[クラスコ]ひとつひとつをその手で全て
紅い顔をしている恋人を前に、クラウドは高揚する自分を隠せなかった。
普段、この手の事に疎いこともあり、主導は専らクラウドが与っているものだったが、今回に限ってはそれを敢えてスコールに渡した。
手綱を渡された方は、酷く困惑している様子があるが、とは言え、何も知らない程、初心でも真っ新ではない───そうしたのはクラウドだから、何をどうすれば良いのかも、クラウドが教えた通りに彼は覚えている筈だ。
ごくりと唾を飲む音が聞こえた。
緊張した面持ちのまま、スコールは自身の手をジャケットにかけて、ゆっくりとそれを脱ぐ。
ひと思いに脱ぎ捨てた方が、恐らくは彼の心理的負担としては軽いのだろうが、それでは楽しい時間があっという間に終わってしまうので面白くない。
クラウドは出来るだけ、この一時の味わいを引き延ばしたいと考えていた。
スコールがそんな恋人の思考を読み取っているかは判らないが、ゆっくりやってくれ、と言う指示はちゃんと効いているらしい。
傭兵育成の環境下に幼い頃からいたと言うから、指示だとか命令だとかに従うことについて、彼自身の抵抗感は薄いのだろう。
寧ろ、言われたのだから仕方がない、と言う思考も働いているかも知れない。
そう思うと、同じ命令を他人がやったら、彼はまたそれにも従うのだろうかと思うと、少しばかり其処には待ったをかけたくなる。
が、素直に従っているように見えて、内心は色々と愚痴が渦巻いている事も想像は出来るので、この手の命令が仮に他の人間からあった時には、ちゃんと抵抗してくれるだろう……と思いたい。
クラウドがそんなことを考えている間に、スコールはシャツを脱いでいた。
白いシャツを脱ぐと、鍛えられてはいるがまだまだ細身のシルエットを作る上肢が露わになる。
まだクラウドが触れてもいないのに、その肌がほんのりと色付いているように見えるのは、きっと彼自身の胸中にある、誤魔化しようのない羞恥心が齎すものだ。
時折、蒼灰色の瞳が、さっさと手を出してくれと言わんばかりにクラウドを見つめる。
それはクラウドにとって、スコールからの無自覚の誘惑であったが、今日の所はそれに応えることはぐっと堪えた。
今日と言う日の特別を、たっぷりと堪能する為に。
「………」
「……」
見つめ続けていても、クラウドが動いてくれない事を悟ると、スコールは溜息を吐いた。
しょうがない、仕方ない、と自分に言い聞かせるようにして、今度は腰のベルトに手を遣る。
指先が少し緊張した動きをしながら、バックルを外し、ベルトの合せを解いた。
革ベルトの締め付けがなくなると、元々タイトな造りである筈のズボンのウエストが緩み、隙間が出来る。
其処に両手の親指を左右に入れて、スコールはぎゅっと唇を噛むように噤んでから、そろりとズボンを下ろし始めた。
シンプルな黒のボクサーパンツが顔を出し、よくよく見ると、その中心部が少し膨らみつつある。
スコール自身もその自覚があるのか、顔を赤くして、己のその有様を目にしないように両目を頑なに噤んでいる。
ズボンを脱いだら、次は靴下だ。
踝までしかないそれを、スコールは指に引っ掛けて脱ぎ、ぽいと捨てる。
両の足が裸足になって、最後に残ったボクサーパンツにも手をかけた。
其処からしばし、硬直して動かなくなったスコールに、クラウドは言った。
「スコール。ゆっくり、な」
「………」
念押ししたクラウドに、スコールの目がじろりと睨む。
しかし、笑みを浮かべて此処から先を楽しむつもり満々のクラウドに効く訳もなく、何より、言い出しっぺはスコールの方だった。
今頃は頭の中に、クラウドへの恨みと、軽率なことを言った自分への小言が繰り返されているのだろうが、一応、それを口にしないつもりではあるらしい。
精々、うぅ、と唸る声が零れるくらいだった。
はあ、とスコールは何度目かの息を吐いて、心を決めた。
クラウドの指示の通り、ゆっくりと、殊更にゆっくりと、パンツを下ろしていく。
膨らみかけていた中心部がフロント部分を引っかけるのが判るのだろう、スコールはふるふると腰を震わせていた。
太腿下までパンツがずらされると、遂にシンボルが露わになり、それは半分ほど頭を起こしていた。
差し出すように晒された恋人の下半身事情に、クラウドがにんまりと笑みを浮かべると、スコールは益々顔を赤くする。
きっと縮こまって全部を隠してしまいたいのだろうが、止めた所で解放される訳でもない事は分かっているのか、スコールは最後に左足を抜くまで、きちんとストリップショーをやり遂げた。
「っは……これで、良いか……?」
「ああ。良い光景だった」
「……変態め……」
忌々し気に言うスコールに、クラウドは満足げな表情を隠さない。
一人ストリップショーをなんとか終えたスコールだったが、今日の夜はまだ始まっていなかった。
「スコール。次はこっちだ」
「……判ってる」
促すクラウドに、スコールは不承不承の顔をして近付いた。
いつも通りの格好をしているクラウドの体に、スコールが触れる。
平時から身軽な服装をしているスコールは、鎧を始めとした防御装備と言うものにあまり馴染みがないらしい。
ぺたぺたとクラウドの服を触りまわしているスコールは、何処からどうすれば、と眉根を寄せて悩んでいた。
そんなスコールに、クラウドは先ずはこれからだろうと、ガントレットを装備した左手を差し出した。
「この辺りのネジを緩めるだけで良いぞ」
クラウドが指差した部分に嵌められたネジ。
防御の為に身に着けるものだから、体格に合わせた調整が出来るのは当然で、クラウドはいつもそれをしっかりと締めている。
だが、此処さえ緩めてしまえば着脱は簡単なのだと言うと、スコールは「……面倒くさい装備だな」と呟きながら、ネジを回した。
左手のガントレットを外した後は、右手だ。
此方は武器を扱う手だから、手首周りがもっと自由に動かせるように、グローブを嵌めているだけ。
サイズの微調整に使う手首のベルトを緩めれば、簡単に外すことが出来た。
「……次、は……」
「肩の留め具は此処」
「……もっと造りの判り易い格好しろよ、あんた」
「知ってればそう難しいものでもないぞ。まあ、他人の手で脱ぎ着させるのを想定した造りじゃないのは確かだが」
ぶつぶつと文句を言いながら、スコールはクラウドの装備を外していく。
肩当と、それを固定する為のベルトを外すと、クラウドの衣装もシンプルなものが残った。
スリーブ生地の服にスコールの手がかかり、持ち上げられるのに合わせて、クラウドは腕を頭上へ。
頭を潜って服が脱がされると、そのままインナーシャツも脱がされた。
顔回りを布が擦った違和感に頭を振りつつ、ふう、とクラウドが息を吐いている間、スコールはじっとその様子を見詰めている。
正確には、裸になって露わにされた、クラウドの筋骨の浮き上がった上肢を。
「………」
徐に伸ばされたスコールの手が、ひた、とクラウドの胸に触れる。
ぺた、ぺた、と体の具合を確かめるように、胸、腹、脇腹と、触れては離れる白い手に、クラウドは擽ったいものを感じていた。
クラウドの体をしげしげと眺めるスコールの内心は、どうしてこんなに筋肉がついているんだ、と言う事。
身長は自分と大差ないし、どうやら元の世界の文明レベルも近しいと思えるのに、身体の造りはクラウドの方が判り易く逞しい。
仕様武器が身の丈程もあるバスターソードであることから、それを振り回すだけで相当な筋力が鍛えられる事は想像に易いが、体全体で言っても、クラウドはスコールよりも一回り程の厚み幅がある。
スコールの場合、ジャンクションと言う方法があるので、純粋な体格だけで足りない部分を補う技術があるのは確かだが、それにしても身一つで戦うからとこうまで体型に差が出るものなのか。
羨ましさと、妬ましさも混じった目で、スコールはぺたぺたとクラウドの体を触り続けていた。
自分がすっかり裸であることも忘れた様子で、恋人の体に見入るスコールの様子は、クラウドにしてみると子供らしくて可愛い所もあったが、
「スコール」
「……!」
名前を呼ばれて、はっとスコールは我に返った。
「悪い。え、と……次は……」
「下だな」
「………」
詫びながら作業に戻ろうとしたスコールだったが、残る箇所を見て動きを止める。
そろりと視線が下へと下りて、まだ崩されていないボトムに行き付いた。
忘れていた羞恥心が戻って来たか、スコールは赤い顔になって、ゆっくりとクラウドの下肢へと手を伸ばす。
腰のベルトを外して引き抜き、僅かに緩んだズボンのフロント部分のボタンを外す。
ファスナーを下へと下ろしていく指先が、緊張しているように見えるのは、クラウドの気の所為ではなかった。
前が緩むと、グレーのトランクスが覗き、中心部が判り易く興奮を表している。
それを見たスコールが、益々顔を赤くして、じろりとクラウドを睨んだ。
「何興奮してるんだ、あんた」
「するなって言う方が無理だろう。お前は裸だし」
「あんたが脱がせたんだろ」
「自分で脱いだだろ?」
「あんたが自分で脱げって言ったからだろ」
好きで裸になった訳じゃない、とスコールは怒った顔で言う。
目の前でストリップショーを開く羽目になったのも、今も裸で恋人に献身するような事をしているのも、決して自分の本位ではないのだ、と。
しかし、そんな顔をして見せても、本気で怒ってはこないのだから、クラウドはついつい調子に乗りたくなる。
ズボンを脱がせにかかったスコールへ、クラウドの手が伸びる。
首の後ろにするりと指を滑らせると、すっかり油断していたのだろう、「ひぅっ!」と言う声が上がった。
「あんた、何してるっ」
「触ってみた」
「余計なことするな!」
怒って噛みついてきそうなスコールに、クラウドはくつりと笑って、その体をぐっと引っ張り寄せた。
無防備にしていたスコールの身体は、簡単に力に従って、クラウドの下へと引き寄せられる。
密着した身体の背中に両腕を回し、閉じ込めながら手指を滑らせれば、
「っクラウド!」
「良いだろう、今日は俺の好きにして良いと言ったのはお前だ」
「言……ったけど!服だってまだ」
「ああ、そうだな。だからほら、このまま脱がしてくれ」
スコールの細身の腰骨を摩りながら、クラウドはスコールに指示を出す。
抱き締められた状態で、碌な身動きが出来ないスコールは、「邪魔するな」と怒ったが、クラウドはくつくつと笑うばかり。
律儀に言われた事は果たそうとする恋人を、クラウドは敢えて妨害しながら、赤らんだスコールの肌の感触を楽しんでいる。
「変な所を触るな」
「可愛がってるだけだ。気にしなくて良い」
「気になるんだ!だから、やらしい触り方をするなって……!」
小ぶりな臀部を撫で下り、足の付け根の皺を辿る指先に、スコールは必死に抗議する。
そうも懸命に振り払おうとするのは、触れられている場所から、ぞくぞくとした官能の種が芽吹いて行く所為だ。
彼の中心部は、此処に至るまでに既に半分は起き上がっている。
これ以上、意図的な触れられ方をしたら、決定的な熱を貰っている訳でもないのに、内側にため込んだ熱が溢れ出してしまいそうだった。
幼い矜持がそれだけはと抵抗するが、そんな拙い抵抗の様子こそが、目の前の不埒な男を煽っているとは知らない。
クラウドの指が、双丘の谷間に近付いて、スコールの身体がビクッと強張る。
やだ、と小さな声がクラウドの耳元で零れたが、それが恐怖や嫌悪を伴っていない事は、何度も肌を重ねた経験から判っていた。
クラウドは直ぐ其処にあるスコールの耳に、舌先を這わせながら囁く。
「スコール。ほら、ちゃんと脱がせてくれ」
「っあ……!」
「俺の好きにしてくれるんだろう」
クラウドの言葉に、スコールが唇を噛んで小さく呻く。
渡せるものが思いつかないからと言って、軽率なことをするんじゃななかった。
彼の呻きの声の中には、きっとそんな言葉が渦巻いているに違いない。
はあ、とクラウドの耳元で熱の籠った吐息が零れ、スコールの震える指がもう一度下へと下りて行く。
半端に脱がせていたクラウドのズボンを、一所懸命に引き下ろそうとする気配があって、クラウドも手助けに腰を浮かせて足も曲げる。
後はトランクスが残っているが、その中心の膨らみはもう明らかで、クラウドに寄り掛かるスコールの手は、最後の一枚を脱がすよりも先に、その中へと侵入していたのだった。
クラウド誕生日おめでとう、と言う事で。
誕生日なんだから何かした方が、でも何をすれば、と判らなくて本人に聞いた末、「今日は全部お前がやってくれ」とか言われたスコールです。
普段はイチから後始末までクラウドがするのですが、誕生日だし、スコールからもして欲しい事を聞かれたし、じゃあスコールにして貰って見よう、となった訳です。
主導権を渡されたのが初めてのスコールなので、どうして良いか判らないのでクラウドの指示に従う形をしてたんですが、えっちい触られ方をしてスイッチが入ってきたんだと思います。