Mスポット・フローレス


 遊んでいるつもりはなかったが、傍目に見れば、そう言う風に呼ばれても否定し辛い人生であった事は、少なからず自覚がある。

 来るもの拒まず、去る者追わず。
バッツの人付き合いと言うのはそう括るのがよく当て嵌まる。
友人関係はそれで充分だったのだろうが、恋愛関係までそれが及んでいるので、恋人は取っ換え引っ掻えになった。
その内、バッツから告白したのは一度もない。
人生を始めまで遡れば、幼稚園の担任にバッツの方から花を持って「すき!」「けっこんしよう!」と言った事はあったけれど、今となっては記憶も曖昧な幼い思い出話でしかない。

 友人から、会う度に違う人と付き合っているねと言われたのは、大学一年生の時。
その時はそうだっけと首を傾げて見せたバッツであったが、思い返して、確かにそうだと思った。
が、それで長く培ってきた人との付き合い方に問題があるとも思わず、ただ結果としてそう言う風になっているだけだとも思ったから、相変わらずバッツの恋人は頻繁に変わっていた。

 バッツはモテていた。
多い時には月に一度は告白されて、それと同じ数だけ振られた。
バッツの方から振ったのは、その時恋人がいるからと言う理由がついている期間だけで、別れの類は全て女性の方から告げられる。
言われた時のバッツは、「そっか」とだけ言って受け入れた。
何人か物言いたげな顔をして去って行った女性もいたのを覚えているが、引き留めて欲しかったのかも知れないと思いはしても、バッツはそれをしなかった。
別れを切り出したのはあちらだし、明け透けに言ってしまえば、バッツの方から彼女を引き留めたいと思う程、心を傾けていなかったのも事実であった。

 そんな調子なのに、別れてから一週間もすれば、また告白を貰う。
断る理由がないので受け取って、新しい恋人が出来る。
そんな日々を送っているのを見た友人から、いつか刺されるんじゃないか、と言われた事もあった。
幸い、そう言う事には、今の所はなっていない。

 恋人は三ヵ月も続けば長い方だ。
基本的にバッツは自由人な所があって、一所に留まるのが苦手である。
幼い頃から、思い立ったが吉日と遠くに出掛けて、遅くまで帰って来ない事があった。
子供の頃から、幼い脚で行くには遠いと思われる隣町まで探検に行っていたバッツは、中学生の時には自転車で、高校生になるとバイクであちこちへ向かうようになる。
その衝動は彼の心の奥底、深い部分からのもので、他人に止められるようなものではない。
そんな理由で唐突にいなくなるバッツを、友達はいつもの奴だなと言って笑っていたが、恋人となるとそうは行かなかった。
デートの約束をすっかり忘れて、三県向こうの街まで一人で行ったりしたのは、流石にバッツも悪かったとは思ったが。
お怒りの電話やメールでやっとその事を思い出し、ごめんよと謝るものの、初めはそれで許してくれた女性でも、仏の顔も三度までと言う奴だ。
電話越しにさようならも言われたし、次に会った時に人目憚らずビンタをくれた人もいる。
───と、この辺りはバッツの行動に原因がある訳だが、中には「思った人と違った」と言う理由で振られる事もある。
此方については、そんな事言われてもなあ、と思うしかない。
何せバッツは、心の赴くままに行動しているだけだから、他人が思い描いている理想像のようなものを求められる事そのものが、バッツと言う人間に対して無理な話であった。
ちなみに、バッツとの恋人関係は、最長で半年、最短で二時間である。
告白されたその日、大学終わりに放課後に一緒に夕飯を食べた後、「何かが違うと思った」と言う理由でさようならと言われた時は、流石のバッツも開いた口が塞がらなかった。

 軽い男だと思われているんじゃないか、と言われて、バッツは頷きこそしなかったものの、首を横にも振り難かった。
付き合っている人がいれば、その時に貰った告白は丁重に断るようにはしているものの、そう言う相手がいなければ拒まない。
付き合って下さい、と言われて、うんいいよ、の一言で応じてしまうので、確かに軽い。
告白してきた女性が一世一代の顔をしていても、バッツのこの反応は変わらなかった。
真面目そうな女性でも、それとは真逆の女性でも。
バッツにしてみれば、相手の事をよく知らないので、応じる態度を変える意味も理由もなかっただけで、それは相手の出自に拘らない平等で均等な構えの表れだったのだが、そんな事を知っているのは、バッツの事をよく知っている一部の人間のみである。

 約束を忘れて一人旅に出てしまう癖があるバッツだが、彼は彼なりに、恋人に対しては誠実なつもりだ。
授業合間の休憩時間には会いに行くし、会いに来られれば笑顔を見せる。
放課後デートも毎日したいと言われれば、友人たちには断りを入れて応じたし、デートもバッツなりにプランを考えたりもしたものだ。
プランが決まって動物園や水族館な所は、完全にバッツの趣味であったが。

 デートの後の事も含め、リードして欲しいと言う女性であればそうしたし、引っ張って行きたいと言う女性には任せた。
だから、バッツはそこそこ早熟で、経験豊富であると言えた。
生まれて初めて、恋人と呼べる間柄を持ったのは、中学生の時。
それから、高校生になって、バッツ以上に早熟であった女子に、初体験を持っていかれた。
大学生になると、大人の付き合い方と言うものも増えて来て、一夜限りの関係と言う奴もある。
その都度、相手を満足させるようにと努めてはいた。
その甲斐があったかは判らないが、今の所、関係を持った女性から恨み辛みをぶつけられた事はない。

 バッツはバッツなりに、女性に対して誠実にして来たつもりだ。
だが、今目の前にいる人を特別に大切にしようとした事はないのではないか、と友人から言われた時には、ぐうの音も出なかった。
告白されたから付き合って、求められたから応じて、別れたいと言われたので別れる。
パートナーに対し、バッツの方から何かを激しく求めた事がないのだ。
人の機微には聡いので、相手の求めているものを先に感じ取る事が出来るから、人との付き合いにおいて大きく角が立つ事は少ないが、それによって引き出されるバッツの行動と言うのは、主体が全て相手側に在るのだ。
バッツ自身の内側から、他者に求めるものがない。
それを“恋人”は感じ取り、別れるに至るのではないか、と友人たちは分析する。

 でも仕方がないではないか。
バッツの心はバッツのもので、その内側から溢れるものを抑える事が出来ないように、其処に存在しないものを存在するかのように振る舞う事は難しい。
ついでに、その事を自分で問題と思ってもいないから、バッツの心は相変わらず彼自身のものであった。

 ────一年前の夏、友達の友達の友達伝いに紹介された、彼女と出逢うまでは。





 大学三年生のバッツは、都心の小さなアパートで独り暮らしをしている。
幼少の頃に母を、高校生の時に父を亡くしたバッツは、奨学金を使って大学へと進み、アルバイトをしながら日々を恙なく過ごしていた。

 バッツのアルバイトは、殆どが平日の夜に詰め込まれており、その隙間を縫って時折日雇いの仕事を入れる。
仕事の種類は選ばないので、それなりに高額の収入も貰う事が出来ており、生活しながら先を見据えた貯蓄も少なからず回せるようになっている。
以前は土日を丸々当てたアルバイトもしていたので、数字だけで言えばもっと収入があった時期もあるのだが、今のバッツはその二日間だけは必ず休みにしていた。

 一見すると、詰め込み過ぎなアルバイトの日々を休む為に土日を空けていると思われる(それも間違いではないが)のだが、バッツが休みを取る一番の理由は、昨年の冬から付き合い始めた恋人の為だった。
三歳年下の恋人はまだ高校生で、平日の日中は授業、放課後は夜遅くまで開いている進学塾に行っている。
更には父子二人暮らしの生活である為、家事全般を引き受けているのだそうだ。
バッツよりも余程忙しい彼女を邪魔しない為に、平日はバッツ自身の気を紛らわせる目的もあって、アルバイトを入れているのだ。
その代わり、土日は塾はないそうなので、それなら会いたい、一緒に過ごしたいと言うバッツに応じる形で、彼女はバッツの下を訪れる。
その為にバッツは土日を空けていた。

 そして、待ちに待った土曜日の朝、バッツはいそいそと部屋を掃除していた。
平日は学業とアルバイトに専念しているので、家と言うのは殆ど寝る為に帰るだけなので、然程散らかってはいない。
しかし、今日は彼女が家に来る。
彼女は真面目な性格も相俟ってか、綺麗好きにも見えるので、だらしない所は少しでも減らして置きたかった。
脱ぎっぱなしの服は洗濯機に纏めて放り込んで、乾燥までセットして回す。
ごうんごうんと言うドラムの回る音は少々煩いが、これで放ったらかしにしても問題ないので、彼女と過ごす時間に集中できるだろう。

 簡単な昼食の傍ら、冷蔵庫の中を覗き込む。
今夜と明日の朝食、昼食分まで、材料に出来そうなものは一通り揃っていた。
これなら急いで買い足しに行く必要もないだろう───と考えてから、一番確認しなければいけないものを忘れていたと思い出す。

 バッツは、パンを齧りながら寝室に入り、ベッド横に置いたサイドチェストの引き出しを開けた。
以前は読みかけの漫画や携帯ゲーム機を置いているだけだった其処に、今は欠かさずストックしているものがある。
掌サイズの箱を開けたバッツは、中身の数を確認して、よしよしと元の位置に戻した。

 玄関の少し音が外れたチャイムが鳴ったのは、その時だ。
来た来たと玄関に向かうバッツの足が弾む。
覗き穴を見るまでもなく、バッツは玄関の鍵を開け、ドアノブを回した。


「スコール!」


 開き扉を開ければ、こんな安普請なアパートに不似合いな程、整った面立ちをした少女が立っている。
黒を基調にした服に、タイトなパンツのマニッシュスタイルがよく似合う少女の名は、スコール・レオンハート。
昨年の冬から数えて約十ヵ月が経つ、バッツ最愛の恋人である。

 大きな声で名を呼ばれ、恥ずかしそうに睨むスコールの視線を気にせず、入って入ってとバッツは促した。
スコールは律儀に「お邪魔します」と言って、敷居を跨ぐ。
ブーツの足元がコツンと音を立てた。


「昼飯は?食った?」
「食べてきた。電車、混んでて疲れたから……ちょっと休みたい」
「うんうん。今日はのんびりして良いからな。買い物も行かなくて良いと思うし」


 框を上がるスコールの言葉に、バッツは頷きながら返す。
スコールはテレビ前のソファに腰を下ろし、ふう、と一息吐いて肩の力を抜く。

 人混みが嫌いなスコールにとって、土日と言うのは余り出掛けるものではない、と言うのが常であった。
しかし、恋人となったバッツと一緒に過ごせる時間は厭ってはいないようで、バッツがデートに誘うと、都合がつく限りは応じてくれる。
バッツが決まって連れて行く動物園や水族館も、彼女はついて来てくれたし、存外と夢中になって動物を眺め、バッツの蘊蓄も聞いてくれた。
そんなデートも悪くはないのだが、やはり元々がインドアな性質なので、出掛けるよりも家の中で過ごす方が好きらしい。

 バッツが隣に腰を下ろすと、普段は同じ目線の高さにあるスコールの視線が、少しだけ低い位置から見上げて来る。
身長は同じ位なのになあ、とバッツはすらりと伸びた細い脚を覗き見た。

 スコールはコーヒーテーブルに置いていたリモコンを取り、テレビの電源を入れる。
すっかり勝手知ったる他人の家と過ごしてくれる彼女に、随分と慣れてくれたなあとバッツは思った。
その肩にそっと腕を回してみると、気付いた様子のスコールが僅かに身を固くしたのが判った。
驚かせないように、バッツがゆっくりとスコールの肩に手を置くと、彼女はちらりとその手を見遣ってから、


「……」


 蒼の瞳がバッツを見る。
じ、と此方の様子を伺っているスコールに、バッツはいつものように笑いかけた。
それもまたスコールは戸惑うような表情を浮かべた後、ようやく体の力を抜いて、とすん、とバッツの方へと身を寄せる。

 テレビでは最近の流行だと言う喫茶店の特集が流れていた。
スコールは何も言わずにじっとそれを見詰めている。
バッツがスコールの頭に頬を摺り寄せていると、擽ったそうにスコールが目を細めた。



 全国的にも有名な私立の女子高に通うスコールは、平凡な家庭の育ち、今は天涯孤独となったバッツとは、とても繋がるような相手ではなかったのだが、友人関係とは面白いものである。
バッツの友人であるクラウドとセシルから、その共通の友人のフリオニール、そのまた友人のティーダと交流が拡がり、ティーダの幼馴染として彼女───スコール・レオンハートはバッツと出遭ってしまった。

 濃茶色の髪と、透けるように白い肌、長い睫毛、高い鼻、ピンク色の小さな唇。
随分と目立つ所にあるな、とついつい引き込まれてしまう額の傷の傍ら、憂いを孕んだ潤いを帯びた蒼い双眸を見た瞬間、バッツは雷に打たれた。
生まれて間もない子猫のそれとよく似たブルーグレイは、常に不機嫌そうに冷たい色を宿していたが、ティーダが話しかけると、存外とお喋りにその赴きを変えた。
言葉少なな彼女に、口の代わりに瞳がお喋りなんだとバッツが気付くまでに、そう時間はかからなかった。

 幼馴染に対し、中々に辛辣に物を言ってくれる彼女は、バッツに対しても厳しかった。
初めて出会った時、学校帰りだったスコールは、制服をきっちりと乱れなく着こなしていた。
だから生真面目な性格である事はバッツも予想していたし、そんな彼女が、心のままに自由に振る舞うバッツに対し、顰めた顔をしていた事も理解している。
それでもバッツは止まらなかった。

 生まれて初めての一目惚れをしたバッツは、赴くままに、気持ちのままに、スコールにその気持ちを伝えた。
好き、と言う言葉は勿論、付き合って欲しい、恋人になって欲しいとも。
当然スコールは混乱していたし、なんであんたなんかと、と言われた事もある。
余りにしつこく迫るものだから、ティーダ越しに「あいつが苦手」「会いたくない」と言われていた事もある程だ。
ティーダも幼馴染の気難しさと、バッツの自由人ぶりを共通の友人(の友人)から聞いていたので、スコールとは到底合わない───少なくとも、スコールがバッツを許容できないだろうと思っていたらしい。
ティーダの方から「ちょっとスコールと距離置いてやって欲しいっス」と言われた事もある。
その時は、確かに彼女のペースも考えてなかった、と少し冷静になったバッツであったが、やはり心の奥底から求める彼女への気持ちは抑え難い。
しかし、スコールに嫌われてしまっては元も子もないと、溢れる気持ちを堪えて過ごすようになった。
その傍ら、出来るだけ彼女を困らせないように、迷惑にならないようにと、“スコールの為に”自分が出来ることを考えた。

 バッツとスコールが初めて出会ったのが、去年の夏の入り口の頃。
それから約半年をかけて、バッツは少しずつスコールに自分の存在を受け入れて貰った。
そして夏を終え、秋を越え、真冬のクリスマスに、バッツはアルバイト尽くしだった日々の中で、意図的に休みを取り、スコールに改めて告白した。
良かったら宜しくお願いします、なんて言葉は、生まれて初めて自分から口にした。
告白するのってこんなに怖い事だったんだなあ、と今まで自分が付き合ってきた女性が、どれ程の気持ちでこの言葉を口にしていたのか、バッツは初めて知ったのだ。
そして、真っ赤な顔で小さく頷いてくれた彼女を見て、好きで好きで焦がれた人に自分を受け入れて貰える事が、こんなに嬉しい事だったんだと知った。

 スコールと恋人同士になれた時、この世の春が来たとバッツは思った。
もう何が起きたって自分は幸せだと言える、それ位に嬉しかった。
────だが、それからもバッツは喜びと葛藤の日々だ。

 勉学と日々の生活で忙しいスコールは、自由な時間が限られる。
バッツもバッツで、日々のアルバイトの有無は死活問題であるから、此方もそれなりにフリータイムは絞られた。
だからバッツは土日を空けるように意識するようになったのだ。

 こうして二人が会える時間は設けられるようになったが、次は男ならありがちな性の問題である。
バッツがこれまで付き合った女性と言うのは、多くが同級生か先輩、若しくはもう少し年上と言う傾向が強く、年下の恋人はスコールが初めてだった。
それも、まだ高校生で、更にはスコール自身が恋人を持ったのがバッツが初めてとのこと。
勿論、大人な関係と言うのも彼女にとっては未知のもので、精々が保健体育の授業か、少々刺激的なメディア作品(それも彼女は余り興味がないようだった)に触れた事がある程度。
異性の裸と言ったら、同居している父親と、幼い頃から親交があって家族ぐるみの付き合いをしているティーダ(それも幼い頃の話)位のもの。

 女性にとって愛情と性欲は別物らしいが、男はそうではない。
好きなら抱きたい、好きだからこそ抱きたい。
バッツはスコールを好きになる程、彼女に対して劣情を覚えた。
だが、スコールを怖がらせる事はしたくない。
スコールは異性交遊は勿論の事、恋人と言うものを初めて持った訳で、更には人との交流自体が得意ではないようだったから、バッツのペースで事を進める訳には行かなかった。

 手を繋ぐ事さえ恥ずかしさで嫌がっていたスコール。
バッツはそんな彼女を、少しずつ少しずつ、自分の体温に触れさせて慣れて貰った。
その甲斐あって、友人たちから散々心配された、「付き合ってから三ヵ月が別れの節目」なんて時を過ぎ、その頃にはスコールの方から手繋ぎをねだってくれるようになった。
恥ずかしがり屋なので、人目のない時限定ではあるが、それだってかなりの進歩だ。
そして、付き合い始めてから半年が過ぎた頃に、唇にキスをした。

 バッツは出来る限り、スコールにペースを合わせるように務めた。
赴くままに生きてきたバッツにとって、それは中々に労のいる事だったが、その甲斐はあった。
バッツがずっとスコールを大事にしていたから、スコールもバッツに安心して身を委ねてくれるようになったし、他人の体温を苦手としているスコールが、バッツに対しては素直に甘えてくれる。
────目の前にいる人を大切にするって、こう言う事なんだなあ、とバッツは知った。

 二人が初めてキスをしてから、もう少し経って、バッツはスコールを抱いた。
誘って来たのはスコールの方だ。
性的な事に興味が薄いとは言え、付き合うとなればそう言う事もあると、彼女もちゃんと理解していた。
ついでに、幼馴染伝いで知り合った面々から色々忠告もされていたようで、いつその日が来るかと随分と気にしていたそうだ。
それなのにバッツが一向に手を出してこないから、自分に女としての魅力がないのか、子供扱いなのか、将又好きだと言っているけれど本当は揶揄っているだけなのでは───とまで思っていたそうだ。
それを聞いたバッツが慌てて否定すると、じゃあ、とスコールは赤い顔でバッツを誘った。
経験がないのに無理をしてるなあ、とバッツは思ったが、スコールから自分を求めてくれた事は嬉しかったし、本音ではそろそろ限界でもあった。
求める彼女を拒否する理由が何処にもなくて、バッツはその日、スコールの“初めて”を貰った。

 その日から、二人は毎週のように熱を共有している。
その為のバッツの土日休みと言っても良いかも知れない。
それだけをしている訳でもないけれど、心の奥でそれを期待しているのは否定できなかった。
だからチェストの中にあるものを、バッツは欠かさず確認している。

 今夜もまた、バッツとスコールはベッドの上で触れ合いを始めていた。
初めてのあの夜から、既に片手で足りない程に肌を重ねた二人だが、始まる前のスコールが緊張している様子なのは変わらない。
日中のボーイッシュさを感じさせる服装とは打って変わって、白のシンプルなレースで飾られたキャミソールとショーツのみを身にまとい、ほんのりと肌を赤らめて、バッツが自分に触れる手をじっと目で追っているスコール。
初心なその姿が愛らしくて、バッツはこのままでいても良いなと思いながら、風呂上がりの柔らかいシャンプーの香りのするスコールの項に顔を寄せる。


「ん……バ、ッツ……」


 くすぐったい、と呟くスコールに、バッツもくすりと笑みを漏らしつつ、項にキスをした。
ちゅ、と軽く吸ってやると、スコールの
細い肩がぴくりと震える。
その肩を抱いてベッドシーツに彼女の体を倒そうとして、


「バッツ、ちょっと……」


 待ってくれ、とバッツの胸を押すスコールの手。
おや、とバッツがスコールの肩を押す力を緩めると、スコールは覆い被さろうとしている男の下から抜け出した。
お預けかなあ、とそれも詮無いと思いつつ、でもそれなら先に言ってくれるようなあとバッツが考えていると、


「バッツ。話があるんだ」
「ん。何?」


 本当は、そんなの後で良いから、と言いたい気持ちを堪えて、バッツはスコールに続きを促した。
スコールは少しばつの悪そうな表情を浮かべつつ、その、あの、と言い淀んでから改めて口を開く。


「……俺、いつもベッドを汚すだろう」
「あー、うん、まあ」
「それであんた、終わった後、大変そうで……」


 スコールが言っているのは、セックスの最中、スコールがよく潮を吹いてしまう事だ。
バッツと初めてのセックスをしてから後、肌を重ねる毎に、スコールは吹き易くなっている。
今では躰がその癖を覚えてしまった所もあるようで、イく度に潮吹きしてしまう事もあった。
お陰で終わった後にはベッドがびしょびしょに濡れており、とてもそのまま眠れる状態ではない為、バッツが毎回替えのシーツに交換している。
その間、疲れ切ったスコールは毛布に包まっているしか出来ず、仕方がない事とは言え、バッツに苦労を掛けているようで気が引けていた。

 そんなスコールの言葉に、別に大変でもないけどなあ、とバッツは呟く。
スコールはそれを聞いても、表情の晴れないまま続けた。


「あんたにされるのは、嫌じゃない、けど……俺、すぐにその…漏れる、みたいだから。だから、ちょっと、……今日は……」
「今日は、やめとく?」


 言い詰まるスコールの言葉を、バッツが先んじてみる。
と、スコールは、ふるふると首を横に振った。


「やめ、ない」
「そう?」


 無理しなくて良いぞ、とバッツは言ったが、スコールはまた首を横に振った。
無理をしている訳でもない、と。


「セックスは……す、る。したい」
「うん」
「でも、あんたにされると、俺、また漏らすから……」
(だろうなあ。おれがそうするようにしてるし)


 赤い顔で一所懸命に恥ずかしそうに話すスコールを見ながら、バッツはこっそりとそんな事を考える。
そうとは知らないスコールは、背一杯の勇気で以て、言った。


「今日は俺が、あんたに…する……」
「え。ほんと?」


 スコールの言葉に、バッツは思わず目を丸くする。
信じられないものを見る目をしているバッツに、スコールは沸騰しそうな程に顔を赤くして、小さく頷いた。


「あんたのこと、ちゃんと気持ち良く出来るか、判らないけど……」
「そんなこと。スコールが舐めてくれるの、いつも気持ち良いよ」
「本当か?」
「そりゃもう。おれ、スコールがちんこ舐めてくれるだけで、いつも出ちゃいそうになるし。我慢するの大変なんだぞ」
「………」


 隠しもしないバッツの台詞に、スコールは耳まで朱色に染めながら、「……そう、か」と零す。
その表情が微かに緩み、嬉しそうに目元が窄められるのを見て、バッツは体の奥が熱くなった。

 ここは独り暮らしのバッツの為の部屋だから、何もかもがバッツ用にだけ整えられている。
ベッドは標準のシングルサイズよりもう一回り小さく、広くはない部屋を圧迫しないものになっていた。
しかし、スコールが家に来るようになってから、せめてシングル位にはしようかなぁ、と思っている。

 その小さく狭いベッドに、スコールと二人で座っていると、本当に距離が近い。
スコールは更にその距離を縮めて来て、そうっと顔を近付けて来た。
バッツがじっと待っていると、「……目」とスコールは言った。


(恥ずかしがり屋だなぁ。可愛い)


 睨むように見つめる蒼の気持ちを察して、バッツは目を閉じた。
本当はずっとスコールの綺麗な顔を見ていたいけれど、スコールが目を閉じろと言うならバッツはそうする。
程なく、ちゅ、と頬に柔らかな感触が触れて、二度、三度と繰り返した後、唇が重なった。


「ん……」


 鼻から小さく息を零しながら、スコールは精一杯の愛撫をバッツに贈る。
ちゅ、ちゅ、と小鳥が啄むようにバッツの唇を吸いながら、震える舌がその隙間を掠めた。
バッツにして貰っている事を一所懸命に真似ながら、スコールはバッツに口付けを繰り返す。

 そろそろとスコールの手がバッツの肩に触れた。
細身ではあるが、骨太でしっかりとした体付きをしたバッツの肌の上を、白い手が時々迷いながら滑って行く。
少しくすぐったさを感じながら、バッツはこっそりと目を開けた。
直ぐ目の前に、スコールの長い睫毛がある。
蒼い瞳は瞼の裏に隠れていて、少し苦しそうに眉根が寄せられていた。
こうか、こうか、と確かめるように、吸って舐めてと試すスコールを、バッツはいつも内緒で眺めている。

 バッツの躰を撫でていた手が、腹筋に触れた。
盛り上がる程ではないものの、綺麗にシックスパックに割れた腹を、スコールの指がつつ……と滑って行く。
バッツはその指の動きを追うように、ぞくぞくとした熱が下へ下へと下りて行くのを感じていた。


「……っは……、バッツ……」


 唇を離して、スコールは恋人の名前を呼びながら、そっと中心部に触れた。
トランクス越しの其処は判り易く膨らみ主張している。
スコールはドキドキと高鳴る胸を押し隠しながら───バッツから見ると全く隠せていない顔をしているのだけれど───、下着の中に手を入れる。


「……っわ……」


 指先に触れた感触に、スコールは思わず声を漏らした。
もう固い。
それがバッツが興奮している事を教え、スコールは小さく息を飲む。

 そのまま少しの間硬直したスコールに、バッツは丸くなっている目元を指先で柔く擽ってやった。


「やり方、判る?」
「……た、ぶん……」


 バッツの問いに、スコールは覚束ない様子でそう答えた。


「…漫画で見た、から…」
「どんな漫画?おれも見たい、スコールが読んでるエッチな漫画」
「バカ」
「冗談だって」


 顔を益々赤くして睨むスコールに、バッツはへらりと笑う。
スコールは唇を尖らせてそれを睨んでいたが、それよりも今は、と下肢へと目を遣る。

 バッツの下着の中は、心なしか汗ばんでいた。
其処に納められているものにそっと手を重ねて包み込むと、どくん、どくん、と脈を打っているのが伝わる。

 スコールは恐る恐ると言った様子で、握ったものを扱き始めた。
ゆるゆると緩慢に手首を動かして、様子を伺うようにバッツの顔をちらちらと見ながら、雄に刺激を与えて行く。
その手付きは拙いものだった。
それでも、彼女が自ら触れてくれている事が嬉しくて、バッツの其処はむくむくと膨らんで行く。


(スコールがシコってくれるなんて、夢みたいだな)


 体を重ねるようになってから、彼女にオーラルセックスを強請った事は何度かあるが、手淫をして貰った事はなかった。
それを飛ばして口淫することを教えた自分もどうかと思うが、スコールの方は余りそう言った事へ疑問を持ったことはないようだった。
そもそも彼女はバッツが初めての相手であるから、セックスの何が普通かなんて分からない。
それでもスコールは、バッツがして欲しいなと強請ると、赤い顔をしながら応えてくれるから、本当にいじらしい。

 スコールは出来るだけバッツに痛みを与えないようにと配慮しているようで、握る力はとても緩い。
もうちょっと強く握ってくれても良いんだけど、とバッツは思っているのだが、初めてならこんなものだろう。
今のバッツは、スコールの技巧がどうと言うよりも、彼女が賢明にバッツを昂らせようとしている事に興奮していた。


「……大きくなってきた…」


 手の中の感触が変わりつつあることに気付いて、スコールが呟く。
蒼い瞳がバッツを見上げ、ほう、と熱の籠った吐息を零す。


「…バッツ……」
「ん?」
「………」
「気持ち良いよ」
「……うん」


 恥ずかしそうに、聞きたくても聞けなかったのであろう声を、バッツは先んじて答えた。
スコールが少し安堵したように眦を和らげて、ペニスを握る手に少しだけ力を入れる。
きゅ、と竿が握られる感触が伝わって、バッツの腰がぴくっと反応した。

 しゅこ、しゅこ、しゅこ、と上下に動くスコールの手。
スコールは家事をする為、料理の邪魔にならないように、いつも爪を整えている。
その手が自分の性器に触れ、刺激を与えているなんて、なんだか妙な背徳感が沸いて来る。
それが判り易く興奮にも繋がって、バッツのペニスからはじわじわと我慢汁が滲み出ていた。


「…バッ、ツ……」
「キスして、スコール」
「……ん……」


 ペニスを愛しながら、名前を呼ぶ恋人に、バッツは口付けを強請った。
スコールは雄を愛でる手を止めないように意識しながら、ゆっくりとバッツに顔を近付ける。
ちゅ、と唇が重なると、バッツはスコールの後頭部に手を添えて、より深く繋がれるようにと舌を入れる。


「ん……っ、ん、ん……っ」


 侵入に気付いたスコールがビクッと肩を震わせた。
構わずバッツはスコールの舌を捕らえ、じゅるりと唾液を絡め合わせる。
そのままちゅうちゅうと舌を吸ってやれば、スコールの肩がびくびくと弾んで、彼女の舌の根には痺れるような電流が奔った。


「う、ん……、んむ、んん……っ」
「んん……、んちゅぅう……っ」
「ふぅ、むぅ……っ!」


 バッツの舌に翻弄されて、スコールは直ぐに一杯一杯になってしまう。
ペニスを扱いていた手は止まり、バッツが与える咥内への刺激に合わせて、ビクッ、ビクッ、と震えるばかりとなっていた。

 バッツはたっぷりとスコールの味を堪能して、唇を離した。
ぷは、とようやくの呼吸にスコールが口を大きく開けて、酸素を吸い込んだ後、その頭がぽすんとバッツの肩に落ちた。


「っは……は……、はふ……」
「苦しかった?ごめんな」
「…んん……」


 ふるふる、とスコールが首を横に振る。
顔を赤くして、きっと苦しくない訳ではなかったのだろうが、それでもスコールは許してくれる。
おれって甘やかされてるなあ、と思いつつ、許してくれるスコールが愛しくて、バッツはついつい我儘をしてしまう。


「スコール。ちんちん、舐めてくれる?」
「……うん」


 バッツのおねだりに、スコールはぽうっと頬を赤らめながら頷いた。
舐めて貰うのが気持ち良い、と言ったバッツの言葉を思い出しているのだろう。
スコールはいそいそとバッツの膝下に蹲って、下着の中からよく育った雄を取り出した。


「……おっき……」


 小さく呟いたスコールに、バッツの顔が興奮で緩みそうになる。
ニヤけるとやらしい顔になるから気を付けた方が良い、と言ったのはティーダだったか。
バッツは唇を精一杯に引き締めて堪えるが、スコールはそんな事は知りもせず、頭を起こした雄をまじまじと見つめている。

 独特の匂いを振り撒く一物に、スコールは恐々と顔を近付けて行く。
そうっと伸ばした小さな舌が、つん、と竿に当たった。
それだけで敏感なペニスがぴくっと震えると、スコールは熱いものの温度を確かめるように、つん、つん、と繰り返しつつく。


「ん…ふ……」


 微かな吐息を零しながら、スコールが更に顔を近付ける。
あ、と口を開けて、伸ばされた舌の腹が竿にぺたりと触れ、ぺろ……と舐め上げていく。
裏側の筋の凹みの場所をゆっくりと撫でられて、バッツはぞくぞくとしたものが腰から広がって行くのを感じていた。

 アイスを舐めるように、スコールは丁寧にバッツのペニスを舐めている。
唾液を余す所なく全身に塗すようにと教えたのはバッツだ。
スコールはそれを守って、いつも丁寧に丹念に、亀頭の括れや竿の横まで舐めてくれる。


「っは……はぁ……スコール……っ」
「ん……ん……、んん……?」


 バッツの呼ぶ声を聞いて、スコールが上目遣いでバッツを見る。
小さな舌でちろちろと亀頭を撫でながら見上げて来るスコールに、バッツの鼻の孔が興奮で膨らんだ。


「…バッツ……ん、きもち、いいか……?」
「凄く気持ち良い。な、ここにキスして」


 少し不安そうに尋ねるスコールに答えながら、バッツは鈴口をスコールの口元に寄せる。
スコールは頬を赤らめつつ、ちゅ、と窄めた唇でキスをしてくれた。

 先端から蜜を零している其処に唇を宛がって、スコールはちゅうっと啜った。
苦いものが口の中に入って来て、思わず眉根が寄ったが、ちらと見上げればバッツが赤い顔をして此方を見下ろしている。
褐色の瞳に判り易く熱が灯っているのを見付けて、スコールは少し嬉しくなった。
それをもっと見たくて、ちゅう、ちゅ、と吸いながらキスを繰り返せば、益々汁が溢れ出してくる。

 スコールは耳にかかる横髪を退けながら、そうっと口を開けて、ペニスを咥内へと招き入れる。


「うむ…ぁ……っ」
「っは……!あ……!」


 艶めかしく濡れて温かくなった咥内の感触に、バッツが思わず天井を仰ぐ。
スコールはその気配を感じながら、頭を上下に動かした。


「あむ、あ、ん…っ、はむ、ぅ……っ!」
「はっ、はっ…!スコール、はぁっ、気持ち良い…っ!」


 堪らない様子のバッツの声に、スコールの躰も熱を昂らせていく。
口の中で雄がむくむくと膨らんでいるのを感じて、それを胎内に迎え入れた時の事を想像して、自分の秘部がじわりと濡れるのが判った。

 バッツが仰いでいた視線を下へと戻すと、小さな口が自分の大きな一物を一所懸命にしゃぶっている姿が突き付けられる。
ちゅぽっ、ちゅぽっ、と音を立て、拙いながらに一所懸命に、バッツに気持ち良くなって貰おうと奉仕する少女。
それを見ている間に、バッツの下腹部にどくんどくんと熱が集まり、


「スコール、っは、やっば……!」
「ん、ん……?んん……っ!」


 息を詰まらせるバッツの声は、スコールにはよく聞こえなかったらしい。
きょとんとした瞳がバッツをちらと見上げたが、彼女は直ぐにまたペニスを愛でる。
スコールは背一杯にペニスを食むと、ちゅうう、と強く吸引して、


「う、ううっ!」
「ふぅっ、んんんっ」


 どくっ、どくっ、と陰茎が脈を打った後、びゅるるっ!とスコールの喉奥に濃い蜜液が注ぎ込まれる。
スコールはその感触にビクンッ、ビクンッ、と肩を震わせながら、バッツの精を受け止めた。


「はー……あっ、」
「う、う……、うむぅ……っ」


 射精後の達成感に息を吐いたバッツであったが、直ぐにスコールのことを思い出す。
下肢に突っ伏す格好で蹲っているスコールの躰を起こすと、スコールは苦い味のする口を噤んで、眉間に深い皺を浮かべていた。


「スコール、ほら、ペッして」
「んんぅう……」
「良いから、無理しないの。はい、あーって、口開けて」


 口元に右手を差し出したバッツに、スコールはゆるゆると首を横に振るが、結局は我慢できなかった。
震える唇を開けば、どろりとした白濁液が溢れ出して、スコールの顎とバッツの手を汚していく。

 けほけほと咳き込むスコールを抱き寄せて、バッツは左手でスコールの頭を撫でる。


「気持ち良かったよ、スコール」
「……ん、っふ…でも、のめな、かった……」
「良いよ、気にしなくて」
「でも、ん、のんだら、うれしい、って……」
「いや、まあ、そりゃあ。そうなんだけど、スコールに無理させたくないから、良いよ」
「……こんど、がんばる、から……」
「うんうん。ありがと、スコール」


 あやすバッツに、スコールは少し拗ねた顔をしつつも、小さく頷いた。
口端に零れる唾液混じりの蜜を、バッツはぺろりと舐めてやる。
判り易く苦い味がして、これをスコールは飲んでくれようとしてるんだなあ、と思うと、自分は本当に彼女から愛されているのだと実感する。

 それだけスコールがバッツを愛そうと頑張ってくれたのだから、今度はバッツの番だ。
バッツはスコールの背中を抱いて、ベッドへと横たえた。
キャミソールの裾が捲れて、可愛らしい下着が覗く。
バッツはそのフロントに手を当てると、じっとりと湿った布地の上から、秘裂をすりすりと摩ってやった。


「あっ、んっ……!バ、ッツ……っ」


 びくっ、びくっ、とスコールの細い体が震える。
逃げを打つのは、快感に慣れない体の条件反射だ。
それでも嫌がっている訳ではないと判っているから、バッツはスコールの腰を抱き寄せながら、筋に宛がった指を上へ下へと擦り動かす。


「は…っ、は……っ、や、あ……っ」


 スコールは膝をもじもじと擦り合わせながら、バッツの指が与える刺激に悶えている。
バッツはそんな少女の首筋に顔を寄せ、白い鎖骨にキスをして、ちゅうっと吸って赤い華を残す。


「あぁ……っ!」


 触れ合うことに不慣れな事もあって、敏感なスコールには、それだけで堪らない刺激になる。
指で擦る秘部から、じゅわりとまた蜜が溢れ出したのを、バッツは薄い布越しに悟った。

 零れる吐息すらも恥ずかしがるように、バッツから顔を背けるスコール。
バッツはそんなスコールの耳朶に舌を這わしながら、薄い布地の内側へと指を侵入させた。
思った通り、ぐっしょりと濡れた柔らかい双丘を撫でつつ、秘裂に直に触れてやると、ひくん、とスコールの躰が震える。
すりすりと指で二、三度撫でた後、微かに緩んだ隙間に指を挿入した。


「あ…んん……っ」


 自分ではないものが侵入してくる違和感に、スコールは眉根を寄せて目を閉じる。
力んだ躰の影響を受けて、バッツの指先がきゅうっと締め付けられた。
バッツと言う男を知ってからも、この身はいつまでも初心さを失わなくて、それがバッツには酷く興奮を誘う。

 強張ったスコールの躰を宥める為、バッツは殊更ゆっくりと、丁寧に、スコールの秘部を愛撫した。
指先で壁を優しく圧してやる。


「スコール、お口開けて。息吐いて、吸って、」
「ん、あ……っは…はぁ…んん……っ」


 バッツに促され、スコールは意識しながら呼吸する。
小さな口を薄く開けて、はあ、すう、はあ、と繰り返される深呼吸。
バッツがスコールの耳元で、上手、と褒めてやれば、少女の白い頬がほんのりと紅潮した。

 次第にスコールの躰の緊張が解けて行き、バッツの指先に弾力のある軟肉の感触がまざまざと絡み付いて来るようになる。
また奥から蜜が溢れ出しているのを指先に感じながら、バッツは指を動かし始めた。
くちゅ、くちゅ、と小さな水音が聞こえると、スコールの口からは甘い声が零れ出す。


「んっ…あっ……、バッツ……」
「気持ち良い?」


 耳元で問うと、スコールはふるふると首を横に振る。


「良くない?」
「……っ」


 またスコールは首を横に振った。
どう答えるにせよ、それを口にするには、スコールにはまだまだハードルが高いのだ。
そんな少女の仕草に、バッツは彼女の隠せない本音を察しつつ、ほんの少しの悪戯心が沸いて来る。


「此処じゃないなら、こっちかな」
「ぅんっ」


 埋めた指の向きをくるっと変えると、摩擦の感覚にスコールが高い声を上げた。
可愛らしい声にバッツの熱がむくむくと育って行く。
早く入れたいなあ、と思いながら、バッツは手首のスナップを活かしながら、スコールの中を掻き回した。


「ふ、んっ……!っあ、うん……っ!」
「それとも、この辺かな〜」
「や……あ、あっ♡バッ、ツ、ぅ……っ!」


 バッツは指の角度を細かく変えながら、狭いスコールの中を苛めつつ、拡げていく。
スコールは背中を丸め、手繰り寄せたシーツに縋り付いて、白い太腿をびくっびくっと震わせた。

 細かなヒダのある媚肉をくすぐるように小刻みに擦ると、スコールは天井を仰いで背中を弓形に撓らせた。
キャミソールの下に隠れた小振りな乳房が少し浮いて、ツンと膨らんだ蕾が主張するのを見ると、バッツは堪らず其処に吸い付いた。


「ひゃっ、んっ♡バッツ、あっ……!」


 シルクの布越しにぱくりと食べられる感触に、スコールが目を丸くするが、バッツがちゅうっと乳首を吸うと直ぐに蕩けた。
膣を掻き回しながら、乳首を愛撫するバッツに、スコールははくはくと口を開閉させることしか出来ない。


「あっ、あっ…!あっ…、うんっ……!」


 スコールの乳首はバッツの舌に愛されて、みるみる固くなって行く。
たっぷりと愛してバッツが口を離せば、湿って色の変わったキャミソールに、ぷっくりと膨らんだ突起が浮き上がっていた。

 バッツは反対の乳首の先端を舌で突きながら、きゅん、きゅう、と戦慄いて締め付ける膣を指先で細かく擦る。
震えるように動いて、同じ場所を何度も擽る指に、スコールは腹の奥が熱くなるのを感じていた。


「や、や、バッツ……っ!あ、だめ……っ、あぁ……っ!」


 覚えのある感覚に、スコールは息を絶え絶えにしながら言った。
止めて、と震える腕がバッツに縋って来たが、バッツは聞かなかった。
指の動きはより激しくなり、濡れそぼった蜜壺の中をぐちゅぐちゅと音を立てて苛め続ける。
与えられる刺激でスコールの下肢は殆ど力が入らなくなっていて、がくがくと震える躰の反応を抑える事が出来ない。


「バ、ッツ、バッツぅ……っ!ん、や、来る……っ!」
「良いよ」
「………っ!」


 バッツが促すが、スコールはぶんぶんと首を横に振った。
迫っている感覚の正体を、彼女は自覚している。
それに任せてしまったらまた───とスコールが顔を赤くして堪えている所に、バッツは彼女の弱い場所をくりゅんっと突き上げてやった。


「ひぅうんっ♡」


 ビクンッ、ビクンッ、とスコールの躰が弾んで、締め付けの強くなった陰部から、ぷしゅっ、と透明な蜜が吹く。
バッツの手と下着を濡らしたそれは、常の彼女のことを思えば、案外と少なかった。
それは彼女が精一杯に衝動を堪えたからなのだが、その代償は小さくない。


「はっ、は……っ、あ…っ、あぁ……っ」


 上り詰めた瞬間、スコールは目一杯に体を強張らせて、溢れそうになったものを押し込んだ。
お陰で彼女の体は中途半端な所で留まってしまったようで、全身が痺れたように動かない。
すっかり火照った体をヒクッヒクッと戦慄かせながら天上を仰ぐスコールに、バッツは首筋にちゅっとキスをしてあやしながら、彼女の秘部からゆっくりと指を抜いた。


「スコール。大丈夫か?」
「あ……あう……ぅ…」


 まともに言葉も出ない様子のスコールに、バッツは額に、眦にキスを繰り返した。
スコールはそれをじっと受け止め、浅い呼吸が次第にゆっくりと落ち着いて行く。

 閉じていた瞼が持ち上がって、蒼の瞳がバッツを見上げる。
赤らんだ顔で見詰める少女が求めているものを察して、バッツは濡れた手でスコールのショーツを脱がしていく。
守るものを失くしたスコールの太腿を押して、スコールの秘園が露わになると、其処はぐっしょりと濡れそぼっていた。

 バッツはベッド横のチェストを手探りして、コンドームを取り出した。
中身を一枚出して、口で封を切り、ゴムを伸ばして自分の中心部に被せる。
スコールの唾液でてらてらと滑るペニスに、薄皮一枚が重ねられる様子を、少女は囚われたように見詰めていた。

 準備が出来たと、バッツが改めてスコールの躰に覆い被さる。
スコールの腕が恐る恐るに伸ばされ、バッツの首に絡まった。
バッツはまた少し緊張した様子のスコールの背中を抱き寄せ、ヒクヒクと震えている膣口に自身を宛がう。
ふう、とバッツが衝動を抑えるべく息を吐いたのが、スコールにとっては合図だった。
間を置かず、ぬぷ……と太いものが自身を拓こうとする感触に、スコールが微かに息を詰める。


「ん……っ!んぅ……っ、ふ……っ!」


 出来るだけ呼吸をした方が楽だよ、とバッツに教わった通り、スコールは詰まりそうになる息を意識して吐き出す。
ふーっ、ふーっ、と言う鼻息がバッツの耳元を擽った。

 スコールの膣の中は狭く、少し浅いようで、初めての時などはバッツが半分ほど入れば一杯と言う具合だった。
しかし、重ねられるまぐわいの中で、バッツが少しずつ少しずつ奥を押し上げ、今ではバッツをすっかり咥え込む事が出来るようになった。
それでもやはり狭い事に変わりはないので、スコールは少し苦しそうだったが、


「スコール?」
「う…ん……っ」


 労わるバッツに、スコールは小さく頷いた。
無理しなくて良いんだぞ、とバッツは言うが、スコールは抱き着く腕に力を込めて、続きを強請る。
バッツはスコールの眦に薄らと浮かぶ雫を舐めて、ゆっくりと律動を開始した。


「ん…、あっ……、あっ、…んん……っ!」


 唾液と蜜とが絡まり合いながら、二人の繋がりを深くしていく。
バッツが腰を前に後ろにと動かす度に、接合部からにちゅ、にちゅ、と言う音が聞こえて、スコールの頬が赤くなった。

 粒のように細かい繊毛に覆われたスコールの膣が、きゅうきゅうとバッツを締め付ける。
その力がいつもより強いような気がして、バッツはペニスに与えられる熱の刺激に耐えるのに一苦労した。


(やっぱり、イき切れなかったんだろうな)
「あっ、ん…!はっ、はぁ……っ!」
(だからいつもより敏感にもなってるっぽい)


 ペニスが中を摩擦する度、ビクッ、ビクッ、と弾む細い体。
元々スコールは敏感だが、今日はいつにも況してその傾向が強い。
先の指の刺激で、上り詰める瞬間に躰の衝動を無理やり押し殺したものだから、その瞬間の波がずっと尾を引いているのだろう。

 バッツはスコールの背を抱いていた片腕を解いて、彼女の肌を隠す薄布を捲り上げた。
あ、とスコールの唇から心許無い声が漏れる。
それを唇で塞いであやしながら、バッツはスコールの形の良い乳房を揉む。


「ん、ん……、ふ……っ、は…、あん……っ」


 与えられるキスに、スコールの表情が少し和らぐ。
舌を使って唇を割り開きながら、ツンと尖った乳首を指先でくりくりと捏ねてやれば、甘い声が零れた。


「は…はぁ……っ、あっ…、乳首……ん、や……っ」
「いや?」
「は、ふ……んん……」


 乳首を捏ねながらバッツが問えば、スコールは小さく首を横に振る。


「ん……きも、ち…いい……」
「良かった」


 素直に答えてくれた恋人に、バッツは笑みを零して、またスコールの舌を吸う。
ちゅう、とスコールの吸われた舌がビクッビクッと震えるのが伝わった。

 咥内を寵愛されながら、スコールの下肢はその刺激に引っ張られるように、きゅ、きゅ、と断続的にバッツを締め付けて来た。
もっと、と強請るようなその動きに、バッツも応えるべく、腰をゆっくりと退いて行く。
ぬるぅう、と舐めるようにペニスが逃げて行けば、奥が寂しそうに窄まって、スコールも「やぁ……っ」とバッツに抱き着いて訴えた。
バッツはそんなスコールの唇を吸いながら、ペニスを奥深くまで入れ直す。


「んんん……っ!」


 にゅぷんっ、と奥まで入って来た男根に、スコールの腰がビクンッと跳ねた。
ひくっ、ひくっ、ひくっ、と戦慄く膣を、バッツは大きなストロークで耕してやる。


「う、うんっ、んっ…!ん、むぅ……うんっ♡」


 一定のリズムを守って打ち付けられる杭に、スコールの喉奥から抑えきれない甘露が零れる。
それがバッツの耳に心地良くて、もっと聞きたくて、バッツはスコールの中を愛でながら、柔らかな胸の膨らみを揉みしだいた。


「ふ、は……っ、は、バッツ……っ、あっ、あぁっ」
「スコールのまんこ、きゅーってしてきた。おれ、持ってかれそう」
「あっ、あっ、あっ……!はっ、はぁっ…、あぁん……っ!」


 バッツの言葉に、またスコールの膣が締め付けを増す。
初心な心はいつまでも失われないのに、体はすっかりバッツを喜ばせるようになった。
エッチになったよなぁ、とバッツが囁けば、スコールは耳まで赤くなって、バッツの首にしがみ付いて来る。


「あ、う…っ、あっ…、あぁ……っ!」
「スコール、来てる?おまんこ、イきそう?」
「うっ、んっ、んんっ……!」


 耳元でバッツが訊くと、スコールはこくこくと頷いた。


「良いよ、イかせてあげる」
「バ、ッツ……あっ!あっ、んっ、んんっ!」


 バッツの言葉にスコールがかぁっと目を瞠った直後、ずぷんっ、と奥を突き上げられて、スコールの言葉が奪われる。
そのままバッツは繰り返しスコールの奥を強く突き、激しくなる快感の波に身悶える少女の体を抱き締めた。
バッツの腕の檻に囚われたスコールは、不自由な身動ぎをしながら、迫る衝動に四肢を強張らせていく。


「バッツ、バッツぅ……っ!あっ、はっ、来る…っ、ん!あぁ……っ!」


 いつも遠慮がちなスコールの腕が、今はそれを忘れて、目一杯の力で縋っていた。
バッツは背中に立てられる爪の感触に心地良さを得ながら、一際奥へと雄を穿ち、吸い付いて来る肉壺を大きく掻き回した。
その瞬間、スコールの躰がビクッ、ビクンッ!と大きな波を打って、


「んぁ、あぁっ♡あっ、う、うーーーーっ♡」


 押し殺しながら甲高い悲鳴を上げて、スコールは絶頂した。
膣内がきゅうううっと狭く強く窄まり、咥え込んだペニスを締め付ける。
バッツは薄皮一枚越しにぴったりと密着して絡み付いて来る肉褥の感触に、一気に意識を浚われた。


「うぅっ!くぅうう……っ!」
「うっ、んっ!バッツの、あっ、震えてぇ……っ!うぅんんっ♡」


 胎内で戦慄く雄の感触に、スコールもまた感じ入り、ベッドから浮いたスコールの爪先がピンと強張る。
その状態のまま数秒、スコールは硬直していた。
彼女の膣も同じように強張り、震えて、其処に収まっている雄が射精を終えても、きゅうきゅうと吸い付いたまま離れない。

 はー、はー、とバッツの荒い呼吸がスコールの耳朶を犯している。
それだけでもスコールはぞくぞくとしたものが背中を駆け上って来るのが判った。


「はぁ……、スコール……」
「あ…う……バ、ッツ…んぅ……っ♡」


 名前を呼ぶ恋人にスコールが答えた後、二人の唇が重なり合う。
バッツはスコールの舌を絡め取ると、自分の唾液を彼女に渡しながら、その咥内でスコールのそれを混ぜ合わせた。
スコールの耳の奥で、くちゅくちゅといやらしい音が響いている。


「ふっ、うふっ……♡ん、んむ……っ」
「ん、っは……は…っ、スコール、可愛い……」
「はむぅ……っ♡」


 愛を囁くバッツの声は、普段の明朗快活としたものと違って、雄の欲望が溢れている。
いつの間にかそれに濡れる事に慣れてしまったスコールも、そんな恋人を見て、嬉しそうに熱の瞳を揺らした。

 キスに夢中になっているスコールをあやしながら、バッツはゆっくりと腰を退く。
その感触をスコールも察したか、いやいやをするようにスコールが小さく頭を振り、バッツの腰に足を絡めて来た。
そのおねだりはとても可愛いものであったが、


「スコール、ちょっと待って。ゴム取り換えなきゃ」
「んん……あっ、う……♡」
「おまんこ、ちょっと緩められる?」
「ふ、あ……わ、わかん、な……」
「じゃあ、このまま抜くから、ちょっと我慢して」
「あ、あ……っ!こす、れて……んんぅ……っ!」


 自分の体を想う通りに出来ないスコールに、仕方ないから良いよと慰めながら、バッツはペニスを抜いて行く。
敏感なままの膣壺を、まだ膨らみを失わないペニスに舐められて、スコールはビクビクと躰を震わせた。

 最後の最後まで、離したがらない蜜壺から、バッツはようやくペニスを抜いた。
が、彼女の絡み付く肉壁に捕まって、入り口の所でペニスからコンドームが取れてしまった。
熟れた色に染まり始めた秘裂に挟まってしまったコンドームを見て、バッツがごくりと喉を鳴らす。


「ゴム、スコールのまんこに引っ掛かっちゃったぞ」
「…やぁ……っ」
「大丈夫、取れる取れる。引っ張るよ」
「ふ、ふ……っ!」


 バッツが指先でコンドームの端を摘まみ、ぐっと引っ張る。
中に入った水溜りが口に引っ掛かっているのか、少し抵抗感があったが、バッツが沿えた手で秘筋を拓いてやれば、直ぐにゴム袋の膨らみが覗いて来た。
それからもう少し引っ張ると、駄々を捏ねるように締め付ける膣口から、ちゅぽんっ、とゴム袋が出て来る。


「あぅんっ♡」


 その瞬間の刺激に、スコールの体がビクンッと弾んだ。
ぞくぞくとした感覚が腰から背中へ、首の後ろを走って、スコールの燻る熱を煽る。
そうして暴れる熱を持て余す体を、スコールは右へ左へと細い腰をくねらせて悶えた。

 バッツは使い終わったコンドームの口を括ると、直ぐに次の封を開けた。
真新しいそれをペニスに被せて、ベッドの上でもじもじとしているスコールの上にもう一度体を重ねる。
重みを感じたスコールが、しっとりと濡れた瞳でバッツを見上げた。


「バッツ……」
「良い?」


 二回目を促すバッツに、スコールは小さく頷いた。
直ぐにバッツは膣口に雄を宛がい、挿入して行く。
一度目よりも更に締め付けを増した褥の感触に、バッツは益々興奮して行く。

 程なく始まった律動に、少女の甘い声が上がった。




 バッツが二回目の射精をした所で、スコールは気を失った。
いつもより早いような、ちょっと物足りないかなあ、とバッツは思ったが、疲れていたのかも知れないと思うと、起こしてまで続きをしようとは思わない。
我儘を言えばきっとスコールは許してくれるだろうけれど、バッツはスコールに無理強いはしたくなかった。

 ベッドはいつもの事を思うと、それ程汚れてはいなかった。
シーツに幾らか染みは出来ているが、ベッドメイクを直す程でもない。
それを見たバッツは、今日のスコールが終始堪える顔をしていた事を思い出した。


(あれって吹くの我慢してたんだろうなぁ)


 今日の始まる前の会話からして、スコールが自分の潮吹き癖を強く意識していたのは間違いない。
バッツにしてみれば、何も知らない初心だった彼女を、そんな風にしたのは自分であるから、情事後のベッドメイクのことも含めて、彼女が気に病む事ではないと思っている。
だが、それはバッツの気持ちの話であって、実際に自分の所為でベッドをびしょびしょにしてしまう彼女にとっては、やはり気にかかる事なのだろう。

 今日は終始それを気にしていたので、彼女はいつものセックスに比べると、開放的にはなれなかった。
殆ど衝動で湧き上がって来る体の反応を、精一杯に堪えようとして、果てる瞬間に体のあちこちに力が入っていた。
そのお陰で一番良い所まで上り詰めるには至らず、中途半端な熱の放出を繰り返し、そのまま次の行為に行くので、彼女の感覚や意識がリセットされなかったのだろう。
だから今日のスコールはいつもよりも敏感で、膣内の締め付けも一際強かったのだ。


(おれは、それも気持ち良かったけど。スコールはどうだったかなぁ。イってたから、駄目だった訳じゃないだろうけど───)


 腕枕で眠るスコールの寝顔を見詰めながら、バッツはうーんと考える。
が、いつもより回数が少なかったとは言え、セックスはセックスである。
バッツも疲れている訳で、欠伸が漏れ始めてから程無く、彼も腕の中の少女と同じ夢の世界へと浚われたのだった。