[フリスコ]特別なのは僕だけなんだと思いたくて
2月8日でフリスコの日!!
1人で荒山を登るスコールを見付けたのは、ティーダだった。
今朝はバッツとジタンと共に聖域を出発した筈の彼が、何故1人で。
早速駆け寄ったティーダが、その疑問について訊ねると、闇の神殿での戦闘中、空間の歪みと転移に巻き込まれ、バラバラにされてしまったのだと言う。
ジタンやバッツの事だから安否については問題ないだろうと信じ、一先ず聖域に戻ろうと言う所で、ティーダ・フリオニール・クラウド・セシルの4人の探索ルートに重なったようだ。
スコールの衣服は、あちこち煤けて、土埃に塗れていた。
転移した先で、上級種のイミテーションを何度か相手にしたらしい。
運悪く魔法攻撃を得意とする死神や魔女と出くわした為、少々手こずった、と彼は言った。
だが、大きな怪我は負っていなかったようで、ポーションや回復魔法が必要になる事もなかったのは幸いと言えるだろう。
それから、「じゃあ俺は戻るから」と言って、一行と別れようとしたスコールだったが、
「折角だから一緒に行くっスよ!」
と言って、ティーダが強引にパーティメンバーに引き入れた。
ティーダ達は素材集めの為に荒野に出ていたのだが、トレードに必要になりそうなものは既に集め終っていた。
スコールを見付けたのは、帰路になる道を歩きながら、もう少し収集するか、切り上げるかと相談していた所だったのだ。
メンバーが増える事を吝かに思うメンバーは、此処にはいない。
スコールは判り易く渋面を作っていたが、ティーダはそんな事はお構いなしで、スコールの背を押して進み出した。
そんなティーダに、スコールは溜息を一つ吐いて、大人しくパーティの輪に加わる事となった。
その一部始終を、フリオニールは少し遠巻きになって眺めていた。
視線の先で、ティーダが賑やかにスコールに話しかけ、スコールは時折相槌を打っているようで、その度、ティーダが嬉しそうに笑っている。
「仲が良いね」
聞こえた声にフリオニールが振り返れば、笑みを浮かべたセシルがいた。
「そうだな」
「妬ける?」
「え?」
淡白になってしまった反応の後、投げかけられた言葉に、フリオニールは思わずもう一度振り返った。
セシルは口元に意味深な笑みを梳いていて、小さく首を傾げてフリオニールを見詰めている。
さっきのは一体どういう意味、と問いかけようとしたフリオニールだったが、
「判るぞ、フリオニール。判っていても、あそこまで仲が良いとつい妬けてしまうものだ」
「え?……え?」
「ティーダも、折角だから譲れば良いのにね。嬉しいのは判るけど」
「少し前までなら、絶対に断っただろうからな。だが、あれは少し一人占めし過ぎだろう」
「え……え?え?」
ちょっと言って来よう、と言って、クラウドは足早にティーダとスコールの下へ急いだ。
クラウドはティーダに声をかけると、二言三言。
ティーダはクラウドの陰からフリオニールを振り返り、スコールに何か伝えると、クラウドと並んで歩き出した。
スコールが足を止め、置いてけぼりになっている。
どうしたのだろう、とフリオニールが首を傾げていると、ぽん、とセシルに軽く背中を叩かれた。
なんだろう、と思って隣を見た時には、其処には既にセシルはおらず、立ち止まったスコールを追い抜いて、ティーダとクラウドに合流している。
フリオニールは立ち止まっているスコールに追い付くと、自身も足を止め、スコールに声をかけた。
「スコール、どうかしたか?」
「……」
自分よりも僅かに低い位置にあるスコールの顔を覗き込むと、青灰色がじっと静かに見詰め返して来た。
色の薄い唇が微かに開いて、しかし直ぐに閉じる。
「スコール?」
「………」
俯いたスコールの頬が、微かに赤い。
その事に気付いて、フリオニールは慌てた。
「どうしたんだ?気分が悪い、とか?」
「……いや……」
「セシルに言ってエスナをかけて貰った方が」
「いい」
「でも」
「いい」
要らない、と言うスコールに、でも、ともう一度言いかけて、フリオニールは口を噤んだ。
スコールはプライドが高いし、あれこれと干渉されるのは嫌かも知れない。
心配する気持ちは消えないものの、ただ顔が赤いだけだから、今はそっとしておくべきか。
若しも、先のイミテーションとの戦闘で負傷した事を隠しているのなら、もう少しだけ様子を見て、無理をしているようなら、今度こそセシルに伝えよう、と思っていると、
「……行こう。フリオニール」
「え?────あ、そう、だな」
歩き出したスコールに促され、進行方向へ向き直れば、いつの間にかティーダ達とかなりの距離が開いていた。
仲間達に追い付くべく、心なしか早足で歩いていたフリオニールだが、ふと、隣を歩くスコールの足下に違和感を感じて、視線を落とした。
スコールは微かに赤らんだ顔をしているものの、表情そのものはいつもと変わらない。
気の所為か、と思ってまた前を向いたフリオニールだったが、
「っ……」
「スコール?」
何かを耐えるようにスコールが息を殺した事に気付いて、フリオニールは先程の違和感が気の所為ではない事を確信した。
フリオニールはスコールの手を掴んで、足を止めた。
「スコール、お前、怪我してるんじゃないか」
「……挫いただけだ。問題ない」
「駄目だろう。セシルに言って回復を」
「こんな事で魔力を無駄遣いさせるな」
スコールの言っている事は最もだ。
挫いたり捻ったりと言う程度なら、魔法に頼らずとも、処置だけで十分だ。
些細な事で一々魔法に頼っていては、魔力が幾らあっても足りない。
「…本当に大丈夫なのか?この山、結構険しいし…」
「問題ない」
フリオニールが顔を上げると、まだ山の頂上には程遠く、勾配の高い坂が延々と続いている。
この近辺では、此処が一番高い山なので、此処さえ越してしまえば後は楽なのだが、足下の痛みはこの坂道には大きなネックだろう。
無理に歩き続けていたら、余計に悪くなってしまうかも知れない。
だが、スコールは平静な顔をしたまま、歩く足を再開させる。
その足取りは先程と変わりなく、常の歩き方と何も変わらりなく────つまり、挫いた足を庇う事なく無理に動かしていると言う事で。
きっとスコールは、聖域に帰るまで、こうやって無理を押し通すのだろう。
前を歩く仲間達に、余計な心配をさせないように。
少しの間、先を行くスコールの背中を見ていたフリオニールは、意を決したように拳を握り、スコールの下へ駆け寄って、
「スコール」
「!」
重力に従って垂れていた彼の右腕を掴んで、引いた。
半歩前に出たフリオニールを見て、スコールは目を丸くしてフリオニールを見上げる。
「頂上まで、俺がスコールを引っ張るよ」
「な……」
「掴まるものがあれば、登るのも楽だろう。上まで行ったら離して良いから、それまで」
「……」
零れんばかりに見開かれていた瞳が、細くなってフリオニールを睨む。
それを受けて、やっぱり余計な世話だったかな、と思ったフリオニールだったが、
「……助かる」
小さく呟いて、スコールは、緩くフリオニールの手を握り返した。
僅かに視線を逸らしたスコールの頬は、先程と同じように、ほんのりと赤らんでいる。
一瞬、虚を突かれた気分だったフリオニールだったが、ああ、と笑顔で頷き返した。
フリオニールは前を向いて、先を行く3人を負って山を登る。
後ろついて来るスコールの為にも、殊更に急がないように、彼の負担にならないように気を付けながら。
繋いだ手は、自重を支える手に頼るように、時折、強い力で握られる。
────そう言えば、とふとフリオニールは後ろを振り返り、
「スコール。さっき、ティーダ達と何の話をしていたんだ?」
「…何を、って?」
「ほら、さっき、立ち止まってただろう。あの前に、ティーダとクラウドと話をしていたようだけど」
「……気になるのか?」
手を引かれ、俯いたままのスコールの言葉に、フリオニールはきょとんと瞬きを一つ。
「え…と…まあ、気になる、と言えば、気になる…かな……?」
曖昧な返答を返すのが、フリオニールには精一杯だった。
何せ、あの会話の直後、スコールが立ち止まって顔を赤くしていたのだ。
スコールがそうして判り易く表情を崩すのは珍しいもので、一体どうやって彼にそんな顔をさせたのか、フリオニールは不思議でならない。
仲間達よりも、多分、自分はスコールに近い場所にいる事を赦して貰えている筈だけれど、あんな風に赤い顔をしているのは見た事がなかった────と思う。
けれども、話の内容を詮索するなんて、図々しかったかな、とフリオニールが考えていると、くすり、と背後で笑う気配。
まさかと思って振り返ると、口元に微かな笑みを浮かべたスコールがいて、
「悪いが、教えない」
そう言ったスコールが、珍しく、酷く楽しそうに見えて、フリオニールはぽかんとして「…そ、そうか」と返すのが精一杯だった。
仲間達は、もう随分と前の方に行ってしまったらしい。
早く追い付かないと、と思いつつ、フリオニールは歩く速度を上げられなかった。
繋いだ場所から伝わる温もりを、もう少しだけ長く感じていたかったから。
『スコール、ティーダ。仲が良いのは良いが、フリオニールが妬いてるぞ』
『……は?』
『フリオが?…あー、そっかそっか。ごめん、スコール』
『俺達は先に行くから、お前達は後でゆっくり来ると良い』
『っスね。もう邪魔しないからさ。あれ、セシルは?』
『すぐ来るさ。じゃあな、スコール』
『……おい……』
『スコール。足、痛いんだろう?フリオニールとゆっくりおいで。この辺りは敵もいないようだから』
好き勝手に言って、先に行ってしまった仲間達の言葉を、半分信じていなかった。
何処までも真っ直ぐな彼が、自分なんかの事で“嫉妬”なんて、考えられなくて。
妬いてるなんて嘘だろう、としか思えなくて。
でも、本当にそう思ってくれたなら、ほんの少しだけ、嬉しいと思ってしまう自分がいた。
ティーダと喋ってる事には妬いてなかったけど、珍しい反応してる事には妬いたらしい。
フリスコ難しい…!こんなでもフリスコだと言い張る。
鈍感×鈍感って初めてです。
1人で荒山を登るスコールを見付けたのは、ティーダだった。
今朝はバッツとジタンと共に聖域を出発した筈の彼が、何故1人で。
早速駆け寄ったティーダが、その疑問について訊ねると、闇の神殿での戦闘中、空間の歪みと転移に巻き込まれ、バラバラにされてしまったのだと言う。
ジタンやバッツの事だから安否については問題ないだろうと信じ、一先ず聖域に戻ろうと言う所で、ティーダ・フリオニール・クラウド・セシルの4人の探索ルートに重なったようだ。
スコールの衣服は、あちこち煤けて、土埃に塗れていた。
転移した先で、上級種のイミテーションを何度か相手にしたらしい。
運悪く魔法攻撃を得意とする死神や魔女と出くわした為、少々手こずった、と彼は言った。
だが、大きな怪我は負っていなかったようで、ポーションや回復魔法が必要になる事もなかったのは幸いと言えるだろう。
それから、「じゃあ俺は戻るから」と言って、一行と別れようとしたスコールだったが、
「折角だから一緒に行くっスよ!」
と言って、ティーダが強引にパーティメンバーに引き入れた。
ティーダ達は素材集めの為に荒野に出ていたのだが、トレードに必要になりそうなものは既に集め終っていた。
スコールを見付けたのは、帰路になる道を歩きながら、もう少し収集するか、切り上げるかと相談していた所だったのだ。
メンバーが増える事を吝かに思うメンバーは、此処にはいない。
スコールは判り易く渋面を作っていたが、ティーダはそんな事はお構いなしで、スコールの背を押して進み出した。
そんなティーダに、スコールは溜息を一つ吐いて、大人しくパーティの輪に加わる事となった。
その一部始終を、フリオニールは少し遠巻きになって眺めていた。
視線の先で、ティーダが賑やかにスコールに話しかけ、スコールは時折相槌を打っているようで、その度、ティーダが嬉しそうに笑っている。
「仲が良いね」
聞こえた声にフリオニールが振り返れば、笑みを浮かべたセシルがいた。
「そうだな」
「妬ける?」
「え?」
淡白になってしまった反応の後、投げかけられた言葉に、フリオニールは思わずもう一度振り返った。
セシルは口元に意味深な笑みを梳いていて、小さく首を傾げてフリオニールを見詰めている。
さっきのは一体どういう意味、と問いかけようとしたフリオニールだったが、
「判るぞ、フリオニール。判っていても、あそこまで仲が良いとつい妬けてしまうものだ」
「え?……え?」
「ティーダも、折角だから譲れば良いのにね。嬉しいのは判るけど」
「少し前までなら、絶対に断っただろうからな。だが、あれは少し一人占めし過ぎだろう」
「え……え?え?」
ちょっと言って来よう、と言って、クラウドは足早にティーダとスコールの下へ急いだ。
クラウドはティーダに声をかけると、二言三言。
ティーダはクラウドの陰からフリオニールを振り返り、スコールに何か伝えると、クラウドと並んで歩き出した。
スコールが足を止め、置いてけぼりになっている。
どうしたのだろう、とフリオニールが首を傾げていると、ぽん、とセシルに軽く背中を叩かれた。
なんだろう、と思って隣を見た時には、其処には既にセシルはおらず、立ち止まったスコールを追い抜いて、ティーダとクラウドに合流している。
フリオニールは立ち止まっているスコールに追い付くと、自身も足を止め、スコールに声をかけた。
「スコール、どうかしたか?」
「……」
自分よりも僅かに低い位置にあるスコールの顔を覗き込むと、青灰色がじっと静かに見詰め返して来た。
色の薄い唇が微かに開いて、しかし直ぐに閉じる。
「スコール?」
「………」
俯いたスコールの頬が、微かに赤い。
その事に気付いて、フリオニールは慌てた。
「どうしたんだ?気分が悪い、とか?」
「……いや……」
「セシルに言ってエスナをかけて貰った方が」
「いい」
「でも」
「いい」
要らない、と言うスコールに、でも、ともう一度言いかけて、フリオニールは口を噤んだ。
スコールはプライドが高いし、あれこれと干渉されるのは嫌かも知れない。
心配する気持ちは消えないものの、ただ顔が赤いだけだから、今はそっとしておくべきか。
若しも、先のイミテーションとの戦闘で負傷した事を隠しているのなら、もう少しだけ様子を見て、無理をしているようなら、今度こそセシルに伝えよう、と思っていると、
「……行こう。フリオニール」
「え?────あ、そう、だな」
歩き出したスコールに促され、進行方向へ向き直れば、いつの間にかティーダ達とかなりの距離が開いていた。
仲間達に追い付くべく、心なしか早足で歩いていたフリオニールだが、ふと、隣を歩くスコールの足下に違和感を感じて、視線を落とした。
スコールは微かに赤らんだ顔をしているものの、表情そのものはいつもと変わらない。
気の所為か、と思ってまた前を向いたフリオニールだったが、
「っ……」
「スコール?」
何かを耐えるようにスコールが息を殺した事に気付いて、フリオニールは先程の違和感が気の所為ではない事を確信した。
フリオニールはスコールの手を掴んで、足を止めた。
「スコール、お前、怪我してるんじゃないか」
「……挫いただけだ。問題ない」
「駄目だろう。セシルに言って回復を」
「こんな事で魔力を無駄遣いさせるな」
スコールの言っている事は最もだ。
挫いたり捻ったりと言う程度なら、魔法に頼らずとも、処置だけで十分だ。
些細な事で一々魔法に頼っていては、魔力が幾らあっても足りない。
「…本当に大丈夫なのか?この山、結構険しいし…」
「問題ない」
フリオニールが顔を上げると、まだ山の頂上には程遠く、勾配の高い坂が延々と続いている。
この近辺では、此処が一番高い山なので、此処さえ越してしまえば後は楽なのだが、足下の痛みはこの坂道には大きなネックだろう。
無理に歩き続けていたら、余計に悪くなってしまうかも知れない。
だが、スコールは平静な顔をしたまま、歩く足を再開させる。
その足取りは先程と変わりなく、常の歩き方と何も変わらりなく────つまり、挫いた足を庇う事なく無理に動かしていると言う事で。
きっとスコールは、聖域に帰るまで、こうやって無理を押し通すのだろう。
前を歩く仲間達に、余計な心配をさせないように。
少しの間、先を行くスコールの背中を見ていたフリオニールは、意を決したように拳を握り、スコールの下へ駆け寄って、
「スコール」
「!」
重力に従って垂れていた彼の右腕を掴んで、引いた。
半歩前に出たフリオニールを見て、スコールは目を丸くしてフリオニールを見上げる。
「頂上まで、俺がスコールを引っ張るよ」
「な……」
「掴まるものがあれば、登るのも楽だろう。上まで行ったら離して良いから、それまで」
「……」
零れんばかりに見開かれていた瞳が、細くなってフリオニールを睨む。
それを受けて、やっぱり余計な世話だったかな、と思ったフリオニールだったが、
「……助かる」
小さく呟いて、スコールは、緩くフリオニールの手を握り返した。
僅かに視線を逸らしたスコールの頬は、先程と同じように、ほんのりと赤らんでいる。
一瞬、虚を突かれた気分だったフリオニールだったが、ああ、と笑顔で頷き返した。
フリオニールは前を向いて、先を行く3人を負って山を登る。
後ろついて来るスコールの為にも、殊更に急がないように、彼の負担にならないように気を付けながら。
繋いだ手は、自重を支える手に頼るように、時折、強い力で握られる。
────そう言えば、とふとフリオニールは後ろを振り返り、
「スコール。さっき、ティーダ達と何の話をしていたんだ?」
「…何を、って?」
「ほら、さっき、立ち止まってただろう。あの前に、ティーダとクラウドと話をしていたようだけど」
「……気になるのか?」
手を引かれ、俯いたままのスコールの言葉に、フリオニールはきょとんと瞬きを一つ。
「え…と…まあ、気になる、と言えば、気になる…かな……?」
曖昧な返答を返すのが、フリオニールには精一杯だった。
何せ、あの会話の直後、スコールが立ち止まって顔を赤くしていたのだ。
スコールがそうして判り易く表情を崩すのは珍しいもので、一体どうやって彼にそんな顔をさせたのか、フリオニールは不思議でならない。
仲間達よりも、多分、自分はスコールに近い場所にいる事を赦して貰えている筈だけれど、あんな風に赤い顔をしているのは見た事がなかった────と思う。
けれども、話の内容を詮索するなんて、図々しかったかな、とフリオニールが考えていると、くすり、と背後で笑う気配。
まさかと思って振り返ると、口元に微かな笑みを浮かべたスコールがいて、
「悪いが、教えない」
そう言ったスコールが、珍しく、酷く楽しそうに見えて、フリオニールはぽかんとして「…そ、そうか」と返すのが精一杯だった。
仲間達は、もう随分と前の方に行ってしまったらしい。
早く追い付かないと、と思いつつ、フリオニールは歩く速度を上げられなかった。
繋いだ場所から伝わる温もりを、もう少しだけ長く感じていたかったから。
『スコール、ティーダ。仲が良いのは良いが、フリオニールが妬いてるぞ』
『……は?』
『フリオが?…あー、そっかそっか。ごめん、スコール』
『俺達は先に行くから、お前達は後でゆっくり来ると良い』
『っスね。もう邪魔しないからさ。あれ、セシルは?』
『すぐ来るさ。じゃあな、スコール』
『……おい……』
『スコール。足、痛いんだろう?フリオニールとゆっくりおいで。この辺りは敵もいないようだから』
好き勝手に言って、先に行ってしまった仲間達の言葉を、半分信じていなかった。
何処までも真っ直ぐな彼が、自分なんかの事で“嫉妬”なんて、考えられなくて。
妬いてるなんて嘘だろう、としか思えなくて。
でも、本当にそう思ってくれたなら、ほんの少しだけ、嬉しいと思ってしまう自分がいた。
ティーダと喋ってる事には妬いてなかったけど、珍しい反応してる事には妬いたらしい。
フリスコ難しい…!こんなでもフリスコだと言い張る。
鈍感×鈍感って初めてです。