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[レオスコ]傷とうそつき

  • 2022/08/08 21:35
  • Posted by k_ryuto
  • Category:FF


スコールの背中に出来た火傷を見て、見た目よりは酷くはないな、とレオンは言った。
受けたのが義士の放った炎の矢であった事が幸いしたのだろう。

本物からして、魔法の扱いは得意じゃないんだ、と言う言葉の通り、彼の魔法は威力も速度も大したものではない。
とは言え、全くの見た目だけでダメージがない、などと言うことはなく、当たると言うより“接近状態で着実に当てる”ことに使い方を絞れば、戦闘に置いて牽制や次への繋ぎの一手としては十分有効だ。
スコールは複数のイミテーションとの混戦の最中、義士に背後を取られ、これを喰らわされた。
義士の持ち味は接近での多彩な武器の扱いであったこともあり、裏をかかれたのは否定できず、スコールにとっては悔しい傷となっている。

スコールはウォーリア・オブ・ライトやフリオニール、セシルと違い、鎧を身に付けていない。
元の世界の在り様からして、足が鈍重にならざるを得ないような甲冑類はとうの昔に廃れていたし、あっても精々局所を防護する為のものだ。
それも重さは金属よりも軽く、かつ衝撃を逃がしながら耐えうる特殊合金であるとか、カーボン等を多用した柔軟性のあるものが多かった。
尚且つ、接近戦よりも、銃を多用したり、大型駆動の機械兵器で圧力を与える戦術が主流であるので、弾丸を防ぐような防弾ジャケットの類は別としても、個々人の防具装備と言うのは、機動性が重視される所もあった。
また、スコール達SeeDは、ジャンクションと言う能力を使うことが出来るから、それを接続する事で自身の身体能力を底上げすることが出来る為、道具に関しては武器を最優先に、後は各人の戦闘スタイルに合わせて、機動力を落とさないように選ぶことが推奨されている。

だが、召喚されたこの異世界では、防具の類は中々大事なものになっている。
銃火器を使う者はいないし、弾丸もスコールがガンブレードに装填する以外に使い道はないが、その代わり、多くの世界では魔法の火力が非常に強い。
本物の魔女を除き、“疑似魔法”しか使うことが出来なかったスコールの世界に比べ、ファイア一発でもその威力は大幅に違う。
魔力を扱うのは得意ではない、と言ったフリオニールに関してもそれは同じで、スコールのファイアよりも、彼のファイアの方が幾らか威力は上だった。
この為、頑強な防具を身に付けていないスコールがそれを喰らえば、それなりのダメージが残る事になる。

────だが、スコールの背中に残った火傷の後は、範囲こそ広いものの、ほぼ表面的なもので済んでいるとレオンは言った。


「間近で喰らった訳ではないんだな」
「……多分」


火傷用の塗り薬をスコールの背中に塗り広げながら言うレオンに、スコールは小さく頷いた。
後ろからの攻撃だった為、自分自身でさえその詳細は確認できていないが、少なくとも数メートルの距離はあった筈。
だから撃って来るなら投げナイフか手斧だと警戒していたのだが、直線軌道のないファイアを使われるとは思わなかった。
慢心だ、と読みが浅かったことに唇を噛む。

レオンは薬を塗り終わると、救急箱から包帯を取り出した。
慣れた手つきで巻き付けられていく包帯の感触に、動き辛くなる、とスコールは眉根を寄せる。


「……包帯なんて良いのに」
「じゃあ、背中全部を覆う位、大きなガーゼでも買ってこようか」
「もっと邪魔だろ、そんなもの」
「なら大人しくしている事だ」


ぐ、と包帯の巻き具合を軽く締めるレオン。
スコールはまた唇を噛んで、むうう、と眉間に深い皺を刻んでいた。


「そもそも大袈裟なんだ。薬だって」
「だが、ケアルもポーションも使う程じゃないと言ったのはお前だろう」
「動けない傷じゃないんだ、ケアルだって薬だって勿体無い。それなのに」
「傷そのものを今すぐ治さなくて良いなら、傷口の保護くらいはしないと、衛生上良くないぞ」
「それは────そうだけど」


レオンの言うことは最もで、大した事がないからと、負傷を何もかも放置するのは良くない。
この世界で怪我と言うのは日常茶飯事であるから、その一つ一つに丁寧に手当てをするのはキリがないのだが、最低限の処置はしておくべきだ。

これなら大人しくケアルを貰って置けば良かったかも知れない、と包帯の窮屈さに辟易しながらスコールは思う。
そんなスコールの様子に、レオンは包帯の端を固定しながら言った。


「そう拗ねるな。何せ場所が背中だからな、自分ではどうなっているのかちゃんと見えてないだろう」
「……」
「大した火傷じゃないのは確かだが、何せ範囲が広い。判るか、此処から此処までだ」


トン、とレオンの指がスコールの背中の一点を押し、其処から随分と離れて下へ。
此処まで、と言ってもう一度指が押した場所までを考えると、確かに広い範囲と言えるだろう。
レオンがスコールを諫める為、大袈裟に誇張していなければ、だが。


「お前自身、大したことがないと思ってるなら、それは良い事だ。だが、かと言って軽く見過ぎるのも良くない」
「……判ってる」
「なら良い。包帯は明日、具合を確認するついでに替えるとしよう。ついでに他にも傷があるなら見ておくが、どうだ?」
「別に、他は何も」


傷なら戦闘の都度に大なり小なりつくものであるが、治療が必要なほどのものはない。
擦り傷だとか小さな切り傷だとか、そんなものまで気にしていたら、この世界では傷薬が幾つあっても足りなくなるだろう。

そろそろ服を着よう、とスコールがソファの上に放っていたシャツに手をかけた時だった。
ひた、とスコールの脇腹に、柔らかく触れる手の感触。


「ここの傷は?」
「傷?」


そんな所にあったか、とスコールは首を傾げた。
其処なら自分で見て確認できるだろうと視線を落としてみると、レオンの手が丁度それらしき場所を覆っている。
それじゃ見えない、とレオンの手を退かそうとすると、思いの外しっかりとした抵抗感に遭った。


「……レオン?」
「うん」
「……別に痛くもないから、多分大したものじゃない」
「そうか。じゃあ、こっちは?」


スコールの脇腹に触れていた手が、するりと腰を抱くように絡まって、強い力で引っ張られる。
身構える間もなく、スコールはレオンの腕に抱き寄せられるように捕まっていた。

手当の為にソファに横向きに片足を挙げて座っていたレオン。
その膝の上にスコールは座らせ、彼の胸に背中を預けるように寄り掛かる。
そしてレオンの手は、巻いた包帯のすぐ上───スコールの胸の上あたりを滑るように撫でた。
俄かにぞくん、とした感覚が体を走って、スコールは真っ赤になってじたばたと暴れ始める。


「っそんな所に傷なんてない!」
「よく見たか?」
「見てる!見えてる!」


目のない背中と違って、体の前ならちゃんと自分で見えるのだ。
首ともなると鑑が必要だが、胸の上位なら、少し見え辛くはあっても、ちゃんと視界に入る。
何度見ても傷なんてものは其処にないと言うのに、レオンの手は悪戯を止めない。


「ちょっと、止め……っ」
「背中の傷に響くぞ。大人しくしていろ」
「あんたが変な事をするから!」
「変な事と言うのは────」


これか、とするりと胸を撫でる指先。
たったそれだけの事なのに、覚えのある感覚に、スコールは口を噤んでしまう。
そうしないと、あられもない声が出てしまいそうになるからだ。

今日の秩序の聖域は至って静かなもので、いつもスコールに構いつけて来る賑やか組は勿論、他のメンバーも出払っている。
レオンは今日の待機番で屋敷に残っており、スコールはいつものように一人で出て、一人で帰ってきた。
よく追い駆けて来るバッツとジタンは、今日はそれぞれのパーティに組まれている為、スコールは一人気儘な時間を過ごしたと言う訳だ。
そんな時にイミテーションの群れと遭遇し、口惜しくも負傷して帰ってきたのだから、手隙でもあったレオンが手当てをしようと言うのは当然の流れだろう。
其処までは理解するが、しかし此処から先は、どう考えても手当と言う名目から外れている。

レオンは巻いたばかりの包帯のある場所を避けながら、他の露出している肌を酷く柔らかい触れ方で撫でて行く。
早く服を着れば良かった、とスコールは思うも既に遅く、後ろから首を甘噛みされるのが判った。
痕が残らない程度に立てられる歯の感触に、あ、と小さな声が漏れる。


「一通り確認しておこうか」
「な、にを……」
「他にも傷がないかどうか。お前はすぐに隠したがるから」


言いながら、レオンの右手がするすると降りて行き、スコールの腹を撫でた。
其処からまたゆっくりと、体のラインを確かめるように滑る手が、引き締まった太腿へ。


「だから、そんな所に傷なんて……」
「ないと言い切れるか?此処にもあるのに」


ちゅ、とレオンの唇が、スコールの肩の後ろを吸った。
彼の言う通り、其処に傷があるのか、今のスコールには確かめようもない。
だが本当に傷があるのなら、レオンはこんな戯れをしていないで、真っ当に手当てをしようと言い出すだろう。
それを思えば、やっぱり嘘か、精々とうに治った傷の瘡蓋が消え切っていないとか、その程度だろうとは思うのだが、


「こんな世界だからな。傷なんて一々気にしているものじゃないとは思うが」
「ん……う……」
「お前が無事だと言うこと位、触れて確認するのは良いだろう?」


そう言ったレオンの手が、益々確信をもって悪戯をするのを感じていると、これは確認じゃない、とスコールは思う。

屋敷の中はやはり静かで、メンバーは今朝発ったばかりだから、斥候や探索から早々に帰って来る者は少ないだろう。
しかしスコール然り、ふらりと出掛けて気が済めば帰って来る者がいない訳ではないのだ。
それを思うと、共有スペースとも言えるリビングで、これ以上の“確認”は聊か不味いと思うのも確かで。


「……レオ、ン……」
「ん?」


じわじわと育って行く熱の感触に、堪え切れないのはいつだってスコールの方だ。
レオンは普段と変わらない顔をしながら、けれど何処か楽しそうな顔で、スコールがそれを切り出すのを待っている。
言わなくては次に進んでくれないのが常だから、スコールは真っ赤になりながら白旗を上げるしかない。

此処は嫌だ、と蚊の鳴くような声で零せば、レオンは満足そうにスコールの項にキスをした。
柔く舌が当たるのが判って、ぞくりとした感覚が背筋を駆け抜ける。
背中の傷が、大人しく出来ないのかと抗議したような気がしたが、抱き上げる腕から逃げるなんて選択肢はないのだった。





レオスコいちゃいちゃ。

抵抗しているけど、レオンになら割と何されても良い距離感のスコール。
レオンの方も判っているので、スコールが本気で嫌がらない程度に揶揄いながら可愛がってる。

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