花見る夢を


 あれから眠ることは出来たものの、クライヴの体は相変わらず、男に戻る様子もなければ、燻る熱も収まりきらなかった。
寧ろ、慣れた刺激を貰えないまま、半ば無理やりに終わりまで持って行ったからか、不満足な感覚さえ残っている。

 この体になってから、あまり外に行くこともなかったから、体力が余っているのかも知れない。
魔物退治なり、食料調達なり、ベアラーの保護に向かえば追手とかち合う事もあった訳で、そんな日々に比べれば、隠れ家の中でのんびりと過ごす日々が続いていた。
先日はロストウィングまで往復したが、それも久しぶりのことであったのだ。
それも役割は荷馬車の護衛を兼ねた付き添いのようなもので、幸いにも野盗や魔物に襲われる事もなかったから、それは良いことなのだが、エネルギーの向け所はなかった訳だ。

 それならばと、クライヴはこの体の状態に慣れる為も含めて、積極的に動くように努めてみた。
変貌した体にいつ何の変調があるのか判らないからと、これまでは慎重を務めて来たが、未だに原因の解明も出来ない、情報も出て来ないと言う有様だから、諦めも混じって開き直って行動する事にしたのだ。
隠れ家で自分の仕事、役割としている事くらいは、果たせるように努めなくては、と。

 男の筋力とは違う腕で大剣を持つのも、大分慣れて来た。
ジルやドリス、時にはシドにも付き合って貰って、今の体で出来る戦い方を模索する。
幸いと言うべきか、フェニックスの祝福や、ガルーダの力による魔法は、この状態でも問題なく使えている。
その特訓も兼ねながら修練を続ける内に、風魔法の扱いにも慣れて、野にいる大型の魔物が相手でも立ち回れる程に仕上がった。

 それはクライヴにとっても良いことだったが、しかし。

 夜半、いつものように寝床に入って、もうどれ程の時間が経ったか。
じっとしていると、より明確に自覚してしまう感覚が今日も今日とて湧き上がって来て、クライヴは暗い天井を見つめながら眉根を寄せる。


(……どうして治まらないんだ。いや、原因と言うか、理由はなんとなく、分かってはいるが……)


 日毎に重なって行く熱の燻り。
あれからも何度か自分で治めようと試みてはみたが、どれも最後は疲労で意識を手放すには至れるものの、すっきりとした心地とは行かなかった。
中途半端な熱の発散は、残りの熱を翌日まで持ち越した上に、蓄積されていく。
何度も指で弄った尻穴は、蕩けて柔らかくなっているのに、決定的なものを与えられない所為で、より酷い疼きを発していた。

 ───この疼きの止め方と言うものを、クライヴは知っている。
それに必要なことも、それに応えてくれる相手も、幸いにも揃っているのだが、今、この状態で、それを求めても良いのだろうか。


(……でも、このままだと眠れない)


 熱を慰める行為を繰り返す内に、疼きが芯に溜まって行って、昇華しきれなかったそれが翌日の疼きに拍車をかける。
それを延々と繰り返しているものだから、いよいよ体は限界を訴えていた。
眠りも浅くなっているのだろう、寝起きの体の重怠さもある。

 仕方ない、と腹を括る気持ちで、クライヴは起き上がった。
取り得ず一旦頼んでみて、受け止めて貰えるなら幸い、駄目と言われれば諦めて、別の方法で眠る手段を探してみよう。

 居住区を出て、大広間の階段を上がっていく。
通り過ぎた医務室はもう灯りを消しているようで、タルヤも今夜は此処にはいないらしい。
此処しばらくは傷病人も出なかったし、二階の人気はすっかり消えているようで、クライヴは少し安堵した。

 奥の部屋の扉を軽くノックする。
時間を思えば眠っていても無理はないと思ったのだが、「開いてるぞ」と声が返って来た。
軋んだ音とともにドアを開けると、デスクに蝋燭一つを燈して、其処でワインを傾けているシドがいた。

 シドは来訪者を見て、


「お前か。何かあったか?」
「……いや。そう言う事はないんだが」


 問いに応えるクライヴが、兵装を解いた状態であることも確認して、「そうみたいだな」とシドは言った。
万が一、何か緊迫した異変があるのなら、夜着のままでは此処には来るまい。

 クライヴは静かにドアを閉めると、デスクの前まで近付いた。
デスクの上には、本に手紙にと様々なものが散らばっているが、インクの蓋は閉められているし、何か作業をしていた訳でもないらしい。
寝酒に一杯、嗜んでいたと言った所だろうか。

 シドの手が空いているのなら、クライヴにとっては幸いだ。


「その────しばらく、セックスをしていないと思って」


 この男を相手に物事を遠回しに言った所で意味はないと、クライヴは直球に言った。
シドはゴブレットを傾けていた手を止めて、眉根を寄せて此方を見る。


「そりゃあな。お前もそんな状態だし」
「……ああ。俺も、それは思ってはいるんだが、……どうにも此処しばらく、落ち着かないと言うか、寝付けなくて。自分でどうにかしようとはしてみたんだが、体がこんな状態だからか、どうも上手く出来ないんだ。それで……」
「俺に頼みたいって?」


 シドの言葉に、クライヴは頷いた。
ヘイゼルカラーの瞳が胡乱に細められ、年輪を重ねた顔に訝し気な表情が浮かぶ。


「まあ、確かにご無沙汰だが、何がお前の体に影響が出るか分からないことを考えるとな……」
「それは俺も分かっているつもりだ。でも、このままだと……ずっと体が疼いている気がするし、何をするにも集中できなくて。体が変な風に変わっているから、自分でも何をどうすれば良いか。でも、あんただったら、女の体の扱いも、少しは慣れているかも知れないと思って」


 クライヴとセックスをするようになるまでは、街で娼婦を買うこともあったシドだ。
今では折々にクライヴと躰を重ねるので、その必要も最低限で十分ではあるが、ともあれ、年相応に経験を持っているのも確か。
クライヴにとっては、頼み事の内容もあって、他に頼る宛てもない。

 シドはと言うと、頼られているのを喜んで良いのかねえ、となんとも複雑な心地である。
クライヴの体が突然の変貌を遂げてから、何が影響するか判らないと慎重にしている中、セックスを控えていたのも確かだ。
溜まった分は事務的にでも処理すれば十分だったし、言うほどに人肌に餓えている性質でもない。
甘やかな熱の交錯は、それに酔う間は心地良くはあるが、執着しなくてはならない程の時期はとうに過ぎていた。

 だが、クライヴはシドよりもずっと若い訳で、それだけでも熱を溜め込むのは堪えるものがあるだろう。
それでいて、変貌した自分の体に自ら触ると言うのは、中々勇気の要ることだ。
面白がるような性格でもなく、どちらかと言えば理性が強い方だから、色々と葛藤が意識の邪魔をしたのは想像に難くなかった。
そんな状態で満足のいく昇華が得られる訳もないから、遅かれ早かれ、こうやって頼りに来たであろうことは、想像に難くない。

 シドは少しの間考えた後、


「俺たちの“いつも通り”で良いんだな?」
「ああ」


 念の為にと確かめるシドの言葉に、クライヴは頷いた。
それならとシドはワインを飲み切って、奥の寝床へと向かう。

 折々に場所を借りていた筈のシドのベッドに、随分と久しぶりのような気持ちになりながら、クライヴは体を乗せた。
二人分の体重を乗せたベッドも、久しい重みだと言いたげに軋む音を鳴らす。
この距離感も久しぶりだな、とクライヴが思っていると、その頬にシドの手が触れる。


「こうしてみると、お前の顔なんだが、お前じゃないみたいだな」
「ああ……髭もなくなったみたいだしな」


 耳元から顎のラインにかけて、すっきりと顔の形が露わになっているのを、シドはしげしげと眺めている。
クライヴはシドの気の向くままに任せ、近い距離にあるシドの顔をじっと見つめ返していた。

 シドの眼は、クライヴの顔のパーツを一つ一つ確かめている。
目立つのはやはり髭の有無で、それを除けば、大きく変わった所はそうないだろう。
だが、心なしか目尻の齎す印象であるとか、頬の膨らみ具合であるとか、ささやかながら変化しているように見える。
唇は相変わらず小さく、色も薄いものであったが、微かに肉付きがふっくらとしているように思えた。

 其処にシドの唇が吸い付いて、舌で軽くノックされたので、クライヴも緩く隙間を開けた。
侵入して来た舌に自分のそれを絡めながら、なんとなく、シドの舌が太いように感じる。
シドの方もクライヴの咥内が一回り狭くなったような気がしていた。


「ん……、ん……」


 零れる声もまた、耳に馴染んだものよりも、音が高い。
そしてクライヴは、後頭部に宛がわれたシドの手が、存外と強い力を持っている事に、初めて気付いた。

 クライヴがベッドに横たわり、シドがその上に覆い被さる。
そうしてクライヴの体を改めて見下ろし、シドは“彼”のたわわな胸に視線を奪われた。


「“いつも通り”とは言ったが」
「ん?」
「此処はそう言う訳にもいかんな」


 言いながら伸ばしたシドの手が、クライヴの柔らかな乳房に沈む。
日中はコルセット代わりに巻いた晒し布のお陰で抑えられているが、今は締め付けるものがないので、シャツにしっかりと山型のシルエットが作られている。
布越しにも明らかなその膨らみを、シドは下から汲み上げるように支えながら揉んだ。


「中々立派なもんじゃないか」
「そうなのか」
「手に納まらないサイズってのはそうないぞ。重いだろ」
「ああ。だから晒しをしていないと、走ると揺れて痛い」


 シドの手に掬い上げられ、たぷん、と水風船のように乳房が形を変える。
元々がしっかりと鍛えられた体だからか、クライヴの胸は大きくもハリがあって、日中は晒しをしているとは言え、まだ形も崩れていない。
指を沈めると跳ね返ってくるような弾力もあり、シドは久しぶりの感触だと口端を緩めた。

 強弱を不規則に変えて胸を揉むシドの手を、クライヴはじっと観察するように見つめている。
釣り鐘型の乳房は、シドの手が動くままに形を変え、次第に肉の感触も柔らかさを増していく。
その内に段々と、クライヴは胸の奥が火照るように温もってくるのが分かった。
自分で触ってみた時は、慣れない感触に妙な気分になるばかりで、こんな感覚にはならなかった筈だ。


「ん……」


 シドの手が胸肉を掬うように持ち上げて、指に力を入れて揉みしだく。
むにゅ、むにぃ、と肉を押し退け埋まる指が与える緩やかな刺激に、クライヴの喉から小さな音が漏れた。


「此処も膨らんできたってことは、少しは感じてるみたいだな」


 つん、とシドの指先が、ぷくりと膨らんだ頂きの蕾に触れた。
ピンポイントの刺激に、ぴくっ、とクライヴの肩が震える。

 シドは左の乳首を柔く摘まみ、赤く色付いた先端を優しく捏ね始めた。
くに、くに、と指の腹で擦るように刺激され、クライヴは頂きから走る甘い痺れに唇を噛む。


「ん、くっ……!」
「あまり体に力を入れん方が良いぞ」
「そう、言われて、も……っあ……!」


 先端を爪でコリッと苛められ、思わず高い音が漏れる。
其処に刺激を与えられた事がない訳ではないのだが、どうにも普段よりも感じているような気がしてならない。
それが体の緊張の所為ならば、シドの言う通り、深呼吸でもなんでもして、余計な力を抜いた方が良いのだろう。

 ふう、ふう、と呼吸を止めないようにと努めてみる。
肩の強張りは幾らか和らいだ気がするが、それでも胸元から来る刺激へは、体は敏感に反応していた。
シドの指が、乳輪の形を撫でるように摩るだけで、ぞくん、としたものが背を走る。


「ん……っあ、……は、あ……っ」


 零れる吐息には隠せない熱が籠り、シドの耳に存外と心地良く届いていた。
全身の血行が巡って、クライヴの肌にも火照りの熱が浮き上がってくる。
同時に乳首の頭がぷっくりと膨らみ、益々感度を増して行った。
張った乳頭を指先でピンと爪弾かれれば、ビクッ、とクライヴの体が跳ねて、頭が天井を仰ぐ。


「っあ、あ……!」
「いつにも況して感度が良いな」
「あ、う……んぁ……っ!」


 乳房を丹念に揉まれて、まるで其処の快感をじわじわと育て上げられているような感覚に、クライヴは頭の芯がぼうと熱に浮かされるのを感じていた。
理性がゆっくりと溶かされる中、ツンと勃った乳首を摘ままれ、また高い声が上がる。


「んぁ……っ!」
「そろそろ良いか」
「は……あ、あ……」


 クライヴの体が入念な愛撫を受けて、十分に熱を行き渡らせていることを確認して、シドの片手が背中へと回る。
女性としては厚みのある体は、やはり戦士としてしっかりと鍛え抜かれたものだ。
それでも、筋肉の盛り上がりの感触と言うのは少なくなって、シドは腕の中の“男”が一回り小さくなっているのを感じ取っていた。

 背骨のラインを辿って下りた手が、クライヴの臀部を撫でて行く。
元々あった筋肉は、引き締まった質のものへと変わっているが、肉付きが良いことには変わりない。
それに、少し柔らかいような、と尻たぶをやわやわと揉みながらシドが思っていると、


「んん……う、ちょっと……」
「なんだ、嫌か」
「……触り方が親父くさい」
「お前な……」


 眉根を寄せて睨むように言うクライヴに、シドも片眉を上げて苦い表情を浮かべた。


「様子を見てるんだろ、何処がどう変わってるのか」
「どうだか。女も久しぶりなんだろう?」
「誰かさんが元気なお陰で」
「誰の話だろうな」


 売り言葉に買い言葉と、大した価値もない遣り取りをして、唇を重ねる。
クライヴが隙間を空ければ、すぐに舌が侵入してきて、二人それを絡め合った。
そうして体を隙間なく密着させると、二人の体の間で、たわわな豊乳が形を潰す。

 後ろに回したシドの手が、なだらかな形をした尻を撫でて、中心部に触れた。
指先を掠めただけでヒクついた其処は、クライヴ自身の努力のお陰で、既に柔らかくなっている。
口を数回、縁をなぞってくるくると遊ばせた指を、中へと挿入してやれば、にゅぷりと簡単に根本まで咥え込んで行った。


「んぁ、あ、あ……っ!」
「蕩けてるじゃないか。相当弄ったな」
「は、はっ……あぁ……っ!」


 指一本を容易く飲み込んだ其処を、くちゅくちゅと音を立てて掻き回されて、クライヴは背中を仰け反らせて喘ぐ。
随分と久しぶりに与えられる他者からの快感に、引き締まった腰が浮いて、足の爪先がシーツを突っ張った。

 クライヴの秘孔は柔らかく蕩け、指一本では足りないと、ヒクヒクと戦慄いて隙間を埋めるものを求めている。
要望のままにシドが二本目の指を挿入すると、秘穴はきゅうっと締め付けながら、更に奥へと誘った。
深くまで指が入って来る感覚に、クライヴはやっと、と言う心地で天井を仰ぐ。


「あ、あ……っ!シ、ド……んっ、そこ……っ!」
「ここか」
「はぅ……っ!」


 ぐっ、と覚えのある場所を指の腹で押さえられて、クライヴの体がびくりと弾んだ。
今の自分の指では、届くか届かないかの微妙な所を掠めるばかりだったのに、シドの指なら簡単に届いた。
ようやく得られた其処への刺激に、クライヴの全身から熱の汗が噴き出す。

 シドは繰り返し、同じ場所を持ち上げるように刺激しながら、指の腹でぐりぐりとマッサージしてやった。


「はっ、あっ、あぁ……っ!」
「これだけ解してあるなら、そう待たせなくても良さそうだな」
「ん、ん……っ、早く……っあ……!」


 シドの言葉に、クライヴはこくこくと首を縦に振った。
指で届いた場所への刺激も堪らないが、熱に餓えた体がそれで満足する訳もない。
やはり、一番深い場所への熱が何よりも必要であった。

 シドは、くりゅっ、と秘孔を穿ってやって、「あぁっ!」と高い声を上げるクライヴを見ながら、指を引き抜いた。
逃げて行くものを捕まえようと秘孔が急速に締め付けを見せるが、艶めかしく濡れていては捉え切れず。
たっぷりと分泌された腸液で濡れた壁は、咥えるものをなくして、ヒクヒクと切なさに震えていた。

 シドがクライヴの膝を押して開かせると、見慣れた性のシンボルは其処にはなく、柔らかな茂みの縁に、すっきりとした溝が一筋。
本人の様子や、タルヤが確認したことは聞いていたから、理屈としては分かってはいたが、こうして見ると改めて、と認識する。
色付きも淡く、ぴったりと隙間なく閉じた其処は、此処にある体が、放つ色香に対して全くの初心であることを示していた。
それを割り開くことに俄かに衝動的な興奮を感じる男は少なくないし、シドにもその手の欲に覚えがないとは言わないが、しかし。

 “いつも通り”であるから、シドは其処には触れることもなく、今し方指で具合を確認した秘孔へと、自身の雄を宛がった。
太いものがヒクつく秘穴に触れたのを感じ、クライヴの体が期待するようにぞくりと熱を増す。


「は…はぁ……っ、シド……」


 挿入し易いように、クライヴは片膝を自ら抱えて持ち上げた。
露わになった肛穴に、亀頭部を擦り付けると、其処はヒクヒクと戦慄いて吸い付こうとする。
浅ましい体がずっと欲しがっていたものがようやく与えられることに、露骨に期待を見せていた。

 シドは、一回り細くなったように感じられる腰をしっかりと掴んで、クライヴの中へと侵入を始めた。
何度も自分自身で弄り、今し方もシドの指で解された其処は、ぬるぬると抵抗なくシドの一物を飲み込んで行く。
張り詰めた雄が、肉壺を開きながら奥へと入って来る感触に、クライヴは背中を浮かせて悶えて見せた。


「ああ、あ……っ!ふ、とい……あっ、入って、くる……っ!」
「っは……全部咥え込みそうだな……」
「あ、は……あぁあ……っ!」


 あえかな声を上げながら、シドの思った通り、クライヴは根本まで雄を咥え込んで見せた。
一番奥の行き止まりを、先端でぐっと持ち上げられて、クライヴの頭が仰け反る。
後穴で迎え入れることに慣れた体が仰け反り、豊かな乳房がたぷんと弾んで、重力に従って左右に垂れ広がった。
それを片方、寄せるように掬いながら、シドは胸の谷間に唇を落とす。
ちゅう、と吸い付かれる感触に、ビクッとクライヴの体が震え、秘孔に咥えたものがきゅっと締め付けられる。


「ん……っ!ん、ぁ……っ!」
「動くぞ」
「ああ……っは、あっ、あ……!」


 短い合図とともに、シドは律動を開始した。

 柔らかく蕩けた肉孔を、太く固い熱の塊が何度も突き上げる。
馴染む暇など必要ないほどに濡れているから、律動は最初からスムーズなものだった。
ぬちゅっ、ずちゅっ、と卑猥な水音を混じらせながら、奥壁をノックする度、クライヴの唇からは堪えられない甘露の声が漏れる。


「はっ、は、あっ、あぁ……っ!」


 快感に悶えて、クライヴが腰を捩って逃げを打つ度、乳房が揺れてシドの目を楽しませた。
ピンと膨らんだ乳首を気紛れに摘まむと、また一つ、高い声が上がる。


「うぁ、んっ、あぁっ……!シ、シド……っあ、そこ、は……っあぁっ!」
「痛いか?加減はしてるつもりだが」
「ふっ、ふぅ、あ……っ!く、うぅ、ん……っ!」
「悪くはないみたいだな」


 先端をコリコリと爪先で苛められ、クライヴの声から一層甘味が増す。
それを快感を得ている証左と見て、色付いた乳首をもう一度摘まんでやれば、クライヴは高い声をと共に、秘孔に咥え込んだ雄を締め付けた。

 ベッドの軋む音が大きくなって行くにつれ、シドの動きも早くなって行く。
奥を何度も突き上げられて、クライヴは腹の底で燻り続けていた熱が、いよいよ限界まで膨らんでいくのを感じていた。
固く張り詰めた雄が、秘孔の勘所を何度となく突き上げ、官能の大波がすぐ其処まで来ている。


「シ、シド、あっ、うぁ……っ!も、う……んっ、来る、あぁ……っ!」


 限界の感覚を訴えるクライヴに、シドは「ああ」と頷いて、腰を強く突き出した。
ずんっ、と深い場所を穿ちあげられて、クライヴは足の爪先を縮こまらせながら、


「うっ、あ、あぁ……っ!あぁああ……っ!」


 これまでよりもワントーン高い声を上げながら、クライヴの体は上り詰める。
ビクッビクンッ、と引き締まった肢体が大きく波打ち、秘奥がきゅううぅっと狭く強く締め付けを見せる。
生暖かくこなれた肉壁が小刻みに痙攣し、その体が絶頂を迎えたことを示していた。

 同時に、強い締め付けを受けたシドも、限界へと上り詰める。


「く……!」
「っあ、あ、あぁあっ!」


 どくん、どくん、と脈打った雄から放たれた熱を受け止めて、クライヴの甲高い声が響く。
濃い蜜液が中へと注ぎ込まれる感触に、クライヴは媚肉を震わせながら、悦びの中に沈んで行った。
 
 深い場所での刺激で迎えた果て。
それはクライヴが長く求めて已まなかったもので、ようやく与えられたものだった。
それがあれば、この体を苛み続ける熱も、昇華できると思っていた。

 ────だと言うのに。


(…ま、だ……熱い……その上、これは……ここ、は……)


 秘奥に咥え込んだ雄を締め付けながら、クライヴは其処ではない場所に意識が捉われるのを感じていた。
其処にじんじんとした感覚が集まり、じゅわりと湿り気が染み出て来て、奥から強烈な疼きが生まれている。
自力でどうにかしようとして、全くどうにもならなかったその感覚こそ、クライヴ自身の力では解決できないものだった。

 物足りなさを訴える秘孔の感触を、シドも其処に収めた自分自身から感じていた。
こうして繋がるのも久しぶりのことだから仕方がない、と思ったシドだったが、ふとクライヴの右手が、彷徨うようにゆるゆると降りて行くのを見付ける。
何とはなしに見ていたその手は、“彼”自身の中心部───今は女の園となった其処へと振れていた。


「は……あ、あ……っ、あ……っ」


 普段は手甲に覆われている手指が、すりすりと陰部を摩っている。
青い瞳は茫洋と宙を彷徨い、自分が何をしているのか、あまり理解しているようには見えない。
本能で其処への慰めを求めている仕草、と言う印象だ。

 夢現にいるかのような表情で、自身の撫で慰めているクライヴに、シドは努めて静かに声をかける。


「おい、クライヴ」
「う……ん、ぁ……」


 ぼんやりと青眼が此方を見たのを確認して、シドはその耳元に顔を寄せて囁く。


「お前、そっちはまともに触ったのか」
「う……い、や……んん……っ」


 答えながら、クライヴの手は変わらず恥部を宥めようとしている。
だが、その手は表面を拙く撫でているばかりで、中への侵入は躊躇っているのが読み取れた。

 指先は度々、筋をなぞるように辿って、汗ばんだ体がヒクッ、ヒクンッ、と戦慄く。
そうしてこの熱を落ち着かせようと試しては、延々と消化不良を繰り返していた訳で、秘孔に熱を注がれても、肝心なのは此処だとばかりに訴えは続く。
秘孔でようやくの絶頂を迎えて尚───だからこそ余計に、強烈な疼きがクライヴを苛んでいた。


「はぁ、っは、はぁ……っ!あ、ふ……っあぁ……っ」
「……半端な状態な訳か」
「う……は、でも……どう、すれば良いか……っは…はぁ……っ」


 状態を察したシドに、クライヴは縋るように目を向けた。
頼れる伝手は此処しかない、ともう何度目かのその視線に、シドは手のかかる奴だと、苦笑が滲む。

 秘孔に埋めたままだった雄が、ゆっくりと引き抜かれていく。


「あ、あぁ……っ!待、あぅ……っ!」


 柔らかな腸壁は隙間なくシドに吸い付いていた。
それを丁寧に撫でるように擦られて、クライヴはぶるぶると全身を震わせながら、後肛からの刺激に身悶える。
ぬちゅ、と艶めかしい音を零して、雄はぬらついた光をまとわせながら、いやらしい穴から脱出した。

 ふう、とシドは一息吐いて、弛緩しているクライヴの足を抱えあげた。
両足を肩に担いで、ベッドから僅かに浮いたクライヴの腰の後ろに片膝を挟む。
下半身を持ち上げられ、両足を開いた格好になったクライヴの中心が、シドに向かって差し出される形になった。

 自分の体勢がどうなっているのか、クライヴは余り理解していなかったが、柔い光を宿したヘイゼルの瞳が、自身の中央へと向けられているのは分かる。


「っは……あ……う……」


 そこはかとない羞恥を感じて、クライヴの顔が赤らんだ。
裸など何度も晒しているのに、自分の体の有様が違う所為か、どうにもいつもと感覚が違う。
その癖、熱の訴えは消えないものだから、クライヴの手は無意識に自身の園を探り続けていた。

 見慣れたものより細い指が、じわじわと湿りを見せ始めた筋を摩るのを、シドは窄めた目で見詰め、


「挿れる訳にもいかないだろうからな。指でするぞ」
「う……わ、かった……」


 何をするのか、シドの言わんとしていることを辛うじて理解して、クライヴは小さく頷いた。

 自身で何度も撫でた場所に、シドの手がひたりと触れる。
それだけで、ビクッ、とクライヴの体が震えたものだから、シドの視線が伺うようにクライヴの顔を見た。
クライヴはゆるゆると首を振って、怖い訳じゃない───全くと言えば嘘になるが───と、続きを促す。

 双丘の狭間の筋はすっきりとしていて、まだ口を開く様子もない。
シドはそこに指先を宛がうと、筋の表面を何度も摩るように往復してやった。
それだけでクライヴは、自身の中心部から痺れるような甘い電流が迸るのを感じた。


「あ、あっ、あ……!はっ、あぁ、ああ……っ!」


 ぞくぞく、ぞくぞくと、背筋を駆け上って来るものは、悪寒に似ていたが、嫌な感覚にはならない。
代わりに、言いようのない衝動が沸き上がって来る気がして、クライヴは身を守るように背中を丸めた。
しかし、縮こまらせた背中に何度も繰り返し襲ってくる電流に、腹の奥底で燻っていた熱は、いよいよ火を点けて燃え上がる。

 クライヴの陰部から、じわりじわりと染み出した蜜液が、シドの指先にまとわりついてくる。
シドは徐々に指の動きを大きくさせて、筋の一番上から下まで辿りながら、次第にその口がヒクヒクと戦慄きだしていることを確認した。

 つ……と滑った指が、微かな隙間に辿り着き、シドはゆっくりとその穴の中へと侵入する。
今はまだ小さな口を指先が潜ると、


「ああ……っ!」


 ビクンッ、とクライヴの体が跳ねて、窄まりが指を締め付ける。
きゅ、きゅう、と乱れ気味の呼吸のリズムに重なる肉壺の動きを、シドは宥めるように、ゆっくりと指で円を描いて宥めてやった。


「は……、ん、う……うん……っ!」


 クライヴは吐息と共に小さな声を漏らし、開いた足の爪先をふるふると震わせていた。
入口はヒクヒクと絶えず蠢き、侵入者を拒もうとしているように思えたが、触れる肉壁を指の腹で撫でると、向かう先がうねるのが伝わる。


「中に入れるから、ゆっくり息を吐けよ」
「は、う……ふ……ふぅ……ん、ふ……っ!」


 シドに言われた通りに、クライヴが息を吐く。
ふー……っ、ふー……っ、と眉根を寄せながらも懸命に呼吸を続けるクライヴに、シドはタイミングを合わせながら、指をより深くへと進めて行った。

 クライヴの其処は、何度も交わった経験を持つ肛穴と違い、うっすらと濡れてはいるものの、肉壁も固い感触があった。
自身で触れるのも躊躇っていた訳だから、其処での刺激も得たことはなく、初めての侵入物を迎えた事になる。
拒んでいるようにも感じられる締め付けの中で、シドは殊にゆっくりと指を動かして、その強張りを宥め続ける。


「ふ、あ……う、うん……っ!」
「苦しいか」
「う……わ、わから、ない……けど、……っあ……!多分、大丈、夫……んん……!」


 答えながら、クライヴの表情には眉根が寄せられてはいるものの、苦悶と言うほどに辛そうには見えない。
それでもシドはゆっくりと、丁寧に、初心な蜜壺を慰めてやる。

 締め付けは一向に緩む気配はないが、震える肉壁を丹念に撫でていると、段々と奥への道が拓いて行く。
進みは遅々としていたが、お陰でシドの指は、もう半分ほどの所まで入っていた。
関節一つを曲げて肉ビラの天井を軽く圧すと、クライヴの肩がビクッと跳ねる。


「んっ……!っは、は……あっ、ん……!」


 絶え絶えの呼吸の中に、微かに甘露が滲んでいた。
ならばとシドが同じ場所をゆっくりと圧し、指の腹で撫でるように擦り付けてやれば、


「は、シド、あ…っ、あ……!」
「イイか」
「あ、あぁっ……!は、はくっ……あっ!」


 シドが指を動かす度に、クライヴはビクッ、ビクンッ、と四肢を弾ませて反応を示した。
秘奥からはじゅわりと分泌物が溢れ出し、肉壁が微かに震えて、シドの指に絡み付いてくる。
それを指を使って肉壁に塗り広げて行くと、次第にくちゅくちゅと言う音が鳴り初め、噛むように締め付けていた内壁の強張りも緩んでいった。


「はっ、はぁ、あぁ……っ!あっ、はぁ、んぁ……っ!」


 固く瞑っていたクライヴの眼が薄く開き、ブルーアイズがゆらゆらと揺れながら宙を見つめる。
シドはクライヴの上に覆い被さるように体を重ねて、茫洋と彷徨う瞳を真正面から捉えた。

 シドの眼に、甘く蕩けたクライヴの顔が映り込む。
それが水鏡に映る自分の顔とも違うから、クライヴは知らない人間が其処に映り込んでいるように見えた。
しかし、見下ろす男の唇が「クライヴ」と名を呼ぶから、此処にいるのは───今此処でこの男に抱かれているのは、間違いなく自分なのだと理解する。
重なった唇に何処となく安堵して、慣れない場所からの刺激で知らず緊張していた体が、ようやく緩むのが分かった。

 舌を絡め合いながら、シドの指はクライヴの中を解き解していく。
クライヴは、水音が鳴っているのが自分の口の中なのか、それとも下腹部なのかも分からなくなっていた。


「ん、ん、ふ……っ!あ、ふ……っんぅ……っ!」


 自分の中でシドの指が動き、指先で肉壁をなぞり上げる度に、言い知れない感覚と衝動が沸き上がって来る。
ずっと燻り続けた腹の底に溜まった熱が、シドが触れている場所に集まっていくのが分かった。

 分泌液がより一層にクライヴの内部を濡らしていく最中、また肉壺の壁が締め付けを見せ始める。
シドがその壁を爪先で細かく引っ掻くように擦り上げると、クライヴはビクッビクッと下肢を痙攣させて、くぐもった喘ぎ声を漏らした。


「んっ、んぅっ、ふぅっ!」


 きゅう、きゅうう、と断続的な締め付けを示す媚肉に、追い打ちをかけるように、肉壁を押しながらぐるぐると円を描く指。
隙間なく重なり合った繊毛を掻き分けられて、クライヴの体に強烈な快感が迸った。


「ふっ、ふぁ、ああっ!シ、シド、あぁ……!」


 唇が離れて、堪らないと叫ぶように名を呼ぶ。

 奥からとぷりと溢れ出した蜜を、指が掬って、内部に塗り広げて行く。
大きく大胆に動き出した指に蜜穴を広げられ、クライヴは悶えに頭を振って喘いでいた。


「ああっ、んぁ、あぁっ!や、それ……っあ、ひぁ、ああっ!」


 甲高い声が響き渡り、此処が隔離された造りで良かったな、とシドはこっそりと思う。
いつにも況して甘ったるいこの声は色々な意味で、他人に聞かせるには毒だ。
それを一人耳にしている自分も、相当に毒されていると思いつつ。

 クライヴの陰部は、シドの指を強く締め付けながら、ヒクヒクとその口の隙間を見せるように震えていた。
それならとシドが二本目を宛がい、にゅぷりと挿入してやれば、クライヴは「ああぁ……!」と甘露の悲鳴を上げる。
最初と違って蜜で十分に濡らし、丹念に拡げてあったお陰で、きついながらも二本目の侵入はスムーズに進んだ。
そのまま二本の指を使い、ぐちゅぐちゅと音を立てる程に中を掻き回してやれば、


「はっ、はっ、あぁっ、あぁっ!シ、シド、んんっ……!」
「奥がヒクついてるぞ。イきたいなら、そのままイくと良い」
「はっ、はっ、ひあう……!んっ、来る、来て、る……うぅ、あぁ……っ!」


 絡み付く肉を掻き分けて弄る指に、クライヴはすっかり翻弄されていた。
髪を振り乱して悶えながら、何度も体を捩るものだから、たわわな乳房が何度も左右に揺さぶられる。
たぽっ、たぷん、と重みのある袋が踊る様は、中々に迫力があるものだ。

 その傍ら、クライヴの体は限界近くまで迫っていて、両手は白む程に強くベッドシーツを握り締めている。
開いた足の太腿は、汗と、溢れ出した蜜潮でぐっしょりと濡れそぼっていた。
指を咥え込んだ筋のすぐ上に、ぷくりと膨らんだ淫芽を見付け、それを親指でくりゅっと押し潰した瞬間、


「あっ、あぁっ!あーーーーっ!」


 恐らくは全く初めての刺激であっただろうそれを与えられて、クライヴは堪らず絶頂した。
どちらかと言えば声を堪える癖のある“彼”にしては珍しく、悲鳴を殺す隙すらなかった、それほどの強烈な官能に見舞われたのだ。
同時に淫部からは、ぷしゃあっ、と細かな飛沫が噴き上がり、クライヴの腹や太腿に透明な蜜が降り注いだ。

 ビクッ、ビクッ、ビクンッ、とクライヴの体は繰り返し痙攣を示し、蜜壺の奥からはとぷりと生暖かい愛液が溢れ出した。
シドはその感触を感じながら、きゅうぅ……と長く強い締め付けを見せる其処から、ゆっくりと指を引き抜く。
最後の最後まで、肉壁は吸い付くように縋り、仮に其処に本物の熱を咥え込んだならばどうなるだろうと、男にそんな欲望を擡げさせる。

 だが、当の本人は息も絶え絶えで、意識も剥落しかかっている。
あ、あ、と意味のない音を漏らすクライヴは、まだ絶頂の余韻の中にいた。


「ふ……ん、あ……」
「意識、まだあるか」
「……シ…ド……」


 声をかけるシドに、クライヴは辛うじて反応を示す。
熱に溺れて宙を彷徨っていた青の瞳が、ゆっくりとシドを映した後、ほう、と安堵の吐息が漏れて、


「………」


 そのまま瞼が降りて行き、すう、と細い呼吸が零れた。
静かに続くのは規則正しい呼吸で、そのリズムに合わせて胸が上下している。
眠った───と言うよりは、気絶だろう、とシドも察した。


「……やれやれ」


 疲労感で重くなった体をベッドに預け、シドはくしゃくしゃになったシーツの上で眠る人物を見た。
其処にいるのは良く知る“男”だが、しどけなくベッドに沈む肢体は明らかにそれとは違っていて、このままにしておくのは少しばかり気が引ける。
しかし、娼館ならば湯でも貰えただろうが、この場所ではそう言う訳にもいかない。
精々、ありもので拭ってやるのが精々だろう。

 それだけでもやらないよりはマシか、と重い体をなんとか起こして、シドは使えるものを探すことにした。




 翌朝、クライヴは太陽がそこそこ高い位置へと上る頃に、ようやく目を覚ました。
行為の真っ最中に意識を飛ばした筈なのに、衣服は元通りに整えられており、一瞬、妙な夢でも見たのだろうかと、昨晩のことを考えた。
が、しっかりとした頭で辺りを見回せば、寝床に宛がわれた居住区ではなく、シドの部屋のベッドの上だ。
昨夜のことは間違いなく現実であり、その原因は自分自身が言い出したことであるとも思い出して、今更に顔が熱くなる。

 一足先に目を覚ましていたシドは、既にいつもと変わらず仕事をこなしていた。
届けられた手紙や報告に目を通して、この隠れ家の長として、諸々の方針を決める為に、デスクで頭を悩ましている。
其処へ、遅い起床をしたクライヴがやって来ると、


「おう。やっと起きたな」
「……ああ」


 常と変わらない反応を見せるシドに、クライヴは少しばかりほっとした。

 この男に、昨晩のことを掘り返すような無粋な趣味があるとは思っていない。
だが、“いつも通り”で良いと言っていながら、それでは治まれなかった自分の有様を覚えているだけに、何か妙に意識されるような行動をされたら、いらぬぎこちなさを晒す羽目になっただろう。
シドが普段と変わらない調子でいてくれるから、クライヴも普段通りで大丈夫だ、と落ち着くことが出来た。

 取り敢えず、クライヴは一旦、自分の部屋に戻らなくてはならない。
昨日は夜着の状態でこの部屋に来たから、兵装も何もかも、其処に置いたままだ。
今日の予定に何が入っている訳でもなかったが、何かしら仕事をするつもりなら、身支度は整えておかなくてはならない。

 そう考えていたクライヴを、シドはじっと観察してから、


「ちょっとは落ち着いたか」
「あ────ああ、うん。お陰様で」
「もしまた同じようなことになったら、此処に来れば良い。お前のことだから、他の奴には言えないだろう」
「……そうだな。あんたの方からそう言って貰えるのは、助かる」


 シドの言葉はクライヴにとって、至極ありがたいことだ。
何日も燻っては中途半端にしか吐き出せなかった熱は、昨夜のお陰で今はすっきりと落ち着いているが、また同じことにならないとも言えない。
盛んと言えば盛んな年齢であるから、激しい戦闘などがあれば昂るものはある訳で、男の時でもそれは発散しなければ眠りも妨げられるものだ。
しかし、どうにも今の状態では自慰も満足に出来ないから、同じ事が起これば、再びシドに頼ることになるだろう。
手を煩わさせる後ろめたさはあったが、赦してくれるならば、とクライヴも頼りたいのが本音であった。

 それじゃあ、と私室を出て行くクライヴを、シドはひらひらと手を振って返事を寄越す。
隠れ家の人々はとうの昔に活動を始めていて、大広間では、勉強に飽きた子供たちが、トルガルを囲んでじゃれている。
主が二階から下りて来たのを見付けたトルガルが、嬉しそうに尻尾を振るのに手を挙げて返事をして、クライヴは急ぎ足に部屋へと戻るのだった。




女体化が見たいなって思いまして。
クライヴは肉付きしっかりしてると良いな〜と言う願望で、当然のように巨乳にしました。

15歳まで騎士になる為に男所帯で特訓漬けだろうし、ベアラー兵になってからは生きる事と復讐しか考えてなかっただろうしで、異性の体については、最低限の知識はあっても経験したことなさそう。
そして意味不明の状態を面白がる性格でもないから、女になった自分の体にも早々好奇心は沸かないだろうなと。
と言う事で、明らかに発情してる状態だけど、自分じゃどうにもならなくてシドに頼るクライヴが書きたかった。
後ろは経験豊富なのに、前は処女って良いですね。本番なしで、シドの指でイかされるのも書きたかったんです。