Sリズム・エクスタシス


 とにかく人目のない所に、と思ったスコールが真っ先に思い浮かんだのが、体育館の裏だった。
数時間前には、交流授業に来た生徒達が集められていた場所だが、今は昼の部活練習に励んでいるのであろう生徒がいるのみ。
それも今日は交流授業の関係でか、活動している生徒は少ないようで、いつもよりも人の気配は少なかった。
体育館裏となれば尚更で、本当に何もない小さな狭い隙間でしかないので、全く人の気配がない。

 学食からバッツを引っ張りながら其処まで走って来て、ようやくスコールは一息吐く事が出来た。
はあ、はあ、と肩を揺らしながら息をしているスコールを、バッツは掴まれたままの手をにぎにぎと握って遊びながら眺めている。
スコールは最後に一つ大きく息を吸って、吐いてから、くるりと恋人の方を振り返った。


「あんた、なんで此処にいる?」
「スコールに逢いたいなって思ったから!」


 真っ直ぐに自分の気持ちを告白してくれるバッツだが、今のスコールにそれを絆される隙はない。
訊きたいのはそう言う事じゃない、とスコールはじろりとバッツを睨む。


「どうして部外者のあんたが此処にいるのかって聞いてるんだ。学祭でもないのに入るなんて、許可が下りる訳ないし、不法侵入だぞ」
「許可がないのはそうだけど、今日なら潜り込めるかなって思ってさ。ほら、これで」


 これ、と言ってバッツが自分の胸元を引っ張る。
見ればバッツは、ティーダやサイファーと同じ、男子校の制服を身に着けていた。
ブレザーには校章も縫われており、見た限りでは間違いなく本物。
しかし、校章の下にある胸元に縫い付けられた名前の綴りは、バッツのそれとは全く違うものになっていた。

 怪しむスコールの視線に気付いて、バッツは胸元のネームを見て、へらりと笑って白状する。


「今日はさ、この学校の生徒と交流授業だってティーダから聞いてたんだ。あ、ティーダを怒るなよ。ただの話の流れでそうなっただけだからさ。で、この学校って学祭の時とかは部外者も入れるけど、普段は絶対そういう機会ってないだろ?でも今日だったら、生徒のフリしてこっそり入れたりするかなーって」
「……その制服は?」
「バイト先でさ、この学校に通ってる奴がいるんだよ。で、おれ、劇団の道具係もバイトでやってるんだけど、衣装作りとかもしてて。それの参考にしたいからちょっと貸して欲しいな〜って頼んだんだ」


 バッツの話に、スコールはくらくらと頭痛を覚えていた。
バッツの交流関係や、バイトの仕事内容が多岐に渡ることは知っていたが、こんな所でその本領を発揮しないで欲しい。
確かにバッツの行動力とコミュニケーション能力を以てすれば簡単な話ではあっただろうが、それを本当に実行に移すとは。


「…其処までして、あんたは何をしに来たんだ」
「スコールの制服が見たいなーって思って」


 更には、原動力となったのであろう理由を聞いて、スコールは更に眩暈を覚えた。
そんな事の為に、と痛む頭を抱えてよろめくスコールを、バッツは「どした?大丈夫か?」と真面目に心配して来る。
そう言う顔をするから、決してバッツがスコールに迷惑をかけるつもりで行動した訳ではない事は判る、判るのだが。

 キッ、と蒼の瞳が鋭くバッツを睨んだ。
流石にそれを見れば、スコールが怒っているのは判ったのだろう、バッツが心なしか慄いた。


「バカなのか、あんたは。いや、バカだ。うちの学校側があんたの正体に気付かなくたって、サイファーみたいに目敏い奴だっているんだぞ。あっちの学校からの引率の教師だっているし。此処は一応、女子校なんだから、部外者の男が校内をウロウロしてるなんて気付かれたら、速攻で通報されるんだ」


 格式高いエスカレーター式の女子校である。
当然、それなりにセキュリティも高く、正門に限らず、敷地を正規に出入りする場所には警備員が常駐しているし、校内は教師が巡回している。
過去にはその隙間を縫って変質者が侵入した事件もあったと言うが、それが教員たちの間で発覚した時点で、即警察への通報が行われた。
バッツが今回行ったのは、そう言う事なのだ。
バッツ自身に悪意がなくとも同じ事になる可能性は高い───いや、この場合は悪意も悪気も関係ない、とスコールは思う。

 先のサイファーとバッツの遣り取りを思い出して、スコールは今からでも背筋が凍る。
サイファーは学校で風紀委員を名乗っており、その活動にも随分と意欲的であると言う。
横柄な言動と打って変わって非常に頭も回るので、自分のクラスの生徒に限らず、同校で過ごす生徒の顔もかなり頭に入っているだろう。
ついさっき、バッツを「見ない顔」だと直ぐに気付いたのがその証拠だ。
そうでなくとも、校内外で良くも悪くも有名なサイファーを、同校に所属していながら知らないなんて、転入したての生徒でもなければ有り得ないだろう。


(サイファーの奴、絶対に気付いた。今頃何を言ってるか……ティーダやリノア相手に騒いでる位はしてるだろうな。性格が合わないだろうから、鉢合わせさせないようにしてたのに……)


 サイファーはよくスコールに突っかかって来る。
何故かはスコールの知る由ではないが、幼い頃からそうなのだ。
その割には、不思議な事に、幼馴染の縁が切れる事はなく、他のメンバーも揃って談笑するような、更にはスコールにしては本当に珍しく明け透けに物を言い合える仲であったりするのだが、故にスコールはバッツとサイファーが性格的に反りが合わない事を理解していた。
だからバッツと恋人関係になってからも、逢わせると絶対に面倒になると思って、意図的に二人を引き合わせないようにと注意していたのだが、今日のこれで台無しだ。
案の定、スカートのポケットに入れた携帯電話は鬼のようにマナーモードのコールが鳴っている。
絶対に出ない、と決めてはいるが、それはそれで後が厄介である事も想像できて、スコールは深い溜息を吐いた。


「あいつ、後で何言い出すか……」
「さっきの奴か?スコール、仲良いのか?」
「……あいつも幼馴染だ」
「ティーダと一緒?」
「……まあ。一つ年上だけど」


 もう一つ溜息を吐きながら答えるスコールに、バッツはふぅん、と零す。
心なしか唇を尖らせ、拗ねた表情をするバッツに、その顔をしたいのは俺の方だとスコールは思いつつ、


「サイファーの事だから、あんた絶対目をつけられたぞ。また見付かる前にあんたは帰った方が良い」
「うーん……そうなんだろうなあ。他の人にもバレたら、スコールにもっと迷惑かけそうだし…」
「……理解してくれて何よりだ」


 基本的に人目を嫌い、目立つ行動を避けているスコールである。
それでもリノアを通した交流や、真面目な気質もあっての成績優秀振りや、案外と面倒見が良かったりするスコールを知る者は多い。
先のバッツに抱き着かれた事であったり、噂好きの生徒の間でどんな話が吹聴されているかと思うと、今から少し気が重い。
移り気な少女達が早く他の話題に攫われる事を祈るスコールであった。

 ───とは思いながらも、バッツが無茶をしてまで学校に来たと言うのは、ほんの少しだけ、嬉しくもあった。
女子校と言う事もあり、こんな機会でもなければ、学校関係者以外が此処まで入って来る事はない。
無理を通したようなものだとしても、バッツが自分に逢いたいからと行動してくれた事は、バッツが自分をどれだけ愛してくれているかと言う証左のようにも思えたのだ。

 ついでに、学生服姿のバッツと言うのが、随分と新鮮な印象に見えて、スコールは少し落ち着かなかった。
大学生なのに、高校生に混じっても違和感がないのはどうなのだろうとは思うが、ブレザー姿のバッツと言うのは、いつも以上に溌剌と精悍に見える。
もしバッツと同じ学校に一緒に通う事が出来ていたら、この姿を毎日見る事が出来たのだろうか。
そう思うと妙に心音が早くなって、スコールは今朝リノアと交わした会話を思い出さずにはいられない。
あの時は、「バッツの制服姿なんて想像できない」と言ったけれど、こうして目の前にそれを見てみると、リノアが言っていた「ドキドキしない?」と言う言葉への返事が変わる気がする。


(……言わないけど。そんなこと)


 らしくもない、と思いつつ、スコールは熱くなった気がする頬を隠すように、バッツから目を反らす。

 そんなスコールを、バッツの方はじっと見ていた。
スコールの制服姿を見るのはこれが初めてと言う訳ではないが、こうしてじっくり観察するのは初の事だ。
逢うのもスコールが休みの土日が主であるし、スコールは必ず私服で来てくれる。
マニッシュスタイルを好む事もあって、パンツ姿の多いスコールであるが、今日は勿論スカートだ。
きちんと校則に則っているのだろう、短くせずに膝上丈のプリーツスカートが、彼女の動きに合わせてひらひらと踊るのが新鮮だった。
最近は大分廃れ気味になっていると聞くが、学校の歴史が長い事もあってか、セーラー服と言うのも中々赴きがある。


(やっぱり可愛いよなあ、スコール)


 昔ながらのセーラー服そのものが持つ独特のレトロかつノスタルジックを思わせる雰囲気もありながら、それを着ているスコールがとても可愛い。
バッツが通っていた高校は男女ともにブレザーであったので、目新しさもある。
だが、恋人と言う欲目を取っても、バッツは愛しい彼女の可愛らしさを実感せずにはいられなかった。


(あー……やばい……)


 恥ずかしそうに赤らめた顔を背けているスコール。
その横顔をじっと見つめながら、バッツはセーラーカラーの隙間に覗くスコールの首元に釘付けになっている。
男の衝動として、抑えがたいものがじわじわと昇って来るのが判った。

 そうなると、思いのままに行動するのが常のバッツには、もう堪えられない。


「スコール」
「なん───」


 名前を呼んだバッツに、スコールがややつっけんどんに返事をしようとした時だった。
ぎゅっと握られた手に驚いた直後、強い力で引き寄せられ、バッツの腕に抱き締められる。
まさかと言う突然の抱擁に目を丸くしていると、厚みのある唇がスコールの呼吸を奪う。


「んぅ……っ!?」


 キスをされていると気付いて、スコールは益々目を瞠った。
此処はスコールが通う学校の中で、体育館裏だ。
人気がないとは言っても必ず誰も来ないとは限らないし、サボタージュ癖のある生徒が此処に屯する事があるのを、スコールは知っている。
そんな所でまさか恋人にキスをされるなんて、スコールは思ってもいなかった。


「ん、ん……!んむぅ……っ」


 ぱしぱしとバッツの肩を叩いて、離せ、と訴えるスコールだったが、バッツは止まらない。
噤んでいた唇の隙間を舌で割り開いて、スコールの咥内へと侵入する。
逃げた舌は直ぐに絡め取られ、ねっとりとした唾液が移され、塗りたくるようにバッツの舌が這い回った。


「んぁ…、む、ふぅ……っ」
「んちゅ、ん……っ!んん……っ」
「は、はふ……っ、ん、ぅん……っ!」


 ちゅくちゅくと耳の奥でいやらしい音がして、ぞくぞくとしたものがスコールの背中を駆け上る。
口付けるバッツの向こうに、ぼんやりと体育館の屋根が見えて、スコールの思考が現実に戻る。
それなのにバッツの舌は奔放にスコールの咥内を弄って、歯列をなぞり、天井をくすぐってと、スコールの躰を熱に誘おうとしていた。


「ふぅ……っ、は、んん……っ」
「ん……ぷ、ちゅぅ……っ」
「んむぅう……っ!」


 連れ出された舌がバッツの咥内へと招かれて、ちゅう、と啜られる。
舌の根が甘く痺れる感覚に襲われて、スコールは堪らず身を捩った。
逃げを打つように足が蹈鞴を踏めば、バッツはスコールの背中に腕を回して、しっかりと捕まえて舌をしゃぶる。

 じんじんと熱いものが体中に染みわたって行く中で、スコールの意識はふらふらと浮かび始めていた。
こんなにも熱烈で激しいキスは滅多にない。
バッツと体を重ね、その温もりを知るようになってからそれなりに経つが、それでもこんなに深いキスは経験がなかった。
それが、バッツの興奮振りを示しているようで、なんでそんなに、とスコールは戸惑う。


「ふ、ふ……っ、ふあ…あ……っ」


 スコールの蒼の瞳が頼りなく揺れ始めて、ようやくバッツは唇を開放した。
ちゅぱ、と音を立てて、二人の舌を唾液が繋ぐ。
誘い出された舌を無防備に差し出した格好で、とろんとした表情を浮かべているスコールを、バッツの熱を持った瞳が見詰めていた。


「バ、ッツ……」
「……スコール。おれ、したくなっちゃった」


 正直に白状するバッツに、スコールは自身がじわりと濡れるのを感じた。
まるで反射反応だ。
思わずそれに身を委ねたくなって、直ぐに現実を思い出す。


「バカ……っ、何処だと思ってるんだ」
「判ってるって。判ってるから、なんかもう、余計に」
「お、押し付けるな……あっ……!」


 ぐい、とスコールの腰に押し付けられる、固い感触。
制服のスラックス越しの存在感に、スコールの心音が早くなって行く。

 それでも、駄目だ、とスコールはバッツの体を押し退けようと、背一杯腕を突っ張った。


「バッツ、ダメだ……っ!」
「最後までしないから。ゴムも持ってきてないし」
「そう言う問題じゃないっ。あ、こら、あっ……!」


 背中を抱いていた腕が、するりと服の中に侵入して来るのを感じて、スコールはバッツを叱る。
しかしバッツは構わずにスコールの首筋に唇を当てて、ちゅう、と吸った。


「や……痕、は……っ」
「んん……やっぱそうだよなぁ。我慢かぁ」
「ふ、は……あぁ……っ」


 吸い付いた首元を、ぺろりと舐める舌。
痕を残さない代わりに与えられる愛撫に、スコールの呼吸が上がって行く。
その我慢が出来るのなら、しようとしている事も止めて欲しいのだけれど、バッツの手はゆるゆるとスコールの肌を撫で回している。
緩やかなその手付きは、毎週のように重ねられた情事と全く同じものだ。

 ふう、ふう、と呼吸を背一杯殺そうと努めるスコール。
しかし躰は着実に熱を生んでいて、じわじわと濡れる感覚に伴い、スコールは無意識に膝を擦り合わせる仕草を見せていた。
愛しい少女のその様子にバッツが気付かない筈もなく、


「……スコール。だめ?」
「……っ」


 耳元で囁く雄の声に、スコールの躰がひくんと震えた。


「バ…、ッツ……っ」
「授業には間に合うようにするから」
「は…、あんたは、その、後は……」
「ちゃんと帰るよ。また誰かに見付かって、スコールに迷惑かけたくないし」
「ほんと、に……、んっ……帰るんだな…?」
「うん」


 期せずして顔を見れたバッツが帰ってしまう事は、少しだけ、ほんの少しだけ、寂しい。
けれど此処は学校で、バッツは現状、不法侵入をしてきた部外者だ。
うっかりバレて通報なんて事になる前に、退散してくれないと困る。

 これからする事をすれば、バッツは満足して帰ってくれる。
まるで交換条件のようだったが、それでも帰ってくれるならそれで良い、とスコールは思った。
同時に、あのキスで高ぶらされた躰をこのままにして午後を過ごせる程、スコールは熱の宥め方を知らない。


「い、入れない、んだな……?」
「うん。ゴムなしは、やっぱり駄目だと思うし」
「は……ん……っ。でも、それ…あんたは……」
「おれのこと心配してくれるの?ありがと、スコール。優しいな」


 そう言ってバッツは、スコールの唇を塞ぐ。
ついさっき、たっぷりと唾液を交換し合って濡れた咥内を、バッツの舌がゆっくりと舐め這う。
またぞくぞくとしたものがスコールの首筋を奔って、少女の腕から力が抜ける。


「ふぅ、ん……んぁ、っは……」


 今度はスコールの方からも舌を絡めに行った。
バッツの舌にちょんちょんと舌が当たる。
するとバッツもスコールを絡め取り、唾液塗れの舌を舐めしゃぶってくれた。


「はちゅぅ……っ、んぁ、う……っ」
「っは……ふぅ、スコール……」


 唇を放せば、バッツは恋人の名前を呼んだ。
同時に、ぐりぐりと固いものがスコールの腹に押し当てられる。
もうすっかり勃起していると判る感触に、スコールは思わずそれが欲しいと思ってしまう。


(でも今は……)


 それをねだってはいけないと、スコールも判っていた。
バッツの言う通り、スキンだって持っていないし、何より此処は学校だ。
日々を過ごす学び舎でそんな事をしてはいけないと、真面目なスコールはそう思っている。
……ならばもっとしっかりバッツを突き放さなければいけないのだけれど、熱に翻弄される事にいつまでも慣れない初心な少女に、それは難しい事だった。

 背中を撫でていたバッツの手が、スコールの躰の前へと回って来て、セーラー服の下で動いている。
なだらかな腹を撫でた手が上へと上って行くのを感じ、スコールは心音が早くなるのを感じていた。
ブラジャーの上から小振りな胸を揉まれ、ぴく、ひくん、とスコールの肩が震える。


「んっ……ふ……」


 いつもベッドの上で感じていた、バッツの掌の感触。
身長は自分と余り変わらないのに、バッツの手は心なしか大きくて、皮膚が厚くて固い。
その手が自分の胸をやわやわと揉むのを、スコールは膨らんだ制服越しに見下ろしていた。


(手が見えないだけで…なんか…何、されるのか……)


 バッツの手の動きが直に見えない。
それだけで、これからその手がどう動くのか、スコールは予想がつかなかった。
それが無性にスコールを緊張させ、同時に興奮させて行く。

 バッツの指が、ブラジャーの下に侵入する。
直に柔肌に触れられるのを感じて、あ、とスコールの唇から音が漏れた。
褐色の眼がちらとスコールを見て、安心させようとしてか、眦にキスが贈られる。


「ブラ、外すな?」
「う、んぅ……っ」


 囁くバッツに、スコールは口を噤むばかり。
どう返事をするにも恥ずかしくて、顔を赤くするスコールに、バッツは「かわいいなあ」と零した。
そんな事を言うから、益々スコールは赤くなってしまう。

 背中のブラジャーのホックが外されて、胸元の守りが緩んだのが解った。
パッドが胸から浮いて、バッツはそれを胸の上へと手繰り上げる。
更にはセーラー服の裾も持ち上げられてしまい、スコールは胸をすっかり曝け出す格好になった。


「やぁ……っ」


 触れる外気の感触に、スコールはふるふると頭を振る。
バッツの両手がその胸を隠すように包み込んで、むに、ふに、と柔らかい力で揉みしだいた。


「はぁ……っ、ん…、バッツ……っ」
「スコールのおっぱい、綺麗だなぁ」
「んん……」


 揉みながらまじまじと乳房を覗き込んで来るバッツ。
スコールは、バッツのその視線にも胸を嘗め回されているような気がして、躰が一層熱くなるのを感じていた。
それを体現するかのように、スコールの小さな蕾はぷくりと膨らみ、ツンと尖ってバッツにその存在を主張する。


「んちゅっ」
「うんっ……!」


 バッツがそこに吸い付いたものだから、堪らずスコールの躰がビクッと跳ねた。
ちゅ、ちゅう、と乳首を続けて吸われ、スコールはひくっ、ひくっ、と躰を震わせながら喉を反らして空を仰ぐ。


「あ、あぁ……っ、ん……はぁ……っ」


 木の実のように固くなる乳首に、バッツの舌がゆっくりと這う。
バッツが舌の腹を押し当て、乳輪ごと口の中に食んでしまうと、生暖かい湿った空気がスコールの蕾を包み込んだ。
そのままキャンディを溶かすように舌で乳首を転がすバッツ。
しかし蕾は溶ける所か、益々高く膨らんで行き、愛撫に対して敏感になっていく。


「は、はっ……バッツ、ぅ……胸、や……あっ……!」


 生暖かいものが乳首を舐めしゃぶる感触に、スコールはいやいやと頭を振った。
バッツはそんなスコールを上目に見ながら、ちゅう、と一つ強く乳首を吸う。
「ああっ……!」と切ない声を上げるスコールを見ながら、バッツは吸い付きながらスコールの乳首を放してやる。


「はぁ…っ、あぅ……っ」


 ちゅぷ、と音を立てながら解放された乳首は、すっかり濡れていやらしく光っている。
眩しくも感じる太陽の下に晒された乳首は、綺麗なピンク色をしていた。
バッツはその乳首を今度は指で摘まみ、反対側の乳首に吸い付いて、同じように愛でてやる。


「んっ、あっ、あっ……!やぁ、おっぱい……あっ……!」


 左右それぞれに与えられる刺激に、スコールの体が竦む。
ふらふらと揺れる足元に気付いて、バッツはスコールの背中をを体育館の壁に押し付けた。
壁に寄り掛かりながら、バッツに胸を苛められて、スコールは背中を弓形に逸らす。
胸を差し出す格好になっている事に気付かないまま、スコールはバッツの愛撫を受け入れていた。


「は、ふ……あ、あ……っ!」
「乳首こんなに固くなっちゃったな。気持ち良い?」
「バ、ッツ……んぁっ、ああ……コリコリ、やぁ……っ」


 バッツはスコールの乳首の先に爪先を当て、擦るように引っ掻いて苛める。
吸っている方にも甘く歯を立てれば、スコールは「んんっ」とくぐもった小さな悲鳴を上げた。

 はあ、はあ、と荒くなって行くスコールの呼気。
それに伴い、彼女はもじもじと仕切りに両膝を擦り合わせていた。
それが濡れている時に示す無意識のサインであると、スコール自身は気付いていない。
だが、目の前の優しい顔をした狼は、ちゃんとそのサインに気付いていた。

 バッツはスコールの背中を抱いていた手を下ろして、スカートの上から小さな尻を撫でた。
ビクッと腰を震わせたスコールに、乳首を吸って宥めてやる。


「あぁ……っ、は、バッツ……あ……っ!」


 バッツの手がスカートの裾を捲り上げ、下着の上からスコールの尻を揉む。
ハリのあるヒップを丁寧に撫でてから、バッツはその手を前へと回した。

 するりと大きな手がスコールの太腿を撫で、更に際どい場所へ。
脚の付け根の皺を辿りながら、ショーツに指先が触れた。
肌ざわりの良いショーツの縁をなぞって行く指に、スコールは次にそれが目指す場所を悟って息を詰める。
どきどきと逸る鼓動に、期待してしまっている自分を知って、こんな所なのに───と頭上にある体育館の屋根を見た。

 スコールの思った通り、バッツの指は彼女の秘筋へ辿り着く。
すり、と指の腹を滑らせたそこの感触に、バッツがくすりと笑った。


「スコールのおまんこ、一杯濡れてる」
「やっぁ……」
「エッチだなぁ。可愛いな」


 囁くバッツの声が、じんと体の奥まで染み込んで、スコールは益々自分が濡れるのを自覚する。
もうショーツの内側は、漏らしたように水浸しになっていて、少し気持ちが悪いくらいだ。


(これ……このまま、イったら、俺……っ)


 バッツとセックスをするようになってから、自分が酷く濡れ易い事をスコールは知った。
それだけではない、イく度にスコールは沢山の潮を吹いてしまって、いつもバッツの寝床をびしょびしょにしてしまう。
それを判っている筈なのに、こんな所で事を始めてしまって、もうどうなってしまうのか。
そんな不安と緊張が、より一層のスパイスとなって、スコールの其処は洪水のように蜜が溢れて止まらない。

 バッツは「借り物だからな」と言って、制服の袖を肘まで捲り上げた。
長袖に隠れていたバッツの腕が露わになり、細いがしっかりと引き締まっているそれを見て、スコールの胸が高鳴る。

 バッツの指が下着越しに淫筋をすりすりと擦るだけで、スコールの躰は戦慄いた。
ひくひくと奥がバッツからの刺激を欲しがって疼き、スコールは堪らず細腰を捩る。
そんなスコールの背中に腕を回して、しっかりと抱き寄せると、下着のクロッチを横へとずらして、膣口に指を宛がった。


「入れるよ、スコール」
「は……っ、ん…あ……っ!」


 つぷり、と指先が入り口を潜って、スコールの躰が撓る。
まだ指先だけだと言うのに、吸い付くようにきゅうきゅうと締め付ける蜜壺の感触に、バッツの息も上がって行く。


「あっ…、バッツ、ん……っ」
「ゆっくり入れてあげるから、スコール、ゆっくり息吐いて」
「ふ、ふう……は…んん……っ」


 バッツに促される通りに、スコールは努めてゆっくりと深呼吸をする。
侵入を拒むつもりもないが、反射的にそうなってしまう膣口が、少しずつ緩んで行く。
それをまた緊張させてしまわないように、バッツも努めてゆっくりと、指を中へと入れて行った。


(あぁ……っ、入ってる……バッツの指…っ、俺の……おまんこの中……っ)


 自分のものではない物が、自分の中に入って行く。
いつもバッツの褥の中で感じていたもの。
それを、昼日中の学校で味わう事があるなんて、スコールには想像も出来ない事だった。
しかし直にそれを感じている今、見つかるかもと言う恐怖よりも、言いようのない熱の昂ぶりがスコールを襲う。


「は…はふっ……ふぅん……っ」
「半分入ったぞ、スコール」
「あ……っ!」


 バッツの囁きに、スコールはビクッと肩を震わせた。
同時に、きゅんっ、と膣がバッツの指を締め付ける。
それは直ぐに緩みはしたものの、媚肉はすっかりバッツの指に寄り添って吸い付き、ヒクヒクと戦慄いて次の刺激を誘う。

 スコールは口元を手で覆って、声と逸る呼吸を隠しながら、濡れた瞳でバッツを見上げる。
理性の葛藤を抱きながら、それでも続きを促す瞳に、バッツは自身の血が一ヵ所に集まるのを感じていた。
入れたい、と言う衝動が湧き上がるが、この場でそれは流石に、と幸いにも自制が働く。
その代わりに、バッツは指を激しく動かし、スコールの膣内をくちゅくちゅと音を立てながら掻き回す。


「んっ、んぁっ、や……っ、っは、あ……!」


 バッツの指が、細かく震える肉ビラを広げては擦り、スコールの躰に快感の信号が幾つも走り抜ける。
蜜壺はどんどん濡れそぼり、バッツの掌も手首もすっかり蜜塗れになって滴り落ちていた。


「バ、ッツ、んっ、んっ……!っは、はぁ……っ、あぁ……っ!
 切ない声が何度も零れ、スコールの躰が強張って行く。

 バッツは寂し気に震えている乳首に吸い付いた。
スコールの躰が仰け反り、声にならない声が上がる。
膝が震えて崩れ落ちそうになるのを、スコールはバッツにしがみ付いてなんとか支えていた。


「んちゅ、んちゅう……っ」
「は、バッツ、乳首……あっ、だめぇ……っ!」


 緩く頭を振っていやいやと訴えるスコールだったが、その仕種に反して、膣はバッツの指を何度も締め付ける。
欲しがるように動くその誘いに、バッツは益々指の動きを激しくさせた。

 二本目の指を挿入すると、スコールは「はうっ」と小さな悲鳴を上げた。
奥から入り口までしとどに濡れた膣は、くぷくぷとバッツの指を飲み込んで行き、根本まで咥えてしまった。
それでも、スコールがいつもバッツを感じている場所よりも浅いから、スコールは胎の中が酷く熱く疼くのを感じていた。


「バッツ、ぅ……も、もっと…んんっ、奥…ぅ……っ♡」
「はぁー……入れたいなあ、スコールのまんこ……おれも奥に入れたい」
「あ、あ……っ、んんぅうっ♡」


 スコールがねだれば、バッツはそんな事を囁きながら、恋人の淫部に掌を押し付けて来る。
もう少しだけ侵入が深くなるのを感じて、スコールの躰が熱くなった。

 火照りを増して益々蜜を零す膣内を、バッツは小刻みに指先を振って苛める。
指先がスコールの弱い場所を掠めると、ビクッと細い体が解り易く弾んだ。
バッツがちらと恋人の顔を見遣れば、スコールは胸元に顔を埋めるバッツを見下ろしている。
ばっちり目が合うと、合図のように秘奥がきゅうぅっと締め付けを増した。
判り易く誘い求める躰に応じて、バッツは膣の前側の天井を指先でぐりぐりと押してやる。


「ふぅううっ♡」


 堪らず上げかけた嬌声を、スコールは精一杯に口を噤んで堪えた。
代わりに力んだ所為で膣がバッツの指を締め付ける。
狭い膣道が全身で縋るように吸い付いて来るのを感じながら、バッツはスコールの弱点を集中して苛めてやった。


「んっ、んっ♡んぅうっ♡ば、っつ、うふぅ……っ!」
「声我慢して、えらいえらい」
「ふっ、ふっ……!ん、くぅうっ♡うぅんん……っ!」


 乳首をつんつんと舌で可愛がりながら、褒めてくれるバッツの声に、スコールの躰はどうしても喜んでしまう。
バッツの指が当たっている場所が酷く熱くなって、それを狙ったように爪先でカリカリと引っ掻かれる。


「うぅんんん……っ!」


 ビクビクッビクンッ、とスコールの体が一際大きく痙攣した。
指を咥えた膣口から、ぷしっ、ぷしっ、と飛沫が吹く。
精一杯に衝動を我慢しているスコールに、バッツはその背を抱きながら耳元へ顔を寄せ、


「良いよ、イこ、スコール。おまんこ気持ち良いんだろ?」
「や、はっ、ふぅ……っ!あっ、くちゅくちゅだめ、ふっ、来るっ……!来ちゃうぅ……っ!」
「うん、イこ。ほら、大丈夫だから」


 今だ残る僅かな理性が、スコールの解放を躊躇させる。
だって此処はいつもの場所じゃない、バッツの家じゃない───と薄く開いた眼に映る体育館の屋根が、スコールの理性を縛って離さない。

 けれど、バッツにとってはそんなスコールの葛藤の様子も愛らしかった。
きっと良い子で過ごしているのだろう学び舎で、恋人からの愛撫を拒否し切れず、バッツのしたいように甘やかしてくれるスコール。
その理性の堰を越えたらどんな顔を見せてくれるだろうと思うと、バッツは益々興奮してしまう。

 バッツにしがみつくスコールの下肢ががくがくと震えている。
スカートの中で蠢く男の手に支配されて、スコールは意識がふわふわと飛びそうになっていた。


「あ、あ、あ……!バッツ、バッツぅ……っ♡んや、だめ、イく……っ!お、俺、イっちゃ、あぁぁ……!」


 頭の天辺から足の爪先まで強張らせているスコール。
バッツはそんなスコールの耳朶を舐めた後、濡れた舌の覗く唇にキスをした。
驚いた顔をしてくれる少女を至近距離で見詰めながら、くりゅんっ、とスコールの弱点を抉るように引っ掻いて、


「んふっ、ふっ♡ふくぅううっ♡」


 目を瞠ったスコールの膣から、ぷしゃあっ、と蜜が飛び散った。
スコールのスカートの中で、バッツは掌に、手首に腕に、ぴしゃぴしゃと沢山の水滴が飛び散るのを感じていた。

 バッツの口の中で、スコールのくぐもった悲鳴が溶けて行く。
それを心地良く聞きながら、バッツは果てたばかりのスコールの膣内を、ぐちゅぐちゅと掻き回した。


「んぷっ、んっ♡んぅうっ♡うぅんんっ♡」


 絶頂の波が通り過ぎる間も与えられる、最高潮の感度に達している所を苛められて、スコールは身を捩る事も出来ずに悶えていた。
果てた余韻で小刻みに痙攣している膣内は敏感で、バッツの指が少し壁を擦るだけでも強烈に感じてしまう。
そんな所を、バッツは手首のスナップを利かせながら、奥を突いたり、指を大きく回したり。


「ふっ、はっ、はぁっ♡あっ、あっ♡」


 バッツがキスを終えると、解放されたスコールの唇からは、直ぐにあられもない声が上がった。
もう我慢する力もないのだろう、スコールは此処が神聖な学び舎である事も忘れたように、甘く蕩けた顔で啼いている。


「バッツ、だめ、っあ♡イ、イった、からぁっ、あぁっ♡」
「もう一回。もう一回イこう、スコール」
「だめ、だめ、またくるっ♡おまんこっ…も、もれちゃっ……はふ、あっ♡あっ♡あぁっ♡」


 一度イった事で、スコールの躰は完全に悦ぶ方法に目覚めた。
一度目よりも更に大きな波が近付いて、スコールは下肢から力が抜けて行くのを感じていた。
尿意に近いそれをバッツの指で意図的に刺激され、煽られて、スコールの躰がまた大きく戦慄き、


「イっ、イくっ♡バッツ、ん、んんぅーーーーーっ♡♡」


 スコールはバッツの肩に腕を回して縋り付き、がくがくと震えながら二度目の潮噴きに至る。
反射反応で躰が力み、狭くなった尿道から、ぷしゃあああっ、と勢いよく吹き出て行く蜜潮。
連続して与えられた解放の昂ぶりに、スコールは頭が真っ白になるのを感じていた。

 息も出来ない程の快感のうねりの中で、呆然とした表情で縋るスコールに、バッツがキスをする。
咥内に侵入した舌に、スコールは抵抗も出来ない。
それを良い事に、バッツはスコールの舌を絡め取り、唾液塗れの彼女の舌をたっぷりと愛撫した。
その間も、指を咥えたままの膣口はヒクヒクと痙攣し、バッツの指を締め付けて離さない。


「ん、ん……は……」
「は…あ……♡ふ……あぁ……っ」


 唾液の糸を引きながら唇を放せば、スコールは蕩けた瞳をバッツに向けていた。
意識が半分飛んでいる様子のスコールの膣から、バッツはゆっくりと指を抜く。
その間も、肉が擦られる感触に、スコールは「あ…、あぁ……♡」とあえかな声を漏らしていた。

 指を抜いてバッツがスカートの中から手を出せば、手も腕もすっかりいやらしい蜜で濡れて光っている。
袖を捲り上げていたお陰で、借り物の制服は汚れていないようだったが、代わりにスコールのスカートの裏地が散々な有様になっていた。


「あ……ふぁ……」
「おっと」


 バッツに縋っていたスコールの腕から力が抜けて、かくん、と膝が崩れる。
咄嗟にバッツがスコールの体を支え、そのまま座り込んで行くスコールを抱いて、バッツは地面に腰を下ろした。
胡坐を掻いた膝の上にスコールを乗せて、息も絶え絶えになっているスコールの背中をぽんぽんと撫でる。


「ありがと、スコール」
「……っは……バッツ……」
「おれの我儘、付き合ってくれて。嬉しかった」


 満足した、と言う表情で米神にキスをするバッツ。
スコールはそれを受け止めながら、とろんと溶けた表情で、バッツの体に体重を預けている。
だからスコールは、腰に当たるバッツの感触に気付いてしまう。


(嬉しかった、なんて……あんたは、まだ、全然……)


 バッツの其処は昂ったままで、きっと無理をして我慢を貫いているのだろうと言うことが判る。
思わずそれが欲しくて、駄目ならせめて慰めたいとスコールも思うが、二度も果てた体は重くて碌に動かない。
それに、きっとそれを提案したら、それだけで終わる筈がないのだ。
だからスコールは、気をそぞろにしつつも、判っていない振りをして、バッツに寄り掛かっていた。

 バッツはすっかり脱力しているスコールを腕に抱いて、ごそごそと自分のポケットを探った。
貸主が入れっ放しにしていたのだろうティッシュを見付けて、有り難く頂戴しようと、数枚を取って自分の腕を拭いた。
次に新しいティッシュを出して、スコールのスカートの端を摘まみ、


「拭くよ?」
「……うん……」


 このままにしておく訳にはいかないだろうと、断りを入れてから、バッツはスコールのスカートを捲った。
スコールは恥ずかしそうに頬を赤らめながらも、バッツにされるがままになっている。

 スカートの中で、スコールの下肢は雨にでも晒されたようにびしょ濡れになっていた。
二度も連続して潮吹きをしたので当然だろう。
バッツは丁寧な手付きで濡れた肌を拭いて行くが、これはどうしよう、と手を止める。
今日は勢いやこういった環境もあって、スコールの下着を脱がさなかった。
お陰でシンプルな白い綿のショーツもすっかり濡れて、これはこのまま使い続けるのも良くないのでは、とバッツは思う。


「えーと……スコール。パンツ、脱がしても良い?」
「……」
「いや、しない。もうしないって。でも、このまんまは、スコールが気持ち悪そうだなーって」


 疑るように見るスコールに、バッツはそう言うつもりじゃないと首を横に振りながら弁明した。
それを受けて、スコールはちらりと自分の下肢を見る。

 バッツの言う通り、お漏らしをしたようにぐしょぐしょになった下着なんて、穿いていても気持ちが悪い。
だからバッツの言うことも判るのだが、スコールはあと二時間の授業がある。
月のものが来ている時なら、念の為の替えを用意しているものだが、今日はそうではない(そもそも月のものが来ているならもっとちゃんとバッツを拒否している筈だ)。
だから此処で下着を脱ぐとなると、スコールは残りの授業をそれで過ごさなくてはならない訳で。


(……でも……このままは、確かに…嫌だ……)


 まだ疼きと熱を残した所に、ぴったりと張り付いている、濡れたショーツ。
白のショーツが肌に張り付いて、隠すべきその肌の色を薄らを浮き上がらせていた。
時間が立てば少しは乾くかも知れないが、生憎、スコールにそんなのんびりとした時間も環境もない。

 スコールは心地良くも重い怠さのある体を起こした。
心配しての事だろう、引き留めようと腰を抱こうとするバッツを、スコールは手で制して、


「自分で…脱ぐ……」
「大丈夫か?」
「ん……だからあんた、ちょっと…あっち向いてろ」


 流石に下着を脱ぐ所を観察されるのは恥ずかしくて、スコールはバッツにそう言った。
バッツは行き場をなくした手を少し彷徨わせた後、何かを我慢するようにぎゅっと両手を握って、背中を向けた。
いつも好奇心旺盛な瞳が逃げてくれた事に安堵して、スコールもバッツに背を向け、先ずはこっちを直さねばと、ブラジャーを着け直した。

 力の入らない足でなんとか足元を踏ん張りながら、スコールは前屈みになって、ショーツを下ろしていく。
靴を引っ掛けないように、片足ずつ靴を脱いで穴から足を抜いた。
脱いだショーツは水分を吸って随分重くなっており、それだけスコールが吹いてしまったと言う事で、そう考えるとスコールは恥ずかしくて堪らないのだが、


(……気持ち…良かった……)


 バッツの指で上り詰めた瞬間の、なんとも言えない幸福感のような感覚を思い出して、スコールの貌が熱に火照る。
同時に秘奥がじゅわりと蜜を溢れさせるのを感じて、スコールは太腿を擦り合わせて力を入れた。


(これ、も……やばい、かも……)


 籠ったような熱で汗ばむスカートの中で、濡れた感触が直に太腿を伝っていくのが判る。
こんな状態で、あと数時間、学校で過ごさなくてはならないのか。
不安と緊張が過ぎる傍ら、奇妙な高揚感のようなものがスコールの胸中に渦を巻く。

 すぅすぅとした心許無い感覚が、濡れた秘部をずっと掠めていて、酷く落ち着かない。
かと言って、脱いだショーツをもう一度穿くのも躊躇われる。
そもそも、この脱いだショーツはどうすれば良いものか。

 回らない頭でぐるぐると考えるスコールを現実に戻したのは、「おーい」と言うバッツの声だった。


「大丈夫か、スコール。もう良い?」
「あっ……ああ、うん。平気だ。もう良い……」


 赤らむ顔を誤魔化すように逸らしながら、スコールはスカートのポケットにショーツを押し込んで振り返る。
バッツもようやく待ての状態から解放されて、ほっとした顔でスコールの方へと向き直りながら、腕に嵌めていた時計を見て、


「結構時間が経っちゃったけど。昼休憩、まだ大丈夫か?」
「……ん」
「そっか。じゃ、ほら」


 バッツの言葉に、スコールは携帯電話を取り出して、時間を確認した。
頷くスコールに安堵した表情で、バッツが両手を拡げて見せる。
スコールは素直にその膝の上に座り、見た目の印象よりも厚みのある胸に体を寄せた。

 とくん、とくん、と規則正しいバッツの鼓動にスコールが目を細めていると、ヴーッ、ヴーッと言う振動音が聞こえた。
おれかな、とバッツがポケットから携帯電話を取り出せば、ティーダからの着信が画面に表示されている。
二人の関係をよく知っている少年からの連絡となれば、無視する訳にも行かないだろうと、バッツは応答ボタンを押した。


「もしもし、ティーダ?」
『あっ、バッツ!やっと繋がった。もー、びっくりしたっス!』


 なんでいるのかと思った、と当然の疑問を投げながら、ティーダはそれよりもと問い直す。


『スコールは?一緒にいるんだろ?今どこ?』
「あー、うん。一緒一緒。ちょっと、えーっと、人気のない感じのとこで……おれがスコールに怒られてた」
『当たり前っスよ!俺もサイファーに捕まって散々な目に遭ったんだから、それ位とーぜんっス』


 電話の向こうで、それはそれは大変だったのだろうと判る程、ティーダの声は尖っている。
その声を聞きながらスコールは、本当にティーダはバッツが交流授業に潜り込む事を知らなかったのだと、授業の事を話したのも彼に悪気があった訳ではない事を理解した。
それ故に、女子校に潜入すると言うバッツの行動に対し、彼もまた肝を冷やしただろうと思いつつ、スコールは携帯を持つバッツの手を引っ張った。


「ん?あ、うん。ティーダ、スコールと変わるぞ」


 くいくいと手を引っ張るスコールに、バッツはその意図を組んで、ティーダに断ってから携帯電話をスコールに渡す。


「……ティーダ」
『スコール!大丈夫?せんせーとかに見付かったりしてない?』
「…今の所は。あんたもあまり騒ぐな、大事になる」
『うん、うん。判った。えーと……その、午後の授業、出れる?』
「出る。昼休憩が終わるまでには教室に戻るから、リノア達にはそう伝えておいてくれ」
『了解っス。そうだ、あの、バッツはさ、もう帰った方が良いと思う。うちの先生達がピリピリしてるっぽいから』
「……だろうな。判ってる、ちゃんと帰らせる」


 ちらりと蒼の瞳がバッツを見て、その瞳から滲む「判ってるよな」と言う声に、バッツも頷いた。
此処まで自分の我儘を許容してくれたスコールに、これ以上の勝手は出来ない。
スコールや、その幼馴染、共通の友人であるティーダにも迷惑をかけない為にも、バッツは早々に退散するべきだ。


「じゃあ、切るぞ。……サイファーには今度、俺からちゃんと言う。巻き込んで悪かった」
『まあ、サイファーの事は、別にいつもの事だしさ。スコールが謝んなくて良いって。んじゃ、また放課後な』
「ああ」


 詫びるスコールに、ティーダはいつも通りの声で返した。
その言葉と声に、スコールは少しだけ胸を撫で下ろして、通話を切った。

 液晶画面が暗くなった携帯をバッツに返して、スコールはバッツの胸にもう一度体を預ける。
ティーダに言った通り、早くバッツを校外に送り出さなければとは思うのだが、もう少し、重い躰を甘やかしていたかった。

 それから五分になるかならないか、スコールはバッツの膝の上で休んでいた。
午後の授業が迫る頃になって、スコールはようやく重い体を持ち上げて、教室に戻る事にする。
バッツはそれを見送ってから、体育館裏の傍のフェンスを上って、外に出る事にした───のだが、バッツがその場を離れるには、まだしばらくの時間が必要であった。


(……スコール、今、ノーパンで授業受けてるのかあ……)


 濡れた下着を脱いだ後、バッツの膝の上に座っていたスコール。
プリーツスカート越しに感じた、するんとまろい形の丘の感触を思い出すと、バッツは溜まった熱がまた集まってしまう。
流石に動ける状態ではなかったので、バッツは記憶に鮮やかな恋人の顔を思い出しながら、自身を慰めるのであった。