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2017年10月08日

[ジェクレオ]いっそ食ってくれとも願いながら

  • 2017/10/08 22:29
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ジェクト×レオンで現パロ風です。




大きい、とその背中を見て、レオンはいつも思う。

自分も比較的体格に恵まれた方だと言う自負はあったが、目の前の男はそれ以上だ。
筋肉はそこそこついている、と言う自分に比べると、隆々と盛り上がった上腕筋に目が行く。
決して自分の体が貧相とは思わず、どちらかと言えばこの人物の方が、やや規格外気味である事は判っているつもりだが、それでもじっと見ていると羨ましいと思う。

熱の名残を残す体を、ベッドの中に埋めて幾分か。
気持ちも体も少し落ち着いた頃に、ジェクトは意識の戻ったレオンを見て、「何か飲むか」と言った。
汗と散々に鳴いた所為で、レオンの喉はカラカラだ。
水が欲しい、と言うと、ジェクトはちょっと待ってろ、と言ってベッドを抜け出し、冷蔵庫を開けに行った。

冷蔵庫から取り出したペットボトルを開け、グラスに水を注いで行くジェクトの様子を、レオンはベッドの中でじっと見詰めている。
一糸纏わぬ格好を恥ずかしがる様子もなく、動けない恋人の為にケアの準備をする彼は、見た目の大柄さに反し、意外と細かい気配りが出来る人物だ。
そのギャップをこっそりと、面白いな、とレオンが思っている内に、ジェクトは此方へと戻って来た。


「ほれ」
「ありがとう」
「氷、あった方が良かったか?」
「いいや」


これで良い、と微かに結露の浮いたグラスを受け取り、レオンはベッドに俯せの格好のまま、それを口元に運んだ。
冷蔵庫から出したばかりの水は、ひんやりと冷たく、乾き切ったレオンの喉に染み渡る。


「ふう……ありがとう」
「もう要らねえのか?」
「取り敢えずは」


喉の過剰な乾きは、一先ずは落ち着いた。
そう言うレオンに、じゃあ此処に置いとくぞ、とジェクトはグラスをベッド横のサイドボードに置く。

どさ、とジェクトがベッド端に腰を落とすと、その重みに抗議するように、ベッドのスプリングが軋む。
ジェクトはレオンに背を向けた格好で座っており、疲労した体を解すように、首を捻ったり肩を動かしたりと落ち着きがない。
情事後の雰囲気としては、少々ムードに欠けているように感じられるが、レオンはそれを気にした事はなかった。
寧ろ、ジェクトらしい、とも思っているので、ジェクトの癖とも言える仕草をじっと眺めている。


「腹ぁ減ったな。何か食うか?」
「…俺は平気だ。燃費が良いからな」
「嫌味かよ」
「別に」


ふふ、と笑いながら言うレオンに、ジェクトは肩を竦める。


「んじゃ俺もいらねえかな…」
「腹が減ってるんだろう?俺の事は気にしないで、食べれば良い」
「一人だけで飯食ったってなあ。折角お前もいるってのに」
「…そう考えてくれるのは、有難いけど」


減っていない腹に物を詰められる程、レオンは健啖家ではない。
どちらかと言えば最低限の量さえ入れておけば、余程体力を消耗するような事がなければ、一日一食でも良い位だ。
……体力の消耗については、先程までの行為でかなり消費したと言えるのだが、空腹感はまた別の問題である。
此処に至る前に夕食も済ませたし、飲み物ならともかく、今夜は固形物は入るまい。

レオンはのろのろと起き上がって、ジェクトの背中に実を寄せた。
ひた、と傷の走る額を広い背中に押し当てると、ぴくり、と逞しい体が微かに揺れて、固まる。
そのままじっとしていると、ジェクトが少し身を捩って、肩越しに此方を見ているのが判った。


「今日は偉い甘えたじゃねえか」
「そうか?」
「そうだろ。いつもそんな事して来ねえし」
「……そうだな……」


なんとなくの行動だったが、甘えているように取られているのなら、それでも良いと思った。

ジェクトの体は、前も後ろも鍛え抜かれている。
背筋の筋肉の形がしっかりと判る、ゴツゴツとした感触が掌に感じられた。
その感触を楽しむように、ジェクトの背中に触れながら、レオンは自分に触れていた男の手について思い出す。

体格に見合った、大きな手だ。
小さな子供の頭なら片手で鷲掴んで、そのまま持ち上げてしまえそうな、確りと逞しい手。
その手は握られるとかなり固く、よく然り殴られている彼の息子を見ては、無体と言えば無体な事だな、と思う事もある。
ただ、不器用ながらもその拳には精一杯の愛情が篭っており、無意味な虐待をしている訳ではない事も知っている。
だからレオンは、あまり過剰になるなよ、とジェクトを宥め、叱られた事を怒る彼の息子を宥める程度に務めていた。

その手は、レオンに触れる時、とてもゆっくりと優しく触れる。
大きさに見合わない慎重さだと初めの頃は思ったものだったが、それが自分を壊さないように、大切にする為の触れ方なのだと気付いた時、照れ臭いと同時に嬉しくなった。
この人に大切にして貰える、自分が大事な存在だと思って貰えていると感じられた時、自分でも気付かずにた胸中の空虚が埋められたような気がした。

そんな事を思い出しながらジェクトの背中を撫でていると、ふっとその背が離れて逃げた。
あ、と追うように手を伸ばそうとして、


「おい、そんなに何度も撫でるな。くすぐってえよ」
「あ……すまない」


自分でも気付かない内に、随分と没頭していたのだと気付いて、レオンは慌てて手を引っ込めた。
と、その手を大きな腕ががっしと掴み、ぐいっと力任せに引っ張られる。
うわ、とレオンが目を丸くする間もなく、レオンはジェクトの固い胸に抱き寄せられた。


「ったく、お前は本当に甘え下手だよな」
「そうか……?」


ジェクトの言葉に首を傾げながらも、まあ上手くはないよな、と思う。
弟を含め、ジェクトの息子や、その他にも年下の子供達の面倒を見るのは慣れたものだが、自分が面倒をみられる側───甘える側となると、レオンはどうして良いのか判らなくなる。
これは、幼い頃から兄としての責任感と、父子家庭で父を支えなければと言う長男としての義務感が強かった為で、レオンは自分から誰かに寄り掛かると言う方法を忘れてしまっているのだ。
ジェクトは、そんなレオンの歪な成長に気付いた、数少ない人物だった。

くしゃくしゃと大きな手がレオンの濃茶色の髪を掻き撫ぜる。
俺じゃなくて息子を撫でてやれば良いのに、とレオンは思ったが、今の息子は父の手を大人しく受け入れはするまい。
代わりに自分が触れて貰えるのだとしても、レオンは嬉しかったので、黙ってその手に撫でられていた。

抱き締められ、頭を撫でられている内に、レオンの意識はうつらうつらと揺れ始める。
眠いが、勿体ないな、と思っていると、


「おい、レオン。寝てんのか?」
「ん……いや、起きてる」


寝そうにはなったけど、と言わずにいると、そうか、と返す声。
それからレオンごとジェクトの体が傾いて、ぼすっ、とレオンは背中からベッドに落ちた。

ぎしり、とベッドのスプリングが一つ大きな音を立てたかと思うと、レオンの視界に大きな影が入って来た。
言うまでもない、ジェクトの体だ。
ただでさえ大きな躯に馬乗りにされると、中々の圧迫感と言うか、凄味があるな、と感じる。
ジェクトも多少その自覚があるようだが、かと言って身を屈めてやるとか、相手が小さな子供でもない限りは気遣うような性格でもない。
況してや、此処にいるのはレオンである。
遠慮をする必要もなければ、怯えないようにと気を遣う必要もなく、見下ろす赤い瞳には明らかな熱が灯っていた。


「ジェクト」
「なんだよ。駄目か?」


レオンが徐に名を呼べば、ジェクトは途端に不機嫌そうな顔になる。
それは強面が厳めしく見せているだけであって、見た目程機嫌が悪い訳ではない事を、レオンは知っていた。

何処か不安そうに見つめる赤い瞳に、レオンはくすりと笑って、無精髭を蓄えた頬に手を伸ばす。


「明日、朝から仕事なんだ」
「……だっけか」
「ああ」


レオンの言葉に、じゃあ駄目だな、と落胆するように赤い瞳が呟くが、レオンは小さく首を横に振る。


「だから、出来るだけ、手加減して貰えると有難い」


そう言って、レオンはジェクトの頬をそっと撫でて、厚みのある唇に自分のそれを押し当てた。

重ねるだけのそれを放せば、微かに赤らんだ顔が目の前にあって、お前なあ、とぼやく声。
悪戯をした子供のように、わざとらしく笑って見せれば、赤い瞳が仕返しをするよう笑った。



覆い被さる存在感に、食われそうだといつも思うが、不安を感じた事はない。
触れる手が与える重みと体温に、心地良さを感じながら、レオンはそっと目を閉じた。





10月8日なのでジェクト×レオンを。思い付きで。
しっぽり大人な夜を過ごす二人を書いてみたかった。

[ティスコ]僕らの朝

  • 2017/10/08 22:18
  • Posted by


早朝の日課であるランニングを終え、気持ちの良い汗をタオルで拭きながら、マンションの階段を上る。
今日の朝飯は何かな、とティーダの頭の中はそれ一色になっていた。
それ位には、腹が減っているのだ。

五階の一番端から二番目にあるのが、ティーダの家である。
其処にティーダは父親と二人で住んでいるのだが、父ジェクトはプロのスポーツ選手として、一年の殆どを海外で暮らしている。
この為、ティーダは三年前から一人暮らし同然の生活をしており、気儘な学生生活を送っていた。

そんな自宅を、ティーダはたったっと通り過ぎる。
隣室になる一番端の扉の前に立って、インターホンを押して、その音がゆっくりと消えるのを待ってから、ドアノブに手をかける。
かちゃ、とノブは抵抗なく回り、ドアは外側へと引き開かれた。
不用心な事と思われそうだが、これは家主が目覚めてから数十分の間だけの事なので、平時はきちんと鍵が閉められている。
このロックが開いているのは、他でもない自分の為なのだと思うと、ティーダは心が弾むのを抑えられなかった。


「ただいまー!おはよ!」


中にいるであろう家主に向かって、ティーダは元気よく挨拶をした。
帰宅の挨拶と目覚めの挨拶を同時に投げると、ティーダの鼻孔を香ばしい匂いがくすぐる。
その音の発信源であるキッチンから、ひょい、と濃茶色の髪が覗いた。


「…おはよう。あんたの家はこっちじゃないだろ」
「そんな事言って、わざわざ鍵開けててくれるスコール、好きっスよ」
「…閉め忘れたんだ」


靴を脱いで玄関を上がるティーダに、素っ気無い事を言うのはスコールだ。
この部屋に住んでいる彼は、ティーダと同じく父子家庭で、その父も海外赴任が多く不在勝ちになっており、ティーダ同様に一人暮らし生活を送っている。
小学生の頃からの付き合いなので、お互いによく知る相手なので、気兼ねも要らない仲であった。
加えて、今現在、こっそりと愛を育む仲でもある。

ティーダがキッチンを覗くと、其処には二人分の朝食の用意が作られている真っ最中だった。
普通に考えれば、それはスコールとその父ラグナの為の食事になるのだろうが、ラグナは相変わらず不在である。
スコール自身は小食なので、朝から二人分など食べられる筈もなく、明らかに誰か別の人物の為に用意されたものだと判った。
無論、その“誰か”は、考えるまでもなくティーダの事を指す。


「今日の朝飯、何?」
「……鮭」
「肉は~?」
「朝から肉なんか食えるか」
「大事なエネルギーっスよ」
「嫌なら食べなくて良い」
「やだやだ!食べる!」


冗談だよ、と甘えるように懐いて来るティーダを、スコールは胡乱な目で見ている。
見ているだけで、鬱陶しい離れろと拒否される事がないのが、ティーダは嬉しかった。

シャワーでも浴びて来い、とスコールに言われて、ティーダはいそいそと風呂場へ向かった。
脱衣所も兼ねた洗面所へと入ると、綺麗なタオルと、白いTシャツとパンツが揃えて置かれている。
早朝ランニングをして来るであろうティーダの為に、いつしかスコールが用意するようになったものだ。
甘やかされてるなあ、と思いつつ、幼馴染の気遣いを有難く受け取る日々に、ティーダはぽかぽかと胸が暖かくなるのを感じていた。

温めのシャワーでざっと汗を流すだけでも、とても気持ちが良い。
短い水浴びで頭まで洗うと、すっきりとした気分で、ティーダは風呂を出た。
ランニングの汗が染み込んだ服は、洗面所の手洗い場で軽く揉み洗いをして、バスタブに引っ掛けさせて貰う。
浴室内の乾燥機のスイッチを入れ、リビングダイニングへ向かうと、テーブルに朝食が並べられていた。


「美味そう!」
「冷めるから早く食え」
「はーい」


犬宜しく、尻尾を振るようにテーブルに飛びついて来たティーダを、スコールは座れ、と椅子を指差して言った。
ティーダは遠慮なくお決まりの席に座らせて貰い、頂きます、と手を合わせる。
スコールは既に食べ始めていた。
適度な塩味の焼鮭を食べながら、一緒に並べられたサラダに箸をつけると、ふと気付く。
サラダの中に、細切りにされた鶏のサラミが入っていた。
レモン風味のドレッシンがかけられており、さっぱりとした味付けになっている。


「スコール、これ」
「あんたが肉はって言うから」
「へへ~、ありがと。美味いっス」
「……ん」


頬をすっかり緩めて、嬉しそうにサラダを口に入れるティーダ。
野菜は昔からあまり好きではないのだが、スコールが作ってくれたものなら美味しいと思える。
ティーダの我儘も、面倒臭いと言う顔をしながら、きちんと応えてくれるのが嬉しかった。

栄養バランスをきちんと考えられた朝食を平らげると、ティーダは食器の片付けを申し出た。
いつもの事であるので、スコールもすんなりと「じゃあ頼む」と任せてくれる。

ティーダの早朝ランニングの日、それを終えてからスコールの家を訪ねるのは、習慣となっている事だ。
其処でスコール手製の朝食を食べさせて貰って、片付けをティーダが任せて貰うのもいつもの事。
この片付けは、ティーダにとって、食事を作って貰った礼でもあった。
スコールは基本的に朝に弱く、学校のある平日でもギリギリの時間まで寝たいと思っているのだが、ティーダの早朝ランニングを知ってからは、その日だけ気力を振り絞って目を覚まし、二人分の朝食を作っている。
放って置けばジャンクフードばかりを食べているティーダを知ってから、父を越えたいと言っているのにそんな体たらくで良いのか、と叱ってから、幼馴染の栄養管理を買って出たのが始まりだ。
お陰でティーダの食生活は大幅に改善されるようになり、ついでに朝から二人きりで過ごす事が出来るので、ティーダは嬉しくて堪らない。
────が、元々朝に起きるのが苦手なスコールを、無理に付き合わせていると言う事も確かで、その罪悪感も皆無ではなかった。
食後、ティーダが食器洗いを担うのは、そんなスコールへの細やかな恩返しなのだ。

ティーダが食器洗いを終えてリビングダイニングへ戻ると、テレビの前のソファにスコールが座っていた。
テレビの電源がついており、日曜日にいつも放送している、動物番組が流れている。
が、スコールの体は不自然な角度に傾いていて、テレビを見るには到底辛い格好をしている。

ティーダが足音を殺してそっと回り込んでみると、案の定、スコールはうつらうつらと舟を漕いでいた。


「……スコール」
「……?」


近い距離で声をかけると、ふるり、とスコールの長い睫毛が震えて、ゆっくりと瞼が持ち上がる。
心持ちぼんやりと靄のかかった蒼灰色がティーダを捉えた。


「眠い?」
「…当たり前だろ。あんな朝早くに起きるとか…」
「だよなあ」
「…なんで日曜にまで早く起きなきゃいけないんだ……」
「ごめんって。ありがとな、付き合ってくれて」


愚痴を零すスコールに、誤るティーダであったが、ティーダの食事管理について、ティーダの方からスコールに付き合わせていると言う事はない。
あくまでスコールの方から言い出した事であり、引き受けているのはスコールの勝手とも言えた。
ついでにティーダは、スコールの気持ちは有難いが、彼に無理をさせてまで自分の面倒をみてくれと言うつもりはない。
だからスコールのこの恨み言は、引き受けたと言ったからと責任感から全てティーダに寄り添おうとする、手を抜く事が出来ない自分への愚痴である。
ティーダもそれが判っていて、愚痴るスコールの気持ちを引き受けつつ、感謝してると伝えるのが常の事だった。

ふあ、と欠伸を漏らすスコール。
猫手で目許を擦る仕草が、普段の大人びた雰囲気とは全く違って、ティーダは可愛い、と思う。
それを口にすれば、病院で検査を受けた方が良い、と至極真面目な顔で言われるのだが。

ティーダはスコールの隣に座って、眠そうなスコールの白い頬に手を伸ばす。
余り温度が高くないスコールの頬は、運動して温まったティーダの手に比べると、少し冷たく感じられる。
スコールもティーダの手の熱を感じるのか、触れる手に頬を寄せると、ほう、と息を吐いた。


「スコール、ほっぺ冷たい」
「……あんたは熱い」
「気持ち良い?」
「……まあ、な」


素直ではないが、拒否をしないと言う点は素直なスコールに、ティーダはくすくすと笑った。

スコールの意識がゆらゆらと宙を彷徨っているのは、傍目にも判る。
日曜日だし、このまま寝るかなあ、とティーダはスコールの横顔を見ながら思っていた。
出来れば、スコールと一緒にショッピングモールに行って、行き付けのシルバーアクセサリーの店でも見たいと思っていたのだが、この調子で今から出掛けると言うのは先ず無理だろう。
昼になったら行けるかな、と思っていると、


「…ティーダ」
「何?」


名を呼ぶ声に返事をした後だった。
頬に当てていた手を離されたと思うと、ぽすん、とティーダの肩に重みが乗る。
へ、と首を動かせば、ティーダの肩に頭を乗せているスコールがいた。


「眠い」
「へあっ。う、うん」
「…枕になってろ」
「……あ。うん」


ティーダの体に実を寄せた格好で、スコールは目を閉じていた。
そのまま遅い二度寝をしようとしているのだと気付き、ティーダは小さく頷いた。

程無く、スコールの寝息が聞こえ始め、力の抜けた体がすっかりティーダへと寄り掛かる。
それを少しの間見詰めて確認してから、ティーダはスコールを起こさないようにと身動ぎを始めた。
ソファに座ったまま寄り掛かるスコールの体を、そっと抱いて横になるようにと傾けて行く。
ティーダの膝にスコールの頭が乗って、スコールは小さくむずかった後、またすぅすぅと規則正しい寝息を零して行った。
起こさずに済んだ事にホッとしつつ、ティーダは柔らかな濃茶色の髪の隙間に覗く瞼に、触れるだけのキスをする。


「いつもありがとな、スコール」


スコールが支えてくれるから、毎日のハードな練習も、早朝のランニングも、苦にならない。
それに甘える事を許してくれるスコールが、心の底から愛おしいと思う。

だからティーダも、スコールを甘やかすのだ。
恥ずかしがり屋な彼の為に、専らそれは眠っている時に限られているのは、少し寂しい事ではあるが、今の所は仕方がない。
それでも、いつかスコールにも伝わるように、目一杯甘やかしてやれたら良い。



緩やかな休日の午後は、緩やかに流れて行く。
スコールを膝に乗せたまま、ティーダが眠ってしまうまで、そう時間はかからなかった。





10月8日と言う事で、ティスコの日。
甘え甘やかされ、な二人が好きです。

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