[レオスコ]知りたいのならいくらでも
R15
(レオンって、俺のどこが好きなんだろう)
閨の交わりを終えて、一度意識を飛ばした後。
ふと目が覚めて、夜の冴えた冷気が火照った名残を薄らげる頃、スコールはそんなことを考えた。
裸身のまま、二人でひとつのベッドで横になっている。
セックスをしている時の熱さはとうに抜けていたが、体の中心にはまだ燻ぶっている感覚があった。
冷気を厭って抱き締める腕は、眠っているのにしっかりとした強さが合って、スコールに安心感を誘う。
なんとなくに目が覚めたものだったが、このままじっとしていれば、そう遠くない内に二度寝するのは明らかだ。
そんな束の間の静寂の中で、唐突に疑問が湧いて出た。
暇を持て余した頭が、なんとなく避けていた疑問を汲み取って持ち上げてきた、そんな具合に。
(……俺なんかが、レオンに好かれる理由なんて、あるんだろうか)
すぐそこにある、温かな胸に顔を埋めながら考える。
レオンは頭が良いし、人を見る目もある。
十代が多い秩序の戦士たちの中では年嵩な方で、そう言う意味でも経験豊富だ。
秩序の戦士たちはそれなりに仲が良いが、まとまりのないところも少なからずあるので、レオンはそう言うところを引き締めてくれる。
けれども過保護にする訳ではなく、必要なところがあれば言及する、その程度だ。
だからスコールから見ても、変に堅苦しくないし、フォローも上手いから、ウォーリアやセシルを相手にする時よりは気が楽だった。
スコールから見ると彼はそういう好人物だが、彼から見た自分はどうだろう。
己が大概、可愛くない性格であることは、嫌と言うほど知っている。
素直な訳でも、無邪気な訳でもない自分を、どうしてレオンは愛してくれているのか。
そろりと顔を上げて見れば、自分と同じ、斜め傷を持った顔がある。
顔立ちはバッツたちから「よく似てる」と言われるが、スコールにはよく判らない。
確かに目や髪の色は近いようだが、しっかりと大人の輪郭をしているレオンの顔は、スコールが鏡を見ながら並んでも、あまり似ている気がしなかった。
その顔にそっと手を伸ばし、頬に触れる。
閉じた眦に指を滑らせると、長い睫毛がふるりと震え、
「……あ、」
「……スコール……?」
薄く覗いた蒼灰色に、起こしてしまった、とスコールは思った。
背中を抱いていたレオンの腕が、ぎゅう、と力を籠める。
痛いほどのことはない。
眠気に誘われながらも、それに抗っているようで、うう、と小さく唸る声が聞こえた。
しばらくすると、レオンは一度強く目を閉じてから、
「ふぁ……」
「……悪い、起こした」
「うん……いや……」
欠伸をするレオンに詫びると、彼は小さく首を横に振った。
重い瞼をこじ開けるよう、目元に手を遣って幾許か、ようやくはっきりと意識を持った蒼が現れる。
「まだ暗いな……」
「そんなに時間は経ってない。多分、だけど」
「そのようだ。お前は、眠れなかったのか?」
優しい声とともに、レオンの手がスコールの項のあたりを擽る。
「いや……そういう訳じゃない。偶々目が覚めていただけで」
「そうか」
「悪かった。あんたまで起こして」
「気にするな。どうせそんなに深くは寝ていなかったから」
レオンの言葉に、気を遣わせた、とスコールは思った。
こういう時、スコールが何を言ったところで、レオンからは「お前が悪いんじゃない」と返ってくる。
お陰でスコールは可惜に気を遣わなくて済むのだが、彼にばかりその労を強いている気もしていた。
形の良い指が、スコールの濃茶の髪を手櫛で梳く。
その手付きがどうにもくすぐったくて、スコールはゆるゆると頭を振った。
「嫌か」
「……なんか、そわそわする」
厭だと言う程ではないけれど、優しく触れられるのは落ち着かない気持ちになる。
要はスコールがこうした触れ合いに不慣れなのだ。
レオンもそれを汲み取って、撫でる手付きを殊更ゆっくりとさせた。
その手の感触に、頭の後ろの方から、意識が段々と緩んでいく。
このままその内眠れるだろうか、と思ったスコールだが、ふとさっきの疑問が再浮上した。
「……レオン」
「ん?」
「……」
目の前の男の名を呼んだスコールだったが、そこから先が続かない。
疑問を解消した気持ちと、それを聞いてどうするんだ、と言う冷静な思考が葛藤している。
後からやってきた、どこか気まずい気持ちに、スコールの視線が彷徨う。
暗がりの部屋の中でも、その様子はレオンにしっかり見られていた。
レオンはあやすように小さく笑って、スコールの丸みの残る頬をそっと撫でる。
「何か言いたいことがあるなら、良いぞ」
「……」
「すっきりさせてしまった方がよく眠れる」
「ん……」
「まあ、無理にとは言わないけど」
いつもと同じ、レオンは選択肢の中に逃げ道を残す。
言いたくないなら言わなくて良い、と言うその寛容が、スコールにとっては安心材料になる。
スコールはしばらく、レオンに身を寄せて考えていた。
聞いたところで大した意味もないだろう。
聞く事で、何か恣意的なものも生まれそうで、そんなものをレオンに押し付けるのも嫌だった。
けれど、どうして、何が、と言う漠然とした疑問は、放っておくと妙な尾を引きそうな気がする。
結局のところ、吐くだけ吐いてしまわないと、このもやもやを打ち消すことも出来ない。
せめてレオンを困らせないことを祈りながら、
「……あんたは……」
「うん」
「……俺の、その……何が好きなのかと、思って……」
スコールの声は、ぼそぼそと小さい。
いっそ、「聞こえなかった」と言われたら、それでなかったことにしてしまおうとも思っている。
しかし、レオンは耳の良い男だ。
スコールの不明瞭な声でも、きちんと言ったことは伝わっている。
「お前の好きなところ、か」
「……」
反芻されて、スコールの耳が熱くなる。
馬鹿なことを聞いた、茹った顔を隠すように、レオンの胸に額を擦り付けた。
自分で聞いておいて、自分で恥ずかしくなってしまうスコールに、レオンはくすりと笑って頭を撫でる。
胸から感じるじんわりと熱い感触に、敢えて気付かない振りをして、そうだな、と考えて見せた。
「何がと改めて考えると、少し難しいな。色々あるものだから」
「……そんなに?」
「そうだな。そんなにある。お前が思っているより、俺はお前のことが好きだから」
「……」
胡乱な目が伺うようにレオンを見た。
彼の言葉を疑う意味もないだろうが、どうにもスコールは、それを素直に受け取れない。
それもこれも、自分が他人に好かれる人格者ではない自覚があるからだ。
スコールの視線に含まれる懐疑的なものを、レオンは柔い笑みを浮かべて受け止めている。
「まず強いて挙げるなら───お前が必死になっているところは、可愛いと思う」
「……可愛い訳ないだろ、俺が」
唇を尖らせてスコールが返すと、いいや、とレオンは言い切った。
「慣れてないのに、俺に合わせようとするだろう。本当なら俺がペースを抑えるべきなんだが、お前がそうやって一所懸命になってくれるのを見ると、つい、な」
「な……」
薄い笑みを据えたレオンの言葉に、スコールの顔がまた熱くなる。
交わっていた時の感覚が、その燻ぶりが、体の奥で火を点けた。
もう体は疲れていて、眠るつもりであるにも関わらず、若い躰がじんとした欲を思い出す。
真っ赤になってはくはくと口を開閉させるスコールに、レオンの喉がくつくつと笑う。
「そう言う素直なところも、好きだな」
「俺のどこが……」
「今、顔が赤くなっている。耳まで赤いな」
「さ、触るな!」
ピアス穴の開いた耳を、レオンの指が形をなぞって滑る。
ぞくぞくとしたものが耳元から首筋を伝ってくるものだから、スコールは思わず抗議した。
「敏感なところも良い」
「んん……!か、らかう、な……!」
「本気だよ。ほら、こうやって触れるだけで───」
「や、あ……っ!」
耳元から、首筋、そのまま胸へと辿るレオンの指。
熱が再び燈った身体は、彼の言う通り、敏感に反応を示してしまう。
はっ、はっ、と息が上がって行くスコールに、レオンはくすりと笑みを浮かべて、首元にキスをする。
ちゅう、と座れる感覚が合って、スコールの喉仏に小さな華が咲いた。
感じ入った体が、名残の感覚をいやにリアルに増長させて、勝手に準備を始めてしまう。
もどかしさに身を捩って逃げを打つスコールを、レオンの腕がしっかりと抱き締めて捕まえていた。
「レ、オン……っあ、んん……っ」
「もう休むつもりだったんだがな」
「は、あ……やぁ……っ」
触れるレオンの手は明らかにスコールを煽っている。
身動ぎした足をレオンの下肢に絡ませれば、彼の下腹部も頭を起こしているのが判った。
「う、ん、ぁあ……っ」
「勿論……こういう所ばかりじゃなくて。普段の様子も、可愛いと思うよ」
「は……、は、ふぅ……ん……っ」
「無意識に俺を目で追っているところとか、な」
耳元で囁く声だけで、スコールは自身が達してしまいそうだった。
彼が何を言っているのか、その内容まで理解する余裕はない。
肌を辿る彼の指先や、背中に添えられた腕の逞しさを感じているだけで、精一杯だ。
シーツが擦れる音と共に、ベッドがかかる重みに軋む。
レオンの腕がスコールの足を大きく開かせて、まだ閉じ切っていない秘所に指先が触れる。
眠ろうとしていたことなど、二人ともすっかり忘れていた。
「レオン……っ」
「もう一回だけ、な」
「……あ、あぁ……っ!」
甘く耳朶を噛まれて、スコールは背中を仰け反らせた。
覆い被さる男に縋ってしがみつけば、小さく笑う気配が伝わる。
「は、う……あ、や……中に、指……入っ、て……」
「大丈夫だ。解れてるからな、痛くはないだろう」
「あ、ああ……っ、ひぅ、んん……っ」
中へと侵入される感触を、スコールは身を捩りながら受け入れていく。
ひくっ、ひくっ、と四肢を戦慄かせて縋る少年の眦には、甘露の雫が浮かんでいる。
レオンはそれを優しく啜りながら、スコールの目尻にキスをした。
「どこが、なんて───野暮な話だ、スコール」
「は……っ、レオ、ン……!」
「お前の全部が、俺がお前の好きなところだよ。それを自覚していないところも含めて、な」
悶える内側に入りながら注がれる言葉は、飽和状態のスコールに聞こえる筈もなく。
甘い悲鳴さえ心地良いものを感じながら、レオンは愛しい少年を抱き締めた。
『レオン×スコール』のリクエストを頂きました。
スコールの全部が愛しくて可愛いと思っているレオンと、全くそんな自覚もなければ、自分が愛されていることに自信のないスコールでした。
たまにこんなこと聞いてきて、答えるのは吝かでないレオンだけど、スコールには口で言っても中々本人が納得しない。
刷り込みみたいに、体から実感させつつ、教えて行かないとね、と言うスタンスのレオンです。