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2012年04月13日

通販申込みを受理

  • 2012/04/13 23:36
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2012年4月8日~11日間にご注文を頂きました、通販のご注文を受理致しました。
受理完了のメールを送信しましたが、届いていらっしゃらない方がおられましたら、拍手かkryuto*hotmail.co.jp(*を@に変換して下さい)にてご連絡をお願いします。

携帯電話からメールを送られる方は、迷惑メール防止を設定されていると、此方からの返信メールが拒否されてしまう可能性があります。
kryuto*hotmail.co.jpを受信可能に設定するよう、お願いします。

[Cat Panic]よそ見厳禁

  • 2012/04/13 16:43
  • Posted by



帰り道で、塀の上で丸くなっている猫を見付けた。
ぽかぽかとした春の陽気の中、日だまりで眠る姿は、如何にも平和な午後と言った風。


嫌がるかなと思いつつ、手を伸ばして見ると、猫はちろりと片目を開けて此方を見ただけで、また直ぐに目を閉じた。
機嫌が良いのか、慣れているのか、猫はそのまま其処で丸まっていて、背中を撫でても動かない。
お好きにどうぞ、とでも言っているように見えたので、それに甘えて柔らかな毛並を撫でてやった。

しばらくそうしていると、ぴくん、と猫の耳が動いて、顔が上げられる。
何処かを見ていた猫は、ひょっとしたら、自分を呼ぶ声が聞こえたのかも知れない。
猫は、八剣の撫でている手が離れると、すっと立ち上がり、八剣の肩を踏台にして塀を下りた。
足元に降りた猫は、おまけに愛想を振りまくように、すりすりと八剣の足に体を摺り寄せてから、悠然と去って行った。


一時の穏やかな時間を分けて貰って、さて帰ろう、と八剣も帰路を再開させる。



それが、今から約五分ほど前の話。




「ただいま、京ちゃん」




部屋に入って、リビングの窓辺で丸くなっていた仔猫に声をかけた。


開放的な外に比べると、此処は閉じられている世界だけれど、それ故に危険とも切り離されている。
それでいて確りと陽の光は取り込んでくれる空間だから、昼寝をするのは持って来いに違いない。

そんな部屋の中で、すやすやと眠る仔猫に近付いて、八剣は傍らに腰を下ろした。
子供らしく、ぷくぷくとした丸い頬を指先で突いてやると、むずがるように小さく唸る。
瞼がふるふると小刻みに震えた後、ゆっくりと持ち上げられて、




「んぁ……?」
「ただいま」
「……………ぉー……」




寝惚け眼を猫手で擦りながら、京一が緩い返事をする。
ぐしぐしと目を擦る京一の腕を、赤くなっちゃうよ、と八剣はやんわりと掴んで止めた。

───────すると、




「…………………………」




鼻先になった八剣の手を、京一がくん、と嗅ぐ。
途端、寝惚けていて緩んでいた眉根が、ぎゅうと思い切り顰められた。




「………………おい」
「うん?」




不機嫌な声は、昼寝を邪魔されたからだ。
だから八剣は、特別その低い声を気にする事なく、返事をする。

すると、京一はあらん限りの力で、自分の腕を掴む八剣の手を払い退けた。
それ程強い力で掴んではいなかったと言うのに、それもう、物凄い力で。




「どうかしたかい?」
「………………………このッ!」




問いかけに対して、まともな返事は帰って来なかった。
苛立ちをぶつけるように頭突きをされて、鼻柱に鈍痛を喰らう羽目になる。

じんじんとした鼻柱を手で押さえる八剣に対し、ぶつけた京一の方もそれなりに痛かったようで、頭を押さえて蹲っている。




「大丈夫かい?京ちゃん」
「るせー、触んなッ!この軟派野郎!」




撫でようとした八剣の手から逃げて、京一は窓際で尻尾を全開で膨らませ、フギャー!と八剣に向かって威嚇する。
ゴロゴロと不機嫌な音が仔猫の喉で鳴って、此処でもう一度手を出せば、まず間違いなく引っ掛かれるだろう。

京一が気紛れである事や、些細な事で直ぐに機嫌を損ねてしまうのは、ままある事だ。
しかし、昼寝を邪魔されたからと言って、此処まで怒るのも珍しい。
大抵はしばらく眉根を寄せて唇を尖らせているが、あからさまに威嚇してくる事もなかった筈だ。


八剣は、払い除けられた自分の手を見下ろした。
何かやってしまったかな─────と考えた後で、




(──────ああ、)




あれか、と八剣の脳裏に甦ったのは、塀の上でのんびりとしていた猫の事。
そう言えば、あの猫を撫でたのは、この手だったか。

と言う事は、




「何笑ってんだ、このッ!」




投げられた座布団が、ぼすん、頭にぶつかって、床に落ちる。
それを退かせて、八剣は先とは反対の手を京一に向かって伸ばした。




「触ンなーッ!!」




じたばたと暴れて逃げようとする仔猫を捉まえて、抱き寄せる。
すると、途端に仔猫は大人しくなって、八剣の緋色の上掛に顔を埋めて来た。

ふんふん、ふんふん、と鼻を鳴らす音が聞こえる。
それから、上掛の端を握った小さな手が、ぎゅううううう、と強い力を込めるのが判った。
胸に乗せた頭がぐりぐりと押し付けられて来て、可愛いねェ、と八剣は思う。


京一の背中に添えた手に、尻尾がくるんと巻き付いて来る。
それを好きにさせながら、八剣は逆の腕で京一の頭を撫でた。





(ほかのにおい、ちがうにおい)

(そんなのいらない)


(オレのものだから、していいにおいは、オレのだけ!)








デレさせようとして焼きもちさせたら、全力のツンになった。おや?

八京の京一は、基本的に京一の方が八剣に対して素っ気ない態度なので、八剣が女の子と喋っても気にしません。「野郎だしな。あれが普通だろ」ぐらいで。寧ろなんで八剣が自分なんかに懸想してるのかが判らない。
でもちび京は「オレ一番!」気質なので、八剣の興味が自分から逸れると面白くない……だったら可愛いな!

[Cat Panic]理性と本能

  • 2012/04/13 16:23
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道端で見付けた“それ”を見て、家で帰りを待っている仔猫の事を思い出した。


猫は猫だが、普通の猫とは違う訳で。
とは言え、猫は猫な訳で。

─────持って帰ってみる事にした訳だが、




「………………バカにしてんのか」




ひらひらと、持って帰った“それ”を仔猫の前で掲げて揺らしていたら、とてもとても冷たい目でそう言われた。



正式名称『エノコログサ』。
漢字で書くと『狗尾草』。

名の由来は、先端の花穂が長円形でふっくらとし、先端は細くなっていると言う、犬の尾に似ているからと言うもの。
元々はその由来から“犬っころ草”と呼ばれており、転じて“エノコログサ”の呼称になったとされている。
現在は一般的に食用として認識されなくなったものの、昔は天麩羅にして食べられている事もあったらしい。
そして、この草の花穂を猫の視界で振ると、猫がじゃれつくと言う現象が起きる。

……早い話が、俗称『猫じゃらし』であった。


八剣も、この草に関しては、正式名称云々よりも俗称の方が馴染み深い。
だから道の端でこれがひょっこり顔を出しているのを見た時、真っ先に我が家の仔猫────京一の事を思い出したのだ。



八剣は、睨む京一に眉尻を下げて、ふわふわと揺らしていた猫じゃらしを引っ込めた。




「いや、ね。此処の所、新しい玩具もあげてなかったから、こういうのは如何かなと思って」
「けッ。そんな子供騙しで釣られるか。っつか、玩具なんざいらねーよ、ガキじゃねえんだから」




座布団の上で胡坐を掻いて、京一はイライラとするように、尻尾がぐるぐると円を描いている。


そんな京一の膝上には、潰れた八剣人形がちょこんと鎮座していた。
毎日のようにボロボロになって行くその人形に、気に入って遊んでいると喜んでいいのか、しかし自分の形を模したものの首元から綿が食み出ているのは中々怖い気分になるもので、悼んでいいのか。

ちなみに、八剣自身は、京一がこの人形で遊んでいる所を見た事はない。
八剣が家にいる間、京一はこの人形を手元に置いてある事はあっても、目に見て判る程にこれで遊んだ事はなかった。
……なんだか怖い場面を見るような気もするので、こればかりは見ないままで良いだろうと思う事にしている。


京一は剥れた表情で、じっと八剣を睨んでいる。
気難しい仔猫は、八剣の子供扱い(子猫扱いと言うべきだろうか)にすっかり機嫌を損ねてしまったようだ。




「ごめん、ごめん。ちょっとね。怒らないでよ」
「晩飯、ラーメンで許してやる」
「はいはい」




憮然とした態度で言った京一に、八剣はくすりと笑い、彼の頭の上の耳をくすぐってやる。
ぴくぴくっ、と反応して震える尖った耳に、可愛いねェ、と呟けば、じろりと睨まれた。


ぽんぽんと京一の頭を撫でて、八剣は茶でも淹れよう、と腰を上げた。
持っていた猫じゃらしは、テーブルの隅に置いておく。

キッチンに行って湯を沸かし────その暇の間に、八剣はちらりとリビングを覗いてみる。
開けた窓から吹き込んできた風を受けて、猫じゃらしの細い茎が転がり、花穂がくるんくるんと踊った。
それをじっと見つめる瞳が一対。




「………………………」




拗ねたような、剥れた顔で見詰める眼。
睨んでいるようにも見えるが、あれは単純に見ている時の眼だ。

ぐるぐると円を描いていた尻尾が動きを替えて、緩く弧を描いた形で、先端だけがぴくぴくと動く。
京一の口は、むずむずとしたものを堪えているように真一文字になり、手元では八剣人形が力一杯握られている(綿が更に食み出ているのは見えない事にしよう)。


長い尻尾が右へ、左へ揺れ始める。
其処へもう一度風が吹いて、猫じゃらしがころころと転がった。
花穂がくるんくるんと踊って、─────ついに。




「にゃッ」




しゅっ!と猫パンチ。
丸めた手は花穂を捉え、しなった穂がぴょんと跳ねる。

風は止んだが、京一はパンチを繰り出し続けた。
その度に花穂がぴょんぴょんと跳ねて、京一の尻尾が楽しそうに踊る。


コンロにかけていた湯が沸騰し、後少し、冷めるのを待てば良い茶が飲める。
しかし、八剣が部屋に入って来た途端、仔猫はきっと遊ぶのを止めるだろう。
気にせず遊んでいれば良いのにと毎回思うのだが、あの子はそういう子なのだ。





行儀が悪いと知りつつ、八剣はキッチンで茶の湯を傾ける。

リビングからは、楽しそうな仔猫の声が聞こえていた。







そういや猫じゃらしネタ書いてないよな~と思ってたら、こんなの出ました。

猫じゃらしとか、ネズミの玩具とか、追いかけたくなるのは猫の本能的習性なんですよね。狩りの本能。
この猫京は人と動物の間なので、人間的理性(羞恥心とか)もあるので、「ンな恥ずかしい真似するか!」と。
でもやっぱり我慢できなかったー。

八剣人形については此方→[お気に入りに乱暴]

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