サイト更新には乗らない短いSS置き場

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2013年02月

[猫レオン&仔猫スコ]まって、まって

  • 2013/02/05 22:09
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まって、まって。
おにいちゃん、まって。


ミィ、ミィ、と聞こえる声に、足を止める。
振り返れば、短い四足を一所懸命に動かして、追い駆けて来る幼子がいる。

幼子は、前ばかりを見ていて、足下を見ていない。
その所為で、ちょっとした段差に足を取られて、ころんころんと転がってしまう。
丸く小さなその幼子は、そうして毎日、ころころ、ころころと転がった。

幼子が生まれて、もう直ぐ二ヶ月。
母が幼子を生んで間もなく死んでしまった所為か、幼子はとても体が弱い。
同じ頃に生まれた子供達と比べても、幼子はとても体が小さくて、いつも皆に置いてけぼりにされてしまう。
そんな幼子を母に代わって、守り、育て、慈しむのが、兄である自分の役目。


まって、まって。


とてとて、とてて、ころんころん。
ああ、ほら、また。
いつも気を付けなさいと言っているのに。


おにいちゃん、まって。


逆さまのまま、幼子が言った。
起き上がろうと、じたばた足を動かしている。

来た道をくるりと戻って、幼子の下へ。
仰向けになってじたばたしている幼子を、上から覗き込めば、雫の滲んだキトゥン・ブルーが兄を見付ける。
鼻で幼子の体を押して、ころん、と横に半回転。
幼子はきょとん、とした顔できょろきょろと辺りを見回して、あれ?どうして?と言う顔。
そんな幼子の頬を撫でて、さあ行くぞ、と歩き出した。

歩く速度は気を付けて。
そうしないと、直ぐに幼子を置いて行ってしまう。
────と、気をつけている筈なのに、


まって、まって。
おにいちゃん、まって。


ふっと聞こえた声に隣を見れば、其処にいる筈の幼子はいなくて、後ろで駆け足。
立ち止まって待っていれば、幼子は一所懸命に駆けて来て、隣に来ると兄を見上げる。

可愛くて堪らない。
鼻先を近付けて撫でてやれば、くすぐったそうに笑う。
頭の上に土がついているのを見付けて、拭い取ってやった。


なあに?


きょとんとした顔で見上げて来る、丸い大きな瞳。
なんでもないよと撫でてやれば、幼子はそれだけで嬉しそうな顔をする。


ねえ、おにいちゃん。
きょうはどこにいくの?


今日は何処に連れて行ってくれるの、と。
問いかける幼子に、そうだな、何処に行きたい?と聞いてみると、


うーんとね。
まませんせいのところがいい。


いつもおいしいご飯をくれる人を、幼子はきちんと覚えていた。
ちょっと遠いぞ、と言うと、だいじょうぶ、と幼子は言った。

時々隣を確認しながら、時々後ろを振り返りながら、一緒に歩く。
今日はなんだか随分と人が多いから、ちょっと回り道をしよう。
ちょっと大変な道だけれど、大丈夫か、と言うと、だいじょうぶ、と幼子は言った。

いつもは真っ直ぐ通る道を、途中で曲がって、細い道へ。
後ろを幼子がちゃんとついて来ている事を確かめながら、危ないものがない事を確信しながら進む。


あっ。


声を上げた幼子の前には、壁が一つ。

後ろを振り返って、幼子の顔を見た。
どうするの?と言う顔で見詰めて来る幼子に、よく見ていろよ、と言って、体を低くする。
しっかりと距離を測って、地面を蹴って、高くジャンプ。
壁の上に降りて、残した幼子を見れば、ぱちくりとした表情で此方を見上げている。

おいで、と言うと、幼子はおろおろ、ぐるぐる。
いつものように兄について行こうと、壁に近付いてみるけれど、垂直の壁は歩けない。


おにいちゃん、おにいちゃん。


ミィ、ミィ、ミィ。
壁に前足をくっつけて、兄を呼ぶ。
かりかり、かりかり、引っ掻く音。


おにいちゃん、まって。


置いて行かれてしまうんじゃないかと、不安そうに兄を呼ぶ。

大丈夫、待っているから。
大丈夫、飛べるから。
だからおいで。

壁の上からそう呼んでみるけれど、幼子はじっと兄を見上げて呼ぶばかり。
後ろの足が、ぴょん、ぴょん、と跳ねる動きをするけれど、壁の半分も登れない。


まって、まって。
おにいちゃん。
まって、おいていかないで。


終いには、ぺたんと座り込んで。
ミィ、ミィ、ミィ、と声ばかり一所懸命に大きくなる。
置いて行かれたくなくて、一人ぼっちになりたくなくて。

仕方ない、と飛び降りる。
幼子のいる方へ。


おにいちゃん、おにいちゃん。


直ぐに幼子は駆け寄ってきて、すりすり、体を寄せて来る。
どうやら、この壁は、この幼子にはまだまだ早い道らしい。
ぷるぷる震える小さな体に、随分、怖がらせてしまったなと思った。

でも人の沢山いる道に戻るのは危ないから、やっぱりこの道を通るしかない。
かぷ、と幼子の首の後ろを噛んで持ち上げる。
ぷらん、と幼子が宙ぶらりんになって、あれ?お兄ちゃん?と呼ぶ声がしたけれど、今返事をしてやる事は出来ない。
そのまま地面を蹴って飛び上がり、室外機を階段代わりにして、もう一度ジャンプ。
壁の上に着地した。


すごい、おにいちゃん。


そう言った幼子は、まだ兄に咥えられたまま。
壁の反対側を除けば、上った時と同じ高さがあって、幼子ががち、と固まったのが判った。

着地地点をよく探して、よく選ぶ。
一人で降りる訳ではないから、うっかり幼子に怪我をさせてしまわないように気を付けて、ジャンプ。
一段、二段、三段と着地して、四段目で地面に降りる。

幼子を地面にそっと下ろすと、幼子はぷるぷると体を震わせた後、きらきらとした目で兄を見上げた。


すごい、おにいちゃん。
すごい。


ぴょんぴょんと兄の周りを飛び回りながら、幼子は言った。
無邪気なその姿が微笑ましくて、兄はくすりと苦笑する。

はしゃぐ幼子の頭に、こつん、と額を押し上げた。
大丈夫だと言っていたのに、全く仕様のない子だ。
でも、そんな幼子が可愛く思えてしまうから、自分も仕様のない兄だ。

鼻の頭で幼子の頭を撫でて、さあ、行くぞ、と踵を返す。


まって、おにいちゃん。


直ぐに後を追う気配。
ちらりと後ろを振り返れば、短い足で一所懸命ついて来る幼子。

ほら、足下を見ないと転ぶぞ、と言った傍から、幼子はころんころんと転がった。





完全に猫なレオンと子スコに萌えた。
「おにいちゃん、まって」が仔猫スコの口癖です。

FFオンリーお疲れ様でした!

  • 2013/02/05 17:44
  • Posted by

2月3日東京FFオンリーお疲れ様でした!スペースに来て下さった方々、本当にありがとうございます!
毎度毎度やたら分厚い本しか置いてないサークルですみません(;´Д`) 薄い本ってなんだっけ。
ツイッターでお世話になっている方々も沢山来て下さって、本当に嬉しかったです。差し入れ沢山ありがとうございました!!大事に食べます!でもって私もお土産持って行ってたんですが、テンパり過ぎて何名かお渡しするのを忘れていました。すいません。本当にすいません…!

今回の新刊は、昨年12月に広島コミケで発刊したバツスコ(♀)本「僕を呼ぶ君の声が聞こえる」の後編でした。なんとか無事に発刊で来てホッとしていたのですが、家に帰って自分で読み返してたら時系列やら年齢の計算ミスがいっぱーい(゚Д゚) あれだけ確認したのになんでだ俺。いつになったらこういうトコ直るのか。
あと、出来れば今回、「絆」の三巻が書ければと目論んでいたのですが(実際前回のペーパーにもそう書いていたのですが…)、年明けのパソコンの緊急修理やら何やらで間に合わず、結局お流れとなってしまいました。次回6月の東京FFオンリーには出したいと思っております。待っていて下さった方々、すみませんでした。
余力があったら漫画も描きたいなーとか思ってたとか言わないぜ。余力もないし時間もなかったんだぜ。そんでペーパー作って行くの忘れたんだぜ……

今回、土曜日出発の夜行バス~当日着イベント~日曜出発の夜行バスでとんぼ帰りしたのですが、流石に体にキますね。ちょっと前まで此処まで疲れはしなかった筈なんだけどなぁ。イベント後に新宿池袋の同人ショップ行って三空本とか浄八本(姉貴の土産)とか、気になるジャンルごそごそ漁って行く位の気力はあったのにな。これが年か(ヽ'ω`)


色んな人に逢えて楽しかったです。隣近所にご迷惑かけてなかったか凄く不安。こんな不審者が隣に陣取ってて申し訳なかったです。でも楽しかったです、本当に。ありがとうございました。
今回の個人的なハイライトは、レオンさんとはぐはぐした事です。天に召されるかと思った!!!ありがとうございましたあああああああああ(こっそり尻触ろうとしてすいませんでした)

[クラ×レオ&子スコ]なぞなぞわかるかな

  • 2013/02/02 01:35
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なぞなぞって色々ありますね。
とんちの聞いてるものもあれば、モジリや言葉遊び、単純な発想のものまで。
問題の出し方によって、受け取る側にわざと特定のものを連想させたりして。

そんな感じでクラウド×レオン&子スコです。
2・3・4に下ネタがあります。ご注意。

なぞなぞわかるかな 1
なぞなぞわかるかな 2
なぞなぞわかるかな 3
なぞなぞわかるかな 4


設定が若干被ってる雰囲気がありますが、サラリーマンレオンさん&子スコとは別設定。の筈(あまり考えてなかった)

[クラ×レオ&子スコ]なぞなぞわかるかな 4

  • 2013/02/02 01:32
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様子が可笑しいレオンに、スコールは心配そうに声をかけ続けてみるが、横から伸びて来た腕がスコールを持ち上げる。
下ろされたのは、クラウドの膝の上だった。


「クラウド。お兄ちゃん、変だよ。どうしちゃったの?」
「大人には色々あるんだ。で、まだなぞなぞやるのか?」
「やるっ」
「よし。じゃあとっておきのなぞなぞを出してやろう。スコールに解けるかな」


挑発的なクラウドの言葉に、スコールの目がきらきらと輝く。
難しい問題程、解き甲斐がある事を、スコールは既に知っているのだ。
クラウドは、そんなスコールと、俯いたまま動かないレオンを満足げに眺め、にやりと───なんとも意地の悪い───笑みを浮かべ、


「ちんちん電車から“電車”を取ると、何が残る?」


にやにやと、笑みを浮かべたクラウドの言葉に、スコールはきょとんと瞬きを一つ。
その傍らで、俯いていたレオンが頭を上げ、数秒の沈黙。


「え…え?」
「………」
「どうした?判らないか?ああ、ちんちん電車って知らないか」
「ん、んーん。知ってる。町の中を走ってる電車でしょ」
「そうだ。そのちんちん電車から“電車”を取るとどうなる?」


おろおろとし始めたスコールと、また固まって動かなくなったレオンに、クラウドは笑みを深める。


「え…んっと…んと……」


スコールは視線を右往左往させ、落ち着きなくシャツの裾を握ったり開いたりを繰り返している。
その丸い頬はほんのりと紅潮しており、眉が困ったようにハの字になっていた。

そんな弟の傍らで、レオンも視線を右往左往させていた。
口元に手を当てて考え込むその姿は、答えを必死で探しているのがよく判るのだが、彼の頬も弟と同様、ほんのりと赤らんでいる。
それを見付けたクラウドは、にやにやと笑みを浮かべながらレオンに近付き、


「どうした、レオン。顔が赤いぞ」
「な……だ、れの所為だとっ…!」
「ん?誰の所為だ?さっぱり判らないな。俺はなぞなぞを出しただけだから」
「だから、そのなぞなぞが……」
「なぞなぞが原因?じゃあ、レオンはなぞなぞの答えが判ったんだな?」


ずいずいと顔を近付けてくるクラウドに、レオンが逃げるように仰け反る。


「なんだ?言ってみろ。判ったんだろ?」
「いや、その…、」


赤い顔で口籠るレオンに、クラウドが更に迫る。
その傍らで、スコールが兄と同じように赤い顔でもじもじと手遊びしている。


「なんだ、スコールも判ったのか?」
「え、ん……う、ん、……たぶん……、ん、んとね…」
「待て。スコールはさっき答えたからな。今度はレオンに先に答えさせてやろう」
「なっ…!」


クラウドの言葉に、レオンが絶句する。
ふざけるな、と怒鳴りかけたレオンだったが、じっと見上げる丸い青灰色に気付いて、言葉を失う。
赤い顔で、縋るように見つめる弟は、兄の答えを聞く事で、自分の答えに確信を持ちたいのだろう。
兄ならば、きっと正しい答えを教えてくれる筈だと信じて。

弟から寄せられる無心の信頼と期待の眼差しが、今初めて、レオンには怖かった。
じっと見つめる蒼灰色の瞳から逃げたくて、けれど、弟の信頼を裏切るなどレオンに出来る筈もなく、言葉を失ったままフリーズするしかない。

そんな中、金髪の男はにやにやと意地の悪い笑みを浮かべているはかり。


「判らないのか?レオン。お前には簡単ななぞなぞだと思ったんだが」
「…お、お前、な…!」
「ほら、レオン。なぞなぞの答え、スコールに教えてやらないと」


怒りと、それとはまた別の感情で体を震わせる兄を、スコールが心配そうに見上げている。
弟にいつまでもそんな顔をさせている訳には行かない。
しかし─────しかし。

ぐるぐると考えていたレオンだったが、クラウドは問題を切り上げる気がないと悟ると、腹を括る事に決めた。
こういう事は、下手に躊躇うから駄目なのだ。
一言、さらりと言ってしまえば、それで終わり。
終わりになる。

────と言う旨を、延々と自分自身に言い聞かせた末、


「……………………ち…………ちん、ちん……………………」


消え入りそうな声で呟くのが、レオンの精一杯だった。

クラウドの出したなぞなぞが、問題内容に反して普通の答えばかりだったから、ひょっとして今回も引っ掛けではないのかと思ったのだが、可笑しな答えの問題も混じっていたし……と、延々と考えていたレオンだったが、どう考えても、この答え意外思い付かない。
答えを言わないと解放してくれそうにないので、止むを得ず腹を括ったが、やはり恥ずかしい、と言うかいっそ死んでしまいたい。
何が悲しくて、25歳の男がこんな言葉を吐かねばならないのか。
レオンは本気でそう思っていた。

頭に薬缶を乗せたら沸騰するのではないかと思う程、レオンの顔は赤くなっている。
そんな兄を見て、スコールは更に真っ赤になっていた。


「成る程、それがレオンの答えか。じゃあスコール、お前は?」
「ふぇっ」


矛先を向けられて、スコールがびくっと跳ね上がった。
あう、あう、と赤い顔で口をぱくぱくさせるスコールに、可愛いな、とクラウドは独り言ちる。


「えっ、えっと…、……お、お兄ちゃんと、いっしょ…」
「その答え方はずるいぞ、スコール。ちゃんと自分で言うんだ」
「ふえ、えっ、…ん、んと…」


クラウドの意地の悪い言葉に、スコールはおろおろと戸惑う。
助けを求めて兄を伺うが、レオンは先の自分の発言で深いダメージを負って立ち直れずにいる。

自分の答えは、自分できちんと口にしなければいけない。
至極真面目な顔で言うクラウドに、スコールも「そうかも…」と思いつつあった。


「ん…んと………えっと、じゃあ、言う、ね」
「ああ」
「……ち、…ちん、ちん…?」


おずおずと言ったスコールの声は、兄と同じように、聞き逃しそうな程に小さい。
クラウドはん?と耳を欹てるように傾けて見せ、


「ちょっと聞こえなかったな。もう少し大きい声で言ってくれ」
「だ、だから………ちんちん…………でしょ…?」
「まだ聞こえないな」
「う、あう………………………………………う…………」


じわあ、と青灰色の瞳に浮かび上がる雫。
それを見て、あ、不味い、とクラウドは思ったが、時既に遅く、


「いい加減にしろ、この変態!!!」


怒号と共に回し蹴りがクラウドの頭部を蹴り飛ばし、クラウドはきゅりきゅりときりもみしながらベッドから吹き飛ぶ。
レオンは真っ赤な顔でぐすぐすと泣きじゃくる弟を抱き上げて、フローリングに倒れている男を睨み付けた。


「悪ふざけもセクハラも大概にしろ!」
「痛……人聞きの悪い…誰もセクハラなんかしてないぞ」
「何処がだ!あ、あんな問題…なぞなぞでも何でもないだろう!」


怒り心頭にクラウドを睨み付けるレオンだったが、その顔は未だに赤らんでおり、いまいち迫力に欠ける。
そうでなくとも、クラウドに彼の睨みが効いたかどうかは、怪しい所だったが。

クラウドは全力で蹴り飛ばされた後頭部を摩りながら起き上ると、兄弟揃って真っ赤になっている二人を見上げ、


「さっきのなぞなぞのお前達の答えなんだがな。二人とも“ちんちん”で良いんだな?」


改めて言われ、レオンの眦が吊り上がり、スコール隠れ場所を求めるように兄にしがみ付く。
いい加減にしろよ、と怒鳴りかけたレオンだったが、


「残念ながら、間違いだ」
「……は?」
「答えは“線路と駅”。走る電車がなくなったら、それしか残らないだろ?」


クラウドの言葉に、レオンとスコールはぽかんとした表情で口を開けている。
ぱち、ぱち、と二人同じタイミングで瞬きを繰り返す兄弟の表情に、レアだな、とクラウドは思った。

そのままいつまでも固まっていそうな二人に、クラウドはにやりと何度目か知れない意地の悪い笑みを浮かべ、


「こんな問題に、どうして二人とも恥ずかしがってたんだ。それも答えが“ちんちん”なんて下ネタだとは。全く、二人ともいやらしいな。これは俺も相応に応えてやらないといけ」



──────クラウドが最後まで言葉を紡ぐ事はなく。

二発目の回し蹴りで寝室を追い出された彼は、それから一週間、兄弟と寝所を共にさせて貰えなかった。






下ネタなぞなぞでクラウドがセクハラすると言うネタを頂きました。
レオンさんだけでなく子スコまで餌食です。けしからん。羨ましい←え?

[クラ×レオ&子スコ]なぞなぞわかるかな 1

  • 2013/02/02 01:16
  • Posted by



「お兄ちゃん、お兄ちゃん」


くいくい、とズボンの端を引っ張られて、レオンは洗い物の手を止めた。
視線を下に向けてみれば、絵本を腕に抱えて、楽しそうな表情で兄を見上げるスコールがいる。


「あのね、あのね。ガムはガムでも、食べられないガムってなーんだ?」


わくわくとした表情で見上げる弟の瞳には、期待の色が爛々と光っている。
それを見て、レオンはうーん、と考える仕草を見せた後、


「食べられないガムか」
「うん」
「ガム…ガム…ガムテープ、かな?」
「当たり~!」


ぱちぱちと手を鳴らすスコールに、レオンはくすりと笑って、可愛いな、と思う。
最後の洗い物を終わらせて、水気を拭いた手でぽんぽんと柔らかいダークブラウンの髪を撫でる。


「じゃあね、じゃあね。えーっと……船は船でも、動かない船はなーんだ?」
「動かない船か……作っている途中の船とか?」
「はずれ~」
「うーん」


首を捻って考える仕草を考える兄に、スコールはくすくすと楽しそうに笑っている。
いつも色んな事を教えてくれる、沢山の事を知っている兄が、答えを探して悩んでいる様子が珍しくて面白いのだろう。

スコールは今、なぞなぞに嵌っている。
子供向け番組を見ている時に出てきた問題を、見事全て正解した時の喜びが忘れられなくなったらしく、昨日も本屋に連れて行った時、なぞなぞ遊びの絵本を強請った程である。
絵本には1ページに5問のなぞなぞが並べられていて、20ページ程のページ数なので、全部で約100問。
前半は小学生の低学年レベルのなぞなぞだが、後半に行くに連れて難易度が上がり、高学年向きの内容になっている。
スコールは今年で小学1年生になったばかりだが、頭の回転が速く、幼さ故に且つ柔軟で自由な発想が出来るスコールは、既に3年生のレベルのものをクリアしている。

昨日の夜から、今日の今まで、スコールはまたなぞなぞ遊びに耽っていた。
が、一人で解き遊ぶのに飽きたのだろうか。
身近な人にも問題を出してみよう、と思い至り、早速兄の下へやって来たと言う経緯であった。

小さな子供が解けるなぞなぞは、大人のレオンにとって、子供騙し程度の難易度だ。
しかし、だからと言ってさっさと解いてしまっては、問題を出す方が面白くないだろう。
だからレオンは、焦らすようにうんうんと唸って、じっくりと考えて見せてから、うずうずとしている弟を見て、


「ちょっと判らないな。答え、教えてくれないか?」
「答えはねー、湯船!お風呂の事だよ」
「成る程。確かに、湯船は動かないからな」


納得したようにレオンが言えば、「そうそう!」と言ってスコールがはしゃぐ。


「スコールは判ったのか?このなぞなぞの答えがお風呂だって」
「わかった!」
「スコールは頭が良いな」
「えへへ」


くしゃくしゃと兄に頭を撫でられて、スコールは嬉しそうに頬を赤らめた。
買って貰ったなぞなぞの絵本を、宝物のように抱き締める。

甘えん坊の弟を抱き上げて、レオンはリビングに戻った。
リビングではテレビの電源がついていて、ソファの肘掛けから金色の突起が見えている。
兄弟と同居しており、レオンの恋人であるクラウドが、ソファの上に寝転がっているのだ。


「クラウド、行儀が悪いから起きろ……何を不貞腐れているんだ、お前」


背凭れ越しに恋人の顔を覗き込んで、レオンは彼の表情を見て顔を顰めた。

クラウドは普段、滅多に感情を表に出さず、表情を崩す事も少ないので、覇気がないように見える。
しかし何故か、不満や不服と言った感情だけは素直に顔に出て来る事が多かった。
今が正にそれで、クラウドは表情こそ常と大した変化はないものの、不機嫌なオーラがじりじりと滲み出ている。

クラウドは渋々と言う様子で起き上がると、レオンの腕に抱かれている子供をちらりと見遣り、


「俺に問題を出した時は、つまらないって言ったのに…なんでレオンだと楽しそうなんだ…」
「はあ?」


何を言っているんだ、と首を傾げるレオンに、スコールが言った。


「だってクラウド、つまんないんだもん」
「…何がどう詰まらなかったんだ?」
「なぞなぞ、僕が問題読んでるのに、直ぐ答え言っちゃうの。つまんない」


ぷく、と頬を膨らませたスコールの言葉に、ああ成る程、とレオンは納得した。

洗い物をしているレオンの所に行く前に、スコールはリビングで一緒に過ごしていたクラウドにも問題を出していた。
クラウドは快くそれに応じていたのだが、レオン同様、大人である彼に、小学生向きの問題は簡単すぎる。
問題や答えの出し方もパターン化しているものや、文中の単語から駄洒落をもじった答えになっている事が多く、大人は問題を一見(または問題を途中まで読む)しただけで答えを導き出す事も出来る。

だが、テレビ番組の早押しのようなクイズゲームならともかく、小さな子供の遊びに、大人の力を如何なく発揮させると言うのは、如何なものか。
子供は問題を読み、答えるまでの一連の流れ、その一つ一つ全てが楽しみなのだ。
最初は問題途中で正解を導き出す大人に、凄い凄いとはしゃいでくれるが、それが何度も何度も続いてしまうと、次第に飽いてしまう。
難しい問題を出して、相手が悩んでいる所も見てみたいのに、相手がその期待にちっとも応えてくれないとなると、良くも悪くも自分の思考で世界が一杯な子供は、答えてくれない相手に不満を持ってしまうものであった。


「……クラウド。お前が悪い」
「何故だ!?答えが判ったから答えただけだぞ、俺は。クイズはそういうものだろう!」


何が悪いのか、何が原因でスコールの機嫌を損ねたのか、彼は全く判っていないらしい。

レオンは一つ溜息を吐いて、拗ねた顔で抱き着いている弟の頭を撫でてやった。
スコールは兄の手に甘えながら、むーっと剥れた顔のままクラウドを見て、


「クラウドには、もうなぞなぞ出してあげない」
「え。ちょっと待て、スコール」
「つまんないもん」
「待て。リベンジだ。もう1問出してくれ、今度こそ」
「やだっ」


なぞなぞに嵌っているスコールが、「なぞなぞ出してあげない」と言う事は、「構ってあげない」と同じ意味と取って良い。
可愛がっている子供に冷たくされるのは、流石にクラウドも応えるらしく、ちょっと待ってくれとクラウドはスコールを抱き上げているレオンに縋り付いて来る。


「馬鹿、重い!邪魔だ!」
「スコール、もう1問。今度こそお前の期待に応えてみせる」
「やだっ」
「頼むスコール、俺を捨てないでくれ!」
「子供相手に何を寝惚けた事を言っているんだ、お前は!」


ごすっ!とクラウドの脳天にレオンの踵が直撃する。
躊躇のない一撃を喰らい、床の上で屍となった恋人を放置して、レオンは寝室へ向かうのだった。




なぞなぞわかるかな 2



クラウドに悪気はない。でもスコールにはつまんなかった。

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