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2012年05月

[絆]いつかの未来に泳ぐ空

  • 2012/05/06 22:43
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孤児院の頃に使っていたものが残っていたのは、幸いだった。

物置で眠るそれを見付けて、レオンは真っ先にクレイマー夫妻に連絡を取った。
良かったら譲ってほしいと言ったら、二人はいつもと同じように「ええ、どうぞ」とにこやかな返事。
その後、レオンは埃を被っていたそれを手洗濯して綺麗にし、来たる日まできちんと収納して保存した。

そして、5月5日─────レオンの家の傍には、空の大海を泳ぐ大きな魚達の姿があった。



「すごーい!おっきい!」
「でっかーい!」



庭の空を泳ぐ魚を見付けて、スコールとティーダが目を輝かせる。
元気なティーダは勿論、滅多に大きな声を出さないスコールも、今日ばかりは空に響かんばかりの大声を上げていた。

レオン達の家の横には、十メートル程の高さのポールが建てられており、それを中心に魚が空を泳いでいる。
魚は体のあちこちに継ぎ接ぎの痕のようなものがあったが、そんなものは、魚の大きさに夢中になっている弟達には些細な事だ。
大きい、凄い、格好良い!と無邪気にはしゃぐ弟達の姿に、レオンの口元も綻んだ。

ぱたぱたとティーダが駆け寄ってきて、レオンの手を引っ張る。
見下ろせば、きらきらと輝く青がレオンを見上げていて、



「レオン、これ何?でっかい魚!」
「鯉のぼりって言うんだ。ザナルカンドでは見なかったか?」



問い返してみると、ティーダはこっくり頷いて、また魚の下へ駆けて行った。
其処にはスコールがいて、ぽかんと口を開けて空を見上げている。

キィ、と家のドアが開く音がして、朝食の準備をしていたエルオーネが顔を出す。



「レオン、スコール、ティーダ。朝ご飯、食べないの?」
「ああ、直ぐに行く……と、言いたいが、まだ落ち着きそうにないな」



言ってレオンが弟達を見れば、倣ってエルオーネも同じ方向を見た。

二人の小さな弟は、空の魚を指差して、まだはしゃいでいる。
いつもなら目覚めて直ぐに腹を空かせるティーダも、今日はそれ所ではないらしい。

そんな二人に小さく笑い、エルオーネも空を見上げる。



「まだ残ってたんだね、これ」
「物置の奥の方にあったんだ。多分、処分し忘れだったんだと思うが、丁度良かった」
「うん。スコールもティーダも楽しそう」



空を見上げていた二人が、ぱっと身を翻して、二人の下に駆け寄って来る。
エルオーネがしゃがんで目線を合わせると、スコールが彼女に抱き着いた。
ティーダもレオンの腰に突進し、レオンは金色の髪をくしゃくしゃと撫でる。

エルオーネに抱き着いたスコールが、くいくいと彼女の服袖を引っ張った。



「ね、ね、お姉ちゃん。これ凄いね」
「うん?」
「これ!」



これ、とスコールが指差したのは、空を泳ぐ魚達。
いつも大人しいスコールの興奮した様子に、エルオーネはくすくすと笑った。



「うん、凄いね」
「ね!一緒なの、凄いね」
「……一緒?」



予想していなかったスコールの言葉に、レオンが反芻して首を傾げる。
エルオーネも首を傾げるが、スコールはにこにこと嬉しそうに笑っているばかりだ。
そんな弟に代わって、ティーダがレオンの手を引き、空を泳ぐ魚達を指差した。



「あれ、一番おっきいの、レオン!」
「俺?」
「で、二番目の赤いの、エル姉ちゃん!」
「私?」



レオンとエルオーネが空を見上げれば、悠然と泳ぐ大きな真鯉。
その下には、赤い緋鯉が身を翻して空を昇り、またその下には、それぞれ黒と赤の小さな鯉が二匹。

そんでね、とスコールとティーダが声を揃えて、続けた。



「ちっちゃいのが、」
「オレとスコール!」



─────見付けた鯉のぼりのセットが、真鯉と緋鯉、小さな鯉二匹だけではなかった。

この鯉のぼりは、きっとクレイマー夫妻の手作りであったのだろう。
レオンが物置で鯉のぼりを見付けた時には、きっと孤児院にいた子供達の人数分であったのだろう、他にも小さな鯉が何匹かいたのだが、今現在空で泳いでいる子鯉以外は、汚れや破損が酷く、縫い直すのも難しかった為に諦めざるを得なかった。
だから残った鯉のぼりが、真鯉と緋鯉、二匹の子鯉となったのは、全くの偶然の事。

けれども、その偶然が、弟達のこんなに楽しそうな笑顔を見せてくれたのなら、……レオンは不意の喜びに零れる笑みを隠せない。
傍らのエルオーネも、くすくすと楽しそうに笑って、スコールの頭を撫でている。



「────さあ、スコール、ティーダ。朝ご飯にしよう」
「お腹いっぱい食べて、あんな風に大きくならなきゃなね」




空を昇る鯉のように、潮風の中を泳ぐ彼らのように。

弟達が何処までも泳いでいける未来を、願う。






弟達の為ならなんでもやるお兄ちゃん。裁縫だってお手の物。
鯉のぼり見てはしゃいでる子供達って可愛い。

最近は大きな鯉のぼりが空を泳ぐ事も減ってしまいましたが、見かけるとやっぱり「おおっ」って思います。

[寺院オール]空知らぬ日の“特別”

  • 2012/05/06 22:37
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一日遅れになりましたが、こどもの日ネタ。皆でほのぼの


いつものように、三蔵の執務室で暇を持て余していた悟空にとって、悟浄と八戒の来訪は幸いだった。

悟浄に遊び相手をして貰うでも、八戒が持って来てくれたおやつを食べるでも良い。
延々と仕事に耽る三蔵の傍で、構って貰える時間が来るのをぼんやりと待つより、ずっと有効的な時間だ。




「悟浄、八戒、いらっしゃい!」
「はい、お邪魔してます」
「相変わらず煩ぇ猿だな、お前は」




ぐりぐりと悟浄の手が悟空の頭を撫でる。
やめろよ、と悟浄の手を払おうとする悟空を、八戒が微笑ましそうに眺めている。

静かだった執務室が俄かに騒がしくなったのを受けて、三蔵が眉間に皺を寄せる。
しかし、此処にいる面々に何を言おうと無駄であるのは判り切った事なので、三蔵は溜息を一つ吐いただけだった。
次いで集中力も斬れたのか、手に持っていた筆を置き、取り出した煙草に火を点けた。




「で、お前ら、何の用だ?」




じろりと睨む紫電には、暗に「用がないなら帰れ。要があるならさっさと済ませて、とっとと帰れ」と言うオーラが滲んでいる。
それも目の前の男達には無駄なものでしかないが。

三蔵の言葉に、八戒は手に持っていたバスケットを見せてにこやかな笑みを浮かべる。




「今日は、悟空にこれを渡しに来たんです」
「ふえ?オレ?」




悟空は悟浄を押し退けて、なになに、と期待に満ちた眼差しで八戒に駆け寄る。
何せ、八戒が持って来ているバスケットには、いつもクッキーやパイなどの食べ物が入っているからだ。

それは大抵、八戒の手作りで、悟空の土産の為にと作られたものでる事が殆どである。
わざわざ“悟空に”と八戒が明言しなくても、食べ物の類は須らく悟空の胃に収まるものなのだが、それでも明言される事で、悟空にとっては特別感が増したように思えるのだ。


八戒は、悟空にバスケットを覗き込ませてやりながら、蓋代わりに被せていた手拭を取った。
すると其処には、大きな葉に包まれた、もちもちとした掌サイズの白い塊。




「何、これ?」
「おや、知らないんですか?柏餅です」
「かしわ……もち?」
「今日はお子様の日だからな」
「誰がお子様だ!」




“お子様の日”がどういうものなのか、それと“かしわもち”がどういう関係なのか悟空には判らなかったが、悟浄の言葉が自分をバカにしたものである事は理解できた。

噛み付くように叫んだ悟空を、宥めるように八戒が撫でる。




「まぁまぁ悟空。それより、これ、早めに食べちゃって下さい。固くなると美味しくありませんからね」
「マジ?じゃあ急いで食う!」
「待て、バカ猿。てめえ、さっきまでクレヨン触ってただろうが。手洗って来い」
「うえ~………うー…」




三蔵の言葉に、悟空は面倒臭いとばかりに顔を顰めた。
が、それをじろりと睨まれて、渋々従う事にする。
実際、悟空の手は画用紙に落書きしていた時に触っていたクレヨンの所為で、色とりどりに染まっていた。

悟空は急ぎ足で寝室に向かうと、洗面所で手を洗い、丁寧にクレヨンの汚れを落とす。
三蔵に見て貰っても怒られないくらい、きちんと綺麗にしてから、執務室へと戻った。




「ただいま!食べていい?」




手を見せて三蔵に問うと、無言で紫電が瞼裏に伏せられる。
無言の了承を貰って、悟空は早速、八戒の手から一つ貰って口に運ぶ。

むにぃ、ともち米独特の粘りの良さに対抗して、ぐっと顎で強く噛んで引っ張る。
中には餡が入っており、これも八戒が小豆から煮て自らの手で作ったのだろう、しつこくない甘味が口一杯に広がった。
喉詰まらすなよ、と言う悟浄に生返事をして、悟空はむぐむぐと一所懸命顎を動かした。


思い切り頬張った一口を、よく噛んで飲み込む。
さて二口目、と思った所で、悟空はじっと見つめる三対の視線に気付いた。




「何?」




紫電と紅と翡翠。
それぞれ無言で見詰める視線に、何かあるのかと問うてみると、




「いえ、なんでも」
「気にすんな、気にすんな」
「………」




────そう言われても、じっと観察されているようで、なんだか落ち着かない。




「…そういや、皆は食わねえの?」
「ええ。この柏餅は、悟空の為に作ったものですから」
「そうそう。だから気にせずに食えよ」
「葉は食うなよ。食用じゃねえからな」




順々に繋げて言われて、悟空はきょとんと首を傾げた。
食べているのを観察されていたから、てっきり、彼らも食べたいのかと思ったのに、違うらしい。

気にはなるが、気にせずどうぞ、と言うので、悟空は食べる事に集中する事にする。
時間が経つと美味しくなくなると言うなら、美味しいうちに全部食べてしまいたい。





見詰められながら食事をするのは、どうにも気恥ずかしい事だったけれど、

初めて食べた柏餅はとても美味しかったから、来年も食べたいと思った。







うちの三蔵、悟空に行事ごとを教えなさ過ぎだろう……教えても毎年出来るか判らないからね、うん。
悟浄と八戒は、行事に感けて悟空を構いつけたいだけです。

修行 16日目

  • 2012/05/05 21:29
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エルとレオンと子スコです。
この子たちが笑ってるの描くのが楽しい。

レオンの髪を結んでみました。お父さんと同じ結び方。レオンは兄として、弟達を守る為に一所懸命に大人になろうとしていますが、そんな中、“理想の大人”を模索して、父の真似をしてみたりする事もあったり。伸びた髪が単に邪魔で結ぶことの方が多いけど、一時はそんな風に、必死に背伸びしてた時期もあったりします。
エルは、髪を結んだレオンを見て、ちょっと懐かしい気持ち。おじちゃんが結んでたの見た事あります。母親と似てる似てるって言われるレオンだけど、段々ラグナにも似て来ます。エルオーネは、それが嬉しくって堪らない。でもレオンはレオンで、ラグナおじちゃんでもレインでもないのは、ちゃんと判ってます。二人の血が受け継がれている事、その面影が見れるのが嬉しい。
スコールはお父さんの顔を知らないから、エルお姉ちゃんがなんで嬉しいのか判らないけど、嬉しそうなのが嬉しいので、それで満足。お兄ちゃんもちょっと嬉しそうだし、髪結んでるお兄ちゃんはいつもと雰囲気が違うけど、格好良いから好き。

普段、長い髪を無精にしてるキャラクターが、たまにアップに結んでたりすると激しく萌えます。うなじが見えるとかいいね。後れ毛とかいいね。隠れてる首が見えるって、無防備でムラムラするね!


さて、今日中にSS間に合うだろうか。無理くさい(;´Д`)

修行 15日目

  • 2012/05/04 20:45
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ファイル 109-1.jpg

今日も子スコです。明日も子スコの予定です。子供の日なので。

子スコが「だっこ」って手を伸ばしてくるきたら、可愛くてゴロンゴロンします。私が。
これをやられるのは、レオンとエルです。主にレオンですね。「おにいちゃん、だっこー」ってぽてぽて近付いて来るのです。抱っこ大好き子スコ。お兄ちゃんお姉ちゃんに抱っこして貰いたいから、一所懸命二人の後ろをついて歩きます。
スコールの抱っこ大好きは、結構長いこと続きます。レオンが抱っこしちゃうからねw 癖になるってエルに怒られたりするけど、レオンは弟にも妹にも甘えられるのが好きだから、ついつい甘やかしちゃう。エルも甘やかしたいけど我慢~!でもスコールが頑張った後なら、目一杯誉めるし、甘やかします。
スコールの抱っこ癖が落ち着くのは、クレイマー夫妻がガーデン経営を始めて、三人が入学してからかな。幼年クラス・初等部・中等部と三人バラバラにならざるを得ないので。しばらくは、離れた分だけスコールが甘えたがるから、返って余計に甘えたがりになると思うけど。

ちびっ子描いてると幸せです。ちびっ子が皆に愛されてる話を考えるのが楽しいです。
……同時進行でエロい事考えてるとか言わないよ!

修行 14日目

  • 2012/05/03 22:05
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エルお姉ちゃんと子スコールです。

寝起きのスコール、お着換え中。まだ寝惚けてるもんだから、中々きちんと着れなくて、「はい、ばんざーい」とかエルが手伝ってる。レオンはママ先生と一緒に朝ご飯の準備をしてます。スコールは眠いんだけど、ママ先生とお兄ちゃんが朝ご飯作ってくれてるから、それは食べなくちゃって思ってる。眠いけど。
スコールは子供の頃から朝が弱いと可愛いなあ。起こして貰わないと起きれない。皆がお腹空いたーって起きる時間になっても、ベッドの上でむにゃむにゃしてる。たまに頑張って自力で起きたと思ったら、寝惚けて足滑らせて転んだり、昼頃に凄く眠くなっちゃったり。そんな危なっかしい子スコ萌え。

スコールは、結構手がかかる子だったんじゃないかと思う。ガキ大将気質なサイファーや、よく泣くゼルとはまた別の意味で。
エルオーネがいなくなって「一人でなんでも出来るようになる」って決めるまで、ずっとお姉ちゃんの後ろついて歩いてて、何かあったら直ぐに泣いて。お姉ちゃんお姉ちゃんって呼んでて、何するにもお姉ちゃんに手伝って貰ってたりとか。エルもエルで、レインの事もあるし、孤児院の弟妹達は皆大事だけど、やっぱりスコールに愛情が偏りそうな気がする。


子供の日まで子供ばっか描く予定。
……しかしSSの方は書けるんだろうか。つか、ここ小説サイトじゃなかったっけw?

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