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2021年06月08日

[ロクスコ]初花の色

  • 2021/06/08 10:00
  • Posted by k_ryuto
  • Category:FF


誰かと熱を共有したのは、随分と久しぶりの事だったように思う。

ただ欲を発散するだけなら、それを生業にしている者を買った事もあるけれど、それとこの熱は別物だ。
触れ合う肌の存在すらも邪魔に感じてしまう程、蕩け合う心地良さに身を委ねる事が出来たのは、もう何年の昔の話───だった。
愛しい人を喪ったのはロックにとって深い根を張り、故に彼は“守ること”に固執する。
馴染みの付き合いとなったエドガーから、「気持ちは判らんでもないがね」と少し苦い笑みを向けられる位には、ロックの根は重く昏い所に食い込んでいる。
ロック自身も少なからずその自覚はあったが、だが、だからと言って、嘗て自身の自惚れや油断から、全てを捧げても良いと思った人を喪った事は、忘れ難いものだったのだ。

だから、誰かと深く繋がる事もしなかった。
職業柄もあって、人との繋がりや縁を作る事に抵抗はなかったし、だからこそロックはパイプ役として役に立つ事が出来た。
秘宝を求めて培った情報網が、帝国との戦いに役立ったのは、その帝国の攻撃に因って命を落とす事になった恋人への贖いをしているような気持にもなれた。
───そんなものを彼女が望んでいた訳でもないのだろうけれど、軛に繋がれ続けていた男にとって、それが生へのエネルギーになっていた事も確かである。
けれど、結局の所、それはそれ、と言うものだ。
パイプ役も、それを通じて得た人との縁も、ロックにとっては“役に立つもの”であったけれど、其処に特別な感情があった訳ではない。

けれど今、褥に組み敷いて繋がり合う少年との邂逅が、ロックのそんな垣根を越えさせた。


「あ……んん……っ!」
「……っ!」


ピアスが光るロックの耳元を擽る、甘い吐息。
平時の低く落ち着いた声色とは全く違う、判り易く上擦った声を聞きながら、ロックは少年───スコールの中へと自身の熱を吐き出した。
スコールはロックの熱を余す所なく受け止めながら、「あ、あぁ……!」と背中を仰け反らせている。
本能的な反応か、逃げを打つように捩られる細い腰を抱き寄せれば、薄い腹がビクッと跳ねた。
連動するように締まる中の感触が心地良くて、ロックは汗を滲ませながら、歯を噛んで競り上がる衝動が終わるのを待った。

はあ、はあ、と二人分の熱の籠った呼吸が繰り返され、灯りを消した暗い部屋の中で反響する。
絶頂の余韻か、ヒクヒクと震えて已まない中の感触が心地良くて、ロックはこのままでいたいと思う。
しかし、四肢を強張らせている少年の負担を考えると、流石にそれはと思い直し、ロックはゆっくりと体を起こして、スコールを開放した。


「あ……う……」


擦れる感覚にか、スコールが悩ましい声を零す。
抱いていた腰を掴む腕の力を緩めると、またスコールが身を捩った。
白い足が何度もシーツの波を蹴って、長い睫毛を抱いた瞼が、何かに耐えるように強く瞑られる。
それから幾何かして、濡れた唇から、ほう……と吐息が零れた後で、ようやくスコールが目を開けた。


「っは……はぁ……」
「……大丈夫か?」
「………」


ロックが声をかけると、蒼の瞳がゆぅるりと此方を見た。
いつも凛として、聊か尖った印象すらも与えるブルーグレイが、今は蕩けて柔らかい。
眦に滲む雫を、そっと指先で拭ってやると、スコールは猫のように両目を細めた。

動く気力もないであろうスコールの躰を抱き起こすと、スコールはそのままロックに寄り掛かって来た。
火照った肌に滲んだ汗が、降れる肌の温度を奪っているのか、触れ合う躰が僅かに冷たく感じられる。
さっきはあんなに熱かったのに、と思っていると、スコールの頬がロックの肩に寄せられた。


「……つかれた……」
「はは、そうだろうな」
「……こんなに、疲れるなんて……」


知らなかった、と呟くスコールの声は、少し掠れている。
良く喘いでたもんなぁ、と思いつつ、ロックはふと気になる事を思い切って訊ねてみた。


「なあ、スコール」
「……なんだ」
「ひょっとしてお前ってさ、こう言うの、初めてだったか?」


それは、触れ合う直前という段階になって、ロックが違和感に気付いた事だった。

こう言った事も考えられる間柄になってから、それなりの時間が経って、ようやく今日と言う日が来た。
男であれば、やはり好いた者への情欲と言うものが沸いて来る。
相手が男であってもそう言うものが沸くのかと、それはロックも初めての経験ではあったが、単純な性欲処理の目的ではなく、心から全て交わりたいと思っていたのは本当だ。
とは言え相手はどうかと、伺うように何度かに渡って確かめて、スコールも同じ気持ちである事を確認してから、ロックは彼を抱く決意をした。

そして今晩に至った訳だが、正にそれを始めようと言う所で、ロックはスコールが酷く緊張した面持ちをしている事に気付いた。
相手は同性であるし、抱かれる側となれば無理もないだろうと、出来るだけ優しく努めようと思ったロックであったが、どうやらスコールの緊張の下は、それ以前の問題であったように感じられた。

例えば、キスをする時に息を止めていたり、耳に触れると酷く驚いた顔をしたり。
胸に触れれば困惑した表情を浮かべたのだが、蕾に触れると可愛い声が出て、顔を真っ赤にして口を塞いだりもして。
固く閉じている秘部に受け入れて貰う為、解さなくてはと指を入れると、引き攣った声が出た。
其処で経験するのが初めてなら仕方のない事で、それなら傷付けないようにロックはこれ以上ない程、丁寧に宥めてやったのだが、それが彼の新たな扉を開いたらしい。
次第にスコールの躰は熱を帯び、快感を拾うようになり、それがまた快感の呼び水になったのか、いつしか彼は何処に触れても艶のある声を上げるようになった。
そして、感じれば感じるほどに、彼は困惑しては縋るものを求めてロックを呼び、繋がった時には既に前後不覚になっていた程。

それだけ感じていたのは、彼自身の躰が、触れられる事に対してまるで耐性を持っていないと言うのもあるのだろうが、それ以上に、快感と言うものに対して無防備であったからだ。
ロックが触れる度、体に湧き上がる感覚や衝動を往なす術と言うものを、スコールは全く知らなかったのだ。
行為の途中からそれに気付いたロックであったが、最中に問うのも無粋な気がして、それ以上に自身の昂ぶりにも浚われて、確認する事を後回しにしていたのだが、


「……悪いか」


ようやく訊ねたロックに対し、スコールは顔を上げずにそれだけ答えた。
詰まりは、ロックの問う通りだと言う訳で、ロックはやっぱりなぁと思いつつ、


「意外……」
「はあ?」


ぽつりと小さく零れたロックの呟きは、腕に抱かれた恋人にしっかり聞こえていた。
赤らんだままの顔を上げ、眉尻を吊り上げて睨むスコールに、ロックは迂闊な自分の口を抓りつつ、


「いや、悪い、そうだったな。お前の世界じゃ、お前はまだ大人じゃないんだっけ」
「……」
「俺の世界じゃ、お前くらいの歳には、もう経験してる奴が多かったから。お前も綺麗な顔してるから、モテるんだろうなと思ってたしな」


世界が違えば、その背景も違い、情勢は勿論、常識も変わる。
ロックはそれをこの闘争の世界に召喚されて知った。

ロックにとって、自立していればその年齢を問わずに───最も、10歳そこらであれば話は違うが───成人と見て良いと思っている。
しかし、スコールの世界では、20歳未満はまだ法の下に保護される立場であり、故に大人ではない制限も多いとのこと。
性的経験の類については、少なくとも“公的には”それを許される年齢には届いていないらしい。
それでも、大抵は個人個人で階段を上る例も少なくないそうだが、スコールは人の輪から離れて過ごしていたから、そう言った付き合いもなかったのだろう。
そう考えると、スコールの“初めて”が今日であったのは、当然と言えば当然と言えた。

想像が足りなかったと、自分の一言が聊か軽率であったことを詫びるロックを、スコールはしばらく睨んでいたが、やがて溜息を一つ吐くと、またロックの肩に額を乗せた。
甘える仕草で許してくれることを伝える恋人に、ロックも詫びの気持ちを込めて、濃茶色の髪を撫でる。


「そっか、初めてか」
「……何回も言うな」
「悪い悪い。ちょっと嬉しかったから」


そう言ってまだ火照りの引かない背中を抱き締めれば、ゆるゆるとロックの背中にも腕が回る。
疲れの所為だろう、抱くと言う程その腕に力は入らなかったが、肩に添えられた手が柔く甘えてくれているのが判った。


(───こんなの、久しぶりだな)


思いを通じ合った人と、こうして熱を交えて、終わった後もこんなにも甘くて緩やかな時間を過ごす。
随分と奥に置き去りにしたような感覚に、感慨深ささえも湧いて、同時に嘗ての喪った人への罪悪感も少し。
少しだけなのか、と存外と自分は薄情なのかとも思ったが、腕に抱いた少年の体温は心地良くて、知ってしまったらもう手放す事は出来ない。
どうか彼女に、自分は駄目でも、少年のことは許して欲しくて、ロックは記憶の中で静かに笑う彼女へと目を閉じる。

一つ、二つと呼吸して、ゆっくりと瞼を持ち上げれば、頬を掠める濃茶の糸が見えた。
柔らかい猫っ毛をしたそれを指の隙間に通しながら梳いて、後れ毛のある項に指が触れると、ピクッとスコールが身動ぎする。


「……やめろ」
「嫌か?」
「…くすぐったいんだ」


拒否するように言いながら、スコールはロックの手を振り払うことはしなかった。
それを良い事に、ロックはもう一度、スコールの項に指を滑らせる。


「んっ……」


ぴくん、とスコールの肩が震えて、小さく声が漏れる。
感じているのだと判るその反応に、やっぱり敏感だな、とロックは思った。


(初めてだったのに、あんなに感じてたもんな)
「……う…ロ、ック……」
(何処触っても感じてて───)
「触るなって、んん……っ!」


つ、つぅ、と指を滑らせ、項から背中へ。
窪みのある背筋をそのラインにそってなぞって行けば、スコールの躰は逃げようと仰け反った。
撓り沿った背中を抱きながら、ロックがスコールの首に吸い付けば、ひゅっとスコールの喉が息を詰まらせる。
そのまま二人の躰はベッドへと落ちて、ロックは腕に抱いた少年に再び覆い被さった。


「や、ロック……っ!」
「悪い。もう一回したい」
「あ……っ!」


ロックの手は更に下りて、小ぶりな尻を撫で、秘めた場所を目指す。
そこに触れてみれば判り易くヒクついたのが伝わって、スコールの顔が益々赤くなった。

抵抗するように白い足がシーツを蹴っていたのは、初めの内だけ。
あやすように首筋にキスをして、少しずつ位置を変えて上って行き、唇を重ねた時には、もうスコールは嫌がらなかった。
寧ろ求めるようにロックの首に腕を絡め、拙いながらに口付けに応えようとしてくれる。

普段は大人びた顔をしている癖に、初めての快感に蕩け切った少年の顔は、とても甘くて媚毒のように雄を惹きつける。
性に疎いこの躰が、これからどんな風に乱れるようになって行くのか、想像するだけで酷く興奮と高揚が滾るのを、ロックは感じていた。





6月8日と言うことで、ロクスコ。

Ⅵではロックが一番好きなので、昔からやたらと彼の設定資料の類を漁っていたのですが、結構濃い人生送ってますよね。それで25歳というのがまたね。
生粋のトレジャーハンターであり、リターナーの一員として一人帝国支配域に潜入したり、世界の崩壊後も秘宝を求めて一人フェニックスの洞窟まで行っていた彼ですので、ゲーム中ではコメディリリーフも努めますが(船酔いとか)、結構旅慣れてる上にやり手なんだろうなと思ってます。
となるとアレコレの経験もそこそこあるだろうし、そんなロックにしてみたら、箱庭育ちの17歳は初々しいもんだろうなぁと言う妄想。

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