ClaimhSolais 14
ファンタジーRPGパラレルの第十四話です。
やっと三人がまともに向き合いました。
01~10
11 12 13
やっと三人がまともに向き合いました。
01~10
11 12 13
ClaimhSolais 14
あそこの子達よ、とアンジーが指差したのは、此方────龍麻と葵のいるテーブルだった。
剣士が倣って振り返り、尖り勝ちの双眸が二人へと向けられる。
剣士はふうん、と一つ納得したように漏らすと、野菜炒めの皿を空にし、水を一気に飲み干してから立ち上がった。
ゴツゴツと、剣士の足元から硬い音。
それが近付いて来る毎に、龍麻の前に座った葵から緊張の空気が伝わった。
剣士は、正直に言って、目付きが悪い。
葵はそれと真正面から相対するのが怖いのか、ちらちらと彼の方を伺いはするものの、視線はずっと彷徨っている。
代わりに彼の目と真っ直ぐにぶつかっていたのが、龍麻の蒼い瞳であった。
テーブルの真横まで来て、剣士が僅かに腰を折って、自分の客らしき人間をじろじろと眺め、
「さっきから妙にジロジロ見る奴がいると思ってたが、お前ェか?」
「……うん、多分」
彼を見ていたのは龍麻一人ではない。
ないが、先刻からの様子から察するに、剣士が此処にいるのは当たり前の光景なのだろう。
同じく剣士に向けられる店内の客の視線も、きっと気にする程の事でもないのだ。
そんな中でイレギュラーなのが、昨日町に着いたばかりの龍麻と葵である。
剣士が改めて気に留めるようなものは、それ位しかなかった。
質問────と言うより確認に近い言葉に、龍麻は素直に頷いた。
じっと観察していた自覚もある。
剣士はじっと龍麻を見詰めた後、その向かいで縮こまっている葵へと目を向けた。
「見ねェ面だな」
「昨日からいるんスよ」
「ふーん。で、オレになんの用だ?」
吾妻橋の言葉に質素な感想を返して、剣士はまた龍麻へと視線を戻した。
しかしそう問われても、龍麻はなんと答えて良いか判らない。
そもそも、葵が託宣で見た“刀使いの剣士”が彼だと言う確証もない。
「えっと……美里さん」
「はッ、はいッ?」
とにかく葵に確認して貰わなければ。
そう思って呼んでみると、葵は大袈裟な程に全身を跳ね上がらせて返事をした。
「美里さんが探してたのって、この人で合ってる?」
「え、えっと…えっと……」
龍麻に言われて、葵は慌てて剣士の姿を確認する。
褪せた大地のような赤茶の混じった癖ッ毛の髪。
昨日帰った時に見に付けていたマントはなく、袖のない服の上に丈の短いジャケットベストを着ている。
黒いボトムに、足元は濃紺色のブーツで、先程から苛々しているのを表すように、爪先をゴツゴツと鳴らしていた。
ベルトに通されているのは、刀は刀でも、木刀。
柄部分に赤い布が巻き付けられ、柄頭には赤い羽根飾りが取り付けられていた。
顔立ちは整っているが、目尻の険が鋭い所為だろう、決して人当たりは良さそうに見えない。
年の頃は────恐らくだが、龍麻や葵とそう変わらないのではないだろうか。
上から下まで検分するように見られていると気付いてか、剣士の眉間に深い谷が生まれた。
葵は幸か不幸か、それに気付いていないようで、剣士を見ては視線を上に寄せてヴィジョンを思い出そうと試みている。
それからたっぷり一分、二分と時間が経って、
「……あ、の……えっと……ごめん、なさい……」
告げられた言葉に、なんだそりゃ、と剣士が嘆息した。
「人間違いかよ」
「ち、違うんです。その、あの、……判らなく、て」
剣士の言葉に慌てて弁明しようとした葵だったが、出て来た言葉はそんなものだった。
案の定、その言葉は益々剣士を不機嫌にさせる。
「はあ?」
「その、あの、私、たく─────」
「その子も依頼されて探してるらしいんだけどね。それがまた、曖昧な情報しか持たされてないのさ」
葵の言葉を遮ったのは、カウンターの向こうにいたママだった。
グラスを拭きながらの言葉に、剣士は呆れたように溜息を吐く。
「なんでェ、そりゃ。お前、揶揄われたんじゃねェのか。っつーかそんな依頼受けてんじゃねェよ」
「え、いえ、あの、あの、」
「お前がしっかりしろよ。お守りなんだろ」
矛先が龍麻に向けられた。
お守り────ではないのだけれど、護衛も兼ねているのは確かなので、正直否定出来ない。
とは言え、本人の目の前でそれを肯定するのも気が引けて、龍麻は曖昧に笑って誤魔化したのだった。
言われたばっかりなのに危機感が足りない葵。
あそこの子達よ、とアンジーが指差したのは、此方────龍麻と葵のいるテーブルだった。
剣士が倣って振り返り、尖り勝ちの双眸が二人へと向けられる。
剣士はふうん、と一つ納得したように漏らすと、野菜炒めの皿を空にし、水を一気に飲み干してから立ち上がった。
ゴツゴツと、剣士の足元から硬い音。
それが近付いて来る毎に、龍麻の前に座った葵から緊張の空気が伝わった。
剣士は、正直に言って、目付きが悪い。
葵はそれと真正面から相対するのが怖いのか、ちらちらと彼の方を伺いはするものの、視線はずっと彷徨っている。
代わりに彼の目と真っ直ぐにぶつかっていたのが、龍麻の蒼い瞳であった。
テーブルの真横まで来て、剣士が僅かに腰を折って、自分の客らしき人間をじろじろと眺め、
「さっきから妙にジロジロ見る奴がいると思ってたが、お前ェか?」
「……うん、多分」
彼を見ていたのは龍麻一人ではない。
ないが、先刻からの様子から察するに、剣士が此処にいるのは当たり前の光景なのだろう。
同じく剣士に向けられる店内の客の視線も、きっと気にする程の事でもないのだ。
そんな中でイレギュラーなのが、昨日町に着いたばかりの龍麻と葵である。
剣士が改めて気に留めるようなものは、それ位しかなかった。
質問────と言うより確認に近い言葉に、龍麻は素直に頷いた。
じっと観察していた自覚もある。
剣士はじっと龍麻を見詰めた後、その向かいで縮こまっている葵へと目を向けた。
「見ねェ面だな」
「昨日からいるんスよ」
「ふーん。で、オレになんの用だ?」
吾妻橋の言葉に質素な感想を返して、剣士はまた龍麻へと視線を戻した。
しかしそう問われても、龍麻はなんと答えて良いか判らない。
そもそも、葵が託宣で見た“刀使いの剣士”が彼だと言う確証もない。
「えっと……美里さん」
「はッ、はいッ?」
とにかく葵に確認して貰わなければ。
そう思って呼んでみると、葵は大袈裟な程に全身を跳ね上がらせて返事をした。
「美里さんが探してたのって、この人で合ってる?」
「え、えっと…えっと……」
龍麻に言われて、葵は慌てて剣士の姿を確認する。
褪せた大地のような赤茶の混じった癖ッ毛の髪。
昨日帰った時に見に付けていたマントはなく、袖のない服の上に丈の短いジャケットベストを着ている。
黒いボトムに、足元は濃紺色のブーツで、先程から苛々しているのを表すように、爪先をゴツゴツと鳴らしていた。
ベルトに通されているのは、刀は刀でも、木刀。
柄部分に赤い布が巻き付けられ、柄頭には赤い羽根飾りが取り付けられていた。
顔立ちは整っているが、目尻の険が鋭い所為だろう、決して人当たりは良さそうに見えない。
年の頃は────恐らくだが、龍麻や葵とそう変わらないのではないだろうか。
上から下まで検分するように見られていると気付いてか、剣士の眉間に深い谷が生まれた。
葵は幸か不幸か、それに気付いていないようで、剣士を見ては視線を上に寄せてヴィジョンを思い出そうと試みている。
それからたっぷり一分、二分と時間が経って、
「……あ、の……えっと……ごめん、なさい……」
告げられた言葉に、なんだそりゃ、と剣士が嘆息した。
「人間違いかよ」
「ち、違うんです。その、あの、……判らなく、て」
剣士の言葉に慌てて弁明しようとした葵だったが、出て来た言葉はそんなものだった。
案の定、その言葉は益々剣士を不機嫌にさせる。
「はあ?」
「その、あの、私、たく─────」
「その子も依頼されて探してるらしいんだけどね。それがまた、曖昧な情報しか持たされてないのさ」
葵の言葉を遮ったのは、カウンターの向こうにいたママだった。
グラスを拭きながらの言葉に、剣士は呆れたように溜息を吐く。
「なんでェ、そりゃ。お前、揶揄われたんじゃねェのか。っつーかそんな依頼受けてんじゃねェよ」
「え、いえ、あの、あの、」
「お前がしっかりしろよ。お守りなんだろ」
矛先が龍麻に向けられた。
お守り────ではないのだけれど、護衛も兼ねているのは確かなので、正直否定出来ない。
とは言え、本人の目の前でそれを肯定するのも気が引けて、龍麻は曖昧に笑って誤魔化したのだった。
言われたばっかりなのに危機感が足りない葵。