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2019年08月11日

[クラレオ]災い転じ幸を呼ぶ

  • 2019/08/11 22:00
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青天の霹靂か、鬼の霍乱か。
そんな言葉が頭に浮かんで、少々笑みが零れそうになったレオンだが、相手がクラウドとは言え不謹慎ではあるとなんとか抑えた。

平時は独り暮らしであるレオンの住むアパートで、今日は家主ではない者がベッドを占拠している。
其処でうーうーと唸り声を上げているのは、今朝何処からか帰ってきたばかりのクラウドだ。
帰って来るなり、どうにも調子が悪い、と言って倒れ込んできた彼の体は、異常な程の熱を帯びていて、彼が内包している事情を知っているレオンは、それによる影響が遂に悪い形で現れたのかと蒼くなった。
……が、よくよく確かめてみると、それは単なる風邪であると診断された。
人騒がせな、と呆れたレオンであったが、多少の無茶は闇の力で誤魔化す事も厭わないクラウドが、それも儘ならずにレオンを頼ってきた訳だから、やはりそれなりに重い状態ではあったのだ。
何処かで行き倒れにならず、故郷まで戻って来ただけでも、十分頑張ったと褒めてやって良いだろう。

そんな状態の重病人を一人残して行く訳にもいかず、レオンはシドに連絡をして、今日の予定に組んでいたものはご破算にして貰った。
幸い、急ぐ予定はなく、詰まっている事と言ったらコンピューターのプログラム周りの事ばかりで、それはシドの仕事である。
普段はレオンも出来る限りの手伝いをしているのだが、プログラム本体に関わる事となると、レオンは其処まで造詣は深くない。
精々シドが欲しいと言った資料を探して運んでくるしかないのである。
パトロールはユフィがしてくれると言うし、エアリスや、いつの間にかすっかり街に馴染んだ小さな妖精たちも協力してくれるそうだ。
だから今日のレオンの仕事は、クラウドを看病する事のみとなった。

看病とは言っても、特別にあれこれとしなければならない、と言う事はない。
いつものように二人分の食事を作り、常と違う事と言えば、起き上がる気力もなさそうなクラウドに食事の手助けをする程度だ。
クラウドは、熱は高いものの、食欲は旺盛だった。
これなら数日休めばすっかり回復するだろう、と思う位には、よく食べている。
それ位にエネルギーがある方が、レオンも余計に気を回す必要を感じなくて楽だった。

クラウドが昼食を終えた後、レオンも手早く自分の食事を済ませて、片付けをした。
一通りの家事を済ませて寝室に入ると、赤い顔をした男がベッドの中で唸っている。
哀れな幼馴染の様子に苦笑しつつ、レオンはベッド横に立ってその顔を覗き込んだ。


「気分はどうだ、クラウド。吐き気は?」
「ない……が、熱い……鬱陶しい……」
「風邪なんだから仕方がないな。薬も飲んだんだし、直に効いて来るだろうから、それまでの辛抱だ」


ぽんぽん、とレオンはクラウドの金色の頭を撫でであやす。
ガキじゃないんだぞ、と言う目が此方を睨んだが、レオンは気にしなかった。


「しかし、誕生日に風邪とは、お前も運がないな」
「……そう言えばそんな日もあったか……」
「忘れていたか。まあ、俺もユフィが言わなければ忘れてたんだが」


レオンがクラウドの誕生日の事を思い出したのは、三日前の事だ。
そろそろだよね、と言ったユフィは、クラウドの誕生日プレゼントやパーティを考えていたらしく、レオンにクラウドの予定を聞いてはいないかと尋ねてきた。
生憎レオンが知る由もなく、ユフィはパーティの準備をするかしないかを悩み続けて、今日を迎えている。
結局、帰ってきたクラウドが真面に動ける状態ではないので、パーティなど開ける訳もなく、クラウドが治ってから改めて彼を捕まえて計画するつもりのようだ。

レオンはベッド横に椅子を寄せて座り、頬杖を突いて、赤い顔をしているクラウドを見下ろしていた。
じっと眺める蒼眼に、なんだ、と碧眼が眉根を寄せて見返す。


「…何か用か。今日は何も出来ないぞ」
「判っている。病人に仕事をしろとは言わないさ」
「……じゃあ何だ?」


単に見ているだけ、と言う訳ではないだろう、とクラウドは言った。
レオンとしては、それでも別に構わないのだが、


「いや、何。ユフィからお前の誕生日プレゼントを考えておけと言われていたんだが、特に何も浮かばないし。お前が帰ってきたら訊こうかとも思ってたんだが、その有様じゃあなと。一応聞いてみるが、今何か欲しい物はあるか?」
「……水」
「じゃあプレゼントしてやる」
「ちょっと待てまさかそれカウントしないだろうな。おい、こら」


すっくと椅子から立ってキッチンに向かうレオンに、クラウドがベッドの中から手を伸ばす。

おい、と呼ぶ声を背中に聞きつつ、レオンはくすくすと笑いながら、グラスに水を注ぐ。
大きめのピッチャーも食器棚から出して、水と氷を入れた。

ベッドに戻れば、クラウドが赤い顔で起き上がっていた。
レオンが差し出したグラスを受け取り、ごくごくと一気に飲み干して行く。


「美味かったか」
「それなりに。だが、これで本当に誕生祝が終わりとか言うなよ」
「欲が深い奴だな。大して物欲もない癖に」
「それは否定しないが、別の欲ならある」


空になったグラスをサイドテーブルに置きながら言うクラウド。
何の話かとレオンが首を傾げれば、ちょいちょいとクラウドが指を振ってこっちに来いと促す。
それを見てなんとなく意図を掴みつつ、レオンが顔を近付けてやれば、ぐっと胸倉が捕まれて、ぶつけるようにキスをされた。

咥内でねっとりと唾液を塗した舌が蠢いて、レオンのそれを絡め取る。
ちゅく、ちゅぷ、とわざとらしく立てられた音が耳の奥で鳴っていた。
されるがままになっているのも癪のような気がして、レオンの方からも相手の絡め取って吸ってやる。
ひくっと舌の根が震えたかと思うと、今度はレオンの舌がまた絡め取られて、じゅるじゅると音を立てながら啜られた。

中腰の格好だったレオンの肩が震えて、バランスが前傾に傾く。
かかる重みを支える気など最初からなかったのだろう、クラウドは掴んでいたレオンの胸倉を引き倒す形で、ベッドへと転がした。
上に覆い被さって来る男の手は熱く、どっちの熱なんだか、とレオンは呆れた。


「────っは……、はあ…」


ようやく解放されて、レオンは籠った空気を吐き出して、新鮮な酸素を吸い込む。
その間に、クラウドの唇が喉元に寄せられて、ちゅう、と吸い付く感触があった。


「おい……」
「誕生日プレゼントなら、俺はあんたが欲しい」
「……お前、病人だろう」
「ああ。だから優しくしろ」
「俺に伝染ったらどうしてくれるんだ」
「その時は俺があんたを手厚く看病してやる」
「碌な事にならないから止せ」


家事一般がまるで出来ない男に看病されるなんて、想像するだけで恐ろしい。
レオンの脳裏には、いつであったか見た、彼がキッチンを大惨事にした光景が蘇っていた。
あれを片付けたのはレオンなので、あんな悲劇を二度も起こす位なら、風邪でも熱でも自分が動けるなら自分で動いた方が良い、とレオンは思う。

熱を持った手がレオンのシャツを捲り、肌の上を彷徨う。
下肢に押し付けられる固い感触の正体を察して、元気な事だ、とレオンは溜息を吐きつつ、体の力を抜いた。
その意図をクラウドも察し、またレオンの首筋にキスが落ちる。


「レオン」
「今日だけだぞ。悪化しても俺は責任は取らない」
「ああ。大丈夫だ、こう言うのは汗をかけば治ると言うだろ」
「悪化もし易いがな」
「で、治ったら後で改めてプレゼントを楽しませて貰おう」
「おい、さり気無くこれをノーカンにしようとするな」
「だがあんたはプレゼントだろう?じゃあ貰った俺のものだ。だから治ってから好きなだけ堪能したって良いだろう」
「……屁理屈にもならんな。お前、熱で頭が回ってないんじゃないか。やっぱり今日は止めた方が良いな」


レオンはクラウドの体を圧し退かせ、もう一度逃げようとするが、肩を抑える力は強い。
病人の癖に、と舌打ちしていると、背中に腕が回されて、二人の肌が密着する。
熱い、と健康的な意味ではないクラウドの体温を感じつつ、言っても無駄だと早い内に抵抗を止めた。

折角の誕生日に風邪なんてものに捕まったのだから、哀れと言えば哀れだ。
そう思うと、まあ甘やかす理由としては十分か、とレオンも思う。
それならば、とレオンの手がするりと伸びて、クラウドの下肢を撫でる。


「……レオン?」
「プレゼントだし、お前は病人だしな。俺がしてやる」
「マジか」
「ああ。お前の好きなように、俺がしてやる。こんなのは今日だけだぞ」


特別だと囁いてやれば、触れる場所が硬く張り詰める。
全く元気な事だと呆れつつ、レオンはクラウドの熱を更に煽るべく起き上がった。





クラウド誕生日おめでとう!!
風邪ひいちゃって災難かと思いきや、思わぬラッキーが転がり込んだクラウドでした。

[クラスコ]夏夢バースディ

  • 2019/08/11 21:00
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夏祭りに行かないか、とクラウドに誘われて、スコールが初めに鈍い反応を示したのは、条件反射のようなものだった。

それそのものに余り興味がない事に加えて、地域でも有名でそこそこ規模の多い夏祭りなんて、人でごった返しているに違いない。
毎年スコールはその催しをスルーしているのだが、祭り会場が家からそれ程遠くないので、その賑やかさは感じている。
日が暮れた後、街を歩く人々の明々とした声や、少し遠くから聞こえる祭り太鼓の音などは、スコールも見たし聞いた。
地域を上げてこの祭りを有名にしよう、と言う委員会とやらも発足されたらしく、そこそこ盛り上がっているらしい。
しかし、人が多い所が好きではないし、熱帯夜のような夜が続いているのに、スコールは外になんて全く出る気にならない。
子供の頃は父親に連れられて、金魚掬いや輪投げをしに行った事もあったが、既にスコールは高校生である。
喧騒よりも静寂を好む性質であるスコールが、自分からそう言った場所に赴かなくなったのは、自然的な事であった。

だが、恋人に誘われたなら、吝かと言う訳でもない。
何よりその日は、恋人であるクラウドの誕生日当日だったのだ。
良い祝いが思いつかなかったので、何か欲しい物はないかと直球で訊ねた所、クラウドはデートがしたいと言った。
夏休みに入ってから、それなりに逢う時間を作ってはいたが、今年の異常なまでの熱さもあって、デートと言うものはしていない。
それをクラウドが嘆いた事はないし、お互いの家に行って甘い時間を過ごすのも悪くはない。
けれど、折角だから夏らしい思い出の一つでも、と言うクラウドの気持ちは、スコールも決して無い訳では無かった。

そんな経緯で提案された夏祭りデート当日、スコールは浴衣姿で、祭り会場となった公園の入り口に立っていた。
すらりとした大人びた雰囲気の少年が、公園横のフェンスに寄り掛かり、ぼんやりと道行く人々を眺めていると言うのは、中々絵になる光景だ。
フェンスの向こうで照らされた祭り提灯が、スコールの背中を照らし、少し陰を作った端正な顔立ちを際立たせ、其処に納められている蒼灰色の瞳の淡い光の存在感を強調する。
祭り目当てにやって来た女性たちが、ちらちらと見ては声をかけようか悩む程に、スコールは人目を引いていた。
しかし他者の視線に敏感で、向けられる好意的な空気に酷く鈍いスコールは、早くこの状況から解放されたいと切々と願っている。

それを叶えてくれる人は、待ち合わせ時間ぴったりにやって来た。


「すまない、スコール。待たせたか」
「……別に」


ひらりと片手を上げたクラウドは、TシャツとGパンと言うラフな格好だ。
いつも通りの服装に、やっぱり自分もいつも通りで来れば良かった、とスコールは思ったが、碧眼がじっと此方を見詰め、


「浴衣か」
「……祭りに行くと言ったら、着ていけとラグナに押し付けられた」
「良いんじゃないか。よく似合ってる」


柔らかく双眸を細めたクラウドの言葉に、スコールの胸の奥がぽかぽかと温かくなる。
半ば強引に着せられたものだったし、慣れない格好なので余り良い気分ではなかったのだが、クラウドにそう言われると、じゃあ良かった、と思った。

行こうか、と言うクラウドに連れられる形で、スコールは祭り会場の公園へと入る。
敷地の真ん中に建てられた櫓から、ドン、ドン、と太鼓の音が響いていた。
櫓をぐるりと囲む人の輪が踊り、それをまた見ている輪が作られている。
其方に行く気はスコールもクラウドもなかったので、二人の足は揃って出店屋台へと向けられた。


「仕事が終わったばかりで、腹が減ってるんだ。晩飯代わりに焼きそばでも食おうかと思ってるんだが、スコールは何か食べるか?」
「……夕飯は食べた。でも早めに食べたから……少し何か欲しい」
「じゃあ一緒に食べるか」


食べて来たなら、そんなに量は要らないだろう、と言うクラウドに、スコールは小さく頷く。

あちこちから食欲をそそる匂いのする屋台群には、沢山の人が集まっていた。
鉄板の上でじゅうじゅうと良い音を立て、ソースの香ばしい匂いを振りまく焼きそばや、ケチャップとマスタードをかけたフランクフルト、この熱気に当てられた客を誘う為の氷の幟を吊るした出店も多い。
日が落ちたとは言え気温が下がる気配はなく、氷の文字に惹かれるスコールだったが、先にクラウドの腹ごしらえだ。
仕事が終わって、荷物を家に置いて、真っ直ぐに此処に来たのであろう恋人を労う目的もあって、彼の腹を満たせそうな食べ物を探す。

公園全体を祭り会場として使っているので、会場は広く、出店の数も多い。
ボリュームを重視している店もあれば、変わり種を用意している店もあり、外国料理を提供している店もあった。
クラウドはしばらく目移りしていたが、やはり祭りと言えばこれだろう、と焼きそばの店に並ぶ。
順番が回って定番のソースで味付けしたものを頼み、出来上がったそれがパック詰めにされる傍らで、スコールは財布を入れた巾着袋を袖から取り出そうとするが、ポケットから直に小銭を出したクラウドが先に払ってしまった。


「……俺が出したのに」
「ん?」
「…あんた、誕生日なんだから」


少し拗ねた顔で呟くスコールに、クラウドはくすりと笑う。


「ありがとう。気持ちだけで十分だ。これは俺の晩飯だしな」
「…じゃあ、後は全部俺が出す」
「それは────どうするかな」


くすくすと笑いながら、焼きそばの入ったパックと割りばしを受け取るクラウド。
店の前を離れ、口に挟んだ箸を割り、早速食べ始めた彼は、確かに腹が減っていたのだろう。
詰められた焼きそばはそこそこの量だが、クラウドなら直ぐに平らげてしまうに違いない。

食べながら、少し回ってみるか、とクラウドに促されて、スコールはその隣をついて歩く。
ドン、ドン、と響く太鼓の音と、祭り囃子の音を聞きながら、賑々しい出店を眺めて通り過ぎる。
途中、それぞれの知り合いが射的やボール掬いを楽しんでいる所を見付けたが、どちらも声をかける事はしなかった。
何処にいても賑やかで判り易い友人達の声を遠巻きに見るのみで、二人は二人の時間を守るように、敢えて知らない振りを通す。

クラウドの買った焼きそばは、スコールが二口三口を分けて貰った後、あっという間になくなった。
それだけでは彼の腹は満たされないので、進んだ先で見つけた出店に立ち寄り、フランクフルトやフライドポテトと言った定番も押さえ、焼き鳥もしっかりと食べ、焼きトウモロコシも忘れない。
そんな恋人を見ていてスコールが思うのは、よく食べるな、と言う事であったが、それ以上にスコールは気に入らない事があった。


「……なんで全部自分で出してるんだ」


判り易く唇を尖らせ、拗ねた表情で睨むスコール。

言っているのは、支払いの話だ。
最初に焼きそばを買った時から、クラウドは全ての支払いを自分で済ませている。
財布を出すスコールより、Gパンのポケットに小銭を直に入れているクラウドの方が出すのが早い、と言うのもあるが、「俺が出す」と言ってもクラウドが聞かないのだ。
段々とスコールは、クラウドよりも早く小銭の用意をするレースを一人でやるようになったが、間に合ったと思って出そうとすると、クラウドがやんわりと遮るのだ。

食後のデザート代わりと買ったかき氷も、クラウドが支払いを済ませてしまった。
それも二人分だ。
お前の分だと差し出されたかき氷の片割れを睨むスコールに、クラウドは眉尻を下げる。


「いや、まあ。つい、と言うか」
「……」
「溶けるぞ。暑いんだろう?」
「……」
「いらないか?」
「……いる」


睨み続けるスコールに、かき氷を進めるクラウド。
スコールはそれを納得のいかない表情のまま受け取って、八つ当たりするように、スプーンストローでざくざく氷の山を崩して行く。

不機嫌な表情で氷を苛めるスコールを横目に見て、クラウドは苦笑するしかない。
基本的に出不精であり、祭りと言う大勢の人が集まる環境をスコールが好んでいない事は、クラウドも重々判っている。
それでも誕生日だからと、自分の誘いを受けてくれただけで、クラウドは十分嬉しかった。
支払いの事は、自分の方が年上であるし、社会人であるからと言う甲斐性でもある。
が、そう言った事を理由に遠慮なく甘えられる程、甘え上手ではない恋人は、クラウドにきちんとした誕生日祝いが出来ない、と言う気持ちで一杯になるようだ。

祭りに来てからそこそこの時間が経つと、慣れない格好のスコールはそろそろ歩き疲れたようだった。
座るか、と祭り提灯の明かりから外れた所にあったベンチを指差すと、スコールが頷く。
暗がりになっているからか、其処は人気も遠退いて、熱気も消えて気持ち程度に涼やかであった。
クラウドはかき氷シロップを飲み干した後、途中からすっかり拗ねた顔が定着してしまったスコールを見て、


「スコール」
「……ん」
「ありがとう。俺の我儘に付き合ってくれて」
「……別に……」


クラウドの言葉に、さくさくと氷を溶かし崩していたスコールの手が止まる。
暗がりの中でスコールの白い頬が赤くなっているのが見えて、クラウドは唇を緩めた。

そっと伸ばしたクラウドの手が、スコールの襟から覗く首筋に触れる。
髪の毛の生え際をなぞって行く指が、スコールの項を辿って、スコールがくすぐったさに首を竦めた。
微かに逃げを打つスコールだったが、体が遠退く事はなく、クラウドの手を受け入れている。
クラウドの指先が項の生え際を何度も撫で、ゆるりと降りて首と背中の堺に触れると、ピクッ、とスコールの体が震えた。


「……クラウド」
「ん?」
「…なんか……、」


いやらしい、と言う言葉をスコールは飲み込んだ。
それを言う事で、そう感じてしまう自分を晒す事が、きっと恥ずかしかったのだろう。
だが、クラウドがそんなスコールを見て、我慢できる筈もなく────もとより、その意図を含んで触れていた事を、クラウドは否定しない。

クラウドの腕がスコールの体を捉えて抱き寄せ、悪戯な動きで胸元を探る。
バカ、とスコールはクラウドを叱ったが、間近にある碧眼に見詰められ、言葉を失くして顔を赤らめる。
唇を重ねて、奥まで味わうように深く深く交わる。
堪能してようやく離せば、熱に浮かされた瞳がクラウドを見上げていた。


「……良いよな?」


こんな場所でするなんて、普段なら絶対に恥ずかしがって嫌がるだろう。
しかし今日のスコールは、あんたの誕生日だから、と小さく頷く。



熔けた氷が地面に落ちて、染み込んで行く。
二人は直ぐにその存在を忘れて、二人きりの熱に溶けて行った。





クラウド誕生日おめでとう!と言う事でお祭りデート。そして浴衣えっちをするようです。

終わった後に着付けが上手くいかなくて焦ったり、誰かに見られなかったよな…?と不安になるスコールです。
クラウドはスコールをおんぶして自分の家に帰って、ラグナに連絡してお泊り許可を貰います。

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