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[サイスコ]牙に頸玉

  • 2025/08/08 22:15
  • Posted by k_ryuto
  • Category:FF

Dom/Subユニバースパロ




支配するもの────Dom。
支配されるもの────Sub。
人間の性別とはまた別に、そうした気質が人を区分する社会と言うのは、中々に面倒だ。

歴史的に遡れば、そうした性質によって虐げる者、虐げられる者がいたことは覆しようのない事実であり、研究者の中には“魔女”と言う存在が生み出されたのも、そんな社会の歪みが突出したことが原因ではないか、と言う者もいたりする。
その研究が何処まで事実であるかはさて置いて、この性質が齎すパワーバランスの傾きは、確かに問題視される所も多かった。
例えば同じ立場、同じ権力を持つ人間同士が相対しても、この性質の違いにより、明らかな有利不利が生まれ得る。
これに立場の差、権力の差、腕力の差など、生き物が生まれ以て得る力の違いまで顕著にあると、支配階級と被支配階級が漫然と存在することになる。
Domの性質を持つ者が、Subの性質を持つ者と相対した瞬間、支配者としての気質を持つDomが一方的にSubを痛めつけ、奴隷として扱うと言った事件も後を絶たない。

バラムガーデンは、この世界では比較的新しい教育機関である。
環境も、島国の中に開校したと言うこともあって、大陸や大国に連綿と続く価値観から距離を置いた場所にあった。
そして、バラムガーデン学園長たるシド・クレイマーの方針として、其処に籍を置く生徒たちは、持ち得る資質の如何に関わらず、皆平等であるべきだと考えている。
幼い子供でさえ───寧ろ子供の方こそが───本能に持つ気質によってパワーバランスが生まれるが、これによって幼い内から人を支配すること、また支配される側もそれを当たり前の権利・義務とするべきではない、とシドは言った。
だからこそ、幼い内に新たな価値観を育む土壌を作らなくてはならない、と彼は考えたのだそうだ。

だが、実際にそれを現実とするには、様々な障害がある。

Domは他者を支配したいと欲求し、Subは他人に自分を支配されたいと望む。
それは動物で言えば性欲のように、本能的に突き上げる衝動の欲求で、満たされなければ自己人格にすら弊害を来す。
それを衝動ではなく、理性的にコントロールする為に、ガーデンでは医療分野の研究も視野にして、様々な取り組みが行われていた。
その甲斐あって、ここ十数年のうちに、欲求による衝動的な暴走を抑える為の抑制剤の認可も進み、少なくともガーデン内の表層上では、DomとSubは平等に扱われるよう努力が進んでいる。

とは言え、根本的に生物の本能として根付いたそれを完全に除去するのは難しい。
エスタの開国により、彼の国でも独自の目線で研究されていたデータが開示されるようになって、更なる研究が求められるようになったと言うが、まだまだ判らない事は多かった。

また、昨今でこそDomとSubは単なる性質の違い、個性のようなものであり、決して支配・被支配の階級を裏付けるものではないとする風潮が生まれているが、これもまだ小波程度の影響だ。
ドールにしろガルバディアにしろ、大きな国の、歴史の長い場所ほど、古くからの価値観が強く残る。
若い世代でも、個人の性質を指して、優れているか劣っているか、と言った格付けを行う者は少なくない。
中には、強い差別的意識で以て、Domを優性種、Subを劣等種と定義づけし、「劣等種たるSubをDomが支配管理するのは慈悲である」等と謳う者もいる。

────今回、スコールが任務で遭遇したテロリストの男が、正しくそれだった。

ドールの古い歴史として、国の前進として“神聖ドール帝国”の名があった時代がある。
嘗てはバラムもこの傘下にあり、時代の流るるうちに独立、島国バラムとして立国することとなった。
また、ドールは古くから自然の要塞と共にあり、他国からの侵略戦争に降ることなく長く続いて来た。
この為、国内の街並みは、いささか古めかしいものが目立つ場所も少なくはなく、旧来の営みや風習がひっそりと残っているところも散見された。
その古めかしさと言うものは、必ずしも建物であるとか、習慣風習に限ったものではなく、人間が持つ価値観についても、因習の如く残り続けている者も稀に見付かることがある。

男は、昨今のドールと言う国について、強い不満を持っていた。
昨今の時代の流れの中、平等と強調を強く意識し、生まれや職業の貴賤を排する風潮に反発し、弱肉強食の掟を以てして、ドールと言う国をより強くしていくべきであると。
そう考える背景としては、魔女戦争終結以前にガルバディアが魔女を国のトップとして擁立したことや、戦争終結後にエスタが科学大国として国際社会に復帰したことと言った、世界的ニュースが乱立したと言うものがある。
世界が、国際社会が一気に変動している今こそ、ドールも富国強兵せねばならない。
何せドールは、ほんの数ヵ月前に、ガルバディアによって攻勢され、成す術もなくバラムガーデンのSeeDに救援依頼を出しているのだ。
嘗ては大国此処にありと言う歴史を持ったドールが、自国の防衛すら自前の軍隊で賄えない状態に、男は激しく怒った。
こう述べると、“憂国の烈士”等と言う謳い文句でも出そうなものだが、だからと言って反政府組織となって過激な煽動行為を頻発させるのは如何なものか。
国にとっては勿論、一般市民にとっても危険分子として忌避されるようになった男が、端的に言えば始末対象となるのは無理もなかった。

バラムガーデンに寄越された依頼は、件の男の捕縛、或いは排除。
男は幾らかの人員を持っているが、その多くは男が強引に掻き集め、脅し混じりに炊きつけて動員させている素人だ。
各個に詳細を確かめる時間は必要となるが、メンバーについては止むを得ない場合を除いて、可能な限り捕縛と言うことになっている。
つまり、グループのトップである男さえ補足すれば十分であった。

男の下へ侵入するのは、それ程難しくなかった。
元々、理不尽な脅しや、強引な遣り取りで人員と物資を確保していた男だから、それからの解放を臨む声は多い。
情報屋は金を渡せば必要なことに口を割ったし、嫌々に従っている者たちは、解放される為に此方が言わずとも手を貸してくる。
何処まで信頼がないのかと、スコールは勿論、補佐として同行していたサイファーも呆れた程だ。
ともあれ、お陰で懐に潜り込むまでは、計算していた手間以上に上手く行ったと言って良い。

此処に件のターゲットがいる、と情報屋から得た話の通り、とある古いビルの一画にそれはいた。
幾らもしないような古びたビルを土地ごと買い上げ、其処を根城にして、反政府活動の指揮を執っていた男。
縦に細く伸びたビルはの最上階にふんぞり返っていた男は、スコールから見て、判りやすいお山の大将だった。
元々はドールの国軍に属していたが、軍の縮小に伴って解雇の憂き目に晒されたらしい。
それなら、人心掌握については素人でも、戦闘に関しては軽く見積もる訳にはいかないだろうと、スコールは入念な警戒と準備をしてから、男の捕縛に赴いた。

────だが、男の目を見た瞬間に、スコールの身体はまるで拘束されたように動けなくなった。
何が、と自身の身体に起きた変貌に意識がついて行く暇もなく、膝が折れる。
瞬間的に、駄目だ、と頽れようとする身体に武器で支えを作ったが、それきり、体が持ちあがらない。
頭から何かに掴まれ、肩を、背中を、首を押さえつけられているような、見えない何かに締め付けられているような感覚。

そんなスコールを、テロリストの男は見て、嗤った。


「は───はは、ははは!なんだ、お前。Subか!」


勝ち誇ったように笑う男の全身から、高揚と共にどす黒く醜い圧が放たれている。
それはきっと、スコールと同じ性質を持つ者ならば、それが人間であれ動物であれ、敏感に感じ取ってしまうものに違いない。

ぞくぞくとした悪寒がスコールの足元からせり上がってきて、窮鼠を圧迫する。
頭の奥で警笛が鳴り響き、頭痛になって、目の前が点滅した。
男がゆっくりと近付いて来る足音に、離れなければと思うのに、足が鎖で縫い付けられたように動かない。

そして、男の手がスコールの頭をわしりと掴んだ瞬間、ぶつん、とスコールの意識は暗転した。




────目を覚ました時、辺りは静まり返っていた。
意識の途切れが数秒だったのか、数十分、或いは数時間だったのかも判らない。
目を覚ましたとは言っても、頭の中は喚くようなノイズが響いていて、スコールは起き上がることも出来なかった。
全身が酷い虚脱感の中にあって、ともすれば呼吸の仕方も判らなくなる。

そんなスコールを、一人の男が見下ろしていた。
草臥れた雑居ビルの最上階を城にして、何処から調達したのか、アンティークのような椅子に腰かけている男。
今回の任務のターゲットであるその人物は、悠々とした表情で、床に倒れたスコールを眺め、


「噂に名高い“魔女戦争の英雄”殿が、Subだったとは意外だな。指揮官なんて役職も持ってるって言うから、そこそこランクの高いDomだろうと思ってたんだが」


男はくつくつと笑いながら言った。
瞳には蔑みと、憐れみと、愉悦が浮かび、優越感に浸っているのが見て取れる。

男の言う“ランク”と言うのは、Domとしての力───支配者としての資質の高さを一定評価の数値として格付けしたものだ。
動物で言えば、群れを統率する長としての能力値の高さを示す指標と同義である。
一般的にはランクが高いほどDomとして他者を支配下に置ける能力に秀でており、指導力や統率力が高いことになる。
また、Domは他を威嚇した際に、その本能に圧をかけることが出来る“Glare”と呼ばれる力がある。
言わば覇気、意識的に放つ威圧感とも言われるそれは、特に被支配者の性質を強く持つSubとって、従属帰依の本能を強制的に呼び起こすものだった。

だからスコールは動けなかったのだ。
DomやSubと言う性質は、本人の意識でコントロールするのは難しい。
戦場でこうした事態に陥ることを避ける為、スコールは先んじて抑制剤も服用していたが、男の放ったGlareはその効果を打ち消す程に強烈だった。
それ程までに、男はDomとして、絶対的な自信と優越感を持っている。

スコールは、痛む意識の中で、辛うじてそれらを理解した。


(───どうりで、こいつの部下の誰も彼もが怯えていた訳だ)


此処に至るまで、侵入に際して出逢った男の部下たちは、誰も彼もが男について行きながらも慄いていた。
解放を求めて、スコールに進んで情報を渡し、道を開けたのも、男が自身のDomの性質を利用し、Subの者たちばかりを手駒としていたからに違いない。
彼らは、この暴君によって、無理やり首輪を嵌められていたに過ぎない。
だからターゲットからの解放・逃亡に協力するとスコールが言った時、酷い時には呼吸困難に陥りながらも、道を開けたのだ。

スコールは力の入らない体を強引に動かして、体を起こそうと試みた。
腕も足も碌に立たない、這いつくばっている少年の抵抗に、男が不愉快そうに眉根を寄せる。


「“Kneel(跪け)”」
「……!!」


がくん、とスコールの身体が見えない重さに潰される。
そのまま平伏しようとする身体を、スコールは唇を噛んで起こし耐えた。

重い頭をそれでも垂れることを拒否したスコールに、男はにやりと笑って見せる。


「Subの癖に生意気だな。SubはDomの言う事を聞くものだろ?」
(……古い考えだ。時代遅れ───と言う程でもないのか)
「“Kneel(跪け)”だ。“Kneel(跪け)”、早く」
(……っこ、の……!)


男が爪先で地面をカツ、カツ、と叩きながら命令を下す。
コマンドを繰り返す度に、男の苛々としたオーラが強くなり、スコールに従う事を強要する。

この男は、これまでずっと、こうやって周囲を支配してきたのだ。
支配者としての本能欲求をまるで隠しもせず、常に周囲に振り撒いて、従うものだけを手許に集める。
そうして手許に来たSubに無理やり首輪を嵌めて、支配者と被支配者と言う関係を作って行く。
男はそうやって生きてきて、自分自身を揺るぎない強者であると定義し、絶対的な君臨者として成り上がってきた。
その足元に踏みつけにした人間の数が多い分、男は己の支配欲を満たされて当然のものと考え、それに従わない者がいることに苛立つ。
苛立つほどに男は周囲を従えようと圧を振り撒き、それに当てられる者ほど、従う本能に負けてしまう───その繰り返し。

根本的に、Subの性質を強く持つスコールには、相性が悪いのだ。
ともすれば、Domである男の命令に否応なく体が従おうとする程に。

男は頽れたスコールの目の前まで来ると、唇に血を滲ませるスコールの顔を蹴り上げた。
コマンドだけでSubが従わないから、体罰を与える───性質が悪い、とスコールは思った。


「“Kneel(跪け)”!」
(絶対嫌だ)
「“Crawl(跪け)”!」
(死んでもやるか)
「“Crawl(跪け)”!!」


スコールの顔を蹴りながら、男の発するコマンドは強いものになって行く。
身体がそれに応じようとするのを、スコールは唇を噛み、拳の中で爪を立てる。
蹴りと命令とで、頭が揺さぶられる程に苦しくても、こんな男の命令になど従いたくなかった。

男はぜいぜいと息を切らせ、どうあっても従うつもりのないスコールに、ちっと舌を打つ。
これまでSubを言いなりにしてきた男にとって、こうも頑なな抵抗に遭ったのは初めてだ。
大抵は強く命令してやれば、Subは従属本能によって言いなりになると言うのに、Subとは言え“魔女戦争の英雄”は伊達でも祀り上げられたものでもないと言うことなのか。
そう思う傍ら、生意気にねめつける蒼灰色を見ていると、どうにかしてこれを従わせ、自分の物にしてやりたいと言う欲望が滾って行く。

コマンドだけでは駄目、殴っても蹴っても少年は折れない。
それなら、と男の口元が醜く歪み、細いシルエットをしたその身体へと、下衆いた欲を持った手が伸びる。

男の手がスコールの首を掴む────直前、部屋のドアが爆炎と共に吹き飛んだ。


「な……!?」


なんだ、と思わず男が目を瞠ると、蝶番ごと外れてぽっかりと開いた入り口に、白いコートの男が立っている。
吹き飛び焦げた鉄扉が、燻ぶる匂いを漂わせる中に、その男の靴が音を鳴らす。


「予定より随分遅いから、心配してやって来てみれば。なんて様だ」
「……うる、さい」


白いコートの男───サイファーが呆れたように言い、男の足元でスコールが苦々し気に返す。
サイファーはそんなスコールの顔と、傍に立っている男の靴に付着した赤い汚れを見付けて、すぅと碧の双眸を細めた。


「成程な。大体判った」
「なんだ、お前は。失せろ!」


黒刃のガンブレードを肩に担いだサイファーに、男は吠えた。
その瞬間にスコールの身体がずしりと重く沈む。
しかし、サイファーは凪いだ風でも吹いたかのように、表情一つ変えずに立ち尽くしている。

サイファーは、男の足元で辛うじて意識を保っている状態のスコールを見て、言った。


「スコール」
「……サイ、ファー……っ」
「今だけ寝てろ」
「……っ」


サイファーの言葉に、張りつめていた糸が切れたように、スコールの意識がぷつりと途切れる。
気力で持ち上げていたスコールの頭が落ちたのを見て、ふう、とサイファーは息を吐く。
そして次の瞬間には、凍える程に冷徹な翡翠が男を捉えていた。

右手に握る獲物を構える事もせず、サイファーは男へと近付いて行く。
その全身から醸し出される、異常なほどの圧力と言うものを、男は生まれて初めて感じ取っていた。


「テロでもなんでも、お前がどんな思想を持っていようと、どうでも良い話だけどな。そいつに手を出したなら、話は別だ」
「何を────俺はDomだぞ。優れた支配者になる人間だ!Subが言う事を聞かないなら、躾をするのは当然だろう!」
「また随分カビくさい考え方だな。Domってのは、別に優性階級じゃない。DomがSubをコントロールして良いのは、Subがその権限をDomに許可するからこそだ。性質は支配者なんて言われても、支配されてるのはDomなんだよ」
「は、そんな訳があるか。SubはDomがいなけりゃ生きていけないんだぞ!」
「生憎、事実だ。第一お前───そいつが誰を飼ってる(ヽヽヽヽヽヽ)と思ってるんだ?」


そいつ、とサイファーは床に倒れたスコールを見る。
意識を手放したスコールの口端に、はっきりと噛んだ後と、滲み伝う赤がある。
男の尖った靴の爪先で何度も蹴られて、目元や頬は蒼く鬱血が浮いていた。

男の前で、サイファーの全身から醸し出されるものが、大きく分厚く膨れ上がって行く。
男は段々と、呼吸すらも儘ならくなっていく自分に気が付いた。
ひゅ、ひゅ、と喉がか細い喘鳴を鳴らし、胃の奥に重苦しいものが溜まり、食道を上って来る。
歯の根が勝手に鳴るにつれ、体中の血が一気に下降していく感覚の中、サイファーの足が前へと進む。
カツ、カツ、と静かに響く足音が近付くにつれ、足元から力が抜けて、指の一本すら動かせなくなって行く。
それが、男がこれまで虐げて来たSubが見て来た光景だと同じことを、彼は知らない。

そして男はいつの間にか、平伏するように地面に這い蹲っていた。
サイファーは肩に担いでいたガンブレードを持ち上げると、一片の躊躇なく、その柄で男の後頭部を殴りつけた。

────グリップ越しに反響する固い感触が消えて、ようやくサイファーは丸めた形になっていた背中を伸ばす。
多少の溜飲にはなったが、身の内を焼くように渦巻く苛立ちは変わらない。
しかし、いつまでもそれに囚われている訳には行かなかった。
Domであるサイファーには、やらなければならない義務がある。

サイファーは男を手早く縛り上げると、床に伏せ、目を閉じているスコールの身体を抱き上げる。
横抱きにして持ち上げた揺れに、スコールの瞼がふるりと震え、薄ぼんやりとした蒼灰色が覗く。


「……う……サイファー……?」
「ああ」


視点が彷徨う中で、スコールは霞む視界に映る金色の持ち主の名を呼ぶ。
それに短く答えると、腕の中でスコールがふるりと震えるのが判った。


「サイファー……俺……」
「ああ」
「……あんた、だけ……だから……」
「判ってる」


サイファーの言葉に、スコールの血が滲んだ唇から、ほう、と安堵の吐息が漏れる。

サイファーとスコールは、互いをパートナーと認めている。
スコールはサイファーに自分の支配を預け、サイファーはそれを以てスコールを支配する。
それは決して一方的な支配と被支配の関係ではなく、彼が良い、彼だけが良い、と互いに望み、信頼と言う首輪を互いに渡したことで確立させたものだ。

だからスコールは、ターゲットの命令に抗った。
サイファー以外の人間から下されるコマンドなど、聞く価値もない。
そう思っても体は本能に従おうとするから、Subとしての気質の強い自分自身を何度恨んだか知れない。
抑制剤を使っても、今回のように、己を絶対的な支配者と信じて揺るがないDomを前にすると、体は勝手に従属しようとしてしまう。

スコールがそれ程までに、望まずとも振り回される程、Subとしての本能が強い事をサイファーも知っている。
だから、スコールがどれ程の気力を振り絞り、それに抗っていたのかも判っていた。


「良い子だ、スコール。頑張ったじゃねえか」
「……うん……」
「後のことは俺が済ませてやる。全部終わったら、良い子のお前をもっと沢山褒めてやるよ」
「……ん……」
「だから、しばらくそのまま休んでろ」
「…ん……」


耳元に触れるサイファーの声に、スコールの瞳は次第にとろりと微睡んでいく。
その眦にサイファーが触れるだけのキスをすれば、スコールは猫のように目を細め、サイファーの肩に頭を預けたのだった。






『サイファー×スコールで、ラブコメ or Dom/Sub的なパロ』のリクエストを頂きました。
Dom/Subユニバースって色々使えて良い……と言うことで、Dom/Subでシリアスな方向に。
ラブコメの空気は消し飛びました。なんか痛々しいぞ。スコールが痛いことされてるからですね。

信頼関係にあるSubが傷付けられると、DomがSubを保護しようと攻撃的になったり、周囲にGlearを撒き散らすこともあると言う設定があったので、スコールを他のDomに痛めつけられて、キレたサイファーが浮かんだのです。
あとDom/Subの力や欲求の強さを評価するにあたり、ランクやレベルが指標として用いられる場合もあるとか。ターゲットの男もそこそこ強い方だったけど、サイファーが圧倒的に強い。でも普段からそれを振り撒くのは周囲にも悪影響になるし、スコールにもストレスを与えるので、必要な時以外は圧を出さないように意識している……と言う設定をふわっと当てています。
サイファーからすると、自分はSubであるスコールから彼の支配権を与えて貰っている立場。なので“支配されているのはDom(自分)の方”と言う意識です。

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