Tプレイング・エクストラ


 どちらかと言えば淡泊、もっと正確に言えば、興味がない、と言うのが正しかったと思う。
スコール自身、性的なことへの関心と言うのは大して持ってはいなかった、それで認識は間違っていない、と自覚する。
だから、セックスとは何か、どうすることか、なんてものは、精々が保健体育の授業で習ったものと、後はちらほらと漏れ聞こえる、同年代の猥談が精々であった。

 それで何ら問題はなかったのだから、スコールも深くは気にしていなかった。
下ネタに顔を顰める程に潔癖症ではなかったが、それは自分とは全く関係ない話だと思っていたから、と言うのも多分にある。
幼馴染の異性は数として少なくはないが、彼らとそれ以上の間柄になることもないし、根本として、恋愛沙汰に興味がない。
なんなら、誰と付き合っただの、別れただの、寝取られただのと、甲高い声で少女たちが噂するそれが、煩わしく感じていた。
他人との交流にも腰が重いスコールにとって、悲喜交々と妬み嫉みの交じり合う恋愛などと言うものは、近付きたくもないカテゴリだったのである。

 ───そんなスコールだが、現在、その隣には唯一無二の恋人がいる。

 三つ年上の大学生で、バッツ・クラウザーの名を持つ彼は、なんでもスコールに一目惚れをしたらしかった。
会って間もない頃から分かり易い猛アタックをしてくる彼に、そんな人間に初めて遭遇した混乱もあり、逃げ回っていたスコールだが、結局は彼を受け入れることに落ち着いた。
勿論、それは成り行き任せの話ではなく、バッツの方からも随分と大事にされている、したいと思われている、と言うことが感じられたからだ。
擦れ違いの紆余曲折は話にすれば長いものになるが、ともあれ、晴れて二人は恋人同士になった。

 そして、こうなると、“性的な関係”もついて来る。

 始めこそ、バッツはスコールの年齢や気質も考えて、随分と堪えていたらしい。
慣れない人間からの接触を厭うこと、元よりスキンシップが好きではないこと、深く繋がり合ったこともない───と言うことで、バッツは無理強いは絶対にするまいと思っていたそうだ。
しかし、彼の友人たちの証言に因れば、バッツ自身は随分と早熟だったそうで、スコールと出会うまでに沢山の恋人たち(と言うと股でもかけていそうだが、同時期に複数の恋人を持ったことはないとのことだ)との経験を過ごしていたとか。
そんな男が、恋人になった筈のスコールには一切手を出してこなかったのだから、反ってスコールは不安になった。
子供扱いか、将又そもそも揶揄っていたのかと、誰にも言えずにパニックまで陥った。
結局、それはスコールの考え過ぎだったのだが、ともかく、そのあたりの頃から、スコールの“性的な知識”に関する扉は開かれたと言って良いだろう。

 何もかもが初めてだったスコールに、その手解きをしたのは、他でもないバッツだ。
どうすれば良いのか判らない彼女を、ベッドに横たえて、ゆっくりと触れる所から始まった。
キスの仕方も、身の寄せ方も、逸る呼吸の落ち着かせ方も、何もかもバッツが教えた。
スコールが感じる場所を見付けたのもバッツで、其処がどんな風に触られると良いのか、どうなってしまうのかを拓き教えたのもバッツだ。
最早スコールの身体のことなら、本人以上に、バッツが詳しい。
蜜を噴くのが癖になってしまったことだって、バッツの手管の所為だとは、秘密にされているスコールである。

 そして彼女の方からバッツに触れるやり方についても、当人に教わっている。
口淫はバッツに促される通りに行って、舐め方も、しゃぶり方も、彼に言われる通りにやった。
始めはやはり強い抵抗感もあったのだが、それでバッツが気持ち良さそうにしてくれるから、スコールは嬉しくなって、一所懸命にやり方を覚えた。
今ではバッツの為なら、躊躇わずそれを咥えることが出来るくらいになった。

 そんな訳で、スコールの性知識と言うのは、専ら恋人によって花開いて行ったのだが、知識を得る方法は他にもある。
若者向けの雑誌に掲載されているような、ちょっと奔放な特集だとか、体験談だとか。
漫画を始めとしたメディア作品についても、匂わせる程度のものから、がっつりと致している描写があるものまで。
スコールは自身でそれを手にすることは滅多にない為、大抵は幼馴染や友人の持ち物を拝借させて貰って見る程度だが、それでなくとも、インターネットと言う情報の魔境には、そんなコンテンツがゴロゴロと転がっている。
真実に沿ったものかと言う点はともかくとして、その手の知識を得るのに、然程の苦労はないのが現代だ。

 お陰でスコールは、バッツと恋人になってから、その手の知識も随分と増えたが、しかし、やはり根本的には無垢な少女であった。
ただ一人に教えられ、メディアで聞きかじった知識についても、実際に試す相手は恋人だけ。
他の誰と触れ合うなんて微塵も考えた事はないし、第一、バッツ以外に触れられるなんて気持ちが悪い。
バッツだから安心するし、彼だから心地良くて、幸福感の中で彼の存在をいっぱいに感じることが出来るのだ。

 とは言え、である。
全く知らない頃に比べれば、知識の裾野が広がった分だけ、興味の対象も増えて来る。
耳に入って来る同級生の猥談は、相変わらずどうでも良いことではあるのだが、例えば「これで恋人は喜んでくれた」なんて話が聞こえてくると、ひょっとしたら彼も───と浮かぶのだ。
そうなると、俄かに意識が其方に傾いて、試してみたら彼も喜んでくれるのだろうか、と考えてしまう。
その喜びの為に、自分が多大な努力と羞恥と戦わなくてはならないのだとしても。




 その日のスコールは、少しそわそわとしていた。
バッツに何を言うでもなかったが、お喋りな瞳が何かを言おうとする素振りを見せている。
言葉にするタイミングを探しているのか、それ以前に、言葉にする形を探しているのか。
恐らく、そんな所なのだろうとバッツは考えている。

 お決まりにもなりつつある土曜日、スコールがバッツの住むアパートに泊まりに来る日。
着替えの一式と、今日は自分が作るからと夕飯の献立の材料を持って、スコールはやって来た。
思い返せば、玄関で出迎えた時から、蒼灰色の瞳はそわついていたのだけれど、その時はバッツの方も浮かれて気付かなかったのだ。
が、きっとこのタイミングで何かあったのかと尋ねても、恐らく彼女は答えなかっただろう。
胸中に抱えているものが何であるにしろ、元々言葉が多くない彼女は、何かを言い出す時には必ず彼女自身の切っ掛けやタイミングが必要になる。
バッツはそれを彼女が見付けるのを待つことにした。

 スコッチエッグの入った肉団子のスープに舌鼓を打って、バッツはそれをすっかり平らげた。
作って貰ったので、片付けはバッツが引き受けて、その間、スコールはテレビの前でじっとしていた。
クッションを抱えていた彼女が、時折頭を抱える仕草をしていたが、バッツは触れないようにしている。
横顔だけを伺い見て、悪い話をしそうな雰囲気ではないことだけは確かめた。

 後は他愛もない話をした後、順番に風呂に入った。
スコールがゆっくりと温まっている間に、バッツはいそいそとベッドメイクを整える。
蜜を噴き易い彼女が、寝所を汚してしまうことを気にして用意して以来、欠かさず使っている防水シーツも広げてある。
ベッド横のチェストには、コンドームもきちんとあった。
数も確かめ、今晩も彼女をたっぷり愛せることを確認する。

 髪を乾かし終えたスコールがやって来て、二人でベッドの端に座る。
キャミソール姿のスコールの肌は、しっとりと艶めいていて、桜色に染まっている。
温まった所為だけではない、頬をほんのりと赤らめたスコールの肩を抱き寄せると、少女は微かに体を強張らせつつ、そうっとバッツへと寄り掛かった。


「スコール」
「……ん……」


 名前を呼ぶと、スコールは小さく返事をして、目を閉じる。
キスをして欲しい、とささやかにねだる彼女に、バッツは応じた。

 唇を重ねて、柔く吸う。
ふ、と小さく鼻から吐息が漏れるのを聞きながら、バッツはスコールの下唇を舌でなぞった。
そろそろと隙間を許してくれる彼女の咥内に、ぬるりと舌を差し入れると、恐々とした様子でスコールの方からも絡んでくる。


「ん……、ん、ちゅ……んん……」


 拙い舌遣いで、スコールはバッツに愛撫する。
ちろちろと舌先で擽るように、彼女の小さな舌がバッツのそれを刺激していた。

 むず痒くなるそれを堪能した後、今度はバッツの方からスコールを愛でる。
こそばゆい感触を与えてくれた舌を絡め取り、ねっとりと唾液を塗しながら、全体をしゃぶってやる。


「んん……っ!う、ん、……んむぁ……っ!」


 バッツが奥まで舌をねじ入れていくものだから、スコールの口蓋はより大きく開く。
飲み込む喉の動作が難しくなって、スコールの口端からは唾液が伝い落ちていた。
その頬を両手で包み込み、逃げないようにと柔い力でホールドして、舌を啜る。
ぢゅる、ぢゅう、と音を立てて吸うバッツに、スコールの舌の根が戦慄いた。


「んんぁ……っ!」


 びくっ、びくっ、とスコールの肩が震える。
はっ、はっ、と乱れた呼気が零れて、蒼灰色の瞳が熱の兆しに濡れ始めた。

 バッツはキスを続けながら、右手をするすると下ろしていく。
首筋、鎖骨、微かな膨らみのある胸。
主張は控えめでも、確かに柔らかな感触のある胸に手を当てると、その奥で心臓がとくとくと早鐘を打っているのが分かった。
緊張と期待の入り混じったそのリズムを感じながら、やわやわと胸を揉む。


「ん、ん……あ、ふ……っ」


 キスの隙間に零れる、甘露を含んだ少女の声。
それが自分の手によって漏れることに、バッツは興奮を覚えている。

 ───が、


(あ)


 近い距離で見つめる青灰色が、ふらりと彷徨う瞬間を見付けて、バッツは眉尻を下げた。

 膨らみ始めた胸の蕾に指先を宛がう。
つん、と其処を軽くつついてやると、スコールはヒクンと背筋を撓らせた。
差し出すように胸を仰け反らせる仕草に、バッツはスコールの背中を抱き支えながら、くりくりと先端の膨らみを苛めてやる。


「ん、んっ……んぁ……あ……っ!」


 息苦しそうに眉根を寄せているスコールの唇を解放すると、甘い声が漏れる。
乳首は刺激を受けて固くなって行き、敏感に育っている。
人差し指と親指で軽く挟み、転がしてやれば、スコールは悩まし気に眉根を寄せて身を捩った。


「あ、は……うぅ……ん……」


 背中に軽くかかる程度に伸ばしている濃茶色の髪が、彼女が首を振るに合わせて揺れる。
ベッドシーツを握ったままの右手が、きゅうと白むほどに力を入れているのが見えた。

 きゅ、と乳首を摘まむと、スコールはビクッと躰を竦ませる。
頭を反らして晒される白い首筋に、バッツは唇を寄せて甘く噛みついた。
ぶるりとスコールの身体が震えて、揃えた膝がすりすりと寄せ合わせている。
それを視界の端に捉えながら、早く其処に触れたい、と思うバッツだったが、


「……な、スコール」
「ん……んん……っ」


 喉に舌先を宛がいながら名前を呼ぶと、スコールは吐息とともに擽る感触に唇を噛んでいる。
ふう、ふう、と堪えた呼吸が鼻から抜けていた。

 バッツは細い肢体をゆるゆると撫でながら囁く。


「スコール、なんか気になることある?」
「……んぁ……っ、何、が……あ……っ」


 バッツの問いに、スコールは眉根を寄せながら辛うじて返事をする。
覚えがない、と言いたげな反応だったが、そんな言葉に反して、彼女の心臓は分かり易く跳ねていた。
隠しているけれど思い当たる節がある、と彼女の躰は何より正直だ。

 バッツはスコールの鎖骨に唇を寄せながら言った。


「今日、ずっと何か気にしてるって言うか、何か言いたそうだなって」
「ん、ぁ……あ……っ!そこ、吸っちゃ……あ……っ」
「このまましちゃうと、曖昧にしそうだから、その前に聞いた方が良いかと思ってさ」
「は、ふ……うぅ……ん……あ、乳首……あっ……!」


 言いながら、バッツの右手はスコールの乳首をずっと苛めている。
ツンと尖った膨らみが、薄いベールを持ち上げて、ぷっくりと存在を主張していた。
そこをカリカリと指先で引っ掻いてやると、スコールはあえかな吐息を漏らして喘いだ。


「あ、あぁ……っや、バッツ……ぅん……っ」
「スコールが言いたくないんなら、無理に言わなくて良いんだけど」
「ふ、ふぅ、はぅ……う、んん……!」
「気掛かりなことがあると、やっぱり、気持ち良くなれないもんだし。おれ、スコールにいっぱい気持ち良くなって欲しいからさ」
「は、ふ……ん、うぅ……胸、だめ……くふぅ……っ!」
「悩みとか気になることあるなら、言って欲しいな」


 そう言ってバッツは、スコールのすっかり育った乳首をきゅっと摘まんだ。


「あんぅっ♡」


 ビクンッ、とスコールの身体が仰け反って、感じ入っていることをバッツに伝える。
彼女の大事な所を守るショーツの中心が、じっとりと染みを浮き上がらせた。

 スコールの身体は、明らかに熱に捕まっていた。
擦り合わせる膝頭を割り開いたら、どんなにいやらしい匂いがするだろうと、バッツは想像するだけで血が集まる。
けれども、今日はその前に、とバッツは力の抜けたスコールの身体をベッドに横たえてやる。

 火照りに染まった少女の頬を、バッツはそっと撫でた。


「ほら、スコール」
「……ふ……、あ……」


 柔らかに触れるバッツの手のひらに、スコールは薄めた瞳で恋人を見る。
体の内側はもうすっかり熱に浸食されていて、刺激された胸の頂など、疼いて仕方がない。
気にせず続けてくれれ良いのに、と思うスコールだが、バッツはすっかり待つつもりになっていて、言わねば続きも貰えないことが判った。

 スコールは湿った感触のある下肢を隠すように、もぞもぞと太腿を擦り合わせながら、バッツを見上げる。


「……その……」
「うん」
「……ちょっと……聞いた、話で……」


 小さな唇でもごもごと籠るように言いながら、スコールは熱くなる顔を手の甲で隠す。
今から言おうとしていることは、彼女にとって酷くふしだらなものに思えてならない。
それでバッツに嫌われることは、多分、ないとは思うけれど、不安症な彼女にはどうしても抵抗が過るものだった。

 中々言い出せない様子のスコールに、バッツは宥めるように、目尻に唇を寄せる。
柔い感触が眦に触れた後は、続けて傷の走る額に落ちる。
キスの雨はなんともくすぐったいが、そうやってあやしてくれる恋人の器量に、スコールは少しずつ落ち着いて、


「……バッツ、あんた……」
「うん」
「……その……おもちゃ……って……使ったこと、あるか……?」


 一番肝心な単語を口にする所で、スコールの声はか細くなった。
だが、口付けあう程に近い距離にいたお陰で、バッツはしっかりとそれを聞き留める。
そして、スコールからまさかの単語が出て来たことに驚いて、ぱちりと目を丸くした。


「おもちゃ───って、所謂、オトナのオモチャ?」
「………」


 確認に訊ねるバッツだが、スコールは顔を真っ赤に沸騰させて、口を利くことも出来ない。
腕で隠した目元が熱くなって、スコールは覗き込んでくる男から逃げるように体ごと顔を背けた。


「ありゃ。スコール、ほら、大丈夫だって。こっち向いて」
「……っ!」


 スコールの頭を撫でるバッツだったが、初心な少女はいやいやと伏せたまま頭を振る。
このままいじけて閉じこもってしまいそうなスコールに、バッツは苦笑しつつ、彼女を背中から抱き込んだ。


「な、一応、確認だけさせてな。オトナのオモチャであってる?えーと、ローターとか、バイブとか」
「……」


 揶揄かっている訳ではないことを、抱き締める腕の強さで伝えながら改めて聞くと、スコールは小さく小さく頷いた。
それだけで、彼女の耳が先端まで赤くなる。
それ程までに初心なスコールが、急にそんな単語を持ち出した理由は気になったが、まずは彼女の質問に答えることが先だ。


「まあ、うーん、あるっちゃあるなあ」
「……そう、なのか」
「随分前だった気がするけどな」


 バッツの答えに、スコールがそろりと此方を見て、なんとも言えない表情を浮かべる。
心なしか泣き出しそうに見えるスコールに、バッツもこればかりはどうしようもないと眉尻を下げてへらりと笑った。

 スコールは何もかもをバッツに教わり、その初めてを捧げてくれるが、バッツの方は生憎とそれなりに経験済みだ。
しかし、二人が出逢ってからまだ大して時間は経っていないし、恋人同士になってからも一年とない。
だからバッツの経験と言うのは、スコールと出会う以前のこと、彼女以外の人間を相手に積み重ねられたものであった。

 バッツにそうと言う自覚は薄いが、彼はモテる気質である。
中学生になる頃には告白を貰うようになったし、初体験は高校生の時だったと記憶している。
それからスコールと出会うまで、彼自身は意図していないことではあるが、沢山の女性との経験がある。
それはスコールも友人知人から聞き及んで理解していることではあったが、かと言って割り切ってしまえるほどに成熟してもいない少女は、折にそんな現実を認識しては、判っていても唇が歪んでしまうのだ。

 もやもやとした気持ちを抱いているスコールに、バッツは出来るだけ自分の想いが伝わるように、強く抱きしめる。
彼女の腰に回した腕に、スコールの手がするりと滑って、バッツの手の甲に重ねられる。
縋るように握られるのを感じながら、バッツはスコールの耳の裏側にキスをした。

 耳元を擽る恋人の気配を感じながら、スコールはひとつ、深呼吸をする。
彼女が自身を宥める為に息を吐き出すのを聞いてから、バッツは尋ねてみる。


「オモチャがどうしたの。興味、あるのか?」
「……」
「良いよ、正直に言って。別に変になんて思ってないからさ」


 バッツの言葉は、心底本心だ。
スコールが興味を持っていることなら、バッツは何でもそれについて聞いてみたいし、自分も其処に加わりたいと思う。
それは性的なことについても同じだった。
繋がり合う程、その方法を教えるほど、自分好みに色付いて行く恋人の姿は、愛しくて堪らない。

 とは言え、スコール自身は性的には未だに堅い所がある。
それは生来からと思しき生真面目さ故でもあり、其処から反発したいが後ろめたいと思う、二律背反な抵抗感も混じっているだろう。
だからバッツは、彼女のそんな少しばかり高いハードルを、小突いて崩すことにしている。

 バッツに宥められて、スコールは口籠りながら、ようやく話す決意をした。


「その……おも、ちゃって……使うと、気持ち良い……のか?」
「んん〜……人によるかなあ。無理すると良くないのは、セックスと一緒だし」
「……そうなのか。漫画とかだと、何か、凄く……イったりしてるけど……」
「漫画は結局作り物だからさ。気持ち良さそうにしてる方が、読んでる分には良いだろ?多分」
「……そうか……」


 そういうものなのか、とスコールは小さく呟く。
少し落胆しているように見えるのは、バッツの気の所為だろうか。
現実と非現実の認識を混同させるタイプではないと思うのだが、しかしセックスに関しては、彼女の経験が浅いことが原因だろうか。


(まあ、おれ以外に経験したこともない訳だしなぁ。あ、じゃあスコールは、いつもおれとする時、漫画みたいに気持ち良くなってるってことなのかな?)


 などと、バッツが自身に都合の良いことと思いつつ、そんなことを考えていると、


「……じゃあ……んん……」


 小さく悩む声が聞こえてきて、バッツは改めてスコールの顔を覗き見た。
思案に耽っているのか、スコールはバッツの視線に気付く様子はなく、手繰ったシーツを握りながらうんうんと唸っている。

 バッツはそんなスコールの耳元で、努めて優しく聞いてみた。


「スコール、興味あるの?オモチャ」
「……」


 改めて訪ねるバッツに、スコールの視線がそろりと向けられる。
蒼灰色は心なしか不安そうにしながらも、なんとかその胸中を打ち明けてくれた。


「……クラスのやつが言ってたんだけど……おもちゃ、使うと……その、中が締まって……男の方も、すごく気持ち良くなれる、って言ってたから……」
「おれがもっと気持ち良くなれるかもって?」
「……俺で……あんたを気持ち良く、出来るかは……判らないけど……」


 自信を喪うように、少女の声は段々と小さくなって行く。
それは彼女の不安の表れだったのだろうが、自分が考えていることを相手に打ち明けると言うことへの、彼女独特の羞恥心が限界に達したからでもあるだろう。
スコールは手繰り寄せたシーツに顔を埋めながら、うぐうぐと悶え唸っている。

 そんな一方で、バッツは顔が緩むのを止められなかった。


(オモチャに興味持つなんて、エッチになったなーって思ったけど。おれの為だったんだ。おれの為にエッチなことしようとしてるなんて、ああもう)


 ぎゅう、とバッツは気持ちに任せて、少女の体を強く抱きしめる。
なに、とスコールが眉根を寄せて身を捩ったが、バッツは彼女を逃がしたくなくて、腕の力を緩めない。

 その拍子に、バッツのすっかり固くなったシンボルが、少女の腰に押し付けられていた。


「!バッツ……!」


 硬い感触の正体に気付いて、スコールは真っ赤になった。
逃げを打ってかぱたぱたと足が暴れ出すのを、バッツは腿裏を抑えながら、スコールをベッドに俯せにする。
その背中に覆いかぶさるように乗って、後ろ髪の隙間に覗く項に強く吸い付いた。


「あ……っ!」
「んちゅ……っ!ん、っは、スコール……!」


 名を呼びながら何度も同じ場所に吸い付いて、赤い花を咲かせる。
くっきりと所有印が其処に刻まれるのを見ながら、バッツはむくむくと熱が膨らむのを感じていた。

 ベッドと彼女の体の間に手を差し込んで、胸の膨らみを手のひらで包み込む。
左右を強弱を変えながら揉みしだくバッツに、スコールははくはくと唇を戦慄かせた。


「あっ、あ……!バッツ、待て……っ!」
「無理だよ。スコール、エロくて可愛いから」
「バカ、あ……っ!や、また乳首……っんぁ、あっ、やぁ……っ!」


 先に育ててあった乳首を摘まみ、反対側も同じように指で挟む。
今は感度は違えど、元々刺激に対して弱いポイントだ。
ふたつのそれを互い違いに摘まんで転がしてと愛撫してやると、左右が同じ感度レベルまで引き上げられるのに時間はいらなかった。


「は、あ、あっ……!バッツ、ぅ……ん♡」


 ツンと膨らみ尖った蕾の先端を、指の腹がくりくりと圧し潰す。
じんとした痺れがスコールの胸元から上肢に広がって、体が再び熱を燈していた。
汗ばむ項にバッツが舌を這わせば、それも彼女の官能のスパイスとなって行く。

 乳首を爪弾くように転がしながら、バッツの右手はスコールの下肢へと向かう。
ショーツの上から尻を撫でれば、ひくりと太腿が震えたのが伝わった。
その腿の内側を手のひらが辿り、中心部へと近付けば、そこは既に布が吸い込み切れない程の洪水になっていた。


「おまんこ、びしょびしょだ」
「ふ、ぅ……っ!」


 バッツの囁きに、スコールが顔を真っ赤にしながらいやいやと頭を振る。
恥ずかしがり屋の反応に、バッツは可愛いなあと耳朶を食んで褒めた。


「ああ……っ!」


 悩ましい声をあげるスコール。
陰唇がじゅわりと蜜を溢れさせて、バッツの鼻腔が少女の性の匂いで一杯になった。

 バッツの手がショーツの中へと侵入し、小ぶりな尻の谷間に指を滑らせながら、中心部へ。
湿気の溜まった布の内側で、ひくつく淫裂に指が届き、スコールの腰がヒクンと戦慄く。
指先で筋の形を辿りなぞってやれば、少女の下肢に焦れたような痺れが生まれた。


「バ、ッツ……あ、あ……っ、そこ……っあぁ……っ♡」


 じんじんとした感覚を厭って、スコールの腰が揺れている。
陰部から齎される疼きから逃げを打って、腰がベッドから浮いて、背中に覆いかぶさる男の腰に押し付ける体勢になっていた。


「スコール、お尻押し付けてるみたい」
「ふ……ん、んん……っ」
「恥ずかしがらなくて良いって。おれの方もさ、ほら」
「あ……っ!」


 ぐり、とスコールの腰に、バッツの腰が押し付けられる。
其処にある固い感触を改めて認識したスコールの膣から、とぷりと濃い蜜液が溢れ出した。

 その蜜をバッツは指先で拭いながら、彼女の中へと侵入する。


「んあぁっ♡」


 内側へ入ってきた細くて節張った指に、スコールの喉から甘露の音が漏れる。

 ずっと疼いて仕方がなかった、待ち望んでいた場所への侵入者を、媚肉は喜んで受け入れる。
ぬらぬらと艶めかしく濡れそぼった膣壁は、入り口こそ狭く締め付けながら、奥に行くほどに柔らかく温かい。

 指を半分まで入れた所で、バッツは指先を曲げてみた。
くにっと内側の壁が穿られたのを感じて、ビクンッ、とスコールの身体が跳ねる。


「はんぅっ♡」
「スコールの中、ヒクヒクしてる。ちょっと押しただけで、ほら」
「ああぁ……っ!っは、あ、バッツ、ぅ……んんっ」
「おまんこ濡れ濡れだから、こんなに音も聞こえてさ」
「はっ、はぁっ、ああっ……!いや、あぁ、あぁん……っ!」


 バッツが中で指を動かす度に、膣内でくちゅくちゅといやらしい音が聞こえる。
わざとそれを響かせて攻め立てるバッツに、スコールは真っ赤になった顔をシーツに押し付けながら見悶えた。


「はあ、や、ああぁ……!あっ、奥、奥だめぇ……っ♡中に、あ、こないで……んくぅ♡」


 バッツはスコールの膣をまさぐりながら、奥へと指を押し進めた。
膣肉はきゅうきゅうと指を締め付けて来るが、蜜で濡れそぼった壁は艶めかしく滑らかで、幾らも侵入を拒否することは出来ない。
寧ろ肉が吸い付いて来る様子は、喜び受け入れているようにしか見えなくて、バッツは興奮に眼を爛々と耀かせながら、愛しい少女の陰唇を激しく掻き回してやる。


「ああ、あっ、ひぁあっ♡ば、バッツ、バッツぅ……っ!だめ、そんなに……あっ♡お、おまんこはげしくっ、したら、あぁっ、ああっ♡きちゃうっ、きちゃうからぁ……っ!」


 内壁の薄い場所、快感神経の研ぎ澄まされた場所を、的確に捉える指の動き。
指先が肉ビラを引っ掻く度に、スコールの身体は電流を浴びたように打ち震え、蜜壺からはぷしゃぷしゃと液が飛び散っている。
腹の奥からせり上がって来る衝動を必死に堪えるスコールだったが、


「良いよ、スコール。おまんこイこ」
「や、やぁっ、ああっ♡あっ、あっ、ひぅうっ♡」
「エッチなスコールのイくとこ、おれに見せて」


 背中に覆いかぶさる男の重みに、スコールの背中にぞくぞくとしたものが奔る。
耳元で囁く低い声は、普段の明朗快活としたものとは正反対に、紛れもない雄の欲を滲ませていた。
それで鼓膜を犯されると、スコールの身体はどうしようもなく濡れて、熱の極みへと持ち上げられる。


「あ、あっ、イくっ♡イくぅっ♡ンくぅうーーーーっ♡」


 甲高い声と共に、ビクンッ、ビクンッ!とスコールの身体が大きく波打ったかと思うと、ぷしゅぅっ、と透明な飛沫が彼女の股間から飛び散った。
ショーツの内側は最早下着としての体を成していない程に蜜に塗れ、其処に窮屈に入り込んだバッツの手も、余す所なく愛液に浸る。

 バッツは、自分の体の下で、絶頂に至った少女を見下ろしていた。
細身の白い体をすっかり火照らせた彼女は、顔半分をベッドシーツに埋めている。
見下ろすバッツから見える横顔は、熱に溺れて茫洋としており、薄らと浮かんだ涙すらも煽情的だった。

 きゅう、きゅうぅ……と締め付けを見せる陰唇から指を抜く。
追い縋るように絡んでくる内壁の動きに、バッツは慰めるように媚肉を指の腹で撫でた。


「あぁ……っ♡」


 悩ましい声が漏れて、またきゅっと膣が締め付ける。
指が最後に抜ける瞬間、ちゅぽん、と言う音が聞こえた。

 バッツはスコールを仰向けにさせると、眦にキスを落として、あえかな吐息を漏らす少女の唇を塞ぐ。


「ん、んん……んむぅ……っ」


 くぐもった声を漏らすスコールの舌を絡め取り、唾液で濡れそぼった其処をしゃぶる。
スコールはひくひくと喉を震わせながら、拙い動きでバッツの口付けに健気に応えていた。

 火照った肌を外気から辛うじて守っていたキャミソールを脱がせ、秘部を隠していた最後の砦も取り払う。
先程まで指を咥え込んでいた陰唇が、薄らと口を開き、次に貰えるものを待っている。
淫芽もぷくりと膨らんで充血し、スコールの身体が既に準備を整えていることを教えてくれた。

 バッツはスコールの両の膝を掬い上げて、左右に大きく開かせた。
隠すもののない秘所がすっかり晒され、バッツを誘う。


「っは……」
「んぁ……っは……はぁ……バッツ……」


 呼吸を解放されて、スコールは熱に溺れた瞳を浮かべながら、恋人の名前を呼ぶ。
シーツを握っていた指が、自身の下肢に伸びて、疼く場所を白い指先がなぞった。
いやらしくて粘着質な糸が、彼女自身の恥部と、指先とを繋いでいる。


「バッツ……」
「うん。直ぐ用意するよ」


 恥ずかしそうに顔を赤らめながら、待ち遠しいと表情で訴えるスコールに、バッツは小さく笑って言った。
ベッド横のチェストからコンドームを取り出しながら、自分も下肢を緩めれば、大きく反り返ったペニスが顔を出す。
逞しいその雄剣に、スコールが釘付けになっているのを感じながら、バッツはそれにゴムを被せた。

 薄膜の守りを装着したペニスが、スコールの陰唇に添えられる。
幹竿から伝わるとくとくとした脈動に、スコールはこくりと喉を鳴らした。

 バッツはスコールのぽってりと膨らんだ陰唇に竿を擦り付ける。
ぬめついた入り口は、バッツが擦れる度にじゅわじゅわと愛液を蕩け流していく。
その蜜をペニスに塗りたくるように満遍なく掬い塗って、バッツはヒクつく秘口に亀頭を宛がった。


「……っふ……!」
「あ……っあぁ……っ!」


 ぬぷ、と太い先端がスコールの口を割り開き、中へと進んで行く。
指とは比べ物にならない、太く逞しい存在感の熱に、スコールは息苦しさと歓びに胸を大きく仰け反らせた。


「あ、あ……バッツ……バッツ、が……入って、来るぅ……っ♡」
「大丈夫か?苦しくない?」
「ん、ん……っ!へい、き……あ、もっと…んぁああ……っ!」


 気遣う声に辛うじて答えるスコールに、バッツはそれならと更に腰を進めた。
深くなる繋がりに、スコールは甘く蕩けた声を上げて、覆いかぶさる男に縋りつく。

 スコールの腕がバッツの首に絡んで、ぴったりと身を寄せる。
心得てバッツが体を寄せ合わせてやれば、スコールの吐息がバッツの耳元を掠めた。
はあ、はあ、と零れる声と共に、漏れる吐息がバッツの耳朶にかかって、雄の欲望を煽る。


「あ、ああ……♡バッツ……ん、大きい、のぉ……っ、中に、届いてる……んん♡」
「はあ……スコールのまんこ、熱くて溶けそうで、気持ち良い……」
「ん、ん♡バッツぅ……っ♡」


 ねっとりと絡みついては柔らかく縋る媚肉の感触に、バッツがうっとりと呟けば、スコールは嬉しそうに膣を締め付けた。
幾重にも敷き詰められた細かな繊毛が、小刻みに震えながらペニスを包み込む。

 バッツはスコールの膝を大きく割り、剥き出しの股間に自身の腰をぴったりと押し付けた。


「んくぅうっ♡」


 二人の隙間が全くなくなり、バッツの欲望がスコールの奥深くに到達する。
入り口は狭く、中ほどは柔らかく拓いていたスコールの最奥は、また狭くなっていた。
其処がスコールの不規則な呼吸に合わせ、きゅうっ、きゅ、きゅうう……と締め付けて来る感触を、バッツは気に入っている。

 最奥に恋人を受け入れて、スコールは悩まし気な表情で喘いでいる。


「あ、あ……バッツ……バッツの、おちんぽ……♡」
「おれがいるの、判る?」
「ん……わか、る……♡バッツ……バッツが……いる……♡」


 熱に食われた瞳が、ぼんやりと天井を見つめている。
夢心地の様子で、胎内にある恋人の存在感を味わっているスコール。
子宮がその事実に喜び震えているのが判った。

 バッツはスコールの背中に腕を回して、細い少女の肢体から逃げ道を奪う。
しっかりと捕らえる力強い腕の感触に、スコールの媚肉がきゅうぅんと締め付けを示した。


「動くよ、スコール」


 耳元で囁いたバッツに、スコールは彼に抱き着くことで応えた。

 バッツの律動が始まり、蜜壺に納められた太い一物が大きなストロークで前後に動く。
固く反り返ったペニスに膣道を擦り上げられて、スコールの身体に快感が奔る。


「ああ、ああっ♡はっ、はぁ、ああ……っ!」
「はっ、スコール……はぁっ、はっ……!」
「んっ、んぁっ、ああっ、あっ♡バッツ、すごい、奥に、奥に来るぅっ♡ああっ♡」


 バッツもシルエットだけを見れば細身だが、それは引き締まった筋肉がついているからだ。
柔軟性の良いしなやかな筋肉を駆使して、腰を打ち付けるバッツ。
スコールは、バッツのペニスが入り口から最奥までを隙間なく擦る快感で、目の前が白熱していくのを感じていた。


「バッツ、ああ、気持ち良い……っ♡バッツの、おちんぽで、あっ、あぁっ♡お、おまんこ感じてるぅうっ♡」
「はっ、うん、おれもすごい……スコールのまんこで、おれのちんこ、すぐイっちゃいそ……っ!」
「んぁ、あっ、ああっ♡バッツ、ごつごつしちゃっ、ああっ♡そんなに奥に、ああっ、入っちゃ、ひぁっ、ああっ、ああぁっ♡」


 バッツの腰使いは大胆さを増して行き、スコールの最奥の更に奥を突き拓こうとしている。
既にそれはバッツを迎えるように降りていた。
其処にダメ押しとばかりに力強いノックをされれば、淫らに濡れた少女の体が、愛しい男を拒める筈もなく。


「あうっ、あぅぅっ♡はふっ、イくっ♡バッツ、バッツのちんぽで、お、おれっ、イっちゃうぅうっ♡」


 左右に開いた足を爪先までピンと強張らせて、スコールは蜜潮を噴き散らした。


「ああぁっ♡あぁぁあぁぁあんっ♡♡」


 ぷしゃあああっ、と噴水のように勢いよく蜜飛沫を噴いて、スコールは絶頂する。
背中を大きく仰け反らせ、胸を天井に突きだす格好で、ツンと尖った乳首を主張させた。
全身の緊張に連動して膣圧も一番に強くなり、咥え込んだペニスを媚肉が包み込み、熱を搾り取らんとする。


「うぅうっ!」


 極上の肉褥が齎す甘美な締め付けに、バッツは唇を噛んで腰を震わせた。
どくんっ、どくんっ、とスコールの膣内でペニスが脈動を打ち、薄ゴムの中にどぷぷぷっ!と精を吐き出す。

 息を詰まらせていたバッツが、ようやくそれを吐くことが出来た時、スコールはまだ官能の渦の中にいた。
長い余韻に蝕まれた体に、バッツの手が触れて、薄い腹をするりと辿る。
ヘソまわりを辿ってみると、雄を咥えたままの雌壺がきゅぅうと締め付けた。


「っは……はあ……よい、しょ……っと」
「あぁ……っ♡」


 息を整えながらバッツが腰を引く。
ずるりと陰唇を擦られていく感触に、スコールはあえかな声を漏らして感じ入った。

 まだ幾らも大きさを喪わないペニスが、同じく締め付けを増すばかりの膣から出て行く。
ぬぽり、と音を立てて抜け出したペニスに取りつけたゴムは、先端に液溜まりを作っていた。


「はふ……あっ……あぁ……っ♡ば、っつ……ぅ……っ♡」


 咥えるものを喪って、スコールは胎の奥がどうしようもなく疼くのを感じていた。
ずんと重くて甘いものが、胃袋よりも奥にある所に塊を作っている。
それと同時に、膣奥がじんじんと痒みに似た訴えを発していて、苦しいような、焦がれるような、耐え難い衝動が少女を襲う。

 スコールの手が、自身の陰唇に触れて、指先で入り口を弄る。
くちゅくちゅ、くちゅくちゅと自らを慰め始めるスコールを、バッツは琥珀の瞳を爛々と耀かせて見下ろしていた。


「まだ欲しいんだ?スコール」
「ふ…ふぅ……っ♡んぁ……っ、あぁ……っ♡」
「おまんこ、つらい?」
「あ、う……あぁ……っ♡バッツぅ……んんっ……♡」


 スコールは恋人の前でオナニーをしていることに顔を赤くしながらも、指先を止めることが出来なくなっていた。
それほど、バッツが出て行った体が切なくて堪らない。

 スコールは濡れそぼった陰唇を、バッツに向けて、指先でくぱりと拓いて見せた。


「入れて……バッツ……♡バッツの、おちんぽで……おれのおまんこ、もっといっぱい、ずぽずぽしてぇ……っ♡」


 一回でおしまいなんて言わないで、とスコールは濡れた瞳でバッツをねだる。
肉ビラを見せつける膣口の奥から、彼女自身の愛液がとぷりと溢れ出していた。

 コンドームを付け直したバッツが、ペニスを膣口に宛がう。
スコールは、はあ、はあ、と息を切らせて、言葉も失いながら早く早くと急かしてくれた。
入り口から吸い付く褥に誘われるまま、バッツは再び彼女の中に侵入したのだった。




 びしょびしょになった防水シーツを片付け、清潔なシーツに包まって眠るスコールを眺めながら、バッツは今日の遣り取りを思い出していた。

 大人の玩具に興味を持ったスコール。
何から切っ掛けだったのかはさて置くとして、どうやら彼女は、バッツに気持ち良くなって貰いたいが為に、それを使えないかと考えているらしい。
自分が使って見たいからではなく、バッツの為だと言うのが、バッツには嬉しい。
内容は聊か変化球ではあるが、彼女の行動の原動力として、バッツともっと愛し合いたい、と言うものがある訳だから、恋人として喜ばない訳がない。


(───とは言ってもなあ。オモチャって言っても色々あるし。あと、スコールが実際にそれを見たことはなさそうだしなぁ)


 性的な事は、専らバッツによって仕込まれてきたスコールだ。
彼女自身は恥ずかしがり屋であり、性に関しては何にせよハードルが高いのは変わらない。
以前、彼女が初めてコンドームを買って来たのを見た時にも驚いたものだったが、そう言ったアイテムを手に取るのは、中々の勇気が必要になる筈だ。

 大人の玩具などと言うものは、入手手段は色々とあるが、しかし物として未成年が堂々と購入できるものでもない。
インターネットの通販サイトなら、色々と駆使して手にすることも出来るが、真面目な気質のスコールがそれをすることは先ずないだろう。


(売ってるものを見たら、卒倒しそうだしな。結構とんでもないものもあるから)


 スコールは決して純粋培養されている訳ではなかったが、性的な物事に関しては、やはり幼い。
世の中には、彼女が思いも寄らないような、尖った性癖の人間もいるのだ。
そう言った需要を満たす為に作られる代物を、初心な少女がうっかりで目にしてしまうのは、中々の事故案件ではないだろうか。

 ふぅむ、とバッツは思案する。
彼女の望みを叶えること、或いはそれの為に準備の労を請け負うことは、バッツにとって吝かではない。
ないのだが、今回は話が話であったし、それに───


(……スコールが、おれ以外で感じるのかぁ……)


 うーん、と唸るバッツの一番の悩みは、其処だ。

 今までバッツの手で、体で、それだけを頼りに感じていたスコールである。
何も知らない真っ白だった彼女は、バッツの色だけに染められていたのだ。
そのことにバッツは少なくない優越感と満足感を持っている。

 眠る少女の愛しい貌を見詰めながら、バッツは一晩、思案に耽ったのであった。