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[レオスコ]ウェイクアップ・キス

  • 2023/08/08 21:05
  • Posted by k_ryuto
  • Category:FF



目覚まし時計の鳴る音で、いつもの通りに目が覚める。

揺蕩う微睡の中で過ごすのは、心地の良い事ではあるけれど、朝からやらなくてはいけない事はごまんとあるのだ。
まずはこの居心地の良いベッドから抜け出して、洗面所に行って顔を洗って、朝食の準備をする。
昨日の夕飯に弟が作った汁物が残っているので、それを温め、炊飯器は予約された時間にもう焚き上がっている筈だから良いとして、あとはおかずだ。
健康の為にも二品くらいは用意しておいた方が良いと思うから、そのメニューを急いで考えなくてはいけない。
とは言っても、朝食のおかずはルーティンなものとも化していて、幾つかのパターンから今日はどれにしようかと言う程度だ。
魚が冷蔵庫にあったから、あれを消費してしまうなら、今のうちのような気がするが、此方は晩で良いかも知れない。

そんな事を考えながらも、レオンの体は中々ベッドから出ようとはしない。
翌日が休みだからと、久しぶりに熱を交わし合えば、若いレオンと、まだ性に幼い面のあるスコールが盛り上がらない筈もなく、夏の短い夜をまるごと使ってしまった。
無心に甘えて来る弟をあやすのはとても楽しくて、柄にもなく夢中になった自覚もあった。
それを伝えれば、思春期真っ盛りで気難しいきらいのあるスコールは、顔を真っ赤にして怒って見せるのだろうが、レオンにしてみればそんな表情も愛おしいものだ。
────等と、睡魔と現実の間でふらふらとしながら、自分の腕を枕にして寝ている弟を見て、緩やかな時間は過ぎて行くのである。

レオンの休日と言うのは貴重なものだ。
真面目な気質が奏してか、若いうちに色々と経験を積ませて貰う事が出来、会社の社長である父にもそれが認めて貰えたお陰で、それなりの地位にいる。
比例して仕事の量も多く、休日に飛び込みの案件が入って来る事もあり、ただでさえ少ない休みが引っ繰り返されると言うのも、珍しくはなかった。
一応、休みを優先したい日と言うのは守っているつもりだが、その為に前倒し、後ろ倒しもよくあるので、仕事量の緩和には余り役立っていないのかも知れない。

そして弟のスコールも、多忙な日々を送っている。
彼は学生であるが、日々を勉強に家事にと過ごしており、部活の類にこそ属してはいないものの、自由な時間と言うのは少なかった。
家事はレオンも出来ればやりたい、と思っているのだが、家にいる時間がスコールの方が取れるので、掃除や洗濯は勿論、買い物も彼が済ませている事が多い。
真面目な彼は、やるならば徹底的に、と言う意識も強いから、何事にも肩の力が入る所がある。
その結果、やる事が全て終わった時には、すっかり疲れ、泥のように深く眠るのであった。

そんな二人の生活にあって、明日はカレンダーも休日、レオンも有給休暇となっている。
だから昨夜は、明日のことを考えなくて良い、とついつい熱くなってしまった訳だ。
熱の名残は気怠い朝を運んできて、レオンはこの温い感覚の微睡と、腕の中で眠る少年が手放し難くて、いつまでもベッドの住人を延長している。


(────とは言え、流石にそろそろ起きないとな……)


形ばかりの目覚めの合図にと、セットしたアラームを止めて、幾十分。
空き腹が限界を訴える感覚を覚えて、レオンはようやく、ベッドから出る決意をした。

眠る弟の頭の下から、起こさないようにそうっと腕を抜く。
スコールは頼りにしていた温もりがなくなって、むぅ、と小さくむずかって丸くなった。
そんな彼の頭を柔く撫でてから、このままだとまた十数分と過ごしてしまうと、自分を律して体を起こした。
ぎしり、とベッドのスプリングの音がして、スコールが「んん……」と眉根を寄せて瞼を震わせた。


「う……」
「すまん、起こしたか」


薄く瞼を持ち上げたスコールに、レオンは眉尻を下げて詫びる。
スコールは子猫のように目を擦りながら、ぼんやりとした目で、上肢を起こした兄を見た。


「……レオン……」
「おはよう、スコール」
「……はよ……」


眠気真っ盛りのお陰で、スコールは素直に挨拶を返してくれる。
レオンはスコールの頭を撫でて、ようやくベッドを降りた。

顔を洗いに行く前に、先に服を着なくてはと、レオンはクローゼットを開ける。
兄弟二人分を綺麗に分割して使っている其処から、ラフに過ごせるものを選んだ。
スコールはベッドの上に座り、眠そうに欠伸を漏らしている。


「ふぁ………」
「眠いのなら、まだもう少し寝ていても良いぞ。休みなんだから」
「……あんたは……起きるのか」
「朝飯を作らないといけないからな。オムレツで良いか?」
「……なんでも……」


食に強いこだわりがないスコールは、逆に嫌いなものも殆どない。
しかしまだまだ成長途中、育ち盛りの弟の為にも、栄養はきちんと摂らせておかなくては。
簡単でもバランスの良い食事を食べれるように、レオンは頭の中で献立を考える。

着換えを済ませ、洗面所で顔を洗い、レオンはキッチンに立った。
米が焚けていることを確認し、冷蔵庫に鍋ごと入れていたスープを取り出してコンロにかけ、もう一つのコンロにフライパンを置く。
脂を引いて熱したら、その間に用意しておいたマヨネーズ入りの溶き卵を入れて、手慣れた仕草で形を作って行く。
綺麗な山形になったオムレツを皿に移して、同じものをもう一つ。
それから、サラダもなければと、冷蔵庫からレタスと胡瓜、トマトを取り出す。
千切ったレタスを水洗いし、瑞々しいそれを皿に乗せ、千切りにした胡瓜と、半月切りにしたトマトを添えた。
程好く冷めたオムレツにケチャップソースをかけ、温まったスープをマグに注いでいると、


「レオン……」


呼ぶ声に振り返れば、キッチンの横にスコールが立っていた。
寝癖のついた髪をそのままに、まだ眠い目を擦っているスコールの格好を見て、レオンは眉尻を下げる。


「ちゃんと着替えて来い。風邪を引くぞ」
「……寒くないから平気だ」


レオンの言葉に、そう返したスコールは、シャツ一枚しか着ていない。
薄身の体躯には合わないサイズのそれは、誰がどう見ても、昨夜脱ぎ捨てたレオンのものだ。
真っ白の裾からはすらりと長い脚が晒され、太腿に薄らと赤い華が咲いている。
それを咲かせたのは他でもないレオンだが、白い肌の内腿にちらちらと覗くのは、中々に目の毒だ。
だからいつも、きちんと服を着るように言い聞かせているのだが、真面目に見えて実は面倒臭がりな弟は、甘えもあって大概兄の言う事を聞いてくれなかったりする。

やれやれ、と眉尻を下げるレオンの元に、スコールがのそのそと近付く。
あとは米を装うだけだと、しゃもじを水に晒したレオンの背中に、とす、とくっつく体温があった。
言わずもがな、正体はスコールだ。


「飯ならすぐだぞ。もう出来てる」
「……ん……」
「動き難いだろう」
「……んん……」


すり、と背中に頬を寄せる猫に、レオンはどうしたものかなと眉尻を下げる。

昨晩、あれだけ睦み合ったのに────いや、だからと言うべきだろうか。
普段はしっかり者になりたがり、兄に対して臆面もなく甘えるなど、と照れ臭さもあって滅多に甘えて来ないスコールだが、本質的には寂しがり屋なのだ。
レオンはしばらく仕事が忙しく、スコールもつい一昨日まで定期試験があったから、どちらも熱の交換は控えた日々が続いていた。
昨夜はそれから久しぶりに解放された上、翌日の事も心配しなくて良かったから、頭が真っ白になるまで溶け合った。
その心地良さは、朝になってもスコールの中にあるらしく、今日は一段と甘えたがりだ。
そう言う事を考えると、背中のくっつき虫を我慢させるのも気が引けるし、レオンとてスコールの事は骨の髄まで甘やかしたいと思っている。

でも、このままでは、折角作ったオムレツと、温め直したスープが冷めてしまう。
レオンは腰に回されたスコールの手を握りつつ、肩に額を押し付けている弟を見る。


「ほら、朝飯だ、スコール。顔を洗って来い」
「……」


スコールの眼がちらと覗いて、レオンをじいっと見詰める。
このままでいたい、と訴えるブルーグレイに、どうにも兄は弱いのだ。
やれやれ、と眉尻を下げて笑みを零しつつ、レオンは後ろへと振り返る。

向き合う格好になって、レオンはスコールの顎に指を引っ掛けた。
くん、と軽く促してやれば、素直な貌がレオンを見上げ、熱の名残を宿した蒼と蒼が交差する。

ゆっくりと顔を近付ける間、スコールはじっとレオンの顔を見ていた。
唇を重ね合い、そっと下唇を食んでやると、スコールが薄く隙間を開く。
招くその合図に誘われるまま、舌を入れ、差し出されるものを絡め取って唾液を交換してやった。


「ん、む……ふ、ぅ……」
「ん……っふ……」
「あむ、ぅ……、んんぅ……」


角度を変えながら深くなる口付けに、スコールはレオンの首へと腕を回した。
スコールの足が気持ち背伸びをして、レオンにより深く貪って貰おうと、貌の距離を近付けようとする。
レオンはそんなスコールの背中を拾うように抱き支え、昨夜も堪能した弟の甘い咥内をたっぷりと味わった。

レオンの顔を近い距離で見詰めるスコールの瞳が、とろりと溶けて行く。
酸素不足も相俟って、ふわふわとした意識に足元が覚束なくなる頃、レオンはスコールの唇を解放した。


「ほら、此処までだ。顔を洗って来い」
「……う……」


抱いていた背中をそっと離せば、スコールは支える力を失って、ふらふらと蹈鞴を踏んだ。
まだぼんやりとしているスコールの肩を押して、方向転換させる。
ぽんと背中を叩いてやると、素直な子供は言われるままにキッチンを出て行った。

さて、とレオンは改めて朝食をテーブルへと運ぶ。
米も装って、主食、副食と揃い、デザート用のヨーグルトを冷蔵庫から出した。
カトラリーも一緒に並べて、食後のコーヒーの為に電気ケトルのスイッチを入れた所で、ぺたぺたと足音が戻ってくる。
気持ち程度に髪型を整えたスコールが、今更のように恥ずかしそうに顔を赤らめながら、ダイニングへとやって来た。


「おはよう、スコール」
「……おはよう……」


顔を洗って、頭が少しは目覚めたようで、スコールは自分が何をしていたか遅蒔きに理解したのだろう。
微笑みかけるレオンの顔も見れないと、視線を彷徨わせながら、いそいそと自分の席へ座った。
レオンもその向かい側に座り、手を合わせて「いただきます」と言ってから、朝食に手を付ける。
スコールも兄に倣い、昔からの習慣の通りに手を合わせてから、箸を取ったのだった。



寝惚け気味だと甘えたがりなスコール。
レオンもそんなスコールが可愛いので、しっかり甘やかす。
顔を洗ってようやくちゃんと目が覚めたスコールが、自分の行動への恥ずかしさでレオンの顔が見れなくなりながら一緒に朝ご飯を食べるまでがセットです。

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