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[クラレオ]気紛れなプレゼント

  • 2026/08/11 21:05
  • Posted by k_ryuto
  • Category:FF



久しぶりに見る故郷の空は、宵闇に包まれていた。
時間の正しいところは判らないが、月が高い位置にあることから、概ね日付を越えた頃だろうか。

今だ人の気配の少ない街並みには、灯りも少なく、一見するとゴーストタウンと変わりない。
そんな場所でも心の影はうろうろとしていたが、獲物もない故か、襲われる人の声もなかった。
これを一匹くらいは退治して行っても良いのだろうが、生憎とクラウドも疲れている。
今夜の寝床を求めて、それを許してくれる場所へと飛んだ。

帰っているなら楽なのだが、と向かったのは、街はずれにある小さなアパートだ。
その二階に灯りが燈っているのを見て、これ幸いと窓辺に下りる。
閉じたそのガラス戸を軽くノックすれば、程なく家主───レオンがやって来た。


「玄関と言うものを知らないのか、お前は」
「こっちの方が早い」


胡乱な目で窓を開けたレオンに、クラウドはいけしゃあしゃあと言って、入室する。
レオンは溜息を吐いて、侵入者を受け入れた窓を閉めた。


「まさか今日帰ってくるとはな。残念だ」
「なんだ。邪魔か?」
「それはいつもそうだな」


言いながらレオンは、やれやれと言う表情で、台所へと向かう。

帰り路をパトロールにするからと、仲間たちの輪から離れた場所に居住を整えたレオン。
とは言え普段は専ら会議場にしている魔法使いの家と、賢者の研究所がある城を往復する生活である。
この為、自宅と言うのは一週間に一回程度、寝に帰っている程度のことだ。
稀に客人───鍵の勇者がやって来た時、甘える彼に絆されて、しばし休息の寝床を許すことはあるが、使い道と言ったらその程度である。

この家の台所と言うのも、あまり使われない故に綺麗なものである。
偶にしか戻って来ない家だから、あれこれと生活用品を置いても持ち腐れになるとか。
冷蔵庫はあるが、生鮮食品も必要な時に最小限しか持ち帰らない為、それ程中身は入らない。

レオンはその冷蔵庫を開けると、真っ白な紙箱を取り出した。


「ユフィから、お前が戻って来るかも知れないからと押し付けられたんだ。二、三日中に帰って来なかったら、酒の肴にしようと思っていたんだが」
「なんだ、それ」


レオンがキッチンに箱を置いて、蓋を開ける。
クラウドが横合いから覗き込んでみれば、真っ白な生クリームにフルーツを乗せたケーキが入っている。


「……ケーキ」
「お前の誕生日だろう」
「……ああ」


そこまで言われて、ようやくクラウドは壁にかけられた時計を見る。
アナログな針時計に、デジタル液晶で今日の月日が表示されている。


「そんな日だったか」
「用意し甲斐のない奴だ」
「忙しいんだ」
「ふらふら飛び回ってる奴が言っても説得力はないな」


レオンの言葉に、クラウドの眉間に皺が浮かぶ。

忙しいことは事実だが、その中身が故郷の復興に明け暮れる幼馴染たちとは違うのも確かだ。
人手不足に喘ぎながら、あれこれとやる事に追われている彼らに比べると、クラウド自身は己の問題のみに集中すれば良いので、楽と言えば楽だった。

レオンはケーキを皿に移し、フォークを添えて、それを食卓用のテーブルに置く。


「一応、お前の為に用意されたものだ。お前が食べろ」
「そう言う事なら、遠慮なく。でもこれだけで腹は膨れないぞ」
「贅沢な奴だ」


クラウドの言外の要望をくみ取って、レオンはまた溜息を吐く。
冷蔵庫を開けたレオンは、ラップで閉じた皿を取り出し、


「残り物しかない」
「十分だ」
「手を洗ってから食えよ」


釘を差すレオンに、お前は母親か、とクラウドは呟く。
じろりと睨む蒼に降参の手を上げて、いそいそと水場に向かった。

電子レンジで温められたのは、肉団子の入ったスープ。
大方これ自体が残り物のリメイクで作られたのだろう、具材のほとんどは溶けて然程形は残っていない。
それでもレオンが作ったものなら不味いことはない。
遠慮なく平らげて、食後のデザートとしてケーキにも手を付けた。

生クリームたっぷりのケーキは、見た目からして如何にも甘いものだったが、フルーツの酸味がそれを程よく中和してくれる。
まだこういうものを購入できるほど、この街は落ち着いていないから、きっとエアリスあたりが作ったのだろう。
こうした甘味は普段ほとんど食べないが、偶に食べるには良いかも知れない。

───と、半分ほど食べたところで、レオンがテーブルに大きなボトル瓶とグラスひとつを置いた。


「これもお前に」
「なんだ」
「ワインだ」


手短に答えて、レオンは向かいの椅子に座る。

瓶には、洒落たカリグラフィのラベルが貼ってある。
手に取ってまじまじと眺めてみると、どうやらクラウドの生まれ年数に仕込まれたものだと判った。


「ワインなんて上等なものが、この街で手に入るとはな」
「醸造施設が無事だったのと、そこの管理人が戻ってきたのが大きいな。中身はちゃんとチェックしてクリアしたものだから、問題なく飲める。安心しろ」
「随分な貴重品だろう」
「ああ。だから、お前が帰って来なかったら、俺が飲んでしまおうと思っていた。実に残念だ」


レオンは露骨に残念そうな表情を作った。
言葉でもその意を表明するあたりに、彼が本当に楽しみにしていたことが判る。

クラウドはにやりと笑って、


「生憎だったな。俺が帰って来て」
「全くだ。普段はまるで音沙汰もない癖に、こういう時だけ嗅ぎ付けてくる」
「鼻が良いんでな」
「調子の良い」


呆れた溜息が返って来た。

クラウドはケーキの最後の一口を食べた。
生クリームとスポンジだけの一欠けらだが、中々に甘い。
その舌に別の味が欲しい、と思いつつ、


「なあ、レオン」
「なんだ」
「誕生日なのに、手酌って言うことは、ないよな?」


蒼の瞳を見つめながら言えば、レオンは判り易く眉間に深い皺を刻む。
甘えるな、と言いたげな視線だが、結局のところ、この男は年下と言うものに総じて甘い。
加えて今日はクラウドの誕生日だと言う点も、譲歩の理由になった。

レオンがワインボトルを手に取ったので、クラウドもグラスを差し出した。
傾けた口から、とくとくと深い赤色の液体がグラスに注がれた。
天井にぶら下がった照明の光を受けながら、中できらきらと泡が渦を作っている。

グラスを口元へ運んで傾ければ、酸味の利いた味わいがクラウドの舌をとろりと濡らす。


「……うん」
「どうだ」
「美味い。ケーキが甘かったし、丁度良い」


そう言ってクラウドは、一気にグラスを開けた。


「気に入ったか」
「そうだな」
「なら、シドも選んだ甲斐があったな」
「シドが?」


普段はビールばかりを飲んでいる養父が、ワインを選んだのか。
意外なことを聞いて、クラウドはしげしげとワインボトルを眺めた。
洒落たラベルのカリグラフィは、咥え煙草に腹巻が似合う男と中々ミスマッチで、くつりと笑いを誘う。

グラスのワインを飲み干すと、直ぐにレオンが二杯目を注いだ。
それも飲んでしまうと、また次がすぐに齎される。


「そんなに急いで注がなくて良いんだが」
「空いていても味気がないだろう」
「まあ……悪い気はしないがな」


とは言え、ペースを考えて飲まないと、この分だと飲み干す頃には潰れそうだ。
度数はそれなりに高いようで、胃袋の辺りが熱くなっているのが判る。

黙々と飲んでは注がれを繰り返していたクラウドだったが、ふと、じっと見つめる蒼に気付いて、


「あんたも飲むか。興味があったんだろう」
「まあ、多少は」
「じゃあ飲めば良い」
「それはお前へのプレゼントとして、シドが用意したんだ」
「ああ、だから俺が貰った。貰ったんだから、どう飲むのも、誰に飲ませるのかも、俺の自由だ」
「……お前がそう言うなら」


クラウドの理屈に、レオンは小さく笑みを浮かべて乗った。
密かにこの流れを彼が期待していたことは、その表情から読み取れる。

レオンがグラスをもうひとつ持って来たので、それにはクラウドが注いでやった。
ガラスの中でとろりと泳ぐワインを見つめ、レオンはグラスを口へと運ぶ。


「……ああ、良い味だな」


柔く細められた蒼灰色が、ワインを見つめて微かに笑む。

こっそりと楽しみにしていたものを、お零れに与ることが出来てか、レオンの表情は満足げだ。
クラウドもその表情を眺めながら、自然と口角が上がる。


「あんたと飲むのは久しぶりだ」
「お前が街にいないからな」
「前よりは帰ってるだろ」
「お前の気が向いた時だけ、な。だから今回だって、今日帰ってくるとは思っていなかった。皆もあまり期待していなかったし」
「その割には、色々と用意してくれたんだな」
「万が一、な。もう少し早く帰って来ていれば、直に祝えただろうに。残念だ」


今日何度目かの“残念”だが、今度のそれはレオン自身でも、クラウドに向けたものでもない。
この場にいない、既に眠っているであろう、仲間たちのことだ。

暗に、もっとちゃんと帰ってこい、と言う圧を感じて、クラウドは肩を竦める。


「明日には一度、顔を見せに行く。その時に礼は言うさ」
「そうしておけ。一応、準備自体はお前が帰ってくる想定でやっていたんだから」
「……あんたも準備したのか」
「ユフィにねだられたからな。ケーキや夕飯の材料の買い付けには行った」
「それだけか?」


じっと見つめて問い重ねたクラウドに、ワインを飲んでいたレオンの手が止まる。
グラスをテーブルに戻したレオンは、クラウドの問いの奥を少し考えてから、理解した。


「……そうだな。やったことはそれだけだ。だから、俺からお前に渡すものはない」


きっぱりと言い切ったレオンに、クラウドの唇が尖る。
態と判り易い表情を浮かべたクラウドを見て、レオンはにやりと笑った。


「帰ってくるかも判らない奴に、態々手間をかけるのも癪だったからな」
「折角の誕生日だって言うのに」
「調子の良い。だが、まあ……手間のいらないものなら、出しても良いかもな」


テーブルを挟んだ向かい側で、レオンの表情は常になく機嫌が良い。
それを齎してくれたのがワインなら、クラウドにとって、この上なく最高のプレゼントと言えた。

クラウドはグラスのワインを飲み干した。
直ぐにレオンがワインボトルを手に取って、続きを注ごうか、と視線で問う。
クラウドは空のワインと、レオンの顔を交互に見て、


「あんた、このまま酔い潰れやしないだろうな」
「さあな。良い酒だったから、生憎そこまで持つか自信はない」


レオンは決して酒に強くない。
今は上機嫌な様子で飲んでいるが、重ねて行けば、睡魔に浚われていくだろう。
そうやって何度か楽しみを流されたことを、クラウドはよく覚えている。

クラウドはしばらく考えた末に、空のグラスをテーブルの端に置いた。
レオンが腕を伸ばしても、ワインボトルの口は届かない。
レオンは判り易く眉尻を下げてくれたが、ワインは彼の手許に置かれ、ついでにレオンも自分のグラスに残っていた液体を飲み干した。



クラウドが席を立ってレオンの下へと近付くと、笑みを梳いた眼が見上げてくれる。

その顎を捉えて、噛みつくように口付ければ、甘い酸味の味がした。





クラウド誕生日おめでとう、と言うことでクラレオです。
酒盛りさせたいなと言うのと、レオンの方からお誘いがあったら良いなと。
誕生日と言う特権と、美味しいお酒でレオンの機嫌が良いので、色々お応えして貰えると思います。やったねクラウド。

[クラスコ]暴食バースディ

  • 2026/08/11 21:00
  • Posted by k_ryuto
  • Category:FF

R15




喘ぐ声が耳に心地良い。
もう無理、と拙い声で抗議が何度となくあったが、止まらなかった。
今日は全部、好きなようにして良いと言われている。
それならと思う存分に甘い蜜を骨まで貪ろうと決めていた。

意識を飛ばしそうな恋人に、頑張って現実に留まるようにねだる。
律儀で真面目な恋人は、自分で言い出したことだからか、どうにかこうにか意識を繋ぎ続けてくれた。
普段のことを思えば、彼の負担も考えて、もう終わる時間になっても、離さなかった。


「も、むり、ぃ……クラ、ウ、ドぉ……っ!」


体もヘトヘト、意識もふわふわ。
どんなに頑張ってくれと言われても、これ以上は無理だとスコールが訴える。

中が小刻みに震えるのが伝わって、クラウドは強く歯を噛んだ。
最後の締め付けを受けて、クラウド自身も昇り詰める。
どくん、と熱く蕩けた内側に欲望を吐き出せば、スコールは掠れた高い声でを上げた。

びく、びく、と紅く火照った体が戦慄いた後、かくん、と首が落ちる。
全身の筋肉がこれ以上張り詰めるのは無理だと、その身体はすっかり弛緩してしまった。
その癖、内側の締め付けはまだ余韻が残っていて、クラウドはその感触で頭の芯がくらくらとする。


「ふあ……あ、う……あ……」
「は……はぁ……はぁ……」


文字通り、生き絶え絶えのスコールを見下ろしながら、クラウドも詰めていた息をようやく吐き出す。
心臓の音がまだ早い。
もう一度、と言う欲求がぐつぐつと煮えているが、さすがにクラウドの体の方も疲れたらしい。
どっとした疲労感で体が重くなって、これを再点火させるのは、中々難しかった。

ゆっくりとスコールから出て行く。
注ぎ込んだものが奥から溢れ出して、彼の下肢を汚す光景が、またクラウドを煽る。
今夜はずっとそれを繰り返していた。


「あう……あ……この……体力、バカ……」


憎まれ口な抗議をするスコール。
しかし、今夜の箍を外してくれたのは、彼の方である。


「お前が……遠慮をするなと言ったから、な」
「だから、って……こんな、に……続けると……思、わない……」


死ぬかと思った、とスコールは小さく呟いた。

日焼けも知らない肌は、普段は陶磁のように白いのに、今は全身が桜色だ。
クラウドが何度となく口付けた痕があちこちに残って、所々には歯形もあった。
引き締まった腰には、クラウドの大きくしっかりとした手形がある。
全身くまなく、クラウドに愛された痕跡があって、マーキングをしたように見える。

血の巡りで赤みが引かない首筋にキスをすれば、びくん、とスコールの体が跳ねた。
感じやすい体を抱き締めて、そのまま首に舌を這わす。


「んぁ、や……もう……っ」
「良いだろう、舐めるくらい。俺の誕生日なんだから、何しても良いって言ったのは、お前だ」
「あ、あ……っふ……!」


体が疲弊しきっている所為だろう、スコールは身動ぎも出来ない。
クラウドが与える愛撫に、それがどんなにささやかなものでも、反応するのを抑えられなかった。

動物が愛しいものに毛繕いをするように、クラウドはスコールの肌を丹念に舐める。
スコールはヒクッ、ヒクッ、と身体を震わせながら、それを受け止めていた。
情事そのものを彷彿とさせる感触に、スコールは甘い声を止められない。
それがまた、クラウドの欲と興を誘って、悪戯を助長させる。


「俺が貰った、誕生日プレゼント。いや、ケーキかな」
「は……ふ、ぅ……んん……っ」
「どこを舐めても甘くて美味い。全部食べないと勿体ない」
「も……散々、食った……だろ……っ!」


スコールの言う通り、まぐわい始めてから、思う存分その身体を貪った。
時計を見れば、始めた時は日付が変わった直後だったのに、もう随分と時間が経っている。
この季節の朝の早さを思えば、もう東の空は白み始めているだろう。
つまりはそれだけの時間、スコールを揺さぶり続けていた訳だから、根を上げられるのも当然か。

クラウドの手が、スコールの肌をゆっくりと滑って行く。
胸元の蕾に指を掠めると、あ、と判り易く高い声が漏れた。


「ちゃんとやる前に確認はしただろう。本当に止めなくて良いんだな?って」
「……した、けど……んん……っ!こんなに、なんて……思っ、て……なか……っ」


スコールは甘く見ていたのだ。
体力の差は勿論のこと、恋人の性欲の強さと、自分の痴態でどれほど興奮するかと言うことを。


「もう、しない……も、言わない……あんな、こと……」
「それは残念だな。だったら、今日のうちにもっと堪能しておかないといけないか」
「うぅー……!」


ぶんぶんとスコールは頭を振った。
今日はもう嫌だ、と真っ赤な顔で訴える。

幼い仕草が愛らしくて、いじめている気分になるが、生憎と今夜のクラウドに罪悪感はない。
首筋を舌で辿り、耳元まで近付いて、耳朶を軽く甘噛みした。


「ひあ、う……!」
「このまま明日の夜まで過ごしていたいな。一日中、お前を感じていたい」
「は……ふ、うん……っ」
「中で感じれたら一番良いが……俺もさすがに、ちょっと疲れた」
「……ちょっと、って……こっちは、もう……っ」
「ああ。だから今はしない。今は、な」


耳元にかかるクラウドの吐息と声に、スコールが肩を縮こまらせている。

次は何をされるのか、どこを触れられるのかと、赤らんだ体は判り易く構えていた。
そうやって戯れに対して緊張が続いているものだから、いつまでも体は過敏に反応してしまう。
元々敏感な体であるが、今の今まで揺さぶられたお陰もあって、より顕著な状態だ。

抱き寄せた体の背中をそっと撫でる。
性的な目的ではなく、本当にあやし宥める目的で。


「今夜は十分頑張ってくれた。意識も飛ばさなかったしな」
「……あんたが……そう、しろって……言う、から……」
「ああ。ありがとう、スコール」


感謝とともに耳下にキスをする。
スコールはむずかる声を漏らして、はあっ、と息を吐いた。
背中を撫でる手付きにも促されてか、ようやくその身体から緊張の糸が抜けていく。

くったりとベッドに沈んだスコールは、もう頭を持ち上げることも出来ない。
熱の抜けきらない体が冷えないように、クラウドは布団を引っ張って、スコールの体を包み込んだ。
そこまでされて、ようやく本当に終わった、と思えたのだろう。
眦に少し安心したものが浮かんで、寄せられた枕に顔半分を埋めた。


「もう、寝る……」
「ああ」
「……変なことするなよ……」
「ああ。するなら起こす」
「やめろ……」


起こしてくれるな、頼むから。
疲れの所為もあるだろう、うんざりとした表情でスコールは言った。

それから五分としない内に、スコールは寝息を立て始める。
精も根も尽き果てて、きっと夢も見てはいないだろう。
クラウドもじっと横になっていると、うつらうつらとした睡魔が手招きを始めていた。

眠るスコールの体を抱き寄せると、彼の方から温もりを求めて身を寄せてくれる。
すっかり安心した表情で眠るスコールに、クラウドの唇が緩む。


(プレゼント、随分悩んでくれたんだな)


今日と言う日の為に、スコールは随分前からプレゼントについて考えてくれていた。
この世界でそんなものに宛がえる代物と言うのは極端に少なくて、思い付いたとて調達できるか判らない。
モーグリショップにあるもので賄うにしても、都合よく適したものは見付かるまい。
食事に好物を用意するとか、実用性を抜きにして飾り物やアクセサリーも考えたそうだが、どれもしっくりこなかったと言う。
結局、悩み続けている内に昨日まで過ごし、手許に用意するには至らなかった。

そうして煮詰まったスコールが行き付いたのが、「あんたの好きにして良い」と言うもの。

あまりに大胆なプレゼントになったものだから、さすがのクラウドも驚いた。
まず額面通りに受け取るのは焦燥だと、スコールがどこまでそれを意識しているのかを確認。
それでクラウドが細かく確かめるものだから、反ってスコールの羞恥心が爆発したりしたのだが、───ともかく、スコールはちゃんと判っていたし、意識していた。
普段、クラウドがしたいと思っていることや、満足するまでその身を貪りつくして良い、と。


(かと言って、ちょっと俺が調子に乗ったのは否めないが……)


掠れた喘ぎ声を思い出して、クラウドは苦笑する。

最初にちゃんと「もう無理って言っても止めなくていい」とスコールの方から許しを貰っていたとは言え、本当に実行したのもどうかと思う。
最中はいつにない乱れようの恋人を見て、完全に理性が飛んでいた。
体力が続く限り、欲望が気の済むまで揺さぶっていたから、スコールには堪ったものではなかっただろう。
へとへとになって終わる羽目になって、スコールが深く後悔するのも無理はない。

すぅ、すぅ、と静かな寝息を零す恋人を見つめる。
ようやく火照りが収まり始めた頬に触れた。


(それでも、俺が貰ったものだからな)


スコールにとっては散々でも、クラウドにとっては最高の時間だった。
普段は負担をかけ過ぎない為にセーブしているところを、もう一回、あと一回と貪る喜びと言ったら。
重ねる刺激で目覚めた体は、どこを触れても反応してくれるから、その様子も含めて、クラウドを昂らせた。

前後不覚になって、泣きながら喘ぎ名を呼ぶスコールの顔。
思い出すだけで、疲れ切っている筈の体が興奮しようとするから、その破壊力は凄まじい。
けれど、当人は全くそんなつもりはないのだ。
だから、あんな大胆なプレゼントを差し出してくれる訳で。


「……無自覚と言うのは恐ろしいな」
「……んぅ……」
「お前の話だぞ、スコール」


零した呟きに、腕の中で身動ぎする恋人。
頬にかかる横髪をそっと退かして撫でると、眠る口元が微かに緩んだ。


「クラ、ウド……」
「ん?」
「………」


名前を呼ぶので返事をしたが、それ以上の反応はなかった。
それでも、眠りの中でも自分を求めてくれているのならば、嬉しいものだ。

さて、とクラウドも改めて寝台に身を預けた。
体の力を抜くと、重石のような疲労感がやってきて、クラウドの意識を引っ張っていく。



腕の中に閉じ込めた温もりを、どうせなら今日一日中、独り占めできないだろうか。
そんなことを思いながら、朝までの短い時間を睡魔へと委ねた。







クラウド誕生日おめでとう、のクラスコです。
ベタなプレゼントで、ベタな夜を過ごしている二人も良いなと思いまして。

定番なプレゼントだった訳ですが、渡した本人から色んな()許可もあったので、浮かれてしまったクラウドです。
多分いつもはずっと抑えている。スコールがこんなことになると思っていなかったので。
スコールは二度とするかと後悔していますが、それくらいクラウドが自分に興奮してくれていると言うことが判ったので、たま~に誘ってくれるようになるんじゃないでしょうか。

[レオスコ]知りたいのならいくらでも

  • 2026/08/08 22:45
  • Posted by k_ryuto
  • Category:FF

R15




(レオンって、俺のどこが好きなんだろう)


閨の交わりを終えて、一度意識を飛ばした後。
ふと目が覚めて、夜の冴えた冷気が火照った名残を薄らげる頃、スコールはそんなことを考えた。

裸身のまま、二人でひとつのベッドで横になっている。
セックスをしている時の熱さはとうに抜けていたが、体の中心にはまだ燻ぶっている感覚があった。
冷気を厭って抱き締める腕は、眠っているのにしっかりとした強さが合って、スコールに安心感を誘う。
なんとなくに目が覚めたものだったが、このままじっとしていれば、そう遠くない内に二度寝するのは明らかだ。

そんな束の間の静寂の中で、唐突に疑問が湧いて出た。
暇を持て余した頭が、なんとなく避けていた疑問を汲み取って持ち上げてきた、そんな具合に。


(……俺なんかが、レオンに好かれる理由なんて、あるんだろうか)


すぐそこにある、温かな胸に顔を埋めながら考える。

レオンは頭が良いし、人を見る目もある。
十代が多い秩序の戦士たちの中では年嵩な方で、そう言う意味でも経験豊富だ。
秩序の戦士たちはそれなりに仲が良いが、まとまりのないところも少なからずあるので、レオンはそう言うところを引き締めてくれる。
けれども過保護にする訳ではなく、必要なところがあれば言及する、その程度だ。
だからスコールから見ても、変に堅苦しくないし、フォローも上手いから、ウォーリアやセシルを相手にする時よりは気が楽だった。

スコールから見ると彼はそういう好人物だが、彼から見た自分はどうだろう。
己が大概、可愛くない性格であることは、嫌と言うほど知っている。
素直な訳でも、無邪気な訳でもない自分を、どうしてレオンは愛してくれているのか。

そろりと顔を上げて見れば、自分と同じ、斜め傷を持った顔がある。
顔立ちはバッツたちから「よく似てる」と言われるが、スコールにはよく判らない。
確かに目や髪の色は近いようだが、しっかりと大人の輪郭をしているレオンの顔は、スコールが鏡を見ながら並んでも、あまり似ている気がしなかった。

その顔にそっと手を伸ばし、頬に触れる。
閉じた眦に指を滑らせると、長い睫毛がふるりと震え、


「……あ、」
「……スコール……?」


薄く覗いた蒼灰色に、起こしてしまった、とスコールは思った。

背中を抱いていたレオンの腕が、ぎゅう、と力を籠める。
痛いほどのことはない。
眠気に誘われながらも、それに抗っているようで、うう、と小さく唸る声が聞こえた。

しばらくすると、レオンは一度強く目を閉じてから、


「ふぁ……」
「……悪い、起こした」
「うん……いや……」


欠伸をするレオンに詫びると、彼は小さく首を横に振った。
重い瞼をこじ開けるよう、目元に手を遣って幾許か、ようやくはっきりと意識を持った蒼が現れる。


「まだ暗いな……」
「そんなに時間は経ってない。多分、だけど」
「そのようだ。お前は、眠れなかったのか?」


優しい声とともに、レオンの手がスコールの項のあたりを擽る。


「いや……そういう訳じゃない。偶々目が覚めていただけで」
「そうか」
「悪かった。あんたまで起こして」
「気にするな。どうせそんなに深くは寝ていなかったから」


レオンの言葉に、気を遣わせた、とスコールは思った。
こういう時、スコールが何を言ったところで、レオンからは「お前が悪いんじゃない」と返ってくる。
お陰でスコールは可惜に気を遣わなくて済むのだが、彼にばかりその労を強いている気もしていた。

形の良い指が、スコールの濃茶の髪を手櫛で梳く。
その手付きがどうにもくすぐったくて、スコールはゆるゆると頭を振った。


「嫌か」
「……なんか、そわそわする」


厭だと言う程ではないけれど、優しく触れられるのは落ち着かない気持ちになる。
要はスコールがこうした触れ合いに不慣れなのだ。
レオンもそれを汲み取って、撫でる手付きを殊更ゆっくりとさせた。

その手の感触に、頭の後ろの方から、意識が段々と緩んでいく。
このままその内眠れるだろうか、と思ったスコールだが、ふとさっきの疑問が再浮上した。


「……レオン」
「ん?」
「……」


目の前の男の名を呼んだスコールだったが、そこから先が続かない。
疑問を解消した気持ちと、それを聞いてどうするんだ、と言う冷静な思考が葛藤している。

後からやってきた、どこか気まずい気持ちに、スコールの視線が彷徨う。
暗がりの部屋の中でも、その様子はレオンにしっかり見られていた。
レオンはあやすように小さく笑って、スコールの丸みの残る頬をそっと撫でる。


「何か言いたいことがあるなら、良いぞ」
「……」
「すっきりさせてしまった方がよく眠れる」
「ん……」
「まあ、無理にとは言わないけど」


いつもと同じ、レオンは選択肢の中に逃げ道を残す。
言いたくないなら言わなくて良い、と言うその寛容が、スコールにとっては安心材料になる。

スコールはしばらく、レオンに身を寄せて考えていた。
聞いたところで大した意味もないだろう。
聞く事で、何か恣意的なものも生まれそうで、そんなものをレオンに押し付けるのも嫌だった。
けれど、どうして、何が、と言う漠然とした疑問は、放っておくと妙な尾を引きそうな気がする。

結局のところ、吐くだけ吐いてしまわないと、このもやもやを打ち消すことも出来ない。
せめてレオンを困らせないことを祈りながら、


「……あんたは……」
「うん」
「……俺の、その……何が好きなのかと、思って……」


スコールの声は、ぼそぼそと小さい。
いっそ、「聞こえなかった」と言われたら、それでなかったことにしてしまおうとも思っている。

しかし、レオンは耳の良い男だ。
スコールの不明瞭な声でも、きちんと言ったことは伝わっている。


「お前の好きなところ、か」
「……」


反芻されて、スコールの耳が熱くなる。
馬鹿なことを聞いた、茹った顔を隠すように、レオンの胸に額を擦り付けた。

自分で聞いておいて、自分で恥ずかしくなってしまうスコールに、レオンはくすりと笑って頭を撫でる。
胸から感じるじんわりと熱い感触に、敢えて気付かない振りをして、そうだな、と考えて見せた。


「何がと改めて考えると、少し難しいな。色々あるものだから」
「……そんなに?」
「そうだな。そんなにある。お前が思っているより、俺はお前のことが好きだから」
「……」


胡乱な目が伺うようにレオンを見た。
彼の言葉を疑う意味もないだろうが、どうにもスコールは、それを素直に受け取れない。
それもこれも、自分が他人に好かれる人格者ではない自覚があるからだ。

スコールの視線に含まれる懐疑的なものを、レオンは柔い笑みを浮かべて受け止めている。


「まず強いて挙げるなら───お前が必死になっているところは、可愛いと思う」
「……可愛い訳ないだろ、俺が」


唇を尖らせてスコールが返すと、いいや、とレオンは言い切った。


「慣れてないのに、俺に合わせようとするだろう。本当なら俺がペースを抑えるべきなんだが、お前がそうやって一所懸命になってくれるのを見ると、つい、な」
「な……」


薄い笑みを据えたレオンの言葉に、スコールの顔がまた熱くなる。
交わっていた時の感覚が、その燻ぶりが、体の奥で火を点けた。
もう体は疲れていて、眠るつもりであるにも関わらず、若い躰がじんとした欲を思い出す。

真っ赤になってはくはくと口を開閉させるスコールに、レオンの喉がくつくつと笑う。


「そう言う素直なところも、好きだな」
「俺のどこが……」
「今、顔が赤くなっている。耳まで赤いな」
「さ、触るな!」


ピアス穴の開いた耳を、レオンの指が形をなぞって滑る。
ぞくぞくとしたものが耳元から首筋を伝ってくるものだから、スコールは思わず抗議した。


「敏感なところも良い」
「んん……!か、らかう、な……!」
「本気だよ。ほら、こうやって触れるだけで───」
「や、あ……っ!」


耳元から、首筋、そのまま胸へと辿るレオンの指。
熱が再び燈った身体は、彼の言う通り、敏感に反応を示してしまう。

はっ、はっ、と息が上がって行くスコールに、レオンはくすりと笑みを浮かべて、首元にキスをする。
ちゅう、と座れる感覚が合って、スコールの喉仏に小さな華が咲いた。
感じ入った体が、名残の感覚をいやにリアルに増長させて、勝手に準備を始めてしまう。

もどかしさに身を捩って逃げを打つスコールを、レオンの腕がしっかりと抱き締めて捕まえていた。


「レ、オン……っあ、んん……っ」
「もう休むつもりだったんだがな」
「は、あ……やぁ……っ」


触れるレオンの手は明らかにスコールを煽っている。
身動ぎした足をレオンの下肢に絡ませれば、彼の下腹部も頭を起こしているのが判った。


「う、ん、ぁあ……っ」
「勿論……こういう所ばかりじゃなくて。普段の様子も、可愛いと思うよ」
「は……、は、ふぅ……ん……っ」
「無意識に俺を目で追っているところとか、な」


耳元で囁く声だけで、スコールは自身が達してしまいそうだった。
彼が何を言っているのか、その内容まで理解する余裕はない。
肌を辿る彼の指先や、背中に添えられた腕の逞しさを感じているだけで、精一杯だ。

シーツが擦れる音と共に、ベッドがかかる重みに軋む。
レオンの腕がスコールの足を大きく開かせて、まだ閉じ切っていない秘所に指先が触れる。
眠ろうとしていたことなど、二人ともすっかり忘れていた。


「レオン……っ」
「もう一回だけ、な」
「……あ、あぁ……っ!」


甘く耳朶を噛まれて、スコールは背中を仰け反らせた。
覆い被さる男に縋ってしがみつけば、小さく笑う気配が伝わる。


「は、う……あ、や……中に、指……入っ、て……」
「大丈夫だ。解れてるからな、痛くはないだろう」
「あ、ああ……っ、ひぅ、んん……っ」


中へと侵入される感触を、スコールは身を捩りながら受け入れていく。

ひくっ、ひくっ、と四肢を戦慄かせて縋る少年の眦には、甘露の雫が浮かんでいる。
レオンはそれを優しく啜りながら、スコールの目尻にキスをした。


「どこが、なんて───野暮な話だ、スコール」
「は……っ、レオ、ン……!」
「お前の全部が、俺がお前の好きなところだよ。それを自覚していないところも含めて、な」


悶える内側に入りながら注がれる言葉は、飽和状態のスコールに聞こえる筈もなく。
甘い悲鳴さえ心地良いものを感じながら、レオンは愛しい少年を抱き締めた。






『レオン×スコール』のリクエストを頂きました。
スコールの全部が愛しくて可愛いと思っているレオンと、全くそんな自覚もなければ、自分が愛されていることに自信のないスコールでした。
たまにこんなこと聞いてきて、答えるのは吝かでないレオンだけど、スコールには口で言っても中々本人が納得しない。
刷り込みみたいに、体から実感させつつ、教えて行かないとね、と言うスタンスのレオンです。

[スコール&クライヴ]煙硝と炎心

クライヴ in DFF(013)




水膜の張った大地を蹴る。
散る水飛沫が足を取ることはなく、それはどこまでも清廉だった。
文字通り、汚れなどないその水を蹴散らすように踏みながら、走る。

出方を待つほど、こちらは悠長ではなかった。
読みは戦いながら見れば良い。
一歩でも、一手でも、先を取った方が、命の凌ぎ合いにおいて、優位を得る権利を掴み取る。
無論、それも確率論のことであって、絶対的な方程式など戦場にありはしない。

こちらが踏み込むと同時に、あちらも走り出していた。
真正面から挑んでくるか、或いはどこかで軌道を反らすか。
警戒したが、海に似た蒼の瞳は、真っ直ぐにクライヴを睨んでいる。
引き結んだ唇が、自分と同じことを考えているのが判った。

ならば、より早く、より鋭く、最初の一手を掴む。
手にした剣を両手持ちに掴めば、相手もその重みを読み取って、肩に担いだ風変りな剣を握った。
やや下段から振り上げた剣を、上段から打ち下ろした剣が噛む。
分厚く重い金属がぶつかり合う音が響いた。


「ぬぅ……っ!」
「……!」


クライヴが唇を噛めば、相手も苦々しい顔で睨んだ。

刃越しに見る顔は若い。
濃茶色の髪、蒼灰の瞳、眉間に走る刀傷。
その手に握られた剣は、クライヴには全く初めてみる形をしている。
それがどんな武器なのか、仔細は一切伝えられておらず、他の者曰く「戦ってみるのが一番よく判るだろ」とのこと。
実際その通りで、理屈説明を並べられるよりも、こうして直に交えてみる方が判り易い。

噛み合う銀刃は、一見すると薄くて容易く折れそうだが、クライヴの剛剣でもびくともしない。
ただの鋼じゃない、と知るにはそれで十分だった。


(それなら!)


クライヴの右腕に力とエーテルが流れ込む。
柄を握る手を媒介にして、炎の力が剣の切っ先まで一気に走った。

炎の剣を縦横無尽に振り薙いで、銀の刃を奥へと押していく。
蒼灰色の瞳が苦いものを浮かばせて、ち、と舌打ちが聞こえた。

ばちり、と稲光が至近距離で光る。
咄嗟に体を後ろへ飛ばせば、落雷がその軌道を追った。


(そうだ、この世界は───魔法は隠すものじゃない)


この奇妙な世界で目を覚ましてから、驚いたことのひとつ。
誰も魔法を奇妙な目で見ないし、奇跡のように扱わないし、それを使うことを隠さない。
戦術のひとつとして隠し玉にすることはあっても、手段として惜しむことはない。

稲妻の隙を縫って、若者は再びクライヴへと肉薄する。
クライヴは下がる足を止めた。
迎撃に構えるクライヴを、若者も理解して、強く地を蹴る。


「おおぉっ!」
「ぬぅんっ!」


横腹目掛けて振り抜く銀刃を、クライヴの剣が十字に受け止める。
ぎち、と鍔迫り合いが始まった。

体格はクライヴの方が上だ。
身長も、それ程大きく離れている訳ではないが、クライヴに分がある。
単純な力勝負であるならば、細身のシルエットをした若者に負けるつもりはなかった。

力と体重を乗せて、噛み合う剣を押し退けようと試みる。
────が、若者の瞳の奥で鋭い光が閃いた瞬間、ガアン!!と強烈な衝撃がクライヴの剣を弾き上げた。


「!?」


手許で爆発が起きた。
そう思う程に、襲った衝撃は凄まじかったのだ。

剣を握っていた両手が痺れている。
その隙を逃すほど、敵は甘くない。
クライヴの剣を跳ね上げるに振るった銀が、刃を返す瞬間、鋭く光った。

考えるよりも先に、クライヴの躰が動く。
突き出した左手が暴風を作り出し、若者の体を正面から撃ち据えた。
細身の体が吹き飛ばされ────若者は中空でぐるりと猫のように回転すると、難なく地面に着地する。


「はっ…、はっ……!」
「は……はぁ……っ!」


打ち合いは数合、それでも二人が息を切らせるには十分だった。
互いに相手の手を知らずに相対したのだから当然だ。
一手先に何が飛び出すか、全神経を集中させながら己の有効打を探していたのだから。

乱れた呼吸を整えた方から、或いはそれを待たずに飲み込んだ方から、次が始まる。
───と、どちらも思ったが、それもこの場にいる者が二人であればの話。


「よーし、そこまで!」
「これ以上は怪我しそうだからなー」


響いた快活な声と、やれやれとした声と。
それを受けた蒼灰色が、幾分か不満そうな様子を見せながらも、銀の刃は下ろされた。
クライヴも同じく、握り直していた剣を見て、それを背中へと納める。

金髪の少年が尻尾を揺らしながら若者の下へ駆け寄る。
気楽な様子で話しかける少年に、若者は言葉少なに応じていた。
そしてクライヴの下へは、快活とした声の主───バッツが近付いて来る。


「お疲れ。すごかったな、クライヴ」
「ありがとう。しかし、どうにも体が今一つ動きが鈍いな……」
「召喚されたばっかりの奴は、大体そうなんだ。しばらくしたら馴染んでくるよ、多分だけど」


保証はないけど、と付け足しつつ、経験則を語るバッツに、そうか、とクライヴは頷いた。

水膜を踏む音が近付いてきて、そちらを見れば、若者と少年がいる。
少年───ジタンは興味津々な様子で、クライヴの顔を見上げてきた。


「剣に魔法に。こりゃ嬉しい戦力だな」
「役に立てるなら良いのだが」
「立つ立つ。うちは結構ジリ貧な状態なんでね。あんたみたいな奴が増えてくれるのは嬉しいよ。な、スコール」
「……そうだな」


ジタンに話を振られて、若者───スコールが短く返す。
その手には、未だ風変りな形の剣が握られていた。

クライヴもスコールも、共に怪我らしい怪我はない筈だが、バッツが「念の為な」と言ってケアルを唱えた。
無手から生み出される魔法の力と言うのは、クライヴにはまだ見慣れない。
それでも効果は確かなもので、薄く残っていた右手の痺れた感触が消えていく。


「すまない。ありがとう」
「お安い御用ってね。さ、運動もしたんだし、中に入って何か摘まもうぜ」
「今日のデザートは桃だ。昨日、良い塩梅のが持って帰れたからな」


バッツとジタンに促され、クライヴは彼らについて行く形で、佇む館に足を踏み入れる。
そこが、この闘争の世界に召喚された、秩序の戦士たちが構える拠点であった。

屋敷にはこれまで十人の戦士たちが生活を共にしており、クライヴは最近そこに加わった新参である。
部屋はいつの間にかぽつりと一部屋増えていて、そこがクライヴのものとして宛がわれた。
生活については、まだまだクライヴには見慣れないものが多く、落ち着かないことも多い。
しかし、秩序の戦士たちの人柄や空気感もあって、取り敢えずは寝起きにストレスはなく済んでいる。

リビングダイニングに入ると、ジタンとバッツはそのまま部屋奥のキッチンへ入って行った。
「すぐ準備するから待ってろよー」と言われたので、取り敢えずどこに座ろうかと室内を見渡していて、ふと、ソファへと向かう若者が目に留まる。


「スコール。少し良いか?」
「……なんだ」


声をかけると、スコールは訝し気に顔を上げた。


「さっきの特訓の時のことなんだが、気になることがあって。随分、変わった形の武器を使っているんだな」
「……まあ、そうだな」
「一度、かなり強い衝撃を食らった気がしたんだが、あれはどうやってやったんだ?エーテルの匂いもしなかったから、魔法ではないようだが……」


鍔迫り合いの最中に襲った、あの凄まじい衝撃。
それなりにショックの類には強い方だと自覚しているクライヴだが、その手を痺れさせる程のものだった。
あれが至近距離で打った魔法───例えば爆発系の魔法ならば、直前直後にクライヴはエーテルの匂いを感じている筈だ。
それが一切なかったから、恐らくあれは魔法ではない、とは思うのだが、あとは全く判らない。

クライヴの問いに、スコールは口元に指を当てて、考える仕草を取る。
じっと見つめる蒼灰色は、クライヴの方を注意深く観察していた。


「……トリガーを引いた」
「トリガー?」
「俺の武器は、構造が特殊で、柄と刃の中間の所に、弾薬を仕込むことが出来る。その火薬を爆発させた」
「火薬を爆発?それは、随分危ない手段なんじゃないか?」


火薬と言ったら、固い地盤を掘削する際に使われる、爆弾の材料だ。
そんなものが武器に、それも手許に近い場所にあるとは、クライヴには信じがたい構造である。

スコールはまた少し考える時間を取った後、


「あんたの世界に、銃はあるか?」
「銃……と、言うと……む……」


クライヴは腕を組んで考え込んだ。
どうもこの世界から目覚めてから、色々な記憶が曖昧で、自分がいた世界のことを具体的に思い出すことが難しい。
なんとなく“こうだった”“こうではなかった”と言う感覚を読むのが精一杯である。

クライヴの反応が鈍いことから、凡そのところを感じ取ったか、スコールが続ける。


「大砲は?」
「それは、判る」
「それをずっと小さくして、携帯できる大きさにしたもの。弾を込めて、火薬の爆発力をエネルギーにして、発射させるところは同じ。威力と役割は違うが……そんな所か」
「ふむ……いまいちはっきりとは判らないが、君の世界にはそう言う道具があるんだな」


一先ず納得した形でクライヴが頷くと、「まあな」とスコールは言った。


「俺の武器は、剣と銃を融合させたようなものだ。でも砲身……弾を打ち出す構造はないから、点火しても弾は発射されない。弾倉で炸裂したエネルギーが、刀身を伝って、武器の威力を上げることに繋がる」
「それは……使い手の方にも、かなりの衝撃が来るんじゃないのか?」


爆発のエネルギーと言うのは、都合の良い方にだけ流れるものではない。
それとも、彼の世界には、そうした衝撃のエネルギーもコントロールする方法があるのだろうか。

訊ねてみると、スコールは自分の右手を見下ろして、


「まあ……衝撃は、それなりに来る。振動による摩擦も強いし」
「グローブはその為に?」
「そんな所だ。多分」


多分?と訊き返そうとして、クライヴは思い出す。
スコールも、自分程ではないにしろ、元の世界のことについては曖昧なところが多いのだと。

色々と気になることは他にもあるのだが、今これ以上を聞くのも鬱陶しいか。
ジタンやバッツ曰く、スコールはあまり人と話すのが得意ではないのだとか。
クライヴもあまり口が回る性質ではないし、ソファに座したスコールの表情は、聊か堅い。
あまり付きまとうのも良くないな、とクライヴが思った所で、丁度良く弾んだ声が聞こえてきた。


「お待たせ!よく冷えた桃だぞ」
「スコールもクライヴもこっち来いよ。皆で食おうぜ」


ガラスの器に瑞々しい桃を乗せて、ジタンとバッツがキッチンから出てきた。
来い来いとダイニングテーブルの方へ呼ぶ二人に、クライヴは頃合いとしてそちらへ向かう。


「桃か。久しぶりに食べる気がするな」
「お前の世界って、果物って多い?」
「どうだろう。あまり手に入らなかったような気はするが」
「じゃあいっぱい食えよ。おーい、スコール!スコールも来いって!」


二人が賑やかに名前を呼ぶからか、スコールは深々と溜息を吐く。
希望を叶えねば終わらないから、と言わんばかりの表情で、渋々に彼はソファを立った。

ジタンがスコールの前に皿を持って行き、食べろ食べろとじゃれている。
スコールは判り易くそれを鬱陶しがっていたが、差し出された桃は断らなかった。
眉間に皺を浮かべて、あれは美味いと思っているのだろうか、とクライヴが観察していると、


「なあ、クライヴ。スコールと何の話してたんだ?」


尋ねてきたのはバッツだ。
クライヴは、桃に楊枝を差しながら、


「何と言うこともないんだが……さっきの特訓で気になったことを、少しな」
「ふぅん。スコール、ちゃんと答えてくれた?」
「ああ。しかし、俺の方がどうも知識が足りないようで、少し困らせたかも知れない」
「ん~……ま、それは大丈夫だろ。この世界に召喚された奴らは、皆それぞれ常識も違うからさ。スコールもその辺は判ってるし、ちょっとやそっとじゃ気を悪くはしないさ」
「だと良いんだが」
「大丈夫、大丈夫。結構優しいから」


ひらひらと手を振って、気にするな、とバッツは笑う。
ならば今はその言葉を信じよう、とクライヴも頷いた。

クライヴがちらと視線を流せば、じゃれるジタンをあしらいながら、桃を食べているスコールがいる。
勢いよく食べていくジタンやバッツに比べると、その所作は大人しい。
賑やかな二人に挟まれて、溜息を吐いてあしらいながらも、突き放す所まで行かない様子が、クライヴにはなんとも微笑ましく見えるのだった。





『DFFもしくはDdFF(012)の世界観で、スコールとクライヴが話をしている様子』のリクエストを頂きました。
あんまりはっきりと本文中に書きませんでしたが、DFF=013の戦いとしています。
スコールとクライヴが戦ったらどうなるかなと思ったりして、想像するの楽しかったです。

クライヴは落ち着いてるので33歳だと思います。最年長の異説新人。
召喚・目覚めたての頃で、色々記憶がまだ曖昧。台所とか見たらびっくりしそう。うちのDFFでは、戦士たちは結構整った環境で生活できているので……
スコールの方は、新たな仲間と言うことで、人見知りが発動しています。兄さんはその辺りの空気を読んで、会話はするけど適当な距離を置いてくれそうと思っている。
スコールは自分のことを喋るのは苦手だけど、武器の話なら出来ると思っています。武器オタクな節もあるし。

[16/シドクラ]煽情

R15




どうにも上手くいかないことはあるものだ。

取引先のひとつが、すっかり駄目になってしまった。
それなりに大きい案件として依頼があり、こちらも人数態勢を整えて挑んでいたのだが、それも水の泡。
原因はあちら側の内々にあって、いわゆる不祥事と言うもの。
詳しい事はシドもまだ追っていないが、締結に向けていた話がすっかり飛んだのは間違いない。
何せ、当事者である相手の会社が火の車と化したので、こちらも関係を続ける訳にはいかなかった。
損害のことを考えると、シドも早々に打ち切るしかなかったのである。

上手く言えば実入りの多い話だったのだが、こうなってしまっては仕方がない。
幸いなのは、まだ本締結まで至っていなかったことで、仕事そのものを積み上げていなかったこと。
だが、それに向けた具体的な準備はしていたから、そのコストが無駄になったのは痛かった。
気持ちとしても、懐としても。

嘆いたところでどうなる訳でもない。
この事態を受けて、シドは根回ししていた関係各所に、事情説明と詫びの行脚をすることになった。
────それが、今日一日のことである。

外回りは自分の仕事と請け負っているが、昨今の夏、延々と外を歩くのはお薦めされない。
天気予報では「危険な暑さとなっています。外出は必要最小限に留めましょう」などと言ってくれるが、それが出来れば苦労はない。
電話一本で済ませてくれるところばかりではないから、直に出向く必要がある。
車で動けるだけマシではあるが、その車内も五分も日向に置けばサウナと化す。
数時間後とにコンビニで水分を入手して、ついでにアイスで体の深部体温を下げなくては、とてもやっていられない。

お陰で今日のシドは、始業の時以外、全く自社に寄り付かなかった。

行脚が終わった時には、時刻は終業時間になっていた。
オットーに連絡して、事務所の施錠を頼み、今日のところはそのまま直帰させて貰う。
旧友はシドの疲れ具合を察したようで、「ああ、判った」のひとつ返事で許してくれた。

夜になっても気温は中々下がらない。
都会のコンクリートジャングルは、足元も建物もすっかり燻され、一向に温度を下げない。
日が暮れてようやく、日光が直接当たらなくなって、少し楽になったかも知れないな、と思う程度だ。

家に帰ると、同居人である恋人のクライヴが、夕飯を作っていた。


「お帰り。夕飯はもうすぐだけど」
「ただいま。あー……その前に風呂に入ってくる。汗で酷い有様だ」
「俺も帰った時に入った。湯は抜いてないから、すぐ入れる」
「そいつは有難い」


気の利く采配に、シドは久しぶりに口元が緩んだ。
鞄をダイニングテーブルの椅子に置いて、すぐに風呂場へと向かう。

同じ40℃でも、外気温を押し付けられるのと、温められた湯では全く違う。
汗でべたつく体をすっかり洗い流すと、気分が変わった。

リビングダイニングに戻れば、そのまま夕飯だ。
気を利かせたクライヴがビールを出してくれたので、一杯やりながら腹を満たす。
椅子にすっかり落ち着いて、のんびりと傾ける酒と、つまみになる食事。
それでようやく、今日一日の苦労から抜け出せた。

疲れはあったが、寝るには聊か惜しかった。
時間もそれなりだったから寝床に入っても構わないが、なんとなくそう言う気にならない。
リビングのソファに座って気晴らしにテレビを見ていたが、


「シド」
「ん?」


呼ぶ声に振り返れば、ソファの後ろにクライヴが立っていた。
見下ろす青に、薄らと期待の色が滲んでいる。

シドはくつりと笑って、指先で「来い」と示した。
クライヴが背凭れに寄り掛かりながら、整った顔がシドへと近付いて来る。
唇を合わせてやれば、青が嬉しそうに細められた。

テレビの電源を切って、クライヴが隣に座る。
唇を重ね合わせて、丹念に咥内をまさぐりながら、唾液を交換した。


「ん……ふ……」


クライヴが鼻にかかった声を漏らす。
その見栄えの良い体躯にシドの手が這うと、クライヴも応じるように、夜着のシャツを捲る。
直接、と求める無言の訴えに応える形で、シドの手が体温の高い肌に濡れた。

愛撫を与えている間に、クライヴはボトムも緩めていく。
盛んな年齢であるから、彼の中心部は既に反応していた。
そこも軽く触れてやれば、ビクッ、と腰が震える。


「は……っ、シド……」
「ああ……」


求める声に、シドもじわりと熱が浮かぶ───筈だったが、


「……」
「シド?」
「いや……」


ふと動きを鈍らせたシドに、敏いクライヴも気付いた。
どうかしたか、と問う視線に、シドは答えを濁らせる。

───もう一度、とシドは気を取り直した。
クライヴの首筋に唇を当てて吸い、彼の体に触れる。
意外と他人に触れられることに慣れていない体は、シドの触れ方をよく覚えて、素直に反応を示した。
その様子を見ているだけで、いつもシドは興奮を煽られて行く。

今日もそうだ。
もどかしげに体を捩るクライヴの姿に、シドは確かに興奮を抱いている。
……の、だが。


「……クライヴ。悪い」
「え?」


唐突に詫びたシドに、クライヴは夢見心地の名残の中で首を傾げる。
何かあったか、と問う瞳に、シドは苦い表情を浮かべて、


「……駄目だな。勃たない」
「は?」


今まさにと言うところまで寄せていた体を放し、そう言ったシドに、クライヴは困惑の表情を浮かべている。

シドはソファに座り直して、背凭れに寄り掛かって天井を仰ぐ。
気分は確かにその気であるのに、体がそれについて行っていない。
クライヴもその様子を服越しに察したようで、途端に不安そうな表情になった。


「シド、」
「お前の所為じゃないよ。ただの疲れだ」


自己卑下が早いクライヴが、いたずらに自分を貶めないように、シドは先に言った。
でも、とクライヴは言いたげな表情をするが、シドはその目尻に軽く指を擦り付ける。


「一日、外を動き回ったからな。その所為だろう」
「そう、か……」
「気分は乗ってるんだがな」


あくまでしたくない訳ではないのだと、シドは念を押す形でそう言った。

シドは自身の下肢に手を遣って、下着の中に手を入れた。
自分のものを握って見ると、すっかり草臥れていて、まるでその気がない。
刺激でもすれば少しは反応するかと揉んでみるが、あまり効果はなさそうだった。

───はあ、とシドは溜息を漏らす。
こういうものは、無理に反応させようとした所で、反って心理的プレッシャーで余計に鈍くなる。
心配そうにこちらを見ている男にとっては物足りないかも知れないが、今日の所は、他の方法で応じるしかないだろう。

そう思っていると、


「シド、ちょっと」
「ん?」


横合いから伸びてきた手が、シドの下肢に触れる。
クライヴは少し緊張した面持ちで、下着の中へと手を入れた。

先に侵入していたシドの手を辿って、クライヴは中心部へと辿り着く。
節のある大きな手が、そこを包み込むように柔らかく握った。
感触からして、萎えた状態であることはクライヴにも伝わったらしく、彼の眉根が僅かに潜められる。


「なる、ほど……」
「したい気持ちは、山々だが。これじゃお前を満足させられやしないだろう」
「……」


肩を竦めるシドに、クライヴはなんとも言えない表情を浮かべていた。

ちら、と青色が上司兼恋人の顔を見て、少しの逡巡の後、ゆっくりと近付く。
その意図を読み取ってシドがじっと待っていれば、髭のある頬にキスをされた。
触れては離れる口付けが繰り返され、それと同時に、中心部を握る手がゆっくりと動き出す。

クライヴは指で輪を作って、シドの中心部を扱いている。
不慣れな動きではあるが、同じ性を持つ者同士だから、どう触れれば刺激になるのかは判っていた。


「シド……」
「いじらしいことしてくれるな」
「……俺もしたい、からな」


ささやかなボディタッチだけで、クライヴは満足できない。
出来ることなら、ちゃんと中で感じたい。

クライヴの愛撫は、初めこそ恐る恐るとしたものだったが、次第に大胆になって行く。
甘えるように身を寄せてくる男を、シドも抱き寄せてやった。
密着すれば羞恥が反って薄れるのか、クライヴはシドの額や目尻に口付けながら、雄の覚醒を促している。

恋人の奮闘のお陰で、じわじわと熱が集まってくる。
しかし、それでもしっかりと頭を起こすにはまだ足りず、


「……シド」
「ん」
「口は、あんた……嫌いではない、よな」


確かめる形で聞くクライヴに、シドは一瞬、目を丸くした。


「大丈夫か?お前、苦手だって言ってただろう」
「うまく出来てるか分からないから。でも、このままだとあまり……効果もなさそうだし」


シドは自分の胎内で起きている変化が判るが、傍目にはまだそれは出ていない。
この程度では駄目なのかも、とクライヴが思うのは無理もなかった。

クライヴはソファを下りて、シドの下肢を緩めさせた。
取り出した雄に顔を寄せて、恐る恐る顔を近付ける。
小さな口が開かれて、ゆっくりとシドの中心部を咥え込んだ。


「ん、ん……っ」


萎えているとは言っても、それなりの質量があるものだ。
咥え込んだクライヴは、俄かの息苦しさに眉根を寄せていたが、離れようとはしなかった。

縋るようにして足の間に体を割り入れ、懸命な奉仕を行うクライヴに、シドの口端が歪む。
性欲は年相応にあるとは言っても、クライヴ自身は清廉な性格だ。
自ら積極的に性に及ぼうと言うことは珍しく、初めばかりは誘っても、後はシドに任せていることが多い。
そんな男が、珍しく積極的に、かつ自発的にことを進めようとしている様子は、いじらしく、同時に形容しがたい背徳性を漂わせる。

生暖かく濡れた咥内で、雄がじわじわと熱に染まっていく。
それをクライヴが感じ取ったかは定かでないが、彼の奉仕もまた、熱の入りを増して行った。


「ふ、ん、ん……っ!」
「は……クライヴ……っ」


下肢に縋る男の癖っ毛をくしゃりと撫でる。
熱の塊を咥え込んだまま、クライヴの視線だけがこちらを見た。
上目に様子を伺う瞳に、シドが薄く笑みを据えて見せれば、彼は安心したように奉仕を再開させる。

一心不乱に頭を動かすクライヴ。
その耳元や項にシドが指を滑らせると、ひくっ、ぴくっ、と些細な反応が見られた。

クライヴの首の後ろが、じっとりと赤らんで汗を掻いている。
咥内では質量が確かな形になりつつあった。
次第に口に咥えているのは辛くなったか、クライヴは喉奥で小さく咳込みながら、唾液を引きつつ雄を解放する。


「っは……は……、どう、だ……?」


口端の唾液を拭いながら確かめるクライヴ。
その眼には、すっかり頭を起こしたシドの象徴があった。

クライヴの小さな唇から、ほう、と熱のこもった吐息が漏れる。


「これなら……」


クライヴの手が伸びて、自己主張するそれに触れる。
神経が高ぶったお陰で、それだけでぞくりとしたものがシドの背中を奔った。


「シド。これなら、問題……ないよな?」
「見た通りだよ」


シドはそう答えると、もう一度クライヴの頭をくしゃりと撫でた。
頑張ってくれた恋人に、ご褒美の感覚で撫でてやると、クライヴはいつも嬉しそうに眦を緩める。

シドを昂らせている間に、彼自身も熱が増したのだろう。
クライヴは急くようにして衣服を脱ぐと、ソファに膝立ちになって、シドの膝に跨った。
体躯の良い重みが乗って、丁度良い位置を探して身動ぎする。
それをシドからも適度になる場所へ誘導した。



シド、と急く声に併せて、ゆっくりと彼の中へと侵入する。
ようやくの感触に甘い声が漏れるのを聞いて、この声が一番効くかも知れない、とシドは思った。





『シドクラでの現パロで、ちょっとシオシオなシドを元気出させるシチュエーション』のリクエストを頂きました。
可能であれば雰囲気R指定で、とのことでしたので、喜んで書いていた私です。
お仕事大変ですねのシドでした。

いつもはシドの手管が上手いので、任せきりにして安心してるクライヴ。
でもクライヴの方も何かしたいとか、シドを気持ち良くしたいとかはあるので、スイッチが入ると結構積極的だと思う。
たまに見られるその様子に、またシドも興奮してると言いなあって。

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