[ジェクレオ]いっそ食ってくれとも願いながら
ジェクト×レオンで現パロ風です。
大きい、とその背中を見て、レオンはいつも思う。
自分も比較的体格に恵まれた方だと言う自負はあったが、目の前の男はそれ以上だ。
筋肉はそこそこついている、と言う自分に比べると、隆々と盛り上がった上腕筋に目が行く。
決して自分の体が貧相とは思わず、どちらかと言えばこの人物の方が、やや規格外気味である事は判っているつもりだが、それでもじっと見ていると羨ましいと思う。
熱の名残を残す体を、ベッドの中に埋めて幾分か。
気持ちも体も少し落ち着いた頃に、ジェクトは意識の戻ったレオンを見て、「何か飲むか」と言った。
汗と散々に鳴いた所為で、レオンの喉はカラカラだ。
水が欲しい、と言うと、ジェクトはちょっと待ってろ、と言ってベッドを抜け出し、冷蔵庫を開けに行った。
冷蔵庫から取り出したペットボトルを開け、グラスに水を注いで行くジェクトの様子を、レオンはベッドの中でじっと見詰めている。
一糸纏わぬ格好を恥ずかしがる様子もなく、動けない恋人の為にケアの準備をする彼は、見た目の大柄さに反し、意外と細かい気配りが出来る人物だ。
そのギャップをこっそりと、面白いな、とレオンが思っている内に、ジェクトは此方へと戻って来た。
「ほれ」
「ありがとう」
「氷、あった方が良かったか?」
「いいや」
これで良い、と微かに結露の浮いたグラスを受け取り、レオンはベッドに俯せの格好のまま、それを口元に運んだ。
冷蔵庫から出したばかりの水は、ひんやりと冷たく、乾き切ったレオンの喉に染み渡る。
「ふう……ありがとう」
「もう要らねえのか?」
「取り敢えずは」
喉の過剰な乾きは、一先ずは落ち着いた。
そう言うレオンに、じゃあ此処に置いとくぞ、とジェクトはグラスをベッド横のサイドボードに置く。
どさ、とジェクトがベッド端に腰を落とすと、その重みに抗議するように、ベッドのスプリングが軋む。
ジェクトはレオンに背を向けた格好で座っており、疲労した体を解すように、首を捻ったり肩を動かしたりと落ち着きがない。
情事後の雰囲気としては、少々ムードに欠けているように感じられるが、レオンはそれを気にした事はなかった。
寧ろ、ジェクトらしい、とも思っているので、ジェクトの癖とも言える仕草をじっと眺めている。
「腹ぁ減ったな。何か食うか?」
「…俺は平気だ。燃費が良いからな」
「嫌味かよ」
「別に」
ふふ、と笑いながら言うレオンに、ジェクトは肩を竦める。
「んじゃ俺もいらねえかな…」
「腹が減ってるんだろう?俺の事は気にしないで、食べれば良い」
「一人だけで飯食ったってなあ。折角お前もいるってのに」
「…そう考えてくれるのは、有難いけど」
減っていない腹に物を詰められる程、レオンは健啖家ではない。
どちらかと言えば最低限の量さえ入れておけば、余程体力を消耗するような事がなければ、一日一食でも良い位だ。
……体力の消耗については、先程までの行為でかなり消費したと言えるのだが、空腹感はまた別の問題である。
此処に至る前に夕食も済ませたし、飲み物ならともかく、今夜は固形物は入るまい。
レオンはのろのろと起き上がって、ジェクトの背中に実を寄せた。
ひた、と傷の走る額を広い背中に押し当てると、ぴくり、と逞しい体が微かに揺れて、固まる。
そのままじっとしていると、ジェクトが少し身を捩って、肩越しに此方を見ているのが判った。
「今日は偉い甘えたじゃねえか」
「そうか?」
「そうだろ。いつもそんな事して来ねえし」
「……そうだな……」
なんとなくの行動だったが、甘えているように取られているのなら、それでも良いと思った。
ジェクトの体は、前も後ろも鍛え抜かれている。
背筋の筋肉の形がしっかりと判る、ゴツゴツとした感触が掌に感じられた。
その感触を楽しむように、ジェクトの背中に触れながら、レオンは自分に触れていた男の手について思い出す。
体格に見合った、大きな手だ。
小さな子供の頭なら片手で鷲掴んで、そのまま持ち上げてしまえそうな、確りと逞しい手。
その手は握られるとかなり固く、よく然り殴られている彼の息子を見ては、無体と言えば無体な事だな、と思う事もある。
ただ、不器用ながらもその拳には精一杯の愛情が篭っており、無意味な虐待をしている訳ではない事も知っている。
だからレオンは、あまり過剰になるなよ、とジェクトを宥め、叱られた事を怒る彼の息子を宥める程度に務めていた。
その手は、レオンに触れる時、とてもゆっくりと優しく触れる。
大きさに見合わない慎重さだと初めの頃は思ったものだったが、それが自分を壊さないように、大切にする為の触れ方なのだと気付いた時、照れ臭いと同時に嬉しくなった。
この人に大切にして貰える、自分が大事な存在だと思って貰えていると感じられた時、自分でも気付かずにた胸中の空虚が埋められたような気がした。
そんな事を思い出しながらジェクトの背中を撫でていると、ふっとその背が離れて逃げた。
あ、と追うように手を伸ばそうとして、
「おい、そんなに何度も撫でるな。くすぐってえよ」
「あ……すまない」
自分でも気付かない内に、随分と没頭していたのだと気付いて、レオンは慌てて手を引っ込めた。
と、その手を大きな腕ががっしと掴み、ぐいっと力任せに引っ張られる。
うわ、とレオンが目を丸くする間もなく、レオンはジェクトの固い胸に抱き寄せられた。
「ったく、お前は本当に甘え下手だよな」
「そうか……?」
ジェクトの言葉に首を傾げながらも、まあ上手くはないよな、と思う。
弟を含め、ジェクトの息子や、その他にも年下の子供達の面倒を見るのは慣れたものだが、自分が面倒をみられる側───甘える側となると、レオンはどうして良いのか判らなくなる。
これは、幼い頃から兄としての責任感と、父子家庭で父を支えなければと言う長男としての義務感が強かった為で、レオンは自分から誰かに寄り掛かると言う方法を忘れてしまっているのだ。
ジェクトは、そんなレオンの歪な成長に気付いた、数少ない人物だった。
くしゃくしゃと大きな手がレオンの濃茶色の髪を掻き撫ぜる。
俺じゃなくて息子を撫でてやれば良いのに、とレオンは思ったが、今の息子は父の手を大人しく受け入れはするまい。
代わりに自分が触れて貰えるのだとしても、レオンは嬉しかったので、黙ってその手に撫でられていた。
抱き締められ、頭を撫でられている内に、レオンの意識はうつらうつらと揺れ始める。
眠いが、勿体ないな、と思っていると、
「おい、レオン。寝てんのか?」
「ん……いや、起きてる」
寝そうにはなったけど、と言わずにいると、そうか、と返す声。
それからレオンごとジェクトの体が傾いて、ぼすっ、とレオンは背中からベッドに落ちた。
ぎしり、とベッドのスプリングが一つ大きな音を立てたかと思うと、レオンの視界に大きな影が入って来た。
言うまでもない、ジェクトの体だ。
ただでさえ大きな躯に馬乗りにされると、中々の圧迫感と言うか、凄味があるな、と感じる。
ジェクトも多少その自覚があるようだが、かと言って身を屈めてやるとか、相手が小さな子供でもない限りは気遣うような性格でもない。
況してや、此処にいるのはレオンである。
遠慮をする必要もなければ、怯えないようにと気を遣う必要もなく、見下ろす赤い瞳には明らかな熱が灯っていた。
「ジェクト」
「なんだよ。駄目か?」
レオンが徐に名を呼べば、ジェクトは途端に不機嫌そうな顔になる。
それは強面が厳めしく見せているだけであって、見た目程機嫌が悪い訳ではない事を、レオンは知っていた。
何処か不安そうに見つめる赤い瞳に、レオンはくすりと笑って、無精髭を蓄えた頬に手を伸ばす。
「明日、朝から仕事なんだ」
「……だっけか」
「ああ」
レオンの言葉に、じゃあ駄目だな、と落胆するように赤い瞳が呟くが、レオンは小さく首を横に振る。
「だから、出来るだけ、手加減して貰えると有難い」
そう言って、レオンはジェクトの頬をそっと撫でて、厚みのある唇に自分のそれを押し当てた。
重ねるだけのそれを放せば、微かに赤らんだ顔が目の前にあって、お前なあ、とぼやく声。
悪戯をした子供のように、わざとらしく笑って見せれば、赤い瞳が仕返しをするよう笑った。
覆い被さる存在感に、食われそうだといつも思うが、不安を感じた事はない。
触れる手が与える重みと体温に、心地良さを感じながら、レオンはそっと目を閉じた。
10月8日なのでジェクト×レオンを。思い付きで。
しっぽり大人な夜を過ごす二人を書いてみたかった。
大きい、とその背中を見て、レオンはいつも思う。
自分も比較的体格に恵まれた方だと言う自負はあったが、目の前の男はそれ以上だ。
筋肉はそこそこついている、と言う自分に比べると、隆々と盛り上がった上腕筋に目が行く。
決して自分の体が貧相とは思わず、どちらかと言えばこの人物の方が、やや規格外気味である事は判っているつもりだが、それでもじっと見ていると羨ましいと思う。
熱の名残を残す体を、ベッドの中に埋めて幾分か。
気持ちも体も少し落ち着いた頃に、ジェクトは意識の戻ったレオンを見て、「何か飲むか」と言った。
汗と散々に鳴いた所為で、レオンの喉はカラカラだ。
水が欲しい、と言うと、ジェクトはちょっと待ってろ、と言ってベッドを抜け出し、冷蔵庫を開けに行った。
冷蔵庫から取り出したペットボトルを開け、グラスに水を注いで行くジェクトの様子を、レオンはベッドの中でじっと見詰めている。
一糸纏わぬ格好を恥ずかしがる様子もなく、動けない恋人の為にケアの準備をする彼は、見た目の大柄さに反し、意外と細かい気配りが出来る人物だ。
そのギャップをこっそりと、面白いな、とレオンが思っている内に、ジェクトは此方へと戻って来た。
「ほれ」
「ありがとう」
「氷、あった方が良かったか?」
「いいや」
これで良い、と微かに結露の浮いたグラスを受け取り、レオンはベッドに俯せの格好のまま、それを口元に運んだ。
冷蔵庫から出したばかりの水は、ひんやりと冷たく、乾き切ったレオンの喉に染み渡る。
「ふう……ありがとう」
「もう要らねえのか?」
「取り敢えずは」
喉の過剰な乾きは、一先ずは落ち着いた。
そう言うレオンに、じゃあ此処に置いとくぞ、とジェクトはグラスをベッド横のサイドボードに置く。
どさ、とジェクトがベッド端に腰を落とすと、その重みに抗議するように、ベッドのスプリングが軋む。
ジェクトはレオンに背を向けた格好で座っており、疲労した体を解すように、首を捻ったり肩を動かしたりと落ち着きがない。
情事後の雰囲気としては、少々ムードに欠けているように感じられるが、レオンはそれを気にした事はなかった。
寧ろ、ジェクトらしい、とも思っているので、ジェクトの癖とも言える仕草をじっと眺めている。
「腹ぁ減ったな。何か食うか?」
「…俺は平気だ。燃費が良いからな」
「嫌味かよ」
「別に」
ふふ、と笑いながら言うレオンに、ジェクトは肩を竦める。
「んじゃ俺もいらねえかな…」
「腹が減ってるんだろう?俺の事は気にしないで、食べれば良い」
「一人だけで飯食ったってなあ。折角お前もいるってのに」
「…そう考えてくれるのは、有難いけど」
減っていない腹に物を詰められる程、レオンは健啖家ではない。
どちらかと言えば最低限の量さえ入れておけば、余程体力を消耗するような事がなければ、一日一食でも良い位だ。
……体力の消耗については、先程までの行為でかなり消費したと言えるのだが、空腹感はまた別の問題である。
此処に至る前に夕食も済ませたし、飲み物ならともかく、今夜は固形物は入るまい。
レオンはのろのろと起き上がって、ジェクトの背中に実を寄せた。
ひた、と傷の走る額を広い背中に押し当てると、ぴくり、と逞しい体が微かに揺れて、固まる。
そのままじっとしていると、ジェクトが少し身を捩って、肩越しに此方を見ているのが判った。
「今日は偉い甘えたじゃねえか」
「そうか?」
「そうだろ。いつもそんな事して来ねえし」
「……そうだな……」
なんとなくの行動だったが、甘えているように取られているのなら、それでも良いと思った。
ジェクトの体は、前も後ろも鍛え抜かれている。
背筋の筋肉の形がしっかりと判る、ゴツゴツとした感触が掌に感じられた。
その感触を楽しむように、ジェクトの背中に触れながら、レオンは自分に触れていた男の手について思い出す。
体格に見合った、大きな手だ。
小さな子供の頭なら片手で鷲掴んで、そのまま持ち上げてしまえそうな、確りと逞しい手。
その手は握られるとかなり固く、よく然り殴られている彼の息子を見ては、無体と言えば無体な事だな、と思う事もある。
ただ、不器用ながらもその拳には精一杯の愛情が篭っており、無意味な虐待をしている訳ではない事も知っている。
だからレオンは、あまり過剰になるなよ、とジェクトを宥め、叱られた事を怒る彼の息子を宥める程度に務めていた。
その手は、レオンに触れる時、とてもゆっくりと優しく触れる。
大きさに見合わない慎重さだと初めの頃は思ったものだったが、それが自分を壊さないように、大切にする為の触れ方なのだと気付いた時、照れ臭いと同時に嬉しくなった。
この人に大切にして貰える、自分が大事な存在だと思って貰えていると感じられた時、自分でも気付かずにた胸中の空虚が埋められたような気がした。
そんな事を思い出しながらジェクトの背中を撫でていると、ふっとその背が離れて逃げた。
あ、と追うように手を伸ばそうとして、
「おい、そんなに何度も撫でるな。くすぐってえよ」
「あ……すまない」
自分でも気付かない内に、随分と没頭していたのだと気付いて、レオンは慌てて手を引っ込めた。
と、その手を大きな腕ががっしと掴み、ぐいっと力任せに引っ張られる。
うわ、とレオンが目を丸くする間もなく、レオンはジェクトの固い胸に抱き寄せられた。
「ったく、お前は本当に甘え下手だよな」
「そうか……?」
ジェクトの言葉に首を傾げながらも、まあ上手くはないよな、と思う。
弟を含め、ジェクトの息子や、その他にも年下の子供達の面倒を見るのは慣れたものだが、自分が面倒をみられる側───甘える側となると、レオンはどうして良いのか判らなくなる。
これは、幼い頃から兄としての責任感と、父子家庭で父を支えなければと言う長男としての義務感が強かった為で、レオンは自分から誰かに寄り掛かると言う方法を忘れてしまっているのだ。
ジェクトは、そんなレオンの歪な成長に気付いた、数少ない人物だった。
くしゃくしゃと大きな手がレオンの濃茶色の髪を掻き撫ぜる。
俺じゃなくて息子を撫でてやれば良いのに、とレオンは思ったが、今の息子は父の手を大人しく受け入れはするまい。
代わりに自分が触れて貰えるのだとしても、レオンは嬉しかったので、黙ってその手に撫でられていた。
抱き締められ、頭を撫でられている内に、レオンの意識はうつらうつらと揺れ始める。
眠いが、勿体ないな、と思っていると、
「おい、レオン。寝てんのか?」
「ん……いや、起きてる」
寝そうにはなったけど、と言わずにいると、そうか、と返す声。
それからレオンごとジェクトの体が傾いて、ぼすっ、とレオンは背中からベッドに落ちた。
ぎしり、とベッドのスプリングが一つ大きな音を立てたかと思うと、レオンの視界に大きな影が入って来た。
言うまでもない、ジェクトの体だ。
ただでさえ大きな躯に馬乗りにされると、中々の圧迫感と言うか、凄味があるな、と感じる。
ジェクトも多少その自覚があるようだが、かと言って身を屈めてやるとか、相手が小さな子供でもない限りは気遣うような性格でもない。
況してや、此処にいるのはレオンである。
遠慮をする必要もなければ、怯えないようにと気を遣う必要もなく、見下ろす赤い瞳には明らかな熱が灯っていた。
「ジェクト」
「なんだよ。駄目か?」
レオンが徐に名を呼べば、ジェクトは途端に不機嫌そうな顔になる。
それは強面が厳めしく見せているだけであって、見た目程機嫌が悪い訳ではない事を、レオンは知っていた。
何処か不安そうに見つめる赤い瞳に、レオンはくすりと笑って、無精髭を蓄えた頬に手を伸ばす。
「明日、朝から仕事なんだ」
「……だっけか」
「ああ」
レオンの言葉に、じゃあ駄目だな、と落胆するように赤い瞳が呟くが、レオンは小さく首を横に振る。
「だから、出来るだけ、手加減して貰えると有難い」
そう言って、レオンはジェクトの頬をそっと撫でて、厚みのある唇に自分のそれを押し当てた。
重ねるだけのそれを放せば、微かに赤らんだ顔が目の前にあって、お前なあ、とぼやく声。
悪戯をした子供のように、わざとらしく笑って見せれば、赤い瞳が仕返しをするよう笑った。
覆い被さる存在感に、食われそうだといつも思うが、不安を感じた事はない。
触れる手が与える重みと体温に、心地良さを感じながら、レオンはそっと目を閉じた。
10月8日なのでジェクト×レオンを。思い付きで。
しっぽり大人な夜を過ごす二人を書いてみたかった。