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[クラスコ]残る体温

  • 2017/10/12 20:13
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[素直になれない]と続いている雰囲気。





溶け合う熱が心地良くて、頭が真っ白になる。
その瞬間の感覚が、幸せで、少し怖い。
けれど、触れてくれるその手を放したくなくて、嫌とも思う事もないから、ずっとこのままでいたいと思う。

耳元に触れる吐息混じりの声に、劣情を煽られる。
ただでさえ持て余し気味だった欲望が、こんな場面になっても際限なく湧き出して来るのだから、本当に自分は卑しい。
どんなに強固な理性と仮面を張り付けても、それを剥がされてしまえば、結局は人間も動物なのだと言う事がよく判った。

敏感な場所を擦られる度に、反射で筋肉が動く。
もどかしく動く足が、シーツの上を何度も滑って、幾つも波を作っては緩んだ。
そうして突っ張った脚が、白波の上で強張って震えた後、


「う…んん…っ!」


くぐもった声には甘味が含まれていた。
どろりと熱いものが体内に注ぎ込まれたのを感じて、スコールは体を仰け反らせる。
露わになった喉に喰いつかれ、甘く歯を立てられて、細い体がビクビクと跳ねた。

長いようで短い静寂の後、スコールの体が弛緩する。
くったりとベッドに沈んだ体を、クラウドは労わるように撫でて、ゆっくりと腰を引いた。


「は……スコール、」
「ク、ラ…んん……」


呼ぶ声に応えようとしたスコールだったが、それが終わる前に唇を塞がれた。
耳の奥で唾液が絡み合う音がする。
はあ、と息を吐き合って唇を放せば、銀糸が二人の唇を繋いだ。

覆い被さっていた体が退いて、横でどさっと沈む。
その振動の所為ではないが、スコールは奥から注がれたものが溢れ出して来るのを感じて、眉根を寄せた。
は、ふ、と短く小さな呼吸を零しながら、もぞもぞと残る感覚を誤魔化すように足を動かす。
と、大きな手が伸びて来て、スコールの頬をそっと撫でた。


「…ん……クラウド……?」


労わるように撫でる手に、スコールは頬を寄せながら、隣に寝転んだ男を見る。


「…悪いな。大分無理をさせた」
「……別に……」


詫びる恋人に、そんな事はない、とは言えず、求めたのは俺だから、とも言えず。
相変わらずの三文字だけを返せば、納得したのか飲み込んだのか、クラウドは「そうか」とだけ言って、スコールの目尻に残っていた涙雫を指で拭った。

篭った空気が充満する部屋の中で、二人のまだ微かに乱れた呼吸音のみが、やけに大きく反響している。
それだけ激しかったのだと思うと、スコールはまた躯が熱くなるのを感じた。
流石にこれ以上は疲れているので、しようと言う気にはならないが、体の奥はそれでも求める事を止めない。


(だって、久しぶりだったんだから……仕方ないだろ……)


誰に対しての良い訳なのか分からない事を胸中で呟いて、スコールは撫でる手に身を委ねるように目を閉じた。
大剣を操る、ごつごつとした無骨な手は、何処までも優しく、スコールの涙に濡れた頬をあやしている。

きしり、と小さな音が鳴って、クラウドが身を寄せて来た。
スコールも少し寝がえりを打って、体を寄せてみる。
直ぐに腕が背中へと伸ばされて、抱き寄せられる形となり、スコールは逞しい腕の中にすっぽりと包まれた。


「久しぶりだと、やっぱり加減が出来ないな…」
「……腰が痛い」
「悪かった」
「……別に良い。判ってたことだ」


そもそも俺が誘った、とはスコールは言わなかった。
が、存外とお喋りな瞳は無音でそれをクラウドに伝えており、クラウドはくすりと笑って、濃茶色の髪を撫でる。

汗の匂いを漂わせているクラウドの体に、スコールはそっと身を寄せる。
密着すると、胸の奥で鼓動を打っている心臓があった。
平時よりも速く数えられるのは、熱の名残の所為か、それともこうして触れ合っている所為か。
いずれにしても、深く考えると顔が熱くなりそうで、スコールは意識的にその思考を追い出して、厚みのある胸に顔を押し付けた。

スコールを抱くクラウドの手が移動して、細い腰を撫でる。
一瞬ビクッと体が震えたスコールだったが、撫でる手は悪戯さよりも優しさがあって、負担を強いたのであろう其処を慰めてくれているのが判った。
まさかもう一回かと思った自分が無性に恥ずかしかったが、振り払うのも嫌で、黙ってされるがままになる。


「明日に響かないと良いが」
「……期待はしてない」


それも判っていた事だ、とスコールは言った。
クラウドはもう詫びを口にはしなかったが、代わりに軽く腰を揉んでマッサージを始めた。

行為が終わってからじんじんと鈍痛を訴えていた腰が、クラウドの手揉みで少しずつ解れて行くのが判る。
それをどれだけ繰り返した所で、眠って起きればきっと酷い事になっているのだろうけれど、クラウドの気遣いが純粋に嬉しかった。
血行も良くなっているようで、クラウドの手が触れている場所が、少しずつ温まっていく。
スコールはほっとした表情で、クラウドの腕に閉じ込められたまま、うつらうつらと舟を漕ぎ始めていた。


「眠いなら寝て良いぞ」
「……ん…」
「…でも、風呂位は入った方が良いか…?」


二人の体は常時の名残をそのままにしており、スコールの下腹部は濡れそぼり、クラウドの中心部も似たような状態になっている。
部屋の気温は快適温度で、布団を蹴飛ばして寝ても直ぐに風邪を引く事はないだろうが、散々汗を掻いた後である。
せめてこの汗だけでも洗い流さねば、寝冷えをしてしまいそうだった。

しかし、スコールは今すぐにでも眠りそうだ。
長い睫毛を携えた瞼が、何度も重く下がっては、ゆるゆると持ち上がる。
肉体の疲労と、精神の安寧を得て、充足感の中で眠りにつこうとしているのだ。
そんなスコールをあやすクラウドも、このまま愛しい存在を感じながら眠りたい、と思っている。

スコールの足が身動ぎして、クラウドの足に絡まった。
汗が冷えて、逃げようとする体温を留める術を求める体に、クラウドが布団を手繰り寄せて包み込んでやる。
自分も其処に入らせて貰って、一枚の布団の下で、二人はより密着して熱を分け合った。


「風呂は…どうする?入るか?」
「……面倒だから良い」
「そうか。……正直、俺も面倒だ」


明日の負担を思えば、アフターケアはするべきだとクラウドは思っている。
汗を流すだけでなく、スコールの胎内に注がれたものも、処理をしないと何の不調を呼んでくるか判らない。
明日はどういう編成だったか、スコールは相変わらずジタンやバッツと共に出掛けるのか。
自分は多分休める筈だけど、とクラウドは考えていた。

スコールの方も、処理を怠れば面倒を被るのは自分の体である事は判っている。
そうして体調を崩せば、結果的に他の仲間達にも迷惑をかけると言う事も。

それでもスコールは、このままが良い、と思う。


「……このままの方が…あんたがまだ、中にいる…感じがする……」


下腹部の違和感は辛い。
辛いが、それが記憶を呼び起こす。
だから、このままが良い。

小さな声でそう言って、スコールは耳元の鼓動を聞きながら目を閉じる。
腰を撫でる手が止まり、その持ち主が、恋人の思いも寄らぬ言葉に固まっているクラウドには気付かないまま。


「……おい、スコール」
「………」
「……寝てるのか」


控え目に声をかけるクラウドだったが、返って来るのはすぅすぅと健やかな寝息のみ。
そっと腕の中の仔猫の顔を覗けば、蒼灰色は綺麗に瞼の下に隠れていた。

眠るスコールの寝顔からそっと視線を外し、クラウドはひっそりと溜息を吐く。
そんな事を言ってくれるのか、とクラウドの胸中は大変複雑だ。
思いも寄らない言葉に、反応してしまっている自分に呆れるが、いやこれは仕方がないだろう、と思う。

しかし、スコールは既に夢の中だ。
疲れ切った彼を起こすのは忍びないので、クラウドは自分の都合についてはぐっと堪える事にした。


「おやすみ、スコール」


囁いて、クラウドはスコールの傷の走る眉間にキスをする。
眠る目許が、微かに緩んだのが判った。





ぽろっと言ってしまったけど起きたら覚えていないスコールと、きっと覚えていないだろうけど嬉しい事を聞いたので嬉しいクラウド。
次の時から、クラウドが後処理についてするかしないか聞いて来る。
するならやるし、このままが良いって言ったらそれはそれで嬉しいムッツリ。

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