サイト更新には乗らない短いSS置き場

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2012年04月01日

閉鎖します

  • 2012/04/01 22:30
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嘘です( ゚д゚ )



四月馬鹿に乗じてみました。滑り込みで2秒だけ。
サイト閉鎖とか全く考えてません。ここ俺の楽しみだもん!手放すもんか!

3月半ばに謎の喉風邪をひいて以来、ご心配おかけしてしまってすみませんでした。なんか喉風邪が治ったと思ったら、そのまま鼻風邪ひいたりとかしてましたが、やっと全快しました。励ましのメッセージして下さった方々、本当にありがとうございました~(*´∀`*)
問題があったのは喉だけだったので、体の方は至って元気だったんですが、一応治るまで大人しくしとくか……と病院に行く以外、外出は控えてまして。治るまでに二週間もかかったので、なんか、色々、こう……身になったと言うか、肉ついたと言うか。やべえ。運動しなきゃ。


しかし、身につくと判っててもお菓子は作ります。そして食べます。

なんか饅頭が食べたくなったので、今度あんこ買って饅頭を作る予定です。上用饅頭みたいなものではなくて、ひよこ饅頭みたいな焼き饅頭が好きなので、アレ系を。
饅頭用の型なんて持ってないので、いつも丸い普通の饅頭なんですが、たまにはなんか形を作りたい……笑顔動画でお菓子作りの為の道具作り、とか見てるんですが、やっぱり自分で作ると手間ですね。上手くすればキャラクターを作ったりも出来るから、一度はやってみたいんですが。バターナイフでキャラクター型に切り分けたクッキーなら作った事あるんだけど、あれは大量生産には向きませんw

饅頭を作るに当たって、形云々は私の凝り性の問題なのでまー好きにすればと言われる所なんですが、問題になるのがあんこの種類。基本的に私はこしあんが食べやすいので好き。別に粒あんが嫌いな訳ではないし、普通に食べますが、どっちかって言うとこしあん<粒あん。姉貴もそうなので、饅頭を作る時は大抵こしあんを使うのですが、親父がこれが不満らしい……
親父は粒あんの方が好きなので、市販のどら焼きを買う時も必ず粒あんを買ってきます。なもんで、こしあんで饅頭を作ると、


モグモグ(´~`)  (゚д゚ )それこしあんだよ

うまいな( ´З`)  (゚д゚ )…どうも

次は粒で!∠( ゚д゚)/  (´Д`||)ハイハイ


……という感じの流れになります。ほぼ必ず。
一番良いのは、粒とこしと両方買って作る事なんですが、残ったあんこの処理が面倒臭い(爆)。粒あんなら祖母が汁粉作ってくれるんですが、こしあんの余りはな……直ぐにまた作れば良いんですが、大体気紛れにしか作らないからなあ。最近、一ヶ月に一回は何か作ってる気もするけど、そのメニューも気分によってまちまちだから、饅頭作った後にまた饅頭作るかって言うと、そんなん気分次第(´・ω・`)

あとなー、饅頭も作りたいけど、チョコタルトも作りたいんだよな……どうしようかな……


あっ、エイプリルフールでネタ粒投下しました。……でも全ジャンル、エイプリルフールな雰囲気と遠いような気もせんでもないww

[八京]“大嫌い”

  • 2012/04/01 22:07
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「京ちゃん、俺の事嫌い?」



前触れもなくそんな事を聞かれて、



「嫌いだな」



躊躇なくそんな返事をする位には、嫌いなのだと、京一は思う。


京一から八剣に対する感情は、恋人同士と言う関係でありながら、決して好意的なものではなかった。

寧ろ京一にしてみれば、どうして自分が八剣と“恋人”と呼ばれる間柄になってしまったのかが激しく疑問である。
しかし、あれやこれやと騒いでいる間に、この関係で落ち着いてしまったのは確かなので、これについて問答するのは既に諦めている。
その割には、八剣に対する京一の慕情と言うのは殆どなく、ぶっちゃけてしまえば「拒否するのが面倒臭いのと、言う程に嫌悪感もないので好きにさせている」と言うのが京一の心中であった。
要するに、“恋人面をする男に対し、寛容してやっている”と言う立場を自負しているのだ。

京一と言う人物を知る人間から見れば、“寛容している”時点で、京一の感情は好意的な方向を向いていると言って良い。
とは言え、周りがどう受け取ろうと、京一が思う八剣への感情は、「好き」などと呼べるものではなかった。


だから先の一言には、躊躇なく「嫌い」と返したのだが、



「……何笑ってんだ、気持ち悪ィな」



背中に突き刺さるにこやかな視線に寒気を感じて、京一は顔を顰めて振り返る。
そうすれば、座卓に頬杖をついて、口元を笑みに傾けている男の顔が合って、益々寒気を覚えた。



「いやあ、ね。嫌いなのか、と思って」
「あー、嫌い。ってか気持ち悪ィ」



平時から悪く見られがちの尖った眦をさらにきつくして、京一は吐き捨てるように言った。
が、八剣は相変わらず笑っている。

思考の読めない男の表情に、京一は胡乱な目を向けた。



「お前、マゾな訳?」
「どうかなァ。京ちゃんは、どっちかって言うとSだよね?」
「だろうな」
「じゃあ俺はMの方が良いかな」
「いや、気持ち悪いだけだぜ。ってかSでもMでもどっちでもいいし、そもそもお前の性癖なんぞ興味ねェし」



なんだか会話までもが気持ち悪くなってきた。
眉根を寄せて、京一はこれ以上の会話はするまいと、また八剣に背中を向けて、持ちこんだ漫画を見下ろす。

─────が、数分と経たずにコマを追っていられなくなった。
背中に刺さる、にこにことした、妙に機嫌の良い男の視線の所為だ。



「てめ、鬱陶しい!」



読んでいた漫画を投げつけるが、難無くキャッチされてしまう。
判り切っていたが、だからこそ尚の事腹立たしい。

睨む京一を、八剣は細めた眼でじっと見詰め、



「京ちゃん、俺の事、嫌い?」
「大っ嫌い」




殺してやりてェくらい。

そう付け足してやると、男は益々嬉しそうに笑った。






一人でエイプリルフールを堪能してる八剣。
まあ、京一が本気で「嫌い」って言ってても、二人の関係は“恋人同士”な訳で。その時点で、京一の負け。

八京の京一は、自分の感情の根底部分に気付いてない感じが多い。

[絆]ウソとホントと、ほんとの気持ち 1

  • 2012/04/01 22:05
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「ティーダ、ジェクトが帰って来るぞ」



そう言ったレオンを見て、ティーダはきょとんとして、瞬きを繰り返す。
その隣で、スコールも同じようにきょとんとした後、ぱあ、と青灰色を輝かせた。



「本当?お兄ちゃん」
「ああ。土産、持って帰るってさ」



当時者である筈の息子よりも、先に食いついた弟の頭を撫でながら、レオンは頷いた。
スコールがくすぐったそうに目を細める。

しかし、一番喜ぶであろうと思った筈の子供は、むーっと頬を膨らませた。



「どうした?」
「……レオン、今のウソだろ」
「なんで?」



拗ねた表情のティーダの言葉に、スコールがことんと首を傾げた。
レオンの方も同じように首を傾げる。
それを見て、ティーダは怒ったように眉根を吊り上げて、壁にかけられた日捲りカレンダーを指差した。

差された先の数字を確認して、ああ、とレオンは察する。

カレンダーが示す数字は、4月1日────エイプルフール、嘘を吐いて良い日。
だからティーダは、レオンの「父親が帰って来る」と言う言葉を信用せず、嘘だと言い出したのだ。


睨んでくる青色に、レオンは苦笑を漏らし、携帯電話のメールフォルダを開いた。



「本当だぞ。ほら、ジェクトからメールが来てる」



差し出したそれをティーダが受け取り、スコールと一緒に覗き込む。
メールにはザナルカンドからバラム行の船の乗船予定時刻が書いてあった。
今から丁度乗る所、と言うタイミングでメールを送ったのだろう。

しかし、それを見てもティーダはまだ疑う目を止めない。



「じゃあ、父さんがウソついてるんだ」
「どうしてそんなに、ジェクトが嘘吐いてるって思うんだ?」



頑なに信じようとしないティーダに、レオンは参ったな、と思いながら尋ねる。
するとティーダは、だって、と唇を尖らせて俯く。



「だっていっつも、今日はウソついて、オレの事からかってバカにするんだもん」
「ジェクト、そんな事しないよ。優しいよ?」
「それスコールにだけだよ。オレには意地悪しか言わないし」
「……?」



ティーダの言葉に首を傾げるスコールと、そんなスコールを少し恨めしそうに見るティーダ。
レオンは、気まずい沈黙になっている弟達を見下ろして、眉尻を下げて苦笑する。


レオンは、ジェクトからのメールの真偽を疑ってはいなかった。
確かに、ジェクトは帰って来る度にティーダを揶揄って遊んでいるが、その後、いつも揶揄い過ぎた事を後悔しているのを知っている。
口では意地悪ばかり言っても、根は息子を本当に想っているから、こんな性質の悪い悪戯はしないと思うのだ。

けれども、当の息子がこの調子である。
だが、それもジェクトの日頃の行いの所為だから、自業自得にも思えた。


────……本当ならジェクトは、今の時期、ザナルカンドから離れるのは難しい筈だ。


ザナルカンドは年中ブリッツボールに関するイベントが行われている。
大会シーズンや合宿予定がなくても、何某かの大きなイベント行事の際、選手達はパフォーマンスを依頼される事も多い為、ほぼ年中のスケジュールが埋まっている。
だから都市内のチームに所属する選手の殆どは、自身の拠点をザナルカンドに固定させるのだ。
ジェクトが息子と離れてザナルカンドで暮らす事を決めたのも、これが理由だ。

現在、ザナルカンドは現市長の在任十周年を祝っているそうで、これに関する催しが多く、ジェクトが所属するトップチーム『ザナルカンド・エイブス』にもパフォーマンス依頼が寄せられているらしい。
パフォーマンスと言うものは、普通の試合とは勝手が違うので、入念な打ち合わせとリハーサルが繰り返される。
ジェクトはスタープレイヤーとして名が知られているので、当然彼の参加は強く望まれている為、一日でもスケジュールを空けるのは難しいと言う。


ティーダは一年前までザナルカンドで暮らしていたから、そう言った事情も幼いながらに覚えている。
……だから余計に、この時期に父がザナルカンドを離れ、自分の下に帰って来る事が信じられないのだろう。



「絶対帰って来ないよ」
「帰って来るよ」
「来ないよ」
「来るよ」
「来ない」
「来るもん」



ティーダのスコールの遣り取りは、段々と二人の意地の張り合いのようになって来ていた。
二人の大きな丸い目に、じわりと大粒の滴が滲むのを見て、レオンは慌てて二人を宥めた。



「こら、ケンカするな」
「だってティーダが」
「だって帰って来ないに決まってるもん!」
「帰って来るよ!ジェクト、ウソつかないよ」
「いつもウソばっかだよ!」
「ウソつかないよ!」
「う……わぁぁああああああん!」
「ふえええええええ」
「ああ、ほらほら。泣くな、二人とも」



わんわんと声を上げて泣き出した二人に、レオンは溜息を吐く。

それぞれ抱き締めて、くしゃくしゃと頭を撫でて宥めてやるが、中々落ち着きそうにない。
買い物に出かけたエルオーネが帰って来るまでに、果たして泣き止んでくれるだろうか。



(こんな調子でどうするんだ?ジェクト)



メール一つでこの騒ぎ。
しかも肝心の息子は、父が帰って来る事を喜ぶどころか、信じてもいない。

日頃の態度の事も含め、一つ二つ説教ぐらいしてやっても良いかも知れない。
けれども、この話を聞いて一番堪えるのも彼だろうから、説教までは要らないか。




取り敢えず、どうやってティーダを港まで連れ出そうか。
ぐすぐすと泣きじゃくる弟達を宥めながら、レオンは頭を悩ませるのだった。






日頃の行いが大事ってね……

ジェクトも意地悪したくてしてる訳じゃないんですけどねえ。
その癖、スコールには、頭撫でたりいーこいーこしたりするから、益々ティーダの態度が硬質化。
レオンにしてみれば、肝心の息子になんでそれが出来ないのか、物凄く不思議。

[絆]ウソとホントと、ほんとの気持ち 2

  • 2012/04/01 22:04
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不安そうな顔をしたスコールと、不貞腐れた表情のティーダと。
二人を間に挟んで、レオンがスコールの、エルオーネがティーダの手を握って、港への道を歩く。


ザナルカンド~バラム航路の船が到着する時間が近付いて、ジェクトを迎えに行こうと言った時、ティーダは「絶対行かない!」と言った。
昼にレオンの携帯電話に送られてきた父からのメールを、ティーダは未だに信じていない。
スコールの方は、最初の頃こそ信じていたものの、ティーダが余りにも頑ななので、「やっぱりウソなのかな…?」と思い始めていた。

そんな弟達を、レオンとエルオーネの二人で宥めすかして落ち着かせて、ようやっと家を出た。
しかし、二人の表情は相変わらず晴れず、ティーダに至っては度々「やっぱり帰る」と駄々を捏ねる。


それでもなんとか───半ば引き摺るようにして───、夕暮れの港に到着して、約十分。



「船、遅れてるって?」
「ああ。そうらしい」



ジェクトが乗った船が、何某かトラブルに見舞われたらしく、予定時刻が大幅に遅れてしまった。
この連絡はレオンがジェクトに電話をして確認したのだが、



「……ウソばっか」
「ティーダ、まだ言ってる……」



直接電話して確認を取ったのに、ティーダはジェクトが帰って来る事をまだ信じていなかった。
レオンが電話をした時、直接話をさせて安心させようしても、無言で首を横に振るばかりで、電話を受け取ろうともしない。
これで本当に嘘だったら、恨まれるどころの話じゃないぞ、とレオンは思う。

俯いて唇を尖らせているティーダを、エルオーネが慰めるように頭を撫でる。
ぐす、と泣き出すのを我慢する声がして、ティーダはエルオーネにぎゅうとしがみ付いた。
それを見たスコールが、不安そうにレオンを見上げて来る。
大きな瞳が「帰って来る?」と問うように揺れていて、レオンはそんな弟の傍にしゃがんで、抱き締めて宥めてやった。


船の汽笛が鳴り響き、港内アナウンスが聞こえた。
遅れていたザナルカンドからの船が到着したのだ。



「船、着いたよ、ティーダ」
「………」
「ティーダってば」



エルオーネが促すが、ティーダはエルオーネにしがみついたまま動かない。
ワンピースを握り締めた小さな手が震えていた。

レオンがスコールを促し、エルオーネも固まっているティーダの背を押して、船着き場に向かう────が、ティーダが踏ん張って進もうとしない。
困った顔をするエルオーネにスコールを預け、レオンはティーダを抱き上げた。



「ほら、ティーダ。探してみろ」
「いい。いないもん、どうせ」



ぎゅう、としがみついてくる子供に、レオンはひっそり溜息を漏らす。
エルオーネも同じように、スコールと手を繋いで、小さく息を零していた。


四人は、桟橋の傍で、通り過ぎて行く乗船客達の中に、ジェクトの姿を探す。
其処では再会を喜び合う家族や恋人達の姿があって、父親が久しぶりに会った息子を抱き上げている光景もあった。
それを見たティーダが泣き出しそうになったのが判ったから、レオンはぽんぽんと彼の背中を撫でてやる。

沢山の人波の中で、たった一人の人間を見付け出すのは難しい。
ジェクトは大柄だし、存在感もあるから目立つ方だと思うのだが。


目当ての人物が中々見つからないのが、息子の不安を煽る。
やっぱりウソだったんだ、と呟いたのが、レオンの耳に届いた。

ウソだウソだと口で言って、信じていない態度を取っても、やはり、心の何処かで信じていたのだろう。
いや、信じたかった、と言うのが正しいのかも知れない。
ぐす、と鼻を啜るティーダの頭を撫でながら、レオンはもう一度、流れる人波に目を向けた。


──────すると、ひらりと翳される大きな手があって、



「よう、久しぶりだな」



人ごみを抜けて近付いて来た男のその言葉に、息子に対してもっと他に言う事があるだろう、とレオンは眉尻を下げる。

レオンに抱かれたティーダが、ぱちぱちと瞬きを繰り返している。
ぽかんと半開きになった口が、とうさん、と夢幻を見ているかのように、小さく呟いた。



「ほら、ティーダ。嘘じゃなかっただろう?」
「……あ?なんだクソガキ、折角俺が帰るっつったのに、信用してなかったのか?」



むにー、とジェクトの太い指が、ティーダの頬を摘まむ。
そんなジェクトの腰に、小さな子供が抱き着いた。



「ジェクト、ジェクト!」
「おう。どうした、スコール」



ぐしゃぐしゃと大きな手がダークブラウンの髪を撫でる。
その手が離れると、青灰色がきらきらと輝いて、兄に抱かれているティーダを見上げた。



「ティーダ、ジェクト帰って来たよ。ウソじゃなかった!」



弾んだスコールの言葉に、ティーダが視線を彷徨わし、ジェクトは眉根を寄せてレオンを見た。



「……おい、なんなんだ、さっきから。ウソウソって」
「ちょっとな。タイミングが悪かったと言うか」
「半分はジェクトさんの所為だと思う」
「なんだ、エルの嬢ちゃんまで。訳判んねぇぞ、説明しろよ」



訝しげに問うジェクトに、レオンとエルオーネは答えなかった。
二人で顔を見合わせて、後でな、とぼかしてやると、ジェクトは判り易く顔を顰める。

レオンは、ずっと視線を彷徨わせているティーダを見て、くすりと笑みを零し、



「ジェクト」
「ん?」
「ほら、」



言ってレオンは、抱いていたティーダを受け取るように促した。
途端、ジェクトまで視線を彷徨わし、一瞬浮きかけた腕が頭の上まで持ち上げられて、後頭部を掻く。



「ジェクト」
「ジェクトさん」



促したレオンとエルオーネの間には、スコールがちょこんと立って、じっとジェクトを見上げている。
兄と姉が何を言おうとしているのか、小さな弟はきちんと汲み取っていた。

もう一度レオンが無言で促せば、ようやく、しっかりとした逞しい腕が息子へと伸ばされて。



「……お前、重くなったな」



ジェクトの言葉に、ティーダが小さく頷いて、父の太い首に掴まった。

それを見上げたスコールが、傍にあった兄と姉の手を握る。
柔らかな力でそれを握り返せば、ブルーグレイが嬉しそうに笑う。




さあ、帰ろう。
揃って踵を返して、潮の匂いの中を歩き出す。

両手を繋いだスコールの足取りは、誰の眼にも判る程に嬉しそうにステップを踏んでいた。






どっちも素直になれない父子。
「ただいま」「おかえり」も中々言えない。

この後、皆揃ってご飯食べて、ティーダはジェクトと一緒に寝ます。
スコールもお兄ちゃんとお姉ちゃんと一緒に寝ます。

[三&空]小さな世界、小さなウソ

  • 2012/04/01 20:29
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今日は嘘を吐いて良い日。


悟浄からそう言われた時、悟空は首を傾げた。
嘘は嘘で、言わない方が良いものだから、どうして“嘘を吐いて良い”と言う事になるのか判らなくて。

大体、嘘を吐いて良いと言った悟浄は、その直後、灰皿代わりにした空き缶を八戒に発見され、「どうしてやっちゃうんでしょうね?」と言う八戒に、何も言う事が出来ずにいた。
嘘を吐いて良い日なら、その時こそ嘘でも言って許して貰う事が出来たかもしれないのに、悟浄は嘘を吐かなかった。
どころか、しどろもどろの言い訳に完璧な笑顔(青筋付)を喰らい、真っ青になっていたのである。


結局、どうして“嘘を吐いて良い日”なのかは教えて貰えないまま、悟空は悟浄宅を退散した。
お説教モードになった八戒の、身が縮まるオーラに当てられるのは御免だった。


寺院に戻り、三蔵の執務室に入ると、彼は相変わらず大量の書類と向き合って、不機嫌なオーラを撒き散らしていた。
このオーラは、慣れてしまえばそれ程気になるものではない。
少なくとも、仕事の邪魔さえしないようにすれば、八つ当たりされる事もないのだ。

構ってほしい気持ちはあったものの、此処でまとわりつくと拳骨が落ちるので、悟空は大人しく部屋の隅で丸くなっていた。
八戒に買って貰った落書き帳を開いて、ぐりぐりと黄色のクレヨンで描いて、塗って。


──────そのまま、暫くは静かな時間が過ぎていたのだが、



「失礼します、三蔵様」



僧侶が一人、また大量の書類の追加を持って部屋に入って来た。
その声を聞いた瞬間、三蔵の筆を持つ手が動きを止め、眉間の皺が三割増しになる。

僧侶は、書類を机に置くと、いそいそと部屋を出て行った。
その様は忙しそうと言うよりも、三蔵の不機嫌な空気に飲まれ、恐れ戦いていると言った方が正しい。
悟空はそれを横目に見ながら、まだしばらく遊んで貰えないな、と小さく溜息を吐いた。


しかし、悟空の予想に反して、三蔵は筆を置いた。

カタン、と固い木の音を聞いた悟空が顔を上げると、三蔵は目を閉じて椅子に寄り掛かっている。
悟空は落書き帳を床に置いて、恐る恐る、三蔵に近付いた。



「さんぞ、仕事」
「終わってねぇよ」


言い終わる前に返されて、だよなあ、と悟空は唇を尖らせる。

とは言え、今の所、三蔵は執務を再開させるつもりもないようで、煙草を取り出して火をつけている。
一服する時間くらいは、構って貰えるかもしれない、と悟空は考え直した。



「なあ、三蔵。今日って、ウソついて良い日なんだって。知ってた?」
「ああ……四月馬鹿か」
「しがつばか?」
「何処の国が発祥だか知らんが、四月一日はエイプリルフールっつって、嘘を吐いて良い日って言われてる。そのエイプリルフールを訳すと、“四月馬鹿”」



ふーん、と悟空は机に顎を乗せて漏らす。



「変な日だな」
「そうだな」



ふ、と紫煙が吐き出されて、ゆらゆらと浮かんで消える。

そのまま、しばらく部屋の中は沈黙して─────ふ、と悟空は思った事を口にする。



「なあ、三蔵。そのエイプリルなんとかって、誰でも嘘吐いて良いの?」
「一応な」
「オレも?三蔵も?」


悟空の問いに、三蔵はまた煙を燻らせて頷いてやる。


嘘を吐いて良い人間と、吐いてはいけない人間がいる、と言う事はない。
ただし、嘘の内容に程度は弁えるべき。

三蔵のその言葉を聞いて、ふぅん、と悟空は呟いた後で、



「じゃあ三蔵が腹痛になったってウソでも良いの?」
「………はあ?」



片眉を上げて顔を顰める三蔵に、悟空はやっぱ駄目か、と机に俯せる。


腹痛でも、頭痛でも、理由は何でも良い。
嘘が許される日なら、嘘でも良いから三蔵が仕事を休みになってしまえば、少しは構って貰えるかと思った。

しかし現実はそんなに簡単なものではない。
大体、腹痛だの頭痛だの、そんな理由で仕事を休める程、三蔵は自由な立場ではないのだ。
今こうして雑談しているのも、単なる小休止の間の事なのだし。




「………ふん」



じゅ、と三蔵の煙草が灰皿へと押し付けられる。
仕事再開だ。

─────と、悟空は思ったのだが、



「……あれ?さんぞ?」



執務椅子から腰を上げて、隣の寝室へ向かう三蔵を見て、悟空は首を傾げた。
三蔵はそれに答えないまま、寝室へ入って行く。

悟空は床に投げていた落書き帳とクレヨンを拾って、三蔵を追い駆ける。


寝室を覗いてみると、三蔵は法衣を脱いで、ベッドに横になっていた。



「三蔵、どうかしたの?」



駆け寄ってベッドに登り、三蔵の顔を覗き込む。
すると三蔵は、目を閉じたまま、覗き込んでいる悟空の襟首を掴んで、ベッドに引き倒した。



「わぷっ!」
「煩い。寝てろ」
「だって三蔵、仕事」
「腹痛なんだ。やってられるか」



周囲の雑音を遮断するように俯せて呟いた三蔵に、え、と悟空はぱちりと瞬き一つ。

三蔵は、悟空を抱き枕のように抱えたまま、動かなくなった。
抱えられたままで保護者の顔を覗き込めば、目を閉じていて、完全に寝る姿勢。



「……三蔵、腹痛ぇの?」



問いかけに返事はない。
しばらくして、聞こえて来る呼吸が寝息に変わったのが分かった。





小さな世界の、小さなウソは、壊されるほど大きくはない。


開け放たれた窓から、柔らかな風が吹いていた。







うちの三蔵様って仕事サボってばっかな気がする。

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