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2024年08月11日

[クラレオ]パスカード:オリジナル

  • 2024/08/11 21:05
  • Posted by k_ryuto
  • Category:FF



誕生日なんてものは特別意識している訳でもなかったが、とは言え、祝われるとなればやはり気持ちの良いことだ。
偶然に帰ってきたタイミングを「丁度良かった!」とユフィに捕まり、引き摺られるようにして魔法使いの家に連れて来られたと思ったら、思いもがけない歓待に見舞われた。
豪華な食事に、祝いの言葉に、長旅に有用だろうと色々なグッズの入った箱をプレゼントされる。
今日がその日だと気付いたのは、エアリスが「今日は何の日、かな?」と言って、カレンダーを見せてくれたから。
ついこの間まで、街には寒風が吹いていたような気がするのに、そう言えば今日は暑い、と今更に夏の盛りになっていた事に、クラウドはようやく気付いたのであった。

誕生日パーティなんて、今日と言う日にクラウドがホロウバスティオンに戻っていなければ、主役不在の状態になったのだろうが、恐らくそれでも誰も気にはしないのだ。
言い出しっぺはきっとユフィだろうし、彼女に幼馴染の誕生日を祝う気持ちがない訳ではないだろうが、毎日街にいる訳でもないクラウドである。
ちょっと食事を豪勢にして、パーティよろしく楽しい夕食を計画するのに、人の祝いの日とは存外と都合が良いものなのだ。
其処に当座の主役となる人間が捕まえられれば、丁度良い、位のものに違いない。

それでも、本人のいるいないに関わらず、誕生日プレゼントについてはきちんと用意されていたようだ。
シドから渡された箱の中には、ポーション類を始めとして、野宿の火起こしに使えるようなサバイバルキットや、保存期間の長い缶詰の食料が入っていた。
どうせ街に居つく時間など知れている、何処に行ってもそこそこ有効に使えるものを、と揃えてくれたに違いない。
箱の中には、クラウドに似せて作られたと思しき編み物のぬいぐるみが添えられていて、きっとこれを作ったのはエアリス───だと思うのだが、一応、全員分が針を通す事はしたらしい。
千人針よろしく、皆で作ったお守りだよ、と良い笑顔で言われたので、むず痒さを殺して受け取っておく事にした。
恐らくこのぬいぐるみは、荷物袋の底の方に沈むだろうが、そう言う扱いになることも、きっと彼らは判っているだろう。

夕飯が豪勢であることは有難い。
ホロウバスティオンは、まだまだ人の気配も少なく、新鮮な食材と言うものが限られる環境にある。
賢者が住んでいた城に残されていた資料や、機械の力も借りて、生活はなんとか成り立っているが、贅沢が出来るとは言えない。
そんな中で、肉をふんだんに使った料理群が並ぶタイミングと言うのは限られている。
クラウド自身は闇の力を使って他の世界を渡り歩き、食料の多くは現地調達しているが、場所によっては動物性たんぱく質の調達はおろか、草木一本生えない場所で過ごすことも少なくない。
美味い料理をたらふくに食べられる機会と言うのは、存外と限られているから、理由が何であれ、そう言うものにありつけるタイミングに帰って来られた事は、何よりの幸運であった。

そうして、誕生日の主役と言うこともあって、今日の胃袋は思う存分に充たすことが出来た。
少しばかり膨らんだような気がする腹を宥めながら、クラウドは「これも祝いだ」と言ってシドが持ってきた酒を、養父と一緒に明かしているが、


「そろそろ終いだな」


時計と酒瓶の中身を見て、シドがそう言った。
確かに、時刻は直に日付の境界線を越えるし、瓶の中身も底をついている。
最後にグラスに注いだ一杯を飲み切れば、宴はお開きだ。

そんなクラウドとシドを後目に、食卓の場も片付けが進んでいる。
皆で楽しく食べ明かした食器は、とうにすっかり下げられて、レオンとエアリスが洗い物をしていた。
ユフィはちゃっかり飲んだ酒に楽しくなって、洗い場にいる年上二人にきゃっきゃと絡んでいる。
あの状態で「これ片付けておいてね」と渡される食器は、ひとつも落とさず元あった場所に戻しているのだから、彼女のバランス感覚は本当に大したものだ。

クラウドがグラスの最後に残った液体をぐいっと煽って、残る後味と胎内に残る火照りを感じつつ、


「美味かった。良い酒だったな」
「ああ。またあり付けりゃいいんだがな」
「期待していよう。来年の今日にでも」
「どうだかねえ、まあ、美味けりゃ別に何でもな」
「まあな」


この街の物資が限られていることは、クラウドもよく知っている。
期待しよう、と言うのは、来年の今頃には、この街がもう少し人の気配で栄えていると良いな、と言う、故郷の復興に勤しむ幼馴染たちへの労いでもあった。
その為にも人手が必要なのは判っているから、偶に帰った時位は、またハートレス退治くらいは引き受けようとは思っている。

クラウドとシドが使っていたグラスをユフィが浚い、エアリスの下へと持って行く。
ありがと、とグラスを受け取ったエアリスは、隣にいるレオンを見て言った。


「じゃあ、後はやっておくよ。レオン、家に帰るでしょ?」
「そのつもりだ。悪いな、任せる」


郊外に一人で家を持っているレオンは、夜の街を歩いて其処まで帰らなくてはならない。
夜となると、街に戻ってきた人々の不安が未だに募り易いようで、心の揺らぎに誘われたハートレスが湧いて来るのだ。
レオンは夜のパトロールとして、それらを退治しながら家路を行くのである。

じゃあね、とレオンが皆に見送られる傍らには、クラウドの姿もあった。
魔法使いの家の奥には、幾つか寝床は用意されているが、クラウドは其処を使ったことがない。
クラウドがホロウバスティオンに戻ってきた時、寝所として使うのは、専らレオンの家であった。
その方が色々と気兼ねをする事もないので、今夜も常と変わらず、彼の家に邪魔をする。
レオンにその許可を直接取った訳ではないが、レオンもクラウドも、それが最早当たり前のこととして定着していた。

美味い飯と良い酒にありつけたクラウドは、ここ最近で一番に機嫌が良かった。


「良い日だった。偶には帰ってみるものだな」
「調子の良い奴だ。明日からは、今日の分も含めて働いて貰うぞ」


やれやれと言った様子で、レオンが言うので、


「判っている。また此処いらも、ハートレスが増えているようだしな」


クラウドはそう返して、周囲を軽く見まわした。

夜の闇の中、うごうごと蠢いている心無い気配がある。
この辺りは、城で発見したセキュリティシステムを利用して、街人の防護に使う事が出来ているが、湧いて来る影の数そのものが減る訳ではない。
根本の原因を叩く事が難しいのは仕方がないとして、せめて目の前のその数だけでも減らさねば、いつか街ごと覆い尽くされかねないのだ。
クラウドは故郷に帰る度、幼馴染の家を寝床にさせて貰う代わりに、それを対価の仕事にしていた。
自分が出来ることとしては易い仕事であると、クラウドは捉えていた。

だから仕事に関しては全く不満はないのだが、それはそれとして、とクラウドは隣を歩く男を見る。


「所で、あんたから俺に何かくれるものはないのか?」
「……清々しい程図々しい奴だな。飯を鱈腹食っただろう。半分は俺からのプレゼントだ」


もう半分は、エアリスが準備しているが、とレオンは呟く。
クラウドもそれは判っている、とまた頷いて、


「そのエアリスからは、飯の他に、皿を貰った」
「皿?」
「木製で軽くて丈夫。野宿にも使えるだろう、ってな」
「……それは良かったな」
「ああ。で、ユフィからは革の小袋だな、まあ小物入れに使えるだろう。シドからは酒」
「良かったじゃないか、色々と貰えて。十分だろう」


そう言ってレオンは、自宅にしているアパートの二階へ向かうべく、階段を上って行く。
一階に住んでいる人間は誰もいないのに、どうして二階を使っているのかと言えば、眺めが良いから、だそうだ。
実際の所は、地上をうろうろしているハートレスにいきなり飛び込まれないように、と言う点が大きいのだろうが、復興を目指す街を少し高い視点で眺めないというのも、嘘ではないのだろう。

クラウドはレオンに続いて階段を上がりながら、


「皆から貰った物は、それはそれだ」
「……全く図々しいな、お前は」


はあ、とレオンは溜息を吐いて、自宅の鍵を開ける。
と、鍵穴から抜いた銀色のそれを、そのままぽいっとクラウドへと投げた。

目の前に飛んできたものをクラウドが反射的にキャッチする。
握ったものを開いて見れば、飾り気も何もない、凡庸な銀色のディスクシリンダーの鍵。

クラウドがそれを見ている間に、レオンはさっさと部屋に入って行った。
ドアがばたんと閉まる音を立てたので、クラウドは内側から鍵が閉められる前に、いそいそと後に続く。
灯りをつけたばかりのレオンの部屋の中は、相変わらず物が少ないながらも、雑多にならない程度の生活感が滲んでいた。

既に時間が遅い事もあってか、レオンは風呂場で湯の用意をしている。
湯が貯められる音を聞きながら、クラウドはレオンに声をかけた。


「おい。これは貰って良いのか、本当に」
「お前がしつこいからな。それがあればちゃんと玄関から入れるんだから、窓から不法侵入するのは辞めろよ」


平時、ふらりと帰ってくる気儘な生活をしているクラウドである。
いつ帰ってくるから判らないのだから、レオンとてそんなクラウドの為に出入口を不用心にする筈もなく、自分がいない時にはしっかりと戸締りをかけている。
家にいる時には窓を開けている事もあるが、其処から度々クラウドが無断で進入して来る事には辟易していた。
レオンが家にいなければ、帰ってくるのを近くの屋根上で待機して、帰ってきたら窓をノックするのだ。
闇の力で生やした羽根のお陰で出来る所業とは言え、礼儀作法のない来訪客は、レオンとて当然歓迎はしない。
まだ玄関からやってきたなら可愛げがあるのに、とはよくよく思っていることだった。

リビングに戻ってきたレオンは、冷蔵庫を開けて、明日の朝食用に使えるものを確認している。
普段はパンひとつでもあれば十分だが、クラウドがいるなら、もう少し何かあった方が良かった。
ハムやチーズが残っていたので、これでとうにかするとしよう。

クラウドはと言うと、勝手知ったる空間なので、ソファに座ってレオンが寄越してきた鍵をしげしげと眺めていた。


「これがあんたからの誕生日プレゼント、と」
「十分だろう。スペアは一組しかないから、なくしても次はないぞ」


そう言ってレオンは、ベッド横のチェストの引き出しを開ける。
取り出したのは、今クラウドの手の中にある鍵と、そっくり全く同じもの。
レオンはスペアとして作られた方をこれから持つから、クラウドが渡されたものを紛失しても、取り換えや新調は利かない、と言う事だ。

実質、一点ものの代物。
そんなものをプレゼントに寄越されて、クラウドはにんまりと笑う。


「成程。これを持っている限り、此処には自由に入って良いという訳だな?」
「……節度を保てよ。図に乗ると放り出すからな」
「ああ。だが、あんたから“家に上がって良い”って言う許可が下りたのは、中々気分が良いな」


クラウドの言葉に、レオンの傷のある眉間に深い谷が浮かぶ。
許可した覚えはない、と言わんばかりの目が冷たく此方を見ているが、クラウドは気にしなかった。


「関係を持っている男に、自分の部屋の鍵を寄越すなんて、意味深だろう」
「勝手に深みを作るな。あまり調子に乗ると、返して貰うぞ」
「それは断る。もう貰った。雨の日に外で待ち惚けしなくて良い」


有難く受け取る、と言ってクラウドは、ユフィが用意した革の小袋に鍵を入れる。
小袋を何処に身に着けるのが一番良いのかは、明日に身嗜みを整える時に改めて考えれば良いだろう。

判り易く機嫌を良くした顔で、鍵の入った小袋を眺めるクラウドに、レオンは溜息をひとつ。


「……早まったな」


ねだるのがしつこいからと、手っ取り早く済ませたつもりだったが、反って面倒が増えた気がする。
そう思ったレオンであったが、先のやり取りの通り、クラウドはもう鍵を手放しはするまい。
渡してしまったものは仕方がないと、レオンも気を取り直して、一日の疲労を流す為に風呂へと向かったのであった。





クラウド誕生日と言う事で。
雑に渡したプレゼント、思いの外クラウドが気に入って複雑な心地のレオンでした。

鍵を持っているけど、手っ取り早いからと言う理由で、窓から入って来るのも辞めない気がする。
何回かに一回はちゃんと玄関から入るようにはなると思います。多分。

[クラスコ]ひとつひとつをその手で全て

  • 2024/08/11 21:00
  • Posted by k_ryuto
  • Category:FF



紅い顔をしている恋人を前に、クラウドは高揚する自分を隠せなかった。
普段、この手の事に疎いこともあり、主導は専らクラウドが与っているものだったが、今回に限ってはそれを敢えてスコールに渡した。
手綱を渡された方は、酷く困惑している様子があるが、とは言え、何も知らない程、初心でも真っ新ではない───そうしたのはクラウドだから、何をどうすれば良いのかも、クラウドが教えた通りに彼は覚えている筈だ。

ごくりと唾を飲む音が聞こえた。
緊張した面持ちのまま、スコールは自身の手をジャケットにかけて、ゆっくりとそれを脱ぐ。
ひと思いに脱ぎ捨てた方が、恐らくは彼の心理的負担としては軽いのだろうが、それでは楽しい時間があっという間に終わってしまうので面白くない。
クラウドは出来るだけ、この一時の味わいを引き延ばしたいと考えていた。
スコールがそんな恋人の思考を読み取っているかは判らないが、ゆっくりやってくれ、と言う指示はちゃんと効いているらしい。

傭兵育成の環境下に幼い頃からいたと言うから、指示だとか命令だとかに従うことについて、彼自身の抵抗感は薄いのだろう。
寧ろ、言われたのだから仕方がない、と言う思考も働いているかも知れない。
そう思うと、同じ命令を他人がやったら、彼はまたそれにも従うのだろうかと思うと、少しばかり其処には待ったをかけたくなる。
が、素直に従っているように見えて、内心は色々と愚痴が渦巻いている事も想像は出来るので、この手の命令が仮に他の人間からあった時には、ちゃんと抵抗してくれるだろう……と思いたい。

クラウドがそんなことを考えている間に、スコールはシャツを脱いでいた。
白いシャツを脱ぐと、鍛えられてはいるがまだまだ細身のシルエットを作る上肢が露わになる。
まだクラウドが触れてもいないのに、その肌がほんのりと色付いているように見えるのは、きっと彼自身の胸中にある、誤魔化しようのない羞恥心が齎すものだ。
時折、蒼灰色の瞳が、さっさと手を出してくれと言わんばかりにクラウドを見つめる。
それはクラウドにとって、スコールからの無自覚の誘惑であったが、今日の所はそれに応えることはぐっと堪えた。
今日と言う日の特別を、たっぷりと堪能する為に。


「………」
「……」


見つめ続けていても、クラウドが動いてくれない事を悟ると、スコールは溜息を吐いた。
しょうがない、仕方ない、と自分に言い聞かせるようにして、今度は腰のベルトに手を遣る。

指先が少し緊張した動きをしながら、バックルを外し、ベルトの合せを解いた。
革ベルトの締め付けがなくなると、元々タイトな造りである筈のズボンのウエストが緩み、隙間が出来る。
其処に両手の親指を左右に入れて、スコールはぎゅっと唇を噛むように噤んでから、そろりとズボンを下ろし始めた。
シンプルな黒のボクサーパンツが顔を出し、よくよく見ると、その中心部が少し膨らみつつある。
スコール自身もその自覚があるのか、顔を赤くして、己のその有様を目にしないように両目を頑なに噤んでいる。

ズボンを脱いだら、次は靴下だ。
踝までしかないそれを、スコールは指に引っ掛けて脱ぎ、ぽいと捨てる。
両の足が裸足になって、最後に残ったボクサーパンツにも手をかけた。
其処からしばし、硬直して動かなくなったスコールに、クラウドは言った。


「スコール。ゆっくり、な」
「………」


念押ししたクラウドに、スコールの目がじろりと睨む。
しかし、笑みを浮かべて此処から先を楽しむつもり満々のクラウドに効く訳もなく、何より、言い出しっぺはスコールの方だった。
今頃は頭の中に、クラウドへの恨みと、軽率なことを言った自分への小言が繰り返されているのだろうが、一応、それを口にしないつもりではあるらしい。
精々、うぅ、と唸る声が零れるくらいだった。

はあ、とスコールは何度目かの息を吐いて、心を決めた。
クラウドの指示の通り、ゆっくりと、殊更にゆっくりと、パンツを下ろしていく。
膨らみかけていた中心部がフロント部分を引っかけるのが判るのだろう、スコールはふるふると腰を震わせていた。
太腿下までパンツがずらされると、遂にシンボルが露わになり、それは半分ほど頭を起こしていた。
差し出すように晒された恋人の下半身事情に、クラウドがにんまりと笑みを浮かべると、スコールは益々顔を赤くする。
きっと縮こまって全部を隠してしまいたいのだろうが、止めた所で解放される訳でもない事は分かっているのか、スコールは最後に左足を抜くまで、きちんとストリップショーをやり遂げた。


「っは……これで、良いか……?」
「ああ。良い光景だった」
「……変態め……」


忌々し気に言うスコールに、クラウドは満足げな表情を隠さない。

一人ストリップショーをなんとか終えたスコールだったが、今日の夜はまだ始まっていなかった。


「スコール。次はこっちだ」
「……判ってる」


促すクラウドに、スコールは不承不承の顔をして近付いた。

いつも通りの格好をしているクラウドの体に、スコールが触れる。
平時から身軽な服装をしているスコールは、鎧を始めとした防御装備と言うものにあまり馴染みがないらしい。
ぺたぺたとクラウドの服を触りまわしているスコールは、何処からどうすれば、と眉根を寄せて悩んでいた。
そんなスコールに、クラウドは先ずはこれからだろうと、ガントレットを装備した左手を差し出した。


「この辺りのネジを緩めるだけで良いぞ」


クラウドが指差した部分に嵌められたネジ。
防御の為に身に着けるものだから、体格に合わせた調整が出来るのは当然で、クラウドはいつもそれをしっかりと締めている。
だが、此処さえ緩めてしまえば着脱は簡単なのだと言うと、スコールは「……面倒くさい装備だな」と呟きながら、ネジを回した。

左手のガントレットを外した後は、右手だ。
此方は武器を扱う手だから、手首周りがもっと自由に動かせるように、グローブを嵌めているだけ。
サイズの微調整に使う手首のベルトを緩めれば、簡単に外すことが出来た。


「……次、は……」
「肩の留め具は此処」
「……もっと造りの判り易い格好しろよ、あんた」
「知ってればそう難しいものでもないぞ。まあ、他人の手で脱ぎ着させるのを想定した造りじゃないのは確かだが」


ぶつぶつと文句を言いながら、スコールはクラウドの装備を外していく。
肩当と、それを固定する為のベルトを外すと、クラウドの衣装もシンプルなものが残った。
スリーブ生地の服にスコールの手がかかり、持ち上げられるのに合わせて、クラウドは腕を頭上へ。
頭を潜って服が脱がされると、そのままインナーシャツも脱がされた。

顔回りを布が擦った違和感に頭を振りつつ、ふう、とクラウドが息を吐いている間、スコールはじっとその様子を見詰めている。
正確には、裸になって露わにされた、クラウドの筋骨の浮き上がった上肢を。


「………」


徐に伸ばされたスコールの手が、ひた、とクラウドの胸に触れる。
ぺた、ぺた、と体の具合を確かめるように、胸、腹、脇腹と、触れては離れる白い手に、クラウドは擽ったいものを感じていた。

クラウドの体をしげしげと眺めるスコールの内心は、どうしてこんなに筋肉がついているんだ、と言う事。
身長は自分と大差ないし、どうやら元の世界の文明レベルも近しいと思えるのに、身体の造りはクラウドの方が判り易く逞しい。
仕様武器が身の丈程もあるバスターソードであることから、それを振り回すだけで相当な筋力が鍛えられる事は想像に易いが、体全体で言っても、クラウドはスコールよりも一回り程の厚み幅がある。
スコールの場合、ジャンクションと言う方法があるので、純粋な体格だけで足りない部分を補う技術があるのは確かだが、それにしても身一つで戦うからとこうまで体型に差が出るものなのか。

羨ましさと、妬ましさも混じった目で、スコールはぺたぺたとクラウドの体を触り続けていた。
自分がすっかり裸であることも忘れた様子で、恋人の体に見入るスコールの様子は、クラウドにしてみると子供らしくて可愛い所もあったが、


「スコール」
「……!」


名前を呼ばれて、はっとスコールは我に返った。


「悪い。え、と……次は……」
「下だな」
「………」


詫びながら作業に戻ろうとしたスコールだったが、残る箇所を見て動きを止める。
そろりと視線が下へと下りて、まだ崩されていないボトムに行き付いた。

忘れていた羞恥心が戻って来たか、スコールは赤い顔になって、ゆっくりとクラウドの下肢へと手を伸ばす。
腰のベルトを外して引き抜き、僅かに緩んだズボンのフロント部分のボタンを外す。
ファスナーを下へと下ろしていく指先が、緊張しているように見えるのは、クラウドの気の所為ではなかった。

前が緩むと、グレーのトランクスが覗き、中心部が判り易く興奮を表している。
それを見たスコールが、益々顔を赤くして、じろりとクラウドを睨んだ。


「何興奮してるんだ、あんた」
「するなって言う方が無理だろう。お前は裸だし」
「あんたが脱がせたんだろ」
「自分で脱いだだろ?」
「あんたが自分で脱げって言ったからだろ」


好きで裸になった訳じゃない、とスコールは怒った顔で言う。
目の前でストリップショーを開く羽目になったのも、今も裸で恋人に献身するような事をしているのも、決して自分の本位ではないのだ、と。

しかし、そんな顔をして見せても、本気で怒ってはこないのだから、クラウドはついつい調子に乗りたくなる。

ズボンを脱がせにかかったスコールへ、クラウドの手が伸びる。
首の後ろにするりと指を滑らせると、すっかり油断していたのだろう、「ひぅっ!」と言う声が上がった。


「あんた、何してるっ」
「触ってみた」
「余計なことするな!」


怒って噛みついてきそうなスコールに、クラウドはくつりと笑って、その体をぐっと引っ張り寄せた。
無防備にしていたスコールの身体は、簡単に力に従って、クラウドの下へと引き寄せられる。
密着した身体の背中に両腕を回し、閉じ込めながら手指を滑らせれば、


「っクラウド!」
「良いだろう、今日は俺の好きにして良いと言ったのはお前だ」
「言……ったけど!服だってまだ」
「ああ、そうだな。だからほら、このまま脱がしてくれ」


スコールの細身の腰骨を摩りながら、クラウドはスコールに指示を出す。
抱き締められた状態で、碌な身動きが出来ないスコールは、「邪魔するな」と怒ったが、クラウドはくつくつと笑うばかり。
律儀に言われた事は果たそうとする恋人を、クラウドは敢えて妨害しながら、赤らんだスコールの肌の感触を楽しんでいる。


「変な所を触るな」
「可愛がってるだけだ。気にしなくて良い」
「気になるんだ!だから、やらしい触り方をするなって……!」


小ぶりな臀部を撫で下り、足の付け根の皺を辿る指先に、スコールは必死に抗議する。
そうも懸命に振り払おうとするのは、触れられている場所から、ぞくぞくとした官能の種が芽吹いて行く所為だ。
彼の中心部は、此処に至るまでに既に半分は起き上がっている。
これ以上、意図的な触れられ方をしたら、決定的な熱を貰っている訳でもないのに、内側にため込んだ熱が溢れ出してしまいそうだった。
幼い矜持がそれだけはと抵抗するが、そんな拙い抵抗の様子こそが、目の前の不埒な男を煽っているとは知らない。

クラウドの指が、双丘の谷間に近付いて、スコールの身体がビクッと強張る。
やだ、と小さな声がクラウドの耳元で零れたが、それが恐怖や嫌悪を伴っていない事は、何度も肌を重ねた経験から判っていた。
クラウドは直ぐ其処にあるスコールの耳に、舌先を這わせながら囁く。


「スコール。ほら、ちゃんと脱がせてくれ」
「っあ……!」
「俺の好きにしてくれるんだろう」


クラウドの言葉に、スコールが唇を噛んで小さく呻く。
渡せるものが思いつかないからと言って、軽率なことをするんじゃななかった。
彼の呻きの声の中には、きっとそんな言葉が渦巻いているに違いない。

はあ、とクラウドの耳元で熱の籠った吐息が零れ、スコールの震える指がもう一度下へと下りて行く。
半端に脱がせていたクラウドのズボンを、一所懸命に引き下ろそうとする気配があって、クラウドも手助けに腰を浮かせて足も曲げる。
後はトランクスが残っているが、その中心の膨らみはもう明らかで、クラウドに寄り掛かるスコールの手は、最後の一枚を脱がすよりも先に、その中へと侵入していたのだった。




クラウド誕生日おめでとう、と言う事で。

誕生日なんだから何かした方が、でも何をすれば、と判らなくて本人に聞いた末、「今日は全部お前がやってくれ」とか言われたスコールです。
普段はイチから後始末までクラウドがするのですが、誕生日だし、スコールからもして欲しい事を聞かれたし、じゃあスコールにして貰って見よう、となった訳です。
主導権を渡されたのが初めてのスコールなので、どうして良いか判らないのでクラウドの指示に従う形をしてたんですが、えっちい触られ方をしてスイッチが入ってきたんだと思います。

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