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2024年07月08日

[セフィレオ]朝暮の境界にて

  • 2024/07/08 21:05
  • Posted by k_ryuto
  • Category:FF



故郷の地は、今頃太陽に焼かれる毎日であろうが、其処から遠く離れたこの場所は、今日も肌寒い。
場所によっては永久凍土にもなっているこの地域は、夏と呼ばれるような期間もごく短かった。
経緯はそれほど変わらない位置なのに、緯度が違えばこうも環境は変わってしまうものとは、世界は不思議なものである。

仕事の関係でこの地で暮らすようになってから、もう四年が経つ。
言葉の日常使いに慣れる所から始まった生活も、それなりに慣れが来て、生活サイクルも此方の様式に合わせられるようになった。
年に一度、二度、実家に帰ると、あちらの存外と忙しなさに驚くが、此方も此方で、テレビに映し出されていた程、のんびりとしてもいない。
長い冬に閉じ込められることを前提に、僅かに暖かい今の内に、あれもこれもと準備を整えておかなければならないのだから仕方ない。

季節が変わると、この地では、太陽が顔を出している時間も大きく変わる。
故郷でもその傾向はあるものだったが、此処ではその差が更に顕著だ。
白夜と呼ばれるその現象の時期、太陽は見えなくとも空は明るさが残されていて、レオンは未だにそれを“夜”だと受け止めるまでに時間がかかる。
まだ随分明るいな、と思っても、時計を見れば故郷で言う宵の口になっていて、住み始めて間もない頃は、頭が混乱したものだった。
お陰で眠る時間と言うのが上手く調節できず、深い睡眠がとれなかった所為で、いつも寝不足気味だった。
こうした白夜の時期が終わると、今度は極端に陽の恩恵が短い期間が始まり、日中に仕事をしているのに、外は暗いと言う日々が続く。
これもまた、レオンが生きて来た故郷のサイクルにはないものだった為、暮らし始めて一年の間は、驚きと混乱と、体調不良の連続であった。

この地がそう言うものであることを一年かけてその身で学び、土地に合わせた対処法、生活リズムを教えて貰って、なんとか適応するに至った。
その間に、セフィロスと知り合ったのだ。
今では恋人同士となった彼から、この地で生きる為の知恵なり方法なりを教わって、一つ一つ実践してみたお陰で、今のレオンがある訳だ。
どうしてそんなにも彼が世話を焼いてくれたのかと言えば、なんでも、レオンと同郷であったから、らしい。
今では全く全てを卒なく熟す彼も、レオンより一足先に、レオンと同じように悩んでいた時期があって、だから同じ状態に見舞われているレオンを放っておく気にはなれなかったのだとか。

────それでも、彼も知らなかったらしい。
誰かと一緒に眠ると言う事が、こんなにも心地良く、安心するのだと言う事は。

夜でないようでいて夜の時間、示し合わせてどちらかの家に来て、閨を共にする。
時に緩やかに、時には昂ぶりを只管に発散するように、熱の交わりをして、その疲れに身を任せるように眠るのが癖になった。
とは言え誰でも良いと言う訳ではなく、レオンは目の前の銀色しか知らないし、あちらもレオン以外でこうやって眠れた経験はなかったらしい。
夏とは言っても、故郷の気温で言えば冬の入り口くらいの気温であるから、どうにも温もりが欲しくなる。
甘えているな、とレオンは常々思うのだが、抱く腕は存外と心地良いものだったから、益々この温もりが手放し難くなっていた。

中に注がれた熱の処理を待たずに、いつも意識を飛ばしている。
夜中にふっと目が覚めた時には、裸身の体は綺麗なものになっていて、毎回のことながら、手間をかけさせて申し訳ないと思った。
それを、偶々に起きていた相手に告げれば、


「構わんさ。お前に傷がないことを確かめているようなものだから」


と言って、恐ろしいほどに整った顔が柔く笑うものだから、レオンは眉尻を下げて唇を緩める他ない。
そんな顔にセフィロスはいつもキスをして、悪戯にならない戯れを始めるのがパターンだった。

頬に、耳元に、首筋にと降るキスの為に、レオンはくすぐったさを感じながら、


「あんたが俺を傷付けるなんて、一度もした事ないだろう」
「なら、良いんだがな」
「あんたはいつも良くしてくれる。仕事も、ベッドの中でも。贔屓されてるのがよく判る」
「仕事は適材適所だ。ベッドの中は、まあ、否定はしないな」


する、と形の良い手がレオンの腰を撫でる。
不埒なようでいて、今はそれ以上の所に届かない所から、これもただの戯れであることが判った。

ベッドの傍のカーテンの隙間からは、故郷の夜とは比べるべくも明るい、薄光が差し込んでいる。
それでも時計を見れば十分に真夜中と呼べる時間で、まだベッドを抜け出すには早過ぎた。
しかし、意識は寝起きにしてはクリアで、またうとうとと寝る気にもならず、レオンは肌に触れる男の手を感じながら、そのくすぐったさに目尻を細めながら、


「ちょっと寒いな」
「暖がいるか?」
「いる。けど疲れてる」
「お前が嫌ならしないさ」
「そういう訳でもないんだ」
「加減しろと?」
「あんただって疲れてるだろ?」
「まあな。だが、始めてしまえば、止まるかどうか」
「案外俗物だな、あんたは」


綺麗な顔をしている癖に、と社内外問わずに人を振り替えさせる美人が、他人が思っているよりもずっと欲に正直だと言うことを知っている者は少ない。
昔ながらの付き合いだと言う者を除くと、その中では付き合いの短いレオン位だろう。
その事に、微かな優越感を得ながら、レオンは腰を抱く腕に手を回した。

長身に、細身に見えるタイトなブラックスーツを隙なく着用する所為か、セフィロスはスマートな体系をしているように見える。
手足も長くバランスが取れているから、益々そう感じさせるのだろうが、思いの外その身体は逞しいものだった。
レオンとて華奢な訳ではないと自負しているから、そんな男二人がベッドでじゃれていると、どうにも狭い。
逃げ場のないシングルベッドで他愛のないじゃれ合いをしていれば、必然的に距離はゼロになって行くものだった。

止まないキスの雨に、首を巡らせて逃げようとした所で意味もなく。
耳朶の裏側に、ちゅ、と小さな音が鳴って、其処に厚みのある舌が這うのが判った。
官能の火照りに沈んでいたのは、今から一時間にもならない前の話で、そのスイッチの切り替えポイントを優しくノックされる。
一瞬詰めた吐息を意識して吐き出せば、はあ、と其処に熱の含みが混じった。


「ん……セフィ、ロス……っ」


まだ彼を受け入れていた感覚の残る場所が、じわりと疼き出すのを感じ取って、レオンは背後の男の名を呼んだ。
返事の代わりに男の手がレオンの肌を滑り、無駄なく鍛えられた胸筋を辿って、頂きの膨らみを指先で掠める。


「っ……」


ひくん、と体が震えて、セフィロスの喉が笑う気配があった。
耳の後ろで遊んでいた舌が、レオンの項へと移って、癖のついた髪の隙間から覗く生え際を擽る。


「セフィロス、……明日の、予定……」
「問題ない」
「本当に?あんた、前もそう言って───」
「ちゃんと休みだっただろう」
「あんたが勝手に、……休みに、したんじゃないか」
「問題も起きなかった。お前は真面目に仕事をし過ぎる」


言いながらセフィロスの手は、レオンの体の熱をゆるゆると上げようと企んでいる。


「お前がいなくては何もかもが回らない訳でもない」
「まあ……そう、だけど」
「なら休め。俺も休む」
「勝手だな……」


呆れ半ばに呟くレオンだが、そう言う彼も、背後の男の悪戯を止めようとはしない。
経験上、此処から止まってくれることは滅多にないと言う諦めもあったし、触れる手が嫌と言う訳でもない。
燻ぶるまでになった熱も、じわじわと温度を上げて、受け入れる為の器官が反応しているのが判る。
はしたなくなった自分の体に思う所はあるが、それはそれとして、肌寒さから逃れる理由も欲しかった。


「今何時だ?」
「……午前二時。十分猶予もあるな」
「だと良いんだが」


カーテンの隙間から覗く空は、夜と言うには余りにも明るい。
具体的な陽の光こそないものの、星も望めない程度には明度が保たれているものだから、やはりレオンは、今が夜だと言う気がしなかった。
故郷で言えば朝ぼらけの頃のような空で、此処からものの一時間もすれば、朝日が顔を出すだろう。

どの道、そんな空がある時間帯に、レオンが意識的に眠ることは難しい。
恋人との他愛のないじゃれ合いをしている間に、すっかり意識もクリアになってしまったし、此処から無為な寝る努力を費やすよりも、触れる温もりに身を委ねる方が心地良いことは知っていた。


「朝までは勘弁してくれ」
「お前次第だ。そう言うのなら、煽ってくれるなよ」


セフィロスの言葉に、そんなことをしたつもりはないが、とレオンは眉尻を下げて苦笑する。

レオンは体の向きを変えて、戯れる男と向き合った。
銀糸のかかる頬に手を添えて、そっと顔を近付けると、碧の瞳が満足げに笑みを浮かべる。
空恐ろしい程に綺麗な顔で笑う恋人に、レオンはゆっくりと唇を押し当てた。


「ん……」


静かに重ねられた唇が、段々と深く重ねられる。
衣擦れと、ベッドのきしきしと言う軋む音が、広くはない部屋の中で繰り返されていた。
シーツの隙間から滑りこんでくる冷たい空気を遠ざけるべく、其処にある体温に身を寄せれば、閉じ込められるように、背中に腕が回される。

セフィロスの手はレオンの背中を辿り、腰骨を撫でて、シーツの中で疼きを訴えている下肢へ。
指先が宛がわれるのを感じて、レオンは努めて体の力を抜いてその先を待つ。

静かだった部屋の中に、甘く蕩けた声が反響するようになるまで、それ程時間はかからない。
一度緩やかに蕩けた身体は、すぐに同じ温度まで上がって、その頃にはレオンも覆いかぶさる男に恥を忘れて縋りついていた。




7月8日と言う事でセフィレオ。
いちゃいちゃしている二人が書きたくなった。

慣れない環境に、朝なんだか夜なんだかよく判らなくて眠れない、ってなっていたレオンに、人肌と疲労感で寝ることを覚えさせたセフィロスでした。
悪いようにはしなかったので、そのまま親密な仲になり、今に至ると言う感じ。

[クラスコ]この一時を、もう少し、あと少し

  • 2024/07/08 21:00
  • Posted by k_ryuto
  • Category:FF



明日の食料調達の為にコンビニに来たら、偶然にも恋人が其処に来ていた。
家が近い訳でもないのに、と思ってどうしてと尋ねてみると、友人たちに連れられて、この近くにある複合型施設で遊んだ帰りだとのこと。

季節として日が長い時期であるが、既に空はとっぷりと夜に暮れていた。
こんな時間まで学生が遊んでるもんじゃないぞ、とわざと年長者らしく言ってやれば、恋人───スコールの唇が分かり易く尖る。
其処には「判ってる」だとか、「子供扱いするな」だとか、そんな言葉が引っ掛かっているのだろう。
それから彼は、「バスが一時間に一本しかないんじゃ、待つしかないだろ」と言った。

尤もな話で、この辺りに通っているバスは、都会のように五分や十分で次の便が来るようなサイクルにはなっていない。
学生も休日を楽しむ遊戯施設があるのに、車を持っていない学生が行くには聊か公共交通の便が不親切なものだから、スコールのような少年少女は、いつも帰りの時間を気にして過ごすものだった。
夕方頃に帰るなら、その分予定を繰り上げなくてはならなかったり、映画の上映スケジュールによっては、レイトでしか扱っていなかったりして、終わったらタクシーで帰るか、そもそも見るのを諦めるかの二択になる。
門限を気にしながらものんびりと遊ぶなら、この複合施設はあまり薦められないと言うのが当事者たちの弁で、駅前のファストフードでだらだら喋っている方が良い、と言う者も。
しかし、買い物に、映画にゲームセンターに、おやつのフード店に、ついでに生鮮食品売り場も揃っているので、駅前よりも便利なのも事実。
結局、休日の学生や家族連れは、この複合型のアミューズメント施設にやって来るのだった。

そして今日のスコールは、友人たちと映画を見に来て、帰りのバスを一本逃した。
元より映画の放映時間終了の一分後にバスが出ると言うダイヤになっているものだから、スコールは最初から帰りが遅れることについては諦めていた。
方向の違うバスに乗る友人たちを見送った後、営業時間終了間際の施設を後にして、一時間も暇があるのならと、このコンビニまで歩いて来たと言う訳だ。
コンビニ近くのバス停が、スコールの帰宅方面に向かう路線と続いているから、施設のバス停まで戻る必要もない。
適当に何か摘まんで胃袋を慰めて、ちゃんとした夕飯を食べるかどうかは、帰宅してから腹の都合を見て考えれば良い、と言うのがスコールの今の所の予定だった。
其処で、ばったりとクラウドと逢った訳だ。

────と、こんな時間に一人でこんな場所にいた経緯について、スコールが少し面倒くさそうにしながらも丁寧な説明をした後、


「あんたは、なんで。あんただって家はこの辺じゃないだろ」


詰問のお返しとばかりに、スコールは言った。
自分が答えたのだから、其方も言え、と少し拗ねた顔をしているスコールに、クラウドも抵抗なく答える。


「仕事の帰りだ。此処の通りを真っ直ぐ抜けると、家までの近道になる」
「……ふうん」


問うては来たが、然程興味も意味もなかったからだろう、スコールの反応は愛想にもならない。
スコールは手元の籠に、クーラーボックスから取り出したペットボトルを加えて、レジへと向かった。
クラウドもミネラルウォーターのペットボトルを取ると、まだ選り取りみどりに残っていたコンビニ弁当の中から、スタミナになりそうなものを三つ選んでレジへ。

支払いを済ませてコンビニを出ると、一足先に外に出ていたスコールを見付けた。


「スコール」


名前を呼ぶと、少し胡乱気な顔が振り返る。
一見すると不機嫌にも見えるが、これは恐らく、友人たちと一日遊んで疲れているからだろう。
友人たちと一緒に遊ぶことに否やはなくとも、人混みが得意ではないスコールにとって、今日と言う日は存外と姦しかったに違いない。
それも終わってようやく帰路と言う所だから、表情が少々きつめに表れることについて、クラウドは割り切っていた。

それでいて、こんな所で恋人に逢えたと言うのは、こっそりと嬉しいものでもあって。


「乗って行くか、バイク」
「……」
「バスより早いぞ」


コンビニの駐輪スペースに停めたバイクを指差して言えば、スコールは無表情でじっと此方を見つめる。
頭の中で、バスに乗って帰る時間と、クラウドの厚意に甘えた場合の帰宅時間を比較しているのだろう。

バスは座っていれば到着するので楽ではあるが、便の到着まではまだ時間があったし、陽が沈んで日中よりも過ごし易いとは言え、段々と蒸し暑さが増す屋外でバスを待つのも面倒だ。
それに、バスは駅前までしか行かないから、其処から電車に乗り、最寄り駅からはまた歩かなければいけない。
クラウドのバイクなら、落ちないように注意は必要ではあるが、彼が自宅の真下まで連れて行ってくれれば随分と楽だ。
決まったルートしか走れない路線バスより、小回りが利くので、移動距離も半分で済む。


「……乗る」


くるりと踵を返して戻ってくるスコールに、クラウドの口端が緩む。

クラウドがバイクをタンデム仕様にしたのは、スコールと恋人関係になってからだ。
つまり、この後部シートはスコールの為に用意されたもので、折々にこうやって二人でデートをする為にある。
今夜はデートと言う程のものでもないが、最近中々会う機会が作れなかった身としては、ちょっとしたサプライズ的なイベントだった。

つい先日、スコールを連れてツーリングデートに行ってから、彼のヘルメットはリアバッグに入れたままにしていた。
うっかり出し忘れての事だったが、今日に限ってはラッキーだ。
取り出したそれをスコールに渡し、バッグにそれそれの荷物を入れて、バイクへ跨る。
耳元にある通話用のイヤフォンマイクのスイッチを入れると、ジジ、と言うノイズが小さく走った後、スコールのイヤフォンへと繋がった。


「他に何処か寄る所があるなら、ついでに行くぞ」
「……いや、良い。特にない」


遊び疲れたこともあってか、スコールは直帰で良いと言う。
明日は平日、学生であるスコールは学校に行かなくてはいけないし、今日は帰って休みたいのだろう。

後ろからしっかりとした密着感があるのを確認して、クラウドはバイクを発進させた。
最初の頃はぎこちない様子で縋っていたスコールだが、何度もツーリングデートを重ねたお陰で、今は自然体でクラウドに身を任せている。
そうでなくては危険だから、と何度も訓練するように重ねた結果で、尚且つスコールからの信頼を勝ち得たようで、クラウドはこっそりと嬉しい。
だからデートの際は、余程の遠方や道路の問題がない限り、バイクで出掛ける計画にしていることを、スコールは気付いているだろうか。

出来ればこの密着感を長く味わっていたいクラウドだが、寄り道の予定もないとなれば、やはり一時の味わいが精々だ。
なんとか延長できないかと画策して、


「スコール」
「……ん」
「うちに来るか?」
「……なんだ、いきなり」


クラウドの言葉に、インカムの向こうで、訝しむ声。
急な誘いは、完全にクラウドの思い付きであったから、スコールにしてみれば予定外の事を言われても困ると言った所だろう。

唐突な誘いの理由を問うスコールに、クラウドはなんと答えるか考えたが、結局は自分の気持ちに正直になる他は浮かばなかった。


「折角お前と逢えたから」
「意味が判らない」
「そのままだ。もう少し、お前と一緒に過ごしたくてな」


包み隠さず、気持ちそのまま口にすると、腰に捕まる腕がぎゅうっと力を増したのが判った。


「……意味が判らない」


もう一度重ねられた言葉は、一見すると鈍い反応だったが、クラウドは知っている。
これは彼の照れ隠しで、存外と初心で照れ屋なスコールは、クラウドの臆面のない一言に赤くなっているのだ。
後ろを見れないのが勿体ないな、と思いつつ、クラウドは赤信号にバイクを停める。


「スコール。明日の予定は?」
「予定も何も。学校だ」
「今日は急いで家に帰らないといけないか」
「別に。今日はラグナもいないし」


父子二人暮らしのスコールである。
普段なら、家事を引き受けている立場である為、朝夕の食事を作る為、そこそこの時間には帰るようにしている。
しかし、忙しい父親は出張等で不在になる事も少なくなく、そんな時は、今日のように少々羽目を外して過ごすこともあるのだとか。

今日が正にそうだったのだと聞かされれば、クラウドの唇がこっそりと緩む。


「じゃあ、問題ないな」
「……ある。勉強道具も全部家だ。朝に急いで帰るなんて面倒くさい……」
「なんだ、泊まってくれるのか」


其処までは言っていないのに、と笑みを交えて言うと、イヤフォンの向こうで沈黙が降りる。
それから十秒ほど経ってから、スコールも自分の思い込みに気付いたらしい。


「違、」


そんなつもりじゃない、あんたが明日の予定なんて聞くから───と赤くなっているであろう少年が言う前に、信号が青に変わる。
行くぞ、と言って走り出したバイクに、背中にしがみつく力が良い訳のように強くなるのが判った。





7月8日と言う事で。
バイクの二人乗りに慣れたスコールと、家に行くとなると当たり前に泊まることが前提になる関係なクラスコ。
デートは勿論、その時の送り迎えなんかも全部クラウドがバイクでしてるんじゃないかと思います。

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