[サイスコ]びっくりさせる筈だった
サイファー誕生日でサイスコ!
三日前に入った緊急の任務は、大した内容ではなかった。
ドール郊外に巣を作り、最寄駅で列車を襲う魔物を退治してくれ、と言うもので、わざわざサイファーが出張らねばならない物でもない。
慢性的な人手不足にも関わらず、時間を持て余していたサイファーに、キスティスが「暇なら行って来て頂戴」と寄越しただけの事。
自分がデスクワークに向く性質ではない事を自覚しているサイファーは、これ幸いにと机から逃げ出し、早朝から大陸横断鉄道に乗ってドールへと出発した。
魔物は少々数が多かったが、サイファーの手を煩わせる程の事ではない。
面倒だったことと言えば、コロニー的な巣があちこちに分散していた事で、後でこれを再利用されない為に全て燃やし潰さねばならなかった事だ。
経費で借りたレンタカーを走らせ、あちらこちらへ走り回り、それで丸一日を使ってようやく全ての巣を駆除する事が出来た。
夕焼けの沈むドールを後にすれば、バラムに帰った時にはすっかり夜。
適度な運動をこなしたお陰か、ガーデン校門を潜る頃、サイファーの口からは欠伸が漏れていた。
報告書は明日書いて提出するとして、今日はさっさと風呂に入って寝ちまおう、と思いつつ、寮へと向かう。
そして辿り着いた我が家───寮部屋───に、明かりが灯っている事に気付いた。
サイファーの部屋に、彼のテリトリーだと判っていて入って来る人間はごく少数で、更に滞在しているとなると、一人しかいない。
(また俺の部屋で寝てんのか)
サイファーの部屋が、自分の部屋よりも指揮官室から近い距離にあるからと、彼はしょっちゅうサイファーの部屋に寝泊まりする。
その時、部屋の持主の都合は全く考慮されておらず、正しく勝手知ったる何とやらだ。
傍迷惑と言えば傍迷惑なのだが、早朝に会議を予定している筈なのに、昏々と自室で眠り続けていた(日頃の疲れもあるので仕方がないとは思うが、それで回らないのが世の中だ)彼を、指揮官室から寮の奥にある部屋へと呼び付けに行く回数が増えた頃、サイファーは彼を好きにさせる事にした。
自分が目が覚めた時、彼がまだ横で眠りこけていれば、その場で起こしてやる事が出来る。
───そんな経緯で、彼の行動を容認してしまう位に、サイファーが彼の世話を焼くのは当たり前の事となっていた。
部屋の扉には、ロックがかかっていない。
相変わらずの不用心さに呆れるものの、彼と幼馴染以外の人間がサイファーの部屋を訪れる事はない。
仮に泥棒でも入ろうものなら、どんな目に遭うか、知らない者はバラムガーデンにはいるまい。
だが、習慣として、鍵をかける癖はつけろと言っているのに、彼は今日もアンロック状態で寝ているようだ。
やれやれ、と思いながらドアを開けようとして、サイファーはパネルスイッチを押す手を止める。
部屋の中で、ごそごそと人が動いている気配があった。
(起きてんのか)
寝ているものとばかり思っていたので、少々虚を突かれた。
が、彼が起きているからと言って如何する訳でもない。
サイファーは改めてパネルスイッチを押して、自分の部屋へと入室した。
「おーい。帰ったぞー」
活動している筈の彼に声をかけるが、返事はなかった。
入って直ぐに目につくベッドにも、彼の姿はなく、珍しい事に、使った形跡さえも残っていなかった。
妙だな、と思っていると、キッチンの方からガシャガシャと言う音がする。
なんとなく嫌な予感を感じて、サイファーの眉間に深い皺が寄せられた。
恋人のそれと酷似した皺をそのままに、何してやがるんだ、とキッチンを覗き込む。
─────其処にあった光景を見て、サイファーは深々と溜息を吐いた。
「……おかえり」
キッチン台の前に立っていた恋人────スコールが此方を見て言った。
スコールの眉間には、今のサイファーよりも更に深い皺が寄せられている。
如何にも不機嫌ですと言わんばかりの表情は、幸か不幸か、サイファーに向けられたものではない事が判る。
スコールを不機嫌にさせているのは、多分、恐らく、十中八九、彼の前髪や横髪、頬にぺったりとくっついている、白い液体の所為だろう。
「……お前、何してんだ」
サイファーが胡乱な目で問うと、スコールは無言で自分の腕に抱えているものを見下ろした。
其処には銀色のボウルがあり、中には白い液体がなみなみと揺れており、泡立て器が入っている。
泡立て器があると言う事は、あの白い液体を掻き混ぜていたのだろうと推察されるが、それにしても一体どうやって掻き混ぜていたのだろうか。
スコールの周囲には、彼を中心に半径一メートル前後、白い液体があっちへこっちへと散らかっていた。
スコールは唇を尖らせて、ボウルをキッチン台に置いた。
来ているTシャツの裾を引っ張って、ごしごしと顔を拭くスコールを見て、サイファーは眉根を寄せる。
ずかずかと彼に近付くと、サイファーはスコールの腕を掴んで、顔を拭く手を止めさせた。
「拭くなら、ちゃんとタオル使え。つか、そのシャツも汚れてんじゃねえか」
「………」
白いシャツを着ていたので、遠目には判らなかったが、スコールの服にも白い液体は付着していた。
スコールも言われてようやく気付いたのか、摘まんでいたシャツを見下ろして、「本当だ」と言いたげな雰囲気を滲ませる。
ああ、もう。
サイファーはこれみよがしに溜息を吐いてやると、掴んでいたスコールの腕を引っ張った。
スコールは特に抵抗する事もなく、サイファーの後ろをついて来る。
一体何をしたんだ、とぶつぶつと愚痴を零しながら、サイファーは洗面所に入ると、タオルを取り出した。
スコールの顔や髪に付着している白い液体を、ごしごしと乱暴に拭ってやると、スコールは「…痛い」と呟いたが、されるがままに大人しくしている。
「で、お前は一体、何をしようとしてたんだ?」
髪にこびり付いている白い液体を拭いながら訊ねるサイファーに、スコールは唇を尖らせる。
何を拗ねてるんだ、拗ねたいのはこっちだ、と思ったサイファーだが、ふと、スコールの白い頬がほんのりと赤らんでいる事に気付いた。
じい、と青灰色の瞳がサイファーを見詰める。
何かを言いたげな、しかし中々それを口に出そうとしないスコールに、サイファーは今日何度目か知れない溜息を吐く。
こういう時、のんびりと待ってやるのも良いが、それでは明日の朝日が昇ってしまう。
少し突いてやると、余程意固地になっている時でもなければ、スコールはなんとか言葉を絞り出せる。
「何だよ?」
「………」
「あ?」
「…………」
傍目に聞いていると、サイファーは完全に喧嘩腰だったが、此処にいるのはスコールのみ。
スコールはしばらくサイファーの顔を見詰め返した後、ぼそぼそと、小さな声で呟く。
「……あんた…」
「ん?」
「………あんたの……」
「俺の?」
「………誕生日……」
聞こえるか聞こえないか。
正しく、蚊の泣くような声で、スコールは言った。
直後、スコールはサイファーの手からタオルを引っ手繰り、サイファーの顔面に投げつけた。
然程湿気を含んでいる訳でもないタオルは、ふわりとサイファーの顔を襲っただけで、ダメージにはならない。
どたどたと騒がしい足音が遠退いて、サイファーがタオルを取ると、既にスコールは其処にいなかった。
洗面所を出てベッドを見れば、丸くなっている猫がいる。
此処を出て行こうとはしないんだな、と思いつつ、サイファーはキッチンへ入った。
キッチンは相変わらず、あちこちに白い液体を飛び散らせており、キッチン台周りは特に悲惨な状態だ。
そんな中、ぽつんと忘れ去られているボウルを覗き込むと、先刻と同じ、真っ白な液体がたっぷりと入っている。
流し台の三角コーナーを見ると、ホイップクリームの200mlパックが捨てられていた。
(俺の、誕生日、ね)
成程、と。
スコールが何をしようとしていたのか判って、サイファーの唇に笑みが浮かぶ。
サイファーはがしがしと頭を掻いた。
(普段からまともに飯も作れねえ癖に)
スコールは普段、日常生活に必要なる物事の殆どを、サイファーに任せきりにしている。
寮部屋を出ると(嫌々やらされているとは言え)指揮官としての見栄と言うか、人目が気になるのか、如何にも何でも完璧にこなして見せるが、その実、かなりの物臭である。
サイファーが面倒を見る事が当たり前になってからは、それも日々根深くなっているように見受けられる。
料理に関しては、全く駄目だ。
調理実習やサバイバル訓練で必要な技能は持っているが、それ以外の知識はからっきし。
その上、人目が気にならないと、張り詰めている糸が切れるのか、焼けば焦がすし、刻めば手を切るし、煮詰めていると熱くなった鍋に触って火傷をする。
そんな彼が、バースディケーキなど、まともに作れる訳もない。
(どーせ、固まらねえからって滅茶苦茶に掻き混ぜたんだろうな…)
無表情のまま、ムキになってホイップを掻き混ぜ続ける姿が浮かんで、サイファーは笑った。
やれやれ、と思いつつ、サイファーは雑巾を手に取った。
あちこちに飛び散ったホイップの掃除が終わったら、ボウルに入っているクリームを完成させよう。
それからスポンジを作って、これでもかと豪勢なデコレーションをしてやろう。
「嫌味か」と言う姿が想像できたが、その後、黙々とケーキを頬張る恋人が見れるに違いない。
ロマンティックとは程遠い、誕生日プレゼント未満。
自分の手で完成させて、恋人に食べさせてやるのも、まあまあ悪くないのではないだろうか。
サイファー誕生日おめでとう!
いつもサイファーが全部やってるから、たまにはびっくりさせてやろう(と言う体で)と思って誕生日ケーキ作ろうとしたけど、結局出来なかったスコールでした。
何故かサイスコになると、うちのスコールは本当に駄目な子になるようだ。
でもそんなスコールも可愛いじゃないか。サイファーに世話焼かれてると良いよ。
三日前に入った緊急の任務は、大した内容ではなかった。
ドール郊外に巣を作り、最寄駅で列車を襲う魔物を退治してくれ、と言うもので、わざわざサイファーが出張らねばならない物でもない。
慢性的な人手不足にも関わらず、時間を持て余していたサイファーに、キスティスが「暇なら行って来て頂戴」と寄越しただけの事。
自分がデスクワークに向く性質ではない事を自覚しているサイファーは、これ幸いにと机から逃げ出し、早朝から大陸横断鉄道に乗ってドールへと出発した。
魔物は少々数が多かったが、サイファーの手を煩わせる程の事ではない。
面倒だったことと言えば、コロニー的な巣があちこちに分散していた事で、後でこれを再利用されない為に全て燃やし潰さねばならなかった事だ。
経費で借りたレンタカーを走らせ、あちらこちらへ走り回り、それで丸一日を使ってようやく全ての巣を駆除する事が出来た。
夕焼けの沈むドールを後にすれば、バラムに帰った時にはすっかり夜。
適度な運動をこなしたお陰か、ガーデン校門を潜る頃、サイファーの口からは欠伸が漏れていた。
報告書は明日書いて提出するとして、今日はさっさと風呂に入って寝ちまおう、と思いつつ、寮へと向かう。
そして辿り着いた我が家───寮部屋───に、明かりが灯っている事に気付いた。
サイファーの部屋に、彼のテリトリーだと判っていて入って来る人間はごく少数で、更に滞在しているとなると、一人しかいない。
(また俺の部屋で寝てんのか)
サイファーの部屋が、自分の部屋よりも指揮官室から近い距離にあるからと、彼はしょっちゅうサイファーの部屋に寝泊まりする。
その時、部屋の持主の都合は全く考慮されておらず、正しく勝手知ったる何とやらだ。
傍迷惑と言えば傍迷惑なのだが、早朝に会議を予定している筈なのに、昏々と自室で眠り続けていた(日頃の疲れもあるので仕方がないとは思うが、それで回らないのが世の中だ)彼を、指揮官室から寮の奥にある部屋へと呼び付けに行く回数が増えた頃、サイファーは彼を好きにさせる事にした。
自分が目が覚めた時、彼がまだ横で眠りこけていれば、その場で起こしてやる事が出来る。
───そんな経緯で、彼の行動を容認してしまう位に、サイファーが彼の世話を焼くのは当たり前の事となっていた。
部屋の扉には、ロックがかかっていない。
相変わらずの不用心さに呆れるものの、彼と幼馴染以外の人間がサイファーの部屋を訪れる事はない。
仮に泥棒でも入ろうものなら、どんな目に遭うか、知らない者はバラムガーデンにはいるまい。
だが、習慣として、鍵をかける癖はつけろと言っているのに、彼は今日もアンロック状態で寝ているようだ。
やれやれ、と思いながらドアを開けようとして、サイファーはパネルスイッチを押す手を止める。
部屋の中で、ごそごそと人が動いている気配があった。
(起きてんのか)
寝ているものとばかり思っていたので、少々虚を突かれた。
が、彼が起きているからと言って如何する訳でもない。
サイファーは改めてパネルスイッチを押して、自分の部屋へと入室した。
「おーい。帰ったぞー」
活動している筈の彼に声をかけるが、返事はなかった。
入って直ぐに目につくベッドにも、彼の姿はなく、珍しい事に、使った形跡さえも残っていなかった。
妙だな、と思っていると、キッチンの方からガシャガシャと言う音がする。
なんとなく嫌な予感を感じて、サイファーの眉間に深い皺が寄せられた。
恋人のそれと酷似した皺をそのままに、何してやがるんだ、とキッチンを覗き込む。
─────其処にあった光景を見て、サイファーは深々と溜息を吐いた。
「……おかえり」
キッチン台の前に立っていた恋人────スコールが此方を見て言った。
スコールの眉間には、今のサイファーよりも更に深い皺が寄せられている。
如何にも不機嫌ですと言わんばかりの表情は、幸か不幸か、サイファーに向けられたものではない事が判る。
スコールを不機嫌にさせているのは、多分、恐らく、十中八九、彼の前髪や横髪、頬にぺったりとくっついている、白い液体の所為だろう。
「……お前、何してんだ」
サイファーが胡乱な目で問うと、スコールは無言で自分の腕に抱えているものを見下ろした。
其処には銀色のボウルがあり、中には白い液体がなみなみと揺れており、泡立て器が入っている。
泡立て器があると言う事は、あの白い液体を掻き混ぜていたのだろうと推察されるが、それにしても一体どうやって掻き混ぜていたのだろうか。
スコールの周囲には、彼を中心に半径一メートル前後、白い液体があっちへこっちへと散らかっていた。
スコールは唇を尖らせて、ボウルをキッチン台に置いた。
来ているTシャツの裾を引っ張って、ごしごしと顔を拭くスコールを見て、サイファーは眉根を寄せる。
ずかずかと彼に近付くと、サイファーはスコールの腕を掴んで、顔を拭く手を止めさせた。
「拭くなら、ちゃんとタオル使え。つか、そのシャツも汚れてんじゃねえか」
「………」
白いシャツを着ていたので、遠目には判らなかったが、スコールの服にも白い液体は付着していた。
スコールも言われてようやく気付いたのか、摘まんでいたシャツを見下ろして、「本当だ」と言いたげな雰囲気を滲ませる。
ああ、もう。
サイファーはこれみよがしに溜息を吐いてやると、掴んでいたスコールの腕を引っ張った。
スコールは特に抵抗する事もなく、サイファーの後ろをついて来る。
一体何をしたんだ、とぶつぶつと愚痴を零しながら、サイファーは洗面所に入ると、タオルを取り出した。
スコールの顔や髪に付着している白い液体を、ごしごしと乱暴に拭ってやると、スコールは「…痛い」と呟いたが、されるがままに大人しくしている。
「で、お前は一体、何をしようとしてたんだ?」
髪にこびり付いている白い液体を拭いながら訊ねるサイファーに、スコールは唇を尖らせる。
何を拗ねてるんだ、拗ねたいのはこっちだ、と思ったサイファーだが、ふと、スコールの白い頬がほんのりと赤らんでいる事に気付いた。
じい、と青灰色の瞳がサイファーを見詰める。
何かを言いたげな、しかし中々それを口に出そうとしないスコールに、サイファーは今日何度目か知れない溜息を吐く。
こういう時、のんびりと待ってやるのも良いが、それでは明日の朝日が昇ってしまう。
少し突いてやると、余程意固地になっている時でもなければ、スコールはなんとか言葉を絞り出せる。
「何だよ?」
「………」
「あ?」
「…………」
傍目に聞いていると、サイファーは完全に喧嘩腰だったが、此処にいるのはスコールのみ。
スコールはしばらくサイファーの顔を見詰め返した後、ぼそぼそと、小さな声で呟く。
「……あんた…」
「ん?」
「………あんたの……」
「俺の?」
「………誕生日……」
聞こえるか聞こえないか。
正しく、蚊の泣くような声で、スコールは言った。
直後、スコールはサイファーの手からタオルを引っ手繰り、サイファーの顔面に投げつけた。
然程湿気を含んでいる訳でもないタオルは、ふわりとサイファーの顔を襲っただけで、ダメージにはならない。
どたどたと騒がしい足音が遠退いて、サイファーがタオルを取ると、既にスコールは其処にいなかった。
洗面所を出てベッドを見れば、丸くなっている猫がいる。
此処を出て行こうとはしないんだな、と思いつつ、サイファーはキッチンへ入った。
キッチンは相変わらず、あちこちに白い液体を飛び散らせており、キッチン台周りは特に悲惨な状態だ。
そんな中、ぽつんと忘れ去られているボウルを覗き込むと、先刻と同じ、真っ白な液体がたっぷりと入っている。
流し台の三角コーナーを見ると、ホイップクリームの200mlパックが捨てられていた。
(俺の、誕生日、ね)
成程、と。
スコールが何をしようとしていたのか判って、サイファーの唇に笑みが浮かぶ。
サイファーはがしがしと頭を掻いた。
(普段からまともに飯も作れねえ癖に)
スコールは普段、日常生活に必要なる物事の殆どを、サイファーに任せきりにしている。
寮部屋を出ると(嫌々やらされているとは言え)指揮官としての見栄と言うか、人目が気になるのか、如何にも何でも完璧にこなして見せるが、その実、かなりの物臭である。
サイファーが面倒を見る事が当たり前になってからは、それも日々根深くなっているように見受けられる。
料理に関しては、全く駄目だ。
調理実習やサバイバル訓練で必要な技能は持っているが、それ以外の知識はからっきし。
その上、人目が気にならないと、張り詰めている糸が切れるのか、焼けば焦がすし、刻めば手を切るし、煮詰めていると熱くなった鍋に触って火傷をする。
そんな彼が、バースディケーキなど、まともに作れる訳もない。
(どーせ、固まらねえからって滅茶苦茶に掻き混ぜたんだろうな…)
無表情のまま、ムキになってホイップを掻き混ぜ続ける姿が浮かんで、サイファーは笑った。
やれやれ、と思いつつ、サイファーは雑巾を手に取った。
あちこちに飛び散ったホイップの掃除が終わったら、ボウルに入っているクリームを完成させよう。
それからスポンジを作って、これでもかと豪勢なデコレーションをしてやろう。
「嫌味か」と言う姿が想像できたが、その後、黙々とケーキを頬張る恋人が見れるに違いない。
ロマンティックとは程遠い、誕生日プレゼント未満。
自分の手で完成させて、恋人に食べさせてやるのも、まあまあ悪くないのではないだろうか。
サイファー誕生日おめでとう!
いつもサイファーが全部やってるから、たまにはびっくりさせてやろう(と言う体で)と思って誕生日ケーキ作ろうとしたけど、結局出来なかったスコールでした。
何故かサイスコになると、うちのスコールは本当に駄目な子になるようだ。
でもそんなスコールも可愛いじゃないか。サイファーに世話焼かれてると良いよ。