特に親しくなっていた社員を午後休みにして、彼を街へと連れ出させている。

 シドの会社には、色々な友人知人の伝手を辿り、諸事情を抱えた末に行き付いた者が多い。
だから始めは手のかかる社員と言うのは珍しくはないのだが、この方向性で世話をしたのは初めてだった。

 生活実態が余りに酷いので、最終的に、シドは彼と同居することにした。
それまでにも同じアパートに住んでいることもあり、頻繁に様子を見に行っていたのだが、それでは足りないと踏んだのだ。
人間らしい暮らしと言うものを、彼自身の目で見せ、覚え直させなくてはいけない。
その為には、身近に学習元となるものが必要だったから、シドはそれに自分を使った。
他人と同居するなど、娘の大学進学以来の事だったが、お互いに良い歳をした大人なのだから大丈夫だろう───と。

 かくして新たな生活は始まった訳だが、まさかその末に、自分とその男が“パートナー”になるとは、当時は欠片も思ってはいなかったのだった。



 長らく愛用していた安普請のアパートは、拾った男───クライヴと同居すると決定した時に、引き払った。
あそこは一人暮らしであるとか、金銭的な余裕を持たない一家が利用するには優しいものだったが、良い歳をした男二人がストレスなく過ごせる程の広さはない。
大学生の娘と過ごしていた時だって、寝床やプライベートエリアをどう確保するかで悩んだものであった。
当時はシドも会社を立ち上げたばかりで、まだまだ首が回らなかったし、娘も特段それを気に已む様子を見せなかったので良かったが、まあ築年数も長いし、豪雨の日には雨漏りや停電もあるし、潮時だろうと踏んでも良かった。

 娘にも一応の連絡をした後、引越したのは、仕事場から電車一本で行ける場所にある、マンションアパートの一室。
2LDKで空調完備、インターネットインフラも各部屋に引き込んである。
近所にはコンビニは勿論、スーパーや幾つかのクリニックも徒歩圏内にあり、中々の好立地だ。
家賃は前の安アパートとは比べるべくもない数字だが、もうシドの懐にも十分な余裕があった。
其処にこれから暮らすぞ、と言って恐縮したのは同居人で、「こんな所に転がり込ませて貰うのは……」と仕切りに言っていた。
居候ではあるが、家賃はしっかり折半させて貰うから、其処は遠慮するなと言ってある。
シドの会社の社員であるクライヴの懐は、詰まる所シドからの給料として出る訳だが、それもきちんとバランスを取って、家賃分を差し引いても彼が十分な貯蓄が作れるようには整えてある。
そんな自分の環境の激変に、クライヴは戸惑いつつも、「ありがとう」とシドに感謝を述べた。

 一つ屋根の下での生活は、まずはクライヴの崩壊気味だった日常生活の意識を改善させる所から始まった。
健康的な睡眠時間の確保とその習慣づけ、朝昼晩のトータルバランスが取れた食事、ついでに余裕が出て来てからスポーツジムに行く事も促してみた。
数回過ごした後、「悪くないかも知れない」と言っていたので、気の向くままに継続させている。

 こうして三年ほど、シドはクライヴの面倒を見て過ごしている。
出逢った頃には草臥れた印象ばかりであった青年は、今は眼の下の隈も殆ど消え、以前よりもずっと表情が増えていた。
人からの指示を待ち、指示があれば機械的にも思える正確さで仕事をし、常に会社の歯車の一部としてロボットのように働いていた事を思えば、雲泥の差だ。
仕事の合間に同僚と他愛のない会話をしている事も多い。
それでも根は真面目な気質なようで、仕事があるなら第一優先はそれだと、いつも熟すべき仕事はきっちりと完遂させていた。

 クライヴは優秀だ。
だからこそ、あの真っ黒な会社が、彼を悪戯に拘束し続けて来た理由も判る。
彼一人がいれば、正しく一騎当千なのだ。
彼がいれば他が多少怠けものであったとしても、お釣りがくると言って良い。
だからと言って、そんな男一人に全ての責任を押し付け、後輩の育成も任せ、剰え大量のサービス残業をさせていたのは、経営者の立場を持つシドから見て、余りにも悪質と言う他ないが。

 しかし、やはりプライベードは聊か拙い所がある。
いや、これは彼自身が自分の生活模様と言うものに頓着がないので、プライベートタイムを確保しようと言う意識が元から薄いのだろう。
真面目な性格もあるので、仕事が残っているなら持ち帰りも辞さないし、それが片付くまでは他に手を付けない。
なので、夕飯の用意などは、専らシドが行っている。
クライヴもレシピなど見れば料理が出来ない訳ではなかったが、どうにもそれに手を付ける優先順位も低いので、それならシドがやった方が早いと言う事になった。
人が用意したものなら、クライヴは無碍に出来ない。
そして夜も良い時間になれば、シドはクライヴが触っているパソコンを強制的に閉じて、彼を寝かしつけるのであった。

 ────今日も今日とて、クライヴは熱心にパソコンを打っている。
近く開始する予定の大きなプロジェクトがあるので、その予定をギリギリまで詰めてみたいと言うのだ。
シドとしても、今回は会社の今後の方針を左右するものであるから、信頼の置ける部下としてクライヴにその采配を任せた。
クライヴが納得の行く所まで考えたいと言うのなら、それは好きにさせるつもりである。

 とは言え、時間はそろそろ夜の十時を越える。
嘗ては此処からが仕事のゴールデンタイムなどと言う環境にいたクライヴだが、シドとの同居を始めてからは、それも出来なくなった。
前述の通り、シドが仕事を打ち切らせるからだ。
放っておけば朝まで煮詰めているであろうから、睡眠時間の確保の為、シドが介入するのである。

 シドが風呂から上がって来た時にも、クライヴはリビングの定位置にいた。
積んだ資料の束を捲りながら、ブツブツと独り言をしている。
そんなクライヴに、シドがソファの後ろから、その背中に声をかけた。


「風呂が空いたぞ。冷めない内に入っとけ」
「……」
「クライヴ」


 クライヴは、シドの呼びかけには答えず、じい、とパソコンを睨んでいる。
キーボードを打っていた手が止まり、どうやら熟考に入っているらしい。
シドがその顔を覗き込むと、無精気味の髭を蓄えながらも、存外と可愛らしさの残る顔立ちをしているその眉間に、深い峡谷のような皺が刻まれていた。
これは完全に煮詰まっている時のものだ。

 シドはクライヴのノートパソコンのモニターをぱたりと閉じた。
勝手にそんな事をされて、ようやくクライヴが顔を上げる。


「あんた、また」
「聞こえてなかったようだからな。風呂の時間だ、入って来い」
「はあ……分かった。電源を落とすから手を退けてくれ」


 モニター部の背に指を当てているシド。
クライヴが観念した顔でそう言うと、シドは言われた通り、パソコンから手を放した。

 クライヴはモニターを開けると、ショートカットキーを使ってパソコンの電源を落とす。
夕飯を終えてから直ぐに仕事を始めたから、作業時間は悠に三時間は越えていた。
固まった肩やら首やらを伸ばして解しながら、クライヴは久しぶりにソファから立ち上がる。

 風呂場へ向かうクライヴを確認してから、シドは寝室へ入った。
其処は一つ大きなベッドが真ん中に鎮座し、枕が二つ並んでいる。
大の男二人が使っても縮こまる必要もないキングサイズのそれは、運び込んだ時にはクライヴが随分と顔を赤らめていたが、“パートナー”となった今ではこれ位が妥当だろうとシドは思っている。

 そのベッドに上って、サイドチェストの灯りだけを頼りに、本を開く。
風呂の後はこうして一時の読書を楽しむのが常だった。
以前はこれに加えて煙草を吹かす事もあったのだが、一度うっかり火のついた灰を落とし、寝床に焦げ跡を作って以来、クライヴから寝室での煙草は禁止にされてしまった。
安全面を考えれば当然であるし、一度やらかした訳だから、大人しく諦めている。

 だが、シドは知っている。
そんな出来事があるまで、シドの寝床の煙草を咎めなかったクライヴが、案外とあの煙の匂いを嫌ってはいないことを。
そうと本人から聞いた事がある訳ではないが、触れ合う時に鼻面を寄せ、すん、と鳴らす仕草を見せてくれる事が多いから、そう言う事なのだと判った。

 本を読み進めながら、そろそろかと思った頃に、寝室のドアが開いた。
まだ水分の残る髪をタオルで拭きながら、白いシャツと黒のズボンと言うラフな格好になったクライヴが入って来る。


「あんた、またズボンのポケットの確認しないで洗濯機に入れただろう。鍵が入ったままだった」
「おう。其処置いといてくれ」


 ちゃり、と小さな金属音が、サイドチェストに置かれる。
見遣れば確かに、それはこの家の鍵で、シドがいつもズボンのポケットに入れて持ち歩ているものだ。
洗濯機が壊れるだろ、と叱るクライヴであったが、もう半ばいつもの事にもなっていて、然程怒っている風もない。

 クライヴはベッドの端に腰を下ろし、わしわしと髪を拭いた。
ふう、とタオルを肩に落とした時には、黒髪はしっとりと落ち着いている。
そのままばたりとベッドに背中を倒し、一日の疲れを押し出すように、クライヴは大きく息を吐いた。


「はあ……うーん、あともう少し……」
「まだ日はある。あんまり今から詰め込むな。予定が決まってない所だってあるんだからよ」
「それは、そうだが」


 どうにも落ち着かない様子で寝返りを打つクライヴに、気の抜き方を知らん奴だとシドは片眉を顰める。
が、こんな事は日常茶飯事だ。
事が決まるまで眠れない、等と言っていた頃に比べれば、言われてからでも仕事を中断するようになっただけマシだろう。

 そんなクライヴの顔を見て、シドは読んでいた本を閉じた。
チェストにそれを置き、空になった両手をクライヴに見せるように、腕を広げてやる。


「ほら、来い」


 そう言うと、ぱち、とクライヴの瞼が一度瞬きする。
それからシドの言葉の意味を読み取ると、横倒しにしていた体をのそりと起き上がらせた。
這うようにベッドの端から近付いて来る姿に、大型犬が懐いて来るのを思い浮かべながら、シドは腕の中に納まった男の背を抱き寄せてやる。
クライヴはややぎこちなく肩を縮こまらせたものの、大人しくその力に沿うようにして、シドの体に身を預けた。

 拾った頃には随分と傷んでいた黒髪は、同居生活をしている内に、柔らかい毛並になった。
その後頭部をぽんぽんと子供をあやすように撫でてやると、


「おい……」
「ガキじゃないってんだろう」
「分かっているなら」
「だが、俺から見りゃあガキなんでな」


 そう言う年齢差があるのだと言ってやると、クライヴは拗ねたように唇を尖らせる。
しかし、不満そうなその顔も、無精髭を生やした顎の下を指先でくすぐってやれば、眉根を寄せつつも唇が緩むのが分かった。
こうやって良くも悪くも扱い易いから、シドにとってはクライヴは若者を通り越して子供染みて見えるのだ。

 シドはクライヴの顎を指先で捉え、上向かせてやる。
目の前でゆらゆらと揺蕩うようにさざめく蒼は、出逢った頃よりも生気を持ち、今は存外と幼く笑う事もある。
それがぼんやりと自分を映しているのを見つめながら、唇を重ねてやった。
シドのかさついたそれに比べると、クライヴの唇はまだ幾らか柔らかい。
下唇を吸えば、ぴくりとクライヴの肩が震えて、そろりと彼の腕がシドの背中へと回った。

 クライヴの下唇を、舌で舐めてやる。
噤んだ唇の隙間から小さく吐息が漏れた後、クライヴはその守りを明け渡した。
そろりと差し出された舌を絡め取り、丹念に唾液を交換しながら、口付けの深度を深めていく。


「ん……ふ、ん……っ」


 息苦しそうな声が、クライヴの喉の奥から零れていた。
こうして向き合う関係になってから、それなりの時間が経つのに、未だにクライヴはキスに慣れない。
しかし、どうにも初心なその反応が、シドも嫌いではなかった。


「む、う……んっ……!」


 舌先を擽るように愛撫してやると、クライヴの背にぞくぞくとした感覚が走る。
逃げを打って引っ込んで行く舌を追い駆けてやれば、一層口付けは深くなり、シドは舌の根元を絡め取った。


「ん、ぁ……!っふ、あ、むぅ……っ!」


 反射的に体ごと後ろへ退こうとするクライヴを、シドは腰に回した腕で抱き寄せながら追い詰める。
シドがベッドヘッドに預けていた背も離れ、逃げるクライヴに覆い被さる形で、ベッドに彼を押し付けた。
逃げ場がなくなれば最早貪られるしかなく、クライヴはもどかしそうに身を捩りながら、シドの口付けを受け続ける。

 ちゅくちゅくと唾液の交じり合う音が、クライヴの鼓膜を犯していた。
変な気分になる、といつであったか言っていたクライヴは、今日も同じ感覚に包まれて、蒼の瞳がぼんやりと宙を彷徨う。
熱を滲ませるその眼をじっと見つめながら、シドはゆっくりと彼の唇を解放した。


「…っは……ぁ……」


 熱の吐息が漏れて、クライヴはようやく足りなくなった酸素を補う。
すう、と息を吸い込んで、彼の胸が大きく持ち上がった後、吐くに連れてゆっくりと沈んだ。

 クライヴの呼吸が整うのを、シドは覆い被さったままで待った。
目を閉じて一つ意識した深呼吸をした後、瞼を開けたクライヴの視線は、ベッド横のサイドチェストを見遣る。
其処には灯りを着けたままのシンプルなシェードランプがあった。


「……シド」
「消したら勿体ないだろう」


 電気を消してくれ、と言いたいのは読み取ったが、シドは聞かない。
この明かりを消してしまったら、恋人の蕩けた顔がよく見えなくなるではないか。
それを言ってやった時、見て面白いものじゃないだろうと言われたが、シドは譲らなかった。
天井の煌々とした灯りを消しているだけでも、彼の頼みの半分は叶えているつもりだ。
クライヴが自分をどう評価しているかに関係なく、赤らんだ顔で縋り名を呼ぶ彼の表情と言うものを、シドは痛く気に入っているのだから。

 シャツの裾から手を入れて、上へとゆっくりとずらし上げてやれば、しっかりと肉のついた上肢が露わになって行く。
元々それなりに体躯が良かったのが、スポーツジムに行くようになってから、一段と均整が取れて来た。
皮膚一枚の向こうに、弾力のある筋肉があるのを感じながら、シドはその手を胸元まで持って行く。
柔く指先に少しの力を入れながら、逞しい胸を揉んでやると、クライヴの顔が分かり易く赤らんだ。


「ふ……ん……」


 初めて抱いた時には、男の胸なんて触って何が面白いんだ、と彼は言った。
シドもそれは思っていたが、触れ合うことそのものに不慣れなのか、クライヴは何処を触っても分かり易い反応を見せてくれる。
揉みしだくように左右の胸を愛撫してやると、段々と彼の呼吸が上がって来て、肌にはじっとりとした汗が滲んでいた。


「シド……っん……」


 クライヴの足元がシーツの波を滑る。
もどかしそうに身を捩る男の胸に顔を近付け、ぷくりと膨らんだ頂きを食んでやった。
ビクッ、とクライヴの肩が跳ね、息を飲むのが分かる。
乳輪の形をなぞるように舌を這わせ、そのまま乳首の根元から先端まで、じっくりと舐っていくと、


「あ……っは、ぅ……っ!」


 クライヴは天井を仰ぎながら、堪え切れない様子で短い声を上げている。
シェードランプの光で、クライヴの濡れた胸元の艶めきが照らされ、色付きも伴って淫らな蕾が自己主張をしているように見えた。
それを指で摘まんでやると、ビクッとクライヴの体が竦む。


「ん、く……っふ……」
「んぁ、」
「あ……っ!や、そっち、まで……っ」


 左の乳首を指で、右の乳首を舌で愛でてやれば、クライヴはゆるゆると頭を振って、厭を訴えた。
しかし、その気になれば大の男を蹴り上げる事も出来る力があるのに、クライヴはそれをしない。
元より暴力性のある性格でもないし、何より相手がシドであれば、クライヴは大抵の事は恥ずかしがりながらも本気の拒絶をした事はなかった。

 丹念に胸を可愛がってやれば、素直な体は従順に反応を示していく。
体を重ね合う内に、クライヴの体は官能を得る事をすくすくと吸収して行き、今ではシドが少し煽ってやるだけでも反応を示す。
乳首が歯を当てられる程に固くなる頃には、彼の下腹部も窮屈になっていた。


「は……は、ぁ……シド……っ」


 物憂げな瞳が、胸を苛めるシドをじっと見つめている。
シドの舌が右の乳首を食み、舌を絡めながらその蕾を啜ると、クライヴは「っん……!」と小さく息を詰まらせて眉根を寄せる。
は、は、と短い呼気が繰り返され、より敏感になった乳首を、シドは指の爪先でカリカリと掻いてやる。


「っあ、あ……っ!や、あ……っ!」


 クライヴはベッドシーツを握り締めながら、もどかしさに身を捩る。


「ふ、く……んっ、んん……っ!」


 クライヴは顔を真っ赤にしながら、口を噤んで漏れる声を堪えようとしている。
理性と羞恥心の強い男にしてみれば、はしたない声を上げる自分が、堪らなく卑しく思えるのだろう。
だが、シドにとってみれば、そうやって羞恥に駆られながらも、湧き上がる衝動に逆らい切れないその様子が、一層興奮を煽られる。

 クライヴのシャツをすっかり脱がせ、次はボトムに手をかける。
ゴムのウエストに指を引っ掛けて下へとずらせば、グレーのボクサーパンツが内側からの圧で膨らんでいるのが露わになった。


「腰、ちょっと浮かせな」
「う……」


 シドの指示に、クライヴは眉根を寄せて顔を赤らめるが、大人しく従った。
膝を立て、腹に少し力を入れて腰をベッドから浮かせ、体とシーツの隙間が出来ている隙に、ズボンと下着を引き下ろす。
体躯に見合って十分なサイズのある雄が頭を持ち上げ、その先端からじっとりと汗を滲ませていた。

 足首に絡まる布地を、クライヴも自分で蹴り捨てる。
すっかり生まれたままの姿になった後、クライヴの手がシドの胸にひたりと当てられた。


「あんたも、脱いでくれ。俺ばっかりは……ずるい」


 恥ずかしい思いをしているのは自分だけなのかと、強請るようにも、怒るようにも見える顔で、クライヴは言った。
シドはくつりと口端を上げて、夜着のシャツを脱ぎ捨てる。
ズボンも下着も脱いで、同じように裸になると、年齢の割には若々しくさえ感じられる、引き締まった体躯を曝け出した。


「これで良いか?」
「……ああ」


 同じ所に来てくれた、とでも思うのかも知れない。
クライヴは、裸身になったシドを見て、安心したように目尻を緩ませた。

 シドがクライヴの膝裏を押すと、彼は素直に足を開いた。
相変わらず彼の顔は恥ずかしそうに赤くなっているが、此処から先の行為を、彼自身も望んでいる。
少なからず緊張が滲む体を宥めるように、クライヴは一つ、ゆっくりと息を吐いた。

 シドの指先が、クライヴの臀部に触れる。
脂肪の厚みの直ぐ向こうに、しっかりとした筋肉の感触があった。
中央の谷間を辿って後孔に触れると、其処は入り口が微かに開いていて、咥えるものを欲しがるようにヒクついている。
それを見たシドは、にやりと笑ってクライヴの顔を覗き込んだ。


「お前、弄って来たな?」
「……その方が、早いだろ。あんたの手間も、少しは省けるし」
「別に構わないって言ってるだろう。一からお前の準備してやるのも、案外楽しいものなんだ」


 楽しみを奪ってくれるなと囁きつつ、ばつの悪い表情を浮かべるクライヴに、その眦にキスをしてあやす。
一つ楽しみが減ったと言った所で、実際はクライヴの其処は何度抱いても引き締まって狭いものだから、結局は丹念な前準備が必要になる。
それでも、少しでもシドの手間は減らしたいと、風呂場で準備をする様子と言うのも、いじらしさに思えて悪くなかった。

 入り口の土手を、宛がった指の腹ですりすりと摩ってやると、クライヴが小さく吐息を零す。
ヒクつく口が、待ち遠しそうに蠢いているのを指先の感触に知りながら、焦らすように延々と指を往復させてやった。


「う……、シド……っん……!」


 自分で準備までしたのに、表面ばかりを撫でるシドに、クライヴが恨めし気に名前を呼んだ。
身を捩る度にベッドのスプリングがきしきしと音を立てている。


「ふっ……ん、んっ……!しつ、こい……んんっ……!」
「そりゃ悪かった」


 抗議の声に、シドはくつりと笑いながら、指先をつぷりと菊穴に挿入させた。
不意打ちだったのだろう、「っあ……!」と微かに高い声が響く。

 第一関節までは、すんなりと入って行く。
其処から先も、少し押し開いてやれば、中の道は素直に迎え入れるように開いてくれた。
が、其処まで指を挿入して行くと、今度はきゅうぅっと内壁が窄まって、侵入者に絡み付くように締め付けて来る。


「う、ん……、っは…ぁ……っ」


 迎え入れ初めは、必ず異物感で一度体が強張ってしまう。
だから其処までは耐える心積もりで受け止めて、それからクライヴは口を開いて、意識して肺に詰まった空気を吐き出した。

 呼吸する事を意識して、体の力を抜こうと奮闘しているクライヴ。
シドはそんなクライヴの首筋に顔を寄せ、柔く唇を押し付けた。
あ、と小さく漏れる声を聴きながら、ちゅうと吸い付いてやれば、小さな鬱血の後が残る。


「シド……痕、は……っん……!」
「明日は休みだ。問題ないだろ」
「…其処じゃ、見える、だろう……っ」


 服を着ても隠せる場所じゃない、とクライヴは言うが、


「外に出なけりゃ、誰も見んさ」
「ん……あぁ……っ!」


 痕をつけたばかりの首筋を、シドはゆっくりと舐めた。
艶めかしくて生暖かいものが、ゆったりと呼吸の通り道を這って行くのを感じて、クライヴが悩まし気に声を漏らす。
ぞくぞくとした感覚が首の後ろを駆け抜けると同時に、指を咥え込んだ秘孔が、きゅう……と切なく締め付けを示した。

 絡み付くように縋る肉壁が、小刻みに戦慄いている。
それを宥めるように、煽るように、シドはゆっくりと指を回して、指の腹で壁をなぞってやった。


「ん、あ……あ、っう……!」


 中を掻き回される感覚に、クライヴの腰がぶるりと震えた。
官能を感じていることを示す反応に、シドの口端が笑みに歪む。

 二本目の指を挿入させれば、びくりとクライヴの体が跳ねる。
クライヴは眉根を寄せながらも、緩んだ唇からは甘い声が混じった吐息が零れ、足の間では彼の中心部がはっきりと起立していた。
じわじわと雫を溢れさせている其処を、徐に握ってやれば、はっとした顔が此方を見る。


「シド、待っ……!」


 刺激へ心の準備が出来ていなかったのだろう、止める声があったが、シドは構わずに握った一物を扱いてやる。


「っあ、シド、あっ……!待て、んっ、うぅ……っ!」
「もう少し我慢できるか。指、奥まで入れるぞ」
「ん、んん……っ!あ、奥に、う……来て、くぅ……っ!」


 前部からの刺激に意識を奪われた隙に、肛穴に埋めた指を進めてやる。
くぷくぷと侵入して行く指の感触を、クライヴは己の胎内で感じながら、同時に自身の性器を扱かれる快感で、頭の中が白熱して行く。

 シドの手の中で、クライヴの雄がむくむくと膨らんでいく。
胸への刺激を貰っている時点で、既に大きくなっていた其処は、刺激を与え続ければ、程無く先走りを零し始めていた。
切羽詰まる感覚が増すに連れ、クライヴの意識は其方に囚われるようになって行き、秘孔の締め付けの感覚が緩んで行く。


「ん、ん……っは、……あ、シド……っ!も、う……きつ、い……っ」


 痛い程に膨らんだ雄は、もう今すぐにでも熱を吐き出したがっている。
もう少し、とそれに対して言ってやれば、目尻に雫を浮かせた瞳が恨めし気に此方を見た。

 根元を緩く締め付けるように握りながら、後ろの奥をくちくちと音を立てて掻き回す。
ビクッ、ビクッ、とクライヴの腰が何度も跳ねて、指を咥え込んだ入り口が狭くなった。
半面、指先でコツコツと奥の天井部分を小突いてやれば、其処は更に中へと欲しがるように柔らかくうねる。


「あ、あ……っ!シド、其処は……っ!」
「一回イっとくか」
「は、はっ……!あ、あぁ……っ!」


 シドの指では、深くに在るクライヴの最も良い所には届かない。
その手前にある壁を、二本の指を使ってぐっと持ち上げるように押してやると、クライヴはびくりと腰を浮かせて背筋を仰け反らせた。

更に手の中でとくとくと脈打つ雄の竿を、少し強く上下に擦って刺激を与えてやれば、


「っあ、あ……!!」


 息を詰まらせたまま、大きく開いた口の喉から、拙い母音だけが押し出されるように零れる。
クライヴの秘孔全体がきゅううぅっと強く締め付けを増し、秘部に咥え込んだ指を全身で包み込みながら、彼は絶頂を迎えた。

 びゅるるっ、と噴水のように勢い良く吐き出された精が、クライヴの腹とシドの手に降り注ぐ。
濃く粘ついた液体は、淫靡な匂いを振り撒いて、シドの熱を煽った。

 果てを迎えたクライヴの体は、そのまましばらく、余韻の熱に浸る。
ヒクッ、ヒクッ、と強張った太腿を震わせて、咥え込んだままの指が不規則なリズムで締め付けられていた。
仰け反ってシーツから浮いていた背中が、とさりとベッドに落ちて、上肢がすっかり弛緩する。
閉じれなくなった口から、はーっ、はーっ、と乱れた呼吸が繰り返されて、時折、ああ、と切ない声が漏れていた。

 官能の名残に支配され、身動ぎも出来ないクライヴの中から、シドはゆっくりと指を引き抜く。
嫌がるように吸い付いて引き留めて来る媚肉は、まだ、もっと、と我儘に続きを強請っていた。

 クライヴの呼吸が落ち着いてきた頃、彼の体はすっかり熱に苛まれていた。
期待と悦の籠った眼差しが、じっとシドを映す。
クライヴの濡れた眦は、どうにも見るもの庇護欲をそそるものだが、反面、自分らしくもない嗜虐心を刺激されるのもシドは自覚していた。
苛めるのが好きな訳ではない筈なのに、少し焦らしてやりたくなるのは何故だろう。
そんな事を思いながら、シドはクライヴの唇に自分のそれを押し付ける。


「ん、ん……ふ……」


 隙間から舌を侵入させれば、素直にクライヴが絡んで来る。
クライヴの耳の奥で、くちゅ、ちゅく、と水音が鳴っていた。
一度目に聞いた時には羞恥心を煽るものだったのに、二度目の今は、此処から先の期待に心音が高鳴ってしまう。

 舌を誘い出しながら唇を離すと、二人の間に銀糸が繋がった。
ぷつりと切れたそれが、クライヴの唇を濡らし、つぅと零れて顎を伝う。


「はぁ……シド……舐め、たい……」
「ああ」


 ねだるクライヴに、シドは頷いた。
馬乗りにしていた体を退かして、ベッドに腰を落ち着かせると、クライヴがのろのろと起き上がる。
胡坐を掻いたシドの股間に顔を埋め、既に起立していた肉棒を柔く握り、上下に扱き始めた。


「ん、あ……」


 形の良い唇が開いて、シドの雄をぱっくりと招き入れる。
唇を窄め、頭を前後に動かし、唇の摩擦でシドを愛撫しているクライヴを、シドは欲の映る瞳で見下ろしていた。

 キスをしている時にはたどたどしさが抜けないのに、口淫奉仕をする時のクライヴは大胆だ。
摩擦の刺激を与え続けながら、舌も動かして裏筋をちろちろと擽って来る。
神経の集まっている所を集中的に刺激しながら、クライヴはシドの陰嚢を揉み転がしていた。
重みのある玉が、手の中でくにゅくにゅと形を歪めながら揉まれて、シドの腰にじんと重い感覚が滲む。


「んっ、ん……っ!ぷ、あむ……っ」
「クライヴ……」
「は、ん……んむ、んっ……!ふ、うん……っ」


 名前を呼んで、癖毛の黒髪をくしゃりと撫でると、蒼の瞳がちらと見上げて来た。
自分の欲望を咥え込んで、上目遣いに見て来る男は、その仕種が存外を男を煽っている事を知るまい。
口の中でむくりと分かり易く膨らみを増した感覚だけを知って、眦が微かに嬉しそうに笑む。

 もう口の中には含んでいられない程に欲望が膨らんで、クライヴは名残を惜しみながら、ゆっくりと雄を解放した。
唾液で濡れた芯がてらてらといやらしく光っている。
クライヴはそれにもう一度顔を近付けると、長い舌を使って、雄の根元から先端までをべろぉ……と舐め上げた。


「っく……」
「んぁ……ん、れろ……っ、ちゅぅ……っ」


 三度、竿の裏側を舌で往復した後、クライヴは先端に吸い付いた。
啜るようにちゅうちゅうと鈴口を吸われ、シドは切なさに息を詰めて、迫って来る射精感を堪える。
此処で出してしまうのは、その光景を見る分には悪くないが、しかしやはり勿体無い。
どうせなら、最も熱くて心地の良い場所に注ぎ込んでやる方が良い。

 雄をしゃぶるクライヴの腰が、ゆらゆらと揺れている。
其処に手を伸ばして、尾てい骨の所を指で軽く押してやると、「んぅ……っ!」とクライヴの体が跳ねた。


「っは……シド……もう……」


 我慢が出来ない、とクライヴが蕩けた顔で見上げて来る。
ああ、とシドが頷いてやると、クライヴは体を起こして、もう一度自分が仰向けになった。

 シドはクライヴの膝裏を掬い上げた。
クライヴはベッドに背を深く沈めて、腰を持ち上げられ、脚の爪先を天に向けられる。
何もかもを曝け出す格好に、クライヴの顔に分かり易い朱色が上るのが、どうにも可愛く見えるのだから、末期だなとシドは小さく笑った。

 甘い色になってヒクついている肛口に雄を宛がうと、それだけでふるりとクライヴの体が震える。
早く、と物欲しそうに吸い付いて来る入り口に、シドはぴたりと先端を押し付け、ゆっくりと腰を勧めて行った。
ぐぷ、ぬぷぷ……と狭い入口を拡げながら入って行く一物に、クライヴはベッドシーツを握り締めながら悦びの声を上げる。


「あ、あぁ……っ!シド、ぉ……んっ、大き、い……っ!」
「は……お前さんの、お陰でな……!」


 指とは比べものにならない質量で秘孔を一杯に拡げられ、クライヴは甘い悲鳴を上げながら、シドをきゅうきゅうと締め付ける。
指で解し、クライヴの唾液でシドも十分に濡れているが、それでもやはり中は狭い。
それはクライヴが期待と共に一等締め付けて来るからで、幾らも進まない内に媚肉が吸い付き絡んで来る所為だ。
それはシドにとっても心地良くはあるのだが、


「クライヴ、ちょっと緩められるか」
「う、う……っは、はぁ……っ、はふ……っ」
「そうだ、良い子だな」


 シドの言葉に、クライヴは意識して息を吐き出し、腹に詰まっている感覚を追い出そうと試みる。
言われた通りに従おうと懸命な青年に、素直で良い、とシドは笑みを浮かべて、鎖骨にキスを与えてやる。

 は、は、と短い呼気を繰り返すクライヴ。
媚肉は相変わらず絡み付いて来るが、強い締め付けは緩み、シドが動く程度の余裕が出来た。
自身を半分まで埋めた所で、シドはゆっくりと腰を前後に動かし、クライヴに自分が馴染むまで中の空間を広げてやる。


「あ、ふ……あっ、うん……っ!シド、んん……っ」
「ふ…ふぅ……っ、今日も、熱いな……っ」
「は、はぁ、あ……っ!あ、もっと、……く、うぅん……っ!」


 深度としては半分───クライヴにとってはまだ物足りない刺激だ。
早く早くと急かすように、クライヴは仕切りに腰を捩りながら、脚をシドの腰に絡めて来る。
熱に溺れたクライヴは何処までも貪欲で、深い場所での繋がりを求めて已まなかった。

 雄に絡み付いて来る肉壁が、奥から濡れたようにじんわりと蜜を分泌させている。
じわじわと降りて来たそれに、シドは自身を擦り付けるように彼の中を耕した。
ぐちゅ、ぐちゅ、と言う音が聞こえ始めると、律動による摩擦の感触もスムーズになって行き、絡み付く肉の間で蜜が緩衝材の役割を担う。


「はっ、あっ、あっ……!」
「もう少し、奥行くぞ……!」
「う、あ、んんん……!」


 シドの腰がクライヴの股間に密着すると、ぐぅ、と雄が更に深い場所を押し上げた。
腹の中で重さが乗る感覚があって、クライヴはぎゅうと唇を噤んで、その感触に耐える。
この時は堪えないと、直ぐに体が頂点へと持って行かれてしまうから、クライヴの体はどうしても力みを持ってしまい、秘孔も強く閉じてシドを締め付けてくれた。


「っく……!」
「う、んくぅう……っ!」


 揃って唇を噛んで、切迫感に耐えて数拍。
シドはクライヴがはぁっと息を吐き出したのを確認してから、再び律動を始めた。
一定のリズムで奥を突き上げられる刺激に、クライヴは喉を反らして喘ぐ。


「は、っあ、シド……あっ、当たる、あぁ……っ!」


 シドの固く張り詰めた雄が、クライヴの柔い感触の場所をコツ、コツ、とノックしている。
その感覚に襲われる度に、クライヴは腰が浮いてしまう程に官能を感じていた。
シドによって開拓されたその場所は、少し小突かれてしまうだけで、いつもクライヴの意識を真っ白に塗り潰していく。
そうやって蕩けて行くクライヴの顔を、シドはいつも飽きずに見詰めていた。


「あ、んぁ、あ……っ!」
「良い顔してるぜ、クライヴ」
「ふ、ふぅ……見る、な……あっ、あぁっ……!」
「隠すなよ、可愛い面してるんだから」
「ん、んん……っふ、あっ……!」


 揶揄うようなシドの言葉に、クライヴは顔を真っ赤にして、掌でそれを隠そうとする。
しかし両の手首をシドに捕まれ、ベッドシーツへと縫い留められて叶わなかった。
だから灯りは消してくれといつも頼んでいるのに、今日はサイドチェストの灯りの所為で叶わなかった。
せめてもの抵抗に顔を背けてやるクライヴだが、乱れた黒髪を額や頬に張り付かせ、唾液を零す開きっぱなしの唇や、涙の滲んだ目元は、見下ろす男からは幾らも隠せてはいなかった。

 そんな初心さの抜けない青年の仕草が、またシドを煽る。
胎内で質量を増したシドの感触に気付いて、クライヴが小さく息を飲んだ。
どくんどくんと脈打つのが伝わって、シドも限界が近いことが分かる。


「シ、シド……っん、あぁっ……!」
「クライヴ、しっかり受け止めてろよ」
「あ、あ……っ!あっ、あぁっ、あぁ……!」


 シドの腰の動きが激しさを増し、ベッドのスプリングがぎしぎしと煩い音を立てる。
それにも負けず劣らず、クライヴの声も上がって行き、部屋の中には彼のあられもない喘ぎ声と、蜜が掻き回される卑猥な音だけが響いていた。


「あ、あっ、んぁ……!シ、シド、奥……奥で、そこ……っ!弱い、から……っ!」
「ああ、よく知ってる……っ!」
「うぁ、んんっ!あっ、くぅ、ふぅんんっ!」


 弱いと分かっているからやっているのだと、シドはクライヴの弱点を強く突き上げる。
一際高い悲鳴が上がって、クライヴの雄からびゅくっと先走りが噴いた。

 もう幾らも自分の状態を抑えることも出来ないクライヴの首元に、シドは顔を近付けた。
先に咲かせていた鬱血の直ぐ横に、同じものを作ってやると、クライヴは喉を反らして啼く。
戦慄く喉仏に舌を当てながら、体の奥壺を強く上げてやれば、


「あっあぁ……!」


 切ない声が漏れて、クライヴの体が足の先まで強張った。
震える葦の指がシーツの波を突っ張って、立てた膝ががくがくと震えている。


「シ、ド……!シド、もう……っ俺……!」


 逞しい腕がシドの首に絡んで、限界を訴える。
もう無理、駄目だと懸命に頭を振るクライヴの顎を捕えて、口付けを交わす。


「ん、んぅ……、ふ、む、あ……」


 舌を絡めて誘い出し、啜ってやれば、きゅうぅぅっと秘穴がシドを締め付けた。
内肉さえもが限界だと言わんばかりにビクビクと戦慄き、小刻みに震えながらシドを全身で愛撫する。
その心地良い奉仕の中で、シドが強く腰を動かせば、


「んっ、んんっ!ふ、ぁ、あぁああ……!」


 唇を放した瞬間、クライヴの体は遂に我慢の限界を迎えて、一気に絶頂へと上り詰めた。
びゅるるるっ、と勢いよくぶちまけられた精が、汗だくになった二人の腹に降り注ぐ。
艶めかしいものが腹の間で滑るのを感じながら、シドがもう一つ、強く奥へと禊を打ち込み、


「ああああっ!」
「く……っ、出る……!」


 絶頂による官能が最高潮に達している所へ与えられた刺激で、クライヴが大きく体を撓らせた。
ビクビクと震える媚肉の奉仕を受けて、シドも歯を噛みながら、クライヴの胎内へと自身の欲望を注ぎ込む。


「あ、あ……!シド、あぁあ……熱、いぃ……っああ……!」


 自分の中にシドの熱が直接注ぎ込まれるのを感じて、クライヴは濡れた声を上げながら喜んだ。
最奥からたっぷりとシドで満たされていく感覚に、知らず唇が悦を浮かべる。

 長い射精が終わるまで、シドはクライヴの中にいた。
どぷどぷと注ぐうちにクライヴの中はすっかりシドの精で溢れてしまい、この歳で出す量かね、とシドは独り言ちる。
実際、クライヴと出逢ってこう言った関係になるまで、そろそろ枯れる頃かとも思っていた筈だった。
それがどうして、この青年を前にすると、忘れかけていた劣情をこうまで煽られるのか。
腹の中の熱に溺れ、うっとりとした表情で宙を見つめるクライヴを見下ろして、シドはまだ自分の中にそんな欲があった事に感心していた。

 ようやく興奮が落ち着いて、シドはまだ締め付けの已まないクライヴの中から、ゆっくりと雄を引き抜いた。
擦れる感触に媚肉がまた強請るように絡みいて来るのが性質が悪い。


「あ……あふ……、ん……っ」


 咥えるものをなくしたクライヴの菊穴から、こぷ、と白濁が泡になって溢れ出す。
肉の乗った尻の谷間を、粘着質な白濁液がゆっくりと零れて行くのを見ながら、シドは吐き出したばかりの熱がまた滾って来るのを感じていた。

 肉の赤色と、精の白と、コントラストで彩られた其処に指を宛がう。
溢れ出して来る精液を指先に搦めて、尻肉に塗り広げるように滑らせて行けば、クライヴの腰がヒクッヒクッと弾んだ。


「あ……っ、シ、ド……?」


 何してるんだ、と茫洋とした瞳がシドを見上げる。
その眦には、まだ収まり切らない若い熱が浮かび、唇は物欲しげに濡れた舌を覗かせている。

 蜜で濡れた指を、肉を咥え込んだ感覚が消えない穴に挿入してやると、簡単に根本まで飲み込んだ。
そのまま中を掻き回せば、精液と蜜が彼の中で混ざりながら、ぐちゃぐちゃといやらしい音を立てる。


「あっ、あっ、シド……っ!あ、待っ……今、は……あぁっ……!」


 今のクライヴには、指の悪戯でさえ堪えられない快感になる。
絶頂した時に迎えた官能の大波も、中に注がれた悦びも、まだ真新しく体が記憶しているのだ。
其処に間を置かずに刺激を与えられれば、熱に溺れる心地良さを覚えた躰は、あっという間に陥落する。


「あ、シド、シド……っ!ゆ、指、そんなに……っ、掻き回した、ら……あぁ……っ!」
「掃除してるだけだ。大人しくしてな」
「そ、そんな、こと……あっ、んんっ!言われ、たって……はっ、はぁ……っ!あぁ……!」


 閉じれない太腿をビクビクと弾ませながら、クライヴは中を掻き回される快感に喘ぐ。
二本目の指もまた簡単に奥まで入って行き、シドは中に注いだものを入口へと掻きだしてやるが、クライヴの体は与えられる刺激に喜んで、穴口を閉じて締め付けてしまう。

 クライヴ自身の分泌液と、シドの吐き出した熱と、掻き混ぜられた状態で溢れ出していく。
どろりと尻の谷間を伝い落ちて行くその感触に、クライヴはぞくぞくと背中を震わせた。
射精して萎えた筈の若い性が、また頭を持ち上げるまでに時間はかからず、シドが肛内で指を動かす度に、興奮の度合いが高まって行く。


「シ、シド……あ、あっ……!また、中が、疼い、て……っは、あぁ……!」


 ぐちゅぐちゅと絶えず淫水音を立てる陰部に、クライヴは仕切りに頭を振って訴えた。
持ち上がった性器の頭が、ピクピクと切なげに震えながら、汁を零して泣いている。
となれば、当然のように、クライヴの胎内も再び熱を灯し、柔らかくうねる肉壺が艶めかしく蠢いて、シドの指を締め付けていた。


「シド、シド……っ!もう、指、ばっかり……あ、あ、ぁ……っ!」


 クライヴは体幹の良い体を大きく捩じって、シドに続きを促した。
指は其処に吐き出したものを掻き出すだけと言うには、既に悪戯が過ぎている。
見下ろす男の口元に、笑みが滲んでいるのも見えて、分かって焦らされているとクライヴも感じ取っていた。

 そんなクライヴに、シドは益々指を大きく動かしながら、くつりと笑う。


「こちとら老体なんだ。そう何度も直ぐには出来ないんだよ」
「あっ、あっ、あぁあ……!は、ひぅ……っ!あ、そこ……っ、も、もっと……強く、うぅんっ」
「分かってるよ。ほら、此処だろ?」
「んぁああっ……!は、はっ、あぁ……!んっ、は、うぁ、あぁあ……っ!だめ、だ、やっぱり、足りな……っ!」
「ったく、じゃあお前が頑張ってくれるな?」
「は、はぁ、ああっ、ああっ……!」


 切なさに耐え切れなくなって、クライヴはシドの囁きにこくこくと頷いた。
良い子だ、なんて耳元で囁かれて、秘孔がきゅうと嬉しそうにシドの指を締め付ける。

 指が胎内から出て行って、クライヴは物足りなさに身を捩る。
そんなクライヴを、シドは抱えるように助け起こすと、自身は仰向けに転がった。
はあ、はあ、とクライヴの荒い呼吸が繰り返され、上下する彼の腹を、シドの濡れた手が滑る。

 熱に溺れた表情で、クライヴはシドの腰を跨いだ。
意外としっかりと固く割れたシドの腹に両手を置いて、濡れそぼった蜜壺をシドの起立した雄に宛がう。
年齢による衰えを隙さえあれば言う癖に、シドの欲望はしっかりと固く張り詰めていて、クライヴは文字通り乗せられたような気がしたが、文句を言う余裕もない。

 クライヴがゆっくりと腰を沈ませれば、固い熱がずぷずぷと自分の中に入って行くのが分かって、


「んぁ、あ……あ、あぁあ……っ!」


 言葉も忘れて、心地良さに蕩けたクライヴの声だけが響いていた。



 まぐわいあった後の朝は、中々に体が重い。
シドはよくそう思うので、やはり歳は歳だと実感してしまう。
その癖、夜に昂っている時は元気なものだから、現金なものだ。

 一方で、年齢は勿論のこと、元々体力がある方なのだろう、クライヴは朝からてきぱきとしていた。

 ブラック会社に勤めていた頃から、彼は短時間睡眠でなんとか過ごしていたのだ。
それが健康的であったかは別にして、起きてから脳が覚醒と活動を始めるまでに時間がかからない。
この為、同居生活を始めて、真っ当な生活リズムを取り戻した頃から、朝食はクライヴが作るようになった。

 シドが起きた頃には、既にベッドを抜け出して、キッチンに立っていたクライヴ。
朝食のメニューを食卓テーブルへと並べると、いつまでも気怠さに任せてベッドで安穏としているパートナーを呼びに行く。


「シド、飯だ。着替えてから来いよ」
「へいへい」


 ふあ、と何度目かの欠伸を漏らしながら、シドはクライヴの言葉に返事をした。

 着換えを済ませて寝室を出れば、トーストの香ばしい匂いが漂っている。
キッチンで調理器具の水洗いを済ませたクライヴが、痛む腰を摩って宥めながら椅子に座った。
それと向かい合う場所にシドも腰を下ろして、のんびりとした休日の朝が始まったのだった。




初出 2023/08/16(Pixiv)

何も難しい事を考えずにシドクラをいちゃいちゃさせたい!!と言う気持ち。
原作ではシドは途中退場だし、それも死別なので、どうやっても永久に幸せであれなんて言えない……でもラブラブ見たい……現パロするわ。と言う分かり易い動機。

28歳のクライヴってブラック企業に捕まってそうだなって言うイメージがあります。
若しくは、会社自体はそんなに黒くはないけど、ただただ仕事が激務で、ちゃんと食事も睡眠も摂る暇がない生活をしているとか。
根が真面目な男なので、責任の軽い思いは関係なく、持った仕事はきっちり済ませないと落ち着かないとか、自分の仕事を終わらせてからも誰かの手伝いを自分から言い出しそう。
そんな無自覚に仕事人間してるクライヴに、力抜けよって言ってくれるシドとか好きです。なんかそんな組み合わせばかり好きな気がする。