サイト更新には乗らない短いSS置き場

Entry

[ラグスコ]満たされるにはまた明日

  • 2024/08/08 21:10
  • Posted by k_ryuto
  • Category:FF



熱が交わっている間は、何も考えなくて良い。
ただ其処に繋がる相手がいることと、身体を支配するものの恐ろしさと、その心地良さに身を委ねていれば良い。

中に出されたのを感じながら、スコールも何度目かの果てを迎えた。
強張った足の爪先が細かに震えた後、ひく、と戦慄いてから弛緩する。
中に入っていたものがゆっくりと出て行くと、途端に寂しさと、けれども注がれたものが零れていく感触があって、疲労感と充足感がじわじわとやって来た。

覆いかぶさっていた重みが退けようとする気配を感じて、首に絡めていた腕に力を籠める。
やだ、と言外に主張すると、仕方がなさそうに小さく笑う気配の後、頬に柔らかいものが落ちた。
何度も触れては離れるそれに、充足感がまたじんわりと沸いてきて、スコールの方からも口付ける。
僅かに皺の浮かぶ目尻に触れると、相手───ラグナはくすぐったそうに笑いながら、スコールの唇に自分のそれを重ね合わせた。


「ん……ん、ふ……」


無防備に隙間を空けていたから、するりと舌が入ってきた。
抵抗せずにそれを受け入れ、自分の方からも絡めて行くと、耳の奥で水音が聞こえてくる。
舌の裏をゆっくりと擽られると、ぞくぞくとした感覚が這いあがってきて、ぶるりと体が震えた。

背中に回された、意外としっかりとした筋のある腕が、スコールをしかと抱き締めている。
それは甘えたがるスコールを、逃がさないと判っていながらしっかりと捕まえて、子供をあやすようにゆっくりと背筋を撫でていた。

たっぷりと咥内を寵愛されて、スコールの意識はふわふわとしていた。
蒼灰色の瞳がとろりと溶けていくのを、翠色が酷く近い距離で見つめている。


「……っは……あ……」


ようやく唇が離れると、スコールの唇から名残の吐息が漏れた。
自覚していなかった息苦しさをようやく悟った躰から、くたんと力が抜けて、スコールの全身がベッドに沈む。
しがみついていた腕も解けてしまい、ベッドに投げ出されたそれに、ラグナの手が伸ばされた。
スコールの右手とラグナの左手が絡み合って、どちらともなく、ぎゅう、と捕まえる。

ラグナは、熱と口付けの余韻に揺蕩っているスコールを見詰めながら、


「大丈夫か?痛いとこない?」


労うラグナの言葉に、スコールは夢現の気分の中で、「……ん……」と小さく頷いた。
正直な所、散々に声を上げた喉であったり、繋がり合っていた場所の違和感だったり、明日になれば腰にも色々響いていそうではあったが、それは些細なことだ。
心地良さや、今までしていた事の余韻を阻害するものでもないから、スコールは平気だと答えた。

そのままスコールがぼうっとしている間に、ラグナが起き上がる。
密着していた体温が離れて、途端に滑り込んでくる冷たい空気に、スコールはラグナに向かって手を伸ばした。
ラグナはその手に応じるように手指を軽く絡めると、くすりと小さく苦笑しながら、スコールの手を柔く握る。
手は繋いだまま、ラグナは空いている方の腕をベッド横のナイトテーブルに伸ばして、結露の浮いたペットボトルを取った。


「ちょっと水分取っとこう。な?」


喉が渇いているだろう、と言うラグナに、スコールは否定をしなかったが、飲む為に起きるのは面倒だった。
じい、と蒼の瞳が無言で見つめ返すと、ラグナはしょうがないなと言わんばかりに眉尻を下げて笑う。

ラグナはペットボトルを開けて、軽く一口飲んだ後、次はそれを口に含んだ。
降りてくる影の気配に、スコールが頭を向けると、唇が重ねられる。
体温よりも少し冷たい液体が、ラグナからスコールへと受け渡されて、スコールの喉が小さくこくりと音を鳴らした。

一回、二回、三回。
口移しに渡す水の量は大したものではなく、自分で飲んだ方が、水分摂取の効率としては良いものだ。
けれどもスコールは、こうして事後にラグナに判りやすく甘やかされることに心地良さを感じていた。
ラグナもまた、スコールの露骨な甘えようが愛しくて、甲斐甲斐しく世話を焼く事を楽しんでいる。
そして、満足するまで水を渡した後は、お互いの濡れた唇と咥内の具合を確かめるように、深いキスをするのがお決まりだった。


「んむ、ん……っんぁ……」


ラグナの舌が、スコールの舌の裏側をつぅと擽る。
その度に、スコールの落ち着きかけていた体の熱が、またじわじわと燻ぶり始めていく。
若くて性の愉悦を覚えたばかりの体だから、増してやそれを余すことなく開発して教えたラグナが相手であるから、容易くその身体は自己を主張し始める。


「は、ふ……ラグ、ナ……」


シーツの白波の中で、スコールはもぞもぞと体を捩っていた。
甘えん坊の見つめる瞳に、明らかな情欲が宿っているのを見て、ラグナがくすりと笑う。


「明日、お仕事って言っただろ?」
「んん……」


諫めるように言うラグナに、スコールは眉根を寄せてラグナを見上げる。

スコールが今日、エスタにいるのは、元々明日から予定される会談で、ラグナの護衛を務める為だ。
ドールとガルバディアからも要人が来ると言う、規模としては大きいものだから、スコール以外にもA~CランクのSeeDが派遣されている。
SeeDは全員、エスタの都市内にあるホテルで宿泊施設を確保してあり、本来ならスコールも其処で過ごす筈だった。
しかし、ラグナの方から連絡があり、「明日の打ち合わせをしたいから」と言う理由で、ラグナの私邸へと招かれた。
明日の階段の予定となっているルートが、安全確保の為に密かに変更されており、SeeDの総指揮を務めるスコールとは情報共有しておこう、と言う真っ当な理由があった。
昨今の国際情勢の不安視も多い中、移動中に襲撃が待ち構えている可能性を考えての措置だ。
それは決してスコールを呼び出す方便ではなく、スコールが私邸に着いた時には、ラグナが最も信を置く側近───キロスとウォードも待機していて、打ち合わせも入念に行われた。

だが、その後の事は、全くの別。
ホテルに戻るのは時間がかかるだろうとか、折角なんだから泊まって行けとか、久しぶりなんだから、とか。
色々と言って引き留めるラグナが言わんとしている事が、スコールも判らない訳ではなかったし、身体が彼を求めていた。
指揮を務める立場で勝手な、うつつを抜かして、と思う気持ちもないではなかったが、結局は熱の誘惑に負けた。

そんな訳だから、スコールの明日の朝と言うのは早いのだ。
朝の集合時間に指揮官が遅れる訳には行かないし、昨夜の打ち合わせで確認したことを、他のSeeDにも伝えなくてはいけない。
時計を見れば、日付も変わっており、明日の事を思うと、そろそろ眠って体を休めなくては。
寝不足の頭と体で、重要な要人警護の任務に挑むなんて、危機管理がなっていない。

────と、判ってはいるのだが、


「ラグナ……」


丹念に熱で蕩かされた頭は、そんな真面目な話など知った事かと、目の前の男を欲しがる。
腕を伸ばして縋るスコールを、ラグナはまた眉尻を下げながら、ダークブラウンの髪をくしゃくしゃと撫でてあやす。


「だぁめ。ほら、良い子して寝な」
「……」
「可愛い顔しても今日はもう駄目だよ」


じと、と睨むスコールだが、ラグナに効果はない。
それがなんとも腹立たしくて、応じてくれない事に焦れて、スコールはぎゅうっとラグナにしがみついた。
離したくない、離れたくないと訴える少年に、ラグナが優越感に浸っていることを、スコールは知らない。

ラグナはスコールの背中を抱き締めて、ごろん、とベッドに寝転がった。


「良い子にしてたら、明日もこっちで寝て良いから」
「……そんな訳ないだろ。明後日もまだ任務がある」


ラグナの言葉に、スコールは眉根を寄せながら言った。

明日の会談を終えても、ラグナの予定は終わりではなく、明後日はエスタの各市街地域の市長との議会がある。
規模の大きな都市であるエスタでは、こうした議会が開かれるのも少なくはないが、全ての区域の市長が集まるタイミングは限られている。
スコールたちSeeDは、引き続きそれの警備も任されているのだ。
此方はエスタ軍が各所の警備を担うが、大きな会場を使う為、エスタ軍だけでは埋めきらない穴を補う役を担う。

ことの重要度で言えば明日の会談の方が大きいが、かと言って、明後日の警備任務も気を抜いて良い訳ではない。
今日がもう駄目だと言うのなら、明日だって駄目でなくてはいけないのだ。
いや、今夜をこんな時間に費やしたのなら、明日こそちゃんと休まないと、身体にガタが来る可能性もゼロではない。

だが、そんなことを考えながらも、スコールの表情は揺れている。
明日もまた此処に来て良い、と言われたら、それは寂しがり屋の少年にとって、なんとも拒否しがたい誘惑を持っていた。


「……明日……」
「するかしないかは、その時にな」
「……」
「来てくれるなら、そう言う風にしとくから」


ラグナがスコール一人を呼び出すことは、それ程難しくはない。
今日と同じく、打ち合わせだとか、確認事項だとか、それらしく言えば十分だ。
SeeDから何某かの連絡が入ることは皆無ではないが、基本的には、余程の緊急事態でもなければ、スコールがこの邸宅を飛び出す必要もないだろう。
見ようによっては、そもそもの任務である、大統領護衛を近衛の立場で務めていることになるから、誰もスコールがラグナの下を離れないことに違和感を唱えることはあるまい。

柔らかい手付きで頬を撫でながら、続きをねだるスコールを宥めつつ、「な?」とラグナは笑う。
無邪気にも見えるその顔に、スコールは唇を尖らせて、


(……ずるい)


そうやって、周りを固めておきながら、今夜はもう此処までなのだ。
スコールは今すぐ熱の続きが欲しいのに、それは決して与えてはくれず、お預けをされている。
けれど、そのお預けをちゃんと守ることが出来れば、明日にはまた、熱を与えてくれるかも知れないのだ。

スコールが何を欲しがって、それをどう渡せば良いのか、ラグナは全て知っている。
それでスコールが望むものが手に入るようにと、ラグナが教え込んで行ったのだから当然だ。


(……うまく転がされてる気がする)


気がする、ではなく事実そうだと言う事に、スコールはいまいち気付いていなかった。
この手の中に捕まっている事が、なんとも言えない安心感を齎すものだから、其処ばかりに心が囚われる。

せめてもの腹立たしさに、スコールはラグナの胸にどすっと頭をぶつけた。
胸を打った突然の頭突きに、「うっ」と言う声が聞こえる。
大した意味もないその反応に、少しだけ胸がすくのを自覚しながら、


「……寝る」
「お。うん、そっか。良い子」
「子供扱いするな」


ぽんぽんと頭を撫でる気配に、スコールは益々拗ねた顔で、ラグナの胸に鼻先を埋める。
押し付けた胸から、汗の匂いが滲むのを感じながら、まだ燻ぶっている体を、強引に眠りの方へと持って行くように意識した。
身体が疲れているのは確かだから、この鼓動が落ち着く頃には、睡魔もやって来るだろう、恐らく。



頭を、背中をゆっくりと撫でる手の体温を感じながら、スコールはゆっくりと目を閉じた。





呼んで散々甘やかしておいて、スコールの方からおねだりすると、焦らしてくるラグナ。
一挙に与えると満足してしまうから、じわじわ満たして、染めて行ってるんだと思います。
スコールの方も、任務の事は気にしているようなことを言うけど、ラグナから求められると拒否する気がないって言う。だから呼ばれると行っちゃう。
ラグナは、そう言う所だぞって思いつつ呼んでる。可愛いんでしょうね。

Pagination

Utility

Calendar

11 2024.12 01
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

Entry Search

Archive

Feed