[レオスコ]鐘の音は聞こえない
遠く響く除夜の鐘を聞いて、年が明けた事を知った。
「…レ、オン……レオン…」
「……ん?」
熱の余韻を残す体を寄り添わせ、うとうとと舟を漕いでいたレオンだったが、スコールの呼ぶ声に目を開ける。
スコールは、レオンの腕の中で彼の胸に頬を当てていたのだが、眠い目を擦りながら顔を上げた。
幼さを残す愛しい面立ちに手を添えれば、スコールは猫のように目を細めた。
「年、明けたみたいだ……」
「…そうだな」
頬を撫でる手に、気持ち良さそうにふわふわとしながら言ったスコールに、レオンも頷いた。
今頃、リビングに放置した二人の携帯電話には、沢山の新年のメールが届いている事だろう。
返事をしないと、とスコールは思ったが、体の気だるさの方が意識を傾けていて、起き上がる気にならない。
何より、リビングに行く為には、この温かいベッドから抜け出さなくてはならなかった。
寝室の暖房はタイマーをつけて稼働させており、切れるまでにはまだ一時間程度の余裕はあるだろう。
しかし、布団の中に比べれば幾許か気温が低い事は明らかだし、何より、背中に回された腕や、密着した体から伝わる体温から離れたくなくて、スコールは携帯電話の賑やかさには気付かない振りをした。
レオンもそれは似たようなもので、仕事絡みで必要な所には事前に予約送信できるようにセットし、プライベートについては朝になってからで良いと割り切っている。
そんなものよりも、今は目の前にいる恋人だ。
スコールは毛布の隙間から滑り込んでくる冷気を嫌うように、レオンの体にぴったりと身を寄せた。
普段、自ら進んで密着する事のないスコールの甘え振りに、寝惚けているな、とレオンはくすりと笑う。
「初詣は、明日行こうな」
「……ん」
「大きな所は人が多いから、小さな所の方が良いか?」
「…そう、だな……」
耳に心地よい声で囁かれるレオンの言葉に、スコールは聞きいるように目を閉じていた。
レオンは、そんなスコールの耳の裏をくすぐって、猫みたいだな、と思う。
「ティーダ達とは一緒に行く約束はしてないのか?」
「……あいつらは、三日に行くって言ってた…」
「三日か。天気予報じゃ今日より気温が下がるらしいから、風邪をひかないように、ちゃんと厚着して行くんだぞ」
「判ってる。あいつらと違って、俺は子供じゃない…」
言い聞かせるように言うレオンに、スコールは唇を尖らせた。
上目で睨むスコールを見て、レオンはそうだな、と頷き、
「それもそうだ。お前が子供なら、こんな事はしないからな」
「んっ……!」
スコールの背中を抱いていた腕が、する、と細い腰を撫でる。
熱と痺れの余韻を残している場所に触れられて、スコールの喉から甘い音が零れた。
つう、と腰骨をくすぐる指先に、スコールはふるふると体を震わせ、レオンの体に縋り付く。
「レオン……っ」
「まだ少し感覚が残っているか?」
「……あ……っ」
レオンの手が不埒な場所に触れるのを感じて、スコールの背がびくっと反り返る。
ついさっきまで繋がっていた其処は、レオンの言う通り、彼の熱の名残を今も残していた。
自覚するとその感覚は尚更はっきりとしたものになり、スコールは赤い顔を隠すように、レオンの胸に頬を押し付ける。
レオンの手は益々悪戯さを増して、頬を撫でていた手が、首の後ろへと滑る。
髪の生え際を擦るようにくすぐると、スコールは肩を縮こまらせてピクッ、ピクッ、と反応を示す。
「レオン…や…ぁ……っ」
「続き、するか?」
眠気なんて飛んでしまった、と囁くレオン。
耳朶を甘く噛まれて、スコールの喉がひくっと震える。
レオンに縋り付く腕に力が篭り、甘えるように細い肢体が寄せられる。
太腿に押し付けられた熱の感触に、レオンは薄らと笑みを浮かべて、スコールの耳の下にキスをした。
ちゅ、とわざとらしく音を立てれば、スコールの頬に朱が上る。
「一回、だけ……」
「ああ。一回だけ、な」
ねだるように言ったスコールに、レオンは頷いた。
足の付け根を撫でていた手を動かして、双丘の谷間をなぞる。
ビクッ、とスコールの体が逃げを打ったが、抱き締める男の腕から抜け出す力はない。
耳元で聞こえる恋人の呼吸が、全ての意識を浚って行く。
愛しい熱を溶かし合うように身を寄せて、それだけを頼りに目を閉じる。
遠く響く鐘の音は、とっくに意識の外に追い出されていた。
新年あけましておめでとうございます!
と言う訳で年始早々からいちゃいちゃしているレオスコでした。煩悩欲望なんてどうせ消えやしないんだ。末永く爆発して下さい。
昨年は色々ありましたが、今年は心機一転して頑張ります。
色々書くぞぉー(と言っといて空回りする予感大)。