[クラ×レオ&子スコ]なぞなぞわかるかな 4
様子が可笑しいレオンに、スコールは心配そうに声をかけ続けてみるが、横から伸びて来た腕がスコールを持ち上げる。
下ろされたのは、クラウドの膝の上だった。
「クラウド。お兄ちゃん、変だよ。どうしちゃったの?」
「大人には色々あるんだ。で、まだなぞなぞやるのか?」
「やるっ」
「よし。じゃあとっておきのなぞなぞを出してやろう。スコールに解けるかな」
挑発的なクラウドの言葉に、スコールの目がきらきらと輝く。
難しい問題程、解き甲斐がある事を、スコールは既に知っているのだ。
クラウドは、そんなスコールと、俯いたまま動かないレオンを満足げに眺め、にやりと───なんとも意地の悪い───笑みを浮かべ、
「ちんちん電車から“電車”を取ると、何が残る?」
にやにやと、笑みを浮かべたクラウドの言葉に、スコールはきょとんと瞬きを一つ。
その傍らで、俯いていたレオンが頭を上げ、数秒の沈黙。
「え…え?」
「………」
「どうした?判らないか?ああ、ちんちん電車って知らないか」
「ん、んーん。知ってる。町の中を走ってる電車でしょ」
「そうだ。そのちんちん電車から“電車”を取るとどうなる?」
おろおろとし始めたスコールと、また固まって動かなくなったレオンに、クラウドは笑みを深める。
「え…んっと…んと……」
スコールは視線を右往左往させ、落ち着きなくシャツの裾を握ったり開いたりを繰り返している。
その丸い頬はほんのりと紅潮しており、眉が困ったようにハの字になっていた。
そんな弟の傍らで、レオンも視線を右往左往させていた。
口元に手を当てて考え込むその姿は、答えを必死で探しているのがよく判るのだが、彼の頬も弟と同様、ほんのりと赤らんでいる。
それを見付けたクラウドは、にやにやと笑みを浮かべながらレオンに近付き、
「どうした、レオン。顔が赤いぞ」
「な……だ、れの所為だとっ…!」
「ん?誰の所為だ?さっぱり判らないな。俺はなぞなぞを出しただけだから」
「だから、そのなぞなぞが……」
「なぞなぞが原因?じゃあ、レオンはなぞなぞの答えが判ったんだな?」
ずいずいと顔を近付けてくるクラウドに、レオンが逃げるように仰け反る。
「なんだ?言ってみろ。判ったんだろ?」
「いや、その…、」
赤い顔で口籠るレオンに、クラウドが更に迫る。
その傍らで、スコールが兄と同じように赤い顔でもじもじと手遊びしている。
「なんだ、スコールも判ったのか?」
「え、ん……う、ん、……たぶん……、ん、んとね…」
「待て。スコールはさっき答えたからな。今度はレオンに先に答えさせてやろう」
「なっ…!」
クラウドの言葉に、レオンが絶句する。
ふざけるな、と怒鳴りかけたレオンだったが、じっと見上げる丸い青灰色に気付いて、言葉を失う。
赤い顔で、縋るように見つめる弟は、兄の答えを聞く事で、自分の答えに確信を持ちたいのだろう。
兄ならば、きっと正しい答えを教えてくれる筈だと信じて。
弟から寄せられる無心の信頼と期待の眼差しが、今初めて、レオンには怖かった。
じっと見つめる蒼灰色の瞳から逃げたくて、けれど、弟の信頼を裏切るなどレオンに出来る筈もなく、言葉を失ったままフリーズするしかない。
そんな中、金髪の男はにやにやと意地の悪い笑みを浮かべているはかり。
「判らないのか?レオン。お前には簡単ななぞなぞだと思ったんだが」
「…お、お前、な…!」
「ほら、レオン。なぞなぞの答え、スコールに教えてやらないと」
怒りと、それとはまた別の感情で体を震わせる兄を、スコールが心配そうに見上げている。
弟にいつまでもそんな顔をさせている訳には行かない。
しかし─────しかし。
ぐるぐると考えていたレオンだったが、クラウドは問題を切り上げる気がないと悟ると、腹を括る事に決めた。
こういう事は、下手に躊躇うから駄目なのだ。
一言、さらりと言ってしまえば、それで終わり。
終わりになる。
────と言う旨を、延々と自分自身に言い聞かせた末、
「……………………ち…………ちん、ちん……………………」
消え入りそうな声で呟くのが、レオンの精一杯だった。
クラウドの出したなぞなぞが、問題内容に反して普通の答えばかりだったから、ひょっとして今回も引っ掛けではないのかと思ったのだが、可笑しな答えの問題も混じっていたし……と、延々と考えていたレオンだったが、どう考えても、この答え意外思い付かない。
答えを言わないと解放してくれそうにないので、止むを得ず腹を括ったが、やはり恥ずかしい、と言うかいっそ死んでしまいたい。
何が悲しくて、25歳の男がこんな言葉を吐かねばならないのか。
レオンは本気でそう思っていた。
頭に薬缶を乗せたら沸騰するのではないかと思う程、レオンの顔は赤くなっている。
そんな兄を見て、スコールは更に真っ赤になっていた。
「成る程、それがレオンの答えか。じゃあスコール、お前は?」
「ふぇっ」
矛先を向けられて、スコールがびくっと跳ね上がった。
あう、あう、と赤い顔で口をぱくぱくさせるスコールに、可愛いな、とクラウドは独り言ちる。
「えっ、えっと…、……お、お兄ちゃんと、いっしょ…」
「その答え方はずるいぞ、スコール。ちゃんと自分で言うんだ」
「ふえ、えっ、…ん、んと…」
クラウドの意地の悪い言葉に、スコールはおろおろと戸惑う。
助けを求めて兄を伺うが、レオンは先の自分の発言で深いダメージを負って立ち直れずにいる。
自分の答えは、自分できちんと口にしなければいけない。
至極真面目な顔で言うクラウドに、スコールも「そうかも…」と思いつつあった。
「ん…んと………えっと、じゃあ、言う、ね」
「ああ」
「……ち、…ちん、ちん…?」
おずおずと言ったスコールの声は、兄と同じように、聞き逃しそうな程に小さい。
クラウドはん?と耳を欹てるように傾けて見せ、
「ちょっと聞こえなかったな。もう少し大きい声で言ってくれ」
「だ、だから………ちんちん…………でしょ…?」
「まだ聞こえないな」
「う、あう………………………………………う…………」
じわあ、と青灰色の瞳に浮かび上がる雫。
それを見て、あ、不味い、とクラウドは思ったが、時既に遅く、
「いい加減にしろ、この変態!!!」
怒号と共に回し蹴りがクラウドの頭部を蹴り飛ばし、クラウドはきゅりきゅりときりもみしながらベッドから吹き飛ぶ。
レオンは真っ赤な顔でぐすぐすと泣きじゃくる弟を抱き上げて、フローリングに倒れている男を睨み付けた。
「悪ふざけもセクハラも大概にしろ!」
「痛……人聞きの悪い…誰もセクハラなんかしてないぞ」
「何処がだ!あ、あんな問題…なぞなぞでも何でもないだろう!」
怒り心頭にクラウドを睨み付けるレオンだったが、その顔は未だに赤らんでおり、いまいち迫力に欠ける。
そうでなくとも、クラウドに彼の睨みが効いたかどうかは、怪しい所だったが。
クラウドは全力で蹴り飛ばされた後頭部を摩りながら起き上ると、兄弟揃って真っ赤になっている二人を見上げ、
「さっきのなぞなぞのお前達の答えなんだがな。二人とも“ちんちん”で良いんだな?」
改めて言われ、レオンの眦が吊り上がり、スコール隠れ場所を求めるように兄にしがみ付く。
いい加減にしろよ、と怒鳴りかけたレオンだったが、
「残念ながら、間違いだ」
「……は?」
「答えは“線路と駅”。走る電車がなくなったら、それしか残らないだろ?」
クラウドの言葉に、レオンとスコールはぽかんとした表情で口を開けている。
ぱち、ぱち、と二人同じタイミングで瞬きを繰り返す兄弟の表情に、レアだな、とクラウドは思った。
そのままいつまでも固まっていそうな二人に、クラウドはにやりと何度目か知れない意地の悪い笑みを浮かべ、
「こんな問題に、どうして二人とも恥ずかしがってたんだ。それも答えが“ちんちん”なんて下ネタだとは。全く、二人ともいやらしいな。これは俺も相応に応えてやらないといけ」
──────クラウドが最後まで言葉を紡ぐ事はなく。
二発目の回し蹴りで寝室を追い出された彼は、それから一週間、兄弟と寝所を共にさせて貰えなかった。
下ネタなぞなぞでクラウドがセクハラすると言うネタを頂きました。
レオンさんだけでなく子スコまで餌食です。けしからん。羨ましい←え?