籠ノ鳥 3-2
R-18 / カーセックス


「今日は何処のゲーセン行く?」
「またゲーセンなのか」
「スコールだって嫌いじゃないだろ?」
「……煩い所は嫌だ」
「静かなゲーセンってあるんスかね」
「あったら逆に怖い気がするけど」
「ゲーセンなんて煩い位で丁度良いトコだろ」


 陸上部が部活をしているグラウンドの隅を横切って、スコール、ティーダ、ヴァン、ジタンは校門へと向かう。

 時刻は放課後を迎えてから久しく時間が経っており、部活動をする生徒以外に残っているのは、補習や教員の手伝いで残っている者が精々だ。
スコールも世界史教員のヤマザキに捉まり、次の授業で使う予定のプリントのコピーや、必要な教材の整頓などを手伝っていた。
ティーダ達はスコールが解放されるのを待ち、つい今し方、解放されて帰宅の途に就いた所であった。

 学生の特権である放課後をどのように過ごそうか、特権ではあるが時間は有限である。
更に言うなら、金銭も有限である。
それをどのように効率的に、且つ楽しく過ごせるかと話し合っていっていると、校門を潜った所で、車のクラクションが聞こえた。
一同が振り返ると、歩道に身を寄せた道路に、黒のスポーツセダンが停まっている。
運転席には、全員が見覚えのある男が乗っていた。


「……!?」
「レオンじゃないっスか」
「お、本当だ」
「なんか久しぶりに顔見たな」


 一瞬呼吸を忘れて狼狽したスコールに気付かず、ティーダ達がスポーツセダンに駆け寄った。
助手席の窓が開き、三人が中を覗き込む。
柔らかに微笑む蒼灰色が、少年達を迎えた。


「ようやく出て来たか。誰かの補習終わりでも待ってたか?」
「誰も補習なんてしてないっスよ〜、今回は」
「今日はスコールがヤマザキ先生の手伝いしてたから、それが終わるの待ってたんだ」
「レオンも仕事終わったのか?」


 ジタンの問いに、レオンは頷いた。


「たまには早目に上がれる日もないと疲れるし、社長がいつまでも長居していると、社員の気が休まらない所もあるだろうからな。とは言え、こんな時間に帰るのは本当に久しぶりだったが。スコールが少し心配になったからな」
「……心配…?」


 スコールが兄の言葉に眉根を寄せた。
同じようにティーダ達も首を傾げたが、スコールと友人達の胸中には、明らかな温度差があるが、その事に気付く者は───レオン以外───いなかった。

 何かあったのか、と訊ねたヴァンに、レオンは頷く。


「仕事中にラジオで聞いたんだが、近くで銀行強盗があったらしくてな。お前達、学校から何も聞かなかったか?」
「えーと……?」
「…オレのクラスじゃ何も言われなかったけど」
「スコールは?」


 首を傾げるティーダとジタン。
ヴァンの問いには、スコールが緩く首を横に振った。
それを見たレオンは、考えるように顎に指を当て、


「俺が聞いたのも昼前の話だったからな。その後の情報は追っていないから、もう検挙されたかも知れない」
「だったら良いんスけど」
「でもやっぱり物騒だな、銀行強盗なんて。…あ、それでレオンはスコールを迎えに来たのか?」
「そんな所だな」


 笑みを浮かべたレオンだったが、スコールは彼の蒼い瞳が決して笑ってはいない事に気付いていた。
鞄を持つ手に力が篭る。

 ティーダ達と笑い合っていたレオンの視線が逸れ、一歩後ろに立っているスコールへと向けられた。
ガチャ、と助手席のドアロックが外れる。
「乗れ」と沈黙のまま命じられて、スコールは足が竦んだ。
レオンは、動かないスコールの心中を覗き込むように眺めた後、後部座席のロックも外す。


「ティーダ、ヴァン、ジタン。お前達も乗れ。家まで送ろう」
「マジ?」
「ああ。その代わり、直帰だからな。寄り道はなしだぞ? どうしても必要なものがあるって言うなら、それだけは済ませても良いが」
「ゲーセンでちょびっと遊ぶのは駄目ですか」
「駄目だな」


 きっぱりと言ったレオンに、ジタンががっくりと首を垂れる。
しかし、先に聞いた強盗事件の話を思えば、却下されるのは当然だ。


「しゃーねえや。ゲーセンはまた今度だな」
「そっスね。ま、良いじゃないスか。ゲーセンくらい、いつでも行けるし」
「お邪魔しまーす」


 ジタンとティーダが納得し合うように話をしている間に、ヴァンが後部座席のドアを開けた。
直ぐにジタンとティーダが続いて乗り込む。

 スコールは立ち尽くしていた。
頭の中は困惑で一杯だ。

 何を考えているのだろう。
今までレオンが自分を迎えに来た事など、一度もなかった。
仕事に集中していた事が第一の理由だが、稀に暇な時間が出来ても、レオンは決してスコールのプライベートに踏み込むような真似はしなかった。
レオンがスコールを犯すようになった後も、帰らないスコールにメールを寄越す事はあっても、彼自身が姿を見せる形で迎えに来た事はない。

 スコールの脳裏には、初めてレオンに犯された日の事が甦っていた。
あの日も、突然レオンはスコールの自室に踏み込んで来た。
霞みようのないその記憶は、スコールに警鐘を鳴らしている。

 だが、友人達は既に車に乗り込んでしまった。
彼等がいなければ、レオンがどんなつもりで迎えに来たとしても、「歩いて帰る」と突っ撥ねる事が出来ただろう。
後で自分がどんな目に遭うのかは想像に難くないが。

 動かないスコールに気付いて、ジタンが窓越しに「どうかしたか?」と訊ねた。
スコールは微かに口を開いたが、見詰める蒼の瞳に逆らう事が出来ず、流されるままに助手席のドアを開けた。



 冬ともなれば、日が沈むのも随分と早くなる。
午後六時を過ぎた頃になると、空はすっかり暗くなった。

 家の近い者から順に、ヴァン、ジタン、ティーダと送り届けた後、車内はしんと静まり返っていた。
三人が揃っていた時は当然、ティーダが家に着くまで口を閉じる事はなかったから、車内は楽しげな雰囲気に包まれていたのだが、最後の二人───同じ場所に帰るスコールとレオンだけになると、会話はぱったりとなくなった。

 ハンドルを握るレオンは、前だけを見詰めている。
スコールは助手席の窓に映る景色を、じっと見詰めているだけ。
スコールが車に乗ってから今まで、同じ色の瞳が交差した事はない。
兄弟間で碌に会話がない事を、友人達が不審に思う事はなかった。
スコールは元々無口であるし、レオンも決して饒舌な人間ではない。
以前、「二人で何の話してるの?」と聞かれた時、スコールが「特に何も」と答えた事があったので、この兄弟間では、レオンが表向き弟を溺愛しているとは言え、二人の間での沈黙は当たり前の光景と思われているのかも知れない。

 レオンが何の気紛れで自分を迎えに来たのか、スコールは既に考えるのを止めていた。
理由など如何でも、スコールの意思が入り込む余地など、最初からない。
不可侵の均衡が破られた日から、スコールは常に搾取される側であり、レオンは支配する側だった。
今の二人の間にあるのは、それだけだ。

 ティーダの家から、スコールとレオンが済むタワーマンションまでは、車で十分程度。
少し古びたアパートメントや一軒家が並ぶ住宅街から、細い路地を片手分だけ曲がると、スコール達が住む町に入る。
スコールは、その十分間も、その後の事も、憂鬱でならなかった。

 ────しかし、ティーダと別れて五分もしない頃、ふと、車窓に映る景色が馴染みのないものになっている事に気付いて、スコールは眉根を寄せる。


「……何処に行く気なんだ、あんた」


 正直、兄と顔を合わせる事も、口を利く事も嫌だったが、見知らぬ場所に訳も分からないまま連れて行かれるのは御免だ。
刑事事件として新聞に取り上げられるような事になったら、目も当てられない。
そんな事態に陥った時、スコールが新聞を確認できる立場にいるかどうかも危ういが。

 スコールの問いに、レオンは答えなかった。
ハンドルが切られ、車が左折する。
コンクリートの段差を乗り越え、車が乗り入れたのは、八台程の車が停められる暗い駐車場だった。


「……レオン?」


 スコールは身構えた。
まさかと思っていたが、本当に事件の当事者にされるのだろうか。
スコールは抱えていた鞄を抱き締め、ドアロックに手をかける。

 ロックを解除しようとした直前、車体が大きく揺れた。
ギュリッ、とタイヤが擦れる音が響き、不意の重力がスコールを窓に押し付ける。
ぶつけた肩の痛みに顔を顰めていると、車のサイドブレーキが踏まれ、キーが抜かれた。


「痛……───っ!」


 呻くスコールの腕が掴まれ、フロントシートの背凭れに押し付けられる。
カチリ、と音がして、シートベルトのロックが外れて巻き取られた。

 スコールが眉根を寄せて目を開けると、レオンが運転席から離れ、助手席と運転席の間のセカンドシートに片足を乗せ、スコールの上に覆い被さっている。
十センチもない距離で見下ろす蒼灰色が、獲物を前にした餓えた獣のようにぎらぎらと強い光でスコールを射抜く。
ぞくり、とスコールの背中に悪寒が走った。

 まさか、こんな所で。
こんな状況で。

 戸惑うスコールを余所に、レオンは助手席のフロントシートを後ろに倒した。
二人分の体重もあってか、シートはがくん、と勢いよく後方へ傾く。


「うあっ……! く、やめ…っ!」


 レオンの手がスコールのスラックスに伸びて、ベルトを外す。
スコール伸し掛かる男を押し退けようと、肩を掴んで爪を立てた。


「やめろ! 離せっ!」
「煩い」
「離せ、嫌だ! 嫌だあっ!」


 スコールは躍起になって暴れ、レオンの頭を押しやり、腹を蹴った。
レオンが苦い貌で睨んでも、スコールは暴れる事を止めようとしない。
舌打ちが聞こえ、暴れる足の上に体重が乗り、動きを封じられた。
シートから降りている足先がレッグスペースでばたばたともがいていたが、膝上に乗っている人間に対しては、大した抵抗にはならなかった。

 スラックスの前が開けられ、ボクサーパンツの中に筋張った手が滑り込む。
柔らかなままの中心部を緩く握られて、びくん、とスコールの躯が震えた。


「……っ!」
「そうだ。お前は黙って感じてればいい。俺の気が済むまでな」


 レオンの言葉に、スコールは腸が煮えるのが判った。
しかし、触れられるだけで官能を期待するかのように、躯は反応してしまう。
自分の躯だと言うのに、好き勝手に作り変えられて、こんな場所で、こんな状況でも反応する等、信じられなかった。

 レオンの手に雄を扱かれ、スコールは下肢全体に伝達するように広がって行く甘い痺れに、嫌だ、と頭を振った。
柔らかな雄の先端をくりくりと指先で弄ばれると、鼻にかかった声が漏れそうになる。


「ふ、くっ…んん……っ」


 レオンの指先が、雄を包む包皮を摘んだ。
薄皮は呆気なく剥かれ、スコールの淡色をした中心部が露わになる。
太腿を擦り合わせるようにして隠そうとしても、其処は隠れる場所よりも前についているから、どんなに足を閉じてみても、括れの先の膨らみは隠す事が出来ない。

 性的興奮の兆しなどなかった筈なのに、丁寧に幹を扱かれて行く内に、スコールの呼吸は少しずつ上がって行く。
声を殺そうと噛んだ唇に充血が溜まる。


「ん、ん…う……っ! くぅうっ……」


 声を出すまいと必死に唇を噛んだまま、スコールはレオンの肩を押し退けようとする。
レオンは片腕を掴んでシートに押し付けたが、もう片方の腕がレオンの首下に爪を立てた。
ぎり、と食い込む爪の意趣返しに、レオンは雄の裏筋を爪で引っ掻く。


「あっ! んんっ…!」


 四肢を跳ねさせると同時に、甲高い声が上がった後、スコールはもう一度唇を噛んだ。
頬を赤らめながら、苦々しさに顔を顰めるスコールを見下ろして、レオンはくつくつと笑う。


「余り声を出すと、誰かに見付かるかも知れないぞ」
「……っ……」


 冗談じゃない、とスコールは口端を噛む力を強めた。


「こんな格好を見られたくなかったら、頑張って我慢するんだな」


 明らかに面白がっていると判る男の言葉に、スコールは涙の滲む目で睨み付ける。
スコールは拳を握り締め、下肢から上って来る刺激に耐えながら、レオンに言った。


「あんた、だって…くっ…、あんたこそ、見られたら…っ、全部、台無しに…んんっ、なる、だろ……っ!」


 現場の状況としては、完全にレオンがスコールを襲っていると言うものだ。
誰が見ても十中八九、被害者はスコールであり、レオンは加害者の側だ。
この状況で、未成年の高校生と、二十歳を過ぎた大人のどちらかが悪とされるかと言われたら、間違いなく大人の方。
今までのように二人きりの場所で行われる犯行とは違い、第三者による目撃証言となれば、レオンとて言い逃れは出来ない。

 だが、レオンは平然としていた。
きゅう、と手の中でスコールの雄を柔らかく握っては弄び、反応を愉しんでいる。
まるで、見付かった後の事など如何でも良い、とでも言うかのように、薄く笑んだ表情を崩さない。


「や、あっ……!」
「なら、声を上げてみるか?」
「……ふ…ん……っ」
「どうした? お前にはその方が良いだろう? 俺が逮捕なり何なりされれば、自由になるんだから。その代わり、事情聴取だの身体検査だので、お前は散々恥をかく事になると思うがな。お前が女なら、話を聞くのは婦警で、強姦される辛さを理解してくれる事もあっただろうが、この点に置いては残念ながらお前は男だ。自分の身に起きた事を逐一報告させられた上、尻穴を覗き込まれて、其処までされても果たして何処まで理解してくれる奴がいるか」
「ふ、く……う……っ!」


 畳み掛けるように言われて、スコールは閉口した。
目撃証言があればレオンは遠からず逮捕されるだろうが、それで事件は終わりではあるまい。
レオンがスコールに性交を強要した経緯、それが本当に同意でなかったか等、自分自身が何よりも恥と感じている事を、事の始まりから全て他人に説明しなければならない。
逮捕後、レオンが合意の上の行為であったと主張し、スコールがそれを否定しなかった場合、逮捕も取り消しになるだろう。
そうなると、レオンは同性愛者として世間に知られてしまうのが目に見えているが、今の彼はそれすら気にしていないのだ。
スコールを貶める為なら、自分にどんな噂が降りかかろうと気にしない。
彼の口八丁を持ってすれば、少し行き過ぎただけの兄弟愛として世間を騙す事も出来るのではないだろうか。

 ブレザーの前が開かれ、カッターシャツを捲り上げられる。
持ち上げられたシャツの端がスコールの口元に寄せられた。


「声を上げたくないなら、これでも咥えておくんだな」


 今のまま唇を噛み続けていれば、いずれ皮膚を破いてしまう。
痛みで堪える力が緩めば、口を開けて声を出してしまう。
声を上げれば誰かに見付けて貰えるかも知れないが───……

 どうする? と目の前の男が無音で問う。
その無言の命令に逆らう事が出来なくなっている自分に、腹が立った。

 震えながら唇を開くと、布が押し込められた。
悔しさをぶつけるように強く噛んで、眼前の男を睨む。
自分で服の端を咥えて、肌を晒す弟の姿を見て、レオンの唇が笑みに歪んだ。


「良い子だ」
「……っ」


 小さな子供を褒めるような言葉に、スコールは眦を尖らせた。
それも陰部の裏筋を擦られると、容易く垂れて熱に浮かされる。


「ふ、ぅ……っ、んぅっ…!」


 根元から膨らみの裏まで丹念に手淫を施されている内に、スコールの其処はすっかり立ち上がっていた。
スコールの呼気も乱れて行き、シャツを噛んだ口端から、飲み込めなかった唾液が零れている。
唾液は襟元に落ちて沁みを作っていた。

 後少しで絶頂を迎えると言う所で、レオンの手が離れる。
もどかしさに腰が揺れそうになって、スコールはシートカバーに爪を立てて耐える。
躯が何度堕落を覚えたとしても、理性までもが現状を受け入れた訳ではないのだ。
躯の反応は、そう言う生き物として生まれてしまったものだから仕様がないのだと、無理やり納得させて、心の傷を誤魔化す。

 腰を撫でた手が、スコールの臀部を辿る。
シートと尻の間に手が滑り込んで、揉むように柔らかな力で肉を押しながら、秘孔に触れる。
指先が穴口に触れた瞬間、スコールの躯が震えた。


「ふっ……!」
「期待しているようだな」
「……!」


 ふるふるとスコールが首を横に振る。
しかし、レオンが少し力を入れるだけで、秘孔口はあっさりと彼の指を飲み込んでしまった。


「んっ、ぐ……! うぅんっ」


 ビクッ、ビクッ、とスコールの躯が仰け反る。
咥えたままのシャツが持ち上がって、スコールの薄い胸板が露わになった。

 スコールの腕を押さえ付けていた手が離れ、胸を撫でる。
ゆったりとした動きで、指が触れていると辛うじて判る程度の、優し過ぎる触れ方。
むず痒さを感じさせるレオンの触れ方に、スコールは息を詰め、秘孔の指を強く締め付ける。
ふーっ、ふーっ、と荒い呼吸が漏れる度、秘奥がもぐもぐと蠢いて、レオンを楽しませる。


「もっと欲しいか?」
「……ん、ん……っ」


 もう一度スコールは首を横に振った。
抵抗すればするだけ、この男を楽しませる事は判っている。
だが、躯が何度堕ちた所で、心まで従う訳には行かない。

 胸を彷徨うレオンの手が、頂きへと伸びる。
乳輪の縁をなぞられるだけで、スコールの躯は震えた。
シャツを噛む顎に力が篭る。
人差し指と親指で乳首を挟まれ、絞るように摘ままれる。


「んぅっ…!」


 ぴりっと走る小さな痛みに、スコールは眉根を寄せた。
同時に額から汗が噴き出し、頬の赤みが増す。

 レオンはスコールに秘孔内を弄りながら、乳首を摘んで遊んだ。
何度も引っ張られる内に、スコールの乳首は熟れたサクランボのように色付き、膨らんでしまった。
その上しこりのように硬く張っている。
インナー程度の薄い布地なら、押し上げてぷっくりと自己主張するに違いない。


「ん、ぅ……うぅっ…!」


 悪戯に乳頭を掠める指に、スコールの躯がピク、ピクン、と震えた。
反応したくない、感じたくないのに、何度も犯された躯は、持ち主の意思を無視して熱を拾う。
いっそ不感症にでもなれば良いのに、とシャツを噛みながらスコールは思う。

 ぬるり、と生暖かいものが乳首に触れた。
指よりも柔らかいが弾力のあるそれは、レオンの舌だった。


「ふくっ、うぅんっ」
「ん、は……ぁっ……」


 膨らんだ乳首をまるで労わるかのように、レオンは丹念に其処を舐る。
ねっとりとした唾液が乳首に纏わりつくと同時に、彼の熱の篭った吐息が、胸にあたってスコールの熱を助長させる。

 秘孔に埋められた指の動きが、大胆さを増して行く。
秘孔口の周りを撫でるように動いていた指は、スコールの呼気が増して行くに連れ、くちゅくちゅと明らかな淫音を漏らし始めていた。


「う、ぅ……んっ、んんっ…!」


 内壁の天井を執拗に攻められて、スコールの腰がびくびくと戦慄いた。
更に乳首に吸い付かれ、歯を宛てられて胸を仰け反らせる。


「ふぅっ、うぅ……────ん、ぅっ…?」


 下肢と上肢でそれぞれ与えられる刺激に、必死で声を殺していたスコールだったが、ふと鼻腔をくすぐった嗅ぎ慣れない香りに眉根を寄せた。
何の匂いであるか明確には判らなかったが、花かハーブの類だろうか。
香水か、と思った後で、眉間の皺が深くなる。


(レオンが香水?)


 何度も犯される間に、覚えてしまった男の匂いは、そんな人工的な匂いではなかった。
性交の最中に濃くなる雄の体臭の他は、彼が愛用している煙草の匂いしか嗅いだ事はない。
香水の匂いなどスコールは殆ど嗅いだ事はないが、今鼻腔をくすぐったものは、男が好んでつけるよりも、しつこく甘ったるい、雌を思わせる強い匂いだったような気がする。

 鼻先に触れる濃茶色の髪から、雌の匂いがする。
女の匂いが。
気付いた瞬間、スコールの脳裏に、女と電話をしているレオンの姿が浮かんだ。


「────っ!」


 熱に浮かされていた体に、冷水を浴びせられた気分だった。
一気に体の熱が引いて、秘孔に埋められた男の指への嫌悪感が募る。

 胸に吸い付いている男の頭を掴んで、力任せに押し放した。
突然の抵抗を予期していなかったのか、レオンの頭はあっさりとスコールの胸から離れる。


「離せ! 嫌だっ!」
「……この!」
「やめろ! 触るな、離せ! やめろっ!」


 両腕を振り回して、スコールはレオンを押し退けようとした。
突然暴れ始めたスコールに、レオンは眉を吊り上げ、秘孔に埋めていた指も抜いて、スコールの両腕を掴む。
背凭れに縫い付けるように押さえ込めば、それでいつもスコールは抵抗を止めた。
体格でレオンに劣るスコールは、上から体重をかけて抑え込まれれば、どう足掻いても引っ繰り返す事は出来ない。
諦めるしかないのだと、嫌と言う程思い知らされたから、心はどんなに抗おうとも、躯はレオンに従った。
その方が自分の痛みも少なくて済むからだ。

 しかし、スコールは暴れるのを止めなかった。
細い体の何処にこんな、とレオンが舌打ちする程の力で、レオンを振り払おうとする。
グローブボックスを蹴る音が何度も響いた。


「もう嫌だ! 盛るんだったら、女に盛れば良いだろ! あんたみたいな奴なら、俺なんかとセックスなんかしなくたって、女だって幾らでもいる癖に! なんで俺にこんな事するんだ!」


 叫ぶスコールの声に、レオンは手で口を塞ごうとする。
スコールは掌に噛み付いた。
加減のない痛みに、レオンが眉根を寄せて手を離す。


「痛……お前、さっきから何を言っているんだ」


 手を振って痛みを誤魔化しながら、レオンは言った。
スコールは自由な片腕でブレザーの前を掻き合わせ、レオンを睨む。


「恋人、いるんだろ」
「……何?」
「とぼけるな。ちゃんと女が、恋人がいるんだろ」
「……なんの話だ」


 話が見えない、と言うレオンに、スコールは馬鹿にするな、と叫んだ。


「この間、電話をしているのを聞いた。相手の声も聞こえて来た。あんたに逢いたがってる女だった。あれ、恋人だろう」
「……ああ。あれか」


 スコールの言葉に思い当たる節を思い出して、レオンは小さく呟いた。
まるで如何でも良い事のような声だが、"恋人だろう"と言う言葉をレオンは否定しない。
何故かそれが無性に腹立たしく思えて、スコールはブレザーを強く握り締める。


「…恋人がいる癖に、なんで俺なんか犯そうとするんだ。溜まったのなら、そっちに相手させれば良いじゃないか。あんたが呼べば、向こうだって喜んで跳び付くだろ。恋人じゃなくたって、そんな女、あんたの周りに沢山いるだろ」


 スコールの周り───学校のクラスメイト───にタレント的な人気を誇るレオンである。
弟に見せる本性が如何なものであれ、それはスコールだけに向けられる憎しみと言う感情だから、他人に同じものを振り撒く事はあるまい。
寧ろ愛想良く振る舞うので、彼に恋心を寄せる者は幾らでもいるだろう。
若くして支社長を務め、その肩書きに見合う働きをして見せるレオンは、周囲の女達にとっては高根の花だ。
しかし、一夜でも良いから彼との夢に酔ってみたい、と願う女も数多である。

 それだけ女に求められているのだから、性欲処理の為だけに顔も覚えていないような女を呼んだとて、応じる者は少なくあるまい。
一夜の夢でも、その間に良い印象を持ってもらえば、あわよくば……と強かな女もいるだろう。

 性欲処理をするのなら、男を、それも実の弟を犯す必要はない。
恋人がいて、その人物と既に肉体関係があるのなら、尚更だ。

 スコールはじりじりと、胸の奥が焼け焦げて行くのを感じていた。
その胸の内を隠すように、ブレザーを掻き抱いて握り締める。


「あんたが昨日、帰って来なかったのって、女の所にいたからなんだろ」
「何か根拠でもあるのか?」
「……匂いがする。あんたの髪とか、服とか、手とか。いつものあんたと違う匂いだ」


 車には消臭剤は置かれていても、芳香剤はない。
レオンは香水を使わないし、仮に利用する事があったとしても、此処まであからさまな匂いは漂わせはしまい。

 ───と言う事は、この匂いは他人がまとわせていた物で、レオンから香るそれは移り香だ。
移り香など、数時間を同じ空間で過ごしていても、滅多に移るものではない。
香水をまとわせた人物と、密着し合って過ごさなければ、移り香にはならない。

 レオンが電車等の公共物で移動する事はない。
他人と密着して過ごす機会など限られている。
匂いが移る程の距離なら、尚更だ。

 だからスコールは、レオンが女と寝たのだと考えた。
自分を犯そうとする直前に、レオンは女と抱き合っていたのだ。
そうと知った瞬間、快感に流されかけていたスコールの理性は急激な速さで巻き戻り、目の前の男を拒否していた。


「……吐き気がする。そんな匂いつけて、俺に盛るな。近付くな」


 ぐす、とスコールが鼻を啜る。
エンジンが切られた車の中に、冷え切った外の気温を窓越しに伝播して行き、熱によって篭りかけていた空気が冷えて行く。
肌が晒されたままの腰や腹、下腹部が冷えて、スコールは寒さに身を震わせた。
太腿にはレオンが乗っているから、其処だけは彼の体温で閉じ込められているけれど、それが何の慰めになるものか。
重みはスコールをこの場に縛り付けているだけで、彼が退いてくれなければ、車も発進されないし、スコールはこの惨めな状況から逃げる事も出来ない。

 どれ程の沈黙の時間が流れただろうか。
暗く狭い車の中で、スコールは縮こまってレオンが動き出すのを待つしかなかった。

 く、と喉の音が鳴った。
スコールが背けていた顔を上げると、レオンが肩を震わせている。
長い前髪の所為で彼の目元は見えなかったが、口元は見えた。
其処は笑みに歪んでいる。


「なんだ、お前。要するに、妬いたのか?」
「……な……!」


 レオンの言葉に、スコールは目を見開いて絶句した。


「違うのか。俺にはそう聞こえたんだが」
「ふざけるな! なんで俺が嫉妬なんか」
「俺が女の匂いをつけている事が不満だったんだろう。女の匂いをつけたままで抱かれるのが嫌だ、と」
「匂いなんかなくたって、あんたになんか抱かれたくない! もう良い加減にしろよ。今まであんたに何をされたか、俺は誰にも言う気はないし、あんたも恋人が出来たんなら、俺なんかに構っていないで女の所に行けよ。もう俺なんかで処理する必要はないだろ」


 吐き捨てるように、矢継ぎ早に言ったスコールだが、レオンはくつくつと笑うのを止めない。
面白がっている蒼い瞳に無性に腹が立って、スコールは握り締めた拳を振り上げた。

 感情のままに殴りつけようとした腕を、呆気なく掴まえられる。
そのままシートに縫い付けられて、スコールは忌々しげにレオンを睨み付けた。
レオンはそんな弟を見下ろし、


「何か勘違いしていないか。ただの性欲処理の為に、俺がお前を抱いていると? 最初に言った事を忘れたか? 俺がお前を狂わせてやる。お前を壊してやる。お前が壊れるまで、俺はお前を絶対に離さない」


 口元は笑みを浮かべているのに、レオンの瞳は笑っていない。
それが益々、レオンが内に秘める狂気の深さを滲ませているように見えた。

 カッターシャツのボタンが千切れ飛ぶ音がした。
また新しいシャツを買わなければいけない。
そんな事を考えるのは、思考が現実逃避を求めているからだろう。
だが、どんなに思考を逃がした所で、男に組み敷かれている現実が変わる訳ではない。
肌蹴られたシャツがブレザーを巻き込んで頭上に持ち上げられる。
ブレザーとシャツがヘッドレストを跨ぎ、スコールの両腕は頭上に固定されてしまう。


「や……!」


 レオンが、跨いでいたスコールの足を持ち上げる。
スラックスと下着が膝元まで下げられ、スコールの陰部が露わになった。
暗く狭い車の中で体を折り畳まれると、足が窓を蹴り、窮屈さが増す。


「やだ、嫌だ! やめっ────ひ…!」


 秘孔口に硬いものが押し付けられ、スコールは顔を引き攣らせた。
スコールは臀部に力を入れて、穴を閉じようとするが、レオンの手が陰茎に触れた瞬間、甘い痺れで容易く力を失ってしまう。


「っあ……! や、あ……!」
「力を抜け。痛い思いはしたくないだろ?」


 レオンの言葉に、スコールは首を横に振った。
痛いのは嫌だ、だが男を自ら咥えるような真似もしたくない。
拘束された拳を強く握り、唇を噛んで耐えようとするスコールに、レオンの薄い笑みが消える。

 竿を握る手が上下に動き出し、スコールに刺激を与える。
忘れかけていた官能のスイッチが再び入り、白い肌が火照りにより赤らんで行く。


「やっ、んっ…! うぅ…ふぅっ……!」


 再来した官能に流されまいと、スコールは息を詰めた。

 スラックスを完全に脱がされ、膝を割り開かれて、レオンの体が滑り込む。
レオンはスコールの雄を手淫しながら、薄く上下する胸板に顔を寄せた。
スコールの鼻腔にあの芳香の匂いが漂い、スコールは足を暴れさせた。
その抵抗を殺すように、レオンの雄がスコールの陰部へと捻じ込まれて行く。


「ひぐっ、うっ、うぅううんっ!」


 いつものように指で解されてもいなかった秘孔は、ぎっちりとレオンの雄に食い付く。
拒絶感と、覚え込まされた快感を求めようとする浅ましい躯に板挟みにされ、慣らされなかった陰部への侵入者が齎す痛みに、スコールは上げかけた悲鳴を喉奥で押し殺した。

 碌に慣らされないまま挿入されたのは、二度目だった。
一度目は何処の誰とも知れない男達に強姦された時で、レオンと性交する時は必ず慣らされてから挿入された。
解されないままで挿入すれば、内壁は侵入者を拒んで噛み千切ろうとする。
その痛みはレオンも遠慮したかったのか、彼は必ずスコールの陰部を丹念に解し、スコールが快感の波に流された頃に、己の欲望を突き立てた。

 スコールが痛みに喘ぎ、呼吸が落ち付くのを待たず、レオンは律動を始めた。
腰を打ち付ける強いリズムに合わせて、車体が揺れる。


「ひっ、ひぃっ! う、ぐ…んんっ!」
「く、きつ……う…っ」
「あがっ…! ひぎ、ぃ……っ」


 張り付くようにまとわりつく肉壁を抉り剥がしながら、肉棒はスコールの秘奥を突き上げる。
行き止まりの壁を持ち上げられる度に、スコールは頭上を仰いで引き攣った声を漏らす。


「いうっ、痛、あくぅっ…!」
「ふっ……萎えるなよ、ちゃんと勃たせていろ」
「は、あっ、やあっ」


 レオンの手が手淫を再開させ、突き上げに合わせて海綿体を擦る。
先端を指先でぐりぐりと穿られて、尿意に似た感覚にスコールの腰が震えた。


「はひっ、ひぃんっ! や、触る、なぁあっ…!」


 ビクビクと全身を痙攣させて叫ぶスコールに、レオンの口元に再び笑みが宿る。

 レオンの舌が乳首を撫で、吸い付く。
ぷくりと膨らんだ其処を口の中で転がされ、ぬらぬらと唾液塗れにされて、スコールの陰部が雄を締め付けた。
レオンはスコールの細腰に腕を回すと、スコールの腰を浮かせる。
貫く陰茎が角度を変え、ヒダのあるスコールの秘孔内の天井を前後に擦るように動く。
探るように何度も擦っていたそれが、前立腺の膨らみを掠めた瞬間、スコールは喉を反らせて喘ぎ声を上げた。


「あぁぁあっ……!」


 反らされ、露わになった喉に、レオンが食い付いた。
陰茎への手淫を止めて、胸元を掌で弄りながら、喉に歯を宛てる。
ひくひくと痙攣するように動く喉仏に舌を這わせば、頭上で拘束されたスコールの腕が制服を引っ張って暴れる。


「んぁ、あ、はっ…!」


 どんなに暴れてみても、抵抗する力は陰部を貫く雄の所為で呆気なく奪われる。
一番太い場所で執拗に内壁の膨らみをなぞられ、先端で最奥を突き上げられて、スコールの躯は完全に支配に堕ちていた。
時折鼻腔をくすぐる香りに理性が戻るが、それも下肢から走る甘い痺れで塗り潰されてしまう。
慣らされないままの挿入で感じていた筈の痛みすら判らなくなり、内壁は覚え込んだ肉棒の形に変化して、男の欲望を求めるように悩ましく動いている。


「あっ、あっ、や、あぁっ! ひ、そこっ…嫌ぁっ!」


 レオンの肉棒が行き止まりを突き上げる度、強い快感がスコールの全身を駆け抜けて、頭の芯を焼いて行く。
流されたくないと思っているのに、心は抵抗しようとしているのに、全てを溶かすような電流に逆らう事が出来ない。

 舌をスコールの胸に這わせるレオンの呼吸が乱れて行く。
ぐちっ、ぐちっ、と陰部から卑猥な音を鳴らしながら、レオンはスコールの乳首を強く啜った。
ぢゅるっ、ちゅう、と明らかな音が聞こえる程の強い吸い方に、スコールの全身が戦慄く。


「や、吸う、な……んんっ!」


 レオンの髪から香る女の匂いに、スコールは顔を顰めて目を閉じるが、余計に匂いがはっきりと感じられた。
息を詰め、締め付けるスコールの秘孔で、痛い程に膨らんだ肉棒が激しく出入りを繰り返す。
否応なく刺激を甘受させられるスコールの躯は、発情したように熱を孕み、スコールの中心部もすっかり反り返っていた。


「はっ、あっあっ、あぅん! んんっ、あふっ、ひぃい…っ! やだ、嫌だぁあ……っ!」


 引き攣る程に足を強張らせ、爪先を丸めて悶えるスコール。
熱に浚われ涙を浮かべるスコールの顔を見て、レオンの雄が質量を増した。


「ひぃいぃっん!」


 体内で膨らんだ欲望を感じ取り、スコールは増した圧迫感に悲鳴を上げた。


「あひっ、ひぃっ! 太、いっ…やぁあっ!」
「う、ぅ…ふ、くくっ……」
「はっ、あんっ、あっ、あぁっ! やだ、嫌、嫌ぁっ! 奥、もう…や、あ、あぁっ!」


 誰かに見付かりたくないと噤んでいた唇が、引き絞る事が出来ない。
悦楽に堕ちた躯は、突き上げられる度に悦ぶようにうねり、レオンの雄を締め付けた。
車体の揺れに合わせるように、スコールの喘ぎ声が狭い車内で反響する。

 レオンの手がスコールの雄を包み、上下に激しく扱く。
既に先走りの蜜を零していた其処は、呆気なく陥落し、スコールは頭を振って迫る射精感に喘ぎ啼く。


「やめ、や、出るっ…! やあっああぁぁぁっ!」


 スコールの足が窓枠を蹴った。
がくがくと白く細い太腿が痙攣し、白濁液がスコールとレオンの腹を汚す。
同時に肉壁がレオンの雄を強く締め付け、レオンは競り上がる劣情に唇を噛み、


「くぅうっ…!」
「やだ、や、あぁぁああん!」


 最奥に叩き付けるように放出される熱に、スコールは体が燃えるように熱くなるのを感じた。
頭の中が真っ白に染まる。

 とろりとした熱を零しながら、レオンの雄が肉壁の天井に擦りつけられる。
粘り気のある蜜液が壁に塗りたくられる感覚に、スコールの腰がヒクッヒクッと跳ねた。


「ひっ…んひっ…ぃ……」


 スコールは、虚ろな瞳を虚空に彷徨わせていた。
体内に埋められた肉棒は、その熱を吐き出したにも関わらず、硬さを失っていない。
嫌だ、と譫言のように呟く声を、レオンは聞かなかった。

 スコールの秘孔内を満たす精液で肉棒を濡らし、レオンは再び律動を始めた。
ぐちゅっ、ぐちゅっ、と蜜液を掻き回す音が社内に響く。


「んあっ、あっ、あぁっ…! い、や…嫌ぁああ……!」


 力のない拒絶の声に反し、律動は激しくなって行く。


「あっ、あぅっ、あぁっん! あん、はっ、ひくぅっ…!」


 揺さぶられるままに、スコールは声を上げる。
見下ろす男の冷たい瞳から、スコールは目を逸らした。
耳を食む歯の感触に、肩が跳ねる。

 鼻腔を微かにくすぐる匂いに、嫌悪感は消えないけれど、堕ちた躯はもう抗う事は出来なかった。



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≫[籠ノ鳥 4-1]