[クラスコ]ディバーシッド・モーニング
目覚めと共に、躰にじんわりとした重怠さを自覚した。
瞼も重くて開けたくなかったが、今日は月曜日、と頭の隅が冷静に警告した。
平日ならば学校があるのだから起きなければ行けない。
本質的には物臭でありながら、根が真面目な所為で、気分が乗らないからと言う理由でサボタージュを選ぶことが出来ないスコールは、なんとか目を開けようと懸命に努力した。
結局、スコールがちゃんと目を開ける事が出来たのは、目覚めたと自覚してから10分後の事だ。
寝汚い一面のあるスコールにしては、早いと言えるだろう。
だが、目を開けてもスコールの試練はまだ続く。
今度は起き上がり、身を包んでくれているシーツから抜け出し、服を着なければならないのである。
チカチカと目の奥が乾燥で痛むのを感じつつ、スコールははあ、と息を吐いた。
喉の奥に心なしか詰まっていた感覚が消え、ごろりと寝返りを打って俯せになる。
ベッドに両手をついて、腕に力を入れて、重い体をどうにか起こす。
スコールの体を守っていたシーツがするりと肩から滑り落ちて、白い肌が露わになった。
「だる……」
こうして起き上がるだけの動作が、スコールには面倒で仕方がない。
それはスコールにとって常の事ではあるのだが、今日は特に気分が乗らなかった。
原因は他でもない、体の怠さと一緒に付きまとう、腰の痛みの所為だ。
スコールはまだ重い瞼を擦りながら、隣に寝転んでいる男を見た。
ごくごく静かな寝息を立てているのは、恋人のクラウドだ。
彼もスコール同様に裸身で寝ており、体を隠しているのは、スコールが使っていたシーツの余り程度であった。
硬い体を背筋を伸ばして解しつつ、スコールはきょろきょろと辺りを見回した。
ベッド横のサイドボードに置いていた携帯電話を取り、時間を確認すると、詠唱画面には午前7時の表示。
昨日の夜に作り置きして置いた料理を電子レンジで温めれば、ちゃんとした食事を採ってから登校が出来るだろう。
正直に言えば、あまり腹は減っていない気もするのだが、今日は午前中に体育の授業がある。
流石に何も食べずに運動は出来ないように思うので、パン一枚程度でも腹に入れておいた方が良いだろう。
ついでに、隣で寝ている恋人の食事も用意だけ済ませておくとしよう。
何はともあれ、先ずは服を着なければ。
着替えればもう少し動く気になれる筈だと、ベッドを降りようとして、
「!」
ぐいっ、と腕を強く引っ張られて、スコールはベッドからの脱出に失敗した。
ベッドに落ちるかと思った背中が、とさっと硬さを帯びた柔らかい感触────人の体に受け止められる。
虚を突かれてぽかんとしているスコールの首筋に、ちゅ、と吸い付く背後の男。
更には腹に回された手が悪戯の気配で撫でるものだから、スコールは焦って恋人の名を呼んだ。
「ちょ……クラウド!」
「ん」
「吸うな……っ!」
返事をするように極々短い声だけを返しつつ、クラウドはスコールの首筋にキスをする。
ちくりと小さな痒みに似た感覚があって、クラウドが痕をつけようとしているのが判る。
これから学校なのに、そんな場所につけられたら隠せない。
しかしクラウドはお構いなしにキスを繰り返し、スコールの耳の後ろに唇を押し付けて吸い、綺麗な赤い華を咲かせた。
スコール自身にはどうやっても見えないが、他人なら耳と髪の毛の隙間から見える事もあるだろう。
そんな距離まで近付いて見る事が出来る者は限られるだろうが、友人知人に見られたらと思うと、スコールは余計に居た堪れない。
だから見える所にはつけるなといつも言っているのに、クラウドは今度は首の後ろに甘く歯を立てた。
歯の感触と一緒に、肉厚な舌がゆっくりと首筋をなぞり、スコールの背中にぞくりとしたものが奔る。
「クラウド!やめろって……」
「ん」
「うわっ……!」
咎めるスコールの声など何処吹く風と、クラウドはスコールの体をベッドへと倒した。
覆い被さるように体を重ね、首元に鼻先を押し付けて来るクラウドに、スコールの脚がじたばたと暴れて抵抗を試みる。
「今日月曜……!」
「ああ」
「学校……!」
「そうだな」
スコールの足掻きを意に介さず、クラウドは愛撫を重ねていく。
スコールの腹を撫でていた手が下へと降りて、足の付け根を辿った。
太腿をゆったりと摩りつつ、指先が際どい場所を掠めるのを感じて、ひくん、と細い腰が震えてしまう。
「ん……っ!」
「スコール」
「やっ……」
耳元で名を呼ぶ低い声に、スコールはふるふると頭を振って拒否を示す。
が、やだ、と言うその主張は余りにも力なく幼くて、クラウドの興を削ぐには逆効果だ。
皮膚の厚い掌が、何度もスコールの中心部を掠めては離れ、熱を煽ろうとして来る。
反応したら調子づかせる、と判ってはいるけれど、スコールの躰はその熱の味と心地良さを十分に知っており、それに逆らう事は出来なくなっていた。
背後の男はそれを判っていて触れている。
その事に忌々しさを感じても、本気で拒絶する事が出来ないから、スコールに逃げ道は残されていない。
スコールの太腿に硬い感触が押し付けられて、スコールは赤い顔でそれの持ち主を睨んだ。
「昨日散々しただろ…!」
「ああ」
「大体、あんたも早く仕事の準備しないと」
「安心しろ。今日は休みなんだ」
「俺は休みじゃないっ」
クラウドは休みでも、スコールはいつも通りに学校があるのだ。
だから昨晩の疲労が残っていても何とか起きようと努力したし、昨晩もそのつもりで夕飯を多めに作り置きして朝に備えた。
それを台無しにしようとしているクラウドに、スコールは眉尻を吊り上げるが、
「テストは終わったんだろう」
「終わ、ってる…けど……っ」
「なら良いじゃないか」
「意味が分からない……んん……っ!」
確かに先週まではスコールのテストがあって、それに向けた期間中も恋人同士の時間は取れなかった。
テスト開け直ぐはと言うと、クラウドのシフトが詰め込まれていたので、メールや電話はしていたものの、逢って過ごす事は出来ず仕舞い。
お互いの煩わしい事から解放されて、ようやく顔を合わせる事が出来、お互いに熱を燃え上がらせたのが昨日の事。
それですっかり満足した────と言う訳ではないが、それでも離れていた時間は取り戻せたのではないか、と思う程に、お互いの存在を確かめ合った筈だ。
しかしクラウドはまだまだ足りないと言わんばかりに、スコールを求めて来る。
スコールの足の間にクラウドの膝が割り込んで、足を開かせれば、スコールの中心部も露わになり、
「お前も期待してるじゃないか」
「……っ!!」
薄く笑みを孕んで指摘するクラウドに、スコールは真っ赤になってぶんぶんと頭を振った。
クラウドは恥ずかしがり屋な恋人の思った通りの反応に、くつくつと笑いながら、また首筋にキスをした。
「ふ…ん……っ」
「お前も今日は休め」
「んぁ……っ」
吐息が首にかかるのがくすぐったい。
漏れてしまう声が徐々に我慢できなくなって、スコールは右手で口元を覆った。
抵抗して暴れていた足はと言うと、シーツの波をゆるゆると滑るだけになり、もどかしそうに腰を捩る様が、酷く扇情的だ。
はあ、はあ、と乱れていくスコールの呼吸音を聞きながら、クラウドはスコールの薄い胸を撫でる。
昨夜も何度も愛撫した其処が、待ち侘びるように膨らんでいるのを見付けて、くりくりと指先で苛めてやる。
「あ…っ、クラ…ウド……っ」
「良いな?」
甘さを孕んだ声で名を呼ばれ、クラウドはそれを合図と取った。
形ばかりの確認をした所で、スコールからの返事はなく、悩ましい声だけが繰り返される。
もうクラウドが離してくれない事を、スコールも重々理解した。
同時に自分も彼からまだ離れたくないと思っている。
ただ、せめて休みの連絡位はしたい────と考えてはいるのだが、その為に携帯電話に手を伸ばす事も、もう出来ない。
取り敢えず、全部終わってクラウドの気が済んだら、今日は此方の自由にさせて貰おうと決めて、スコールは甘い甘い熱の中に溺れる事にした。
7月8日なのでいちゃいちゃクラスコ。
子供を堕落させる駄目な大人なクラウドと、悪い大人に捕まったけど嫌ではないスコール。
昼くらいにスコールが寝てる間に、クラウドがスコールの携帯からティーダに連絡する。
ティーダはスコールがクラウドと日曜に逢うって聞いてるから、大体予想済み。
夜になってもスコールはまだ帰らないので、結局夜通しいちゃいちゃするんだと思います。