サイト更新には乗らない短いSS置き場

Entry

2026年08月08日

[バツスコ]オプス・ムシウム

  • 2026/08/08 22:20
  • Posted by k_ryuto
  • Category:FF

R15
スコールがふたなり(基本男性体)




バッツがスコールと思いを遂げてから、それなりに時間が経っている。
その間、バッツはいつからとは言わないが、悶々とした日々を過ごしていた。

愛し合うなら然るべき行為があって然るべき、とは言わないが、やはりバッツも男だ。
そう言う欲はやはり抱いているもので、それは明確にスコールに向かっていた。

彼が触れあうことを苦手としているのは知っているが、しかし、だからと言って完全に拒絶される様子もない。
バッツがそう言う匂いを醸し出せば、スコールは赤い顔をして、「もうちょっと待ってくれ」と言った。
ここで重要なのは、スコールは「待って」と言ったのであって、「嫌だ」とは言っていないことだ。
つまりはバッツにそう見られていることを、彼自身は受け入れているのである。

だからバッツも待った。
スコールの性格もよく判っていたし、無理にことを押し進めて、彼を傷付けては意味がない。
冷静な振る舞いをするけれど、スコールはこと人との触れ合いに置いては、恐怖症の節がある。
焦らなくて良い、ゆっくりで良い、スコールが良いと思った時で───バッツもそう思ったからこそ、待つことに厭は言わなかった。

……しかし、一月、二月、三月と時間が経って行くと、さすがにバッツも不安になって来る。


(ひょっとして、本当は嫌なのか?)


それもあり得ない話ではない。

スコールは、嫌なら嫌とはっきりと口にする性格だが、懐に入れた者には弱い。
自分の発言が、返答が、相手にどんな思いをさせてしまうかを想像して、急に線引きが弱くなってしまう。
バッツから見て、スコールの愛らしい部分でもあるが、こういう問題については、反って悩ましい。
スコールが「バッツに嫌われたくないから、嫌だと思ってもそれを言わない」と言う可能性もあるからだ。

こういう時に、遠回しに聞いてみよう、等とは思わないのがバッツである。
何度目になるか、誘った際に返って来た「もうちょっと」の言葉に、バッツはついに切り込んだ。


「なあ、スコール。ひょっとしておれとセックスするの、嫌か?」


秩序の聖域のバッツの部屋で、二人でベッドの上にいる。
傍から見るものがあれば、今から正に、と言うシチュエーションだ。
故にバッツもスコールの体に触れ、ささやかなスキンシップから流れを作ろうとしていたのだが、其処へきていつもの「待ってくれ」である。

眉尻を下げるバッツの問いに、スコールはぐっと黙り込んだ。
蒼の瞳が泣き出しそうに歪むのを見て、バッツの表情も悲嘆が浮かぶ。
やっぱり嫌だったのか、とバッツが受け取るのも無理はなく。


「嫌なら嫌って言ってくれよ」
「……そ、れは……」
「おれがしたいのは確かだけど、スコールが嫌なことは、したくないしさ」


下手に気遣うよりも、正直に言ってくれた方が、バッツも切り替えられる。
確かに欲はあるが、愛し合う為の手段は、何もそれに限ったことではないのだ。
一番判りやすい方法をやめて、他を探せば良いことだ。

バッツはそう思っているのだが、スコールはまた首を横に振った。


「そう、じゃ、ない……」
「ほんと?」
「……ああ」


重ねて確かめるバッツに、スコールはちゃんと目を見て答えた。
嘘ならその目が判り易く彷徨う。
それは見付からなかったから、スコールが本心を言っていることが読み取れた。

バッツを見つめていた瞳が、気まずい様子で俯いた。
もぞ、とスコールが身動ぎをする。


「ただ、その……」
「うん」
「……俺は、……あんたに、」
「うん」
「……言ってない、ことが……ある、から……」


その唇は、酷く重いものを抱えていた。
蒼灰色は泣き出しそうに歪んでいて、恐怖に似たものも混じっている。

バッツが顔を覗き込むと、スコールは眼を逸らそうとして、留まった。
恐々とした様子に、バッツがそっと白い頬に触れると、スコールは強く唇を噤む。
言いたいけれど言えない、言うのが怖い───そんな顔だ。

ここでバッツが引き下がるのは簡単だった。
我慢しきれなくて拒否する理由を聞いたのはバッツの方だが、それでスコールに負荷をかけるのも望まない。
スコールが望まぬことをするのはバッツの本意ではないし、もしもトラウマのようなものを抱えているなら、焦らず時間をかけるべきだ。
スコールは、「待って」と言っているのだから。

ただ、長引かせる程、スコールが貝になるのも知っている。
逡巡を繰り返している今が、スコールにとって境界線の狭間だ。
ここを彼が、前に行くのか、後ろに下がるのか、それをバッツが急いて決めてはいけない。


「……バッツ……」
「うん」


名前を呼ばれて、バッツは返事をした。
スコールはベッドシーツの端を強く握っている。


「……誰にも、言ってないことが、ある」
「うん」
「あんたにそれを……見せる、から。見たものの、ことは、誰にも、言わないで……欲しい」
「うん。言わない」


バッツがすかさずそう答えると、スコールは目を丸くして顔を上げる。
まだ何も言ってないのに、と表情に浮かべるスコールに、バッツは歯を見せて笑った。
彼が胸に抱く不安が、少しでも薄らいでくれるように。

スコールはじっとバッツの顔を見つめた後、もう一度唇を噛んだ。
意を決した表情になって、ベッド端から腰を上げる。

何をするのか、バッツがじっと見つめる前で、スコールはジャケットに手をかけた。


「へ?」


今度はバッツが目を丸くする番だ。

スコールはジャケットを脱ぐと、その下に来ていたシャツも捲り上げた。
脱いだ上衣は床に放り捨てて、次に腰のベルトに手をかける。

突然始まった恋人の、前触れもないストリップショーに、バッツは思わず固まって、


(あ。そうだ。傭兵だから、傷とか、何か、そういう───)


スコールは、SeeDと言う特殊な名のついた傭兵だと言っていた。
となれば、額の傷と同様に、その身体にも様々な痕跡があっても可笑しくない。
その“痕跡”あるいは“傷”とは、男でありながら屈辱を飲んだ残滓が刻まれている可能性はある。
少なくとも、バッツの感覚では、そう言う出来事は多かれ少なかれ聞く話だった。

スコールはベルトを緩めたズボンを下ろした。
靴と一緒に足元にまとわりついたそれを蹴って、仕草だけ見れば自棄を起こしたように見える。
しかし、恐らくは、そうしないとスコール自身が止まってしまうからだろう。
ブレーキがかかってしまう前に、行くべきところまで行ってしまおうと、引き結んだ唇がその決意の象徴だ。

最後に下着に手をかけて、スコールは一瞬止まった。


「……っ」


息を詰めて、スコールは逡巡する。
それはバッツから見ればほんの数秒のことだったが、きっとスコールには長い時間だった。

下着が下ろされ、足元を潜って、遂にスコールは一糸まとわぬ形になった。
まだ薄い色をした中心部が晒されて、ごくりとバッツの喉が鳴る。
彼の裸身は、風呂で見た事がある筈だが、そこが隠されていないのは初めてだ。
彼は必ず、そこを他人に見せないように、タオルで覆うようにしていたから。

だがそこに、バッツが想像していたような“痕”はない。
一瞬頭を過った、象徴が削ぎ落されているようなこともなかった。


「えっと……スコール……?」
「……」


スコールはまだ口を噤んでいる。
何がどういうことなのか、訊いても良いのだろうか、とバッツはまだ判じかねていた。

裸になったスコールがベッドに乗る。
きし、と音がして、裸身の恋人が自分のベッドにいると言うことに、バッツはどうしようもなく昂った。
逸る心臓が、据え膳宜しく飛び出しそうになっているのを、微かな理性を抑えている。
今はまだ飛び出すな、と。

スコールはベッドの奥に身を寄せるように近付くと、壁を背に向き直った。


「……どう、言えば良いのか判らない。だから……見せ、る」
「何を?」
「……」


首を傾げるバッツに、スコールは答えなかった。
どうしても口が重い。
言えない、と、言いたくない、が混ざっていた。

スコールは、壁に寄り掛かって、ゆっくりと膝を開いた。
これもまた、当然ながらバッツには予想外の行動だ。
ことにガードの固いスコールが、相手が恋人とは言え、自らそんなことをするなど思ってもいなかった。

その理由を、バッツはそこにひた隠しにされていたものを見付けて、悟る。


「え?」
「……」
「スコールって───」


そこから先の言葉を、バッツは口に出来なかった。
そんな筈はない、と言うことは、晒された場所にあるものを見れば明らかだ。
だが、またそれを否定するものも見えていて、益々バッツを混乱させる。

スコールの顔と、晒された場所を、バッツは交互に見比べた。
そこにあるのは自分がよく知る少年の顔で、その体つきは間違いなく、風呂場で何度も見ていたもの。
少し華奢な印象すら与えるが、それは無駄な肉がなく引き締まっているからだ。
決してか弱いものではないし、何より、自分と同じものがあるのだから、そう言う意味ではこれまでの認識は何も間違ってはいない。

だが、同じ性ならない筈のものが、ある。
すっきりとした筋になったそれが意味するものを、バッツは困惑の中で辛うじて理解まで行き付いた。


「スコールって───両方、あったのか?」
「………」


スコールはやはり答えない。
言葉の変わりに、その顔は明らかな羞恥で真っ赤に染まる。

開いた口が塞がらない状態のバッツに、スコールは開いていた膝を寄せる。
足を閉じてしまえば、もうそこに筋があることは判らない。
バッツと同じ性のシンボルもあるから、こうしてみる分には全く“男”である。


「……気持ち、悪い…だろ……」


俯いたスコールの声は、酷く震えていた。
彼自身は平静を装っているつもりだろうが、内々の心が隠せていない。

だからスコールのその言葉を聞いた瞬間、バッツはすぐに言った。


「そんなことない!」
「……」
「本当だって!」


バッツは言い募ったが、蒼の瞳はこちらを見ない。
信じていない、信じられない、と言うスコールの心がありありと表れていた。

ならば、とバッツはスコールの閉じた膝を掴む。
は、とスコールが目を瞠る隙に、バッツは彼の足を左右に大きく割った。
スコールは蒼褪めた真っ赤になって、腰が逃げを打ったが後ろは壁に阻まれる。


「ちょ、バッツ……!?」
「スコールの体、もっと見たい。ちゃんと見せてくれよ」
「馬鹿、ふざけるな!俺は真面目に」
「おれもずっと真面目だよ」


スコールの足がバッツの肩を蹴った。
ようやく決断できたのに、と子供のようにスコールの声に泣きが混じる。

じたばたと暴れるスコールの足を掴んで、少し強引に押さえつける。
彼の意思を封じるようなやり方は好きではないが、今だけは他に方法がない。
言葉で何を言ってもスコールには信じられないのだから。


「やめろ、バッツ!こんなの、見たって面白くもないだろ!」
「そんなことないって。これがスコールなんだろ」
「や、あ、どこ触って……!」


バッツは開かせた足の間に体を入れて、その中心に指を添わせた。
自分と同じ象徴があって、そのすぐ下にある、綺麗な溝。
傷付けないように、溝そのものではなく、土手の膨らみを指の腹でなぞると、スコールの体が仰け反った。


「んぁ……っ!」


零れたスコールの声には、甘露が滲んでいる。
その音を聞いた瞬間、バッツはぞくぞくとした高揚が背中を駆け抜けるのを感じた。

すり、すり、と指で土手を撫で続けると、スコールはいやいやと頭を振る。
助けを求めるように彷徨ったスコールの手が、恥部を見つめるバッツの肩を掴んだ。
バッツが顔を上げれば、大粒の雫を浮かべた真っ赤な顔が、今にも泣き出しそうにこちらを見ている。


「バッツ……!」
「大丈夫だよ、スコール。嫌いになったりなんてしないよ」
「……っ!」
「びっくりしたけど。それだけだ。ここが“こう”だったからって、おれがスコールを嫌いになるわけない」


言ってバッツは、スコールの唇に自分のそれを押し付けた。
近い距離でブルーアイズが見開いて、まるで信じられないものを見ているかのようだ。
実際にスコールにとっては、そう言う気持ちなのだろう。

バッツはスコールに深く口付けながら、指先は彼の秘部を撫で続けた。
その手付きは優しく丁寧で、決して彼を弄ぶのが目的ではない。
時折手を動かして、もうひとつの性の象徴へと触れれば、これにもスコールは困惑した様子で息を喘がせた。


「ん、む……っ、は……っ、あぁ……!」


バッツはその声を耳元に聞きながら、興奮を高めていく。


(ここに、おれが、入る。おれが入るところを、スコールが持ってる)


ここは鞘だ。
剣を納める為の場所だ。

今はまだその口は堅い様子だが、こうして触れて行けば、徐々に解れていくだろう。
その時のことを考えると、バッツはどうしようもなく興奮した。
勿論、それがなくても彼と交わる方法があるのは知っているし、どちらでもバッツは構わない。
けれど“バッツを受け入れる為だけの場所”がある事実は、得も言われぬ歓びをバッツに齎す。

濡れたスコールの唇を解放して、バッツは赤い顔で喘ぐ恋人を見つめながら囁く。


「どっちだって良いんだ。どうだって良いんだ。それがスコールなら」
「は……あ、バッツ……っふぅ……!」
「急かしてごめん。勇気出してくれて、ありがとな」
「ん、んぁ……あ……っ!」


どうしてスコールが、頑なにバッツの誘いに頷けなかったのか。
全てを見せると決めた時、彼にとってはどんなに怖い賭けだったのか。
それでも受け入れて欲しいと、そこまで望んでくれる程に焦がれてくれたことが、バッツはどうしようもなく嬉しかった。

だから今度は、目いっぱいにスコールに伝えなくてはいけない。
自分がどれだけ、スコールのことを愛しているのか。



確かな安心を求めて恋人の名を呼ぶ声は、いつしか喜びに濡れていた。





『バツスコかフリスコでふたなりネタ』のリクエストを頂きました。
どちらのCPでも美味しかったのですが、今回はバツスコにさせて頂きました。

人と一緒に風呂に入ってるのは中々無防備ですが、一見すると男だし、下手に隠す方が不自然だと思ってたスコールです。
念の為にタオル一枚巻いてるくらいは、スコールだったらそう言うこともするよな、と言う印象で誰も気にせず。
それだけに、恋人になってからバッツに求められて、余計に言い出しにくかった様子。
スコールからすると「嫌われるかも知れない」ことだった訳ですが、バッツは寧ろ興奮しています。思い切り不安を吹き飛ばして貰うと良い。

[ウォルスコ]あなたのそばにいたいだけ

  • 2026/08/08 22:15
  • Posted by k_ryuto
  • Category:FF



スコールには、少し変わった癖がある。
それは子供の頃から積み重ねられてきたものだ。


幼年期のスコールは、引っ込み思案で人見知りが激しく、身内以外には滅多に懐かない子供であった。
生後間もない頃から付き合いのある、父の旧友たちにも、自ら近付かなかった程である。
今も人見知りの片鱗は残っているが、幼い頃は怖がりだったこともあって、より顕著だったと言える。

そんなスコールが懐いていた数少ない年上の人間が、ウォーリアだ。
8歳年上の幼馴染に、彼は随分と心を許していた。
顔を見れば自ら駆け寄り、ぴったりと彼の傍から離れない。
見慣れない人間がいるのを見付けると、一目散でウォーリアの背中に隠れていた。
そんなスコールを、ウォーリアも無碍にはせず、スコールの両親からも「うちの子をよろしく」と言われていた。

ウォーリアの方は、始めは自分の方が年上だから、スコールが幼いから、と言う理由で面倒を見ていたと思う。
その面倒見の良さと、決して声を荒げたり、騒がしい気質ではなかったから、大人しいスコールにとって丁度良い塩梅だったのだろう。
家族以外で、必ずこの人は守ってくれる、と言う安心感で、スコールが懐いていたのは間違いない。

成長と共に、スコールの怖がりや泣き虫は克服されている。
それでも、ウォーリアに対する信頼までもが薄れることはなく、寧ろそれはより強いものとなっていた。
いつしかスコールはウォーリアに対し、自身の心を預けるようになっている。
それが、一時の憧れが齎す幻ではないことを、ウォーリアも受け入れている。
……二人がそこに至るまでに、約三年、周囲がやきもきする攻防があったことは、別の話として。

現在、スコールは高校二年生になっている。
ウォーリアは大学を卒業し、都内に構える進学塾の講師となっていた。
ウォーリアは実家を出て一人暮らしのアパートを持ち、そこにまだ実家暮らしのスコールが頻繁に訪れている。
理由としては、来年には受験シーズンを迎えるスコールの対策の為だが、それもどこか言い訳めいているのも確か。
お互い、拗らせるように三年の攻防をした反動があるのは否めなかった。

週末の休みに合わせて、スコールはウォーリアの自宅を訪れる。
ウォーリアもその日は大抵休みだから、お互いに気兼ねをしなくて良かった。
信頼しているウォーリアの下にいるならと、スコールの両親も目くじらを立てることはない。

スコールが作ってくれた夕飯を食べた後、ウォーリアはソファに座ってノートパソコンを開いていた。
その隣では、スコールがローテーブルに教材を広げ、宿題に取り組んでいる。
名目では“ウォーリアに勉強を教わる”として足を運ぶスコールだが、実の所、ウォーリアが手を貸すことは少ない。
スコールは地力で十分に優秀な成績を収めており、勉強姿勢も真面目なものだ。
ウォーリアがやる事と言ったら、ただただ見守ることと、彼が稀に悩んだ時に少しヒントを与える程度のことであった。

今日も例に漏れず、スコールは自力ですべての課題をクリアする。
最後にプリントの頭から順に確認をして、スコールはシャーペンを置いた。


「はあ……」
「終わったのか」
「ん」
「ご苦労様」


眼精疲労か、スコールは猫のように目を擦っている。
子供の頃にも勉強の後にはよく見られた仕草に、ウォーリアの口元が緩んだ。

スコールは勉強道具を片付けると、ウォーリアの隣に移動した。


「あんたの仕事は……」
「もう直に終わる。あとは確認だけだ」
「そうか」


ウォーリアの返事を聞いて、スコールはソファの背凭れに寄り掛かった。
携帯電話をいじりながら、そのまま時間を潰すことしばし。

ウォーリアも最後のチェックが終わり、ファイルを保存して、パソコンの電源を落とす。
端末が小さく音を立てて、液晶画面が暗くなると、


「終わった?」
「ああ」


答えると、すぐにするりと気配が近付いた。
ソファに座るウォーリアの膝に片手を突いて、腕の下───脇の隙間からスコールが体を突っ込んでくる。
そのまま体半分ほどをウォーリアの脇から侵入させたスコールは、ウォーリアの膝の上に上半身を乗せた。

スコールに膝上を占領された格好になって、ウォーリアは立ち上がることも儘ならない。


「スコール」
「ん」
「リモコンを取ってくれるか」
「ん」


スコールはウォーリアの膝上に居座ったまま、腕を伸ばして、テーブル端に置かれたリモコンを掴む。
無言で差し出されたそれを受け取って、ウォーリアはテレビの電源を点けた。

膝の重みを感じながら、ウォーリアはテレビを見ていた。
時間はもう直に21時となる所で、番組と番組の合間にニュースが流れている。
都内で事件があったと言うが、どうやらこの辺りからは遠いようだし、スコールもこの時間から外には出るまい。
物騒な世の中であるから、少年少女は日も落ちきった時間には外に出ないのが健全だ。

その“少年”はと言えば、ウォーリアの膝の上ですっかり落ち着いている。
ここはスコールが子供の頃からお気に入りの場所で、自分だけの定位置なのだ。
時折、過ごし辛くはないのだろうか、とウォーリアは思うのだが、スコールはそこにいて当たり前、と言う顔で、携帯電話をいじっていた。

ウォーリアが視線を落とすと、スコールの形の良い後頭部と、旋毛が見える。
柔らかな濃茶色の髪を手櫛で梳くと、ぴくりと小さく反応があった。


「……」
「……」


スコールはしばらく止まっていたが、ウォーリアが髪を梳き続けていると、また携帯電話を触り始める。
特に気にする必要はない、と判断したようだ。

ウォーリアはゆっくりとスコールの頭を撫でながら、


(……何かに似ている気がする)


そんなことを考えて、はて何だろうか、と首を傾げた。

テレビはニュースを終えて、バラエティ番組が始まった。
日々のささやかな疑問を、実験しながら検証し、最後に専門家の解説を挟む。
放送時間がゴールデンタイムの終盤とあってか、時には派手で過激なこともするのだが、今日はなんとも牧歌的だ。
テーマが“動物の不思議”と言うことで、動物の生態や特徴について調べているからだろう。

テレビに可愛らしい猫が映り、その独特な癖を飼い主が語っている。
猫の日々の過ごし方のVTRが流れて、パネルで可愛い可愛いと言う声が相次いだ。
それをじっと見つめながら、ああ、とウォーリアは得心する。


(……なるほど。猫、か)


膝に乗っているスコールを見て、ウォーリアはくすりと笑う。
今そこにいるスコールは、飼い主の膝の上で丸くなっている猫と、よく似ている。

テレビに映る猫の飼い主が言った。


『眠る時、かならず私にくっつくんですよ。専用のベッドも買ったんですけど、ちっとも興味がないみたいで』


高いベッドだったのになぁ、と飼い主は笑っている。
吟味したアイテムがお気に召されなかったのは悔しいが、自分に密着して眠る猫の姿は可愛い。
折角ではあったけれど、まあ良いか、と言う気持ちになった、とか。

───スコールも、そう言う所が少し、ある。
ここはウォーリアの一人暮らしのマンションだから、ベッドはひとつしかない。
だからスコールが泊まりにくるようになってから、布団をひとつ誂えて、彼が来たら敷いている。
布団でもベッドでも、スコールが落ち着く方を使うと良いと言ったのだが、スコールの行動はどちらとも違った。
ウォーリアがベッドで寝るならベッドで、布団で寝るなら布団でと、移動して来るのである。
そしてウォーリアの体に身を寄せて眠るのがお決まりだ。

今もそれと同じことだ。
ソファは長椅子になっていて、横幅には余裕があるのに、スコールの定位置はウォーリアの膝の上。
仕事をしている時はさすがにそこにはいなかったが、終われば自然とやってくる。


『猫って、自分が安心できる場所を覚えていて、そこをお気に入りにするんですよね』


猫を飼っていたというパネラーが語った。
動物を飼ったことがないウォーリアは、そう言うものなのか、と感心する。

もう一度視線を下へと落とせば、スコールがいる。
ふあ、と欠伸を殺す声が聞こえ、スコールは携帯電話から手を離していた。
もぞもぞと身動ぎしたスコールは、体の向きを変えて、ウォーリアの腹に顔を寄せる。


「スコール」
「……ん」
「眠いのなら、ベッドに行った方が良い」
「……」


促すと、ちら、と蒼がこちらを見遣る。
寝転んだまま、横目で見下ろす恋人を見つめたスコールは、不満そうに唇を引き結び、


「……ここで良い」
「そこでは寝辛いだろう」
「別に」


スコールの腕がウォーリアの腰へと回る。
しっかりとウォーリアの体に捕まって、スコールは足を縮めて丸くなった。


「スコール。ここでは窮屈だろう。落ちてしまうかも知れない」
「平気だ」
「スコール」
「……ここがいい」


ぎゅう、と捕まる腕に力が籠る。
ここじゃなければ嫌なんだと、尖らせた唇がウォーリアに訴えた。

スコールの我儘に弱いウォーリアである。
こうも言われては、仕方あるまい、と折れるのが常であった。
そんなウォーリアに、甘やかしすぎると癖になるぞ、と友人から忠告されたこともあったが、既に遅い。

ウォーリアはスコールの髪を撫でた。
それが恋人の了承の合図だと悟って、スコールのしがみつく力が緩む。
代わりに、スコールはまたもぞもぞと身動ぎして、自分が落ち着く場所を探す。
ややもしてから、自分の体がぴったりと収まりよくウォーリアと密着すると、ふう、と安心したように息を吐いた。

スコールが密着した場所から、彼の体温が移ってくる。
くすぐったくて暖かいその感触に、ウォーリアの唇は自然と緩む。


「スコール」
「……ん」
「寒くはないか」
「……別に……」


スコールはうつらうつらとしているようで、声にもあまり力が入っていない。
蒼い瞳が、ゆっくりとした瞬きの奥へと隠れながら、小さな声が言った。


「……あんた、体温、高いよな……」
「そうだろうか」


寧ろそれは君の方が、とウォーリアは思ったが、口を噤む。
すぅ、すぅ、と聞こえてきた寝息の邪魔をしたくなかった。

眠ったのなら、ベッドに運んでおかなくては。
ここで良いとスコールは言ったが、ソファはどうしても窮屈だ。
きちんと手足が伸ばせるところの方が、明日に差し支えもあるまい。

離れようとすればいやいやと訴えるから、ウォーリアは密着しているスコールから体を離さないように努めて、彼を抱き上げる。
意識が夢に入っても、流石にまだ睡眠は浅いらしく、振動でスコールが小さくむずかった。
首に伸ばされた腕が絡みついて、縋るように、寄り掛かるように、抱き着かれる。

寝室についても、スコールは離れまいとするので、一緒にベッドに横になる。


「んん……」


スコールが寝返りを打って、ウォーリアの方へ身を寄せる。


「……ウォ、ル……」


小さな声で名を呼ばれる。
顔を見ても、スコールは眼を開けていない。
そっと頬に触れてみると、スコールの眦が微か緩んだように見えた。


(君は私に、安心してくれているのだろうか)


問うには聊か野暮な気がして、口には出せない。
けれど、子供の頃から何度となく、こうしてぴったりと身を寄せてくれるのだから、そう自惚れても良いのではないか。

いつものように密着すると、もう離れる気のないスコールに、ウォーリアはそっとその身体を抱き寄せた。






『WoLスコで、ウォルにひっついてる安心するから、全身でくっついてくるスコール』のリクを頂きました。
安心するし、甘えたいし、許してくれるし。甘えたおすスコールと、甘やかし倒すWoLになりました。

子供の頃は守ってくれるお兄ちゃん、成長してからは自分を全部受け入れてくれる人。スコールから見たWoLはそんな感じだと思います。
WoLからすると、スコールの印象は子供の頃からあまり変わっていないのかも知れない。ずっとくっついて来てるので。
でも傍から見ると、スコールがそんなに密着したがる相手って、今となってはWoLだけなんだと思います。……傍からそれを見る人がいませんが(スコールが人前では密着しない為)。

[セシスコ]良い子悪い子

  • 2026/08/08 22:10
  • Posted by k_ryuto
  • Category:FF

R15




優しい顔をしているのに、その身体は厚みがあった。
跳ねる体が逃げるのを咎めるように掴む手のひらは、固い剣胼胝があって、大きい。

セシルの体温を内側で感じている。
奥を突き上げる逞しさに、どうしようもなく意識が溶けて浚われた。
必死に彼について行こうとしても、いつの間にかそんなことを考える余裕すらなくなっている。
何度目か知れない果てまで連れていかれて、頭の中が真っ白になった。


「あ、う、んぁ……!」
「は……っ、スコール、僕も……っ!」


喘ぐスコールの耳元で、切羽詰まった声が零れる。
来る、と思った瞬間に、スコールはぞくぞくとした感覚で喜びを感じた。
どくり、と中に注ぎ込まれるのが判って、スコールは一際高い声を上げる。

赤く染まった躰が弾むのが止められない。
中に注ぎ終わったものが、ゆっくりと内側を擦りながら出て行く。
まだそこにいて欲しいと体が訴えて締め付けたけれど、首筋を柔く撫でてあやされた。
それで体の反応が止まることもないのだが、結局、彼は留まってはくれなかった。


「は、……っん、あぁ……っ」


蓋を失ったところから溢れ出す感触があって、スコールは悩ましい声を漏らす。
身じろぐ体を、大きな手がそっと撫でて慰めた。

乱れに乱れた呼吸は、そう簡単に鎮まってはくれない。
ベッドシーツに顔を半分埋めたまま、はぁ、はぁ、と熱を孕んだ呼吸を繰り返す。
すると肩からそっと抱き起されて、仰向けになった。
首の後ろを太い腕がしっかりと支えながら、頭を少し起こされて、近付いて来た綺麗な顔に、唇を塞がれる。


「ん、ん……っ」


閉じることが出来ない口の中に、とろりとした液体が流れ込んでくる。
水分補給の為の水だ。
汗だくになった身体が、足りなくなった水気に喜ぶのが判った。

こくり、と液体を飲むと、唇が解放される。
長い睫毛を携えた藤色の目が、じっとスコールの顔を見つめていた。


「大丈夫かい。水、まだ飲める?」
「……は、ふ……」


スコールが小さく頷くと、セシルはサイドチェストに置いていた水差しグラスを取る。
一口それを口に含んで、またスコールにキスをした。

グラスの水が半分より少し減った頃に、スコールはもういい、と言った。
セシルは小さく笑みを浮かべ、汗の滲んだスコールの頬をそっと撫でる。
抱き支えていたスコールの首はベッドへと戻されて、疲れ切った躰が楽な体勢に整えられた。

情交の間に昂った熱が、汗で奪われて行かないよう、スコールの体がシーツで包められる。


「……セシル……」
「うん?」


名前を呼べば、何、とセシルは答えた。
スコールは、綺麗な面で見つめる男を見上げて、


「……もっと、したい」


スコールの言葉に、セシルは眉尻を下げて苦笑する。


「嬉しいけど、今夜はここまでにしよう。君にも負担をかけてしまう」


頬に手を添えるセシルは、芯からスコールを気遣っている。
それはスコールも判ったが、望まぬ答えに唇は尖った。


「あんた、俺をそんなにか弱いと思ってるのか?」
「そう言う訳ではないけど。でも、結構大変なことをしているんだよ。今日も意識が飛びかけていたし」
「……それは、あんたの所為だろ。あんたがいつも……いい、ところばかり、突くから……」


言いながらスコールの顔は赤くなる。
初心な反応を隠せない少年に、セシルはくすりと笑って、濃茶色の髪を撫でた。


「感じてる君の顔が可愛いから、つい、ね」
「……」


セシルの言葉に、スコールは益々顔を赤くする。
しかし、拗ねた表情が取れることはなかった。

隣に向き合って横になっているセシルの方に、スコールは重い身体を摺り寄せる。
いつも無骨な鎧に覆われたセシルの体は、しっかりとした筋肉があって、固い。
その胸元に顔を擦り付けてやると、セシルの腕が包み込むようにスコールの背中に回った。

閉じ込めてくれる腕の中で落ち着きながら、スコールは呟く。


「……どうしたら、あんたは二回目をしてくれるんだ」


聞きようによっては、中々大胆なおねだりだ。
しかし、スコールはそれがいつも叶えられないことが不服だった。

上目に睨むように見つめるスコールに、セシルは困った顔をしてみせる。


「君が良い子で寝てくれたら、明日にでも教えるよ」
「それは教える気がないやつだろ」


躱そうとしているのが判って、スコールの声が低くなる。
視界の端でちらちらと揺れている銀糸を摘まんで引っ張ると、「いたた」と言う声があった。


「そんなことは───」
「ないって?」
「うーん」


肯定も否定もしないものだから、やっぱり教えないんだな、と言うことが判る。
曖昧に逃げようとする時は、大抵、そういうことだ。
ついでに、既に何度もそうやって躱されているものだから、いい加減にスコールも、事後の甘さに誤魔化されるほど子供ではなかった。

すぐそこにあるセシルに首筋に歯を立ててやる。
「痛いよ、スコール」とセシルは言ったが、顎に力は入れていないし、単に当てているだけだ。
セシルが参ってしまうようなものでもない。
後に多少、痕にはしてやるつもりで噛んだが、フルアーマーを身に付ける彼なら問題あるまい。


「君に誘って貰えるのは嬉しいけど、今日も結構、無理をさせたからね。これ以上、君に負担はかけられないよ」
「常套句だ。それを言って置けば、俺が大人しく引き下がると思ってるんだ」
「そんなことは」
「ない?」
「うん、ない」


セシルは頷いたが、スコールの尖った唇は引っ込まない。
この遣り取り自体が、セシルにとっては事後の戯れなのだ。
もっとしたい、とねだってくるスコールを、宥めあやして、寝かしつけるまでが。

スコールは本当に、もっと彼が欲しいのに。
まだ感触が残る内側に、追い打つものが欲しいのに。

じんとした感触が下肢に滲んで、体が目の前の男を欲しがっている。
スコールはセシルの足に自分の足を絡めて、より密着した。
一枚のシーツ以外にまとうものはないから、お互いの中心部がまだ熱を持っているのが感触で判る。


「あんたも勃ってるんだから。したいんだろ」
「それは、否定できないんだけどね」
「だったら」


スコールは意図して膨らんだものをセシルのそれに押し付けた。
汗は引いても、出したものはまだ濡れているから、ぬちゃりとした感触が伝わる。

とくとくと脈打つそれが膨らもうとしているのを、スコールは擦り付けて助長させる。


「ん、ん……っ、ふっ……」
「……いやらしい子だね」


次を欲しがって懸命に誘う少年に、セシルの声が低くなる。
最中にそれが耳元をくすぐる度、スコールの体は熱くなった。
今もまた、燻ぶるものが再点火されて、揺れる腰の動きは大胆になっていく。


「は……っ、セ、シル……っ」
「でも駄目だよ、スコール」


腰を揺らすスコールの体を、セシルが強く抱きしめる。
それ以上、スコールが悪戯が出来ないように、細腰に回した腕がしっかりとした力を籠めた。
ぎゅう、と腰骨が締め付けられる感覚が、拘束に似た錯覚を起こして、スコールの体がぶるりと震える。


「あぁ……っ!」


どくん、とスコールの熱が解き放たれた。
たったこれだけで、と自分の体の浅ましさに羞恥が昇る。

はふ、はふ、とあえかに呼吸を繰り返すスコール。
その項をセシルの指が滑って、ぞくぞくとしたものがスコールの背中を駆け抜けた。
強張った躰は更なる解放を求めて、それを与えてくれる男に縋りつく。

しかしセシルは、スコールを抱き締めたまま、それ以上は動かない。


「良い子だからおやすみ、スコール。ちゃんと眠れたら、明日はまた───ね?」
「セシ、ル……っ」
「本当に。ほら、明日も僕たち、待機番だろう?」


明日、急いで出立の準備はしなくて良い。
だったら尚更、今夜のうちにしてくれないのは何故だろう。
スコールはいつもそれが疑問だけれど、問うてもこんな風に躱されてばかりだ。
……躱されて終わる半分は、自分がこうして熱に浮かされ、考える力を失ってしまうからなのだけど。

抱き締められている内に、跳ねていた心臓は少しずつ落ち着いて、伝わるセシルのリズムと一致する。
そうなると段々と心地良さが勝って、意識がふわふわと浮遊感に誘われてしまう。


「セシル……」
「うん」
「明日、続き……」
「うん。してあげる」
「……うん」
「僕も君が欲しいから、ね」


囁く声に、なんとも言えない充足感が満たされる。
あやされていると判っていても、これ以上に我儘が出なくなるのは、その所為だ。

明日。
明日になったら、今度こそ。
次はこうやって誘ってみようと、ふやけた頭で考えながら、目を閉じる。
眦に触れる柔い唇の感触を覚えながら、意識は夢の中へと揺蕩っていった。

────疲れ切った少年の体は、彼が思っているよりもずっと早く、睡魔に負ける。
それほど彼の体は酷使されているのだが、彼自身はその自覚はない。


(だからこっちが大人にならないとなぁ)


すぅ、すぅ、と子猫のように静かに眠る恋人を見つめて、セシルは眉尻を下げて笑う。


(でも、そろそろ厳しいかも知れないな。判ってやったのか、無自覚なのか判らないけど、あんな誘い方をされるのは……)


濡れた体をしどけなく擦り付けられたのは、全く予想外だった。
この手で抱く度、スコールは大胆さを増して行く。
何も知らなかった体が、日毎に花開いては自分を欲しがるその様は、セシルに得も言われぬ興奮を齎した。

その情動のままに抱いたら、きっと抱き潰してしまう。
前後不覚になったスコールが、泣いてやめてと訴えても、揺さぶることをやめられない。
それでスコールに嫌われることは、多分、ないとは思うけれど、だからこそ、セーブしなくてはならないのだ。
彼の幼い好意に甘えて、無体を強いてはいけない。
例えその無体の原因が、どんなに愛情深くとも。


「……本当に、大事にしたいんだよ、スコール。そう言ったら君は、大丈夫だと言うだろうけど」


スコールをか弱い人間だとは思っていない。
それでも、そんなスコールだからこそ、壊してしまう程に荒々しく出来てしまいそうで、いつも抱く度に歯止めが切れそうになる。
この衝動は、一度吹き出してしまったら、止めることが出来ないから。

眠るスコールの横顔は幼く、少し悪戯心で首筋をなぞると、ぴくりと小さく震えるのが判る。
たったこれだけで、こんなにも良い反応をしてくれるから、今以上のことをしたら、果たしてどんなに乱れてくれるのか。


「見てしまったら、戻れなくなると思うんだ。僕は君が思っている程、優しい男じゃないからさ」


大人びた顔をしながら、スコールはどこか幼い。
そんな彼を怯えさせてしまわないように、セシルは優しい仮面を被っている。

けれどいつか、スコール自身の手で、それが剥がされる日は来るだろう。
愛しい恋人を宥めあやしながら、そんな日が来ることを、心待ちにしている自分がいた。






『アダルティでえっちなセシスコ』のリクエストを頂きました。
もっとして欲しくて、体も使っておねだりするスコールと、煽られても堪えてるセシル。
宥めているけど、本音はそういうスコールのことも可愛いし、もっと激しく愛したいと思ってるセシルです。

セシルに本気を出させたら、スコールは一回後悔しそうですけど、嫌がりはしない。
寧ろ癖になるので、もう一回、が延々続くようになると思います。
一回越えたらブレーキがなくなるのが予想できているので、セシルは尚更耐えているんですね。

[ラグスコ]染まる涙の喜びに

  • 2026/08/08 22:05
  • Posted by k_ryuto
  • Category:FF

Dom/Subユニバースパロ
[いつか全てを染め変えて]の続き




ラグナロクがエスタステーションに到着して、一時間の後、この国の大統領は無事に大統領官邸へと送り届けられた。
そこまでが彼の護衛依頼を引き受けたSeeDたちの任務である。
今回も何事もなく外遊を終えることが出来たことに、随行したSeeDもエスタ国軍兵も、胸を撫で下ろす。

スコールはSeeD班の点呼と最終確認を終えた後、一人、大統領官邸に残った。
SeeDたちには「大統領から会食に誘われている」と伝えてある。

国と組織のトップ同士の内々の遣り取りがある、となれば、警備の類も再度必要になることもあるが、今回はそれではない。
あくまで個人的な、言ってしまえばプライベートな誘いであるから、物々しい警備は反って不自然だ。
どのみち、傭兵集団であるSeeDの指揮官であり、先の魔女戦争の英雄ともなれば、それだけで戦闘力としては釣りが出る。
SeeDは勿論、エスタの兵士たちも、晴れてお役御免となり、それぞれの帰路へと向かった。

いつもの客間で待つことしばし───その日の予定にあった仕事を終えたラグナがやって来たのは、夕方の頃だ。
「悪い悪い、遅くなっちまって」といつもの調子のラグナと共に、スコールはウォードの運転する車で、彼の自宅へと送られる。

……その間、スコールはずっと、落ち着かない心地でいた。
どうしようもない本能的な衝動が、餓えた体を疼かせる。
あと少し、あと少しと自分自身に言い聞かせ、隣のシートに座る人のことを見ないように努める。
そうしないと、運転席にいる人のことを忘れてしまいそうだった。

閑静な住宅街の中にある、ラグナの自宅に着く頃には、東の空に夜の色が滲んでいた。
玄関シャッターを潜った車が、玄関先へと横づけされ、ウォードが後部座席を振り返る。


「……」
「おう、お疲れさん」
「……」
「ああ。ウォードも気を付けて帰れな」
「ありがとうございました」


言葉なくとも交わされる、ラグナと旧知の友との会話。
その内容をスコールは知る由もないが、形式として自分も挨拶をして、ラグナと共に車を下りた。
ウォードは二人に手を振って、浮遊モーターの音を微かに鳴らしながら、街へと戻って行った。

ラグナが玄関の扉を開けて、中へと入る。
その後ろをついていく形で入ると、「お帰り、スコール」とラグナが言った。
その言葉になんと返して良いか、スコールはまだ上手くまとめられないでいる。

ラグナが自室へ、スコールはほぼ自分専用となっている客室へ行って、荷物を下ろす。
身軽になったスコールは、すぐにラグナの部屋へと向かった。

一国の大統領の私邸と言うにはこじんまりとした家だ。
部屋をふたつ通り過ぎれば、そこにあるドアが家主の部屋である。
スコールがその扉をノックしようとしたところで、ドアは内側から開かれた。


「おっと。もう来てたか」
「……ん」
「リビング───じゃなくて良いか。うん、おいで」


おいで(Come)
ラグナがそう言った瞬間、どくん、とスコールの内側で心臓が跳ねた。

ドアを潜ると、賑やか好きな家主の性格とは裏腹に、そこは綺麗に整頓されている。
日中は殆ど大統領官邸にこもるから、家には寝に帰るくらいだと言っていた。
特筆すべきものと言ったら、壁に並ぶ、ぎっしりと本が詰まった本棚くらいのものだろう。
他にあるのは、端末と接続されたデスク、朝の抜け殻があるベッド、植木鉢の観葉植物は枯らしてしまうからダミーだ。
それらが収められても、部屋の中央はぽっかりと空間が開く余裕があるくらいに、広さはある。

スコールはドアを閉めて、そこでじっと佇んだ。
ラグナはそんなスコールを見て、もう一度、


おいで(Come)、スコール」


今度は明確な命令(Command)だった。
スコールの足がふらりと進んで、吸い寄せられるように、部屋の中央に立っているラグナの下へ向かう。

どこまで進んでいいだろう、とスコールは探るように進む。
ラグナが止めないから、距離はじわりじわりと縮んで、スコールはラグナの目の前まで来ていた。
節のある手が伸ばされて、スコールの首筋を撫で辿って、頬に触れる。


「明日はお休み?」
「……そう、してある」
「頑張ってお休みにしたんだ?」
「……うん」
「そうか。良い子」


する、と頬をくすぐる指。
むず痒さに似た、けれど不快ではない感触に、スコールの項にぞくぞくとしたものが通り抜ける。
青の瞳は緩やかに恍惚を映し、白い頬が薄らと赤らんでいた。


「じゃあ、スコール。おすわり(Kneel)


ラグナの言葉を受けて、スコールの膝から力が抜ける。
ぺたん、とその場に座り込んだスコールに、見下ろす翠の瞳が柔く細められる。


「可愛い顔してるよ、スコール」
「……」
「久しぶりだもんな。今日まで我慢出来て、えらいえらい」


ラグナは見上げるスコールの頬を両手で包んだ。
顔を近付け、額を擦り合わせて褒めてやれば、淡色の唇から、ほうっと吐息が漏れる。
幼い光を宿した蒼灰色の瞳が、うれしい、と零していた。


「ラグナ……」
「ん?」
「……明日、平気……だから……今日は……」


欲しい、とスコールは消え入る声で言った。
それは、彼が熱くて深いものを欲しがっている時のおねだりだ。

うん、とラグナはそれに頷くが、


「良いけど、今日もちょっとだけ、頑張ろう?」
「……」


ラグナの言葉に、スコールは眉尻を下げる。
彷徨う瞳は、少年の胸中に、拭えない不安があることを示していた。

ラグナはそんなスコールの頬をやわやわと撫でながら、優しい声で囁きかける。


「大丈夫だよ。今日までいっぱい頑張っただろ?」
「……でも」
「スコールは出来る。出来るようになってきてる。俺はそれをよーく知ってる」
「……うん……」
「今日、もうちょっと頑張れたら、あとでちゃんと“ご褒美”やるよ」


ぴくり、とスコールの肩が小さく揺れた。
不安げだった瞳が焦点を定め、じっとラグナを見つめて、本当か、と無言で問う。
ラグナがそれに頷いてやれば、スコールもまた、応じる為に小さく頷いた。


「良い子だ、スコール。じゃあ、一時間、な?」
「……わ、かっ…た……」


とくとくと、不安と期待で跳ねる心臓を自覚しながら、スコールは受け入れた。
ラグナは濃茶色の髪をくしゃくしゃと撫でて、触れる手を離す。

座り込んだスコールを、ラグナは目の前に立って見下ろした。
薄い笑みを張り付けて、支配者の顔をした男の醸し出すものに、スコールの体が重くなって行く。
しかし、それは決して嫌な重みや圧ではない。


「スコール、脱いで(Strip)。全部じゃなくて、下だけ」
「ん……」


ラグナの指示に、スコールは顔を赤くしながら、のろのろと従う。

ベルトを外し、ズボンを脱いで、靴下と一緒に床に捨てた。
湧き上がる羞恥を自覚しながら、下着に手をかけ、子供が着替えをするように、座り込んだままでそれを脱ぐ。
この部屋の床はカーペットが敷き詰められているから、裸になっても冷たさは感じない。
とは言え、カーペットの短い毛足の感触が直に肌に触れるから、スコールは落ち着かない気持ちになる。

下肢をまとうものを奪われたスコールに、ラグナは続けて言った。


見せて(Present)、な」
「……っ」


かあ、とスコールの朱色が強くなる。
それでもスコールは、ラグナの命令に従って、両膝を抱えて左右に割り開いた。

まだ幼いシンボルが、ラグナの目に晒される。
スコールが押し殺した呼吸をするのに合わせて、それはふるふると震えていた。
もう何度となくラグナにそこを見せているのに、初心さを失わない少年の姿に、ラグナの喉が密かに鳴る。


「は……ラ、グナ……」
そのまま(Stay)。隠しちゃ駄目だぞ」
「あ、う……ふぁ、あ……っ!」


じっとつぶさに見詰める瞳に、スコールは得も言われぬ光悦を感じていた。
はしたない姿を晒していると、憤死したいと思うのに、この感覚が嬉しい。
ラグナの声で、彼の命令で、彼に従っているということが。

───ラグナはDomで、スコールはSubだ。
魔女戦争の後から、折々に顔をあわせる機会を設け、時間を共にしていく内に、その性質も含めて惹かれ合った。
対外的には勿論秘密の関係で、ぎこちない親子が懸命に相互理解に時間を費やしている、と言う体を取っている。
だから、仕事を理由に会える機会は多くても、こんな時間を取れる時は少ない。
本能の衝動を抑えて過ごす日々は、まんじりともせず息苦しくて、ようやく会えた時に簡単に箍を外す。

恥ずかしい所を余すことなく晒すスコール。
その肌に、ラグナの伸ばした手が滑った。


「あ、ああ……んん……っ」


汗ばんだ肌に指が伝う感触に、スコールは喘ぐ声を抑えられない。
自身の熱が一か所に集まっているのを、ラグナに見られている。
どうしようもなく恥ずかしくて、どうしようもなく熱くて、嬉しかった。

ラグナの手がきわどい所へと下りて行く。
ここから先は“ご褒美”の約束だから、すぐには触れられない。
判っていても、スコールの体は興奮を示していた。


「良い子だな、スコール。ちゃんと言われた通りに出来てる」
「ふ……ふ、う……ん……」


ラグナの声は低く優しい。
その声を聴いていると、頭の中がふわふわとする。

夢見心地の瞳を彷徨わせるスコール。
ラグナはその様子を確かめながら、ちらりとデスクの隅を見遣って、


「スコール、四つん這い(Roll)だ」
「ん……」
「向きはあっち」


抱えていた膝を離して、スコールは指示通りに四つ這いになった。
ラグナの指定した方向に向きを変えると、臀部を差し出す格好になる。

ラグナの顔が見えないことに、一瞬不安が浮かんだが、今は“躾”の時間だ。
これをきちんと出来たら、“ご褒美”がある。
その期待に縋りながら、スコールはラグナの命令に従い続けた。
それはどこか夢のような感覚を伴って、スコールの思考力が溶けていく。

───それでも、スコールの意識は辛うじて、ラグナと交わした約束を覚えている。


(……時、間……)


四つ這いになったまま、頭を少し上げると、デスクに置かれた時計が見えた。

は、とスコールの喉が震える。
喉奥が乾いて引き攣った感覚がして、指先が冷たくなって行く。
ともすれば溺れたような息苦しさが湧き上がり、心臓がばくばくと異常な速さで駆け出していた。


(セーフ、ワード)


二人で決めたセーフワード。
DomとSubの間で不可欠なもの。

背中に冷たいものが浮かぶのを感じながら、スコールは床に額を擦り付ける。
カーペットの短い毛足を握りながら、はっ、はっ、と詰まった呼気を繰り返し、


「────」


虫にもかき消される声だった。
それがスコールの、精一杯。

途端、がくん、とスコールの体が崩れ落ちる。
床に完全に突っ伏したスコールを、直ぐにラグナが抱き起した。


「スコール!」
「……あ、……う……」


スコールはぐったりとしていたが、蒼灰色は辛うじて世界を見ていた。
ゆらゆらと揺れる蒼色に、心配そうに見つめる翠が映り込む。
目と目が合うと、ラグナは眉尻を下げながらも、小さく笑ってスコールの顔を包み込んだ。


「うん、うん。頑張ったな、スコール」
「……ラグ、ナ……」
「大丈夫。言えた。ちゃんと聞こえたよ」


セーフワードがちゃんと言えた。
そう褒めてくれるラグナに、スコールの乱れていた呼吸が、ほうっと鎮静化へ向かう。

───DomはSubを支配することで充足し、SubはDomに支配されることで安定する。
しかし、そのパワーバランスはともすれば危うく、同意を得ない支配被支配の関係を作り出すこともあった。
Domはあくまで、Subの許可によってSubを支配する。
だからSubが望まないこと、己の身に危険があると感じた時には、その時点で“躾”や“お仕置き”を止めることが出来るように、双方合意の意思としてセーフワードが必要になる。

だが、スコールはセーフワードが言えなかった。
元よりセーフワードはSubが支配の圧に抗うことになる為、負担の大きいものであるが、スコールは輪をかけて強い。
「セーフワードを言うことそのもの」が、スコールにとって反逆行為の如く、禁止行為となっていた。

ラグナはDomとして、スコールを支配すると同時に、大事にしたいと思っている。
傷付けるのも、痛めつけるのも、況してやスコールが苦しむのも、本位ではない。
だからスコールがきちんとセーフワードを使えるように、ゆっくり、じっくり、時間をかけて“躾”をしていた。

脂汗を滲ませて、冷たい指先を震わせているスコールを、ラグナはそっと抱き上げる。
ベッドにその身体を運んで横たえると、一緒に隣に寝転んで、スコールを抱き寄せた。


「良い子だ、スコール。ちゃんと言えた。時間もちゃんと見てたな」
「は……はあ……っ」
「無理させてごめんな。でも、前進だ。よく出来ました」


スコールの視界いっぱいに、囁くラグナの顔が映っている。
それしか見ることが出来なくて、スコールはただただ、そこにある男の顔を見つめていた。

大きな手がスコールの濃茶色の髪をくしゃくしゃと撫でる。
それを黙って受け止めていると、ラグナの唇が頤に触れた。
触れては離れるキスを繰り返した後、ラグナはスコールの顎を取って、二人の唇を重ね合う。


「ん、ん……っ!」


下唇をゆっくりと舐められて、スコールの体が震える。
スコールが薄く口を開けば、その隙間からラグナの舌が入って来て、深い口付けが交わされる。

スコールの呼吸をそっくり奪う程、ラグナは丹念に丁寧に、少年の咥内を寵辱した。
ようやく離れた時には、スコールの瞳がまたぼうと熱に浮かされている。
そんなスコールの様子を窄めた双眸で見つめながら、ラグナはキスの雨を降らせた。

そのままラグナの唇は、下へ下へと少しずつ下りて行き、スコールの白い喉に吸い付く。


「あ……っ!」


強く吸われる感触に、スコールは喉を反らして喘いだ。

ラグナの手が、スコールの体を這いまわる。
着たままのシャツが汗を吸って重く、それを捲り上げられると、部屋の冷たい空気が感じられた。
そこに触れる肌の感触が温かくて、ラグナが触っていることが判る。

これからその手が、何処へ向かうのかを想像して、スコールの体は熱くなった。


「ラグ、ナ……ラグナ……っ!」
「ああ。頑張った良い子に、いっぱい“ご褒美”、あげような」
「……!」


ラグナのその言葉だけで、声だけで、スコールは果てそうになる。
疼く体が、覆い被さる男の熱を求めて止まらない。

そしてラグナも、無心に自分を呼ぶスコールの姿に、幸福感を覚えている。

自分に愛されたくて、一所懸命に命令(Command)に従いながら、“躾”に応えようとする姿の、いじらしいこと。
嘗て無理やり刻み付けられた望まぬ“躾”の傷痕から、彼は脱却しようと足掻いている。
それはSubとして強い気質を持つ彼にとって、並々ならぬ苦痛も伴っている筈だ。
それでも、「ラグナが良い」と染め直しを望む様は、彼を独り占めして全て自分だけで愛し尽くしたいラグナにとって、この上ないほど献身的だ。

今日はその一歩を踏めた。
それなら今夜は、たっぷり甘やかしてやらなくては。



縋る少年を抱き締めて、その内側まで愛して行く。
支配の証が己の中に注がれる度、危うい少年は涙を流して、愛しい支配者の名を呼んだ。







『ラグスコのDom/Subユニバースの躾が進んだお話』のリクエストを頂きました。
欲張り詰め込んだ設定の話を気に入って頂けて嬉しいです。この設定楽しいです。

このスコールは過去にガーデン教諭から、意図せず強い“躾”をされて、深層意識までそれが根付いてしまっている状態。
元々ハードプレイを望む質でもあるので、強引に“躾”されるのも合ってしまうタイプ。
Domのラグナと逢って、ラグナが自分を支配してくれる人になったけど、根付いたものの所為で色々と危ない。今後を危惧したラグナが、時間をかけながら矯正を図っている所です。
ラグナはスコールを甘やかしたい。苦しめたくはない。でも過去の“躾”の気配がすると、嫉妬でGlareを放ってしまう為、それを抑えながらの“躾”です。

スコールは自分に関して「セーフワードを言う権利はない」と言うところからだったので、前回の話では「言おうとして言えない」、今回は「辛うじてその単語を音に出した」と言うくらいまで行けました。頑張ったね。

[フリスコ]呼び水

  • 2026/08/08 22:00
  • Posted by k_ryuto
  • Category:FF



スコールと恋人同士という関係になってから、初めて知ったことはいくつかある。

触れることは苦手だと言うけれど、案外とその時に感じる体温を嫌ってはいないこと。
眠っている時は温もりのある方へと寄って行くこと。
それから、キスをするのが好きだと言うこと。

閨の中では勿論、それ以外の場所でも、彼はフリオニールにキスをする。
仲間たちの目から束の間離れた場所で、ふ、とフリオニールに触れる。

彼はスキンシップを好まない。
ジタンやバッツがよくじゃれついているが、あれも彼から求めた訳ではないし、寛容した訳でもない。
二人がそうやって構っているのが当たり前なだけであって、スコールは甚だうんざりしている───そう言って悪感情はないのだが───。
彼自身からと言えば尚更のことで、握手すら取り合わないものであった。

そう言う人なのだとフリオニールは思っていたのだが、付き合うようになってから、彼から触れる回数の多いこと。
それも、ふとした折、不意を突くようにして触れていくのだから、毎回驚く。

───今日もまた、スコールの戯れは続く。

海岸沿いの歪を調べて回る為、フリオニール、スコール、バッツ、セシルの四人で秩序の聖域を発った。
道中に大きなトラブルはなく、野良のイミテーションや魔物と数回、遭遇した程度だ。
平和と言えば平和なもので、バッツが終始何事か雑談を振り、フリオニールとセシルが答える。
スコールはその後ろで、バッツが指名に投げてくる話題を、短く返していた。

その雑談の最中に、何度か、


「フリオニール」
「ん?」


話題がバッツとセシルの間で咲いている時だった。
殿(しんがり)を歩いていたスコールが、フリオニールの隣に並ぶ。

と、その手の甲が、するりとフリオニールの手を撫でた。


「!」


くすぐったい感触が手の甲を滑った感触に、フリオニールははっとする。
隣を見れば、蒼灰色がどこか楽しそうに、悪戯な表情を浮かべていた。

スコール、と名を呼ぼうとすると、彼は歩く速度を落とした。
半歩分離れたかと思うと、「そういやさぁ」と言ってバッツがこちらを振り返る。
フリオニールが慌てて前を向き直った時には、スコールはさっきと同じ位置へと戻っていた。

バッツの話に応じながら、フリオニールの心臓は忙しく打っている。


(まだしばらく、皆には隠したいって言ってたのは、スコールなのに。なんでこんな風に触れてくるんだろう)


二人の関係は、まだ誰にも伝えていない。
冷やかしをする奴らがいるだろ、とスコールが顔を顰めて言っていた。
確かに、悪意や揶揄はなくとも、放っておいてくれない面々がいるのは確かだ。
まだしばらく静かな方が良い、とスコールが言うから、フリオニールもその意を汲んだ。

それなのに、だ。

隠しているのだから、仲間たちと一緒にいる時には、今まで通りに過ごそうと決めた。
二人きりで話をしたり、ささやかでも良いから触れ合ったり、そう言うことは人前では控えている。
意識がついつい彼を追うのはやめられないが、露骨にならないようにとフリオニールは努めた。

だのに、スコールの方がその境界線を踏んでくる。
ふとした時に、指先を繋いだり、腕に触れてきたり、────キスをしたり。
それも、他の仲間たちが案外と近くにいる時に、彼らが自分たちを見ていない隙に、一瞬だけ。


(聖域を出る時にも、あんな……)


今朝の出来事を思い出すと、顔が熱くなる。

拠点である屋敷の玄関先で、今日のルートを確認し、バッツが「よし、行くぞ!」と先陣切った後。
セシルがそれに続いて、フリオニールも行こうとした所で、スコールに呼び止められた。
何か言いそびれたことでもあったかと、振り返って見たら、そこにキスをされた。
身長分を埋めるのにスコールがほんの少し背伸びをして、その唇が、フリオニールの口端を掠める。
それは一秒にも満たない、瞬きの間のことだった。
固まったフリオニールを見た恋人は、小さく笑って「行くぞ」と言って歩き出した。

まずいのは、そうしたスコールの戯れを、厭だと思うこともないことだ。
ちゃんとスコールを咎めたり、今は駄目だと振り払えないから、彼は何度も触れてくる。

口端に触れた柔らかい感触を思い出してしまって、首まで熱が出ているのが判る。
バッツとセシルがこちらを振り返ったら、どうしたのかと聞かれるから、その前に冷まさなくては。

フリオニールが一人葛藤している間に、旅程は順調に進んだ。
海沿いまでは聖域から二日がかかるから、途中で野営を挟むことになる。
半分を過ぎたところで夕刻を迎え、林に入った四人は、暗くなる前にそこで野営の準備をすることに決めた。

食糧は持ち運んできたものの、荷物は多くできないから、携帯食が主になる。
それだけでは物足りない健啖家は少なくないので、可能な限り、現地調達も行っていた。

フリオニールが引いた弓矢は、林の上にいた鳥を射貫く。
落ちてきた獲物の大きさを見て、これなら今夜はご馳走だ、とフリオニールは満足した。
血抜きを済ませて野営地へと戻る道すがら、よく知る人影を見付ける。


「スコール」
「……あんたか。獲物は?」
「良いのが穫れたよ。これだ」


フリオニールが鳥を見せれば、スコールもほっとしたように頷く。


「良いんじゃないか。少し固そうだけど」
「そうだな。でも、煮込めば柔らかくなるよ」
「……それなら、もう少し拾うか」


スコールの片腕には薪が抱えられている。
既に二度は往復しているそうで、火を保つだけなら十分に思えるが、煮込み料理を食べようとなると、もう少し欲しい。

スコールは腕一杯の薪を見つめ、


「……一度置いて来るか」
「じゃあ戻ろう。こいつを置いたら、俺も手伝うよ」
「ああ」


二人連れたって、野営地の方へと足を向ける。

野営地では、バッツが竈を作って火を起こしていた。
セシルは近くの川へ水を汲みに行ったと言う。
フリオニールはバッツに今日の夕飯の鳥を預け、今度はスコールとともに薪拾いに行く。

林は茂っている木もあるが、枯れ枝もそれなりに落ちている。
スコールが拾い回った後でも、もう少し使えそうなものが見付けられた。
枝葉を拾って、野営地の周りをぐるぐると回るように歩いていると、


「フリオニール」


呼ぶ声に顔を上げると、近い距離にスコールの顔があった。
不意の至近距離にフリオニールが目を丸くしていると、そのまま近付いて来た唇が、フリオニールの頬に触れる。


「スコー、」
「……」


瞬間沸騰のように顔を赤くしたフリオニールに、蒼の瞳がくすりと笑う。
子供が悪戯を成功させたような表情だ。

突然の柔い感触に硬直している間に、スコールの腕がフリオニールの首へと絡む。
逃げを封じられたまま、今度は唇を重ねられた。
暖かくてぬるりとしたものがフリオニールの唇を舐める。


「ん、ン」
「んん……」


開けて、とノックをする舌先に、ぞくりとしたものがフリオニールの背を奔る。
このままそれを受け入れたら、きっと深いものになってしまう。
けれど、背にした向こうには、仲間たちの気配があるのだ。

丹念にフリオニールの唇を舐めて、スコールがキスをやめる。
首に絡めた腕はそのまま、スコールは不満そうにフリオニールを見つめた。


「フリオ」


なんで応えてくれない、と目が言っている。
判り易く責められている訳だが、フリオニールとて簡単に流される訳にはいかなかった。


「セシルとバッツがいるんだぞ」
「ここにはいないだろ」
「あっちに……」
「どうせ見えない」


確かに、気配はすれども、姿自体は木々に遮られて見えない。
太陽も落ちた頃合いか、足元も暗くなって来た。
野営地で焚いている日はこちらから臨めるが、あそこから林の中の詳細を知るのは、少々難しいだろう。

もう一度、スコールはキスをする。
柔らかい感触がフリオニールの唇に押し付けられて、またノックされる。
それでもフリオニールが噤んでいると、首に絡む腕が力を増した。
ねだる気配を漂わせるそれに、フリオニールは迷いつつ、恐る恐るに彼の背中に腕を回す。


「…ん、ん……!」
「ん、むぁ……っ!」


スコールの背中を抱きながら、口を開けて、彼の舌を受け入れる。
耳の奥で、くちゅりと言う音が鳴るのが判って、フリオニールは体が熱くなった。

スコールがフリオニールの咥内を堪能した後、舌は誘いながら逃げる。
それを追って行けば、今度はフリオニールがスコールの中に入った。
湿って火照った咥内を、ゆっくりと舌でなぞりながら、スコールの舌を擽る。


「ん、ふ……っ、ん……っ!」


ぴくっ、ぴくっ、とスコールの肩が小さく跳ねる。

ゼロにも等しい距離で、蒼灰色が熱ぼったく揺れている。
首に回された腕が、徐々にその力を緩めながらも、懸命に解けないように縋っているのが判った。
その身体が頽れてしまわないよう、背中を強く抱いてやれば、交わす口付けの隙間から、甘いものが混じった吐息が零れる。


「ふ、は……っんぅ……!」


酸素を欲しがって僅かに離れた唇を、フリオニールはすぐに塞いだ。
仲間たちの気配を気にして、こんな所で、と言った口で、恋人を貪る。
感じ入って動きが鈍くなる舌を捉えれば、首に縋る腕に力が籠るのが嬉しかった。

水音と啜る音が聞こえるほど、スコールの咥内をしゃぶりつくす。
歯列をなぞれば、スコールの体がぶるりと震えるのが伝わって、彼が興奮しているのが判った。
ともすれば、そのまま全てを食らい尽くしてやろうと、物騒な衝動も湧き上がる。

────が。


「……っは…、はぁっ、はっ……!」
「は、あ……は、ふ……ん、んん……っ」


フリオニールが唇を離すと、途端にスコールの膝から力が抜ける。
かくん、と折れる体を、抱き締めたフリオニールの腕が支えていた。

ふるふると震えるスコールの体を抱えたまま、フリオニールは座り込む。
スコールはフリオニールに身を預けていた。
は、は、と苦し気に喘ぐその表情が示すのは、苦悶だけではない。


「フ、リオ……」


うっとりと溶けた蒼灰色の瞳が、もっと、と続きをねだる。
しかし、フリオニールはぐっと喉を堪えながら、


「駄目だ、スコール。こんなところで始めたら……」
「……」
「……止められ、なく、なるだろ」


見つめる瞳を真っ直ぐに見返して、フリオニールは言った。

スコールの喉がごくりと鳴って、フリオニールの肩に捕まる手に力が籠る。
それをフリオニールは丁寧に外させて、手近な木にスコールを寄り掛からせた。


「薪拾い、してくるから。ちょっと休んでると良い」
「……」
「楽になったら、皆の所に戻るんだぞ。良いな?」
「……わ、かった……」


言い聞かせる声で言われて、スコールは渋々に頷く。
赤いその頬をフリオニールが撫で、もう一度触れたい欲求を堪えて、急ぎ足で薪拾いへ向かう。

残されたスコールは、しばらくぼんやりとしていた。
木々の頭上で瞬き始めた星を見上げるが、その眼に映っているのは、遠くの光ではない。
数分前に見た恋人の、熱に染まった紅い瞳を思い出し、体の奥が熱くなる。
じくじくと拡がっていくそれは、確かに彼に燈されたのに、その当人は行ってしまった。

疼く熱は堪らなく苦しいが、それを与える男の顔を思い出すと、どうしようもなく、嬉しい。


(……だから、つい、)


触れてしまうのだと、彼は知っているだろうか。
触れて、キスして、煽って、ようやく見れるあの眼差し。



悪い癖になっていることを判っていても、彼が最後に応えてくれることを知っているから、やめられないのだ。






『隙を見つけては隠れてちゅっちゅして来るスコールと、恥ずかしがりながらも嬉しくてそれに応えるフリオニール』のリクエストを頂きました。
皆には隠していたい癖に、大好きなフリオニールを感じたいので、隙あらば仕掛けてるスコールです。
我儘な恋人を持ったフリオニールは苦労します。的確に煽って来てくれるので尚更。

Pagination

Utility

Calendar

07 2026.08 09
S M T W T F S
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -

Entry Search

Archive

Feed