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2012年02月14日

奮闘したバレンタインでした

  • 2012/02/14 22:46
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ファイル 57-1.jpgファイル 57-2.jpg

今日はバレンタインだったので、ザッハトルテ作りました~。コーティングで失敗したぜこんちくしょー。
バレンタインで各ジャンルのネタ粒投下したので、お暇な時にでも読んでやって下さい。

18cmホールのレシピでやったのに、20cmホールでぴったりの焼き上がりでした。何処で嵩増ししたんだろうか。メレンゲか。って事は卵か。
スポンジの量はともかく、生地は上手く焼けたんですが、コーティングはやっぱり難しい。ちゃんとテンパリングするべきだったとか、水あめの砂糖がちゃんと溶け切ってなくて(おまけに冷めちゃって)コーティング用のチョコがスポンジにかける間もなく速攻で固まり始めて大いに焦ったとか、反省点は色々あるんですが、一応形にはなりました。転写シートの音符が綺麗に写せなかったのは、初めてやった事だからって事で……今後また、その内。出来れば。
チョコレートはレシピ通りならビターを使う所ですが、自分がビターチョコが好きじゃないんで、全部普通のミルクチョコです。製菓用ですらない。って言うか製菓用なんか近所に売ってない。そんな訳で自分が作るお菓子と言うのは、今回のチョコケーキに限らず大体甘いんですが、家族には概ね好評でしたヾ(*´∀`*)ノ
生地の間に挟んだ生クリームがけっこー余ったので、明日明後日にでも生チョコ作る予定です。冷蔵庫の中が甘い匂いで一杯になるw

今週金曜日は自分の誕生日なのですが、誕生日ケーキは別で買って貰います。家族から「今日ケーキ食べたから、17日いいよね?」と言われましたが「これバレンタイン用で誕生日用と違う…」とワガママ言いました。「自分で作る?」とも言われましたが、もうそんな気力ないよ<丶´Д`>
今日はバレンタインだったからチョコレートケーキにしましたが、生クリーム一杯のスポンジケーキも大好きです。苺が多いと嬉しさ倍増(●´∀`●) かーさん宜しくお願いします。

誕生日の前に、シアトリズムが発売だー!!
……零式まだクリアしてねえ……!

[バツスコ]スウィート・モーニング

  • 2012/02/14 22:27
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バツスコでバレンタイン。現代パラレルで、どうやら同棲してるようです。



キッチンからの漂う、甘ったるい匂いで、目が覚めた。


甘いものは、食べられない訳ではないけれど、殊更に好きな訳ではない。
適度な糖分は頭の回転を助けてくれるし、疲労回復にも一役買ってくれるので、そう言う時には重宝するのだが、平時から理由もなく食べたくなる事は殆どなかった。
匂いなどはどちらかと言えば苦手な方で、あまりに強いと胸やけを起こす事もある。

そんなスコールにとって、寝室の開けっ放しのドアの向こう───のリビングの更に向こうにあるキッチンから漂ってくる匂いは、一種の拷問に近かった。


来たる学年末テストの為に、昨日も夜遅くまで勉強していた。
そして朝早くに恋人の賑やかな声に叩き起こされ、入らない朝食を半ば無理やり胃に詰め込んで、睡眠不足の所為であろう頭痛を抱えながら登校、と言う日々が最近繰り返されている。

今日もそれと同じなのだろう、と思っていたのだが、少々様子が違う事にスコールは気付いた。
窓の向こうは薄暗く、時計を見るとまだ午前5時で、恋人が朝食の準備をするにも早い時間だ。
おまけに漂ってくる甘い匂いは、朝食にするには────少なくとも、スコールにとっては────不適当なものだ。



(何やってるんだ、あいつは……)



睡魔は抜け切っていなかったが、甘ったるい匂いの中で、再度眠る気にはなれない。
砂糖の海で溺れる夢を見るよりも、何か企んでいるであろう恋人を殴る事を決めて、のろのろと起き上がる。


半開きだったドアを押し開けてリビングに出ると、その向こう、壁を間に挟んだキッチンの方からガチャガチャと言う煩い音がする。
その金属音も寝不足の頭に響いて来て、スコールの眉間の皺が深くなった。

取り敢えず殴ろう、と思いつつ、キッチンへと向かう。



「おい、バッツ」
「おっ?スコール、早いな゙っ!?」



シンクで一所懸命に何かを洗っていたバッツ。
呼んで、振り向いた瞬間に、スコールはその顔面に拳を打ち込んだ。

バッツの手からボウルやら泡だて器やらが落ちて、ガチャンガチャンキーンと言う音が響く。
此処のマンションの壁はそこそこ厚く、防音性も優れているが、それでも早朝にこの音は御法度だろう。
スコールは慌てて流しの中に転がった調理器具を拾い集める。



「バカ、煩い!」
「いや、スコールがいきなり殴るから…」
「あんたがこんな時間から妙なこと企んでるからだろう」
「別に企んでなんかいないぞ」



スコールの言葉に、バッツは拗ねたように頬を膨らませる。
その顔を見下ろして、やっぱりこいつが俺より年上なのは納得できない、と胸中で呟いたが、バッツはそんな事はお構いなしであった。
赤くなった鼻頭を摩りながら、おれって信用ないんだなあ、と余り気にした様子のない表情で零している。



「…それで。あんた、こんな朝早くから何してたんだ」
「何って、ケーキ作ろうと思ってさ」
「……ケーキ?」



反芻したスコールに、そう、とバッツは頷いた。

その傍らで、オーブンレンジが焼き上がりのメロディを奏でる。
バッツはいそいそとオーブンの蓋を開けて、中からハートの形をした型を取り出した。



「ほら、今日ってバレンタインだろ。だからチョコケーキ作ろうと思ってさ」
「……こんな時間から?」
「だって今日の大学の講義は外せないからさあ。昼間に時間がないんだよ」



だから、朝食を作る前に作っちゃおうと思って。
にっかりと笑って言ったバッツの思考が、スコールにはいまいち理解できない。
今日が無理なら明日でもいいだろう、と言うのがスコールの思考であった。

でもそれを言ったら、きっとバッツは、今日じゃないと駄目だ、と言うのだ。
先にバッツが言った通り、今日はバレンタインデーだから、チョコケーキは今日の日の為に作るものでなくてはならない。
……じゃあ昨日作って置けば良かっただろう、とまたスコールは思うのだけど。


─────その前に、バッツは根本的な問題がある事をすっかり失念しているらしい。
スコールは溜息一つを吐いて、溶かしたチョコレートと生クリームを混ぜているバッツを見て言った。



「バッツ」
「んー?」
「……俺、甘いものは」
「苦手なんだろ?大丈夫、知ってるよ」



言葉を先んじられて、だったらなんで、とスコールは眉根を寄せた。


食べられない訳ではないけれど、やはりスコールは甘いものは好まない。
そんな恋人を理解していながら、どうしてチョコレートケーキなんて甘そうなものを作るのか。
今も充満する甘い香りで気分が悪くなりそうなのに。

沈黙したスコールの不機嫌な空気を読み取ったか、バッツがボウルを抱えたままで振り返る。
褐色の瞳が此方を見た事に気付いて、スコールはす、と視線を逸らした。
バッツはそんな恋人の素っ気ない反応を見て、眉尻を下げて笑う。



「スコール、怒るなよ」
「……別に。怒ってない」
「そっか?じゃあ良かった」



良くはない、とスコールは思った。

怒ってはいないが、正直、気分は宜しくなかった。
主に甘ったるい匂いと、理解不能な恋人の所為で。


覗き込んでくるバッツから、スコールは更に視線を逸らす。
目を合わせようとしないスコールに、バッツはやはり気を悪くするような事はなく、寧ろ何処か微笑ましそうにしてもいて。



「大丈夫だって。チョコケーキはおれ用で、スコールには、ホットショコラ用意してるからさ。あれはスコール、嫌いじゃないだろ?」



ホットミルクにチョコレートを溶かして作るホットショコラは、以前、試験勉強に疲れたスコールの為に、バッツが作ってくれたものだった。
ビターチョコレートを溶かしたそれは、披露した心身にとても心地よく沁み込んで、以来、時折スコールがバッツに作って欲しいと頼む事もあるものだ。

こくんと小さく頷くスコールに、バッツはにかっと笑う。



「よし、決まり。授業終わったら、直ぐに帰って作っとくから、今夜は二人でチョコレートパーティしような!」
「……ケーキは、食べないぞ」
「判ってる判ってる。あ、でも、一個だけ頼み聞いて欲しいんだけど、いいか?」



頼み、と言う言葉に、スコールは判り易く眉間に顔を顰めた。
にこにこと嬉しそうなバッツの表情は、今までの経験からして、大抵スコールにとって禄でもない事を考えている時のものであったからだ。



「……取り敢えず聞くだけ、聞いておいてやる」



実行するかは別として、と小声で呟いたスコールに、バッツはにっかりとまた笑って、



「あ~んって、アレやって!」



ぴしり、とスコールが固まった。


“あ~ん”って、アレって、ひょっとしてアレか。
アレか、アレしかないよな。

ぐるぐるとスコールの頭の中で、テレビ等の恋人同士のベタベタシーンに使われる図が浮かぶ。
やって、って、つまり、と図の中の登場人物がすーっと入れ替わり、バッツがぱかりと口を開けて待っているのが浮かんだ、後で────にこにこと嬉しそうにチョコケーキの欠片を差し出す自分を想像して、胸やけを通り越して、さぶいぼに見舞われる。


引き攣った顔でフリーズしたスコールを見て、バッツがへにゃりと眉尻を下げる。



「あー……やっぱ、ダメ?」



あはは、と頭を掻いて笑いながら、まあダメ元だったしなーとバッツは言った。
そして彼は、「冗談だよ」「本気にするなよー」等と言って、ひらひらと手を振る。



────バッツはスキンシップが好きだ。
だから、何かとスコールに抱き着いたり、キスをしたり、若しくはキスして欲しいと言うのだが、スコールは大抵それを拒否している。
人の体温に不慣れなスコールには、例えば手を繋ぐとか、そんな些細な事さえも、非常にハードルが高い行為なのである。

バッツもそれは理解しているが、気持ちに真っ直ぐな彼は、自分の欲求にも正直だ。
人と触れ合う事も大好きだから、愛する恋人と一層のスキンシップを図りたいと思うのも無理はない。


思えばスコールは、バッツに対して、恋人らしい事をした事がなかった。
恋愛はおろか、人付き合いそのものに経験値が低いから、何が“恋人らしい事”なのかは判然としない。
けれど、テレビドラマで恋人同士の幸せそうなシーンを見る度、バッツが羨ましそうな顔をしたり、「いいなー」と(他意はないと思うが)言っているのはよく見ていた。

バッツがスコールに対し、目に見えてそれをやってくれ、と言った事はない。
欲求には正直だが、彼は決してスコールに自分の気持ちを強要したい訳ではないから、人付き合いにも温もりにも不慣れな恋人に、少しずつ慣れて行ってくれたらいい、と言って笑うのだ────ほんの少しだけ、寂しさを我慢する顔をして。



……それを考えたら、



「……別に、いい。それくらい」
「……へっ?」



間の抜けた声が聞こえた。
きっと顔も間の抜けたものになっているに違いない、確かめる事は出来ないけれど。

スコールはぽかんとしている恋人に背中を向けた。



「俺が食べるんじゃないなら、別に、いい」
「え?え?え、ほんと?」
「嫌ならいい」



吐き捨てるように言って、スコールは足早にキッチンを出た。
その背中に、キッチンから慌てた声が届く。



「嫌じゃない、嫌じゃないって!って言うかすげー嬉しい!スコールー!」



弾んだ声に返事をする気にならなくて、スコールはリビングを通り過ぎて、寝室に駆け戻った。
甘ったるい匂いと空気を遮断するように、バンッ!と大きな音を鳴らしてドアを閉める。

毛布の中に潜り込んで、冷たいベッドシーツに押し付けた頬がやけに熱くなって感じるのは、きっと気の所為だ。





ツンデレスコールにデレデレバッツ。
バッツはジョブマスターの腕をフルに活かして、「なんでもやってやるぜ!」って感じでスコールに色々作ってあげたりしたらいい。ついでに人付き合いも苦手なスコールに、色々吹き込んだらいい(そして後にヒルクラの刑で)。

[真神メンバー]チョコレート・フレンズ

  • 2012/02/14 16:30
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バレンタインです。皆仲良し真神メンバー。



京一は甘い物は好きではない。
食べられない、とまでは行かないが、出来れば口に入れたくない程度には、好んでいない方だった。

しかし、年に一度のこの日だけは話が違ってくる。



「蓬莱寺先輩ッ!」
「あ?」



グラウンドを通り抜ける最中、唐突に背中から声をかけられて、振り向いてみると、其処には見覚えのない女子生徒が一人。
先輩、と言ったからには恐らく後輩なのだろうが、生憎、京一にはまるで記憶にない少女であった。

長い黒髪を後ろで二つに括った少女は、沸騰しそうな程に赤い顔をしている。
頭から湯気出そうだな、とぼんやり思っていた京一の前で、少女はしばらくもじもじとしていた。
そんな少女から少し離れた所には、これまた見覚えのない少女が数名、必死に何事か口を動かしている。
口の動きを何とはなしに読み取って、「がんばれ!」「いけーッ!」と少女達が言っている事を知り、それが自分の目の前にいる少女へと向けられている事を知った。


少女は何かを堪えるように、への字に噤んでいた口を開いた。
それと同時に、背に隠していたものを京一に差し出す。



「こ、こここ、これッ、受け取って下さいッ!」



やっぱり沸騰しそうな顔のまま、そう言った少女の勢いに、京一が半身を引く。
が、直ぐに少女が差し出したものに気付いて、



「お、おお……サンキュ」
「い、いえッ!それじゃッ!失礼しますッ!」



少女の手から、綺麗にラッピングされた十センチ程の長方形の箱を受け取る。
すると少女は、どもりまくって挨拶をした後、一目散に友人達の下へ駆けて行った。
ほんの数メートルの道程を、足を絡ませて転びながら。

どんだけドジだ、と思いながらしばし少女を見送る格好になっていると、友人達と合流した少女が振り返り、ぺこりと頭を下げる。
京一はそれに対して特にリアクションはしなかったが、少女は構わず、友人達と───京一のいる場所を大きく迂回して───共に下駄箱に向かって消えた。


京一は、自分の手に収まった箱に視線を落とした。
箱にはリボンが取り付けられ、其処にハートのシールで『Happy Valentine』の文字。

……どうりでさっきから視線が痛い筈だ。
僻みと妬みが多量に混じったそれを浴びつつ、京一は思った。
それ以上は特に気にする事はなく、薄っぺらい鞄の中に箱を入れる。


────其処で、元気の良い声が響いた。



「さっすが、モテるわねー、京一は。やっぱり剣道部の主将って肩書きが効くのかしら」
「……ンだよ、アン子か」



ファインダーから此方を覗き込みながら言う遠野。
いつも通りにカメラを握っている彼女だが、その反対の手には、小さな袋が一杯に詰められた紙袋がある。



「なんだ、そりゃあ」
「何って、バレンタイン用のチョコよ。はい、これあんたの分ね」



言うなり、遠野は紙袋から小さな袋を一つ取出し、京一に差し出した。
京一は先程の少女を相手にした時と同じように、ハート型のチョコが詰まった袋を受け取り、また鞄に入れた。

じゃり、と砂を踏む音がして、二人が振り返ると、葵と小蒔の姿があった。



「おはよう、京一君、アン子ちゃん」
「おはよー、二人とも」
「ああ」
「おはよ」



短い反応の京一と、手を振って返事をする遠野と。
そんな二人に笑みを見せて、葵が鞄の中からラッピングされた箱を取り出す。



「はい、京一君。アン子ちゃんにも」
「おー」
「やった!ありがと美里ちゃん、絶対にお返しするからね!」



抱き着いて喜びを全身で表現する遠野に、葵がくすぐったそうに笑う。
その傍ら、ボクも貰ったんだ、と小蒔が手に持っていた箱を見せた。

京一はひらひらと箱を手の中で遊ばせつつ、嬉しそうに箱を見ている小蒔を見る。



「お前は渡す予定はねェのかよ」
「予定がないって言うか、忘れてたんだよね。何、欲しかったの?京一」
「バーカ。誰が男から貰って喜ぶか」
「誰が男だッ!」



噛み付いて来る小蒔を交わし、そうじゃなくてな、と京一は仕切り直す。



「身近に渡すような奴いねェのかって言ってんだ」
「弟達にはあげるよ。ああ、あとお父さんにも」
「……………」
「何さ?」



白い眼で見る京一に、小蒔が唇を尖らせる。
その傍ら、遠野と葵が顔を見合わせて肩を竦めていた事に、彼女は終ぞ気付かなかった。

────其処に、いつものメンバーの残り二人も合流する。



「おはよう」
「おはよう。早いな、皆」
「おう」



挨拶を終えると、醍醐が鞄の中からいそいそと何かを取り出す。
そして、まだ京一を睨んでいる小蒔に声をかけ、



「あ、あの、桜井さん」
「ん?どしたの、醍醐君」
「こ、これ、作ってみたんです。この時期でチョコも安かったし……その、良ければ、どうぞ」
「ホント?いいの?」



やった、と喜んで小蒔が醍醐から受け取ったのは、チョコレート生地の一口サイズのカップケーキ。
女子受けの良さそうな絵柄の入った透明袋に入れて、モールで蝶結びにしてラッピングしてあった。
カップケーキは一つ一つきちんとデコレーションもされていた。

ありがとう、と笑う小蒔を見て、醍醐の顔が崩れるのを、京一は白い眼で見ていた。
それに気付いた醍醐が、なんだ、とばかりに眦に力を込めるが、京一には効果はない。
寧ろ彼は更に呆れるばかりであった。



「お前、情けねェと思わねェのかよ。フツーはお前が貰うトコだろが」
「……別にいいんだ、俺は。桜井さんが喜んでくれるなら」
「あっそ。献身的っつーか、なんつーか」
「それより、ほら」
「あん?」



醍醐が差し出したものを反射的に受け取った後、京一は今日一番の胡乱な顔をして見せた。

其処にあったのは、小蒔と同じカップケーキ。
ただし、此方は少々形が崩れている。



「……ヤローに貰っても嬉しくねえし、気持ち悪ィ」
「俺だってお前にバレンタインプレゼントなんて気持ちが悪い。しかし、食べ物は無駄にする訳にはいかないからな。処理に付き合え」
「…………オレが甘ったるいモン好きじゃねえの知ってんだろ」
「じゃあ、僕が貰ってもいい?」



唐突に割り込んできた声に、醍醐が驚いたように目を瞠る。
京一の方は慣れたものだったから、振り返るついでにカップケーキを差し出した。



「ほらよ」
「ありがとう、京一」
「オレじゃなくて醍醐に言え」
「うん。醍醐君、ありがとう」



カップケーキを受け取った龍麻の言葉に、こっちこそ、と醍醐が眉尻を下げて言った。

京一と違い、龍麻は甘いものが好きだ。
いつもチョコだの苺系の菓子だのと持ち歩いているから、醍醐の作ったカップケーキも美味しく頂ける事だろう。
京一の方は────鞄の中に収まっているものを、果たして全部消費できるのか、正直、微妙な所だ。
それでも今日だけは甘味を拒否はするまい、男から渡される場合は別として。


さて、そろそろ教室に行かねば、始業のチャイムが鳴ってしまう。
めいめい賑やかにしている友人達を置いて行く形で、京一は一歩踏み出した。

─────その肩を、とんとん、と叩かれて引き留められる。



「あ?」



振り返れば、にこにこと上機嫌な相棒がいて、



「はい、あげる」
「んぁ?」




何が、と確認する間もなく、甘ったるいものが口の中に広がった。






うちの龍麻は京一の口に食べ物突っ込むの好きですね……
渡そうとしてるものが大体甘いものだから、普通にしても受け取らないんですよ、京一が。だから了解を待たずに突っ込む。

相変わらずうちの二人はナチュラルにラブラブ。友情でも恋愛でも。
…最近、自分で書いてて龍京なのか龍&京なのか判らない時がある。もういいか、どっちでも。どうせこいつらラブラブだから!

[スコリノ]見えなくっても伝わるよ

  • 2012/02/14 01:26
  • Posted by
バレンタインでラブラブカップル。恋愛初心者なスコールがいます。



はいっ、と言って差し出されたそれを見て、スコールは眉間の皺を深くした。
それを見た目の前の少女は、にこにこと笑みを崩さないまま、スコールが差し出された物を受け取るのを待っている。


どうすればいいんだ。
どうするのが正しいんだ。

立ち尽くしたまま、スコールはぐるぐると頭の中で問い掛ける。
目の前の少女に、此処にはいない幼馴染達に、ガーデンで身に付けた自分自身の知識に。
けれど、声に出してはいないから、少女は何も答えてはくれないし、幼馴染達は此処にいないし、学んできた知識の中にこれに該当しそうな答えは見つかりそうにない。
そもそも、簡単に答えが見つかってくれるのなら、こうして立ち尽くす必要はない。



可愛らしいピンクの包装紙と、ラメ入りのリボンを結んだ、ハートの形をした大きな箱。
直径20センチ程のそれを、スコールはただただ、見下ろした。


どうすればいいんだ。
どうしたらいいんだ。

先程と同じことをもう一度考える。
目の前の少女は、やはりにこにこと笑っていて、スコールの反応を待っている。


そのまま、一分か二分か、たっぷり固まった後で、ようやくスコールは動いた。



「…………」



無言のままでハートを受け取る。
と、途端に少女───リノアは喜びを全身で表すようにスコールに抱き着いて来た。



「はっぴーはっぴーバレンタイン!ありがと、スコール!」
「……それは、俺の台詞なんじゃないのか」



はっぴー云々はともかく、ありがとう、は間違いなく自分の台詞の筈だ。
頬を撫でる、さらりとした黒髪に心地良さを覚えながら、スコールは思う。



バレンタインと言う今日のこの日のイベントを、恋人が逃す筈がないのは判っていた。

数日前からこそこそと(バレバレだったけれど)準備に勤しみ、セルフィやキスティスを捉まえては何かを仕切りに尋ねていたり、スコールの顔を見ては何かを想像してにこにこと嬉しそうに笑ったり、かと思ったらはっと何かに気付いたように蒼くなって悩みだしたり……とにかく、忙しなかった。
それを見て、そしてゼルやアーヴァインの遠回し(しかしこれもバレバレであった)なお節介のお陰で、スコールも来たる今日と言う日の意味を理解して、当日を迎えていた。


少し前のスコールなら、今日が“何”の日であるかなど気に留めず、そのまま流れてしまう事もあっただろう。
実際、ガーデンで過ごした今日と言う日は、殆どそうして過ぎて行ったと思う。
よくよく思い起こせば、教室の自分の席であったり、ロッカーだったり、所謂“個人スペース”と言われるような場所に何かが置いてあった事もあったかも知れないが、スコールにとっては大して重要な記憶ではなかった為か、G.Fの副作用とは別に、殆ど思い出す事は出来なくなっていた。

そうしたスコールの性格を知っているから、ゼルやアーヴァインもお節介を焼いたのだろう。
あの戦いの日々の後、多少はスコールの周りへの態度は緩和したものの、やはり根は内向的な性格であるし、人の感情の機微に疎い部分がある。
これが原因で、出逢って間もない頃は恋人と諍いを起こす事も少なくなかったので、幼馴染達は彼らが心安らかに───ひいては自分達に要らぬとばっちりが来ないように───過ごせるようにと、スコールとその恋人の周りであれこれ世話を焼くのである。



ともかく────そんな幼馴染達のお陰で、スコールは、リノアが持ってきたハート型の箱の意味も判っている。
それでいて、差し出された時に「どうしたらいいんだ」と考えたのは、何も受け取りたくなかったから、と言う訳ではない。
差し出された時、胸の奥が心なしか温かくなったのも事実である。

だから判らなかったのは、受け取るか突き返すか、と言う事ではなくて、



(……どうしたらいいんだ)



はぐはぐ~といつもの不思議な言の葉で懐いてくるリノア。
最近、ようやく慣れてきた触れる温もりに、心密かに甘えながら、スコールは眉間の皺を更に深くしていく。


どうすればいいんだ。
どうしたらいいんだ。

延々と頭の中で同じ言葉を繰り返して、問い続ける。


リノアはまだくっついたままだ。
だから、スコールから彼女の顔は見えなくて、と言う事は、リノアにもスコールの顔が見えないと言う事だ。
それにひっそり、スコールは安堵していた。

どうして安堵なんてするのか、それは、



(どういう顔、したらいいんだ)



嬉しい。
温かい。
柔らかい。

それを教えてくれる彼女のように、スコールは笑えない。
どういう風に笑えば、彼女のように、そんな気持ちを伝える事が出来るだろう。


判らないからスコールは、彼女の細い体を抱き締めて、



「おっ、おっ?スコール君、なんか甘えたい感じ?」
「……多分」
「いいよー、バレンタインだもん。一杯はぐはぐしてあげる」



首の後ろに回された彼女の腕に、きゅ、と力が篭る。




どんな顔をすればいいのか判らない。

だから言葉の代わりに、精一杯の“ありがとう”の気持ちを込めて、抱き締める。






スコリノかわいい。この二人は、お互いに甘え甘やかしての関係がいいなあ。
ラグナ語録を考えるのも難しいけど、リノア語録はもっと難しい……

[悟空総受]心知らずに罪はなし

  • 2012/02/14 01:25
  • Posted by
バレンタインで悟空総受。



街中から甘い匂いがする。
それに万年欠食児童の子供が、気付かない訳もなく。



「いいニオイする~」



甘ったるさにうんざりとした表情の三蔵の傍らで、悟空が涎を垂らしている。
だらしのない顔をした養い子にも呆れるが、それよりも三蔵には、漂う匂いの方が鬱陶しくて仕方がない。

三蔵は饅頭や葛きりなど甘味は好きだが、チョコレートのような洋菓子の匂いは好まない。
そんな彼にとって、この街中で漂う匂いは、拷問に等しかった。


あちこちから漂う匂いに誘われるように、悟空の足がふらふらと彷徨い出す。
それを悟浄が襟首を掴んで引き留め、しかし彼の紅い瞳もにやにやと笑みを浮かべていて、心なしか何かを期待しているような表情を浮かべている。
悟浄も三蔵と同じように甘いものは得意ではないのだが、年に一度、この日だけは別だ。


悟浄に襟首を掴まれたままの悟空が、微笑ましそうに眺めている八戒を見た。



「八戒、このニオイ、何?」
「チョコレートですよ」
「チョコ?」



八戒の言葉に、悟空の表情がぱっと弾む。

世界中の子供の多くが甘いものが好きである事に違わず、悟空も甘いものは大好物だ。
街中から漂う香りが、大好きな甘いものだと聞いて、心躍らない訳がない。


悟空は直ぐ様、保護者である三蔵の下に駆け寄る。



「さんぞ、さんぞー!」
「喧しい。静かにしてろ」



ぐいぐいと法衣を引っ張る悟空の要求は、三蔵には考えるまでもなく判ることだった。



「三蔵、チョコ食べたい!」
「ふざけんな。ンな無駄な金はない」
「えー!」



悟空は街中に響き渡るのではと思う程の大声で、保護者に不満を訴える。
不機嫌な最高僧はそれをすっぱり黙殺し、今日の宿屋を探すべく歩き出した。

一切の無視を決め込んだ背中を睨む子供。
それを遠目に眺めながら、悟浄と八戒は顔を見合わせて苦笑する。



「猿の事だから、知らねえだろうな」
「三蔵がわざわざ教える事もないでしょうし、ね」



肩を竦めた八戒の言葉に、悟浄も同意した。
二人が再び子供を見れば、それが真実である事を示すように、今一度保護者におねだりしようと駆け出している所だった。


─────もしも、悟空が今日と言う日の意味を知っているのなら、ああして保護者にチョコレートをねだる事もないだろう。
いや、今日と言う日の恩恵に(本来とは別の意味で)あやかろうと、結局はおねだりしたかも知れないが。

三蔵が今日と言う日を悟空に教えていなかった事は、特別、不思議な事ではない。
本人が神を信じていようがいまいが、彼が仏教徒である事、それに置いて最高位の人間である事は事実であるから、他宗教───八戒に言わせれば、これは宗教的な習慣とも異なるのだが───の行事など関係のない話だ。
そうでなくとも、世俗の浮付くような行事は、三蔵が基本的に嫌うものであった。
おまけに、子供が喜ぶような事となれば尚の事、後々の面倒臭さもあって、三蔵が養い子に知らぬ存ぜぬを貫くのも無理はない。


それで今までは問題なかった。
悟空だけでなく、三蔵も。

けれど、幼い子供の日々を終えて尚、未だに子供の域を脱しない悟空に、三蔵が苛立ちに似た感情を持て余しているのは、悟浄と八戒にとって明らかな事であった。


悟浄がにやりと口角を上げる。



「ま、いいんじゃね?三蔵様は甘いモン嫌いだし?」
「貴方も確かそうだったでしょう」
「今日だけは特別。甘いモン大かんげーい、って事で、おーい猿ー!」
「猿ってゆーな!」



悟浄が軽口で呼んでやれば、いつもの返事が跳んでくる。
そんな子供の反応に笑いながら、悟浄が悟空の頭をぐしゃぐしゃと掻き回した。



「付き合いの悪い野郎は放っといて、買い物行こうぜ」
「買い物?」



悟浄の言葉に、金瞳がきらりと輝く。

必要な物の買い出しを言い付けられた時、悟空は荷物持ちとしてついて行く事が多い。
小柄だが四人の中で一番力があるのは悟空だし、市場などで買い物をすると、見た目が幼い悟空は気風の良い店主に対してウケが良く、商品をおまけしてくれる事がよくあるのだ。
悟空としても、買い出しに行ったついでに、ご褒美として何某かを買って貰える事を密かに期待しているのだ。


ご褒美目当ての悟空にとって、一番ついて行って美味しいのは、悟浄だ。

財布の紐を握っており、且つ厳しい三蔵は、余程機嫌が良くなければワガママに付き合ってはくれない。
運が良ければ、安い食堂で食事にありつけるが、これはごくごく稀なケースである。
八戒の場合、三蔵よりも比較的ワガママを聞いて貰えるのだが、彼は金銭に関して非常にシビアな思考をしているので、タイミングが悪いと、ご褒美どころではなくなる。

それらに比べると、悟浄は非常にガードが甘い。
彼自身も、言い付けされた以外のものを買うので、気付いた時には言い付けられたものを忘れ、悟空とグルメツアー状態になる事も珍しくない。



きらきらと輝く悟空の眼を見て、悟浄は得意げに胸を張って見せる。



「折角だから、お前がさっきから食いたがってるモンも少しは買ってやるよ」
「ホント?チョコ食っていい?」
「後でちゃんと歯磨きするんですよ?」



八戒の言いつけに、悟空は大きく頷いて、諸手で喜んでいる。



「やった!早く行こ、行こ!……って、そうだ、三蔵」



勢い余って置いて行こうとしていた三蔵の事を思い出し、悟空が慌てて振り返る。
その時には、三蔵は既に遠い場所にいて、不機嫌オーラを背中で振り撒いている状態だった。

保護者の機嫌が最悪の状態である事を察して、呼び止めようとした悟空が凍り付く。



「なんかオレ、三蔵のこと怒らせた…?」
「さあ、どうでしょうねえ」



少しばかり不安そうに眉尻を下げる悟空の言葉に、八戒は曖昧に呟くに留めた。

遠ざかる金糸を見詰める金色の瞳に、微かに寂しさが灯る。
それを遮るように、悟浄が悟空の頭に腕を乗せて寄り掛かった。



「ほっとけ、ほっとけ。それよか、チョコ食いたいんだろ。早く行かねぇと、美味いモンは直ぐなくなるぜ」



悟浄の言葉に、悟空が「それはやだ!」と叫び、走り出す。
先ずは真正面にある洋菓子屋に突入する子供を、悟浄と八戒はのんびりと追い駆けた。




─────今日と言う日を知らない子供に、言葉もないのに察しろと言う方が無理なのだ。

矜持の高さが邪魔をして、自分が子供に、と言う事も出来ずにいて。
それでいて、余計な事をするなと言われても、同じ感情を持つ者として、わざわざ敵に塩を送る真似などする訳もあるまい。


不機嫌を通り越し、射殺すような視線で背中を刺されつつ、悟浄と八戒は思った。







バレンタインで久々悟空総受!
たまには三蔵に苦~い想いして貰おうと。三空の甘々を期待した方、すいませんでした。

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