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2014年09月02日

[クラレオスコ]ハッピー・スイーツ・パラダイス 1

  • 2014/09/02 23:52
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超甘党なレオンとスコールと、そんな二人に付き合うクラウドで現代パラレル。





見た目の印象化、雰囲気か、レオンとスコールは甘いものが苦手だと思われている。
が、実際には全くの逆で、彼等は大の甘党であり、昨今で言う所謂“スイーツ男子”にカテゴリされるタイプであった。

しかし、スコールの場合は思春期特有の見栄で、レオンは周囲が思う自分のイメージを気にして───要するに、二人とも人目が気になるのだ───、自分が甘党であると言う事を隠している。
知っているのは家族か、付き合いが長く、且つ深い人間だけだ。
何も隠さなくても良いんじゃないか、と彼等の恋人を自負するクラウドは思うのだが、彼等がそう言う性格なのだから仕方がない。
序に、家族以外で彼等の甘党振りを最も良く知っているのが自分だけだと考えると、ちょっとした優越感に浸れるので、まあこのままでも良いか、とも思っている。

そんな甘党兄弟が憧れて已まないのが、時間制限一杯に甘いものが食べられる、ケーキバイキング、スイーツパラダイスだ。
洋菓子店で売られているケーキは、見た目も凝っており、店毎の特色が出ていて、それも良いのだが、幾つも食べるとなるとコストがかかる。
冷蔵庫の容量にも限度があるし、生クリームは日持ちがしないし、かと言って買った当日中に全て食べ切るのも難しい(二人は痩せの大食いなので、可不可の話で言えば、可能かも知れないが)。
出来れば一度に沢山の種類のケーキを味わう事が出来たら、こんなに贅沢な事はない。
そんな彼等の希望を叶えるには、やはり様々ケーキ・フルーツが一堂に会するケーキバイキングはとても魅力的に見えるのだろう。
しかし、圧倒的に女性客が多いであろうそんな場所に、人目を気にする彼等が行くと言うのは、非常にハードルが高い行為であった。
仕事場や学校近くで行われているケーキバイキングもあるのだが、そんな所に行ったら、同僚や同級生と鉢合わせする可能性も高い。
益々、彼等の希望は遠退いた。

そんな恋人達の為にと、クラウドは一念発起して、車で行ける範囲にあるバイキングレストランを探し、月に二回の頻度で、全メニューデザート系と言う催しを行っている所を見付けた。
有名所と言う訳ではないが、種類が豊富で、彼等が好きな生クリームやチョコレートクリームを使っているケーキが多い。
勿論、フルーツ系のケーキやタルト、ヨーグルト等も揃っている。
其処はレオンの職場からも、スコールの学校からも遠い為、同僚・同級生に見付かる可能性も低い。
席はテーブル毎にパーテーションで区切られているから、皿にケーキを山盛りにして食べていても、周りを気にする必要はない。

そう言う場所を見付けたから、一緒に行かないか、とクラウドが誘った時、兄弟は判り易く目を輝かせた。
一も二もなく「行く」と言う返事が得られた訳ではなかったが、「偶には良いな」「偶にはな」等と言う遣り取りをする彼等が、内心わくわくと子供の用に喜んでいた事は、クラウドにはバレバレであった。

ケーキバイキングは月に二回しか行われない為、レオンとクラウドはしっかり有給を取った。
平日であった為、学生であるスコールは、仮病をして学校を休んでいる。
其処までして行きたかったのか、と、普段は真面目に学業に従事しているスコールを見て些か呆れたクラウドであったが、この機会を逃せば二度と行けないかも知れない、と真剣に考えている年下の恋人を見て、深く追求する事は止めた。
第一、レオンにしろスコールにしろ、生真面目な性格をしているのだ。
偶に羽目を外す位なら、許されても良いだろう。

待ちに待った当日は、レオンの車をクラウドが運転し、店まで向かった。
ケーキバイキングの幟を掲げた店は、ロッジを模したもので、スイーツパラダイスにありがちな可愛らしさや華々しさはない。
レオンやスコールのように、人目を気にする男性客にとっては、有難い。

受け付けを済ませ、案内された席に荷物を置いた後、クラウドは二人にケーキを取って来るように促した。
入店前からそわそわとしていた二人は、直ぐに席を立って揃ってケーキテーブルへ向かう。
そして戻って来た時には、皿から溢れんばかりのケーキを盛っていた。
ケーキは12カット程度の細いサイズに切り分けられているのだが、それがひしめき合う程に集められているとなると、彼等はかなりの数のケーキをよそって来た事になる。


「……そんなに一気に持って来なくても良かったんじゃないか?」


皿の上で所狭しとしているケーキ群を見て、クラウドは言った。
恋人の一言に、レオンは眉尻を下げて苦笑し、


「そうは思ったんだが、選び切れなくて」
「……一つしかない奴もあった」


スコールの一言に、後からまた出て来るだろう、とクラウドは思ったが、それは飲み込む。
目の前に在るのを見て、我慢できなかったのは明らかだ。

先ずは基本のショートケーキ、とレオンが真っ白な生クリームに覆われたケーキを口に入れる。
フォークを食んだ彼の口元が、誰が見ても判る程に緩んでいた。
その隣では、スコールが大好きなチョコレートケーキを食べている。
トレードマークの如く眉間に刻まれている皺が、今はすっかり解け、顔立ちの幼さが助長された。


「うん、良いな。生クリームもベタッとしてないし」
「チョコケーキ、ナッツが入ってた。触感が変わって面白い」
「これはラズベリーだったな。いや、先に桃のタルトを…」
「あ。レオン、このアップルパイ、まだ少し温かい」
「本当か?じゃあそっちを先に食べるか」
「あと、コーヒーケーキは結構苦い……」
「どれどれ……うん、確かに。半分ずつにしよう、それなら食べられるだろう?」
「……なんとか」


コーヒーケーキの苦味に負けたスコールに、レオンがくすくすと笑う。
渋面が取れない弟に、レオンはラズベリーケーキを一口掬って差し出す。
スコールはぱくっ、と抵抗なくそれに齧り付いた。
苦味の残る舌に、ラズベリーの甘酸っぱさがより深く感じられたのか、瞬く間にスコールの眉間から皺が消える。
気を取り直してトロピカルケーキを食べ始めた弟を満足げに眺めて、レオンは残りのラズベリーケーキを食べ始めた。

二人の皿の上のケーキが、瞬く間になくなって行く。
クラウドは、終始嬉しそうにケーキを食べる二人をのんびりと見詰めていたのだが、


「クラウド。お前も行って良いぞ。荷物は俺達が見ているから」


テーブルについて以来、一度も席を立っていないクラウドに、レオンが言った。
クラウドは逡巡したが、「そうだな、行って来る」と言って、ようやく席を立つ。

だが、クラウドはケーキテーブルには向かわなかった。
足はドリンクバーコーナーに向かい、ブラックコーヒーを淹れると、周りに人がいない事を確認して、その場で一口飲んだ。
行儀が悪い事は判っていたが、そろそろ耐えられなくなっていたのだ。


(見てるだけで胸やけしそうだ……)


クラウドは甘い物が食べられない訳ではなく、甘味に関してはカットケーキは半分食べれば満足するタイプだ。
食べる時には必ずコーヒーをアテにしており、レオンやスコールのように、甘味だけを食べる気にはならない。
そんなクラウドにとって、山と積まれたケーキは、中々胃に堪えるものがある。

しかし、悲しいかな、恋人達はそんなクラウドの甘味事情に気付いていない。
それ所か、自分達と同じように、人目を気にしているだけで、実は甘い物が好きだと思っている。
彼等がそう勘違いするように仕向けたのは、他でもないクラウド自身で、だからこそ彼等が自分の本音(スイーツ好き)を打ち明けてくれたのだが、こんな時には少しばかり後悔する。
……因みに、ファミレス等でクラウドが注文したカットケーキを半分食べて残りを譲っている事については、人目を気にして自ら甘味を注文できない自分達の代わりをし、スイーツ仲間としての配慮だと思っているようだ。
クラウドは人目を気にする性質ではないので、代わりに注文しているのは確かだが、半分で食べるのを止めるのが彼の甘味許容値の限界であるからとは、彼等は全く気付いていない。

喉奥が少し落ち着いた所で、クラウドは2本のグラスにオレンジジュースを注いだ。
コーヒーカップとオレンジジュースをトレイに乗せ、一度席に戻る。


「飲み物、持って来た」
「ああ、すまない」
「……ん」


テーブルにトレイを置くと、レオンとスコールからは短い反応。
直ぐにケーキに意識を戻す二人に、クラウドは些か寂しさを覚えつつも、嬉しそうにケーキを食べる二人の横顔に笑みを零す。

クラウドはもう一度席を離れると、今度はケーキテーブルへと向かった。
折角来たのだから、少し位は何か食べて行かないと、損をした気分だ。
レオンとスコールには不評気味だったコーヒーケーキなら、抵抗なく食べられるかも知れない。

ショートケーキ、チョコレートケーキ、フルーツタルト、生クリームやチョコレートや抹茶クリームなど各種のロールケーキ。
バニラムースと苺ムースの2層ケーキ、ティラミス、スフレチーズケーキとレアチーズケーキ……エトセトラ。
シュークリームやマドレーヌ、小さく切り分けた生チョコレートもある。
眩暈がしそうな程に所狭しと並べられたスイーツ群に、見ているだけで胃が凭れそうになったクラウドだが、甘さ控えめと広告のついたティラミスとコーヒーケーキを選ぶ事にする。
ケーキ類の他に、パスタやピザが並べられていたので、それぞれ少しずつ皿に取って、クラウドは席に戻った。
その途中で、空になった皿を持った恋人達と擦れ違う。


「もう全部食べたのか?」


目を丸くするクラウドに、ああ、とレオンが頷く。
その後ろで、スコールが微かに顔を赤らめていた。


「どれも中々美味くて、止められなかったんだ」
「……そうか。まあ、楽しそうで何よりだ」
「お前のお陰だ。行こう、スコール。奥にチョコレートフォンデュがあったぞ」
「…!」


兄の一言に、スコールの蒼眼が輝く。
足早になる弟の背にくすりと笑って、レオンがその後を追う。

席に戻ってコーヒーを飲み、クラウドはほっと息を吐いた。
甘味の前に胃を慣らしておこうと、パスタをフォークに巻き付ける。


(あれだけ甘いものを見るのは少し辛いな。でも……)


つい先程聞いたばかりの恋人の一言を聞いて、クラウドの口元が緩む。

付き合いが長い事、恋人と言う身内同然のポジションにいるお陰か、レオンはクラウドに対して遠慮しない。
仕事で上手く彼をサポートした時を除けば、レオンは余りクラウドに感謝の言葉を口にする事はなかった。
誰に対しても配慮を忘れないレオンが、クラウドに対してだけは容赦のない物言いをするのは、彼からの信頼の証と言って良い。
が、たまには褒めて欲しいな、と思う事もある訳で────と言う所に、先の「お前のお陰だ」と言う一言だ。
レオンにとっては何気ない一言だったのだろうが、恋人にそう言って貰えると、クラウドとて喜ばない訳がない。

そんな彼の傍らで、兄以上に無口なスコールも、今日は常よりもずっと楽しそうにしている。
表情だけはいつもと同じように装っているつもりでも、蒼灰色が爛々と子供のように輝いているのが判った。
時折、浮かれている自分に気付いて我に返るのか、真っ赤になっている事があるが、甘味の誘惑には逆らえないようで、結局、また眉間の皺が緩む。
チョコレートフォンデュがあると知って、いそいそと向かった後ろ姿も、いつもの大人びた雰囲気とギャップがあって可愛らしい。

そんな恋人達を見ていると、連れて来て良かった、とクラウドは思った。




≫2

[クラレオスコ]ハッピー・スイーツ・パラダイス 2

  • 2014/09/02 23:48
  • Posted by
スイーツ男子なレオスコと付き合うクラウド続き。





クラウドがパスタとピザを食べている間に、レオンとスコールは戻って来た。
1回目と同じく、皿に特盛にされたスイーツ群に、クラウドはこっそりと自分の胸元を摩って宥める。
二人はそんな恋人に気付く事なく、お互いが選んだケーキの何が美味しい、これがお薦めと話に花を咲かせている。


「苺のロールケーキが美味いぞ。中にカットされた苺が入ってる」
「トロピカルケーキのパイナップル、美味かった」
「マンゴームースはどうだった?」
「俺は気に入った。ババロア、何処にあったんだ?」
「トルテの横だったかな。スコール、フォンデュしたマシュマロ、食べるか?」
「食べる」


爪楊枝を挿した、チョコレートにコーティングされたマシュマロを差し出すレオン。
スコールが雛鳥のように口を開けて、ぱくっと食い付いた。
もこもこと頬袋を作ってマシュマロを食べる弟に、レオンが楽しそうに笑う。


「レオン、苺、食べる?」
「良いか?」


今度はスコールが、爪楊枝を挿したチョコレートコーティングされた苺を差し出す。
レオンが口を開けると、スコールが其処に苺を運ぶ。
甘いチョコレートと、苺の甘酸っぱさが口の中に広がって、レオンの口元が緩む。
それをスコールは羨ましそうに見詰め、もう一つ皿に取っていた苺を口に入れた。


「あま」
「うん」
「……ん」


2文字以下の会話だが、兄弟はそれで十分であった。
口は舌の中の甘味を堪能するのに夢中で、それ以上の役目を放棄している。

そんな二人の前で、クラウドは悶絶していた。


(可愛過ぎるだろう……!)


我知らずにやける口元を、クラウドは必死に引き結ぶ。

お互いに食べさせ合うなんて、いつもならば、人目を気にして絶対に取らない行動だ。
特にスコールは恥ずかしがるので、レオンが促しても断るだろうに、今日は小さな子供のように素直だった。
そんな弟の姿が、レオンは嬉しくて堪らないのだろう、もう一つ、と言ってホワイトチョコレートのかかった苺を差し出している。

やっぱり連れて来て良かった、と思いつつ、クラウドはコーヒーを口に運ぶ。
其処へ、二対の蒼灰色が向けられて、


「クラウド。お前、もう食べないのか?」


レオンに言われて、クラウドはああ、と眉尻を下げた。


「俺はもう十分だ」
「……あんまり食べてないだろ」


確かに、普段のクラウドの食事量と比べれば、今日は半分以下で止まっている。
と言うのも、目の前でこれでもかと言う程消費される甘味を見て、既に胃もたれが始まっているのだから仕方がない。

────が、甘党な兄弟は、そんな恋人の本音には気付いておらず、


「取って来ようか。チーズケーキとか美味かったぞ」
「い、いや。大丈夫だ。俺はお前達が食べてるのを見てるだけで満足だから」


席を立とうとするレオンを、クラウドは慌てて止めた。
彼等と同じペースでケーキを持って来られても、クラウドには半分も消費できない。

レオンは納得しない顔をしつつも、椅子に座り直した。
レオンはしばしクラウドを見詰めた後、手元の皿のショートケーキをフォークに挿し、


「ほら」


徐に差し出されたそれを見て、クラウドは目を丸くした。
固まるクラウドに、レオンは常と変わらない表情で言う。


「美味いぞ」
「……あ、ああ」
「ほら、口開けろ」


促されるままに口を開けながら、まさか、マジかと胸中で叫ぶ。
その叫びは、歓喜でもあり、拒絶でもあり、しかしやはりクラウドは歓喜していた。

舌の上にフォークの背が当たって、クラウドは口を閉じる。
口の中が甘いもので一杯になり、クラウドは引き攣りそうになる顔を必死で正常に保たせていた。


(甘い!やばい!甘い!!)


柔らかい食感の生クリームが、舌の上で蕩けて行く。
噛む程の抵抗もないそれは、瞬く間にクラウドの咥内を満たし、甘い感覚が鼻まで抜けた。

そんなクラウドを、レオンが笑みを浮かべて見ている。


「どうだ?クラウド」
「………あ、まい」
「美味いよな」


聞き間違えたのか、甘い=美味いと言う極甘党の思考なのか、レオンは疑いもせずに、クラウドの一言に嬉しそうに笑った。
その笑顔が眩しくて、クラウドは咥内の甘味地獄に悶えつつ、テーブルの下で耐えた自分にガッツポーズする。

正直な気持ちを吐露すると、この生クリームはクラウドには甘過ぎる。
コーヒーをアテにしても余り食べられるものではないだろうと予想していたが、現実はそれ以上だった。
そんな予測をしていながら生クリームを食べたのは、レオンが滅多にしない「あーん」をしてくれたからだ。
普段はどんなに強請っても、恋人らしい甘い行為など許してくれないレオンが、自ら「あーん」させてくれた事に、クラウドは完全に舞い上がっていた。

更に、レオンがクラウドに差し出したフォークをそのまま使っているのを見て、また顔がにやける。


(間接キス!!)


中学生でもあるまいにと思いつつ、やはり喜んでしまう自分をクラウドは誤魔化せない。

そんなクラウドをじっと見詰めるのは、年下の恋人───スコールだ。
スコールはレオンとクラウドを交互に見詰めた後、徐に皿の上のチョコレートケーキをフォークに取り、


「クラウド」
「ん?」
「………ん」


差し出されたチョコレートクリームに、クラウドは再度目を丸くした。

まさか、スコールが、あの恥ずかしがり屋のスコールが。
驚きと感動に打ち震えるクラウドに、スコールは気付かないまま、微かに赤らんだ顔でチョコレートクリームを差し出している。
早く食べてくれ、と縋るように上目遣いになる彼が、クラウドは可愛くて堪らない。

しかし、口の中にはまだ生クリームの甘味が残っている。
だが、いつまでも躊躇っていては、羞恥に耐え兼ねたスコールが手を引っ込めてしまう。

あ、と口を開ければ、スコールは其処にチョコクリームを運んだ。
クラウドはテーブルの下で拳を握り締めながら、甘味の塊を食む。
するっとフォークが抜けて、スコールを見ると、彼は心なしか嬉しそうに唇を緩ませていた。


(可愛い。でも甘い。でも可愛い…!)


口の中はすっかり甘味地獄だが、クラウドは満足していた。
レオンだけでなく、スコールからも念願の「あーん」をして貰えた。
それだけで、二人を此処に連れて来て、尚且つ一緒に付き合って良かったと心の底から思う。

蕩けたチョコレートクリームの後味を、コーヒーを飲んで誤魔化した。
ふう、と一息吐いたクラウドだったが、そんな彼の目の前に、今度は薄くピンクに色付いたクリームが差し出される。


「苺とラズベリーのケーキ、美味かったぞ」
「…柚子入りのレアチーズケーキも」
「あ、生チョコ食べるか?」
「バナナのチョコタルトとか、あと、アップルパイと」
「ほら、口開けろ」
「……これも…」


次から次へと差し出されるデザートに、クラウドは固まった。
しかし、大好きな甘味に囲まれて舞い上がっている恋人達は、そんなクラウドに相変わらず気付かない。
何より、彼等にとってこの行動は、純粋な好意であり、憧れだったスイーツパラダイスに連れて来てくれたクラウドへの礼なのだろう。

ほら、と。
眩しい程の笑顔と、恥ずかしそうに頬を赤らめて差し出される、甘い甘いケーキ。
それらを見詰め、あらゆる意味で此処は確かに天国だと────そして同時に地獄だと、クラウドは思いつつ、口を開けた。





前々から妄想していたスイーツ男子な獅子兄弟と、彼らに喜んで貰おうと頑張るクラウド。
頑張れば頑張る程クラウドが不憫な気がするが、本人は結構幸せです。翌日胃もたれで寝込むとしても。

甘い物食べたいよーぉぉぉおおおお!

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