[サイ→スコ♀]青春賛歌
サイファー→スコール♀で現代パロディ。
スコールの姉にレオン♀がいます。
発育と言うものは、人によって様々だ。
誰が背が高い背が低い、足が速い遅い、字を何歳から書けるようになった、等々。
形を問わず、それは色々な場面に現れては、身近に比べる対象がある事で、その差を良し悪しきに関わらず突き付けられる事になる。
その差が最も大きく出るのは幼い内である事が多いだろう。
幼子一人一人の感性や、何に興味を持つか、それを伸ばす環境があるか。
身体的特徴もまた幅広く、あの子はもう歩いている、あの子はまだ立てない、あの頃にはあの子はもう───と親の期待と不安も入り混じる。
が、それぞれの差はあれど、大抵は一定の所まで平均的に伸びて行くもので、また其処から更に伸びしろも様々で、気付いた時には身長差が逆転していたと言うのも儘ある話だった。
これは血の繋がった兄弟姉妹にも当て嵌まる。
同じ血を分けているからと言って、何もかもが似る事はない。
スコールとレオンの姉妹は、顔こそ母親似であると共通している事もあってよく似ているが、目に見て判る体つきは違っていた。
スコールは今年17歳になった高校生である。
姉のレオンとは8歳の年齢差があり、彼女はとうに社会人として自立している。
大学まで進んで、教員免許を取得して無事に卒業を果たした彼女は、スコールが高校に入学すると同時に、妹の学校の教員になった。
お互いにそうしようと狙った訳ではなかったので、入学式初日に顔を合わせた時には驚いたものだ。
真新しいセーラー服と、新品のスーツに身を包んで、父に強請られて二人並んで校門で写真を撮った時には、妙に気恥ずかしかったが、良い思い出だ。
それぞれの立場で始まった新しい生活は、一年間で大分慣れる事が出来た。
普段、学校では“教師と生徒”である事を念頭に置いた距離を保つようにと努めている二人だが、昼休憩の時間など、二人で過ごす時は“姉と妹”に戻る事もある。
新生活が始まったばかりの頃、神経質なスコールはストレスを溜め勝ちだったが、レオンがいたお陰で息抜きする事も出来た。
また、レオンの方も、今時の高校生が何を思い、何に夢中になるのかを、妹から聞いて、生徒達との距離を縮める事に成功したそうだ。
レオンとスコールが姉妹である事は、校内でもよく知られている。
互いに隠している訳ではなかったし、年齢差のお陰で他者から間違えられる事は少ないものの、一目で姉妹であると判る容姿だ。
スコールと共に入学した幼馴染達もよく知っている間柄であったから、二人の事は瞬く間に知れ渡った。
その所為か、初めの頃は二人が一緒にいると、何かと人目を引いてしまい、スコールが辟易する場面もあったのだが、徐々に周りも見慣れるようになると、それも落ち着いた。
スコールが二年生になる頃には、新入生を覗けば二人を気にする者もいなくなり、日々は問題なく回っている。
時折、スコールがレオンに授業の準備の手伝いを頼まれたり、スコールからレオンに教員の手として協力を仰いだりと言う場面も見られるようになり、“教師と生徒”の“姉と妹”と言う存在も、今ではすっかり学校に馴染んでいた。
このように、姉妹はとても仲が良い事で知られている。
その為か、毎日と言う訳でもないが、頻繁に二人が揃っている場面も目撃されていた。
だからなのか、姉妹でよく似た二人だが、あまり“似ていない”部分と言うのも、目立つようになっている。
特に身体的特徴は、顕著な違いが見られる所があり、スコールはここしばらく、ずっとそれを気にしていた。
────昼休憩を終えたスコールが教室に戻ろうと廊下を歩いていると、突き当たりの階段の前に姉の姿があった。
話をしているのは男子生徒で、授業の質問にでも答えているのか、レオンは真面目な表情をしている。
答えを探すように考える彼女の前で、男子生徒の視線はちらちらと怪しい動きをしていた。
その視線の先にあるのは、レオンのたわわに育った豊乳だ。
(………)
レオンの胸を見詰めていたスコールの視線が、下へと落ちて、真っ直ぐに布が落ちている胸元を見て、眉根が寄る。
(別に……)
スコールの小さな唇が尖るように突き出され、拗ねた表情になる。
別に大したことじゃない、だからどうって事じゃない。
胸中でそんな呟きを繰り返すのは、これで何回目になるだろうか、とそんな事を考えるとより惨めな気分になって来る。
まだ成長期である自分と、もう大人の体として完成している姉を比べても仕方がない。
そう思いもするが、でも彼女が高校生の時には、と写真好きの父のお陰で残っている沢山のアルバムの中身を思い出して、スコールの眉間の皺は益々深くなった。
子供の頃から気にしていた訳ではない。
レオンは昔からプロポーションが良く、身長だけで言えば少し大きく、男性と並んでも“格好良い”と形容される位にしっかりと整っている。
昨今の痩せぎすである事を良しとするような風潮のあるグラビアとは違い、適度に引き締まった肉と脂肪があって、海外広告モデルに見るようなバランス体型をしていた。
特に人目を引くのは、やはり豊かに育った胸元で、男は勿論、女子生徒も彼女の大きく形の良い胸に憧れる者は多い。
スコールはと言うと、気になる事がない訳ではなかったが、特別に引っ掛かる事でもなかったのは確かだ。
それなのに、最近になってやたらとスコールがレオンの其処に注目してしまうのは─────
「何やってんだ、お前」
背中にかけられた声の主を、スコールは振り返らなくても理解した。
理解して、二本だった眉間の皺が三本になって、口がへの字に曲がる。
後ろから近付いてきた気配が隣に並んで、スコールが見ているものを見付ける。
「またお姉ちゃんか」
「……」
「いつまで経っても姉貴離れしねえな、お前」
ガキ、と言われているような気がして、スコールの目に険が籠る。
しかし隣に立つ男───幼馴染のサイファー・アルマシーは、スコールのそんな視線など物ともしない。
サイファーはしばらくレオンを見詰めた後、隣の少女を見た。
最初は顔を見ていた碧の瞳が、顔のパーツを確認した後、降りて行く。
じろじろと無遠慮な視線に、スコールはデリカシーってものを知らないのか、と言ってやりたかった。
言った所で、知ってるけどお前には必要ないだろう、と宣うのが想像できて、忌々しさが増す。
廊下の向こうで生徒と話していたレオンが、男子生徒に別れを告げる。
次の授業の準備の為に移動しようとして、レオンは妹が此方を見ている事に気付いた。
ひら、と手を振る彼女の表情は嬉しそうで、自分を慕う妹が可愛くて仕方ない、と言う様子が、妹当人からも感じ取れた。
それから妹の隣に立っている男子生徒を見て、喧嘩はしていないのか、と視線で問う。
今の所は特に何もないので、スコールは右手を上げて返事をするだけに留めた。
レオンは少し心配そうに此方を見詰めていたが、迫る時間もあって、階段を下りて行った。
保護者の姿がなくなると、くつくつと隣で笑う気配がした。
何か言いたい事でもあるのかと、スコールが隣を睨むと、彼女の体のある一点を見詰めながら、サイファーは薄い笑みを浮かべて言った。
「育たねえな、お前」
「……」
「レオンと大違いだ」
「……煩い」
やっぱりそれか、とスコールは米神に青筋を浮かべる。
もう何度も聞いた言葉でも、やはり腹が立つのは変わらない。
「レオンは中学位の時にはでかかったのに」
「……レオンが中学生の時、あんた子供だっただろ。そんな頃から、そんな所ばっかり見てるのか」
最低だ、と睨むスコールに、サイファーは肩を竦めた。
「あんだけでかけりゃ、見ようとしなくたって見えるだろ」
「見てても見ないようにするのが配慮ってものだろう」
「丸くてでかいもんがありゃ追い駆けるのが男の性ってもんだ。仕方ねえ。追われるモンも持ってないお前にゃ判らねえだろうけどな」
にやにやと、明らかに馬鹿にした表情で言うサイファーに、スコールの平手が飛んだ。
が、それが標的の頬を打つ前に、サイファーの手がスコールの手首を掴む。
ぎりぎりと悔しさに歯噛みして睨むスコールを、サイファーは笑みを浮かべて見下ろしている。
一触即発、何なら既に爆発した後と言う雰囲気の二人を、周囲は遠巻きに見ながら、触れないようにと通り過ぎている。
スコールとサイファーのこうした遣り取りは、生徒達にとって見慣れたものなのだ。
これに下手に近付くと要らぬ煽りを被るので、大抵の生徒は見て見ぬふりをしてくれる。
が、スコールは一度で良いから糾弾されれば良いのに、とデリカシーゼロの男を睨みながら常々思う。
手首を掴む手が離れて、スコールは腕を引いた。
一発食らわせられなかったのは癪だったが、自分が騒ぎを起こせば、姉に迷惑がかかる。
これ以上不快な思いをしない内に、自分の教室に戻ろう、と思った所に、サイファーは言った。
「羨ましいんなら、俺が育ててやろうか」
「………は?」
スコールの声がワントーン低くなり、睨む目に冷たいものが浮かぶ。
大抵の生徒なら、それを見て地雷を踏んだと悟り、いそいそと逃げて行くのだが、サイファーは地雷を自ら踏み抜きに来た。
「揉んだら大きくなるって言うじゃねえか。胸」
「………」
「ない乳でもちゃんと育ててやれば、変わるかも知れねえだろ」
ヒュン、と風を切る音が鳴って、スコールの手がサイファーの顔を狙う。
だが、これもまた予想済みだと、サイファーはスコールの手首を掴んで阻止した。
直後に、スコールの膝がサイファーの窮鼠を抉る。
「うげ……っ…!てめ……っ、」
「ふん」
無防備だった腹に痛烈な一撃を食らい蹲るサイファーを、スコールは一瞥してスカートを翻し、すたすたと歩き去って行った。
スコールが立ち去った後も、サイファーはしばらく動けなかった。
的確に人体の急所を撃ち抜く一発に、昼飯が食えなくなったらどうするんだ、と思うサイファーだが、しかしこの醜態は自業自得である事も判っている。
スコールの性格や日頃何を気にしているか、彼女以上に理解していながら、嫌な所を意図的に突いたのだから。
鈍い苦痛を発信する腹を抱えて、よろよろとサイファーは自分の教室に戻る。
次の授業が億劫で、何処かでサボってしまおうかと考えていると、
「見てたよ、サイファー」
かけられた声に顔を上げれば、幼馴染で同級生のアーヴァインがいた。
面倒なのに見付かった、と顔を顰めるサイファーに構わず、アーヴァインはやれやれと判り易く呆れた表情を浮かべる。
「綺麗に貰ったねえ。原因については訊かないけど。大体想像できるから」
「煩ぇ。引っ込んでろ」
「なんでそんなに意地悪ばかりするんだろうね」
「お前にゃ関係ねえだろ」
「あるよ~。セフィからも相談されてるんだもの。サイファーがスコールに意地悪ばかりするからなんとかして~って」
サイファーの一つ下で、スコールと同級生の幼馴染の名前が出て来て、サイファーは溜息を吐く。
セフィ───セルフィが絡むと、彼女に惚れているアーヴァインは、とかく彼女の為にと能動的になるので厄介だ。
構うだけ鬱陶しくなるだけだと、サイファーはさっさと退散する事にした。
まだ痛む腹を摩って宥めながら、入ったばかりの教室を出て行くサイファーを、アーヴァインは無言で見送る。
そして彼の姿が見えなくなると、机二つを挟んだ向こうの席に座っている眼鏡の幼馴染に声をかけた。
「ねえ、キスティ。どうしてサイファーはスコールにあんなに意地悪なんだろうね」
「子供なのよ」
きっぱりと言い切る幼馴染に、やっぱりねえ、とアーヴァインも同意するしかないのだった。
『レオン♀の巨乳に憧れるスコール♀と、そんなスコール♀が好きなのに、貧乳貧乳と揶揄ってしまうサイファーなサイ→スコ』のリクを頂きました。
踏んではいけない場所を自分から踏みに行って、スコールに嫌われるサイファー。ザ・男子高校生だと思います。
スコールはきっと他の生徒に言われるなら、腹は立ってもそんなに気にしない。下世話な奴が勝手に言っているだけだから。
元々の憧れも込みで、サイファーに言われるから余計に気になってるんだけど、その理由についてはまだ気付いていません。
スコールの姉にレオン♀がいます。
発育と言うものは、人によって様々だ。
誰が背が高い背が低い、足が速い遅い、字を何歳から書けるようになった、等々。
形を問わず、それは色々な場面に現れては、身近に比べる対象がある事で、その差を良し悪しきに関わらず突き付けられる事になる。
その差が最も大きく出るのは幼い内である事が多いだろう。
幼子一人一人の感性や、何に興味を持つか、それを伸ばす環境があるか。
身体的特徴もまた幅広く、あの子はもう歩いている、あの子はまだ立てない、あの頃にはあの子はもう───と親の期待と不安も入り混じる。
が、それぞれの差はあれど、大抵は一定の所まで平均的に伸びて行くもので、また其処から更に伸びしろも様々で、気付いた時には身長差が逆転していたと言うのも儘ある話だった。
これは血の繋がった兄弟姉妹にも当て嵌まる。
同じ血を分けているからと言って、何もかもが似る事はない。
スコールとレオンの姉妹は、顔こそ母親似であると共通している事もあってよく似ているが、目に見て判る体つきは違っていた。
スコールは今年17歳になった高校生である。
姉のレオンとは8歳の年齢差があり、彼女はとうに社会人として自立している。
大学まで進んで、教員免許を取得して無事に卒業を果たした彼女は、スコールが高校に入学すると同時に、妹の学校の教員になった。
お互いにそうしようと狙った訳ではなかったので、入学式初日に顔を合わせた時には驚いたものだ。
真新しいセーラー服と、新品のスーツに身を包んで、父に強請られて二人並んで校門で写真を撮った時には、妙に気恥ずかしかったが、良い思い出だ。
それぞれの立場で始まった新しい生活は、一年間で大分慣れる事が出来た。
普段、学校では“教師と生徒”である事を念頭に置いた距離を保つようにと努めている二人だが、昼休憩の時間など、二人で過ごす時は“姉と妹”に戻る事もある。
新生活が始まったばかりの頃、神経質なスコールはストレスを溜め勝ちだったが、レオンがいたお陰で息抜きする事も出来た。
また、レオンの方も、今時の高校生が何を思い、何に夢中になるのかを、妹から聞いて、生徒達との距離を縮める事に成功したそうだ。
レオンとスコールが姉妹である事は、校内でもよく知られている。
互いに隠している訳ではなかったし、年齢差のお陰で他者から間違えられる事は少ないものの、一目で姉妹であると判る容姿だ。
スコールと共に入学した幼馴染達もよく知っている間柄であったから、二人の事は瞬く間に知れ渡った。
その所為か、初めの頃は二人が一緒にいると、何かと人目を引いてしまい、スコールが辟易する場面もあったのだが、徐々に周りも見慣れるようになると、それも落ち着いた。
スコールが二年生になる頃には、新入生を覗けば二人を気にする者もいなくなり、日々は問題なく回っている。
時折、スコールがレオンに授業の準備の手伝いを頼まれたり、スコールからレオンに教員の手として協力を仰いだりと言う場面も見られるようになり、“教師と生徒”の“姉と妹”と言う存在も、今ではすっかり学校に馴染んでいた。
このように、姉妹はとても仲が良い事で知られている。
その為か、毎日と言う訳でもないが、頻繁に二人が揃っている場面も目撃されていた。
だからなのか、姉妹でよく似た二人だが、あまり“似ていない”部分と言うのも、目立つようになっている。
特に身体的特徴は、顕著な違いが見られる所があり、スコールはここしばらく、ずっとそれを気にしていた。
────昼休憩を終えたスコールが教室に戻ろうと廊下を歩いていると、突き当たりの階段の前に姉の姿があった。
話をしているのは男子生徒で、授業の質問にでも答えているのか、レオンは真面目な表情をしている。
答えを探すように考える彼女の前で、男子生徒の視線はちらちらと怪しい動きをしていた。
その視線の先にあるのは、レオンのたわわに育った豊乳だ。
(………)
レオンの胸を見詰めていたスコールの視線が、下へと落ちて、真っ直ぐに布が落ちている胸元を見て、眉根が寄る。
(別に……)
スコールの小さな唇が尖るように突き出され、拗ねた表情になる。
別に大したことじゃない、だからどうって事じゃない。
胸中でそんな呟きを繰り返すのは、これで何回目になるだろうか、とそんな事を考えるとより惨めな気分になって来る。
まだ成長期である自分と、もう大人の体として完成している姉を比べても仕方がない。
そう思いもするが、でも彼女が高校生の時には、と写真好きの父のお陰で残っている沢山のアルバムの中身を思い出して、スコールの眉間の皺は益々深くなった。
子供の頃から気にしていた訳ではない。
レオンは昔からプロポーションが良く、身長だけで言えば少し大きく、男性と並んでも“格好良い”と形容される位にしっかりと整っている。
昨今の痩せぎすである事を良しとするような風潮のあるグラビアとは違い、適度に引き締まった肉と脂肪があって、海外広告モデルに見るようなバランス体型をしていた。
特に人目を引くのは、やはり豊かに育った胸元で、男は勿論、女子生徒も彼女の大きく形の良い胸に憧れる者は多い。
スコールはと言うと、気になる事がない訳ではなかったが、特別に引っ掛かる事でもなかったのは確かだ。
それなのに、最近になってやたらとスコールがレオンの其処に注目してしまうのは─────
「何やってんだ、お前」
背中にかけられた声の主を、スコールは振り返らなくても理解した。
理解して、二本だった眉間の皺が三本になって、口がへの字に曲がる。
後ろから近付いてきた気配が隣に並んで、スコールが見ているものを見付ける。
「またお姉ちゃんか」
「……」
「いつまで経っても姉貴離れしねえな、お前」
ガキ、と言われているような気がして、スコールの目に険が籠る。
しかし隣に立つ男───幼馴染のサイファー・アルマシーは、スコールのそんな視線など物ともしない。
サイファーはしばらくレオンを見詰めた後、隣の少女を見た。
最初は顔を見ていた碧の瞳が、顔のパーツを確認した後、降りて行く。
じろじろと無遠慮な視線に、スコールはデリカシーってものを知らないのか、と言ってやりたかった。
言った所で、知ってるけどお前には必要ないだろう、と宣うのが想像できて、忌々しさが増す。
廊下の向こうで生徒と話していたレオンが、男子生徒に別れを告げる。
次の授業の準備の為に移動しようとして、レオンは妹が此方を見ている事に気付いた。
ひら、と手を振る彼女の表情は嬉しそうで、自分を慕う妹が可愛くて仕方ない、と言う様子が、妹当人からも感じ取れた。
それから妹の隣に立っている男子生徒を見て、喧嘩はしていないのか、と視線で問う。
今の所は特に何もないので、スコールは右手を上げて返事をするだけに留めた。
レオンは少し心配そうに此方を見詰めていたが、迫る時間もあって、階段を下りて行った。
保護者の姿がなくなると、くつくつと隣で笑う気配がした。
何か言いたい事でもあるのかと、スコールが隣を睨むと、彼女の体のある一点を見詰めながら、サイファーは薄い笑みを浮かべて言った。
「育たねえな、お前」
「……」
「レオンと大違いだ」
「……煩い」
やっぱりそれか、とスコールは米神に青筋を浮かべる。
もう何度も聞いた言葉でも、やはり腹が立つのは変わらない。
「レオンは中学位の時にはでかかったのに」
「……レオンが中学生の時、あんた子供だっただろ。そんな頃から、そんな所ばっかり見てるのか」
最低だ、と睨むスコールに、サイファーは肩を竦めた。
「あんだけでかけりゃ、見ようとしなくたって見えるだろ」
「見てても見ないようにするのが配慮ってものだろう」
「丸くてでかいもんがありゃ追い駆けるのが男の性ってもんだ。仕方ねえ。追われるモンも持ってないお前にゃ判らねえだろうけどな」
にやにやと、明らかに馬鹿にした表情で言うサイファーに、スコールの平手が飛んだ。
が、それが標的の頬を打つ前に、サイファーの手がスコールの手首を掴む。
ぎりぎりと悔しさに歯噛みして睨むスコールを、サイファーは笑みを浮かべて見下ろしている。
一触即発、何なら既に爆発した後と言う雰囲気の二人を、周囲は遠巻きに見ながら、触れないようにと通り過ぎている。
スコールとサイファーのこうした遣り取りは、生徒達にとって見慣れたものなのだ。
これに下手に近付くと要らぬ煽りを被るので、大抵の生徒は見て見ぬふりをしてくれる。
が、スコールは一度で良いから糾弾されれば良いのに、とデリカシーゼロの男を睨みながら常々思う。
手首を掴む手が離れて、スコールは腕を引いた。
一発食らわせられなかったのは癪だったが、自分が騒ぎを起こせば、姉に迷惑がかかる。
これ以上不快な思いをしない内に、自分の教室に戻ろう、と思った所に、サイファーは言った。
「羨ましいんなら、俺が育ててやろうか」
「………は?」
スコールの声がワントーン低くなり、睨む目に冷たいものが浮かぶ。
大抵の生徒なら、それを見て地雷を踏んだと悟り、いそいそと逃げて行くのだが、サイファーは地雷を自ら踏み抜きに来た。
「揉んだら大きくなるって言うじゃねえか。胸」
「………」
「ない乳でもちゃんと育ててやれば、変わるかも知れねえだろ」
ヒュン、と風を切る音が鳴って、スコールの手がサイファーの顔を狙う。
だが、これもまた予想済みだと、サイファーはスコールの手首を掴んで阻止した。
直後に、スコールの膝がサイファーの窮鼠を抉る。
「うげ……っ…!てめ……っ、」
「ふん」
無防備だった腹に痛烈な一撃を食らい蹲るサイファーを、スコールは一瞥してスカートを翻し、すたすたと歩き去って行った。
スコールが立ち去った後も、サイファーはしばらく動けなかった。
的確に人体の急所を撃ち抜く一発に、昼飯が食えなくなったらどうするんだ、と思うサイファーだが、しかしこの醜態は自業自得である事も判っている。
スコールの性格や日頃何を気にしているか、彼女以上に理解していながら、嫌な所を意図的に突いたのだから。
鈍い苦痛を発信する腹を抱えて、よろよろとサイファーは自分の教室に戻る。
次の授業が億劫で、何処かでサボってしまおうかと考えていると、
「見てたよ、サイファー」
かけられた声に顔を上げれば、幼馴染で同級生のアーヴァインがいた。
面倒なのに見付かった、と顔を顰めるサイファーに構わず、アーヴァインはやれやれと判り易く呆れた表情を浮かべる。
「綺麗に貰ったねえ。原因については訊かないけど。大体想像できるから」
「煩ぇ。引っ込んでろ」
「なんでそんなに意地悪ばかりするんだろうね」
「お前にゃ関係ねえだろ」
「あるよ~。セフィからも相談されてるんだもの。サイファーがスコールに意地悪ばかりするからなんとかして~って」
サイファーの一つ下で、スコールと同級生の幼馴染の名前が出て来て、サイファーは溜息を吐く。
セフィ───セルフィが絡むと、彼女に惚れているアーヴァインは、とかく彼女の為にと能動的になるので厄介だ。
構うだけ鬱陶しくなるだけだと、サイファーはさっさと退散する事にした。
まだ痛む腹を摩って宥めながら、入ったばかりの教室を出て行くサイファーを、アーヴァインは無言で見送る。
そして彼の姿が見えなくなると、机二つを挟んだ向こうの席に座っている眼鏡の幼馴染に声をかけた。
「ねえ、キスティ。どうしてサイファーはスコールにあんなに意地悪なんだろうね」
「子供なのよ」
きっぱりと言い切る幼馴染に、やっぱりねえ、とアーヴァインも同意するしかないのだった。
『レオン♀の巨乳に憧れるスコール♀と、そんなスコール♀が好きなのに、貧乳貧乳と揶揄ってしまうサイファーなサイ→スコ』のリクを頂きました。
踏んではいけない場所を自分から踏みに行って、スコールに嫌われるサイファー。ザ・男子高校生だと思います。
スコールはきっと他の生徒に言われるなら、腹は立ってもそんなに気にしない。下世話な奴が勝手に言っているだけだから。
元々の憧れも込みで、サイファーに言われるから余計に気になってるんだけど、その理由についてはまだ気付いていません。