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[フリスコ]呼び水

  • 2026/08/08 22:00
  • Posted by k_ryuto
  • Category:FF



スコールと恋人同士という関係になってから、初めて知ったことはいくつかある。

触れることは苦手だと言うけれど、案外とその時に感じる体温を嫌ってはいないこと。
眠っている時は温もりのある方へと寄って行くこと。
それから、キスをするのが好きだと言うこと。

閨の中では勿論、それ以外の場所でも、彼はフリオニールにキスをする。
仲間たちの目から束の間離れた場所で、ふ、とフリオニールに触れる。

彼はスキンシップを好まない。
ジタンやバッツがよくじゃれついているが、あれも彼から求めた訳ではないし、寛容した訳でもない。
二人がそうやって構っているのが当たり前なだけであって、スコールは甚だうんざりしている───そう言って悪感情はないのだが───。
彼自身からと言えば尚更のことで、握手すら取り合わないものであった。

そう言う人なのだとフリオニールは思っていたのだが、付き合うようになってから、彼から触れる回数の多いこと。
それも、ふとした折、不意を突くようにして触れていくのだから、毎回驚く。

───今日もまた、スコールの戯れは続く。

海岸沿いの歪を調べて回る為、フリオニール、スコール、バッツ、セシルの四人で秩序の聖域を発った。
道中に大きなトラブルはなく、野良のイミテーションや魔物と数回、遭遇した程度だ。
平和と言えば平和なもので、バッツが終始何事か雑談を振り、フリオニールとセシルが答える。
スコールはその後ろで、バッツが指名に投げてくる話題を、短く返していた。

その雑談の最中に、何度か、


「フリオニール」
「ん?」


話題がバッツとセシルの間で咲いている時だった。
殿(しんがり)を歩いていたスコールが、フリオニールの隣に並ぶ。

と、その手の甲が、するりとフリオニールの手を撫でた。


「!」


くすぐったい感触が手の甲を滑った感触に、フリオニールははっとする。
隣を見れば、蒼灰色がどこか楽しそうに、悪戯な表情を浮かべていた。

スコール、と名を呼ぼうとすると、彼は歩く速度を落とした。
半歩分離れたかと思うと、「そういやさぁ」と言ってバッツがこちらを振り返る。
フリオニールが慌てて前を向き直った時には、スコールはさっきと同じ位置へと戻っていた。

バッツの話に応じながら、フリオニールの心臓は忙しく打っている。


(まだしばらく、皆には隠したいって言ってたのは、スコールなのに。なんでこんな風に触れてくるんだろう)


二人の関係は、まだ誰にも伝えていない。
冷やかしをする奴らがいるだろ、とスコールが顔を顰めて言っていた。
確かに、悪意や揶揄はなくとも、放っておいてくれない面々がいるのは確かだ。
まだしばらく静かな方が良い、とスコールが言うから、フリオニールもその意を汲んだ。

それなのに、だ。

隠しているのだから、仲間たちと一緒にいる時には、今まで通りに過ごそうと決めた。
二人きりで話をしたり、ささやかでも良いから触れ合ったり、そう言うことは人前では控えている。
意識がついつい彼を追うのはやめられないが、露骨にならないようにとフリオニールは努めた。

だのに、スコールの方がその境界線を踏んでくる。
ふとした時に、指先を繋いだり、腕に触れてきたり、────キスをしたり。
それも、他の仲間たちが案外と近くにいる時に、彼らが自分たちを見ていない隙に、一瞬だけ。


(聖域を出る時にも、あんな……)


今朝の出来事を思い出すと、顔が熱くなる。

拠点である屋敷の玄関先で、今日のルートを確認し、バッツが「よし、行くぞ!」と先陣切った後。
セシルがそれに続いて、フリオニールも行こうとした所で、スコールに呼び止められた。
何か言いそびれたことでもあったかと、振り返って見たら、そこにキスをされた。
身長分を埋めるのにスコールがほんの少し背伸びをして、その唇が、フリオニールの口端を掠める。
それは一秒にも満たない、瞬きの間のことだった。
固まったフリオニールを見た恋人は、小さく笑って「行くぞ」と言って歩き出した。

まずいのは、そうしたスコールの戯れを、厭だと思うこともないことだ。
ちゃんとスコールを咎めたり、今は駄目だと振り払えないから、彼は何度も触れてくる。

口端に触れた柔らかい感触を思い出してしまって、首まで熱が出ているのが判る。
バッツとセシルがこちらを振り返ったら、どうしたのかと聞かれるから、その前に冷まさなくては。

フリオニールが一人葛藤している間に、旅程は順調に進んだ。
海沿いまでは聖域から二日がかかるから、途中で野営を挟むことになる。
半分を過ぎたところで夕刻を迎え、林に入った四人は、暗くなる前にそこで野営の準備をすることに決めた。

食糧は持ち運んできたものの、荷物は多くできないから、携帯食が主になる。
それだけでは物足りない健啖家は少なくないので、可能な限り、現地調達も行っていた。

フリオニールが引いた弓矢は、林の上にいた鳥を射貫く。
落ちてきた獲物の大きさを見て、これなら今夜はご馳走だ、とフリオニールは満足した。
血抜きを済ませて野営地へと戻る道すがら、よく知る人影を見付ける。


「スコール」
「……あんたか。獲物は?」
「良いのが穫れたよ。これだ」


フリオニールが鳥を見せれば、スコールもほっとしたように頷く。


「良いんじゃないか。少し固そうだけど」
「そうだな。でも、煮込めば柔らかくなるよ」
「……それなら、もう少し拾うか」


スコールの片腕には薪が抱えられている。
既に二度は往復しているそうで、火を保つだけなら十分に思えるが、煮込み料理を食べようとなると、もう少し欲しい。

スコールは腕一杯の薪を見つめ、


「……一度置いて来るか」
「じゃあ戻ろう。こいつを置いたら、俺も手伝うよ」
「ああ」


二人連れたって、野営地の方へと足を向ける。

野営地では、バッツが竈を作って火を起こしていた。
セシルは近くの川へ水を汲みに行ったと言う。
フリオニールはバッツに今日の夕飯の鳥を預け、今度はスコールとともに薪拾いに行く。

林は茂っている木もあるが、枯れ枝もそれなりに落ちている。
スコールが拾い回った後でも、もう少し使えそうなものが見付けられた。
枝葉を拾って、野営地の周りをぐるぐると回るように歩いていると、


「フリオニール」


呼ぶ声に顔を上げると、近い距離にスコールの顔があった。
不意の至近距離にフリオニールが目を丸くしていると、そのまま近付いて来た唇が、フリオニールの頬に触れる。


「スコー、」
「……」


瞬間沸騰のように顔を赤くしたフリオニールに、蒼の瞳がくすりと笑う。
子供が悪戯を成功させたような表情だ。

突然の柔い感触に硬直している間に、スコールの腕がフリオニールの首へと絡む。
逃げを封じられたまま、今度は唇を重ねられた。
暖かくてぬるりとしたものがフリオニールの唇を舐める。


「ん、ン」
「んん……」


開けて、とノックをする舌先に、ぞくりとしたものがフリオニールの背を奔る。
このままそれを受け入れたら、きっと深いものになってしまう。
けれど、背にした向こうには、仲間たちの気配があるのだ。

丹念にフリオニールの唇を舐めて、スコールがキスをやめる。
首に絡めた腕はそのまま、スコールは不満そうにフリオニールを見つめた。


「フリオ」


なんで応えてくれない、と目が言っている。
判り易く責められている訳だが、フリオニールとて簡単に流される訳にはいかなかった。


「セシルとバッツがいるんだぞ」
「ここにはいないだろ」
「あっちに……」
「どうせ見えない」


確かに、気配はすれども、姿自体は木々に遮られて見えない。
太陽も落ちた頃合いか、足元も暗くなって来た。
野営地で焚いている日はこちらから臨めるが、あそこから林の中の詳細を知るのは、少々難しいだろう。

もう一度、スコールはキスをする。
柔らかい感触がフリオニールの唇に押し付けられて、またノックされる。
それでもフリオニールが噤んでいると、首に絡む腕が力を増した。
ねだる気配を漂わせるそれに、フリオニールは迷いつつ、恐る恐るに彼の背中に腕を回す。


「…ん、ん……!」
「ん、むぁ……っ!」


スコールの背中を抱きながら、口を開けて、彼の舌を受け入れる。
耳の奥で、くちゅりと言う音が鳴るのが判って、フリオニールは体が熱くなった。

スコールがフリオニールの咥内を堪能した後、舌は誘いながら逃げる。
それを追って行けば、今度はフリオニールがスコールの中に入った。
湿って火照った咥内を、ゆっくりと舌でなぞりながら、スコールの舌を擽る。


「ん、ふ……っ、ん……っ!」


ぴくっ、ぴくっ、とスコールの肩が小さく跳ねる。

ゼロにも等しい距離で、蒼灰色が熱ぼったく揺れている。
首に回された腕が、徐々にその力を緩めながらも、懸命に解けないように縋っているのが判った。
その身体が頽れてしまわないよう、背中を強く抱いてやれば、交わす口付けの隙間から、甘いものが混じった吐息が零れる。


「ふ、は……っんぅ……!」


酸素を欲しがって僅かに離れた唇を、フリオニールはすぐに塞いだ。
仲間たちの気配を気にして、こんな所で、と言った口で、恋人を貪る。
感じ入って動きが鈍くなる舌を捉えれば、首に縋る腕に力が籠るのが嬉しかった。

水音と啜る音が聞こえるほど、スコールの咥内をしゃぶりつくす。
歯列をなぞれば、スコールの体がぶるりと震えるのが伝わって、彼が興奮しているのが判った。
ともすれば、そのまま全てを食らい尽くしてやろうと、物騒な衝動も湧き上がる。

────が。


「……っは…、はぁっ、はっ……!」
「は、あ……は、ふ……ん、んん……っ」


フリオニールが唇を離すと、途端にスコールの膝から力が抜ける。
かくん、と折れる体を、抱き締めたフリオニールの腕が支えていた。

ふるふると震えるスコールの体を抱えたまま、フリオニールは座り込む。
スコールはフリオニールに身を預けていた。
は、は、と苦し気に喘ぐその表情が示すのは、苦悶だけではない。


「フ、リオ……」


うっとりと溶けた蒼灰色の瞳が、もっと、と続きをねだる。
しかし、フリオニールはぐっと喉を堪えながら、


「駄目だ、スコール。こんなところで始めたら……」
「……」
「……止められ、なく、なるだろ」


見つめる瞳を真っ直ぐに見返して、フリオニールは言った。

スコールの喉がごくりと鳴って、フリオニールの肩に捕まる手に力が籠る。
それをフリオニールは丁寧に外させて、手近な木にスコールを寄り掛からせた。


「薪拾い、してくるから。ちょっと休んでると良い」
「……」
「楽になったら、皆の所に戻るんだぞ。良いな?」
「……わ、かった……」


言い聞かせる声で言われて、スコールは渋々に頷く。
赤いその頬をフリオニールが撫で、もう一度触れたい欲求を堪えて、急ぎ足で薪拾いへ向かう。

残されたスコールは、しばらくぼんやりとしていた。
木々の頭上で瞬き始めた星を見上げるが、その眼に映っているのは、遠くの光ではない。
数分前に見た恋人の、熱に染まった紅い瞳を思い出し、体の奥が熱くなる。
じくじくと拡がっていくそれは、確かに彼に燈されたのに、その当人は行ってしまった。

疼く熱は堪らなく苦しいが、それを与える男の顔を思い出すと、どうしようもなく、嬉しい。


(……だから、つい、)


触れてしまうのだと、彼は知っているだろうか。
触れて、キスして、煽って、ようやく見れるあの眼差し。



悪い癖になっていることを判っていても、彼が最後に応えてくれることを知っているから、やめられないのだ。






『隙を見つけては隠れてちゅっちゅして来るスコールと、恥ずかしがりながらも嬉しくてそれに応えるフリオニール』のリクエストを頂きました。
皆には隠していたい癖に、大好きなフリオニールを感じたいので、隙あらば仕掛けてるスコールです。
我儘な恋人を持ったフリオニールは苦労します。的確に煽って来てくれるので尚更。

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