箱庭の詩 SAMPLE    4(モブスコ/R18)


 嫌な予感が急速に募って、スコールは再び抵抗した。
足をばたばたと暴れさせれば、ベッドに乗り上がっている男達の肩やら胸やらに当たる。
それを鬱陶しがった男たちは、左右それぞれの足を片方ずつ捕まえると、スコールの躰を折り畳むように足先を頭上の方へと持って行った。

 パンツ一枚だけに守られた股間が、天井に向いて露わにされて、さしものスコールも顔を真っ赤にする。


(なんでこんな……っ! 何がしたいんだよ、こいつらは)


 掴む腕から逃れようと、不自由な体勢で足を動かそうとするスコールだったが、折り畳まれた腹には碌な力も入らない。
体勢からの息苦しさもあって、うう、と唸る声を漏らすしかなかった。

 そんなスコールの耳元に、無精ヒゲを生やした男が囁く。


「そう嫌がるなって。サイファーの代わりに慰めてやるだけだよ」
(サイファー?)


 どうしてこの状況で彼の名前が出て来るのか。
まさか彼の差し金か、と一瞬思ったスコールだったが、それはない、とすぐに否定した。
確かに彼とは馬が合わないが、こう言った下衆いた真似をするのは決して彼の性分ではない筈だ。

 ならどうして、と益々混乱を深めるスコールだったが、思考はそれに囚われている暇はなかった。
隣室の男の手が、下着越しにスコールの股間をずりずりと擦るように撫で回すのを見て、スコールの喉がヒュッと引き攣る。


(何処を触って……やめろ、気持ち悪いっ)


 会陰を指でぐりぐりと押し潰すように弄られて、スコールは腰の回りにびりびりと痺れるものが走った。
自分でも衛生的な目的以外で滅多に触れることのない場所に、他人が無遠慮をしているというのは悍ましく、スコールはぶんぶんと首を横に振って拒否を示す。


「う、うぅ……! ふっ、くぅっ!」
「サイファー以外は嫌だって? まあまあ、もっと色々試してみれば良いんだって。俺、そこそこ経験豊富だから、痛くしない自信あるよ」
「男は初めて試すけどな。大丈夫、ちゃーんと解してやるよ。その方がお前も気持ち良いだろ?」
「ふ、ふぅ……っ、うぅう……!」


 にやにやと笑いながら言う男達が、恐ろしく不気味な生き物に見えて、スコールは背中が冷たくなるのを感じていた。


「パンツ脱がそうぜ。素っ裸にすれば大人しくなるだろ」
「ん、んぐぅうっ」
「ほらほら、暴れるなって。サイファーとしてる時は大人しくしてたじゃないか」
「……っ!」


 男達が何を言っているのか判らなくて、スコールはとにかく頭を横に振る。
そんなスコールに、仕方ねえなあ、と言いながら、無精ヒゲの男がスコールの顎を捉えて、ずいっと顔を近付けて言った。


「良いから大人しくしてろよ。これからする事を、サイファーにチクられたくないだろ?」
(チクるって……何、を、言うつもりで……っ)


 股間を弄っている手が、肉の薄い臀部を滑り、谷間の窄まりを捉える。
ぐりっとその穴を穿られて、有り得ない場所からの刺激の感覚に、びくりとスコールの躰が強張った。


(そんな所……触るなぁ……っ!)


 かち、と布を噛んだ口の中で、歯の根が震えた。
ただでさえ悍ましさに悪寒を感じていた体に、どくんどくんと心臓の早鐘が響く。
べたべたと下半身を触る男達の手に、嫌悪感で暴れていた脚が、まるで氷水の中に浸けられたように凍り付いた。

 スコールの抵抗が大人しくなったのを良いことに、男たちはスコールの下着に手をかけた。
黒のシンプルなボクサーパンツをずり下ろせば、萎えた中心が晒される。
当然ながら興奮の兆しもないそれは、皮こそ被ってはいないものの、天然のピンク色をしており、それが遊び慣れた男達の興を誘う。


「やっぱりまだお子様みたいだな。それとも、こっちでばっかり楽しんでるのか?」


 にやにやと笑いながら言う年嵩の男に、スコールはなけなしのプライドでじろりと睨んだ。
有り得ない場所を他人の目に晒され、スコールにとっては憤死したいほどに恥ずかしかったが、弱味を見せれば相手を助長させることになる。
何をされようと、絶対に弱音は吐くまい。

 そんなスコールの腹に、ざらざらとした感触の手が乗せられる。
隣室の男が、スコールの薄らと腹筋のついた、しかしまだ逞しさには程遠い体付きに、ゆっくりと手指を這わせながら、


「どうせ男だと思って大して興味なかったけど、こうやって見ると、その辺の女子と大して変わらないな」
「実は女子だったりしないか?」
「お前、此処についてるモンあるだろうが」


 腹を弄っていた手が、スコールの股間のシンボルをぎゅっと握った。


「んぅっ!」
「っと、悪い悪い。痛かったか?」


 びくっと体を竦ませたスコールに、男達はまるで悪びれもしない様子で詫びながら、手の中の一物を転がすように遊ばせる。
指が不規則に動き、竿や陰嚢をくにゅくにゅと揉みしだいた。

 他人の手でそんな場所を触られるなんて、と顔を顰めるスコール。
その体には、嫌悪感と同時に、ぞくぞくとした甘い痺れが奔っていた。


(いや、だ……なんだよ、これ……どうして……っ)


 頭を下げた先端を、男達の指先が捕え、鈴口を爪先でカリカリと引っ掻かれる。
敏感な神経が集まっている場所に他人の手で刺激を与えられて、スコールの躰は勝手にビクッビクッと跳ねていた。

 其処を触れば、快感と言うものを得るのだということは、知っていた。
だが、スコールにとってそれは、授業の中で生物的な理屈と、道徳的な意識とともに教えられた程度のこと。
生理現象で其処が勃起する事はあっても、どうにもそれを処理する行為そのものが苦手で、いつも無理やりに無視していた。
朝になれば元通りになっているから、それで良い、とも思っていた。

 そんな程度にしか性知識も経験もないスコールにとって、他人の手で与えられる刺激は、彼を殊更に混乱させる。
鈴口を執拗に刺激されて、局部が切なく張り詰めていく。


「ん、んぐ、ふぅう……! う、ふぐぅ……っ!」


 嫌だ、やめろと、スコールは頭を振って訴えた。
目尻に浮かぶ涙を必死に堪え、下半身を弄ぶ男達を睨み続けるが、


「お〜、勃ってきた勃ってきた」
「カワイイもんじゃないか。童貞って見た目で」
「サイファーの奴もこんなかねぇ。なあ、スコール君は見たことあるだろ? あいつのってどんな色してんの?」
「………っ!」


 知りもしないことを聞かれて、スコールは首を横に振った。
知らないし、興味もないし、知りたくもない。
それなのに、どうしてこの男達は、あたかもスコールがサイファーの諸々まで知っているかのような口振りをするのか。

 男達の手指は悪戯を増して行き、芯を持ち始めたスコールの雄をしゅこしゅこと扱き始める。
根本の裏側、玉袋のぶらさがった所を指の腹が小刻みに擦ると、ぞくぞくとしたものがスコールの腰全体に広がって戦慄いた。




----箱庭の詩 p134〜p136