Vメント・メリーズ


 ゆっくりとファスナーを下へと引っ張って行くと、チチ、チチ……と小さな金具の音を鳴らしながら、噛み合っていた前が開いて行く。
薄いナイロンのメッシュ素材で隠されていた白い肌が、少しずつ露わになって行く様子に、バッツの喉がごくりと鳴った。

 薄水色の服の下から現れたのは、控えめながら形の良い胸元を包む、フリルのついた白いホルターネックのタンクトップ。
普段、ジャケット類を裾の短いもので合わせる事が多いので、シルエットはそれとそう変わらないが、胸元を飾るフリルが可愛らしさを演出し、水着とあってヘソが見えているのも普段と大きく違う点だ。
ファスナーを一番下まで下ろして、最後の留め具も外してしまうと、ビキニが現れる。
此方も白のビキニで、サイドに細い紐が蝶結びで飾られていた。
シンプルながら可愛らしいデザインのそれは、スコール自身では先ず手にしないものだろう────と、しげしげと見つめるバッツの予想は正しかった。


「スコール、こんな可愛いの持ってたんだ」
「……ちがう。俺、学校の授業で使うのしか持ってなくて、そしたらリノアが……」
「うん」
「……リノアが、折角だから買いに行こうって。それで、一緒に行ったから、リノアが選んで……」


 中々頑固なきらいのあるスコールだが、親友の見る目と言うのか、その押しにか、案外と弱い。
全幅の信頼と言う訳ではないのだろうが、彼女が言うなら、と甘くなってしまう事が多いようだ。

 その結果が、このフリルを使った甘めの水着。
皆の輪から離れる前に泳いだのだろう、彼女の肌はしっとりと湿っている。
水着も乾き切ってはおらず、白い布地が水分を含んで、少女の肌にぴったりと張り付いていた。


「サンダルも買った?」
「……持ってなかったから。リノアに選んで貰って」
「役得だなあ」
「……俺は疲れた。着せ替え人形みたいにされて」
「でも嫌がらなかったんだ」
「…楽しそうだったし……どうせ俺、どれが良いのか判らないから」


 見詰める視線から落ち着きなく逃げるように、スコールは視線を彷徨わせながら答える。
右手がそわそわとラッシュガードの裾を摘まんで、バッツに拓かれたファスナーを閉じたがっているようだった。
でもすぐに隠されるのは勿体ない、とバッツはその手を捕まえるように握ってやる。

 耳元に顔を近付け、すん、と鼻を鳴らしてみる。
ぴく、とスコールの肩が震えたが、彼女は耐えるように目を瞑っていた。
それならと首筋に顔を近付けてみれば、潮の香りが鼻孔を擽る。


「泳いだ?」
「……ん」
「競争したってティーダが言ってた」
「……した。何度もやったから、疲れた」


 そんなに泳いだのか、とバッツは少し意外に思った。
スコールの事だから、それ程アクティブな事はしないと思っていたのだが、やはり気心の知れた友人たちと一緒にはしゃいだのだろう。
その様子も見たかったなあと思いつつ、バッツはスコールの首筋にキスをする。


「んっ……」


 ちゅう、と吸われる感触に、スコールの体がふるりと震えた。
その反応がもっと欲しくて、吸った所に舌を当てると、


「バッツ……、待っ……」
「ん……」
「ふ……ん……っ!」


 海水の匂いと味のする首筋を、ゆっくりと舐める。
スコールは握られた手に力を入れて、バッツを止めようと体を捩った。
それを、掴む力を込めて阻止するとバッツだったが、


「あいつらがいるから……!」
「むぅ……そうだよなぁ」


 此処に二人で来ている訳ではないのだと、スコールの制止する声に、バッツの理性も戻ってくる。
今のバッツは束の間の休憩時間だから、あと一時間もすれば海の家に戻らなくてはならないし、スコールも仲間達に心配をかけたくないだろう。
始めてしまえば絶対にすぐには戻れないと判っているだけに、此処で思いの丈をぶつけてしまうのは宜しくない。


(ゴムもないからなあ。でも……勃っちゃってるんだよなぁ、おれ)


 短パンの中で、バッツのシンボルは窮屈にな事になっている。
それはスコールの水着姿を自ら暴いて行った時からで、すっかり興奮が形になってしまっていた。

 眉根を下げるバッツの顔に、スコールの視線がそろりと下へ降りる。
夏に見合ってバッツもいつも以上に薄着でラフな格好をしているから、其処がどうなっているのかも判り易かった。
しっかりと目に入ったそれを見詰め、かああ、とスコールの頬が赤くなる。
そんな初心な少女の様子に、バッツも彼女が何を見ているのか理解した。

 スコールはじっとバッツの下肢を見詰め、眉根を寄せたり、唇を開いたり閉じたりと落ち着かない。
バッツに捕まえられたままの両手が、抵抗するように握り開きを繰り返していたが、力で振り払おうとまではしなかった。
それが彼女の葛藤を表しているようで、バッツはその答えが出るのをじっと待つ。
彼女に選択権を委ねると言う、年上としては非常に狡い事をしているなとは自覚しながら。

 うう、と唸るような声を零した後、スコールははあっと息を吐いた。
そろそろと蒼の瞳が目の前の男へと向けられて、夏の日差しではない理由で頬が赤くなる。


「……バッツ」
「ん」
「……口、でも……いいか……?」


 此処でするのは流石に憚られる。
けれど、自分を見て興奮してくれた恋人の様子は、スコールも嬉しくない訳ではなかった。
寧ろ伝染するように自身にも熱が宿って来て、触れたい、と言う思いさえ浮かんで来る。

 バッツが「良いの?」と訊ねると、スコールは聞き直すなと言いたげに視線を外す。
やっぱり辞める、と言われてしまう前に、バッツはスコールの頬にキスをした。

 スコールはバッツの手を引いて、磯の岩陰へと向かう。
誘われるままについて行ったバッツは、一つ大きな岩があるその影に隠れた。
バッツが岩を背に立つと、スコールはその正面でしゃがみ込み、テントを作っている短パンにそうっと触れる。


「……おおきい……」


 無意識に零れたのだろうスコールの呟きに、バッツもなんとなく恥ずかしくなった。
白い指が布越しに中心部に触れて、感触を確かめるようにやわやわと揉む。

 バッツが短パンのベルトを外し、ファスナーを下ろすのを、スコールはじっと見詰めていた。
青のトランクスが膨らみを突きつけるのを見て、スコールが僅かに緊張したように小さく喉を鳴らす。
白い手がもう一度、そろそろと伸びて来て、ゴムの緩いトランクスの前を引っ張った。
直ぐに頭を出した雄の象徴の有様に、スコールの頬が益々赤くなる。


「……ん……」


 亀頭の先端に、薄いピンク色の唇が触れた。
キスをされてぴくりと頭が反応するのを薄眼に見て、スコールはそうっと口を開ける。
恐る恐るに伸ばされた舌が、ぴちゃ、と唾液の水音を立ててバッツに触れた。


「スコール……っ」
「……んむ……」


 竿に柔らかく手を添えて、スコールはゆっくりと雄を咥内へ含んで行く。
小さな口が自身を飲み込んで行くのを見て、バッツは益々血が滾るのを感じていた。

 ぺろぺろとアイスキャンディーを舐めるように、スコールの舌が亀頭を舐めている。
口の中から鼻の奥へ、男の精の匂いが抜けていくように伝わって、スコールはそのまま匂いが脳へと上って行くような気がした。


「あ、むぅ……」


 出来るだけ口を大きく開けて、スコールはバッツを精一杯に飲み込む。
それでもまだ躊躇があるのか、彼女の口がどうしても小さいからか、ペニスは半分までしか食べられなかった。
そのままスコールは口を窄め、頭を小さく前後に動かし、ちゅぽ、ちゅぽ、と口蓋で雄に奉仕を始める。


「んちゅ、んむ……んっ、んっ……♡」
「スコール……は、えろ……っ」
「んん……っ♡」


 潮の寄せる岩場に隠れるように座り込み、雄を頬張る少女の姿に、バッツはこの上なく興奮していた。
いつも自分の家で見ていた光景が、背景が違うだけで、こんなにも熱を滾らせるとは思わなかった。
スコールが裸ではなく、ラッシュガードと水着姿だと言うのもポイントが高い。
前を開いたラッシュガードの衿周りが開いて、肩からずり落ち、肩や首回り、背中もちらちらと見えている。
海で泳いでしっとりと濡れた肌が、燦々と照らす太陽の光を反射させて瑞々しかった。


「スコール、先っぽもっと舐めて。舌の先端で」
「んちゅ……んん、れろ……っ」
「っは……、う……!」


 バッツが強請った通り、スコールは舌先で雄の先端をちろちろと擽るように舐める。
敏感な鈴口を苛めてくれる舌の動きに、バッツはどくどくと血が逸るのを感じながら息を詰めた。
スコールはそれをちらりと見遣ると、より積極的に、亀頭全体をしゃぶるように舌を動かし始める。


(そういや、二週間ぶりだっけ)


 いつもよりも大胆さが感じられる舌の動きに、バッツはそんなことを考えた。
バッツのアルバイトと、スコールも宿題やら家事やらと忙しく、夏休み中に逢える機会はとんと減っている。
仕方のない事だし、お互いに理解している事ではあったが、やはりバッツはスコールに逢いたくて逢いたくて仕方がなかった。
本当はもっとデートもしたいし、セックスだってしたい。
スコールと付き合うようになってから初めての夏なのだから、やりたい事は幾らでもあったが、仕方がないと我慢していたのだ。
当然、熱の交換も我慢の日々だった訳で────

(スコールも、我慢してたのかな。だったらちょっと嬉しいかも)


 二週間ぶりの、思わぬ所での恋人との逢瀬。
人目に隠れて、仲間達に怪しまれない内に戻らないと、と思ってはいるけれど、バッツはどうしても我慢が出来なかった。
彼女の方からしてくれると言ってくれたなら尚更だ。

 スコールはしゃぶっていたペニスから口を離すと、はふ、と息を吐いた。
呼吸を整えた後は、竿の横に唇を寄せて、ぺろりと舐める。
以前にバッツが教えたように、根本を握って手を動かして、しゅこしゅこと手淫も始めてくれた。


「れろ……ん、はむ……っ♡」


 唇がはくりと竿を横から食んでくれる。
その唇の隙間から舌が竿へと宛がわれ、唾液を塗り込むようにぐりぐりと押し付けられた。


「ん、あむ……バッツ……」
「うん、気持ち良いよ」
「んちゅ……あむぅ……っ」


 口淫している時に名前を呼ぶのは、バッツの反応が気になっている時だ。
バッツが心地良さに目を細めながら答えれば、スコールは嬉しそうに双眸を細める。
そして支えもいらない程にしっかりと起立したペニスに顔を寄せると、血管が浮き上がった裏筋に舌を這わせた。


「れろ……っ」
「……っスコール……!」
「ふん……んぁ……♡」


 スコールは口を開けて、ぐっと舌を伸ばし、竿を舐めた。
ぺろぉ、と根本から先端の方へ、滲み伝う先走りの通り道を丁寧になぞって行く。

 少女がいやらしい奉仕を一所懸命にしている姿がいじらしくて、バッツの鼻の穴が膨らむ。
じっと見下ろす男の視線は、恥ずかしがり屋の彼女にはきっと耐え難い事だろう。
それでも、目を閉じて、はあ、はあ、と吐息を零しながら雄を慰めようとしてくれる。
それが益々、バッツの熱を煽っていた。

 バッツは赤らんだスコールの頬に手を添えて、ゆっくりと撫でながら耳元に指を持って行った。
耳朶の裏を指先で摩ってやると、ひくん、とスコールの肩が震える。
しゃがみ込んで揃えている膝がもじもじと身動ぎしているのが見えて、彼女が感じている証だと言う事が判る。


「んむ……バッツ、ん……っ」
「耳、気持ち良い?」
「やだ……ん、んっ……!」
「もう一回裏っかわ舐めて」
「は……あ……っ」


 耳朶を摩りながら強請るバッツに、スコールは眉尻を下げながら、また舌を伸ばす。
舌の腹を竿の裏筋にぴったりと当て、氷を転がすように舌の筋肉を動かすスコール。
唾液塗れの舌が丁寧に雄を舐め上げる度、潮の音に隠れるように、ぴちゃぴちゃと淫音が鳴った。

 いつまでもバッツが耳朶を触るのを辞めないものだから、スコールはその指が動くだけで、無性にむず痒さを感じてしまう。
その感覚は首筋の神経を伝わって降りて行き、腹に染み渡るように溶けて行き、下肢へ。
其処で熱を感じてしまうと、大事な所が勝手にじんわりと濡れて来て、無性に目の前にいる人が欲しくなってしまう。

 とくとくと逸る心音に後押しされて、スコールの奉仕は大胆さを増して行く。
竿を包み込むように握って、根本を上下に扱きながら、先端に唇を寄せた。
窄めた唇で鈴口をちゅうっと吸うと、バッツが「うっ」と小さく唸り、苦いものがスコールの唇を濡らす。
とろとろと溢れ出してきたものを舌で丁寧に舐め取っていると、


「は、スコール……っ、出そう……!」
「ん……はむぅ……っ♡」


 バッツの訴えを合図に、スコールはペニスをぱくりと食んだ。
亀頭の裏側を舌で丹念に嘗め回せば、どんどん溢れ出してくる精子で舌が白濁液で汚れて行く。
決して良いとは言えない味わいに眉根を寄せるが、スコールはバッツの其処から離れようとはしなかった。
寧ろ、バッツの太腿に縋るように手を添えて、思い切って喉前までバッツを招き入れる。


「あ、ぉん……っ、ん、ぉ……っ♡」
「うあ……!」


 思った以上の息苦しさを感じたスコールの喉が締まり、きゅう、とペニスを締め付ける。
温かくて湿った肉が雄剣を強めに包み込むのを感じて、バッツは思わず声を上げ、


「はっ、ふっ、出る……っ!スコールっ」
「う、ん♡んんん……っ!」


 どくん、とスコールが咥内で脈打つものを感じた直後、バッツは彼女の喉奥へと自身の欲望を注ぎ込んだ。

 恋人との逢瀬が出来ず、淋しさを誤魔化しながら自己処理はしていたバッツだが、やはりそれで全てが発散できる訳もない。
久しぶりに恋人の奉仕にたっぷりと愛されたバッツは、二週間分の熱をスコールに注いでいた。
それはやはりまだまだ初心な彼女に受け止め切れるものではなく、


「ん、ぷ、ぷぁっ。あう、んっ……!」


 溺れそうな感覚に陥って、堪らずスコールがペニスを解放する。
後ろに尻餅をついたスコールの足元から、ぱしゃん、と水音が鳴った。
ぶるんっ、と放り出されたペニスが弾んで、まだ受け止めて貰えなかった白濁液が少女の顔に降り注ぐ。

 けほけほと咳き込むスコールに、バッツは余韻に浸る暇もなくしゃがんでその顔を覗き込む。


「ごめん、一杯出ちゃった。大丈夫か?目入ってない?」
「ん、こほっ……大、丈夫……ん……っ」


 バッツに目元を拭われつつ、スコールは自分の手で唇の周りを拭いた。
舌に残る苦味を、少し頑張って飲み込んでいるスコールに、無理しなくて良いのにとバッツは苦笑しつつも、恋人に喜んで貰いたいと頑張る少女のいじらしさにまた興奮してしまうのだった。


「な、スコール。もうちょっとだけ時間、良いか?」
「ん……多分」


 スコールはバッツの腕にある時計をちらと見て頷いた。
それじゃあ、とバッツはスコールの手を取って立ち上がらせる。


「あのさ、素股させて貰っても良い?」
「すまた……?」


 バッツの言葉に、スコールはことんと首を傾げる。
やっぱり初心だなあ、とこの手の事に今でも疎い節のある少女に、バッツは背徳じみた劣情を覚えてしまう。


「こっち立って、石に手ついて。足揃えて」
「……こうか」


 バッツに言われる通り、スコールは大きな石影に手をついて、足を揃えて立つ。
背後にバッツが回り込むと、スコールは少し不安そうな表情を浮かべ、首を巡らせてその動向を追った。
怖い事はしないからと、赤みの浮かんだ頬を撫でると、僅かに蒼の眦が緊張を緩める。

 バッツはスコールの真後ろに立って、細い腰に両手を添えた。
ぴくり、と微かに震えるスコールの背中に身を寄せ、体温を分け与えるように密着すると、少女の呼吸の音が聞こえて来る。
それを心地良く聞きながら、バッツはスコールの太腿の隙間に、白濁液で濡れたペニスを差し込んだ。


「!ちょ……」
「入れないから、大丈夫」


 その表面を覆う薄膜がない事もあって、まさか挿入するのかと慌てるスコールに、バッツは耳元で囁いた。
恐々とした瞳が肩越しにバッツを見詰め、信じて良いんだよな、と言っているのが聞こえる。
バッツが耳元にキスをすれば、スコールは緊張しつつも、また前を向いて、背後の男に身を委ねた。

 バッツはスコールを捕まえたまま、ゆっくりと腰を前後に動かし始めた。
スコールの口淫で射精したペニスは、唾液と精液でねっとりと濡れており、ぬちゃ、ぬちゃ、と艶めかしい感触を纏わりつかせながら、その胴を少女の太腿に擦り付けている。


「ん……、バッツ、これ……んっ……!」
「スコールの太腿、すべすべしてて気持ち良いな」
「は…っ、ばか……っ!」


 何を言っているんだと、怒った顔をしてみせるスコールだが、ぬちゅり、とペニスが腿を擦る感触に、ひくんっと背中を仰け反らせる。


「気持ち悪い?」
「う、んん……っ」


 バッツが尋ねると、スコールは唇を噤んでいるばかり。
戸惑っているのだろうとはバッツも考えたが、嫌とも平気とも言わないのは、やりたい、と恋人が言った事だから、我慢をしているのかも知れない。
何処までも優しい恋人に甘やかして貰える事に感謝しつつ、バッツはスコールの項にキスをした。


「スコール、もうちょっとだけ足閉じれる?」
「う……」


 きゅ、とペニスを挟む太腿の密着感が増す。
ありがとう、とバッツがスコールの背中にちゅうっと吸い付けば、小さな花が其処に咲く。
それを見てから、不味かったかなあ、と少女の友人たちのことを思い出したが、今更バッツは止まれなかった。

 バッツの腰骨が、スコールの尻たぶに当たって音が鳴る。
それが繋がっている時を彷彿とさせて、バッツだけでなく、スコールの熱も煽って行った。


「は……バ、ッツ……!」
「こっち向いて」
「はぁ、は……ん、むぅ……っ♡」


 名前を呼んでくれる彼女にねだれば、やはりこれも応えてくれた。
振り返った彼女の唇に、自分のそれを押し付ければ、スコールは一瞬驚いたように目を瞠る。
それを宥めるように舌を絡めて吸ってやると、スコールはビクッビクッと震えながらも、とろりとその眦を蕩かせた。


「ん、んん……っあ、ちょ……!」


 解放されたスコールが思わずストップを口走ったのは、バッツの手がいつの間にか胸元を包んでいたからだ。
水着の上から形の良い乳房を揉まれ、ぞくぞくとした感覚が少女の背中を駆け抜ける。


「あ、や……はっ、んんっ……!」
「おればっかりじゃなくてさ、スコールも気持ち良くしてあげたいんだ」
「んあ……あっ、やぁ……んっ……!」


 バッツの囁きに、スコールはいやいやするように体を捩った。
しかし岩についた手はまだ其処に縋っていて、背中に覆い被さる男を振り払おうとはしない。

 フリルの上から探るように、少しずつ指の位置や角度を変えながら胸を揉む。
スコールの僅かずつ異なる反応に耳を傾けつつ、この辺り、と中指の腹でくりっとポイントを押すと、


「あっ」


 思わず、と高い声を漏らすスコールに、バッツの唇が笑みを浮かべる。


「ここ?」
「あっ、あ……!や、バッツ……あっ……!」


 いつもバッツが丹念に育てている蕾。
そこをピンポイントに捉えられて、スコールの薄い腹がヒクッ、ヒクンッ、と弾んだ。

 水着の上から乳首をコリコリと擦られて、スコールはもどかしい刺激に身を捩る。
くすぐったいような、痒みに似たような、物足りなさを呼ぶ感覚に、噤んだ口の隙間から甘い吐息ばかりが漏れる。


「ん、ん……ふ……っ♡」
「はぁ……ふっ、んっ……!」


 スコールが胸の刺激に悶える度、バッツの唇からも息が零れた。
もどかしさにスコールが身を捩り、疼く体を誤魔化すように膝を擦り合わせるものだから、太腿が挟んだペニスにすりすりと肌を擦り付けるのだ。
その刺激がバッツももどかしくも愛おしくて、スコールの乳首に益々意地悪をしてしまう。

 シルエットから見ても細身である事が明らかなスコールだが、やはり太腿にはほんのりと肉がついている。
その柔らかな肉感が、隙間に侵入したペニスを包むように挟んでいた。
水に濡れて肌表面がひんやりとしている反面、包む肉感はほんのりと温かくて、バッツはスコールの中の温度を思い出す。
外気に晒されている事や、すべすべとした感触はやはり思い描くものとは違うが、白い太腿に欲望を擦り付けることが、清いものを自分の色に染める行為に似ている気がした。


「は、ふ、んん……っ!」


 甘い声を上げるスコールに、バッツは堪らなくなって、目の前にある柔らかそうな耳朶を食んだ。


「ふぁっ!やぁ、バッツ……!あっ、耳っ…噛むなぁ……っ!」


 スコールは涙を浮かべて訴えるが、バッツは構わず、耳朶に柔らかく歯を立てる。
ビクッと震えるスコールに、噛んだ其処に舌を当てて宥めると、ああ、と悩ましい声が聞こえた。

 バッツの手がスコールの水着の下へと挿入され、直に乳房を揉む。
むに、むにゅ……と慎ましくも温かく柔らかいその感触に、バッツは夢中になって揉みしだいた。


「は、あぁ……あっ、んぁ……!」
「乳首、膨らんでる」
「あっ、摘まんじゃ、あんっ♡」


 ツンと勃った乳頭を、親指と人差し指で摘まんでやれば、高い声が漏れた。
そのままクリクリと転がすように乳首を苛めると、スコールはぞくぞくとした感覚が走る背中を撓らせる。
岩に縋るように身を寄せるスコールを追って、バッツはやはりぴったりと彼女の背中に密着し、愛らしい蕾を摘まんだり引っ掻いたりと可愛がる。


「はぁ、あ、あぁっ……♡」
「スコール、足閉じて。おれのちんこ、ぎゅって挟んで」
「う、んぅ……ふ、ふぁ……っ♡」


 胸への攻めに悶えながら、スコールは両足をぴたりと閉じる。
股に挟まれたペニスが、どくどくと脈を打って固くなっているのを感じて、スコールの顔が赤らんだ。


「ば、っつ……う、んっ、んん……っ♡」
「は……はっ、はっ、はっ……!」


 バッツが再度腰を振り始めれば、ぬちゅぬちゅと音を立てて、ペニスがスコールの太腿を擦る。
ぬるついた肉棒が何度も股間を前後に動き、肌を白濁で濡らしていく。

 バッツはスコールの胸を鷲掴むように抱くと、腰の動きを激しくして行った。
ぱん、ぱん、ぱん、とまた響き始めた皮膚のぶつかる音が、徐々にペースを上げて行く。
バッツが自身を高めていることに気付いたスコールは、胸を抱くバッツの腕を縋るように捕まえて、


「はっ、バッツ、バッツ……!あっ、だめ、あっ……!」
「んっ、スコール……!はあ、入れたい……っ、スコール……!」
「あ、や、あぁん……っ、あ、あそこ、擦れてるぅ……っ!」


 前後ストロークを繰り返すバッツの一物が、水着越しにスコールの秘園を擦り上げている。
彼女の其処はすっかり蜜で溢れていて、バッツを受け入れる準備を整えていた。
そんな所に、直接ではないけれど感じずには入られない刺激を与えられるのは、スコールにとって耐えられるものではなく。


「バッツ、あ、あ……!やぁ、来て……あう、んんっ♡」
「スコール、このまま、出すから……!」
「あう、あっ、んくぅっ♡バッツ、ぅ……!」
「太腿キュッてして来た。はあ、気持ちい……スコール、スコール……っ!」


 バッツの先端から先走りの蜜が溢れ始め、スコールの太腿に、秘部を覆う水着に粘液を擦り付ける。
スコールが細めた双眸で視線を落とせば、股間から出たり入ったりを繰り返す亀頭が見えた。
目にした瞬間、ぞくぞくとしたものが背中から脳髄まで駆け抜けて、体が熱を迎える予兆に強張る。
力んだ太腿が、隙間にあるものをきゅううっと締め付けると、


「うぅっ!」
「ふっ、あっ♡んんんっ♡」


 背後で歯を食い縛るバッツの声を聴きながら、スコールも彼と共に上り詰めた。
水着の内側で、ぷしゅぅっ、と蜜が飛沫になって噴き出し、吸水性の良い布地に染み込んで行く。

 スコールの太腿に、どろりと生暖かい液体が飛び散って、白い肌の上を流れ落ちて行く。
内股になってひくひくと下肢を震わせているスコールを、バッツは檻に閉じ込めるように強く抱きしめていた。
その腕の力強さが、逞しさが、本格的な熱を宿したスコールに一層の餓えを自覚させる。

 ────が、


「ふ…あ……」


 かくん、とスコールの膝から力が抜けたのを、バッツが掬い上げるように支える。
そのままゆっくりとバッツが座り、スコールはその膝上へと座った。

 スコールはとろんと瞼を蕩かせて、濡れた舌を覗かせながら、はあ、はあ、とあえかな呼吸を繰り返す。
バッツはそんなスコールの耳元にキスをしながら、乱れたスコールのタンクトップを綺麗に戻した。


「ありがと、スコール」
「ふ……ん……」


 我儘に答えてくれた初心な恋人に、感謝を込めてキスをするバッツ。
スコールはそれを受け止め、ちろりと唇を擽るバッツの舌の感触に、うっとりと身を委ねていた。

 しばらく戯れのキスを堪能した後、バッツはそっとスコールの唇を解放する。
自由になった呼吸に、スコールは少しの間息を整える事に終始してから、顔を上げた。


「……もう、良いのか?」
「うん。スッキリ出来た」
「そう、か。なら、良かった」


 こつん、とバッツの肩にスコールの頭が乗せられる。
初めての事を経験して、気持ちも体もやはり疲れがあるのだろう。
バッツはそんなスコールの頭を撫でて、心地良い肩の重みに頬を緩める。


「結構出しちゃったな。ここ、綺麗にしとくから」
「……ん」


 バッツの昂ぶりを受け止め続けたスコールの太腿は、すっかり性の色で汚されている。
幾らなんでも、此処をこのままにして皆の所に戻る訳にはいかないだろう。
あるのは打ち寄せる波の潮水しかないが、真水でなくともないよりはマシと、バッツは片手で水を掬っては彼女の下肢にかけ流した。

 しばしの休息時間を取った後、バッツはスコールの手を引いて、友人たちが待っている筈の浜へと帰った。
皆と合流した途端、サイファーとスコールが即座に口喧嘩を始めると言う事態にはなったものの、友人たちは慣れた光景だと両者を宥めてまた遊び始める。
バッツはそんな少年少女に別れを告げて、名残を惜しみつつ、海の家へと戻ったのだった。




 リゾート地として知られているだけあって、ホテルの周囲には色々な飲食店が並んでいた。
個人の店は勿論、全国展開しているチェーン店まで、またチェーン店はこの土地地域だけの特別メニューを出している所も多く、他店との差別化を図りながら客を奪い合っている。

 色々食べたい、と言うリノア、ティーダ、セルフィ、ゼルの年下組の希望から、一同は居酒屋に入る事にした。
酒など飲めないが、一品料理の種類が豊富である事は勿論、大皿や鍋などシェアし易いものが多い事が決定打になった。
───バッツがバイトしてる人の店はどうかな、と言う話はあったのだが、聞いていた店の場所に行ってみると、カウンターからテーブル席まで満員御礼だ。
スコール達も中々の大人数であったし、残念だけど諦めよう、と相成った。

 一日たっぷりと遊んだものだから、少年少女はそれはそれはよく食べた。
元々が健啖家であるティーダやゼルは勿論、セルフィも皆の頼んだメニューを一口ずつ貰ったり、リノアとスコールもお互いに注文したものを分け合ったり。
賑々しい年下組に、キスティスはいつも以上に世話を焼いていた。
酒が飲みたい、と宣ってくれるのはサイファーで、此処で補導は勘弁してよ、とアーヴァインが眉尻を下げる。
大人になったらまた来よう、その時は皆で酒を注文しようと言ったのは、セルフィだ。
アルコールの摂取が許されるまで、年上組はあと二年、年下組は三年───その時までこうして皆で集まる付き合いが続いているなら、それは良いことなのかも知れない、とスコールはこっそりと思った。

 存分に満たされた腹を宥めながらホテルへと帰ると、次は大浴場だ。
女子も男子も、広々とした湯舟を楽しみ、露天風呂も堪能した。
それぞれの発育の様相に微妙な悲喜交々ありつつ、男子は用が済むと各自で上がり、ロビーの土産物屋で暇を潰す。
女子は男子よりものんびりと過ごして───スコールの背中に咲いた真新しい花に、黄色い声を上げたりしつつ───、お互いの髪を乾かし合ったりと、日常生活では出来ない事を楽しんだ。

 部屋へ戻ってしばらくは、男女分かれて寝室で長閑な時を過ごしていたが、いずれも寝るには早い時間だ。
引率の教師がいる修学旅行でもあるまいし、このまま寝るなんて勿体無い。
そう言ったセルフィに、リノアがトランプを取り出し、キスティスに「持ってるでしょう?」と言われたスコールが『トリプル・トライアド』を荷物から出した。
となればあちらも誘わない手はないと、皆で男子部屋をノックして、共有のリビングでカード大会が始まった。

 ババ抜きのカード選びに一喜一憂の声が響く傍ら、『トリプル・トライアド』に興じるスコールとキスティスの表情は真剣だ。
共にこのカードゲームに一心を捧げる者であるから、どちらもプライドから勝利を譲る事は出来ない。
始めこそ他の皆とトーナメント式で相手が変わっていたものの、最終的には大方の予想通り、この二人の睨み合いとなった。

 そんな二人の読み合い勝負も、三本勝負の最後となり────


「属性によりステータスをプラス、」
「あっ」
「セイムコンボで俺の勝ちだ」
「ああん、もう!」


 ぱたぱたと陣営を引っ繰り返される展開に、キスティスが常の理知的な顔をかなぐり捨てて、歯を食いしばる。
先程の試合で、追い詰めてからの逆転勝ちをもぎ取ったキスティスにとって、綺麗にやり返された試合となった。


「悔しいわ。スコール、もう一回だけやらない?」
「別に俺は構わない」


 爪を噛むキスティスの提案に、スコールもこのカードに限っては何度でも、と言う気持ちで答えようとしたが、ポケットに入れていた携帯電話が着信音を鳴らしていた。


「悪い。ちょっと」
「ええ、良いわよ。あっちで話す?」
「ん」


 席を外すと言うスコールに、キスティスはカードの山を整えながら見送った。

 こんな時間に連絡なんて、ラグナだろうか。
部屋を移りつつ、携帯電話を取り出して液晶画面を見てみると、


(バッツ)


 恋人からの着信に、思わずスコールの胸がどきりと高鳴った。
寝室に移ってからで良かったと、判り易く反応してしまった自分を自覚しつつ、自分のテリトリーである二段ベッドの上に上がって、通話ボタンを押す。


『もしもし、スコール?』
「……ん」


 聞こえてる、と返事をすると、電話の向こうで嬉しそうな声が聞こえた。


『今大丈夫か?』
「ああ」
『そっか。もう寝ちゃったかと思ってた、昼間結構遊んでたみたいだし』
「……俺は寝ても良かったけど、リノア達が遊び出したから。カードもあったし」
『トランプか』
「それもあるけど」
『あ、スコールが好きなやつ?皆も出来るんだっけ。良いなあ、楽しそうだ。おれもそっち行きたい』
「あんたは……一人なんだったか」
『そうそう。宿代浮かせる為に、海の家で寝させて貰ってるから。他のバイトは地元の奴等だし、帰っちゃうからさ』


 浜辺の海の家で、一人で寝泊まり。
気儘と言えば気儘そうだが、退屈と言えばそうなのかも知れない。
仲間達と一緒の夜を過ごす恋人を羨ましがるバッツに、話し相手か暇潰しの道具くらいは欲しいだろうな、とスコールは思った。

 ───と、それから少しの間、電話の向こうは静かだった。
時折車が走る音が聞こえる程度で、時間もそれなりに遅い所為か、それ程頻繁に行き交っている訳ではないらしい。
それ程静かな場所にバッツがいるのだと言う事が、スコールにはなんだか不思議だった。


「……バッツ?」


 電話を切るでもない、しかしいつものようにお喋りをする様子もない恋人に、スコールが訝しんで名前を呼ぶと、


『……あのさ、スコール』
「なんだ」
『今さ、ホテルの前にいるんだけど。ちょっとの時間だけで良いんだけどさ。来れる?』
「……!」


 思いも寄らなかったバッツの言葉に、どきりとスコールの鼓動が跳ねる。
二度目の心臓の高鳴りに、俄かに顔が赤くなるのを感じて、スコールは火照った顔を思わず隠しながら、


「あんた、」
『……皆と一緒に来てる旅行だってことは、判ってるつもりなんだけどさ。駄目なら良いんだ、皆にも言い難いだろうし』
「………」


 バッツの言っている事は間違っていない。
皆で楽しく過ごしている所へ、「恋人の所に行ってきます」なんて言える程、スコールはまっしぐらになれる性格をしていない。
寧ろ恥ずかしくもあり、気不味くもあり、そもそもバッツと一緒に夏を過ごすのは諸々の理由から諦めていたつもりなのに今更、とも思う。
昼間だってこっそりと隠れて彼の熱を感じて、そんな事をしたものだから女風呂で一悶着があった訳で。
あれから数時間と経っていない内から、その原因となった人物の下に赴くと言うのは、如何なものか。

 ───と、理性の方は理解しているが、頭と心は別物だ。


(あれからずっと……あそこが、熱い……)


 磯の岩に隠れて、猛った彼を慰めた時。
水着の中で濡れてしまう所か、表面から与えられるもどかしい刺激で、スコールはイった。
とは言え、中に熱を貰った訳ではなかったから、なんとも中途半端な感覚が残っていて、密やかな疼きがずっと其処を苛んでいる。
そんな所へ、電話越しの恋人の言葉を聞いて我慢が出来る程、スコールも理性的な人間ではなかったのだ。


「……いく」
『ほんと?でも、大丈夫か?』
「……なんとかする。すぐ行くから」


 無理しなくて良いんだぞ、とバッツは言ったが、スコールは気にしなかった。
待ってるよ、と言うバッツの声を聴いてから、通話を切る。

 消えた液晶画面を見詰め、よし、と気合を入れるように顔を上げる。
直ぐにベッドを降りよう───としたスコールだったが、そこからじっと見つめる黒々とした瞳にぶつかって、びくりと固まった。


「……リ、ノア」


 二段ベッドの枠の外から、覗き込むようにじいっと見詰めて来る親友。
ホラー映画か何かか、と口端を引き攣らせるスコールであったが、名前を呼ばれたリノアはに〜っと笑い、


「今の、バッツさん?」
「………」


 訊ねる形ではあったが、リノアの表情は確信を持っている。
嘘を言った所で通用するものでもなく、スコールは赤い顔を俯かせて縮こまった。

 悪いことが見付かった子供のような反応をする親友に、リノアは眉尻を下げてくすくすと笑う。


「行きたいんでしょ。良いよ」
「……でも」
「皆には私が上手く言っとくから」
「……あんた、嘘つくの下手だろ」
「う〜ん、頑張る。だからほら、ね?」


 行っておいで、と促すリノアは、あくまでスコールの恋を応援してくれると言う。
見詰める瑪瑙の瞳は何処までも愛情深く、親友の背中を押してくれていた。