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2012年02月28日

[絆]当日限定ヘアサロン

  • 2012/02/28 18:47
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シャキ、シャキ。
シャキ、シャキン。

リズムを刻むように、小刻みになる鋏の音。
それを頭の直ぐ後ろで聞きながら、スコールはうとうとと舟を漕いでいた。
そんな弟の頭が揺れないように、さりげなく支えつつ、レオンは作業を続ける。


鋏の音が鳴り始めてから、約一時間────レオンは鋏をテーブルに置いた。



「ほら、スコール。切り終わったから、今度は洗うぞ」



寝落ち欠けている弟の頬を軽く叩いてやる。
ぱち、と青灰色の大きな瞳が起きた。


レオンは、カット用にとスコールに着せていたスカートタイプのレインコートを脱がしてやる。
てるてる坊主みたいとはしゃいでいたコートを脱がされて、スコールが少し残念そうにコートを見詰めた。
そんな弟にレオンは眉尻を下げて笑い、洗面所へと連れて行く。

洗面所に用意していた椅子に座らせて、洗面台に凭れさせ、水道のシャワーノズルを伸ばす。
温度を調整しながら、レオンはスコールの髪を濡らして行った。



「熱くないか?」
「うん」



我慢している様子がない事も確認して、レオンは湯を当てながら、スコールの髪をわしわしと掻き撫ぜる。
散髪の名残の短い髪がぱらぱらと落ちて、排水溝のメッシュの蓋に集まって行く。

そろそろいいか、と思っていると、玄関の方から「ただいまー」と言う声が二つ。
声の持ち主は、帰った時の手洗いの為に、ぱたぱたと洗面所へ向かって走って来る。



「ただいま、レオン!」
「お帰り、ティーダ、エルオーネ」
「ただいま」
「あ、スコール、レオンに髪洗って貰ってる。いいなー」
「髪を切ったからな」



ティーダが羨ましそうな顔で駆け寄って来る。

レオンはシャワーを止めて、スコールの頭に厚手のタオルを乗せた。
軽く拭いてから上体を起こしてやり、椅子から下ろして、改めてスコールの髪を拭いてやる。



「いーな、いいなー、スコール。いいなー」
「……えへ」



ぱたぱたと両手を羽ばたかせて羨ましがるティーダに、スコールが頬を染めて嬉しそうに笑う。



「ほら、ティーダ。ちゃんと手を洗わなきゃダメだよ」
「はーい。ねえ、レオン。後でオレも髪切りたい!」



エルオーネに促され、手を洗いながら、ティーダが言った。
レオンは吹き終わったスコールの髪に手櫛を通しながら、頷く。



「そうだな。ティーダも暫く切っていないし」
「やった!」
「いいの?レオン。疲れてない?」
「ああ」



心配そうに尋ねる妹に、レオンは笑みを浮かべて見せる。


レオンはスコールをエルオーネに預け、ティーダを椅子に座らせた。
髪を切る前に、先ず軽く洗い流す為だ。

湯を出してティーダの明色の髪を濡らし、シャンプーとリンスを使って外遊びの埃や汗を流し落とす。
泡も綺麗に全て流れたのを確認して、レオンは新しいタオルでティーダの髪を拭いた。



「よし。頭上げて良いぞ、ティーダ」
「切るの?」
「ああ。リビングでな」



リビングには、スコールの髪を切っていた時の跡がそのまま残っている。
床には切り落ちた髪の為の新聞紙が広げてあり、鋏やスプレーもテーブルに出したままだ。
何より、洗面所は少し狭いので、作業をするには不向きだ。

タオルをターバン状で頭に巻いて、ティーダは椅子を下りた。
早く早くと急かすティーダと一緒に、レオンはリビングへ向かう。


リビングに入ると、スコールも使っていたレインコートを着せてから、散髪用の椅子に座らせてやった。



「ティーダ、てるてる坊主みたい」
「へへー」
「こら、危ないぞ、暴れるな」



スコールの言葉に、ティーダが嬉しそうに手足をぱたぱたと遊ばせる。
その様子は実に微笑ましいのだが、鋏を持っていたレオンは慌ててその手を引っ込めた。


エルオーネがスコールを呼んで、二人並んでソファに座る。
エルオーネの細い指が、スコールのダークブラウンの髪を梳いて、スコールは気持ち良さそうに目を細めた。
その傍ら、シャキ、と鋏の音が鳴り始める。



「すっきりしたね、スコール」
「うん」
「私もそろそろ切ろうかな」
「じゃあ、後でエルもやるか。それとも、美容院に行くか?」
「うーん……」



兄に言葉に、エルオーネは首を傾げて考える。

レオンは器用だし、孤児院にいた頃から弟達の髪を切っていた(何せ人数が多いので、一々美容院に行くと結構な額になってしまうのである)ので、彼の手付きは慣れたものだし、きちんと綺麗に切り揃えてくれる。
けれど、エルオーネもそろそろ年頃なので、おしゃれな髪形もしてみたいし、切った後のアフターケアも考えると、専門の美容師に世話になった方が良い。
……思いつつも、髪を撫でる兄の手が心地良いのも確かで。



「お願いしてもいい?」
「ああ」
「じゃあレオンもー!」
「俺も?」



ティーダの言葉に、レオンが目を丸くする。



「そうだね。レオンの髪も、結構伸びたよね」
「俺はまだ平気だが……この長さだと、結べばいいしな。多少伸びた所で、別に」



変わらない、と言いかけて、レオンは止まる。
ティーダがレオンを振り返ってじっと見上げており、ソファからはスコールがじっと此方を見詰めている。

皆で散髪、皆で一緒。
きらきらと輝く蒼と青の期待の眼差しに、レオンが勝てる訳もなく。



「じゃあ、頼む。エルオーネ」
「うん」



クスクス笑って頷いた妹にも、やはり敵わないな、とレオンは思った。





エルがレオンに出来るのは、ちょっと切り揃える位です。余り思い切り弄ったりはしない。
成長したら、流石にそれぞれ美容院に行くようになります。レオンも大変だし、オシャレが気になる年頃だしね。
[絆]のレオンが反則並に器用になって来た気がする。まあいいか。レオンだから。

今日美容院に行って、延々こんな事考えてました。

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