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[クラレオスコ]ハッピー・スイーツ・パラダイス 2

  • 2014/09/02 23:48
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スイーツ男子なレオスコと付き合うクラウド続き。





クラウドがパスタとピザを食べている間に、レオンとスコールは戻って来た。
1回目と同じく、皿に特盛にされたスイーツ群に、クラウドはこっそりと自分の胸元を摩って宥める。
二人はそんな恋人に気付く事なく、お互いが選んだケーキの何が美味しい、これがお薦めと話に花を咲かせている。


「苺のロールケーキが美味いぞ。中にカットされた苺が入ってる」
「トロピカルケーキのパイナップル、美味かった」
「マンゴームースはどうだった?」
「俺は気に入った。ババロア、何処にあったんだ?」
「トルテの横だったかな。スコール、フォンデュしたマシュマロ、食べるか?」
「食べる」


爪楊枝を挿した、チョコレートにコーティングされたマシュマロを差し出すレオン。
スコールが雛鳥のように口を開けて、ぱくっと食い付いた。
もこもこと頬袋を作ってマシュマロを食べる弟に、レオンが楽しそうに笑う。


「レオン、苺、食べる?」
「良いか?」


今度はスコールが、爪楊枝を挿したチョコレートコーティングされた苺を差し出す。
レオンが口を開けると、スコールが其処に苺を運ぶ。
甘いチョコレートと、苺の甘酸っぱさが口の中に広がって、レオンの口元が緩む。
それをスコールは羨ましそうに見詰め、もう一つ皿に取っていた苺を口に入れた。


「あま」
「うん」
「……ん」


2文字以下の会話だが、兄弟はそれで十分であった。
口は舌の中の甘味を堪能するのに夢中で、それ以上の役目を放棄している。

そんな二人の前で、クラウドは悶絶していた。


(可愛過ぎるだろう……!)


我知らずにやける口元を、クラウドは必死に引き結ぶ。

お互いに食べさせ合うなんて、いつもならば、人目を気にして絶対に取らない行動だ。
特にスコールは恥ずかしがるので、レオンが促しても断るだろうに、今日は小さな子供のように素直だった。
そんな弟の姿が、レオンは嬉しくて堪らないのだろう、もう一つ、と言ってホワイトチョコレートのかかった苺を差し出している。

やっぱり連れて来て良かった、と思いつつ、クラウドはコーヒーを口に運ぶ。
其処へ、二対の蒼灰色が向けられて、


「クラウド。お前、もう食べないのか?」


レオンに言われて、クラウドはああ、と眉尻を下げた。


「俺はもう十分だ」
「……あんまり食べてないだろ」


確かに、普段のクラウドの食事量と比べれば、今日は半分以下で止まっている。
と言うのも、目の前でこれでもかと言う程消費される甘味を見て、既に胃もたれが始まっているのだから仕方がない。

────が、甘党な兄弟は、そんな恋人の本音には気付いておらず、


「取って来ようか。チーズケーキとか美味かったぞ」
「い、いや。大丈夫だ。俺はお前達が食べてるのを見てるだけで満足だから」


席を立とうとするレオンを、クラウドは慌てて止めた。
彼等と同じペースでケーキを持って来られても、クラウドには半分も消費できない。

レオンは納得しない顔をしつつも、椅子に座り直した。
レオンはしばしクラウドを見詰めた後、手元の皿のショートケーキをフォークに挿し、


「ほら」


徐に差し出されたそれを見て、クラウドは目を丸くした。
固まるクラウドに、レオンは常と変わらない表情で言う。


「美味いぞ」
「……あ、ああ」
「ほら、口開けろ」


促されるままに口を開けながら、まさか、マジかと胸中で叫ぶ。
その叫びは、歓喜でもあり、拒絶でもあり、しかしやはりクラウドは歓喜していた。

舌の上にフォークの背が当たって、クラウドは口を閉じる。
口の中が甘いもので一杯になり、クラウドは引き攣りそうになる顔を必死で正常に保たせていた。


(甘い!やばい!甘い!!)


柔らかい食感の生クリームが、舌の上で蕩けて行く。
噛む程の抵抗もないそれは、瞬く間にクラウドの咥内を満たし、甘い感覚が鼻まで抜けた。

そんなクラウドを、レオンが笑みを浮かべて見ている。


「どうだ?クラウド」
「………あ、まい」
「美味いよな」


聞き間違えたのか、甘い=美味いと言う極甘党の思考なのか、レオンは疑いもせずに、クラウドの一言に嬉しそうに笑った。
その笑顔が眩しくて、クラウドは咥内の甘味地獄に悶えつつ、テーブルの下で耐えた自分にガッツポーズする。

正直な気持ちを吐露すると、この生クリームはクラウドには甘過ぎる。
コーヒーをアテにしても余り食べられるものではないだろうと予想していたが、現実はそれ以上だった。
そんな予測をしていながら生クリームを食べたのは、レオンが滅多にしない「あーん」をしてくれたからだ。
普段はどんなに強請っても、恋人らしい甘い行為など許してくれないレオンが、自ら「あーん」させてくれた事に、クラウドは完全に舞い上がっていた。

更に、レオンがクラウドに差し出したフォークをそのまま使っているのを見て、また顔がにやける。


(間接キス!!)


中学生でもあるまいにと思いつつ、やはり喜んでしまう自分をクラウドは誤魔化せない。

そんなクラウドをじっと見詰めるのは、年下の恋人───スコールだ。
スコールはレオンとクラウドを交互に見詰めた後、徐に皿の上のチョコレートケーキをフォークに取り、


「クラウド」
「ん?」
「………ん」


差し出されたチョコレートクリームに、クラウドは再度目を丸くした。

まさか、スコールが、あの恥ずかしがり屋のスコールが。
驚きと感動に打ち震えるクラウドに、スコールは気付かないまま、微かに赤らんだ顔でチョコレートクリームを差し出している。
早く食べてくれ、と縋るように上目遣いになる彼が、クラウドは可愛くて堪らない。

しかし、口の中にはまだ生クリームの甘味が残っている。
だが、いつまでも躊躇っていては、羞恥に耐え兼ねたスコールが手を引っ込めてしまう。

あ、と口を開ければ、スコールは其処にチョコクリームを運んだ。
クラウドはテーブルの下で拳を握り締めながら、甘味の塊を食む。
するっとフォークが抜けて、スコールを見ると、彼は心なしか嬉しそうに唇を緩ませていた。


(可愛い。でも甘い。でも可愛い…!)


口の中はすっかり甘味地獄だが、クラウドは満足していた。
レオンだけでなく、スコールからも念願の「あーん」をして貰えた。
それだけで、二人を此処に連れて来て、尚且つ一緒に付き合って良かったと心の底から思う。

蕩けたチョコレートクリームの後味を、コーヒーを飲んで誤魔化した。
ふう、と一息吐いたクラウドだったが、そんな彼の目の前に、今度は薄くピンクに色付いたクリームが差し出される。


「苺とラズベリーのケーキ、美味かったぞ」
「…柚子入りのレアチーズケーキも」
「あ、生チョコ食べるか?」
「バナナのチョコタルトとか、あと、アップルパイと」
「ほら、口開けろ」
「……これも…」


次から次へと差し出されるデザートに、クラウドは固まった。
しかし、大好きな甘味に囲まれて舞い上がっている恋人達は、そんなクラウドに相変わらず気付かない。
何より、彼等にとってこの行動は、純粋な好意であり、憧れだったスイーツパラダイスに連れて来てくれたクラウドへの礼なのだろう。

ほら、と。
眩しい程の笑顔と、恥ずかしそうに頬を赤らめて差し出される、甘い甘いケーキ。
それらを見詰め、あらゆる意味で此処は確かに天国だと────そして同時に地獄だと、クラウドは思いつつ、口を開けた。





前々から妄想していたスイーツ男子な獅子兄弟と、彼らに喜んで貰おうと頑張るクラウド。
頑張れば頑張る程クラウドが不憫な気がするが、本人は結構幸せです。翌日胃もたれで寝込むとしても。

甘い物食べたいよーぉぉぉおおおお!

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