風切羽を啄む


 大公と言う立場になってから、戦の只中にその身を投じることは少なくなった。
公国ロザリアを治める者として、それは致し方のないものではある。
この玉座はもとより借り物のものであるが、それでも治世者が可惜に没してしまうと言うのは、国が乱れる要因にもなる。
戦の多い時代であるからこそ、エルウィンは長く生きねばならなかったのだ。
預かった玉座を、いずれ現れる筈の、フェニックスのドミナントへと返還する為にも。

 とは言え、安穏と椅子に座っているだけが公の務めではない。
国を治める為の政は勿論のこと、エルウィンは征伐にも積極的に列した。
それは、只人である己が玉座に在ることの有用性を示す為でもある。

 腰に携えた剣を抜かずとも、エルウィンには将としてするべきことがあった。
若い時分に兵法を学び、その足で持って風の大陸で見聞きを広め、民の声を聞いた。
そして、時には蛮族や魔物と戦い、人々が平和に暮らす為の礎を築くべく、力を尽くした。
目の前の戦いを制した後には、何をすればこの平穏が長く続くか、次の災いを避ける為の準備を整えることも、大公となる者には必要になる能力なのだ。

 幸いにも、エルウィンはそれなりにその能力を有していたと言える。
父の早逝から間もなく大公の地位を継ぎ、今日までそれを手放すことなく過ごすことが出来た。
民の安寧を最善に考えて行う政の諸々が、貴族の歴々には大層不服があるとは聞くが、エルウィンは自分の目指すものが間違っているとは思っていない。
ベアラーに対する政策は特に槍玉にされ易いのは事実だが、エルウィンは彼らを使い捨ての道具と見做すことは出来なかった。
太子の頃に、身分を隠しながら出逢った様々な人々は、ベアラーも含め、確かに“生きて”いたのだから。

 今現在、エルウィンにとって最も頭痛の種となっているのは、海を隔てた先にある、鉄王国との対立だ。
マザークリスタル・ドレイクブレスを挟んだ先にあるかの国とは、元よりクリスタルの恩恵資源を奪い合っている。
その上、現在はクリスタルの袂をかの国に抑えられており、ロザリア国内で賄うクリスタルは、同盟を結んだ他国からの輸入に頼らざるを得なかった。
もう一つの頭痛の種である、北部地帯を飲み込んだ黒の一帯がロザリアへと迫る最中、マザークリスタル奪還は火急の問題だ。
だが、言葉も違い、ドミナントでさえも発現すれば赤子のうちに殺すと言う、苛烈な文化を持つ鉄王国とは、話し合いのテーブルを設けることすら出来ない。
討って掃う以外に、道はなかった。

 鉄王国との戦は、ほとんどが海の上で始まる。
マザークリスタルを擁する島には鉄王国の兵士が常駐し、常に警戒の船を浮かべている為、ロザリア軍はそれを突破しなければ島に上陸することも出来ない。
そして鉄王国側が大人しく島に籠城している訳でもなく、隙あらば最寄りのポートイゾルデへと進軍を仕掛けて来る。
周辺諸国との交易・人々の移動の為に重要拠点となるポートイゾルデを抑えられれば、いよいよロザリア公国は没落の目を呈することになるだろう。
それを防ぐ為にも、ロザリア軍は海の防衛線を押し上げて行かなければならなかった。

 エルウィンが大公の座に就いてから、鉄王国との戦は何度となく繰り返されている。
この戦役は父の代から続いているが、やはり、ドレイクブレスを擁するドルタヌス島を実効支配されていると言う点が、鉄王国にとって有利に働いている。
島は元々が攻略し難い地形を持ち、それを天然の要塞として利用しているのだ。
攻めるだけで海を渡る必要があるロザリア側は、限られた積み荷が尽きてしまえば、港へと戻らざるを得ない。
鉄王国とのこの戦は、長引くほどにロザリア軍にとって不利となるのだ。

 それでも、エルウィンは戦線を維持することに成功していた。
今回の遠征では、一時は押された前線を元の位置まで押し戻し、鉄王国の船を沈めている。
エルウィンの乗った船が港へと戻った時には、後方支援の指揮を勤めていた弟が出迎え、「流石は兄上!」と快活に笑った。
戦線を戻しただけとエルウィンは苦笑したが、しかし、弟や兵、民草の安堵の表情は、確かに彼の緊張を解していた。

 それから一晩、弟の屋敷で今後の問題について話し合った後、エルウィンはロザリア城へと帰還した。
エルウィンの指揮によって鉄王国の船を沈めたことは、既に城の者たちの耳にも入っており、歓待で迎えられる。
其処に二人の息子の姿も認め、エルウィンの頬は微かに緩んだ。

 騎乗していたチョコボの背から下りたエルウィンの下へ、ジョシュアが駆け寄って来る。
ジョシュアは、エルウィンの前までくると姿勢を正し、胸に手を当てて頭を下げた。


「父上、お帰りなさいませ!」
「うむ。今日は調子が良さそうだな、ジョシュア」


 半月ぶりに見た息子の顔色は、随分と良い。
その身に宿した大きな力の反動なのか、生まれながらに体の弱いジョシュアだが、今日は溌剌としていた。

 その後ろに寄り添うように立ったのは、クライヴだ。
頬や額に細かな痣を浮かせているのは、将軍に扱かれていたからだろう。
つい今しがたまで特訓していたのか、額にはうっすらと汗が浮かんでいた。


「ご無事でお戻りで何よりです」
「ああ。此方は変わりないか」
「はい」


 エルウィンの問いに、クライヴは頷いた。
それならば何より、とエルウィンも頷いて返す。

 二人の少年の更に後ろでは、小さな子犬──正しくは狼なのだが──を腕に抱いた、白銀の髪の少女がいる。
彼女はエルウィンと目が合うと、ぺこりと頭を下げた。
腕の中の子犬は、きょとんとした顔をしつつ、自分を抱いている少女の顔を見上げては尻尾を振っている。

 エルウィンはジョシュアの金色の髪をくしゃりと撫でた。
半月ぶりの父の手に、ジョシュアはくすぐったそうに笑う。
クライヴはそんな弟を見詰めながら、笑いかける弟につられたように、口角を緩めていた。
並ぶ兄弟とその父の姿を見つめる少女もまた、嬉しそうに腕に抱いた子犬に話しかける。

 そんな子供たちの更に向こう───城へと続く門戸の袂に、息子の一人と同じ、眩い金色の髪を抱いた妻が立っている。
侍女を従え、じっと此方を見つめるその瞳に、子供たちと同じような感情は浮かんでいない。
彼女がただ儀礼的に其処に立っているだけだと言うことを、エルウィンは知っていた。

 子供たちと別れ、玉座へと向かうエルウィンを、妻アナベラは表情を変えずに迎える。
彼女と顔を合わせるのも、半月ぶりのことだ。


「───今、戻った」
「ご無事で、何よりです」


 妻の言葉は端的であった。
それ以上の意味もなく、それ以外に口にするものもなかった。
そしてエルウィンもまた、仮面のように冷たい妻の表情に感慨を抱くこともなく、開かれた門の向こうへと進んで行った。




 玉座に戻れば、程なくロドニーが現れ、エルウィンが不在の間の出来事について報告を受ける。
半月と言う短くはない時間の遠征であったが、その間、ロザリス城は平穏であったと言う。
数回、ダルメキア王国とザンブルク皇国、自由都市カンベルからの使者があった他は、特筆すべきこともない。
使者が運んできた文書は、全てエルウィンの寝室にある机へと納められていた。

 夕刻、遠征に同行した将軍から、今回の遠征による被害等の報告を受けた。
戦ではロザリア軍が鉄王国の船を沈めることに成功したが、此方も少なくはない傷を受けている。
報告によればロザリア軍の死者はなかったが、怪我人と、ダメージを受けた船の修繕の為、諸々を調整しなければならない。
さて何処から手を付けたものか───休む暇もなく、頭を巡らせることとなった。

 陽が沈めば、夜の冷たい風が部屋へと吹き込み、灯りに燈した蝋燭の火を揺らす。
風避けのカーテンを閉めても、時折その裾から滑り込んできた北風が、空気を冷やしていった。
短い夏を終えれば後は気温が下がる一方となれば、ガウンを羽織っても足元を這う冷気に浸食される。
じわじわと躰が冷えて行けば、巡らせていた頭も鈍り、エルウィンは溜息を共に睨んでいた紙切れをテーブルに置いた。

 コツ、コツ、と控えめなノックが聞こえたのは、その時だ。
カーテンを閉め切ったことで外の景色は見えないが、体感でも時間はもう随分と遅い。
火急の報せ以外で、こんな時分に大公の寝室を訪れる者は早々いない。
加えて、ノックの音が小さいことを思えば、それが誰のものであるのか、エルウィンが知るには十分だった。


「入りなさい」


 通る声でエルウィンが言うと、一拍を置いてから、扉の蝶番が擦れる音を立てる。
一本の細い手燭台を頼りに照らし出されたのは、クライヴだった。


「失礼します」
「良い。此方へ来い」


 礼儀として頭を下げるクライヴに、エルウィンは微かに笑みを零して、入室を促した。
クライヴは少しばかり口端に緊張した様子を浮かべながら、敷居を跨ぐと、そっと音を立てないように扉を閉めた。

 エルウィンが落ち着いている机の前まで来たクライヴは、昼間と違って簡易な服装に身を包んでいる。
騎士として、ロドニーを剣の師として日々を特訓に費やしている所為か、彼の体には小さな生傷が絶えない。
昼に見た時には、その顔にも新しい痣が浮いていたが、蝋燭の火に照らされている今は、すっきりと綺麗な顔をしていた。

 その頬へと手を伸ばしてやれば、クライヴはじっとそれを受け止める。
十を数えたばかりの弟に比べれば育っているとは言え、頬の輪郭はまだ幼さを残し、触れてやれば微かに柔らかい。
其処にするりと指を滑らせると、クライヴは面映ゆい表情を浮かべた。


「……夜分遅くに申し訳ありません、父上」


 クライヴはエルウィンの手の感触を確かめながら、申し訳なさそうに眉尻を下げて言った。
エルウィンは小さく首を横に振り、


「構わぬ。わしも、お前の顔が見たいと思っていた」


 父の言葉に、クライヴの青い瞳がひたりと揺れる。
言葉の照明のように、カフスを嵌めた耳の袂を指先で擽ると、クライヴはぴくりと肩を揺らした。


「半月ぶりだ。よく顔を見せてみろ」
「はい」


 クライヴは細い蝋燭を立てた燭台を机に置いて、一歩、エルウィンの前へと進み出た。
一番近くにあった灯火が離れた事で、エルウィンから見たクライヴの顔は、少し翳が濃くなっている。
それをより近くから見る為に、クライヴの頬を両手で包み込めば、心得ているクライヴはそっとエルウィンの下へと顔を寄せた。

 滑らかな頬をゆったりと撫でながら、エルウィンは半月ぶりに見る息子の顔をじっと眺める。
目尻に指を滑らせると、クライヴは眩しそうに目を細めた。
整った鼻筋の下、小さな唇が、音なく「父上──」と呼ぶのを聞いて、エルウィンはそれを自分の唇で塞いでやる。


「ん……んん……」


 クライヴは父にされるがまま、口付けを受け止めている。
じっと父の望むに従うように躾けられた体は、ふるりと微かな震えを見せながらも、決して抗うことはしなかった。

 毎日の特訓の間に噛み締めることも多いのだろう、クライヴの唇は微かに切れている。
それを舌でゆっくりと舐めれば、唇の隙間が開いて、エルウィンの進入を待つ。
教えたように待つクライヴの期待に沿って、エルウィンは舌を差し入れ、クライヴの舌を絡め取った。


「ん、ふ……んぁ……ん……っ」


 咥内で小さな水音が鳴るのを聞いて、クライヴの体が微かに強張る。
その肩を抱き寄せてやれば、クライヴは大人しく父の胸に寄り掛かってきた。
密着する体を膝上に乗せようと促すと、クライヴはおずおずとしながら、エルウィンの膝に座る。

 育ち盛りと、日々の鍛錬とで、クライヴの体はそれなりに鍛えられているが、エルウィンから見ればまだまだ軽い。
幼い弟や、よく共に過ごしている少女のようにか弱くないが、立派な体躯とも言い難い。
研鑽に過ごす日々を思えば、あと数年もすれば仕上がった筋肉が身につくだろう。
そんな将来性はあったが、しかし今エルウィンの膝上に収まっている息子は、まだ未成熟な青さを宿している。

 簡易服の裾にゆっくりとエルウィンの手が滑る。
それが辿ろうとしている道を想像してか、クライヴの顔がほうと赤くなった。


「父、上……」


 小さく父を呼ぶ声は、縋っているようにも、咎めているようにも聞こえる。
エルウィンは前者だと捉えていた。
この行為にどんなに背徳的な罪深さがあろうとも、賢い少年がその意味を違えず理解していようとも、彼はそれを理由に逃げることはないのだから。

 服の中へと手を入れて、滑らかな肌の上を彷徨わせる。
するすると不規則に這い回る手のひらの感触に、クライヴは目を閉じて耐えていた。


「ん……、ふ……っん、ん……」


 ぴくっ、ひくっ、と肩が小さく震えている。
クライヴは目を閉じて、這う手が与える感触に耐えながら、エルウィンの肩口に額を押し付けた。

 エルウィンの手はクライヴの体の前を満遍なく愛撫すると、やがて胸部へと向かう。
手がその兆しを見せた頃から、クライヴはきゅうと唇を噛んでいた。
左胸に触れれば、皮膚の向こうからトクトクと早鐘が打っているのが聞こえ、少年の躰が熱への期待を抱いていることが判る。

 その期待の証のように、触れた頂きはぷくりと固く膨らんでいた。
それを親指と人差し指で摘まんでやれば、


「……っあ……!」


 エルウィンの思った通り、クライヴは小さな声を上げて四肢を強張らせる。
半月ぶりの刺激は、熱への耐性を覚えていない少年にとって、甘い毒のように待ち望んでいたものだった。

 摘まんだ蕾を軽く転がす。
エルウィンの膝の上で、クライヴは逃げを打つように身を捩ったが、彼の腕は父の肩に回されている。
逃げる事など考えないように教えられたクライヴは、父の耳元に、はあ、はあ、とあえかな呼気を零しているばかりであった。


「あ、っあ……父上……」
「随分と、敏感になっているな」
「は……あ、んん……っ」


 エルウィンの言葉に、クライヴは益々赤くなって、羞恥心からかゆるゆると首を横に振る。
しかし、態度や言葉で否定した所で、エルウィンの指先に触れるものが何よりの証拠だった。


「固くなっているぞ、クライヴ」
「あっ……!あ、ん……っ!」
「違うと言うなら、此方はどうだ?」


 摘まんでいた右の乳首を離し、反対側のそれを摘まむ。


「ああ……!」


 思った通り、良い反応を返すクライヴに、エルウィンの唇が笑みに歪む。
乳首も反対側と同様に、固く膨らみ、敏感になっていた。
それを爪先でかりかりと引っ掻いてやれば、クライヴは背を撓らせながらビクッビクッと上肢を痙攣させる。


「は、あっ、あぁ……っ!父上、お、お戯れを……っ」


 クライヴはいやいやと頭を振って訴える。
しかし、胸を張り出すように腰を反らしているのでは、まるでもっと触れてほしいと差し出しているようにしか見えない。
エルウィンはそんなクライヴの背を抱き寄せると、服の裾を胸の上までたくし上げて、露わになった蕾に唇を寄せて吸い付いた。


「ああぁ……!」


 生暖かいものに乳首が包み込まれる感触に、クライヴは悩ましい声を上げる。
エルウィンの肩を掴むクライヴの手に力が籠り、ガウンに深い皺の波が浮かんだ。

 エルウィンはクライヴの体を背中から抱き込み、ぴったりと躰を密着させて、息子の青い果実を存分に啜った。
クライヴは差し出した胸から与えられる官能の刺激に、昏い天井を虚ろに見上げながら、はくはくと唇を戦慄かせている。


「あ、あ……父、上……そ、そんな……っあ、ああ……っ!」
「ん、ぢゅ……ん、ふぅう……っ」
「はあ、はあ、あぁあ……っ!む、胸が……あ、熱く……なって、くうん……っ!」


 エルウィンが啜るごとに、クライヴの体は熱を生み、汗ばんだ匂いを振り撒く。
舌で蕾を転がし愛でると、腕の中に捉えた少年の躰が耐えきれないと言いたげに震えた。
それを更に追い込んでやろうと、柔く甘噛みするれば、敏感な体は固い感触を感じ取ってビクンッと跳ねる。

 微かな痛みを与えられた乳首は、より刺激に敏感になる。
戦慄く其処を慰めるようにゆったりと舌を這わしてやると、クライヴはより切ない声で鳴いた。


「んぁ、あぁ……父上……」
「此方も、もう一度だ」
「はぅんっ……!」


 先に愛でてやっていた右側を、もう一度食む。
左にしてやったように、軽く歯を立てて苛めてから吸ってやると、クライヴは雷に打たれたように、ビクンッ、ビクンッ、と身を弾ませた。

 ちゅう……吸いながら乳首を解放してやる。
たっぷりと愛撫したクライヴの胸元は、唾液で濡れそぼり、燭台の灯りを受けててらてらと光っている。
心なしか桃色が赤く腫れたようにも見えて、よりいやらしさを強調していた。


「は……っ、はぁ……、あぁ……っ」


 エルウィンの膝の上で、クライヴは濡れた胸元をふるふると震わせながら、熱の籠った吐息を漏らす。
ぷくりと固く膨らんだ蕾の縁に、指の爪先を滑らせると、


「あ、あ……っ、や、あ……っ」


 クライヴは切ない声を上げながら、悪戯をする父の手を掴む。
咎めにも止めるにも足りない、添えるだけの手を、エルウィンは好きにさせた。
その代わりに、色付いた乳輪を二本の指できゅっと挟むと、「あぁっ……!」と良い鳴き声が漏れた。

 エルウィンはクライヴの上衣を脱がせ、下肢にも手を伸ばす。
紐を緩く結んで腰に留めているだけの下衣は、簡単にエルウィンの手の侵入を許した。
若い体の中心部に触れてやれば、其処は分かり易く勃ち上がっている。


「焦らしてしまったようだな」
「……そ、んな……ことは……」


 エルウィンの言葉に、クライヴは自身の浅ましい有様を知られた事にか、顔を赤らめて言う。
否定しているようにも聞こえる言葉だったが、エルウィンがクライヴの中心部を包み込むと、


「ふ、ぅぅ……っ!父上、そこは……っあ、んぁ……っ!」


 赤らんだ顔をゆるゆると振って、厭を訴えるクライヴだったが、彼の雄は固く膨らんでいる。
興奮していること、此処から先を期待していることを体で示す少年に、エルウィンの雄の本能が頭を擡げて行く。

 体躯の成長に見合って、其処も日々育っているものだが、大人の物と比べればまだまだ可愛らしいものだった。
エルウィンの手の中に納まっているサイズのそれを、柔らかく揉んでいくと、先端からとろりと先走りが滲んでくる。


「は……はっ……、あぁ……っ、ああ……!」
「わしがいない間に、此処に触れたか?」
「……ふ……い、いいえ……」


 クライヴは恥ずかしそうに俯きながら、エルウィンの問いに答えた。
とぷり、と溢れる蜜が竿を伝い、エルウィンの手に乗り移って来る。
エルウィンはそれを指に絡めて竿に塗り広げるように、クライヴの雄を扱き始めた。


「あっ、あぁっ、父上……っ!」
「教えた通り、我慢が出来たようだな。良い子だ、クライヴ」
「はぁ、父上……っ、んぁ、あっ、はあぁ……!」


 囁く父の言葉に、クライヴの全身から汗が噴き出して、熱が一気に燃え上がる。
エルウィンの手の中で、まだ幼い一物が切迫感を増して行き、ともすればクライヴは達してしまいそうな程になっていた。


「はあ、はぁっ、んぁあ……っ!父上……っ、もう、んん……っ!」
「良いぞ。わしの手で果てなさい」
「は、ふっ……あ、あ、ああぁぁ……っ!」


 エルウィンの許可を合図に、クライヴの体は一気に上り詰めて行く。
若い体で、日々の研鑽の反動に溜め込んでいた燻ぶりが、出口を求めて一斉に走り始める。

 エルウィンの手がクライヴの鈴口をくりゅっと刺激した瞬間、


「あっ、ひっ!んぁっ、あぁあんっ!」


 クライヴは高い声を上げて、絶頂した。
自身を包み込む父の手の中に、びゅくっ、びゅくっ、と白濁液が吐き出される。

 クライヴはしばらくビクッビクッと四肢を痙攣させた後、くたんとエルウィンの体にしな垂れかかった。
久しぶりの解放の瞬間は、少年の躰を絡みつくようにして蝕み、思考能力を失わせていく。
平時は凛と引き締めている顔も、熱に溺れて蕩けたようにだらしない。

 エルウィンは、そんなクライヴの頬に手を添えて、自分の方へと顔を向けさせた。
青い瞳をうっとりと蕩けさせたクライヴの唇を塞ぎ、感応の余韻に浸っている舌を絡め取る。
唾液で濡れたそれを、自身の唾液と混ぜ合わせるように愛でるのを、クライヴは甘い吐息を零しながら受け入れていた。


「んん、んちゅ……ん、は……ちち、うえ……」
「全て脱ぎなさい、クライヴ」
「はい……」


 父の言葉に、クライヴは疑うことなく従った。
内側に湿った感触の滲んだ下衣が落とされると、まだ厚みの足りない未成熟な肢体がエルウィンの前に晒される。

 一度果てた事で、クライヴの下肢は蜜に濡れていた。
太腿の間に粘液が糸を引いているのが、机に置いた燭台の頼りない灯りに照らされている。
ゆらゆらと揺れる灯火で、暗闇の中に浮かび上がるその光景の、いやらしいこと。

 裸身になったクライヴは恥ずかしそうに、隠すものをなくした中心部を腕の影に寄せていた。
しかし、若い体の興奮は、一度果てた程度で収まる訳もなく、頭を持ち上げているのが覗いている。
何より、熱の交感はまだ始まってもいないのだから、それを覚えた性に拙い体が満足している筈もなかった。

 さあ、何処から触れよう。
久しぶりの交わりとあって、エルウィンがそんなことを考えていた時だった。


「父上。その……お願いがあるのですが、宜しいですか」
「なんだ?」


 何事も父の言うに殉じている出来た息子の、珍しい嘆願。
聞かない訳もないとエルウィンが尋ねれば、熱の籠った青色が此方を見詰めて、言った。


「父上に……触れたいのです。私の方から、父上に労いをしても、宜しいですか?」


 ゆっくりと動くその唇が告げた言葉に、エルウィンはどうしようもなく興奮した。
努めて自ら求めるまいと、誰に言われるでもなく自戒しているクライヴからの願いだ。
エルウィンは笑みを浮かべて、蜜の名残を残している指で、クライヴの唇をなぞった。

 許可が下りたことを確かめて、クライヴは「ありがとうございます」と嬉しそうに言った。

 クライヴはエルウィンの膝から下りると、足の間に跪いた。
ガウンを開き、失礼します、とそろりと手を伸ばして、エルウィンの中心部を解いて行く。
其処から現れたエルウィンの雄は、十分に膨らみを増して、クライヴの目にその存在感と質量をありありと見せつけていた。


「あ……」


 半月ぶりに目の前にした雄の高ぶりに、クライヴの体の芯で、ずくりとした疼きが響く。
夜の冷たい空気の中、皮膚を守るものなく裸身で過ごしているにも関わらず、体の奥から熱が膨らんで行く。
咥えることを教え込まれた秘部が、今からひくひくと伸縮するのが判って、クライヴは一人顔を赤らめた。

 クライヴは両手でエルウィンの雄を包み込むと、ゆっくりと顔を近付けた。
小さな口から覗く濡れた舌が、恐る恐るに父の一物に触れる。


「んぁ……んん……っ」


 最初は先端にキスをして、それから舌で其処を擽る。
不慣れな仕草でちろちろと先端を刺激されて、その拙い様子が見下ろす父の目に興奮を灯していた。

 先端への挨拶が終わったら、クライヴは口を開いて、雄を咥内へと招き入れる。
小さな口に、大人の一物は大きくて、全てを飲み込むのは苦しかった。
それを精一杯に迎えようと努力し、なんとか半分まで咥えると、クライヴは頭を前後に動かして、唇で竿を扱き始める。


「んっ、んぷっ、んぢゅ……っ!」
「ああ、良いぞ、クライヴ……」


 懸命に奉仕を行うクライヴに、エルウィンは双眸を細めて言った。
献身的でいやらしい少年を見つめる目は、息子に向けるには濃い情欲が浮かび、その深度を示すように、クライヴの咥内で雄の質量が増して行く。

 ちゅぷ、ちゅぷ、と唾液の混じる音を立てながら、クライヴは口淫を続ける。
苦しそうに眉根を寄せながら一物を啜るクライヴに、エルウィンの手が子供を褒めるように黒髪を撫でた。
普段、人前では絶対にする事のない触れ方に、クライヴの瞳が嬉しそうに綻ぶ。
そうすると、彼は一層、熱心な奉仕をして見せた。


「んっ、んっ、んん……っ!あ、むぅ……んん……!」
「美味いか、クライヴ」
「んんっ……はい、父上……んむっ……!」
「そうか」


 戯れに投げかけるエルウィンの言葉に、クライヴは小さな子供のように頬を綻ばせて答える。
答えればまた直ぐに雄に吸い付いて、エルウィンを歓ばせようと一所懸命になった。

 クライヴの咥内で、エルウィンの熱が成長していく。
湿りと唾液の粘りで艶めかしく濡れたクライヴの口の中は、半月ぶりに味わうには余りにも心地良かった。
戦場の只中に身を投じていた訳ではなくとも、緊張と、船を落とした時の高揚は、エルウィンに確かに昂りを齎している。
ともすれば、この咥内にその昂ぶりの証を全て吐き出してしまいたくなる、それ程の得難い感触であった。

 だが、此処で全てを吐き出してしまうのは惜しい。
エルウィンは、この艶めかしい唇よりも、温かくて柔らかい場所を拓いているのだ。


「んっ、んぢゅっ……んっ、んっ、ふぅ……っ!」


 クライヴは目を閉じ、エルウィンの股に縋りつくように身を寄せて、一心不乱に口淫をしている。
口では届かない根本には両手を添え、柔く握りながら扱いて刺激した。
鈴口から滲む苦い感触には、眉根を寄せながらも嫌がることはせず、寧ろそれをもっと求めるように、舌を押し付けて舐め取っていた。


「ふっ、ふぅ、ふぅん……っ、んん……っ」


 このままなら、エルウィンがもう良いと言うまで、クライヴは奉仕を続けているだろう。
だが、半月ぶりの雄の匂いは、確実に彼の体も蝕んでいた。

 雄をしゃぶりながら、クライヴの腰がゆらゆらと揺れている。
引き締まった小ぶりな尻の中心がヒクついて、奥が疼いて欲しがっていた。
時間が経つに連れて大きくなって行く疼きに、熱を求めて已まない意識が限界を訴える。


「ん……んちゅ、んちゅぅ……っ」


 肉竿を啜りながら、青の瞳が見下ろす男を見上げた。
自ら何かをねだることは、クライヴにとって酷く抵抗感を呼ぶのだが、これを堪えることも出来ない。
許しを請うように見つめる青に、エルウィンの瞳が充足感に満ちて行く。


「───クライヴ」
「んっ……っは……はい……」


 名前を呼べば、それで合図には十分だった。
クライヴは長く吸い付いていた雄から唇を離し、唾液の零れる口元を拭うことも忘れて、丸めていた体を立たせた。

 椅子に座ったまま、動くことのないエルウィンの肩に、クライヴの両腕が回される。
縋るように身を寄せながら、クライヴはエルウィンの体を跨ぎ、椅子に膝を乗せた。
唾液で濡れそぼり、反り返った一物に、クライヴの尻が擦り付けられる。


「っは……はぁ……父、上……」


 求める体の熱を訴えるように、クライヴの声がエルウィンの耳元で零れる。
エルウィンは耳殻を震わせるその声に、より一層の熱が中心に集まるのを感じながら、クライヴの尻に手を滑らせた。


「半月ぶりだ。解さねば、お前も辛いだろうな」


 そう言って、エルウィンはクライヴの秘部の口を擽る。
指先が窄まりの皺を辿るだけで、クライヴは言い様のない感覚に腰を震わせてしまう。


「ああ……ん、あ……父上、父上……っ」


 待ち望んでいた場所への刺激に、クライヴは切ない声で父を呼ぶ。
指先を穴口に宛がえば、土手がひくひくと伸縮して、奥への侵入を誘った。

 つぷり、と指が一本、入り口を潜る。


「あぁ……っ!」


 クライヴは眉根を寄せながら、悦びの声を上げた。
きゅうう、と小さな口が窄まって、エルウィンの指に吸い付いて来る。
それは大層愛らしい反応だったが、


「クライヴ。解すと言っただろう。体の力を抜きなさい」
「あ、あ……は、い……父上……っ」


 条件反射のように、異物の侵入を悦び、締め付けて来る秘穴。
これでは、指よりもずっと太いものなど入る訳もない。

 クライヴはエルウィンに縋りながら、はあ、はあ、と努めて呼吸を繰り返した。
異物を咥え込んで締め付けている淫部は、ひくん、ひくん、と伸縮運動をしながら、徐々に力を緩めて行く。
小刻みに震えて戦慄いていたクライヴの体も、少しずつ鎮静していった。

 そして、指に絡む肉の締め付けが、吸い付く程度に和らいだのを確かめて、エルウィンは指をゆっくりと奥へと進めていく。


「あふ……っ!あ、あ……っ!は、あぁん……っ!」


 クライヴは天井を仰ぎ、不規則になりながらも、なんとか呼吸を続けている。
お陰でエルウィンの指は、彼を傷付けることのないよう、時間をかけながら奥へと入ることが出来た。

 クライヴの中は狭く、半月ぶりとあって、締め付けも中々に強い。
それをエルウィンは、壁をゆっくりと撫でてあやしながら拓いて行く。


「あぁっ……!っは、父上、中が……あっ、擦れて、ああ……っ!し、痺れて、きます……っ!」
「これで根を上げては、わしの物が入らんぞ」


 腹の底から滲んでくる快感に、クライヴが涙を浮かべて訴えるのを、意地悪く返してやる。
すると、それは厭だ、とでも言うように、秘奥が指をきゅうぅっと締め付けた。

 絡みつく肉を解くように、指先を振ると、中で蠢く肉が擦れて、クライヴが泣きの入った声を上げる。


「んんんっ……!父、上……父上の……あっ、中に、欲しいです……っ!」
「ならば、もうしばらく耐えねばな」
「はあ、ふぅ、うぅん……っ!」


 エルウィンの言葉に、クライヴの秘部がまた締め付けを見せた。
早く、と我儘を訴えるようにも、父の言いつけに応えようとするいじらしさにも見える。
どちらであっても、エルウィンにとっては、いやらしく愛らしいものであった。

 指による丹念なマッサージを受けて、クライヴの淫部は段々と柔らかくなって行った。
内側を掻き撫ぜる度に、くちゅくちゅと腸液が音を立て、クライヴの性のシンボルからとろりと蜜が溢れ出す。


「あっ、あぁ……っは、うぅ、ん……っ」


 クライヴは自身の奥が疼く感覚を、懸命に堪えている。
一度は熱を吐き出したクライヴの雄は、既にすっかり頭を起こしていた。


「父上……もう、大丈夫、です……んんっ」
「もう少しだ、クライヴ」
「はっ、あぁっ、うあ……っ!」


 ぐちゅ、と奥園を指先でぐっと押し上げてやると、クライヴの腰がビクビクと戦慄いた。
涙を浮かべたクライヴの視界は、暗い天井を見上げながら、ちかちかと白熱している。
半開きになった唇の隙間から、濡れた舌がふるふると震えているのが見えた。

 クライヴが最も感じ入ることの出来る、最奥の壁をぐにゅっと引っ掻く。
クライヴは「あぁっ!」と甲高い声を上げて、体を大きく仰け反らせた。
逃げを打つ体を抱き寄せてしかと捕まえ、秘穴の奥に突き入れた指で、中を激しく掻き回せば、クライヴは父の体に身を預けながら、強張らせた体を甘美に悶えさせる。


「はあ、ああっ、父上……父上……っ!お願いです、もう、もうご慈悲を……っ!」


 唯一の存在に与えられる官能と、指では足りないと言う浅ましい願望に打ちひしがれて、クライヴが赦しを請う。
秘奥がきゅうっきゅうっと不規則なリズムで締め付けを繰り返し、肉壺がしゃぶるようにエルウィンの指に縋った。

 吸い付いて離れない媚肉の感触を味わいながら、エルウィンは指を引き抜いた。
ずりゅっ、と肉を引っ掻きながら出て行った指に、クライヴは言葉を失って四肢を撓らせる。


「ああぁぁ……っ!」


 快感と、それが逃げたと言う喪失感と、クライヴはあえかな声を上げて寂しさに身内を濡らす。
小さな尻がヒクッヒクッと弾み、揺れる腰の動きで、反り返った父の一物を谷間に擦り付けた。


「父上、父上ぇ……っ!」
「ああ、挿れてやろう。足を開きなさい」


 エルウィンの言葉に、クライヴは当然に従った。
エルウィンの膝を跨いでいた足を、より大きく割り開いて、尻穴を勃起した雄に宛がう。

 青がじっとエルウィンを見つめ、此処から先の許可を求めた。
エルウィンはそんなクライヴの臀部をゆったりと手のひらで撫でてから、引き締まった少年の腰を掴む。
クライヴの喉がこくりと音を鳴らした後、ぐ、と細い腰を下へと引き下ろし、


「あ、あ……!あああぁぁ……!」


 ずぷ、ぬぷぷぷ、と入って行く太く逞しい熱棒の感触に、クライヴは甘く爛れた声を上げていた。
父の肩に縋り捕まりながら、半月ぶりに味わう雄の存在感に酔い痴れる。


「ああ、父上……父上が、俺の、中にぃ……っ!」


 言葉を正すことを忘れ始めた息子に、エルウィンの口端に笑みが浮かぶ。
大公嫡男として、フェニックスのドミナントの騎士となろうと、自分自身を常に律するクライヴが、他の誰にも見せることのない顔。
未熟な体が熱に犯され、目の前にある快楽を、それを与える男に縋ることしか出来ない、理屈も建前もかなぐり捨てた息子の姿が、エルウィンをどうしようもなく興奮させ、充足させる。

 父を受け入れた媚肉が、その形に馴染む間を待たず、エルウィンはクライヴの体を揺さぶり始めた。
しがみつく体を下から突き上げる度、クライヴの唇からはあられもない声が漏れる。


「あっ、あぁっ、あはぁ……っ!」
「中が濡れて、よく滑る。心地良いぞ、クライヴ」
「は、はい、父上……あっ、あぁっ、うぅんっ!」


 耳元で囁かれる父の言葉に、クライヴは嬉しそうに応えた。
縋る体を抱き寄せ、乱れかけている黒髪を撫でると、肉を咥えた秘孔の奥から、とろりと蜜が溢れ出した。

 エルウィンが腰を突き浮かせる度、クライヴは奥までエルウィンを受け入れ、悦んだ。
昏い愛情に飢えた身体は、触れる父親がくれる熱を余すところなく受け止めようと努めている。
クライヴはエルウィンの首に腕を絡め、恋縋るように密着しながら、律動のリズムに合わせて、自らも腰を上下に揺らし始めた。


「はあ、ああっ、深い……んくぅっ!父上、父上……!」
「わしを見なさい、クライヴ。その貌をよく見せてみろ」
「あっ、あぁっ、駄目です……俺、ひどい顔をして……んぁっ、あっ、あぁっ!」


 恥ずかしがって顔を背けようとするクライヴだったが、秘奥を強く突き上げられて、堪らず体が仰け反った。
上向きに反る背中をエルウィンの腕が抱き捕まえて、二人の顔がより近くなる。

 目を反らすことも出来ない距離で、エルウィンは息子の蕩けた面を見つめる。
父子が互いの顔を見るのに、これほどに近い距離になれるのは、この時しかない。
クライヴは、いつも玉座から自分を見ている父の目に、濡れた舌を晒した自分の顔が映っているのを見て、言い様もないほどに羞恥心に襲われた。


「あああ……父上ぇ……っ!」


 赤らめた顔を涙に濡らしながら、クライヴはエルウィンの雄を締め付ける。
入り口は狭く、奥に行くに従って柔らかく蕩けた肉壺が甘える感触に、エルウィンの熱も大きく膨らんで行った。


「父上の……俺の、俺の中で……っ、大きくなって……あっ、あっ」
「お前の中が随分と心地が良いからな。このまま果ててしまいそうだ」
「はあ、はあ、父上……父上……っ!」
「お前はどうだ?クライヴ……」


 クライヴの耳の裏を、エルウィンの指が擽る。
ぞくぞくとしたものがクライヴの耳から首の後ろへと伝わって、その様を伝えるように、媚肉が小刻みに震えながらエルウィンに吸い付いた。


「きもち、いいです……父上が、俺の中を、擦って、あぁ……っ!奥に、父上がいるのが……気持ち良いです……うぅんっ!」


 胎内に納めた父の温もりだけに身を委ねて、与えられる快感の心地良さは、クライヴと言う少年にとってあまりにも甘美で優しかった。
普段、真っ直ぐに背中を伸ばし続けなければ認められない立場にいることを知っている少年は、その実、優しくされることに飢えている。
張り詰めた糸はすっかり弛緩し、意識もぐずぐずに溶けて良いのだと言う、この時だけに許される解放感は、甘い毒とよく似ていた。

 それを与えることが出来る唯一の存在が、自分だと言うことが、エルウィンの昏い充実感を満たして行く。
自分と同じ只人で、それ以上に高潔であることを課された少年に、忘れ得ない楔を打ち込む。
この歓びがどれ程に深い罪だろうと、最早手放せるものではなくなっていた。

 クライヴの躰は官能にすっかり花開き、エルウィンの雄を根本まで食んでいる。
奥園の壁を先端でごつごつと打ってやれば、クライヴは目を瞬かせながら涙を零した。


「あっ、あっ、あっ!父上、奥に、奥に当たって……!」
「良いだろう?此処がお前が最も感じる場所だ」
「は、はぁ、ああぁっ!いあっ、あっ、ひぃんっ……!んぁっ、あっ、あぁっ、あぁあ……!」


 全身を汗で濡らし、悩ましい性の匂いを振り撒きながら、クライヴは秘奥を突き上げられる快感に身を震わせる。
彼の中心部は、奥を抉られる度に先走りの蜜を零していた。
既に我慢することも出来なくなって、滴り落ちた雫が、エルウィンの腹を濡らしている。


「父上っ……もう、無理です……っ!また、またイく……っあぁ!」
「ああ。わしも、お前の中に注いでやろう」
「ふっ、ふぅっ、うぅん……っ!ちちう、え……っ!」


 中にエルウィンの熱を貰えると聞いて、クライヴの躰が燃え上がるように劣情を弾けさせた。
早く中に注いで欲しいと、彼の内側が艶めかしくうねり、咥え込んだ雄を隙間なく食んでいく。

 エルウィンはクライヴの両膝に腕を差し込み、掬い上げた。
体の重心がぶれて傾いたクライヴの躰が、エルウィンに捕まって縋る。
しがみついて来るクライヴを正面に受け止めながら、エルウィンはクライヴの秘奥を掻き回した。


「ああ、イく、イく……っ!父上、父上ぇっ!」
「ふぅっ、ふぅ、ぬぅぅ……っ!」


 内側から分泌された愛液で、クライヴの中は何処も彼処も濡れていた。
ぐちゅぐちゅと淫音が絶えず部屋の壁に反響して、クライヴの下肢は自身の蜜と腸液とでどろどろに汚れている。
それ程濡れた媚肉が、艶めかしく絡みついて来るものだから、エルウィンもまた限界を近く感じていた。

 どくん、どくん、とクライヴの胎内で、太い雄が脈を打つ。
来る───とクライヴが身構える余裕もなく、どぷぷぷっ、と濃い白濁液が少年の胎内に打ち注がれた。


「ああぁぁっ!父、上……ああっ、熱いぃい……っ!!」


 眉根を寄せ、歯を食いしばるエルウィンの耳元で、クライヴのあられもない声が上がる。


「く、……クライヴ……っ!」
「あっ、ひぃっ、あぁああ……!イ、く、うぅんんっ!」


 エルウィンの熱を最奥へと注ぎ込まれながら、クライヴもまた、二度目の気を遣った。
まっすぐに天井を向いていたクライヴの雄から、びゅうぅぅっ、と噴くように熱芯が溢れ出す。

 絶頂によってクライヴの肉壺はより強く締まりを見せ、射精したばかりのエルウィンの雄に吸い付いた。
久しぶりに頂くことが出来た慈悲への悦びに、クライヴの躰はより貪欲になり、うねうねと脈打って熱を搾り取ろうとしている。
それに促されるままに、エルウィンはクライヴの中へと、自身の欲望を注ぎ続けた。


「んんっ、ああっ……!はくぅう……っ!」


 クライヴはくねくねとしどけなく身を捩り、熱の感触を味わっている。
エルウィンの腕に抱えられ、大きく広げられた両足が、太腿を強張らせながらビクビクと震えていた。

 エルウィンが熱の沸騰から戻った時、クライヴの躰は未だ余韻の中にあった。
肉壺の中は雄をきゅうきゅうと締め付け続け、中に注がれたものを離すまいとするかのように、入り口は隙間もない。
全身は火照りに赤らんで、血流の良さに促されたか、胸の蕾が両方とも存在を主張するように膨らんでいた。
それに誘われて乳首の片方を吸ってやると、クライヴはビクッと躰を戦慄かせ、秘奥に咥えた雄をねっとりと舐めた。


「は、ぅ……っあ……あぁ……っ」


 半開きになったクライヴの唇から、意味を成さない音の断片が漏れる。
意識半分と言った具合の躰を、エルウィンはゆるゆると手のひらで撫でてあやした。
だが、そうして愛撫してやれば、官能の海に溺れた身体は、当然に再び熱を宿していく。


「ん、あ、んん……っ、父上……あ……っ」
「まだ足りないか?」
「……っは……ああ……っあ……っ」


 するすると胸の上を滑る手に、腰を撫でて臀部の形を確かめる手。
敏感になった体は、当たり前にその愛撫に反応を示し、クライヴの中心部がピクピクと震えて頭を持ち上げる。
理性があれば、そんな自分の躰に、クライヴは頬を赤らめ目を反らしたのだろうが、


「父、上……」


 クライヴは顔を上げると、すぐ其処にある父の顔を真っ直ぐに見つめた。
澄んだ青色が、涙と劣情に濡れて、慈悲を求めて雄を求める。
そうして、自分だけを無心に求める少年の姿が、エルウィンは堪らなく気に入っていた。


「……良いだろう。半月ぶりだ、お前も随分と堪えただろう」
「っは……はい……父上……」


 黒髪を撫でながら囁けば、クライヴは嬉しそうに頬を綻ばせた。

 エルウィンはクライヴの秘部を貫いていた自身を、ゆっくりと抜いた。
最奥から入り口に向かって、媚肉が膨らみに擦られていく感触に、クライヴは唇を噛んで耐える。
最後の入り口を潜る瞬間、喪失を嫌って穴口がきゅうと締め付けて来たが、それも振り切ってようやく抜いた。


「あ……、あぁ……ん……っ」


 クライヴは悩まし気な声を漏らしながら、侘しさの募る下肢に手を遣る。
ヒクヒクと伸縮を繰り返す秘穴から、注ぎ込まれた精がこぷりと溢れ出す感触に、クライヴは顔を赤らめながら眉根を寄せた。


「父上……父上の、子種が……出る、んん……っ」


 寂しい、と涙を浮かべるクライヴに、エルウィンはうっそりと笑みを浮かべて、その身体を抱き寄せた。


「そう泣くな、クライヴ。今宵はまだ終わってはおらん」
「あ……」


 エルウィンの言葉に、クライヴの瞳に、喜びの感情が燈る。

 エルウィンはクライヴを連れて、ベッドへと場所を移す。
部屋の主の不在の間、使われることなく綺麗に整えられていたベッドが、二人分の体重を受けて軋む音を立て始めた。




 睡眠に沈んでいた意識が、緩やかな覚醒へと向かい始める頃に、エルウィンは傍らに身動ぎの気配を感じた。
聊か重い感覚のある意識を、それでも目覚めへと持って行く。
目を開けた時には、もうベッドは静かになっていて、黒髪の少年がベッド横で身支度を整えている所だった。


「───クライヴ」


 名前を呼べば、少年───クライヴの名を呼ぶと、青の瞳が此方を向いた。

 クライヴは、父が目を覚ましていることに気付くと、寝乱れた後を残す髪を手櫛に直しながら、


「おはようございます、父上」
「ああ」


 クライヴの表情は、いつも通りの凛としたものだった。
昨晩、父の手管に乱れ溶かされ、甘く鳴いていた姿とは似つかない。
それでも、少しばかり目端に赤らんだ痕があることが、昨夜の出来事は夢想の類でなく事実であることを、明確に示している。

 エルウィンが起き上がる間に、クライヴは衣服の乱れを整えた。
カーテンの隙間からは、まだ朝ぼらけの内であることが伺えるが、騎士見習いは今の内からやるべきことがあった。
彼は、大公である父よりも、遥かに忙しく働き者なのだ。

 だから呼び止めている暇も既に惜しいと言うことは判っていたが、エルウィンはクライヴを袂へと呼んだ。


「クライヴ。此方へ」
「はい」


 クライヴは一瞬ちらと外を気にしたが、直ぐにエルウィンの下へと近付いた。

 エルウィンは、息子の涙と熱の痕を残した眦に、手を伸ばした。
指先が目尻を辿って、少し癖を残した状態の黒髪を撫で、その頭を抱き寄せる。
そうされるとは思っていなかったのだろう、クライヴは驚いた顔をして、エルウィンの胸へと飛び込む形になった。


「父上?」


 どうしたのだろう、と名を呼ぶクライヴに、エルウィンは答えなかった。
代わりに、昨夜も変わらず、身に着けていたカフスのある耳朶に指を滑らせると、ビクッ、とクライヴの肩が弾む。

 そのまま触れ続けていても、クライヴは逃げなかった。
戸惑いからか始めは強張っていた体からも、徐々にその力が抜けて、いつの間にかエルウィンに甘えるように寄り掛かっている。
右手が少しの間彷徨った後、そろりと父の腕に重ねられたのを見て、エルウィンの口端に笑みが浮かぶ。


「クライヴ」
「はい」
「今夜も、此処へ来なさい」


 エルウィンのその言葉に、クライヴの瞳が微かに見開かれる。
どうして、と問うと同時に、良いのだろうか、と期待と不安が混ざっているのが見て取れた。

 エルウィンの指は、クライヴの耳から頬へと滑り、目尻へと。
そして頬を辿って、昨晩、献身的な働きをした唇へと触れた。


「良いな、クライヴ」
「……はい、父上」


 真っ直ぐに、逸らすことを許さない父の目に見つめられて、クライヴは昨夜の名残が燻ぶるのを感じながら、頷いていた。





積極的にご奉仕する15歳クライヴが見たくて。
15歳のクライヴは真面目に日々を頑張ってて、周囲からもその努力を認められて、兵士には随分慕われているとは思うのですが、現代リアルでいう子供っぽさやそう言う褒められ方というのはあまりされてなさそうだな、と。
そんな息子に良くない執着心を持ちつつ、自分にだけ人知れず依存させていく父上とか良いなって。私が思いました。