[スコリノ]見えなくっても伝わるよ
バレンタインでラブラブカップル。恋愛初心者なスコールがいます。
はいっ、と言って差し出されたそれを見て、スコールは眉間の皺を深くした。
それを見た目の前の少女は、にこにこと笑みを崩さないまま、スコールが差し出された物を受け取るのを待っている。
どうすればいいんだ。
どうするのが正しいんだ。
立ち尽くしたまま、スコールはぐるぐると頭の中で問い掛ける。
目の前の少女に、此処にはいない幼馴染達に、ガーデンで身に付けた自分自身の知識に。
けれど、声に出してはいないから、少女は何も答えてはくれないし、幼馴染達は此処にいないし、学んできた知識の中にこれに該当しそうな答えは見つかりそうにない。
そもそも、簡単に答えが見つかってくれるのなら、こうして立ち尽くす必要はない。
可愛らしいピンクの包装紙と、ラメ入りのリボンを結んだ、ハートの形をした大きな箱。
直径20センチ程のそれを、スコールはただただ、見下ろした。
どうすればいいんだ。
どうしたらいいんだ。
先程と同じことをもう一度考える。
目の前の少女は、やはりにこにこと笑っていて、スコールの反応を待っている。
そのまま、一分か二分か、たっぷり固まった後で、ようやくスコールは動いた。
「…………」
無言のままでハートを受け取る。
と、途端に少女───リノアは喜びを全身で表すようにスコールに抱き着いて来た。
「はっぴーはっぴーバレンタイン!ありがと、スコール!」
「……それは、俺の台詞なんじゃないのか」
はっぴー云々はともかく、ありがとう、は間違いなく自分の台詞の筈だ。
頬を撫でる、さらりとした黒髪に心地良さを覚えながら、スコールは思う。
バレンタインと言う今日のこの日のイベントを、恋人が逃す筈がないのは判っていた。
数日前からこそこそと(バレバレだったけれど)準備に勤しみ、セルフィやキスティスを捉まえては何かを仕切りに尋ねていたり、スコールの顔を見ては何かを想像してにこにこと嬉しそうに笑ったり、かと思ったらはっと何かに気付いたように蒼くなって悩みだしたり……とにかく、忙しなかった。
それを見て、そしてゼルやアーヴァインの遠回し(しかしこれもバレバレであった)なお節介のお陰で、スコールも来たる今日と言う日の意味を理解して、当日を迎えていた。
少し前のスコールなら、今日が“何”の日であるかなど気に留めず、そのまま流れてしまう事もあっただろう。
実際、ガーデンで過ごした今日と言う日は、殆どそうして過ぎて行ったと思う。
よくよく思い起こせば、教室の自分の席であったり、ロッカーだったり、所謂“個人スペース”と言われるような場所に何かが置いてあった事もあったかも知れないが、スコールにとっては大して重要な記憶ではなかった為か、G.Fの副作用とは別に、殆ど思い出す事は出来なくなっていた。
そうしたスコールの性格を知っているから、ゼルやアーヴァインもお節介を焼いたのだろう。
あの戦いの日々の後、多少はスコールの周りへの態度は緩和したものの、やはり根は内向的な性格であるし、人の感情の機微に疎い部分がある。
これが原因で、出逢って間もない頃は恋人と諍いを起こす事も少なくなかったので、幼馴染達は彼らが心安らかに───ひいては自分達に要らぬとばっちりが来ないように───過ごせるようにと、スコールとその恋人の周りであれこれ世話を焼くのである。
ともかく────そんな幼馴染達のお陰で、スコールは、リノアが持ってきたハート型の箱の意味も判っている。
それでいて、差し出された時に「どうしたらいいんだ」と考えたのは、何も受け取りたくなかったから、と言う訳ではない。
差し出された時、胸の奥が心なしか温かくなったのも事実である。
だから判らなかったのは、受け取るか突き返すか、と言う事ではなくて、
(……どうしたらいいんだ)
はぐはぐ~といつもの不思議な言の葉で懐いてくるリノア。
最近、ようやく慣れてきた触れる温もりに、心密かに甘えながら、スコールは眉間の皺を更に深くしていく。
どうすればいいんだ。
どうしたらいいんだ。
延々と頭の中で同じ言葉を繰り返して、問い続ける。
リノアはまだくっついたままだ。
だから、スコールから彼女の顔は見えなくて、と言う事は、リノアにもスコールの顔が見えないと言う事だ。
それにひっそり、スコールは安堵していた。
どうして安堵なんてするのか、それは、
(どういう顔、したらいいんだ)
嬉しい。
温かい。
柔らかい。
それを教えてくれる彼女のように、スコールは笑えない。
どういう風に笑えば、彼女のように、そんな気持ちを伝える事が出来るだろう。
判らないからスコールは、彼女の細い体を抱き締めて、
「おっ、おっ?スコール君、なんか甘えたい感じ?」
「……多分」
「いいよー、バレンタインだもん。一杯はぐはぐしてあげる」
首の後ろに回された彼女の腕に、きゅ、と力が篭る。
どんな顔をすればいいのか判らない。
だから言葉の代わりに、精一杯の“ありがとう”の気持ちを込めて、抱き締める。
スコリノかわいい。この二人は、お互いに甘え甘やかしての関係がいいなあ。
ラグナ語録を考えるのも難しいけど、リノア語録はもっと難しい……
はいっ、と言って差し出されたそれを見て、スコールは眉間の皺を深くした。
それを見た目の前の少女は、にこにこと笑みを崩さないまま、スコールが差し出された物を受け取るのを待っている。
どうすればいいんだ。
どうするのが正しいんだ。
立ち尽くしたまま、スコールはぐるぐると頭の中で問い掛ける。
目の前の少女に、此処にはいない幼馴染達に、ガーデンで身に付けた自分自身の知識に。
けれど、声に出してはいないから、少女は何も答えてはくれないし、幼馴染達は此処にいないし、学んできた知識の中にこれに該当しそうな答えは見つかりそうにない。
そもそも、簡単に答えが見つかってくれるのなら、こうして立ち尽くす必要はない。
可愛らしいピンクの包装紙と、ラメ入りのリボンを結んだ、ハートの形をした大きな箱。
直径20センチ程のそれを、スコールはただただ、見下ろした。
どうすればいいんだ。
どうしたらいいんだ。
先程と同じことをもう一度考える。
目の前の少女は、やはりにこにこと笑っていて、スコールの反応を待っている。
そのまま、一分か二分か、たっぷり固まった後で、ようやくスコールは動いた。
「…………」
無言のままでハートを受け取る。
と、途端に少女───リノアは喜びを全身で表すようにスコールに抱き着いて来た。
「はっぴーはっぴーバレンタイン!ありがと、スコール!」
「……それは、俺の台詞なんじゃないのか」
はっぴー云々はともかく、ありがとう、は間違いなく自分の台詞の筈だ。
頬を撫でる、さらりとした黒髪に心地良さを覚えながら、スコールは思う。
バレンタインと言う今日のこの日のイベントを、恋人が逃す筈がないのは判っていた。
数日前からこそこそと(バレバレだったけれど)準備に勤しみ、セルフィやキスティスを捉まえては何かを仕切りに尋ねていたり、スコールの顔を見ては何かを想像してにこにこと嬉しそうに笑ったり、かと思ったらはっと何かに気付いたように蒼くなって悩みだしたり……とにかく、忙しなかった。
それを見て、そしてゼルやアーヴァインの遠回し(しかしこれもバレバレであった)なお節介のお陰で、スコールも来たる今日と言う日の意味を理解して、当日を迎えていた。
少し前のスコールなら、今日が“何”の日であるかなど気に留めず、そのまま流れてしまう事もあっただろう。
実際、ガーデンで過ごした今日と言う日は、殆どそうして過ぎて行ったと思う。
よくよく思い起こせば、教室の自分の席であったり、ロッカーだったり、所謂“個人スペース”と言われるような場所に何かが置いてあった事もあったかも知れないが、スコールにとっては大して重要な記憶ではなかった為か、G.Fの副作用とは別に、殆ど思い出す事は出来なくなっていた。
そうしたスコールの性格を知っているから、ゼルやアーヴァインもお節介を焼いたのだろう。
あの戦いの日々の後、多少はスコールの周りへの態度は緩和したものの、やはり根は内向的な性格であるし、人の感情の機微に疎い部分がある。
これが原因で、出逢って間もない頃は恋人と諍いを起こす事も少なくなかったので、幼馴染達は彼らが心安らかに───ひいては自分達に要らぬとばっちりが来ないように───過ごせるようにと、スコールとその恋人の周りであれこれ世話を焼くのである。
ともかく────そんな幼馴染達のお陰で、スコールは、リノアが持ってきたハート型の箱の意味も判っている。
それでいて、差し出された時に「どうしたらいいんだ」と考えたのは、何も受け取りたくなかったから、と言う訳ではない。
差し出された時、胸の奥が心なしか温かくなったのも事実である。
だから判らなかったのは、受け取るか突き返すか、と言う事ではなくて、
(……どうしたらいいんだ)
はぐはぐ~といつもの不思議な言の葉で懐いてくるリノア。
最近、ようやく慣れてきた触れる温もりに、心密かに甘えながら、スコールは眉間の皺を更に深くしていく。
どうすればいいんだ。
どうしたらいいんだ。
延々と頭の中で同じ言葉を繰り返して、問い続ける。
リノアはまだくっついたままだ。
だから、スコールから彼女の顔は見えなくて、と言う事は、リノアにもスコールの顔が見えないと言う事だ。
それにひっそり、スコールは安堵していた。
どうして安堵なんてするのか、それは、
(どういう顔、したらいいんだ)
嬉しい。
温かい。
柔らかい。
それを教えてくれる彼女のように、スコールは笑えない。
どういう風に笑えば、彼女のように、そんな気持ちを伝える事が出来るだろう。
判らないからスコールは、彼女の細い体を抱き締めて、
「おっ、おっ?スコール君、なんか甘えたい感じ?」
「……多分」
「いいよー、バレンタインだもん。一杯はぐはぐしてあげる」
首の後ろに回された彼女の腕に、きゅ、と力が篭る。
どんな顔をすればいいのか判らない。
だから言葉の代わりに、精一杯の“ありがとう”の気持ちを込めて、抱き締める。
スコリノかわいい。この二人は、お互いに甘え甘やかしての関係がいいなあ。
ラグナ語録を考えるのも難しいけど、リノア語録はもっと難しい……